説明

ガス吹き込みノズル

【課題】ノズル自体の長さを延ばしたり、ノズルを交換したり、さらには既存の精錬設備を大きく改造したりすることを必要とせず、また、ガス吹き切り換え時に待機ノズルを開口させることが不要で、かつ、耐用寿命をさらに延ばすことが可能なガス吹き込みノズルを提供する。
【解決手段】炉内側先端が炉内に露出し、炉内の溶融金属にガスを吹き込むことが可能な状態にある複数の第1金属細管11と、第1サージタンク12と、第1耐火物13とを備えた第1ノズル部10と、耐火物中に埋設され、炉内側先端が閉塞した複数の第2金属細管21と、第2サージタンク22と、第2耐火物23とを備える第2ノズル部20とを備えた構成とし、第2ノズル部の第2金属細管の炉内側先端に達するまで耐火物23の損耗が進むと、第2ノズル部20の第2金属細管21からのガスの吹き込みを開始させる一方、第1ノズル部10からのガスの吹き込みを停止させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気炉や転炉などに取り付けられ、溶融金属にガスを吹き込むために用いるガス吹き込みノズルに関する。
【背景技術】
【0002】
電気炉や転炉などの溶融金属精錬容器の底または側壁には、窒素ガス、アルゴンガスなどの不活性ガス、あるいは一酸化炭素ガス、炭酸ガスなどを、精錬炉内の溶融金属中に吹き込むためのガス吹き込みノズルが設置されているのが一般的である。
【0003】
このガス吹き込みノズルは、耐熱スポーリング性、耐摩耗性、および溶銑、溶鋼、スラグなどに対する耐食性が要求されるため、一般に、例えばMgO−Cれんがなどの、炭素含有耐火物に、一本または複数本のガス吹き込み用金属細管(例えばステンレス鋼など)を、上記耐火物を貫通するように埋め込んだ形で設置して作製される。
なお、大量にガスを吹き込む用途に用いられるガス吹き込みノズルとしては、単管タイプの径の大きいものが用いられ、特に多くのガスを吹き込む必要がなく、緻密な気泡のガスを吹き込むことが望ましい用途には、複数の金属細管を耐火物を貫通するように埋め込んだ形の細管タイプのものが用いられる。
【0004】
また、ガス吹き込みノズルは、使用時にはノズルそのものの温度が上昇し、炭素含有耐火物中の炭素が金属細管に浸透する浸炭現象により、金属細管の融点が低下して溶融する。
金属細管が溶融すると、ガスの吹き込みによって生じる溶鋼流が直接に炭素含有耐火物に当たり、損耗し易くなる。このため、ガス吹き込みノズル自体の寿命が短くなる。
【0005】
そこで、かかる問題点を解決するために、以下の特許文献1〜6のような技術が提案されている。
まず、特許文献1には、炭素を含まないキャスタブルなどの耐火物でガス吹き込み用の金属細管を被覆した後、炭素含有耐火物に埋め込むようにしたガス吹き込みノズルが提案されている。
しかしながら、この特許文献1のガス吹き込みノズルの場合、炭素を含まないキャスタブルなどの耐熱スポーリング性および耐食性に劣る耐火物が先行的に損耗し、キャスタブル部分が寿命律速となるため、ノズルを所定の長さに保ったままでは、さらなる耐用寿命の延長を図ることができないという問題点がある。
【0006】
また、特許文献2には、アルミナ−カーボン質耐火物中に内設される複数個のガス吹き込み用金属細管の外周にMgO質超微粉を主成分とするスラリー液を塗布して、MgOコーティング層を形成するようにしたアルミナ−カーボン質ガス吹き込み用プラグが提案されている。
しかしながら、この特許文献2のガス吹き込みプラグの場合、MgOコーティングされた金属細管を炭素含有耐火物内部に設置する際に、コーティング層が剥離し、結果的に剥離部分で浸炭が生じて十分な効果が得られないため、ノズルを所定の長さに保ったままでは、さらなる耐用寿命の延長を図ることはできないという問題点がある。
【0007】
さらに、特許文献3には、炭素含有耐火物とガス吹き込み用金属細管の間に耐火性焼結体を配設して、浸炭を防止するようにしたガス吹き込みノズルが提案されている。
しかしながら、この特許文献3のガス吹き込みノズルの場合、通常は、ガス吹き込み用の金属細管と耐火性焼結体との間にモルタルを介在させることが必要になり、耐磨耗性および耐食性に劣るモルタルが先行的に損耗され、モルタル部分から損傷が拡大するという問題点がある。また、この特許文献3の場合も、ノズル長さを所定の長さに保ったままでは、さらなる耐用寿命の延長を図ることはできないという問題点がある。
【0008】
また、特許文献4には、ガス導入用の金属細管にアルミナまたはマグネシアを溶射して、浸炭を防止するようにしたガス吹き込みノズルが提案されている。
しかしながら、この特許文献4のガス吹き込みノズルの場合、ガス導入用金属細管と溶射材の熱膨張係数が異なるため、膨張差で溶射材が剥離し、剥離部分で浸炭されるという問題点がある。したがって、この特許文献4の構成の場合も、ノズルを所定の長さに保ったままでは、さらなる耐用寿命の延長を図ることはできないという問題点がある。
【0009】
上述の特許文献1〜4は、いずれも浸炭を抑制することにより耐用性の向上を図っており、浸炭が抑制される分だけ耐用期間を延ばすことが可能になるが、さらに耐用期間を延ばそうとすると、ノズルをさらに長くすることが必要になる。
しかしながら、仮に目標耐用寿命が得られるまでノズルを長くした場合、ガス吐出孔から溶鋼表面までの距離が短くなり、攪拌効率の悪化により精錬効率が低下するという問題が生じる。
