説明

ガス噴射チューブの保持具、ガス噴射チューブの取付け部及び携帯型ガス噴射清掃器具

【課題】 携帯型ガス噴射清掃器具のガス噴射チューブを金属製バルブ本体内に着脱自在に、かつ、使用中に飛出すことのないように取付け可能なガス噴射チューブの保持具、ガス噴射チューブの取付け部及び携帯型ガス噴射清掃器具を提案する。
【解決手段】 小型ガスカートリッジに接続される減圧器本体のガス吐出開口部の内面に取付けられるガス噴射チューブ保持具であって、
前記ガス噴射チューブ保持具は、保持具本体と支持突起からなり、
前記保持具本体は、その内部に長さ方向に延びるガス噴射チューブの挿入部を有するものであり、
前記支持突起は、前記保持具本体の長さ方向の中間部に設けられ、前記保持具本体内に挿入されるガス噴射チューブを弾性的に把持するものであり、かつ、
前記保持具本体が前記支持突起とともに円周方向に分割されてなるものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、自動改札機やATMの内部の精密機器部などをガスパージにより清掃するのに用いられるガス噴射清掃装置のガス噴射チューブの保持具、ガス噴射チューブの取付け部、さらには、携帯型ガス噴射清掃器具に関する。ここに「ガス噴射チューブ」とは、例えば、小型炭酸ガスカートリッジから調圧バルブを介して放出される炭酸ガスを清掃箇所など所定の箇所に向けて噴射するために用いられる外径:2〜4mm程度、内径:0.5〜1mm程度、長さ:50〜200mm程度の可撓性のあるプラスティックチューブをいう。
【背景技術】
【0002】
複写機などのリサイクル部品を洗浄するため、液化炭酸ガスをドライスノー化して用いるドライスノー噴射洗浄装置が知られている(特許文献1)。しかしながら、このようなドライスノー噴射洗浄装置は大掛かりであり、一定の箇所に固定して使用されるものであり、自動改札機やATMなどのような比較的小型で狭隘な空間に収納された電子機器などの精密機器部を移動しながらガスパージして清掃するのには適当ではない。このような箇所のガスパージには、小型ガスボンベを用い、炭酸ガスなどを目的の箇所に向かって噴出する携帯式のガス噴射掃器具やエヤゾル式の清掃器具が広く用いられている。
【0003】
このような器具として、パージガス源として容量:100ml未満、圧力:6MPa程度の小型炭酸ガスカートリッジを用い、減圧機構を介して取付けられたガス噴射ノズル(オリフィス)に、ガス噴射チューブを取付けて、パージガスを清掃箇所に向けて的確に吹付けるようにした携帯型ガス噴射清掃器具がある。
【0004】
このようなガス噴射清掃器具は、具体的には、図7に示されているように、小型炭酸ガスカートリッジ1に減圧バルブ2を装着し、カットノズル4を介して減圧バルブの本体3内に炭酸ガスを流入させ、操作ボタン5を押圧することによって減圧されたガスを開口部7に導くようになっている。開口部7には、オリフィス6とガス噴射チューブ8が取付けられており、これによって、オリフィス6から噴出した炭酸ガスは、ガス噴射チューブ8を通して所定のパージ箇所に吹付けられるようになっている。
【0005】
しかしながら、上記減圧バルブ2は、その本体3が亜鉛合金製であるため、開口部7のチューブ取付け部9にガス噴射チューブ8を取付けるに当たっては、そこに1°程度のテーパ(θ)を持たせ、ここにポリプロピレン製のガス噴射チューブ8を押込んで、その弾性変形により固定するようになっている。しかしながら、こうような方法でガス噴射チューブ8を取付けると、清掃作業中にチューブ先端が機器などと接触することなどにより、ガス噴射チューブ8が外方(矢印方向)に移動し、それにより固定力が急激に減少して外れやすくなるという問題がある。また、ガス噴射チューブ8の外径にバラツキがあると、図8に示すように、ガス噴射チューブ8をオリフィス6に接するまで押込むことができず、噴射ガスのガス圧を受けて外方に飛出してしまうという事故が起こることがある。かかる事故が発生すると、清掃作業を一旦中断し、精密機器部が破損していないかどうかを点検したり、飛出した噴出ノズルを探し出したりするなど、大掛かりな作業を強いられることになる。このようなチューブの固定手段として、特許文献2には、可撓性ワッシャーを利用したチューブ継手が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−177116号公報
