ガス検出装置
【課題】人間の顔を光源として利用し、光源を用いずにエタノールガス濃度を検出する。
【解決手段】人間の顔から放射された赤外線との相互作用によって生じる吸収スペクトルであって水蒸気による吸収スペクトルを含む波長帯域の赤外線を透過する水蒸気用光学フィルタ50、水蒸気用光学フィルタ50を透過した赤外線を電気信号に変換する水蒸気用光電変換素子52、水蒸気用光電変換素子52で変換された電気信号とエタノールセンサで検出されたエタノールガスの濃度とに基づいて、エタノールガスの濃度を検出する。
【解決手段】人間の顔から放射された赤外線との相互作用によって生じる吸収スペクトルであって水蒸気による吸収スペクトルを含む波長帯域の赤外線を透過する水蒸気用光学フィルタ50、水蒸気用光学フィルタ50を透過した赤外線を電気信号に変換する水蒸気用光電変換素子52、水蒸気用光電変換素子52で変換された電気信号とエタノールセンサで検出されたエタノールガスの濃度とに基づいて、エタノールガスの濃度を検出する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス検出装置にかかり、特に、運転者の呼気から精度よくエタノールの濃度を検出することができるガス検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、呼気中エタノールの検出方法として、酸化物半導体式、燃料電池式、赤外吸収式、及び接触燃焼式等が知られており、ドライバのエタノール濃度を検出してエンジン始動を停止する技術等も提案されている(特許文献1〜特許文献5)。
【0003】
血中エタノールの非侵襲測定方法として、皮膚組織赤外光吸収方法等も提案されているが、体内に取り込まれたエタノールが血中に到達するまで時間遅れが発生するため、検出遅れが発生するという問題がある。
【0004】
また、高精度で赤外線吸収を利用した非分散形赤外線分析計として、ニューマチック赤外検出器も提案されている(非特許文献1)。
【特許文献1】特開2004−212217号公報
【特許文献2】特開2004−279228号公報
【特許文献3】特開2005−296252号公報
【特許文献4】特開平6−197897号公報
【特許文献5】特開2007−147592号公報
【非特許文献1】Readout HORIBA Technical Reports No.7 July 1993
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来の技術では、被験者から離れた位置でエタノール濃度を検出する場合には、呼気が大気中で任意に希釈され、精度良くエタノールガスの濃度を検出することができない、という問題があった。
【0006】
また、赤外線吸収を利用した上記従来の技術では、赤外線ランプ等の光源を装置に組み込む必要がある、という問題があった。
【0007】
本発明は、上記問題点を解消するためになされたもので、呼気が大気中で希釈されても精度良くエタノールガスの濃度を検出することができるガス検出方法及びガス検出装置を提供することを第1の目的とする。
【0008】
また、本発明は、人間の顔を光源として利用することにより、ランプ等の光源を用いることなく、エタノールの濃度を検出することができるガス検出方法及びガス検出装置を提供することを第2の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記第1の目的を達成するために、本発明のガス検出方法は、エタノールガスの濃度に関する物理量を検出すると共に、酸素からなる補正ガスの濃度に関する物理量を検出し、検出した補正ガスの濃度に関する物理量とエタノールガスの濃度に関する物理量とに基づいて、呼気中のエタノールガスの濃度に関する物理量を検出するようにしたものである。
【0010】
また、本発明のガス検出装置は、エタノールガスの濃度に関する物理量を検出するエタノール検出手段と、酸素からなる補正ガスの濃度に関する物理量を検出する補正ガス検出手段と、検出した補正ガスの濃度に関する物理量とエタノールガスの濃度に関する物理量とに基づいて、呼気中のエタノールガスの濃度に関する物理量を検出する濃度検出手段と、を含んで構成したものである。
【0011】
本発明のガス検出方法及びガス検出装置によれば、エタノールの濃度に関する物理量を検出すると共に、酸素からなる補正ガスの濃度に関する物理量を検出し、検出した補正ガスの濃度に関する物理量とエタノールの濃度に関する物理量とに基づいて、呼気中のエタノールガスの濃度に関する物理量を検出するようにしているので、呼気が大気中で希釈されても精度良くエタノール濃度に関する物理量を検出することができる。
【0012】
上記の発明の補正ガス検出手段を構成する補正ガスの濃度を検出するガスセンサとしては、固体電解質を用いて酸素濃度を検出する酸素センサを用いることができる。
【0013】
上記の発明において使用する補正ガス(例えば、水蒸気、二酸化炭素、または酸素)の長所及び短所を以下の表1に基づいて説明する。
【0014】
【表1】
【0015】
水蒸気濃度は、周囲の温度や降雨により変化する大気中の湿度によって変化し、大気中濃度(ベースライン)が安定しない欠点がある。それに対し、二酸化炭素の大気中濃度は0.04%の一定値である。同様に、酸素の大気中濃度は21%のー定値である。従って、大気中濃度の安定性の観点からは、二酸化炭素または酸素を用いるのが好ましい。
【0016】
また、車室内の二酸化炭素は、搭乗者がいなければ大気中と同様であるが、搭乗者がいれば二酸化炭素濃度は徐々に増加する。この理由は、人の呼気には大気中の約100倍の二酸化炭素が含まれているためである。したがって、少人数が乗車している場合には問題は少ないが、閉め切った車室内に多人数が乗車した場合には、二酸化炭素のベースラインは増加し安定しない場合がある。また、窓を開ける等の行為により大気を導入すると二酸化炭素濃度は減少する。
【0017】
一方、車室内の酸素濃度は、乗車人数の如何に関わらずほぼ一定である。人の呼気中の酸素濃度は約16%であり、大気中より約5%低いが、二酸化炭素の濃度差に比べて小さく、多人数が乗り込んで長時間車室内にいても、車室内の酸素濃度は大気中と事実上大差ない。
【0018】
水蒸気濃度は、車室内の乗員に応じて変化する。
【0019】
従って、車室内の濃度安定性の観点からは、二酸化炭素または酸素を用いるのが好ましく、酸素を用いるのがより好ましい。
【0020】
さらに、標高が高い高地では、大気圧が低くなるため、アルコール濃度を正確に検出するためには、気圧補正が必要となる。通常は、気圧センサによって気圧を検出し、アルコール濃度の気圧補正を行うことになる。一方、大気中の酸素分圧は、大気圧と相関するため、気圧センサに代えて酸素センサを用いて気圧補正を行うことが可能である。
【0021】
したがって、気圧補正を行う必要がある場合には、補正ガスとして酸素ガスを用いるのが好ましい。
【0022】
上記の理由から、上記の発明では、補正ガスとして酸素ガスを用いている。
【0023】
大気圧補正された呼気中のエタノールガスの濃度に関する物理量を検出するガス検出装置は、エタノールガスの濃度に関する物理量を検出するエタノール検出手段と、酸素からなる補正ガスの濃度に関する物理量を検出する補正ガス検出手段と、検出した補正ガスの濃度に関する物理量とエタノールガスの濃度に関する物理量とに基づいて、前記検出した補正ガスの濃度に基づいて大気圧補正された呼気中のエタノールガスの濃度に関する物理量を検出する濃度検出手段と、を含んで構成することができる。
【0024】
また、大気圧補正された呼気中のエタノールガスの濃度に関する物理量を検出するガス検出方法では、エタノールガスの濃度に関する物理量を検出すると共に、酸素からなる補正ガスの濃度に関する物理量を検出し、検出した補正ガスの濃度に関する物理量とエタノールガスの濃度に関する物理量とに基づいて、前記検出した補正ガスの濃度に基づいて大気圧補正された呼気中のエタノールガスの濃度に関する物理量を検出することができる。
【0025】
なお、補正ガスとして水蒸気または二酸化炭素を用いることも可能であるので、以下で説明する発明では、補正ガスとして水蒸気または二酸化炭素を用いるか、または補正ガスとして水蒸気、二酸化炭素、及び酸素の少なくとも1種のガスを用いている。
【0026】
補正ガスとして水蒸気、二酸化炭素、及び酸素の少なくとも1種のガスを用いる発明のガス検出装置は、エタノールガスの濃度に関する物理量を検出するエタノール検出手段と、水蒸気、二酸化炭素、及び酸素の少なくとも1種のガスからなる補正ガスの濃度に関する物理量を検出する補正ガス検出手段と、検出された補正ガスの濃度に関する物理量、または検出した補正ガスの濃度に関する物理量及びエタノールガスの濃度に関する物理量から呼気周波数成分を通過させる呼気フィルタと、前記呼気フィルタを通過した補正ガス濃度に関する物理量と前記エタノール検出手段で検出されたエタノールガスの濃度に関する物理量、または前記呼気フィルタを通過した補正ガス濃度に関する物理量と前記呼気フィルタを通過したエタノールガスの濃度に関する物理量と基づいて、呼気中のエタノールガスの濃度に関する物理量を検出する濃度検出手段と、を含んで構成したものである。
【0027】
本発明では、呼気周波数成分の信号を通過させる後述する例えばハイパスフィルタ等で構成された呼気フィルタを用いているので、呼気周期に応じて検出信号が変動する場合においても精度良くエタノールの濃度に関する物理量を検出することができる。
【0028】
上記の発明の補正ガス検出手段は、人間の顔から放射された赤外線との相互作用によって生じる吸収スペクトルであって二酸化炭素のC−O伸縮振動による吸収スペクトルを含む所定波長帯域の赤外線を透過する二酸化炭素用光学フィルタと、前記二酸化炭素用光学フィルタを透過した赤外線を電気信号に変換する二酸化炭素用変換手段とを含む二酸化炭素検出手段、人間の顔から放射された赤外線との相互作用によって生じる吸収スペクトルであって水蒸気による吸収スペクトルを含む所定波長帯域の赤外線を透過する水蒸気用光学フィルタと、前記水蒸気用光学フィルタを透過した赤外線を電気信号に変換する水蒸気用変換手段とを含む水蒸気検出手段、水蒸気、二酸化炭素、及び酸素の少なくとも1種のガスからなる補正ガスの濃度に関する物理量を検出するガスセンサ、赤外線を放射する光源と赤外線検出器とで構成された水蒸気センサ、または赤外線を放射する光源と赤外線検出器とで構成された二酸化炭素センサで構成することができる。
【0029】