【0010】
また、精錬炉内の炉床面から過度にノズルが突き出た場合、加熱される面が増え、熱スポーリングまたは構造スポーリングが生じ易くなる。
また、ノズルが長くなった分だけ精錬炉内の炉床全体を上昇させると、耐火物コストを引き上げるだけでなく、所定の溶鋼量を精錬できなくなるという問題が生じる。
したがって、特許文献1〜4の構成において、ノズルを長くすることで耐用寿命をさらに延長させるということは困難であるのが実情である。
【0011】
ところで、上述の特許文献1〜4は、寿命律速となるノズル本体の耐用性を向上させることにより精錬容器の稼働数を上げることを意図する技術に関するものであるが、ガス吹き込みノズルの補修あるいは切り換えの方法により、精錬容器の稼働数を上げる技術も提案されている。
【0012】
例えば、特許文献5には、複数箇所に設置したガス吹き込み用ノズルを予め炉底耐火物中に埋設し、炉底耐火物表面からノズル先端までの距離をそれぞれ異ならせた底吹転炉が開示されている。
【0013】
しかしながら、この特許文献5では、待機中のガス吹き込み用ノズルはガスを通気していないため残厚管理が難しく、タイミングよくガス吹きを切り換えることが困難であり、タイミングを間違えるとノズル内に溶鋼が侵入し、漏鋼事故を引き起こす危険性がある。なお、特許文献5では、細管タイプではなく径の大きな管を使用した単管タイプのものであるため、さらに漏鋼の危険性が高いという問題点もある。
また、ノズルの炉内側先端に盲キャップれんがや、盲キャップ受けれんがを設置するなど、施工が複雑で手間が掛かるという問題点がある。
さらに、ガス吹きの切り換え時に、切り換え羽口の開口作業や使用済み羽口の閉塞作業などに手間が掛かるという問題点がある。
【0014】
また、特許文献6には、溶融金属精錬容器の底または側壁に溶融金属精錬容器の使用開始時からガス導入管が開口したガス吹き込みノズルと、容器の使用開始時にはその先端面が溶融金属に接しかつ先端部までガス導入管が閉塞していて迅速交換方法によってガス導入管を開口するようにしたガス吹き込みノズルを配設した溶融金属精錬容器が提案されている。
【0015】
また、特許文献6には、この溶融金属精錬容器にて溶融金属を精錬するにあたって、ガス吹き込みノズルいずれか2個を先行使用後、迅速交換方法により他の2個を使用し、先行使用したノズルは閉塞させ、精錬容器の使用回数に従って概ね2個を1組として交互に使用するようにした溶融金属精錬容器の操業方法が提案されている。
【0016】
しかしながら、この特許文献6の溶融金属精錬容器およびその操業方法の場合、例えば、ノズルを切り換えるにあたっては、盲れんがをドリルなどで解体し羽口を開口する必要があり、また初回ガス吹きノズル側の鉄皮を取り外し、ノズルを受けている耐火物を解体し、さらにはその隙間に不定形耐火物を詰める作業が発生するなど、一連の交換作業に手間がかかり、効率が悪いという問題点がある。さらに、羽口の開口と差し込んだガス吹きノズルに隙間が生じる可能性があり、この隙間から溶鋼が侵入して漏鋼するおそれもあり、信頼性が低いという問題点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】実開平02−61950号公報
【特許文献2】特開平10−265829号公報
【特許文献3】特開2003−231912号公報
【特許文献4】特開2000−212634号公報
【特許文献5】特開昭56−58918号公報
【特許文献6】特開平05−98337号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、ノズル自体の長さを延ばすことを必要とせず、また、ノズルを交換したり、ガス吹き切り換え時に待機ノズルを開口させたりすることを必要とすることなく、耐用寿命を延ばすことが可能で、しかも、大きな改造を行わずに既存の精錬設備に適用することが可能なガス吹き込みノズルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記課題を解決するため、発明者等は、ガス吹き込みノズルの損傷形態について検討を行い、
(1)ガス吹き込みノズルの損傷は、ガス攪拌によって生じる溶融金属流による耐火物の磨耗が主体で、一般的にはガス吐出孔部がすり鉢状に大きく凹んだ損傷となり、最終的に吐出孔部の耐火物(ノズル耐火物)の残厚が少なくなることで耐用寿命が決まる、
(2)一方、吐出孔部中心から約200mm以上離れた部位においては、摩耗の程度は軽く、比較的ノズル耐火物の残厚は大きい
という知見を得た。
【0020】
そして、位置によるノズル耐火物の損耗差を有効利用することによりノズルの耐用寿命が改善されることに着眼し、さらに検討、実験を行って本発明を完成するに至った。
【0021】
すなわち、本発明(請求項1)のガス吹き込みノズルの発明は、
ガス導入用の複数の金属細管と、吹き込み前のガスをプールするサージタンクと、前記金属細管および前記サージタンクを保護する耐火物とを備えた、炉内の溶融金属にガスを吹き込むためのガス吹き込みノズルであって、
炉内側先端が開口しているとともに、前記炉内側先端が炉内に露出し、炉内の溶融金属にガスを吹き込むことが可能な状態にある複数の第1金属細管と、前記第1金属細管と連通する第1サージタンクと、前記第1金属細管および前記第1サージタンクを保護する第1耐火物とを備える第1ノズル部と、