【特許文献2】特開平10−61842号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、前記特許文献2に記載のチューブ継手を利用して機器清掃用の携帯型ガス噴射清掃器具用にガス噴射チューブを取付けようとすると、装置自体が大掛かりになってコスト高になるばかりでなく、装置構成が複雑であるため、本発明のような小型の携帯型ガス噴射清掃器具用のガス噴射チューブの保持具として用いることが困難である。
【0008】
本発明は、上記の事情に照らして、簡便な機構によってガス噴出チューブを携帯型ガス噴射清掃器具の金属製バルブ本体内にガス噴射チューブを着脱自在に、かつ、使用中に飛出すことのないように取付け可能にするガス噴射チューブの保持具、ガス噴射チューブの取付け部さらに携帯型ガス噴射清掃器具を提案するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、小型ガスカートリッジに接続される減圧器本体のガス吐出開口部の内面に取付けられるガス噴射チューブ保持具であって、
前記ガス噴射チューブ保持具は、保持具本体と支持突起からなり、
前記保持具本体は、その内部に長さ方向に延びるガス噴射チューブの挿入部を有するものであり、
前記支持突起は、前記保持具本体の長さ方向の中間部に設けられ、前記保持具本体内に挿入されるガス噴射チューブを弾性的に把持するものであり、かつ、
前記保持具本体が前記支持突起とともに円周方向に分割されてなるものである。
【0010】
上記ガス噴射チューブ保持具は、オリフィスと一体化されてなるものとすることができる。
【0011】
上記ガス噴射チューブ保持具を減圧器本体のガス吐出開口部に固定してガス噴射チューブの取付け部とすることができる。
【0012】
また、上記ガス噴射チューブの保持具を、その本体を、その後端部において半径方向中心部に開口部を有する皿状体と一体化させたものとすることができ、かかるガス噴射チューブの保持具オリフィスによってガス吐出開口部に固定してガス噴射チューブの取付け部とすることができる。
【0013】
上記ガス噴射チューブの取付け部を有するものとして携帯型ガス噴射清掃具を構成することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明により、携帯型ガス噴射清掃器具にセットして用いるガス噴射チューブを金属製バルブ本体内に着脱自在に、かつ、使用中に飛出すことのないように取付け可能にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係るガス噴射チューブ保持具及びそれをセットした携帯型ガス噴射清掃器具の全体構成を示す断面図である。
【図2】ガス噴射チューブの取付け部の組付け状態を示す断面図である。
【図3】ガス噴射チューブ保持具及びガス噴射チューブの減圧バルブ本体への組付け要領を示す断面図である。
【図4】オリフィスと一体化されたガス噴射チューブ保持具の斜視図である。
【図5】本発明を適用した場合の噴射ガスの流れ状態の説明図である。
【図6】本発明の他の実施形態に係る断面図である。
【図7】従来のガス噴射チューブの取付け部を有する携帯型ガス噴射清掃器具の全体構成を示す断面図である。
【図8】従来の携帯型ガス噴射清掃器におけるガス噴射チューブの飛出し機構の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1は、本発明に係るガス噴射チューブ保持具及びそれをセットした携帯型ガス噴射清掃器具の全体構成を示す断面図である。携帯型ガス噴射清掃器具は、すでに、従来例として説明したのと同様に、小型炭酸ガスカートリッジ1に減圧バルブ2を装着し、カットノズル4を介して減圧バルブの本体3内に炭酸ガスを流入させ、操作ボタン5を押圧することによって減圧されたガスを開口部7に導くようになっている。開口部7には、オリフィス6とガス噴射チューブ8が取付けられており、これによって、オリフィス6から噴出した炭酸ガスは、ガス噴射チューブ8を通して所定のパージ箇所に吹付けられるようになっている。
【0017】
本発明においては、開口部7に図2〜4に示すガス噴射チューブ保持具10がセットされており、このガス噴射チューブ保持具10内にガス噴射チューブ8が挿入・支持されるようになっている。