補正ガスの濃度を検出するガスセンサとしては、酸化物半導体または高分子膜静電容量を用いて水蒸気の濃度を検出する水蒸気センサ、固体電解質を用いて二酸化炭素の濃度を検出する二酸化炭素センサ、または、固体電解質を用いて酸素濃度を検出する酸素センサを用いることができる。
【0030】
上記の赤外線を放射する光源としては、半導体レーザ、黒体炉、またはセラミックヒータ等を用いた光源を用いることができ、赤外線検出器としてはボロメータ、SOIダイオード、サーモパイル、または強誘電型の検出器を用いることができる。
【0031】
赤外線を用いて水蒸気の濃度に関連する物理量を検出する場合には、エタノールガスの濃度に関する物理量を検出するエタノール検出手段と、人間の顔から放射された赤外線との相互作用によって生じる吸収スペクトルであって水蒸気による吸収スペクトルを含む所定波長帯域の赤外線を透過する水蒸気用光学フィルタと、前記水蒸気用光学フィルタを透過した赤外線を電気信号に変換する水蒸気用変換手段とを含む水蒸気検出手段、または赤外線を放射する光源と赤外線検出器とを含む水蒸気センサで構成され、水蒸気の濃度に関する物理量を補正ガスの濃度に関する物理量として検出する補正ガス検出手段と、検出した補正ガスの濃度に関する物理量とエタノールガスの濃度に関する物理量とに基づいて、呼気中のエタノールガスの濃度に関する物理量を検出する濃度検出手段と、を含んで構成するようにしてもよい。
【0032】
また、上記で説明した各発明のエタノール検出手段は、人間の顔から放射された赤外線との相互作用によって生じる吸収スペクトルであってエタノールのC−O伸縮振動による吸収スペクトルを含む所定波長帯域の赤外線を透過するエタノール用光学フィルタと、前記エタノール用光学フィルタを透過した赤外線を電気信号に変換するエタノール用変換手段とを含むエタノール検出器、酸化物半導体を用いてエタノールガスの濃度に関する物理量を検出するガスセンサ、または赤外線を放射する光源と赤外線検出器とで構成されたアルコールセンサで構成することができる。
【0033】
アルコールセンサの赤外線を放射する光源としては、上記と同様に半導体レーザ、黒体炉、またはセラミックヒータ等を用いた光源を用いることができ、赤外線検出器としては上記と同様にボロメータ、SOIダイオード、サーモパイル、または強誘電型の検出器を用いることができる。
【0034】
そして、上記の各発明の濃度検出手段は、以下の(1)式〜(4)式のいずれか1つの式に従って呼気中のエタノールガスの濃度、または濃度に比例した値を濃度に関する物理量として検出するようにすることができる。
【0035】
エタノールガスの濃度に関する物理量=(Δa/Δb) ・・・(1)
エタノールガスの濃度に関する物理量=(Δa/Δb)・BG ・・・(2)
エタノールガスの濃度に関する物理量=(Δa/Δb)・(BG−AG)
+[EtOH]base・・・(3)
エタノールガスの濃度に関する物理量=Δa・Di+[EtOH]base・・・(4)
ただし、Δaは前記エタノール検出手段で検出されたエタノールガスの濃度に関する物理量の変化量、変化率、または所定時間内の積分値、Δbは前記補正ガス検出手段で検出された補正ガスの濃度に関する物理量の変化量、変化率、または所定時間内の積分値、BGは予め求められた呼気中補正ガスの濃度に関する物理量、AGは前記補正ガス検出手段で検出された大気中補正ガスの濃度に関する物理量、[EtOH]baseは前記エタノール検出手段で検出された大気中エタノールガスの濃度に関する物理量、Diは以下の式で表わされる呼気希釈倍率である。
【0036】
Di=(BG−AG)/Δb ・・・(5)
上記(1)式及び(2)式を用いることにより、大気に対して呼気の量が充分小さいときのエタノールガスの濃度に関する物理量を精度良く検出することができる。
【0037】
また、上記(3)式及び(4)式では、大気に対する呼気の量を考慮しているので、呼気が希釈される場合のみならず呼気が希釈されずに直接検出手段に接触する場合においてもエタノールガスの濃度に関する物理量を精度良く検出することができる。
【0038】
上記第2の目的を達成するために本発明のガス検出方法は、人間の顔から放射された赤外線との相互作用によって生じる吸収スペクトルであってエタノールのC−O伸縮振動による吸収スペクトルを含む所定波長帯域の赤外線の強度をエタノールの赤外線吸収強度として検出し、検出したエタノールの赤外線吸収強度の大きさに基づいて、呼気中のエタノールガスの濃度に関する物理量を検出することを特徴としている。
【0039】
本発明者等は以下の点に着目し、人間の顔を光源として人間の顔から放射された赤外線を用いることにより本発明に到達したものである。人間の顔からの赤外線放射のピークは、27℃で9.66μm、37℃で9.35μmであり、エタノールのC−O伸縮振動による吸収スペクトルの中心波長9.5μmと略同一の波長帯である。また、人間の顔から放射される赤外線の方向と呼気吹き出し方向とが同じであり、呼気中のエタノールガスと人間の顔から放射された赤外線とが相互作用する。
【0040】
このため、本発明では、人間の顔を光源として用い、人間の顔から放射された赤外線との相互作用によって生じる吸収スペクトルであって、例えば呼気中のエタノールのC−O伸縮振動による吸収スペクトルを含む所定波長域、好ましくはこの吸収スペクトルを中心波長とする所定波長域の赤外線を抽出し、この赤外線の強度から呼気中のエタノールガスの濃度に関する物理量を検出する。
【0041】
本発明では、人間の顔を光源として用いているため、赤外線ランプ等の光源を用いることなく、高精度に呼気中のエタノール濃度に関する物理量を検出することができる。
【0042】
本発明では、人間の顔から放射された赤外線との相互作用によって生じる吸収スペクトルであってエタノールのC−O伸縮振動による吸収スペクトルを含む所定波長帯域の赤外線の強度をエタノールの赤外線吸収強度として検出すると共に、人間の顔から放射された赤外線との相互作用によって生じる吸収スペクトルであって二酸化炭素のC−O伸縮振動による吸収スペクトルを含む所定波長帯域の赤外線の強度を二酸化炭素の赤外線吸収強度として検出し、検出した二酸化炭素の赤外線吸収強度とエタノールの赤外線吸収強度とに基づいて、呼気中のエタノールガスの濃度に関する物理量を検出するようにすることができる。
【0043】
人間は呼吸を行っているため、呼吸のリズムに応じて呼気中に含まれるエタノールの濃度が周期的に変化する。また、人間の口から離れた位置で呼気を採取する場合、呼吸のリズムに応じて採取位置での呼気中に含まれるエタノールの濃度が変化すると共に、大気中にエタノールが含まれていた場合には大気中のエタノールがノイズとして検出され、精度良く、エタノールの濃度を検出できない場合が生じる。本発明では、大気中の二酸化炭素の濃度の変化は呼吸リズムに比較して充分遅いことに着目し、検出した二酸化炭素の赤外線吸収強度とエタノールの赤外線吸収強度とに基づいて、例えば、検出した二酸化炭素の赤外線吸収強度に対するエタノールの赤外線吸収強度の大きさに基づいて、呼気中のエタノールガスの濃度に関する物理量を検出する。
【0044】
これにより、呼吸によってエタノールガスの濃度が変動したり、呼気が薄められたり、または人間の口から離れた位置で呼気を採取する場合においても、精度良く呼気中のエタノールガスの濃度に関する物理量を検出することができる。
【0045】
呼気中にエタノールが含まれている場合、大気中に放出されるエタノール濃度及び二酸化炭素濃度は呼気のリズムに応じて変動する。それに比較して大気中に元々存在するエタノール濃度及び二酸化炭素濃度の変動は、呼気のリズムに比較して充分遅いと仮定することができる。したがって、呼気中のエタノールガス濃度の検出信号にノイズ成分が含まれないようにするためには、後述するように、呼気周波数成分の信号を通過させるハイパスフィルタ等で構成された呼気フィルタを用いることができる。この場合、二酸化炭素濃度に関する物理量の検出信号(第2の信号)、またはエタノールガス濃度に関する物理量の検出信号(第1の信号)及び二酸化炭素濃度に関する物理量の検出信号(第2の信号)の両方の検出信号を、呼気フィルタを通過させ、呼気フィルタを通過した第2の信号と第1の信号、または呼気フィルタを通過した第2の信号と呼気フィルタを通過した第1の信号とに基づいて、例えば、呼気フィルタを通過した第2の信号に対する第1の信号の大きさ、または呼気フィルタを通過した第2の信号に対する呼気フィルタを通過した第1の信号の大きさに基づいて、エタノールガスの濃度に関する物理量を検出することができる。
【0046】
人間の口から離れた位置で呼気を採取する場合等において、人間の呼気中に含まれる水蒸気も二酸化炭素と同様の上記で説明した特性を有しているので、二酸化炭素に代えて水蒸気を用い、以下のようにして精度良く呼気中のエタノールガスの濃度に関する物理量を検出することもできる。
【0047】
すなわち、人間の顔から放射された赤外線との相互作用によって生じる吸収スペクトルであってエタノールのC−O伸縮振動による吸収スペクトルを含む所定波長帯域の赤外線の強度をエタノールの赤外線吸収強度として検出すると共に、人間の顔から放射された赤外線との相互作用によって生じる吸収スペクトルであって水蒸気の吸収スペクトルを含む所定波長帯域の赤外線の強度を水蒸気の赤外線吸収強度として検出し、検出した水蒸気の赤外線吸収強度とエタノールの赤外線吸収強度とに基づいて、例えば、検出した水蒸気の赤外線吸収強度に対するエタノールの赤外線吸収強度の大きさに基づいて、呼気中のエタノールガスの濃度に関する物理量を検出するようにしてもよい。
【0048】
水蒸気の赤外線吸収強度を検出する場合においても、上記で説明した呼気フィルタを用い、上記と同様に呼気中のエタノールガスの濃度に関する物理量を検出することもできる。
【0049】
本発明のガス検出装置は、人間の顔から放射された赤外線との相互作用によって生じる吸収スペクトルであってエタノールのC−O伸縮振動による吸収スペクトルを含む所定波長帯域の赤外線を透過するエタノール用光学フィルタと、前記エタノール用光学フィルタを透過した赤外線を電気信号に変換するエタノール用変換手段と、前記エタノール用変換手段で変換された電気信号の大きさに基づいて、呼気中のエタノールガスの濃度に関する物理量を検出する検出手段と、を含んで構成することができる。
【0050】
このガス検出装置によれば、上記で説明したように、人間の顔を光源として用いて、赤外線ランプ等の光源を用いることなく、高精度に呼気中のエタノール濃度に関する物理量を検出することができる。
【0051】