炉内側先端が所定の深さに位置するように耐火物中に埋設され、炉内側先端が閉塞した複数の第2金属細管と、前記第2金属細管と連通する第2サージタンクと、前記第2金属細管および前記第2サージタンクを保護する第2耐火物とを備える第2ノズル部と
を具備し、
前記第2ノズル部にガスの圧力をかけた状態で、前記第1ノズル部からのガスの吹き込みが継続して行われ、前記第2耐火物中に埋設された前記第2金属細管の前記炉内側先端に達するまで前記第2耐火物の損耗が進むと、閉塞していた前記第2金属細管の前記炉内側先端が開口し、前記第2金属細管からのガスの吹き込みが開始するように構成されていること
を特徴としている。
【0022】
また、本発明のガス吹き込みノズルにおいては、前記第1ノズル部を構成する前記第1金属細管と、前記第2ノズル部を構成する前記第2金属細管とが、最も近接している部分において、100〜1000mmの間隔をおいて配設されていることが望ましい。
【0023】
さらに、前記第2ノズル部を構成する前記第2金属細管は、前記耐火物表面から前記炉内側先端までの距離がノズル有効長の14%以上となる深さに埋設されていることが望ましい。
【0024】
また、本発明のガス吹き込みノズルは、
ガス導入用の複数の金属細管と、前記複数の金属細管と連通し、吹き込み前のガスをプールするサージタンクと、前記金属細管および前記サージタンクを保護する耐火物とを備えた、炉内の溶融金属にガスを吹き込むためのガス吹き込みノズルであって、
前記金属細管は、炉内側先端が所定の深さに位置するように耐火物中に埋設され、前記炉内側先端が閉塞していること
を特徴としている。
【0025】
また、前記金属細管は、前記耐火物表面から前記炉内側先端までの距離がノズル有効長の14%以上となる深さに埋設されていることが望ましい。
【発明の効果】
【0026】
本発明(請求項1)のガス吹き込みノズルの発明は、
(a)開口した炉内側先端が炉内に露出し、炉内の溶融金属にガスを吹き込むことが可能な状態にある複数の第1金属細管と、第1金属細管と連通する第1サージタンクとを備える第1ノズル部と、
(b)耐火物中に埋設され、炉内側先端が閉塞している複数の第2金属細管と、第2金属細管と連通する第2サージタンクとを備える第2ノズル部と
を具備しており、第1ノズル部からのガスの吹き込みが継続して行われることにより、第2金属細管の炉内側先端に達するまで第2耐火物の損耗が進むと、閉塞していた第2金属細管の炉内側先端が開口し、第2ノズル部の第2金属細管からのガスの吹き込みが開始するように構成されているので、それまでガスを吹いていた第1ノズル部を構成する第1金属細管および第1耐火物が所定のラインまで損耗した時点で、ガス吹き込みの経路が、第1ノズル部の吐出口近傍より耐火物の損耗の程度が軽微な第2ノズル部から(詳しくは、第2金属細管の炉内側先端から)のガス吹き込みに切り換えられるため、上述の位置による耐火物の損耗差を有効に利用して、耐用寿命を延ばすことが可能になる。
なお、本発明のガス吹き込みノズルの場合、第1ノズル部および第2ノズル部のいずれもが、金属細管に連通するサージタンクを備えているため、各サージタンクにガス供給ラインを接続しておくことにより、第2ノズル部からの通気が確認された時点で、特に複雑な処理をすることなく、容易かつ確実にガスの供給経路を切り換えることできる。
【0027】
なお、本発明(請求項1の発明)では、第1ノズル部と第2ノズル部を備えたガス吹き込みノズルについて規定しているが、第2金属細管の炉内側先端部よりも耐火物中の深い位置に埋設された、第3金属細管とそれに連通する第3サージタンクおよび第3耐火物を備えた第3ノズル部、さらにはそれよりもさらに深い位置に埋設された第4金属細管とそれに連通する第4サージタンクおよび第4耐火物を備えた第4ノズル部というように、第3ノズル部以降のノズル部を備えた構成とすることも可能である。
すなわち、本発明は少なくとも第1および第2ノズル部を備えていることを要件とするものであり、第3ノズル部以降のノズル部を備えた構成を排除するものではない。
【0028】
また、本発明において、耐火物中に埋設された第2金属細管の炉内側先端は閉塞しているが、炉内側先端は、耐火物中に埋設されることにより閉塞されるように構成されていてもよく、また、予め炉内側先端を閉塞させた第2金属細管を耐火物中に埋設するようにしてもよい。
【0029】
なお、耐火物中に埋設されることにより閉塞されるように構成した場合には、耐火物の損耗が第2金属細管の炉内側先端に達すると、その時点でガスの吹き込みが開始する。一方、予め炉内側先端を閉塞させた第2金属細管を耐火物中に埋設するようにした場合も、炉内側先端が溶融金属に接することにより開口し、その時点でガスの吹き込みが始まる。
【0030】
また、本発明のガス吹き込みノズルにおいて、第1ノズル部を構成する第1金属細管と、第2ノズル部を構成する第2金属細管とを、最も近接している部分において、100〜1000mmの間隔をおいて配設することにより、位置による耐火物の損耗差をより確実に利用して、耐用性をさらに向上させることができる。
なお、ここでいう第1金属細管および第2金属細管は、いずれも、サージタンクと連通し、実際にガスを通気させる金属細管をいう。