【0018】
ガス噴射チューブ保持具10は、図3及び4に示すように、外郭が、全体としてやや先細りのほぼ円筒形の保持具本体11に支持突起14を設けたものとして構成されており、この保持具本体11の内部がガス噴射チューブの挿入部となっている。一方、支持突起14は、保持具本体11の長さ方向の中間部、好ましくは、ほぼ中央部に設けられおり、これによってガス噴射チューブ保持具10を減圧バルブ本体3の開口部7にセットできるようになっている。
【0019】
支持突起14は、その直径方向に弾性的に変形することによってガス噴射チューブ保持具10の本体11を支持できるようになっている。したがって、上記のように構成されたガス噴射チューブ保持具10を開口部にセットすると保持具本体11内に挿入されたガス噴射チューブ8をその側面から弾性的変形により僅かに押圧しながら保持することができるようになる。さらに、本発明では、支持突起14が、ガス噴射チューブ保持具10の本体11の長さ方向の中間部に置かれているので、ガス噴射チューブ8に与えられる弾性的変形による保持力は、支持突起14の配置位置で強く現れることになる。特に、その配置位置を長さ方向のほぼ中央部に置いたときは、ガス噴射チューブ8をその側面からバランスよく支持することができるようになる。その結果、ガスパージ作業中にガス噴射チューブ8の先端が、清掃対象である、例えば自動改札機の各種部材などに当たっても、ガス噴射チューブ8が容易に外れることがなくなる。
【0020】
上記構成に加えて、本発明のガス噴射チューブ保持具10は、図3,4に示されているように、保持具本体11が支持突起14とともに円周方向に分割されている。具体的には、分割された保持具本体11の各セグメントの中央部近傍に支持突起14が配置され、これらを全体として円筒形に組上げて、オリフィス6と一体化させている。なお、この一体化は、図3,4に示されているように、前記保持具本体11の後端部とオリフィス6の先端部を一体化させることによって行われている。
【0021】
上記構成を取ることにより、従来例(図8)に示すような飛出し力が加わることが防止できる。すなわち、上記のように、保持具本体11が円周方向に分割した場合においては、図5に示すように、ガス噴射チューブ8がオリフィス6と離間してセットされていても、オリフィス6から噴出するガスは、矢印で示されるように、一部がガス噴射チューブ8内を流れるとともに、一部が前記分割面によって作られるスリット16を通して流れることになり、ガス噴射チューブ8を背面から押す力は極めて小さくなることになる。
【0022】
本発明のガス噴射チューブ保持具10を減圧バルブ本体3の開口部7にセットするには、すでに図3,4によって説明したように、ガス噴射チューブ保持具10とオリフィス6とを一体化させ、オリフィス6の脚部を減圧バルブ本体3の開口部7の最奥部7b(ガス流出路)に嵌合するようにするのが、製造工程の効率化の点から好ましい。なお、オリフィス6とガス噴射チューブ保持具10は、これらを一体の部品として射出成形することにより行うのがよい。
【0023】
図3は、このようなオリフィス6と一体化されたガス噴射チューブ保持具10を減圧バルブ本体3の開口部7にセットする手順を示している。ガス噴射チューブ8及びガス噴射チューブ保持具10は、本例では、ともにポリプロピレン製であり、減圧バルブ本体3の開口部7の最奥部7bにオリフィス部が嵌合され、開口部前面側7aにガス噴射チューブ保持具10の支持突起14が当たるようにセットされる。この状態で、ガス噴射チューブ8を挿入すると、先に示したように、支持突起14により保持具本体11に与えられる半径方法の弾性的変形により、ガス噴射チューブ8が確実に把持されることになる。
【0024】
なお、本発明の効果は、上記のとおり、支持突起14を保持具本体11の長さ方向の中間部に設けることによって得られるものであるが、本発明をより実施しやすくするためには、例えば、図6に示されているように、保持具本体11の先端部を凸リング状の挿入口リング12に構成するとともに、その内部をすり鉢状の挿入口13とし、ガス噴射チューブ8が挿通しやすくするのがよい。また、上記挿入口リング12の外周側において本体3の開口部7の内面側に係止できるようにすれば、ガス噴射チューブ保持具10の全体の安定を図ることができる。