上記の検出手段は、以下の式に従ってエタノールガスの濃度に関する物理量[EtOH]を検出するようにすることができる。
【0052】
[EtOH]=−ln(Te/To)/ke・L ・・・(6)
ただし、Teは前記エタノール用変換手段で変換された電気信号より得られる赤外線の透過光量、Toは人間の顔から放射された赤外線の光量、keはエタノールガスの吸収係数、Lはエタノールガスと人間の顔から放射された赤外線との相互作用長であり、lnは自然対数を表わす。
【0053】
また、本発明のガス検出装置は、人間の顔から放射された赤外線との相互作用によって生じる吸収スペクトルであってエタノールのC−O伸縮振動による吸収スペクトルを含む所定波長帯域の赤外線を透過するエタノール用光学フィルタと、人間の顔から放射された赤外線の波長の帯域を含み、かつ前記所定波長帯域以外の帯域の赤外線を透過させる参照用光学フィルタと、前記エタノール用光学フィルタを透過した赤外線を電気信号に変換するエタノール用変換手段と、前記参照用光学フィルタを透過した赤外線を電気信号に変換する参照用変換手段と、前記エタノール用変換手段で変換された電気信号と前記参照用変換手段で変換された電気信号とに基づいて、呼気中のエタノールガスの濃度に関する物理量を検出する検出手段と、を含んで構成することができる。
【0054】
このガス検出装置によれば、人間の顔から放射された赤外線の波長の帯域を含み、かつ上記所定波長帯域以外の帯域の赤外線の透過光量を用いているため、人間の顔から放射された赤外線の光量が変動した場合においてもこの透過光量を用いることにより精度良く呼気中のエタノールの濃度に関する物理量を検出することができる。
【0055】
このガス検出装置の検出手段は、以下の式に従ってエタノールガスの濃度に関する物理量[EtOH]を検出することができる。
【0056】
[EtOH]=−ln(Te/To)/ke・L ・・・(7)
ただし、Teは前記エタノール用変換手段で変換された電気信号より得られる赤外線の透過光量、Toは前記参照用変換手段で変換された電気信号より得られる人間の顔から放射された赤外線の透過光量、keはエタノールガスの吸収係数、Lはエタノールガスと人間の顔から放射された赤外線との相互作用長であり、lnは自然対数を表わす。
【0057】
また、本発明のガス検出装置は、人間の顔から放射された赤外線との相互作用によって生じる吸収スペクトルであってエタノールのC−O伸縮振動による吸収スペクトルを含む所定波長帯域の赤外線を透過するエタノール用光学フィルタと、人間の顔から放射された赤外線との相互作用によって生じる吸収スペクトルであって二酸化炭素のC−O伸縮振動による吸収スペクトルを含む所定波長帯域の赤外線を透過する二酸化炭素用光学フィルタと、前記エタノール用光学フィルタを透過した赤外線を電気信号に変換するエタノール用変換手段と、前記二酸化炭素用光学フィルタを透過した赤外線を電気信号に変換する二酸化炭素用変換手段と、前記二酸化炭素用変換手段で変換された電気信号と前記エタノール用変換手段で変換された電気信号とに基づいて、呼気中のエタノールガスの濃度に関する物理量を検出する検出手段と、を含んで構成することもできる。
【0058】
このガス検出装置によれば、上記で説明したように、人間の顔を光源として用いると共に、大気中の二酸化炭素の濃度の変化は呼吸リズムに比較して充分遅いことに着目し、検出した二酸化炭素の赤外線吸収強度に対するエタノールの赤外線吸収強度の大きさに基づいて、エタノールガスの濃度に関する物理量を検出しているので、人間の口から離れた位置で呼気を採取する場合においても、精度良く呼気中のエタノールガスの濃度に関する物理量を検出することができる。
【0059】
このガス検出装置の検出手段は、二酸化炭素用変換手段で変換された電気信号に対するエタノール用変換手段で変換された電気信号の大きさに基づいて、呼気中のエタノールガスの濃度に関する物理量を検出する以下の式に従ってエタノールガスの濃度に関する物理量[EtOH]を検出することができる。
【0060】
[EtOH]=(ne(t2)−ne(t1))/(nc(t2)−nc(t1))
・・・(8)
ここで、ne(t2)、ne(t1)は各々時刻t2、t1における以下の式のneで表わされるエタノールガスの濃度に関する物理量、nc(t2)、nc(t1)は各々時刻t2、t1における以下の式のncで表わされる二酸化炭素の濃度に関する物理量である。
【0061】
ne=−ln(Te/To)/ke・L
nc=−ln(Tc/To)/kc・L
ただし、Teは前記エタノール用変換手段で変換された電気信号より得られる赤外線の透過光量、Tcは前記二酸化炭素用変換手段で変換された電気信号より得られる赤外線の透過光量、Toは人間の顔から放射された赤外線の光量、keはエタノールガスの吸収係数、kcは二酸化炭素の吸収係数、Lはエタノールガス及び二酸化炭素と人間の顔から放射された赤外線との相互作用長である。
【0062】
また、呼気中に含まれる二酸化炭素と呼気中に含まれる水蒸気とは同様の特性を有しているので、人間の顔から放射された赤外線との相互作用によって生じる吸収スペクトルであってエタノールのC−O伸縮振動による吸収スペクトルを含む所定波長帯域の赤外線を透過するエタノール用光学フィルタと、人間の顔から放射された赤外線との相互作用によって生じる吸収スペクトルであって水蒸気の吸収スペクトルを含む所定波長帯域の赤外線を透過する水蒸気用光学フィルタと、前記エタノール用光学フィルタを透過した赤外線を電気信号に変換するエタノール用変換手段と、前記水蒸気用光学フィルタを透過した赤外線を電気信号に変換する水蒸気用変換手段と、前記水蒸気用変換手段で変換された電気信号と前記エタノール用変換手段で変換された電気信号と基づいて、呼気中のエタノールガスの濃度に関する物理量を検出する検出手段と、を含んで構成してもよい。
【0063】
この場合、検出手段は、水蒸気用変換手段で変換された電気信号に対するエタノール用変換手段で変換された電気信号の大きさに基づいて、呼気中のエタノールガス濃度に関する物理量を検出する以下の式に従って呼気中のエタノールガスの濃度に関する物理量[EtOH]を検出することができる。
【0064】
[EtOH]=(ne(t2)−ne(t1))/(nw(t2)−nw(t1))
・・・(9)
ここで、ne(t2)、ne(t1)は各々時刻t2、t1における以下の式のneで表わされるエタノールガスの濃度に関する物理量、nw(t2)、nw(t1)は各々時刻t2、t1における以下の式のnwで表わされる水蒸気の濃度に関する物理量である。
【0065】
ne=−ln(Te/To)/ke・L
nw=−ln(Tw/To)/kw・L
ただし、Teは前記エタノール用変換手段で変換された電気信号より得られる赤外線の透過光量、Twは前記水蒸気用変換手段で変換された電気信号より得られる赤外線の透過光量、Toは人間の顔から放射された赤外線の光量、keはエタノールガスの吸収係数、kwは水蒸気の吸収係数、Lはエタノールガス及び水蒸気と人間の顔から放射された赤外線との相互作用長である。
【0066】
なお、上記(8)式及び(9)式は、上記(1)式に相当する式である。
【0067】
上記の二酸化炭素の濃度に関する物理量または水蒸気濃度に関する物理量を用いるガス検出装置では、人間の顔から放射された赤外線の波長帯域を含み、かつ前記所定波長帯域以外の帯域の赤外線を透過させる参照用光学フィルタと、前記参照用光学フィルタを透過した赤外線を電気信号に変換する参照用変換手段と、を更に設け、検出手段が、前記参照用変換手段で変換された電気信号を更に用いてエタノールガス濃度に関する物理量を検出するようにしてもよい。
【0068】
また、人間の顔から放射された赤外線の波長帯域を含み、かつ前記所定波長帯域以外の帯域の赤外線を透過させる参照用光学フィルタと、前記参照用光学フィルタを透過した赤外線を電気信号に変換する参照用変換手段と、を更設け、検出手段が、人間の顔から放射された赤外線の光量Toとして前記参照用変換手段で変換された電気信号より得られる人間の顔から放射された赤外線の透過光量を用いてエタノールガスの濃度に関する物理量[EtOH]を検出するようにしてもよい。
【0069】
上記で説明したガス検出装置では、前記エタノール用変換手段で変換された電気信号から呼気周波数成分の信号を通過させる呼気フィルタを更に設け、前記検出手段が、前記エタノール用変換手段で変換され、かつ前記呼気フィルタを通過した電気信号の大きさに基づいて、エタノールガスの濃度に関する物理量を検出するようにしてもよい。
【0070】
このように電気信号から呼気周波数成分の信号を通過させる呼気フィルタを設け、呼気フィルタを通過した電気信号の大きさに基づいて、エタノールガスの濃度に関する物理量を検出することにより、呼吸のリズムに応じて採取位置での呼気中に含まれるエタノールの濃度に関する物理量が変化する場合においても、精度良くエタノールの濃度に関する物理量を検出することができる。
【0071】
呼気フィルタでは、エタノール用変換手段で変換された電気信号のみでなく、エタノール用変換手段で変換された電気信号及び前記二酸化炭素用変換手段で変換された電気信号から呼気周波数成分の信号を通過させてもよく、またエタノール用変換手段で変換された電気信号及び前記水蒸気用変換手段で変換された電気信号から呼気周波数成分の信号を通過させてもよい。
【0072】
呼気中に含まれる二酸化炭素及び水蒸気は、呼吸のリズムに応じて採取位置での呼気中に含まれ濃度に関する物理量が変化する場合があるが、このように電気信号から呼気周波数成分の信号を通過させる呼気フィルタを設けることにより、精度良くエタノールの濃度に関する物理量を検出することができる。
【0073】
上記で説明した各発明の濃度に関する物理量としては、濃度、または濃度に比例した値を用いることができる。また、呼気フィルタで呼気周波数成分の信号を通過させるようにしたが、呼気周波数成分の信号のみを通過させるようにしてもよい。
【発明の効果】
【0074】
以上説明したように本発明によれば、エタノールの濃度に関する物理量を検出すると共に、呼気中に含まれる二酸化炭素または酸素からなる補正ガスの濃度、水蒸気、二酸化炭素、及び酸素の少なくとも1種のガスからなる補正ガスの濃度を基準にして呼気中のエタノールガスの濃度を検出するようにしているので、呼気が薄められたり大気中の成分がノイズとして混入する場合においても、精度良く呼気中のエタノール濃度に関する物理量を検出することができる、という効果が得られる。
【0075】