なお、第1金属細管と第2金属細管の最も近接している部分の間隔が100mm未満になると、耐火物の損耗差を十分に利用することが困難になり、1000mmを超えると、ガス吹き込みノズルの施工性を悪化させるだけでなく、精錬効率の低下あるいは精錬炉内全体の耐火物の損傷形態を著しく悪化させることになるため、第1金属細管と第2金属細管の最も近接している部分の間隔は、100〜1000mmの範囲とすることが望ましい。
【0031】
また、第1金属細管と第2金属細管の間隔とは、金属細管を軸方向からみた場合における、第1金属細管を構成する金属細管と、第2金属細管を構成する金属細管のうちの、最も近接している金属細管どうしの間の距離をいう。
【0032】
また、第2ノズル部を構成する第2金属細管を、第2耐火物表面から炉内側先端までの距離がノズル有効長の14%以上となる深さ(埋設深さ)に埋設するようにした場合、位置による耐火物の損耗差(図5のM)をさらに確実に利用することが可能になり、本発明をより実効あらしめることができる。
なお、本発明において、ノズル有効長とは、第1、第2耐火物の全長ではなく、安全な残厚を残して安全に使用できる長さのことであり、図5を参照して説明すると、第1、第2サージタンク12,22の上端から第1、第2耐火物13,23の表面(上端面)13a,23aまでの距離を、第1、第2耐火物13,23の全長L(mm)としたときに、安全な残厚としてこのL(mm)から300mmを差し引いた値、すなわち、下記の式(1)で表される値をいう。
ノズル有効長(mm)=L(mm)−300mm ……(1)
なお、第2ノズル部を構成する第2金属細管の埋設深さ(図5のD)が、ノズル有効長の14%より短い場合には、第1ノズル部から第2ノズル部へのガス吹き切り換え時期が早すぎて、第1ノズル部のノズル有効長を十分に活用することができず、ガス吹き込みノズル全体としての寿命を十分に延ばすことができなくなる。
さらに、稼働初期の耐火物表面は熱スポーリングや熱膨張応力などにより亀裂・剥離が生じることがあり、第2金属細管の埋設深さが、ノズル有効長の14%より短い場合には、この亀裂・剥離により稼働初期に第2金属細管の先端が露出してしまう場合がある。
したがって、第2ノズル部を構成する第2金属細管の埋設深さは、ノズル有効長の14%以上であることが望ましい。
【0033】
また、本発明のガス吹き込みノズルは、ガス導入用の複数の金属細管と、吹き込み前のガスをプールするサージタンクと、ガス導入用の金属細管とサージタンクを保護する耐火物とを備えた、炉内の溶融金属にガスを吹き込むためのガス吹き込みノズルにおいて、金属細管が、炉内側先端が所定の深さに位置するように耐火物中に埋設され、炉内側先端が閉塞した構成を備えている。
【0034】
したがって、本発明のガス吹き込みノズルは、公知のガス吹き込みノズル、すなわち、開口した炉内側先端が炉内に露出し、炉内の溶融金属にガスを吹き込むことが可能な状態にある複数の金属細管と、金属細管と連通するサージタンクとを備えるガス吹き込みノズルとを組み合わせて用いることにより、本願請求項1の発明にかかるガス吹き込みノズルと同様の構成を備え、かつ、同等の作用効果を奏するガス吹き込みノズルを構成することが可能になる。
【0035】
また、金属細管を、耐火物表面から炉内側先端までの距離がノズル有効長の14%以上となる深さに埋設するようにした場合、位置による耐火物の損耗差をより確実に利用して、耐用性をさらに向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の実施例にかかるガス吹き込みノズルを溶融金属精錬容器(精錬炉)の底部に組み込んだ状態を模式的に示す正面断面図である。
【図2】精錬炉の底部に組み込んだ本発明の実施例にかかるガス吹き込みノズルを拡大して示す正面断面図である。
【図3】本発明の実施例にかかるガス吹き込みノズルの使用の態様を示す図であり、第2ノズル部からのガスの通気がはじまった状態を示す正面断面図である。
【図4】本発明の実施例にかかるガス吹き込みノズルの使用の態様を示す図であり、第2ノズル部からのガス吹き込みに切り換えた後、第1ノズル部からのガスの吹き込みを停止し、吐出口近傍を不定形耐火物で埋めた状態を示す正面断面図である。
【図5】本発明の実施例にかかるガス吹き込みノズルの使用の態様を示す図であり、第1耐火物および第2耐火物が損耗して、最終的な寿命ラインに達した状態を示す正面断面図である。
【図6】本発明の実施例にかかるガス吹き込みノズルの構成を示す図であり、(a)は実施例1のガス吹き込みノズルの構成を示す平面図である、(b)は変形例を示す平面図、(c)はさらに他の変形例を示す平面図である。
【図7】本発明の実施例にかかるガス吹き込みノズルの、第1金属細管と第2金属細管との間の間隔(距離)を説明する図である。
【図8】本発明の実施例において、比較のために用意したガス吹き込みノズルの構成を示す正面断面図である。
【図9】本発明の他の実施例にかかるガス吹き込みノズルを溶融金属精錬容器(精錬炉)の底部に組み込んだ状態を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下に本発明の実施例を示して、本発明の特徴とするところをさらに詳しく説明する。
【実施例1】
【0038】