【0025】
図6には、本発明の変形実施形態が示されている。この例では、ガス噴射チューブ保持具10aとオリフィス6bが別異の部品として製作され、これらが減圧バルブ本体3の開口部7に組込まれるようになっている。この場合において、ガス噴射チューブ保持具の本体は、その後端部において半径方向中心部に開口部22を有する皿状部21と一体化されたものとなっており、一方、オリフィス6bはその先端に係止部23を有するものとなっている。
【0026】
これらガス噴射チューブ保持具10とオリフィス6bを減圧バルブ本体3の開口部7に組込むに当たっては、図6に示すように、オリフィス6bをガス噴射チューブ保持具本体の開口部22に挿入し、ここにオリフィス6bの係止部23を係合させた状態で減圧バルブ本体3の開口部7にセットすればよい。この例においても、ガス噴射チューブ8の挿入と保持がすでに述べた機構により行われ、使用中の飛出し事故が防止できることに変わりはない。
【0027】
本発明により、携帯型ガス噴射清掃器具の使用に当たり、ガス噴射チューブは極めて安定して保持され、従来問題となっていたガス噴射チューブの飛出し事故が防止できる。また、本発明で用いるガス噴射チューブ保持具が弾性的変形によりガス噴射チューブを支持・固定するものであるので、ガス噴射チューブの直径公差を大きくとってもガス噴射チューブ保持具内への安定的挿入・支持が可能になる。
【0028】
なお、上記実施形態の説明においては、パージガスとして炭酸ガスを利用する場合を取り上げたが、ガス種はこれに限られるものではなく、例えば、窒素ガス等も利用できる。また、本発明のガス噴射チューブ保持具は、携帯型ガス噴射器具に広く利用することができ、例えば、エアゾールを含む気液混合物の噴射部にも適用可能である。
【符号の説明】
【0029】
1:小型炭酸ガスカートリッジ
2:減圧バルブ
3:減圧バルブ本体
4:カットノズル
5:操作ボタン
6:オリフィス
7:開口部
8:ガス噴射チューブ
10:ガス噴射チューブ保持具
11:保持具本体
12:挿入口
14:支持突起
16:スリット
21:皿状部
22:開口部
23:係合部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
小型ガスカートリッジに接続される減圧器本体のガス吐出開口部の内面に取付けられるガス噴射チューブ保持具であって、
前記ガス噴射チューブ保持具は、保持具本体と支持突起からなり、
前記保持具本体は、その内部に長さ方向に延びるガス噴射チューブの挿入部を有するものであり、
前記支持突起は、前記保持具本体の長さ方向の中間部に設けられ、前記保持具本体内に挿入されるガス噴射チューブを弾性的に把持するものであり、かつ、
前記保持具本体が前記支持突起とともに円周方向に分割されてなるものであることを特徴とするガス噴射チューブ保持具。
【請求項2】
前記ガス噴射チューブ保持具が、オリフィスと一体化されてなるものであることを特徴とする請求項1に記載のガス噴射チューブの保持具。
【請求項3】
請求項2に記載のガス噴射チューブの保持具を減圧器本体のガス吐出開口部に固定してなることを特徴とするガス噴射チューブの取付け部。
【請求項4】
ガス噴射チューブ保持具の本体が、その後端部において半径方向中心部に開口部を有する皿状体と一体化されたものであることを特徴とする請求項1記載のガス噴射チューブの保持具。
【請求項5】
請求項4に記載のガス噴射チューブの保持具を、オリフィスによってガス吐出開口部に固定してなることを特徴とするガス噴射チューブの取付け部。
【請求項6】
請求項3又は5に記載のガス噴射チューブの取付け部を有することを特徴とする携帯型ガス噴射清掃装置装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2011−78907(P2011−78907A)
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−233248(P2009−233248)
【出願日】平成21年10月7日(2009.10.7)
【出願人】(391030099)株式会社旭製作所 (15)
【出願人】(000219934)エア・ウォーター・ゾル株式会社 (17)
【Fターム(参考)】