また、人間の顔を光源として用い、人間の顔から放射された赤外線との相互作用によって生じる吸収スペクトルであって呼気中のエタノールのC−O伸縮振動による吸収スペクトルを含む所定波長域の赤外線を抽出し、この赤外線の強度からエタノールガスの濃度に関する物理量を検出しているので、赤外線ランプ等の光源を用いることなく、高精度に呼気中のエタノール濃度に関する物理量を検出することができる、という効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0076】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を詳細に説明する。以下で説明する実施の形態では、濃度に関連する物理量として濃度を用いた場合について説明するが、濃度に比例する値を用いる場合も同様に説明することができる。
【0077】
本実施の形態は、図1に示すように、エタノール濃度検出器10を運転席に設けられたステアリングコラム12に、ドライバの顔から放射された赤外線を受光可能で、かつドライバの呼気が到達可能な位置に取り付け、ドライバの呼気からアルコールの一種であるエタノールを検出するようにしたものである。
【0078】
以下、ガス検出装置としてのエタノール濃度検出器の実施の形態について説明する。第1の実施の形態のエタノール濃度検出器10は、図2に示すように、エタノールのC−O伸縮振動による吸収スペクトル(波長9.5μm)を含む所定波長帯域(例えば、エタノールのC−O伸縮振動による吸収スペクトルを中心波長とする9μm〜10μmの波長帯域)の赤外線を透過するバンドパスフィルタで構成された光学フィルタ20と、光学フィルタ20を透過した赤外線を電気信号に変換し、透過光量に応じた電気信号を出力するボロメータ、SOIダイオード、またはサーモパイル等で構成されたエタノール用光電変換素子22とを備えている。
【0079】
エタノール用光電変換素子22には、エタノールガスの濃度を検出すると共に、検出したエタノールの濃度と閾値とを比較し、エタノール濃度を判定するエタノール濃度判定器24が接続されている。エタノール濃度判定器24は、マイクロコンピュータで構成することができる。
【0080】
人間の顔から放射される赤外線の波長帯域は、300°Kの温度で約2μm〜100μmであり、波長9.5μm前後で放射強度が最も高くなる。一方、エタノールのC−O伸縮振動による吸収スペクトルの中心波長は、図18に示すように、略9.5μmであり、人間の顔から放射される赤外線の放射強度が最も高くなる波長とエタノールのC−O伸縮振動による吸収スペクトルの中心波長とは略同一である。
【0081】
また、ドライバの顔から放射される赤外線の方向と呼気吹き出し方向とが同じであるので、呼気中のエタノールガスとドライバの顔から放射された赤外線とが、ドライバの顔とエタノール濃度検出器との間で相互作用する。
【0082】
したがって、本実施の形態のエタノール濃度検出器によれば、ドライバの顔から放射
された赤外線と呼気中のエタノールとの相互作用によって、エタノールのC−O伸縮振動による吸収スペクトル生じ、吸収スペクトルを含む所定波長帯域の赤外線の強度が低下する。
【0083】
エタノール用光電変換素子22から出力される電気信号の強度Te、すなわちフィルタ20を透過した赤外線の透過光量は以下の式で表わされる。
【0084】
Te=ToEXP(−ne・ke・L) ・・・(10)
ただし、Toは光源であるドライバの顔の光量、neはエタノールガスの濃度、keはエタノールガスの吸収係数、Lはガスと光の相互作用長(光学フィルタ20からドライバの顔までの距離で表わされる光路長)であり、EXPは指数関数を表わす。
【0085】
上記(10)式より、呼気中のエタノールの濃度[EtOH]は、以下の(11)式で表わされる。
【0086】
[EtOH]=ne=−ln(Te/To)/ke・L ・・・(11)
ただし、lnは、自然対数を表わす。
【0087】
したがって、エタノール濃度判定器24で上記(11)式に従って呼気中のエタノールの濃度[EtOH]を演算し、演算した値と予め定めた閾値とを比較し、演算した値が閾値以上の場合にエタノールの濃度が高いと判定し、エンジンが始動できないようにする等の不正ができないように制御する。
【0088】
なお、光源の光量Toは、予め検出した複数の被験者の顔の光量の平均値を用いるか、またはエタノール濃度を検出する前にドライバの顔から放射された赤外線を光学フィルタ20を透過させずに光電変換素子22で検出した値を用いるようにすればよい。なお、時間帯や季節に応じて光源の光量Toが変化するので、時間帯や季節に応じて光源の光量Toを変化させるようにしてもよい。
【0089】
本実施の形態のエタノール濃度検出器によれば、ドライバの顔から放射された赤外線との相互作用によって生じる呼気中のエタノールのC−O伸縮振動による吸収スペクトルを含む所定波長帯域の赤外線の強度が、エタノールの赤外線吸収強度として検出され、検出されたエタノールの赤外線吸収強度の大きさに基づいて、呼気中のエタノールガスの濃度が検出される。
【0090】
次に、図3を参照して本発明の第2の実施の形態について説明する。第2の実施の形態は、第1の実施の形態における光源(ドライバの顔)の光量Toに相当する赤外線光量を検出するための参照用赤外線検出器を設けたものである。したがって、図3において図2と対応する部分には同一符号を付して説明を省略する。
【0091】
参照用赤外線検出器は、エタノールのC−O伸縮振動による吸収スペクトル以外の所定波長帯域の赤外線を透過する参照用光学フィルタ30と、参照用光学フィルタ30を透過した赤外線を電気信号に変換するボロメータ、SOIダイオード、またはサーモパイル等で構成された参照用光電変換素子32とを含んで構成されている。光学フィルタ30としては、エタノールのC−O伸縮振動による吸収スペクトルを含む所定波長帯域(例えば、9μm〜10μm)の赤外線を遮断し、かつこの所定帯域以外の赤外線を透過するバンドカットフィルタで構成された光学フィルタを用いることができる。
【0092】
本実施の形態のエタノール濃度判定器24では、上記(11)式の光源の光量Toとして参照用光電変換素子32から出力された電気信号の強度を用いて上記(11)式に従って呼気中のエタノールの濃度[EtOH]を演算し、演算した値と予め定めた閾値とを比較してエタノール濃度を判定し、不正に対する制御を行う。
【0093】
本実施の形態によれば、ドライバの顔から放射された赤外線を用いて呼気に含まれるエタノールガス濃度を検出することができる。本実施の形態によれば、光源の光量Toとして参照用赤外線検出器で検出された光量を用いているため、気温の変動や体調の変動等によって光源であるドライバの顔から放射された赤外線光量が変動した場合においても、光源の変動の影響を受けることなくエタノール濃度を検出することができる。
【0094】
次に、図4を参照して本発明の第3の実施の形態について説明する。第3の実施の形態は、第1の実施の形態におけるエタノールガス濃度を示す電気信号から呼気のタイミングに相当する呼気周波数成分の信号のみを抽出し、エタノール濃度を検出するものである。したがって、図4において図2と対応する部分には同一符号を付して説明を省略する。
【0095】
本実施の形態には、エタノール用光電変換素子22の出力側とエタノール濃度判定器24との間に、光電変換素子22から出力された電気信号から呼気周波数成分以上の信号のみを通過させるハイパスフィルタで構成された呼気信号フィルタ34を接続し、エタノール用光電変換素子22から出力された電気信号から呼気周波数成分に相当する成分の電気信号のみを抽出し、エタノール濃度判定器24に入力するようにしたものである。
【0096】
本実施の形態のエタノール濃度判定器24では、上記(11)式に従って図5に示すように呼気周波数に応じて時間変化するエタノール濃度が演算される。エタノール濃度判定器24では、演算されたエタノール濃度の所定時間(t2−t1)内の変化量nep=ne(t2)−ne(t1)(ただし、ne(t2)は時刻t2におけるエタノールの濃度、ne(t1)は時刻t1におけるエタノールの濃度を示す)をエタノールの濃度として演算し、上記の実施の形態と同様に不正を防止する制御を行う。なお、所定時間(t2−t1)内の変化量nepに代えて、ピークからピークまでの値、すなわちピークトゥピーク値を用いてもよく、単位時間当たりの変化量である変化率、または所定時間内のエタノールの濃度の積分値を用いてもよい。
【0097】
本実施の形態によれば、呼気中のエタノール成分を検出し、エタノールの濃度を所定時間内の変化量nepで求めているため、より正確にエタノール濃度を検出することができる。
【0098】
次に、図6を参照して本発明の第4の実施の形態について説明する。第4の実施の形態は、第2の実施の形態におけるエタノール用光電変換素子出力及び参照用光電変換素子出力の各々から呼気のタイミングに相当する呼気周波数成分の信号のみを抽出し、エタノール濃度を測定するものである。したがって、図6において図3と対応する部分には同一符号を付して説明を省略する。
【0099】
本実施の形態では、エタノール用光電変換素子22の出力側及び参照用光電変換素子32の出力側とエタノール濃度判定器24との間に、光電変換素子22及び光電変換素子32から出力された電気信号の各々から呼気周波数成分のみの信号を通過させるハイパスフィルタで構成された呼気信号フィルタ36が接続されている。
【0100】
この呼気信号フィルタ36により、光電変換素子22及び光電変換素子32の各々から出力された電気信号のうち呼気周波数成分に相当する成分の電気信号のみが抽出され、エタノール濃度判定器24に入力される。
【0101】
本実施の形態のエタノール濃度判定器24では、呼気信号フィルタ36から出力される光電変換素子22及び光電変換素子32の各々から出力された電気信号から呼気周波数成分に相当する成分の電気信号のみを用いて、上記(11)式に従って図7に示すように呼気周波数に応じて時間変化するエタノール濃度が演算される。エタノール濃度判定器24では、演算されたエタノール濃度の変化量nep=ne(t2)−ne(t1)をエタノールの濃度として演算し、上記の実施の形態と同様に不正を防止する制御を行う。
【0102】
本実施の形態によれば、光源の光量Toとして参照用光電変換素子から出力された光量を用いているため、気温の変動や体調の変動等によって光源であるドライバの顔から放射された赤外線光量が変動した場合においても光源の光量変動によるエタノール濃度検出への影響を防止することができると共に、呼気として排出されたガス中のエタノール成分を検出し、エタノールの濃度を変化量で求めているため、より正確にエタノール濃度を測定することができる。