図1は本発明の一実施例(実施例1)にかかるガス吹き込みノズルを溶融金属精錬容器(精錬炉)の底部に組み込んだ状態を模式的に示す正面断面図、図2〜図5は、本発明の実施例1にかかるガス吹き込みノズルの構成および使用の態様を示す正面断面図である。また、図7は本発明の実施例1にかかるガス吹き込みノズルの第1金属細管と第2金属細管を上方から見た図である。
図1に示すように、この実施例1のガス吹き込みノズルAは、電気炉や転炉などの精錬炉1内の溶融金属2にガスを吹き込むためのガス吹き込みノズルである。このガス吹き込みノズルは、炉内側先端11aが開口しているとともに、炉内側先端11aが炉内に露出し、炉内の溶融金属2にガスを吹き込むことが可能な状態にある複数の第1金属細管11と、第1金属細管11と連通する第1サージタンク12と、第1金属細管11および第1サージタンク12を保護する第1耐火物13とを備える第1ノズル部10を備えている。
さらに、複数の第2金属細管21と、第2金属細管21と連通する第2サージタンク22と、第2金属細管21および第2サージタンク22を保護する第2耐火物23とを備える第2ノズル部20とを備えている。
そして、第2ノズル部20において、第2金属細管21は、炉内側先端21aが所定の深さに位置するように第2耐火物23中に埋設されているとともに、第2耐火物23中に埋設されることにより炉内側先端21aが閉塞した状態とされている。
【0039】
そして、第1ノズル部10および第2ノズル部20は、サポート耐火物31により一体に保持されている。この実施例1における、サポート耐火物31は、例えば、第1ノズル部10および第2ノズル部20の周囲を取り囲むように、複数のサポートれんがを一つのユニットに組んだ構造体である。なお、図6(a)に、このサポート耐火物31により、第1ノズル部10および第2ノズル部20を一体に保持した、本発明の実施例1にかかるガス吹き込みノズルAの平面構成(平面図)を示す。
【0040】
ただし、複数に分割された耐火物部材を組み合わせて、第1および第2ノズル部を一体に保持する構造体(サポート耐火物31)とすることも可能である。図6(b)はそのような例を示すものであり、複数に分割された平面形状が方形の耐火物部材31aを組み合わせて、同じく平面形状が保形のノズル部10およびノズル部20を一体に保持する構造体(サポート耐火物31)とした例を示している。なお、構造体の組み立ては、精錬炉内に施工する際に同時に行うことが可能である。
【0041】
また、図6(c)は、本発明のガス吹き込みノズルのさらに他の例を示すものであり、この例では、平面形状が方形の第1ノズル部10および第2ノズル部20を、同じく平面形状が方形のサポート耐火物31により接合して一体の構造体としている。
【0042】
なお、図6(a)では、第1ノズル部10,第2ノズル部20は平面形状が円形(すなわち、3次元形状では円柱形状)である場合を示し、図6(b)および図6(c)では、第1ノズル部10,第2ノズル部20は平面形状が略正方形(すなわち、3次元形状では四角柱形状)である場合を示しているが、本発明のガス吹き込みノズルにおいて、第1ノズル部10,第2ノズル部20の具体的な形状に特別の制約はない。
【0043】
なお、図1〜4に示すこの実施例1のガス吹き込みノズルAにおいて、第1ノズル部10の第1金属細管11と、第2ノズル部20の第2金属細管21とは、図7に示すように、最も近接している部分において、146.5mm(本発明において好ましい範囲は100〜1000mm)の間隔(図1のG)をおいて配設されている。なお、この場合、図7に示すように、第1ノズル部10の中央(中心)と第2ノズル部の中央(中心)の間隔は250mmとされている。
【0044】
また、第2ノズル部を構成する第2金属細管21は、第2耐火物23の表面から炉内側先端21aまでの距離(埋設深さ)(図1におけるD)がノズル有効長(=L(mm)−300mm)(図5)の14%以上となる深さに埋設されている。なお、後述の具体例では、第2耐火物の表面から炉内側先端までの距離(D)が145mm、ノズル有効長が約350mmで、耐火物表面から炉内側先端までの距離がノズル有効長の約41%とされている。
【0045】
また、第1サージタンク12と第2サージタンク22にはそれぞれ、ガス供給ライン3a,3bが接続され、各ガス供給ライン3a,3bは管継手4を介してガス配管5に接続されている(図2)。
【0046】
なお、第1ノズル部10と第2ノズル部20に同時にガス圧力をかけて運転し、切り換え時に第2ノズル部にだけガスを供給できるようにするためには、上述のように、第1および第2ノズル部10および20が、それぞれサージタンクを備えていることが必要であるが、場合によっては、1つのサージタンクを仕切り部材で仕切ることで対応することも可能である。
【0047】
また、各サージタンクには、ガス供給ライン(ガス導入用のガス配管)を接続する必要があるが、それぞれのサージタンクに取り付けられる配管は、湾曲あるいは曲折させることが可能であることから、精錬炉に設けられた既設のノズル設置用の穴を大きく改造したり、複雑な施工の手間をかけたりすることなく、サージタンクに容易にガス供給ライン(ガス導入用のガス配管)を接続することができる。
【0048】
したがって、本発明のガス吹き込みノズルは、既存の精錬炉に取り付けて、その耐用性を向上させることができる。
なお、第1サージタンク12と第2サージタンク22の具体的な構成や、各サージタンクへのガス供給のためのラインの具体的な接続態様などに特別の制約はない。
【0049】
また、第1および第2金属細管11,21を構成する材料としては、ステンレス鋼、普通鋼、耐熱鋼などを用いることが可能で、その中でもステンレス鋼が特に好ましい。
また、第1および第2金属細管11,21の内径は1〜4mm程度が好ましく、その肉厚は1〜2mm程度とすることが望ましい。これは、第1および第2金属細管11,21の内径が1mm以下であると、閉塞され、溶融金属へ十分なガス供給ができなくなるおそれがあり、内径が4mmを超えると第1および第2金属細管11,21内に溶融金属が差し込み、漏鋼するおそれがあることによる。
【0050】
また、第1および第2金属細管11,21には浸炭現象を抑制するために、例えば酸化物層を溶射したり、MgOなどのコーティング材をコーティングしたりするなどの公知の構成を採用することも可能である。
【0051】
また、金属細管を保護する耐火物としては、耐火性があれば特に制限されるものではなく、好ましくはMgO−C系、Al23−C系、Al23−SIC−C系、MgO−CaO−C系、MgO−Al23−C系などの炭素含有耐火物を用いることができる。炭素分として黒鉛を10〜25重量%含有するMgO−Cれんがを用いることがさらに好ましい。
【0052】
また、この炭素含有耐火物の製造方法は、従来の製造方法と同じでよく、耐火性骨材に炭素質原料を加え、必要に応じて金属粉末やその他の添加物を添加し、フェノール樹脂、ピッチ、タール等の炭素結合を形成する結合材を1〜15重量%、好ましくは3〜8重量%加えて混錬し、成形した後100〜500℃、好ましくは150〜400℃の熱処理をして不焼成れんがとする。
あるいは、成形後500〜1500℃、好ましくは800〜1300℃の還元雰囲気で焼成した焼成れんがとすることもできる。
【0053】
次に、上述のように構成されたガス吹き込みノズルAを配設した精錬炉1の溶融金属2にガスを吹き込む場合の操作について説明する。
まず、図2に示すように、第2ノズル部20を構成する閉塞した第2金属細管21にもガスの圧力をかけた状態で、第1ノズル部10を構成する第1金属細管11からガスを吹き込む。
【0054】
この状態で精錬炉1が継続して稼働すると、第1ノズル部10を構成する第1金属細管11および第1耐火物13が徐々に損耗し、それに伴って第2ノズル20を構成する第2耐火物23も、第1耐火物13よりも穏やかにではあるが損耗する。
そして、図3に示すように、第2金属細管21の、閉塞した炉内側先端21aの位置まで第2耐火物23の損耗が進むと、第2耐火物23により閉塞していた第2金属細管21の炉内側先端21が開口し、第2ノズル部20の第2金属細管21からのガスの吹き込みが始まる。このときの耐火物の損耗ラインが切り換え時の損耗ラインとなる。
【0055】
ここで、炉内側先端21aが閉塞していた第2金属細管21からのガスの吹き込み(通気)が開始したことは、例えば、圧力計器による圧力の検出や、精錬炉1内の残湯(溶融金属2)の動きを目視確認する方法などにより、容易かつ確実に検出することができる。
さらには、圧力計器の圧力低下を感知し、アラームが鳴るようシステム化すれば、より確実にガスの吹き込みが開始したこと検出することができる。
【0056】
第2金属細管21からの通気を確認した後、それまでガスを吹いていた第1ノズル部10の第1金属細管11へのガスの供給を停止する。
このときの第1金属細管11へのガスの供給を停止するにあたっては、例えば、第1金属細管11へのガス供給ライン3aへのガスの供給停止を行う弁(図示せず)を手動、あるいは、自動で操作して、ガス供給ライン3bへの供給は維持したまま、ガス供給ライン3aへのガス供給を停止することにより、容易に残厚のある第2ノズル部20の第2金属細管21からのガスの吹き込みに切り換えることができる。
【0057】
また、特に図示しないが、定期修理時に一時的にガスを止め、第1ノズル部10側へのガス供給ライン3aの配管を取り外し、管継手4側にキャップをすることによっても、短時間で切り換え作業を行うことができる。
【0058】
それから、図4に示すように、第1ノズル部10を構成する第1耐火物13の上面の、ガス吐出部近傍の凹み部を不定形耐火物7で埋める補修を行う。ただし、場合によっては、不定形耐火物で埋める補修はせずに、そのままにしておいてもよい。
【0059】
その後、第2ノズル部20の第2金属細管21からのガスの吹き込みを行うことにより、第1耐火物13および第2耐火物23が損耗して、いずれかの表面が最終的な寿命ラインに達するまで(図5参照)、精錬炉1を継続して稼働することが可能になる。
【0060】
なお、図5は、第2ノズル部20の第2耐火物23が、最終的な寿命ラインに達するまで損耗した状態を示している。なお、図5には、
(1)第1ノズル部10と第2ノズル部20の切り換え時の損耗ライン、
(2)第1ノズル部10と第2ノズル部20の切り換えを行わない場合の寿命ライン(従来のガス吹き込みノズルを用いた場合の寿命ライン)、
(3)第1ノズル部10と第2ノズル部20の切り換えを行った場合の寿命ライン、
(4)第1、第2耐火物13,23の全長(L)、
(5)位置による耐火物の損耗差(M)
を併せて示している。