【0103】
なお、第4の実施の形態では、エタノール用光電変換素子出力及び参照用光電変換素子出力から呼気周波数成分に相当する周波数成分を抽出する例について説明したが、光源であるドライバの顔から放射される赤外線量は、呼気周波数に応じた変動は少ないと考えられるので、呼気信号フィルタを参照用光電変換素子の出力側に接続することなく、エタノール用光電変換素子の出力側にのみ接続するようにしてもよい。
【0104】
次に、本発明の第5の実施の形態について説明する。第5の実施の形態は、二酸化炭素ガス濃度に対するエタノール濃度の割合を算出することで、ドライバの顔からエタノール濃度検出器までの距離(光路長)の変動による影響を防止するようにしたものである。なお、図8において図2と対応する部分には同一符号を付して説明を省略する。
【0105】
本実施の形態のエタノール濃度検出器には、図8に示すように、上記で説明したエタノール用光学フィルタ20及びエタノール用光電変換素子22が設けられると共に、二酸化炭素のC−O伸縮振動による吸収スペクトル(図18から理解されるように中心波長15μm)を含む所定波長帯域(例えば、15μmを中心波長とする14μm〜16μmの所定波長帯域)の赤外線を透過する二酸化炭素用光学フィルタ40、及び光学フィルタ40を透過した赤外線を電気信号に変換するボロメータ、SOIダイオード、またはサーモパイル等で構成された二酸化炭素用光電変換素子42が設けられている。
【0106】
二酸化炭素用光電変換素子42とエタノール濃度判定器44との間には、二酸化炭素用光電変換素子42から出力された電気信号から呼気周波数成分以上の信号を通過させ、呼気周波数成分未満の信号を減衰させるハイパスフィルタで構成された呼気信号フィルタ38が設けられている。
【0107】
エタノール用光電変換素子22及び呼気信号フィルタ38は、エタノール濃度判定器44に接続されている。エタノール濃度判定器44は、以下の(3)式に従って呼気信号フィルタ38を通過した電気信号から得られる二酸化炭素ガス濃度ncに対するエタノール用光電変換素子22から出力された電気信号から得られるエタノール濃度neの割合を呼気中のエタノール濃度[EtOH]として演算する。
【0108】
[EtOH]=ne/nc ・・・(12)
ただし、neは上記(11)式で求められるエタノールガス濃度、ncは下記(13)式で求められる二酸化炭素ガス濃度である。
【0109】
nc=−ln(Tc/To)/kc・L ・・・(13)
ただし、Tcは二酸化炭素用光電変換素子から出力され、かつ呼気信号フィルタを通過した電気信号より得られる透過光量、kcは二酸化炭素の吸収係数である。光源の光量Toは、第1の実施の形態で説明した値が用いられる。
【0110】
なお、エタノールガス濃度は、上記(12)式に代えて下記で説明する(20)式の二酸化炭素濃度の変化量ncp=nc(t2)−nc(t1)に対するエタノール濃度の変化量(nep=ne(t2)−ne(t1)の割合の大きさで求めるようにしてもよく、二酸化炭素濃度の変化率Δncに対するエタノール濃度の変化率Δneの割合の大きさで求めるようにしてもよく、二酸化炭素濃度の所定時間内の積分値に対するエタノール濃度の所定時間内の積分値の割合の大きさで求めるようにしてもよい。
【0111】
以下、本実施の形態において二酸化炭素濃度を用いる理由について説明する。特許文献2に記載されているように、採取バッグを用いる場合、採取バッグ中のガス濃度として、エタノールガス濃度及び二酸化炭素濃度各々に同一倍率αを乗算した測定値が得られる。したがって、エタノールガス濃度及び二酸化炭素濃度各々の測定値をnem、ncmとし、呼気中二酸化炭素濃度ncbが既知であれば下記(14)式より呼気中エタノール濃度nebが得られる。
【0112】
(nem/ncm)ncb=(α・neb/α・ncb)ncb=neb
・・・(14)
一方、第5の実施の形態のようにドライバから離れた位置で時々刻々ガスを採取する場合について図9を参照して説明すると、呼吸のリズムに応じて、すなわち時間tに応じて倍率α(t)が変動する。また、採集されたガスには時間tに応じて濃度が変動する大気中のエタノール(濃度nen(t))及び二酸化炭素(濃度ncn(t))が含まれている場合には、大気中のエタノール及び二酸化炭素がノイズとして検出されることになる。エタノール及び二酸化炭素各々の測定値nem(t)、ncm(t)は以下の(15)式で表わされるため、上記(14)式の原理を用いてエタノール濃度を検出することはできない。
【0113】
ncm(t)=α(t)ncb+ncn(t)
nem(t)=α(t)neb+nen(t) ・・・(15)
以下、二酸化炭素濃度を用いる本実施の形態の検出原理を説明する。一般的に大気中の二酸化炭素濃度の変化は呼気リズムに比較して充分遅いと仮定することができる。したがって、大気中の二酸化炭素の濃度ncn(t)の変動周波数と、エタノール濃度の変動周波数との相違を利用して、ncm(t)をハイパスフィルタで構成された上記で説明した呼気信号フィルタを通過させることにより、変動周波数が低い大気中の二酸化炭素の濃度ncn(t)を示す信号が除去された呼気信号フィルタ通過信号ncm’(t)=α(t)ncbを得ることができる。
【0114】
ここで、α(t)とnen(t)とが無相関であると仮定すれば、下記(16)式より呼気中エタノール濃度nebが得られる。
【0115】
【数1】
【0116】
ただし、(16)式中の演算子○は以下の(17)式で定義される相関関数を表わす。
【0117】
【数2】
【0118】
ただし、Tは任意の時間長である。
【0119】
上記の特別な場合として大気中のエタノール及び二酸化炭素が時間的に変動しないと仮定できる場合は、呼気信号フィルタを用いてnem(t)及びncm(t)の両方を呼気信号フィルタを通過させてnem’(t)及びncm’(t)を求めることにより下記のように時間変動分のみを取り出すことができる。なお、この特別な場合の実施の形態は、第6の実施の形態として以下で説明する。
【0120】
nem’(t)=α(t)neb
ncm’(t)=α(t)ncb ・・・(18)
この場合には、より簡易な下記(19)式より呼気中エタノール濃度nebが得られる。
【0121】
【数3】
【0122】
この(19)式による概念図を図10に示す。図から理解されるように以下の式によってエタノール濃度を検出することができる。
【0123】
エタノール濃度=(Δa/Δc)・呼気中二酸化炭素濃度 ・・・(20)
ただし、Δaは上記で説明したエタノール濃度の変化量(nep=ne(t2)−ne(t1))、変化率、または所定時間内の積分値であり、Δcは上記(13)式で演算される二酸化炭素濃度の変化量、変化率、または所定時間内の積分値であり、呼気中の二酸化炭素濃度は約3.8%で一定である。
【0124】
光源から検出器までの距離で表わされる光路長が変化すると、ガスと赤外線との相互作用長が変化することから光路長に応じて呼気中のエタノール濃度の検出値が変化する可能性がある。また、呼気が空気等の気体によって薄められるとエタノール濃度が実際の濃度より薄く検出される可能性がある。
【0125】
ところで、呼気中の二酸化炭素ガス濃度の割合は略一定であり、エタノール濃度が変化しなければ、光路長が変化したり呼気が薄められても、呼気中の二酸化炭素濃度に対するエタノール濃度の割合は一定である。そこで、本実施の形態では、上記で説明したように、検出された呼気中の二酸化炭素濃度に対するエタノール濃度の割合を算出することにより、光路長が変化したり呼気が薄められた場合であっても正確にエタノールの濃度を検出することができる。
【0126】
次に、図11を参照して本発明の第6の実施の形態について説明する。第6の実施の形態は、上記の実施の形態の二酸化炭素濃度を用いる検出原理において説明した大気中のエタノール及び二酸化炭素が呼気変動に比べて時間的にゆっくり変動すると仮定できる場合の実施の形態を示すものである。本実施の形態では、第5の実施の形態におけるエタノール用光電変換素子出力及び二酸化炭素用光電変換素子出力の各々から呼気のタイミングに相当する成分の信号のみを抽出し、呼気中の二酸化炭素濃度に対するエタノール濃度の割合をエタノール濃度として検出するようにしたものである。したがって、図11において図8と対応する部分には同一符号を付して説明を省略する。
【0127】
本実施の形態では、エタノール用光電変換素子22の出力側及び二酸化炭素用光電変換素子42の出力側とエタノール濃度判定器44との間に、光電変換素子22及び光電変換素子42から出力された電気信号の各々から呼気周波数成分以上の信号を通過させるハイパスフィルタで構成された呼気信号フィルタ38が接続されている。この呼気信号フィルタ38により、光電変換素子22及び光電変換素子42の各々から出力された電気信号のうち呼気周波数成分に相当する成分の電気信号が抽出され、エタノール濃度判定器44に入力される。
【0128】
本実施の形態のエタノール濃度判定器44では、呼気信号フィルタ38から出力される光電変換素子22及び光電変換素子42の各々から出力された電気信号のうち呼気周波数成分に相当する成分の電気信号を用いて、上記(12)式に従って呼気周波数に応じて時間変化するエタノール濃度が演算される。エタノール濃度判定器44では、下記(21)式に従って、二酸化炭素濃度の変化量(nc(t2)−nc(t1))に対するエタノール濃度の変化量((ne(t2)−ne(t1))の割合をエタノールの濃度として演算し、上記の各実施の形態と同様に不正を防止する制御を行う。なお、上記で説明したように変化量に代えて、変化率または所定時間内の積分値を用いてよい。
【0129】
[EtOH]=(ne(t2)−ne(t1))/(nc(t2)−nc(t1))
・・・(21)
ここで、図12に示すように、ne(t2)、ne(t1)は各々時刻t2、t1における以下の式のneで表わされるエタノールガスの濃度、nc(t2)、nc(t1)は各々時刻t2、t1における以下の式のncで表わされる二酸化炭素の濃度である。
【0130】
ne=−ln(Te/To)/ke・L
nc=−ln(Tc/To)/kc・L ・・・(22)
本実施の形態によれば、呼気周波数成分を抽出して呼気中の二酸化炭素濃度に対するエタノール濃度の割合をエタノール濃度として検出しているため、大気中のエタノール及び二酸化炭素が呼気変動に比べて時間的にゆっくり変動すると仮定できる場合のエタノール濃度を精度良く検出することができる。
【0131】
次に、図13を参照して本発明の第7の実施の形態について説明する。第7の実施の形態は、第5の実施の形態の呼気信号フィルタを設けない態様に第2の実施の形態で説明した参照用光学フィルタ及び参照用光電変換素子を設け、光源としてのドライバの顔から放射される赤外線の光量T0を検出するようにしたものである。したがって、図13において図3及び図8に対応する部分には同一符号を付して説明を省略する。
【0132】
本実施の形態のエタノール用光電変換素子22、参照用光電変換素子32、及び二酸化炭素用光電変換素子42は、各々エタノール濃度判定器46に接続されている。エタノール濃度判定器46は、上記(12)式に従って二酸化炭素ガス濃度ncに対するエタノール濃度neの割合を呼気中のエタノール濃度[EtOH]として演算する。この場合、エタノール濃度neは、第2の実施の形態で説明したように、光源の光量T0として光電変換素子32から出力される電気信号より得られる透過光量が使用される。
【0133】
本実施の形態によれば、第2の実施の形態で説明したように参照用光学フィルタ及び参照用光電変換素子を用いることで、光源の光量の変動による誤差を防止することができると共に、呼気中の二酸化炭素濃度に対するエタノール濃度の割合を算出することにより、光路長が変化したり呼気が薄められた場合であっても正確にエタノールの濃度を検出する
ことができる。
【0134】
なお、第7の実施の形態にも第5の実施の形態と同様に二酸化炭素用光電変換素子42とエタノール濃度判定器44との間に、二酸化炭素用光電変換素子42から出力された電気信号から呼気周波数成分以上の信号を通過させ、呼気周波数成分未満の信号を減衰させるハイパスフィルタで構成された呼気信号フィルタ38を設け、(1)式または(2)式に従ってエタノール濃度を検出するようにしてもよい。
【0135】
次に、図14を参照して本発明の第8の実施の形態について説明する。第8の実施の形態は、第7の実施の形態におけるエタノール用光電変換素子出力、参照用光電変換素子出力、及び二酸化炭素用光電変換素子出力の各々から呼気のタイミングに相当する成分の信号のみを抽出し、呼気中の二酸化炭素濃度に対するエタノール濃度の割合をエタノール濃度として検出するようにしたものである。したがって、図14において図13と対応する部分には同一符号を付して説明を省略する。
【0136】
本実施の形態では、エタノール用光電変換素子22の出力側、参照用光電変換素子32の出力側、及び二酸化炭素用光電変換素子42の出力側とエタノール濃度判定器46との間に、光電変換素子22、光電変換素子32、及び光電変換素子42から出力された電気信号の各々から呼気周波数成分以上の信号を通過させるハイパスフィルタで構成された呼気信号フィルタ38が接続されている。この呼気信号フィルタ38により、光電変換素子22、光電変換素子32、及び光電変換素子42の各々から出力された電気信号のうち呼気周波数成分に相当する成分以上の電気信号のみが抽出され、エタノール濃度判定器46に入力される。
【0137】
本実施の形態のエタノール濃度判定器46では、呼気信号フィルタ38から出力される光電変換素子22、光電変換素子32、及び光電変換素子42の各々から出力された電気信号のうち呼気周波数成分に相当する成分の電気信号を用いて、下記(23)式に従って、図15に示した二酸化炭素ガス濃度の変化量(=nc(t2)−nc(t1))に対するエタノールガス濃度の変化量(=ne(t2)−ne(t1))の割合がエタノールの濃度として演算され、上記の各実施の形態と同様に不正を防止する制御が行われる。なお、上記で説明したように変化量に代えて、変化率、または所定時間内の積分値を用いても良い。
【0138】
[EtOH]={ne(t2)−ne(t1)}/{nc(t2)−nc(t1)}
・・・(23)
本実施の形態によれば、光源の光量の変動による誤差を防止することができると共に、呼気周波数成分を抽出して呼気中の二酸化炭素濃度に対するエタノール濃度の割合をエタノール濃度として検出しているため、より正確にエタノール濃度を測定することができる。
【0139】
なお、第8の実施の形態では、光電変換素子22、光電変換素子32、及び光電変換素子42から出力された電気信号の各々を呼気信号フィルタ38を通過させる例について説明したが、第5の実施の形態と同様に二酸化炭素用光電変換素子42とエタノール濃度判定器44との間に、二酸化炭素用光電変換素子42呼気信号フィルタ38を設け、呼気信号フィルタ38を通過した信号及び光電変換素子22から出力された電気信号を用いてエタノール濃度を検出するようにしてもよい。
【0140】
上記の実施の形態では、光路長が変化したり呼気が薄められた場合であっても正確にエタノールの濃度を検出するために、第5〜第8の実施の形態では、呼気中の二酸化炭素濃度を検出し、呼気中の二酸化炭素濃度に対するエタノール濃度の割合を算出することにより、正確なエタノールの濃度を検出する場合について説明した。
【0141】
一方、呼気中の水蒸気濃度の割合も二酸化炭素ガス濃度の割合と同様に略一定である。このため、上記で説明した第5〜第8の実施の形態において二酸化炭素ガス濃度に代えて水蒸気濃度を用いることができる。
【0142】
以下、二酸化炭素ガス濃度に代えて水蒸気濃度を用いる例として、第8の実施の形態において二酸化炭素ガス濃度に代えて水蒸気濃度を用いる場合について図16を参照して説明する。なお、図16において図14と対応する部分には同一符号を付して説明を省略する。
【0143】
本実施の形態では、図16に示すように、二酸化炭素用光学フィルタ40に代えて水蒸気の吸収スペクトルを中心波長とする所定波長帯域の赤外線を透過する水蒸気用光学フィルタ50が設けられると共に、二酸化炭素用光電変換素子42に代えて水蒸気用光学フィルタ50を透過した赤外線を電気信号に変換する水蒸気用光電変換素子52が設けられている。
【0144】
エタノール用光電変換素子22の出力側、参照用光電変換素子32の出力側、及び水蒸気用光電変換素子52の出力側とエタノール濃度判定器46との間には、光電変換素子22、光電変換素子32、及び光電変換素子52から出力された電気信号の各々から呼気周波数成分の信号を通過させるバンドパスフィルタで構成された呼気信号フィルタ38が接続されている。この呼気信号フィルタ38により、光電変換素子22、光電変換素子32、及び光電変換素子52の各々から出力された電気信号のうち呼気周波数成分に相当する成分の電気信号のみが抽出され、エタノール濃度判定器46に入力される。
【0145】
本実施の形態のエタノール濃度判定器46では、呼気信号フィルタ38から出力される光電変換素子22、光電変換素子32、及び光電変換素子52の各々から出力された電気信号のうち呼気周波数成分に相当する成分の電気信号を用いて、下記(24)式に従って、図17に示す水蒸気濃度の変化量(=nw(t2)−nw(t1))に対するエタノールガス濃度の変化量(=ne(t2)−ne(t1))の割合がエタノールの濃度として演算され、上記の各実施の形態と同様に不正を防止する制御が行われる。なお、上記で説明したように変化量に代えて、変化率、または所定時間内の積分値を用いても良い。
【0146】
[EtOH]={ne(t2)−ne(t1)}/{nw(t2)−nw(t1)}
・・・(24)
なお、二酸化炭素の濃度検出に代えて水蒸気濃度を検出する場合においても、二酸化炭素の濃度検出で説明したように、第5の実施の形態と同様に二酸化炭素用光電変換素子42とエタノール濃度判定器44との間に、二酸化炭素用光電変換素子42呼気信号フィルタ38を設け、呼気信号フィルタ38を通過した信号及び光電変換素子22から出力された電気信号を用いてエタノール濃度を検出するようにしてもよい。
【0147】
次に、エタノールを含んだ呼気モデルを用い、人間の顔を光源として遠赤外線検知器によりエタノールを測定した結果について説明する。ここでは、図23に示すように、遠赤外線検知器として遠赤外線カメラ80を用い、エタノールを含んだ呼気モデルとしてエタノールガスを充填したガス袋82を人間の顔と遠赤外線カメラ80との間に配置し、ガス袋82を透して人間の顔を撮影した場合の計測結果について説明する。
【0148】
図24に、大気を充填したガス袋を遠赤外線カメラで撮影した場合の画像(図24(1))と、2mg/lのエタノールガスを充填したガス袋を遠赤外線カメラで撮影した場合の画像(図24(2))とを比較して示した。また、撮影した顔画像について、左右頬、眉間、及び鼻の頭の4箇所について顔温度を比較した結果を図25に示した。鼻の頭(ガス袋内における光路長:150mm)を例に説明すると、約0.34℃の温度低下がみられた。この現象が生じた理由は、顔から放射された遠赤外線がエタノールガスに吸収され、結果として顔温度として計測されたためである。遠赤外線カメラの最小温度差検出は、0.01℃であるので、上記の計測の場合0.06mg/l以上の呼気エタノールガスを検出することができる。
【0149】
この測定結果から人間の顔を光源とする場合においても遠赤外線検知器によりエタノールの濃度を精度良く測定することができることが理解できる。
【0150】
上記では、大気中の二酸化炭素(または水蒸気)の濃度の変化が呼気リズムに比較して充分遅いことに着目した発明について、赤外線吸収強度を検出する赤外検出器を用いた実施の形態について説明したが、大気中の二酸化炭素(または水蒸気)の濃度の変化が呼吸リズムに比較して充分遅いことに着目した発明では、赤外検出器に代えて酸化物半導体を用いてエタノールガスの濃度を検出するエタノールガスセンサ、及び固体電解質を用いて二酸化炭素の濃度を検出する二酸化炭素センサ、または酸化物半導体または高分子膜静電容量を用いて水蒸気の濃度を検出する水蒸気センサを用いるようにしてもよい。さらに、呼気中の酸素濃度の割合も二酸化炭素ガス濃度の割合と同様に略一定であるため、水蒸気センサ及び二酸化炭素センサに代えて、固体電解質を用いて酸素の濃度を検出する酸素センサを用いることもできる。
【0151】
すなわち、ガスを検出するセンサを用いる場合には、エタノールの濃度を検出する酸化物半導体センサと、水蒸気、二酸化炭素、及び酸素の少なくとも1種のガスからなる補正ガスの濃度を検出するガスセンサで構成された補正センサとを用いて、エタノールの濃度を検出することができる。
【0152】
以下、ガスセンサを利用した第10の実施の形態について図19を参照して説明する。この実施の形態は、ガスセンサを利用してエタノール濃度及び二酸化炭素濃度を検出するようにしたものである。図19に示すように、先端部に拡径した吸い込み口60Aが形成された細長円筒状のガス採取管60が取り付けられている。ガス採取管60の基端部には、ドライバの呼気を吸い込み口60Aから吸い込むために駆動される吸い込みファン62が設けられている。