【0061】
図5に示すように、この実施例1の場合のように、第1ノズル部10と第2ノズル部20の切り換えを行うことにより、切り換えを行った場合の最終的な寿命ラインと、切り換えを行わない場合の最終的な寿命ラインの差、すなわち損耗差(残厚差)Mを有効利用して、耐用寿命を延ばすことが可能になることがわかる。
【0062】
また、この実施例1のガス吹き込みノズルAを用いる場合、例えば、精錬炉1側の既設配管などは、市販の管継手で二手以上に分けることが可能で、そのまま利用することができるため、既存の設備を大きく改造することなくガス吹き込みノズルAを取り付けることが可能となり、大きな改造費用を必要とすることなく、耐用性を改善することができる。
【0063】
<具体的実施例>
上記実施例のように、図1〜5に示すように構成されたガス吹き込みノズルを精錬炉1に用いて耐用寿命を調べた。なお、耐用寿命を調べるためのガス吹き込みノズルAとしては、具体的には、第1ノズル部10として、第1耐火物13を貫通した内径1.5mm、肉厚1mmのステンレス鋼管からなる第1金属細管11を7本、第1サージタンク12に接続した構成のものを用いた。
【0064】
また、第2ノズル部20としては、内径1.5mm、肉厚1mmのステンレス鋼管からなり、長さが第1金属細管11よりも短い第2金属細管21を7本、炉内側先端21aの位置が、第2耐火物23の表面から145mmの深さ位置となるように第2サージタンク22に接続した構成のものを用いた。なお、この深さは、ノズル有効長(約350mm)の約41%となる。
また、第1ノズル部10を構成する第1金属細管11と、第2ノズル部20を構成する第2金属細管21の、最も近接している部分の間隔は146.5mmとなるようにした。
また、第1耐火物13および第2耐火物23としては、黒鉛15重量%含有するMgO−C耐火物を用いた。
【0065】
なお、比較のため、図8に示すような、実施例のガス吹き込みノズルAの第1ノズル部に相当する構成を備えたガス吹き込みノズルBを用意し、これを用いた場合の耐用寿命を調べた。
【0066】
比較例のガス吹き込みノズルBは、本発明における第2ノズル部を備えていない公知のガス吹き込みノズルであり、複数の金属細管41、サージタンク42、第1金属細管および第1サージタンクを保護する耐火物43としては、上記の実施例にかかるガス吹き込みノズルAにおいて用いたものと同じ材料からなるものを用いた。すなわち、比較例のガス吹き込みノズルBは、実施例の吹き込みノズルAにおける、第1ノズル部10に相当するものである。なお、比較例のガス吹き込みノズルBのノズル有効長は350mmである。なお、図8において、図1と同一符号を付した部分は同一または相当する部分を示す。
【0067】
上述の、実施例のガス吹き込みノズルAおよび比較例のガス吹き込みノズルBを、溶鋼量100tonの電気炉の炉底に設置し、アルゴンガスを流量100NL/minで吹き込んで、それぞれの耐用寿命を調べた。
【0068】
(試験結果)
試験の結果、比較例のガス吹き込みノズルの耐用寿命は700ch程度であった。
これに対し、実施例のガス吹き込みノズルでは、500chで第1ノズル部によるガス吹き込みから、第2ノズル部によるガス吹き込み切り換え、その後319chでノズル有効長に達した。
すなわち、比較例のガス吹き込みノズルを用いた場合には700ch程度であった耐用寿命が、実施例のガス吹き込みノズルを用いた場合には819chにまで延び、耐用寿命が約17%向上することが確認された。
【実施例2】
【0069】
図9は、本発明の他の実施例(実施例2)にかかるガス吹き込みノズルA1を溶融金属精錬容器(精錬炉)の底部に組み込んだ状態を模式的に示す図である。
この実施例2のガス吹き込みノズルA1は、ガス導入用の複数の金属細管51と、吹き込み前のガスをプールするサージタンク52と、ガス導入用の金属細管51とサージタンク52を保護する耐火物53とを備えており、金属細管51は、炉内側先端51aが所定の深さに位置するように耐火物53中に埋設され、炉内側先端51aが閉塞した構成を備えている。
すなわち、この実施例2のガス吹き込みノズルA1は、上記実施例1のガス吹き込みノズルAにおける第2ノズル部20と同様の構成を備えている。
なお、図9において、図1と同一符号を付した部分は同一または相当する部分を示す。
【0070】
この実施例2のガス吹き込みノズルA1は、図9に示すように、実施例1のガス吹き込みノズルAを構成する第1ノズル部10(図2〜4)と同様の構成を備えたガス吹き込みノズル、すなわち、金属細管61とサージタンク62と、耐火物63を備え、金属細管61が耐火物63を貫通した構造を有するガス吹き込みノズルCと組み合わせて精錬炉1の底部に配設することにより用いられるように構成されている。
【0071】
そして、図9に示すような構成の場合、ガス吹き込みノズルCが、上記実施例1のガス吹き込みノズルAにおける第1ノズル部10の機能を果たし、この実施例2のガス吹き込みノズルA1が、上記実施例1のガス吹き込みノズルAにおける第2ノズル部20の機能を果たす。その結果、実施例1の場合と同様の効果を得ることができる。
【0072】