【0153】
ガス採取管60の中間部の内部には、酸化物半導体を用いてエタノールガスの濃度を検出するアルコールセンサであるエタノールガスセンサ(例えば、酸化錫の半導体を用いたTGS822(フィガロ技研社製、商品名))、及び固体電解質を用いて二酸化炭素の濃度を検出する二酸化炭素センサ(例えば、フィガロ技研社製、CDM4160)を有するセンサ64が取り付けられている。このセンサには、上記の実施の形態で説明したのと同様のエタノール濃度判定器(図示を省略)が接続されている。
【0154】
この実施の形態によれば、吸い込みファン62を駆動することにより、ドライバの呼気が吸い込み口60Aから吸い込まれ、エタノールガスセンサによって呼気中のエタノールガスの濃度が検出されると共に、二酸化炭素センサによって呼気中の二酸化炭素の濃度が検出される。
【0155】
センサで検出された呼気中のエタノールの濃度及び二酸化炭素の濃度は、エタノール濃度判定器に入力され、検出した二酸化炭素の濃度に対するエタノールの濃度の大きさに基づいて、上記(1)式または(2)式に従ってエタノールガスの濃度が検出され、上記で説明したように不正が行われないように制御される。
【0156】
なお、本実施の形態では、二酸化炭素センサに変えて、以下で説明するように酸化物半導体を用いて水蒸気の濃度を検出する水蒸気センサを用いて呼気中のエタノールの濃度及び水蒸気の濃度を検出し、検出した水蒸気の濃度に対するエタノールの濃度の大きさに基づいて、エタノールガスの濃度を検出するようにしてもよい。
【0157】
次に、酸化物半導体を用いたガスセンサを利用してエタノール濃度を検出すると共に、ジルコニア固体電解質を用いたガスセンサを利用して空気中に含まれる酸素の濃度を検出する第11の実施の形態について図20を参照して説明する。図20に示すように、円筒状の呼気導入管70の一端には、ドライバ等の人間の呼気を呼気導入管70の他端から吸い込むために駆動される吸い込みファン72が設けられている。
【0158】
呼気導入管70の中間部の内部には、酸化物半導体を用いてエタノールガス成分の濃度を検出するアルコールセンサ74、及びジルコニア固体電解質を用いて酸素の濃度を検出する酸素センサ76が対向するように取り付けられている。このセンサの各々は、上記の実施の形態で説明したのと同様のエタノール濃度判定器(図示せず)に接続されている。
【0159】
アルコールセンサは、呼気導入管内を流れる空気中に含まれるエタノール成分を検出するセンサであり、例えば、酸化錫の半導体を用いたTGS822(フィガロ技研社製、商品名)を使用することができる。
【0160】
酸素センサ76は呼気導入管70内を流れる酸素を検出するセンサであり、例えば、ジルコ二ア固体電解質を用いたFCX−MVL(フジクラ社製、商品名)を使用することができる。
【0161】
この実施の形態によれば、吸い込みファン72を駆動することにより、人間から吐き出された呼気は呼気導入管の他端から呼気導入管内に吸入され、アルコールセンサ及び酸素センサに接触した後ファン背面に排出される。
【0162】
呼気がアルコールセンサ及び酸素センサに接触することによりアルコールセンサによって呼気を含む空気中のエタノールガス成分の濃度が検出されると共に、酸素センサによって呼気を含む空気中の酸素の濃度が検出される。これによって、上記と同様にセンサで検出された空気中のエタノール成分の濃度及び酸素の濃度は、エタノール濃度判定器に入力され、検出した酸素の濃度に対するエタノール成分の濃度の大きさに基づいて、エタノールガスの濃度が検出され、上記で説明したように不正が行われないように制御される。本実施の形態では、上記(1)式または(2)式及び酸素センサで検出された酸素濃度の変化量、変化率、所定時間内の積分値を用いると共に、呼気中酸素濃度(例えば、約15.2%で一定)を用いてエタノールガスの濃度が検出される。
【0163】
なお、酸素濃度を用いる場合には、上記の実施の形態で説明した二酸化炭素濃度を用いる場合とは反対に、大気中に比べて呼気中の濃度は減少するので、酸素センサの検出値は、大気中の酸素センサ出力値より減少することになる。
【0164】
上記の各実施の形態では、呼気中のエタノール、二酸化炭素、酸素、及び水蒸気のいずれか1種のガスからなる補正ガスが時間的に変動しない、すなわち大気に対して吐き出される呼気の量が充分小さい(呼気が大気により薄まる)と仮定して上記(1)式または(2)式に従ってエタノール濃度を検出する場合について説明した。
【0165】
しかしながら、人間から吐き出された呼気は空気と混合されることで任意に希釈され、アルコールセンサ及び補正センサ(酸素センサ、二酸化炭素センサ、または水蒸気センサ)に接触することとなる。上記の式では、呼気をノズル等の導入管を通して直接センサに接触させる場合(呼気希釈倍率1倍の場合)等では、大気に対して呼気の量が充分小さいと仮定しているため、呼気の体積が原因となって誤差が生じる。
【0166】
このため本実施の形態では、呼気の体積の影響を考慮して呼気希釈倍率という概念を導入することによりエタノール濃度を更に精度良く検出するようにしてもよい。この呼気希釈倍率は、呼気が検出される前後の酸素濃度(または二酸化炭素濃度、または水蒸気濃度)を用いて下記(25)式に示すように算出することができる。(25)式は補正ガス濃度として酸素濃度を用いた場合について示している。
【0167】
[EtOH]breath=([EtOH]peak−[EtOH]base)×Di+[EtOH]base
・・・(25)
Di=([O2]breath−[O2]base)/(O2]peak−[O2]base)
・・・(26)
ただし、Diは呼気がセンサに到達するまでに空気によって希釈される割合を示す呼気希釈倍率であり、
[O2]breath:呼気中の酸素濃度
[O2]base:呼気が導入される前の酸素センサの出力濃度
[O2]peak:呼気が導入されたときの酸素センサの出力濃度の最大値
[EtOH]breath:呼気中のエタノール濃度
[EtOH]base:呼気が導入される前のアルコールセンサの出力濃度
[EtOH]peak:呼気が導入されたときのアルコールセンサの出力濃度の最大値
上記(25)式の計算は、呼気が任意に希釈されてもエタノールの希釈倍率と酸素の希釈倍率とは常に等しいことに着目して導出されたものである。呼気中の酸素濃度[O2]breathは常に一定濃度(例えば、15.2%で一定)であることから、酸素センサの出力濃度値からまず呼気希釈倍率Diが算出される。次に、エタノールがこの呼気希釈倍率Diで希釈されるため、呼気希釈倍率Diとアルコールセンサの出力濃度値とから呼気中のエタノール濃度[EtOH]breathが算出される。
【0168】
なお、上記では、呼気が導入されたときのアルコールセンサ及び酸素センサの出力値(出力濃度)として最大値を用いているが、必ずしも最大値である必要はなく、上記で説明したように呼気導入管内に導入され呼気がアルコールセンサ及び酸素センサに接触した時点以降の出力値であればこの出力値の変化量または変化率を用いて上記と同様に呼気中のエタノールガス濃度を算出可能である。
【0169】
被験者18名を対象に、飲酒時の呼気を採取してガスクロマトグラフにより濃度分析した値と本実施の形態で上記(25)式を用いて算出した吸気エタノール定量値との対応を調べた結果を図21及び図22に示す。図21に示すように、人間から吐き出された呼気は、大気によって任意の希釈倍率で希釈されるので、アルコールセンサで計測されたエタノール濃度はガスクロマトグラフの分析値とは低い相関(寄与率:0.53)を示した。
【0170】
一方、計測されたエタノールガス濃度と、酸素センサの出力値から算出された呼気希釈倍率を用いて、上記(15)式に基づいて呼気エタノール濃度を算出すると、図22に示すように、呼気エタノール定量値とガスクロマトグラフの分析値とは寄与率0.91という良好な相関関係がみられた。
【0171】
なお、上記では補正センサとして酸素センサを用いた例について説明したが、酸素センサに代えて二酸化炭素センサを用い、上記(26)式の酸素濃度に代えて二酸化炭素濃度を用いて二酸化炭素の濃度変化から呼気希釈倍率を算出し、上記と同様の方法でエタノール濃度を算出することができる。二酸化炭素センサを用いる場合は、呼気中の二酸化炭素濃度は約3.8%で一定である。
【0172】
また、酸素センサに代えて水蒸気センサを用い、上記(26)式の酸素濃度に代えて水蒸気濃度を用いて水蒸気の濃度変化から呼気希釈倍率を算出し、上記と同様の方法でエタノール濃度を算出することができる。水蒸気センサを用いる場合は、呼気中の水蒸気濃度の一定値として、例えば、34℃の飽和水蒸気濃度の値が用いられる。また、水蒸気センサとしては、酸化物半導体である酸化錫の半導体を用いた水蒸気センサ(例えば、TGS2180(フィガロ技研社製、商品名)を用いることができる。
【0173】
以上説明したように第11の実施の形態によれば、大気により呼気が希釈される場合ばかりでなく、呼気が希釈されずに直接センサに接触する場合においても精度良くエタノール濃度を検出することができる。
【0174】
上記(25)式は変形すると下記の式で表わすことができる。
【0175】
[EtOH]breath=Δa/Δo([O2]breath−[O2]base)+[EtOH]base
・・・(27)
ただし、Δaは上記で説明したエタノール濃度の変化量または変化率であり、Δoは酸素濃度の変化量、変化率、または所定時間内の積分値である。Δoに代えて、二酸化炭素濃度の変化量、変化率、または所定時間内の積分値、若しくは水蒸気濃度の変化量、変化率、または所定時間内の積分値を用いることもできる。
【0176】
したがって、本実施の形態では、呼気希釈倍率Diを算出することなく、エタノール濃度の変化量、変化率、または所定時間内の積分値、酸素濃度(または二酸化炭素濃度、または水蒸気濃度)の変化量、変化率、または所定時間内の積分値、一定値である呼気中の酸素濃度(または二酸化炭素濃度、または水蒸気濃度)からセンサで検出された大気中の酸素濃度(または二酸化炭素濃度、または水蒸気濃度)を減算した差、及びセンサで検出された大気中のエタノール濃度とを用いて、上記(27)式に基づいてエタノール濃度を算出することもできる。
【0177】