なお、実施例2のように、ガス吹き込みノズルA1を、実施例1のガス吹き込みノズルAを構成する第1ノズル部10と同様の構成を備えたガス吹き込みノズルCと組み合わせて用いることにより、ガス吹き込みノズルA1(第2ノズル部に相当)とガス吹き込みノズルCとを任意の位置関係となるように、離れた位置に配設したり、隣接して配設したりすることが可能になり、配設態様の自由度を向上させることができる。
ただし、ガス配管および切り換え機構の簡略化の見地からは、隣接するように配設することが望ましい。
【0073】
なお、上記実施例1では、ガス吹き込みノズルからアルゴンガスを吹き込む場合を例にとって説明したが、ガスの種類に特別の制約はなく、本発明のガス吹き込みノズルは、窒素ガスなどの他のガスを吹き込む場合にも用いることが可能である。
【0074】
本発明はさらにその他の点においても上記実施例に限定されるものではなく、発明の範囲内において種々の応用、変形を加えることが可能である。
【符号の説明】
【0075】
1 精錬炉
2 溶融金属
3a,3b ガス供給ライン
4 管継手
5 ガス配管
7 不定形耐火物
10 第1ノズル部
11a 第1金属細管の炉内側先端
11 第1金属細管
12 第1サージタンク
13 第1耐火物
13a 第1耐火物の表面
20 第2ノズル部
21a 第2金属細管の炉内側先端
21 第2金属細管
22 第2サージタンク
23 第2耐火物
23a 第2耐火物の表面
31 サポート耐火物
31a 平面形状が方形の耐火物部材
41 比較用のガス吹き込みノズルBを構成する複数の金属細管
42 比較用のガス吹き込みノズルBを構成するサージタンク
43 比較用のガス吹き込みノズルBを構成する耐火物
51 実施例2のガス吹き込みノズルを構成する複数の金属細管
52 実施例2のガス吹き込みノズルを構成するサージタンク
53 実施例2のガス吹き込みノズルを構成する耐火物
51a 実施例2のガス吹き込みノズルを構成する金属細管の炉内側先端
61 ガス吹き込みノズルCを構成する金属細管
62 ガス吹き込みノズルCを構成するサージタンク
63 ガス吹き込みノズルCを構成する耐火物
A ガス吹き込みノズル
A1 実施例2のガス吹き込みノズル
B 比較用のガス吹き込みノズル
C 第1ノズル部に相当するガス吹き込みノズル
G 第1金属細管と第2金属細管の間隔
D 第2耐火物の表面から炉内側先端までの距離(埋設深さ)
L 第1、第2耐火物の全長
M 位置による耐火物の損耗差

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス導入用の複数の金属細管と、吹き込み前のガスをプールするサージタンクと、前記金属細管および前記サージタンクを保護する耐火物とを備えた、炉内の溶融金属にガスを吹き込むためのガス吹き込みノズルであって、
炉内側先端が開口しているとともに、前記炉内側先端が炉内に露出し、炉内の溶融金属にガスを吹き込むことが可能な状態にある複数の第1金属細管と、前記第1金属細管と連通する第1サージタンクと、前記第1金属細管および前記第1サージタンクを保護する第1耐火物とを備える第1ノズル部と、
炉内側先端が所定の深さに位置するように耐火物中に埋設され、炉内側先端が閉塞した複数の第2金属細管と、前記第2金属細管と連通する第2サージタンクと、前記第2金属細管および前記第2サージタンクを保護する第2耐火物とを備える第2ノズル部と
を具備し、
前記第2ノズル部にガスの圧力をかけた状態で、前記第1ノズル部からのガスの吹き込みが継続して行われ、前記第2耐火物中に埋設された前記第2金属細管の前記炉内側先端に達するまで前記第2耐火物の損耗が進むと、閉塞していた前記第2金属細管の前記炉内側先端が開口し、前記第2金属細管からのガスの吹き込みが開始するように構成されていること
を特徴とするガス吹き込みノズル。
【請求項2】
前記第1ノズル部を構成する前記第1金属細管と、前記第2ノズル部を構成する前記第2金属細管とが、最も近接している部分において、100〜1000mmの間隔をおいて配設されていることを特徴とする請求項1記載のガス吹き込みノズル。
【請求項3】
前記第2ノズル部を構成する前記第2金属細管は、前記第2耐火物表面から前記炉内側先端までの距離がノズル有効長の14%以上となる深さに埋設されていることを特徴とする請求項1または2記載のガス吹き込みノズル。
【請求項4】
ガス導入用の複数の金属細管と、前記複数の金属細管と連通し、吹き込み前のガスをプールするサージタンクと、前記金属細管および前記サージタンクを保護する耐火物とを備えた、炉内の溶融金属にガスを吹き込むためのガス吹き込みノズルであって、
前記金属細管は、炉内側先端が所定の深さに位置するように耐火物中に埋設され、前記炉内側先端が閉塞していること
を特徴とするガス吹き込みノズル。
【請求項5】
前記金属細管は、前記耐火物表面から前記炉内側先端までの距離がノズル有効長の14%以上となる深さに埋設されていることを特徴とする請求項4記載のガス吹き込みノズル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−17482(P2012−17482A)
【公開日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−153958(P2010−153958)
【出願日】平成22年7月6日(2010.7.6)
【出願人】(000001971)品川リフラクトリーズ株式会社 (112)
【Fターム(参考)】