酸化物半導体を用いたセンサを利用する実施の形態においても、上記で説明したように、呼気中のエタノールガス濃度の検出信号にノイズ成分が含まれないようにするために、呼気周波数成分の信号のみを通過させるハイパスフィルタ等で構成された呼気信号フィルタを用いることができる。この場合、水蒸気濃度、酸素濃度、または二酸化炭素濃度の検出信号(第2の信号)、またはエタノールガス濃度の検出信号(第1の信号)及び第2の信号の両方の検出信号を、呼気信号フィルタを通過させ、呼気信号フィルタを通過した第2の信号に対する第1の信号の大きさ、または呼気信号フィルタを通過した第2の信号に対する呼気信号フィルタを通過した第1の信号の大きさに基づいて、エタノールガスの濃度を検出ことができる。
【0178】
なお、希釈倍率を考慮した(25)式及び(27)式は、上記で説明した補正ガスを用いる全ての実施の形態に適用することができるものであり、これによって大気により呼気が希釈される場合、及び呼気が希釈されずに直接センサに接触する場合において精度良くエタノール濃度を検出することができる。
【0179】
次に、本発明の第12の実施の形態について説明する。図26に示すように標高の高い高地では大気圧が低くなるため、アルコール濃度を正確に算出するには、気圧補正が必要となる。一般的には、気圧補正が必要な場合には気圧センサによる補正を行うこととなる。本実施の形態では、大気中の酸素分圧は、図27に示すように大気圧と相関し、標高が高くなって大気圧が低くなるに従って大気中の酸素分圧が低下することに着目し、気圧センサの代わりに酸素センサで代用した例について説明する。
【0180】
図28は、酸化物半導体方式のセンサを用いた本実施の形態を示す概略図である。呼気導入管70と、呼気導入管70のー端に取り付けられたファン72と、呼気導入管70の中途に設置されたアルコールセンサ74及び酸素センサ78と、により構成されている。
【0181】
ファン72は呼気導入管70へ呼気を効率よく取り入れるためのものであり、人間から吐き出された呼気は、ファン72により呼気導入管70の一端から吸入され、アルコールセンサ74及び酸素センサ78に接した後、呼気導入管70の他端から排出される。
【0182】
アルコールセンサ74は呼気導入管70内を流れる空気中に含まれるエタノール成分を検出するセンサであり、例えば、酸化錫の半導体を用いたフイガロ技研社製TGS2620(商品名)を使用することができる。
【0183】
酸素センサ78は呼気導入管70内を流れる酸素を検出するセンサであり、例えば、ジルコ二ア固体電解質を用いたフジクラ社製FCX−MVL(商品名)を使用することができる。
【0184】
人間から吐き出された呼気は空気と混合されることで任意に希釈され、アルコールセンサ及び酸素センサヘ到達することになる。
【0185】
アルコールセンサ74及び酸素センサ78の各出力端は、マイクロコンピュータ等で構成された上記と同様のエタノール濃度判定器(図示せず)に接続されている。
【0186】
このエタノール濃度判定器には、大気圧と大気中の酸素濃度(大気中の酸素分圧)との相関、すなわち図27に示す関係を定めたテーブル、及び大気中の酸素濃度(大気中の酸素分圧)と呼気中の酸素濃度(大気中の酸素分圧)との相関、すなわち図29に示す関係を定めたテーブルが予め記憶されている。なお、これらのテーブルに代えて、式によって相関を定めて記憶してもよい。
【0187】
エタノール濃度判定器は、この希釈された呼気に対するセンサ出力の変化から、呼気中のエタノール濃度を下記の計算式に従って算出する。
【0188】
また、本実施の形態では、標高が高く1気圧(760mmHg)より低い大気圧の場合でも、酸素センサから大気圧を算出し、気圧補正をした呼気アルコール濃度を出力することができる。なお、大気圧が1気圧でない場合、大気中の酸素濃度の変化に従って呼気中の酸素濃度も変化するが、両者には図29に示すように、大気中の酸素分圧が高くなるに従って呼気中の酸素分圧も高くなるという相関があるため、この相関を用いて呼気中のエタノール濃度を算出することができる。
【0189】
[EtOH]breath =(([EtOH]peak−[EtOH]base)×(呼気希釈倍率)+[EtOH]base) / Pair ・・・(28)
(呼気希釈倍率)-=( [O2]breath−[O2]base) / ([O2]peak−[O2]base)
ただし、式中の記号は、以下の通りである。
[EtOH]breath:呼気中のエタノール濃度(気圧補正後)
[EtOH]base:呼気が導入される前のアルコールセンサの出力濃度
[EtOH]peak:呼気が導入されたときのアルコールセンサ出力濃度の最大値
(呼気希釈倍率):呼気がセンサ到達までに希釈される倍率
Pair:大気圧
大気圧と大気中酸素濃度([O2]base)との相関から算出(図27参照)
[O2]breath:呼気中酸素濃度
呼気中酸素濃度([O2]breath)と大気中酸素濃度([O2]base)との相関から算出(図29参照)
[O2]base:呼気が導入される前の酸素センサの出力濃度(大気中酸素濃度)
[O2]peak:呼気が導入されたときの酸素センサ出力濃度の最大値
なお、上記では、センサの出力値(出力濃度)として最大値を用いているが、必ずしも最大値である必要はなく、上記で説明したように呼気導入管内に導入され呼気がアルコールセンサ及び酸素センサに接触した時点以降の出力値であればこの出力値の変化量または変化率を用いて上記と同様に呼気中のエタノールガス濃度を算出することが可能である。
【0190】
上記では、ドライバの呼気からエタノールを検出する例について説明したが、エタノール濃度検出器を携帯可能に構成する等により、本発明はドライバ以外の人間の呼気からエタノールを検出する場合にも適用できるものである。
【産業上の利用可能性】
【0191】
本発明は、車両に搭載したり、携帯することによって、人間の呼気からエタノールガスの濃度を検出し、酒気帯び状態であるか否かを判定することができる。車両に搭載する場合には、酒気帯び状態で車両駆動系が駆動しないように制御する際の酒気帯び状態の判定に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0192】
【図1】本実施の形態のエタノール濃度検出器を運転席のステアリングコラムに取り付けた状態を示す概略図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態を示す概略図である。
【図3】本発明の第2の実施の形態を示す概略図である。
【図4】本発明の第3の実施の形態を示す概略図である。
【図5】第3の実施の形態の呼気周波数に応じたエタノール濃度の時間変化を示す線図である。
【図6】本発明の第4の実施の形態を示す概略図である。
【図7】第4の実施の形態の呼気周波数に応じたエタノール濃度の時間変化を示す線図である。
【図8】本発明の第5の実施の形態を示す概略図である。
【図9】二酸化炭素濃度を用いてエタノール濃度を検出する場合の概念を示す図である。
【図10】二酸化炭素濃度及びエタノール濃度の変化を示す線図である。
【図11】本発明の第6の実施の形態を示す概略図である。
【図12】第6の実施の形態のエタノール濃度及び二酸化炭素濃度の時間変化を示す線図である。
【図13】本発明の第7の実施の形態を示す概略図である。
【図14】本発明の第8の実施の形態を示す概略図である。
【図15】第8の実施の形態のエタノール濃度及び二酸化炭素濃度の時間変化を示す線図である。
【図16】本発明の第9の実施の形態を示す概略図である。
【図17】第9の実施の形態のエタノール濃度及び水蒸気濃度の時間変化を示す線図である。
【図18】エタノール及び二酸化炭素の波長に対する吸収度を示す線図である。
【図19】本発明の第10の実施の形態を示す概略図である。
【図20】本発明の第11の実施の形態を示す概略図である。
【図21】第11の実施の形態のアルコールセンサ定量値とガスクロマトグラムの分析値との相関を示す図である。
【図22】第11の実施の形態の呼気エタノール定量値とガスクロマトグラムの分析値との相関を示す図である。
【図23】人間の顔を光源として遠赤外線カメラによりエタノールを測定する状態を示す概略図である。
【図24】遠赤外線カメラにより撮影された画像を示す概略図である。
【図25】遠赤外線カメラにより撮影された顔温度を比較して示す線図である。
【図26】標高と大気圧との関係を示す線図である。
【図27】大気圧と大気圧中酸素濃度(酸素分圧)との関係を示す線図である。
【図28】本発明の第12の実施の形態を示す概略図である。
【図29】呼気中酸素濃度(酸素分圧)と大気中酸素濃度(酸素分圧)との相関を示す線図である。
【符号の説明】
【0193】
10 エタノール濃度検出器
12 ステアリングコラム
20 エタノール用光学フィルタ
22 エタノール用光電変換素子
24 エタノール濃度判定器
30 参照用光学フィルタ
32 参照用光電変換素子
34 36 38 呼気信号フィルタ
40 二酸化炭素用光学フィルタ
42 二酸化炭素用光電変換素子
50 水蒸気用光学フィルタ
52 水蒸気用光電変換素子
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス検出装置にかかり、特に、運転者の呼気から精度よくエタノールの濃度を検出することができるガス検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、呼気中エタノールの検出方法として、酸化物半導体式、燃料電池式、赤外吸収式、及び接触燃焼式等が知られており、ドライバのエタノール濃度を検出してエンジン始動を停止する技術等も提案されている(特許文献1〜特許文献5)。
【0003】
血中エタノールの非侵襲測定方法として、皮膚組織赤外光吸収方法等も提案されているが、体内に取り込まれたエタノールが血中に到達するまで時間遅れが発生するため、検出遅れが発生するという問題がある。
【0004】
また、高精度で赤外線吸収を利用した非分散形赤外線分析計として、ニューマチック赤外検出器も提案されている(非特許文献1)。
【特許文献1】特開2004−212217号公報
【特許文献2】特開2004−279228号公報
【特許文献3】特開2005−296252号公報
【特許文献4】特開平6−197897号公報
【特許文献5】特開2007−147592号公報
【非特許文献1】Readout HORIBA Technical Reports No.7 July 1993
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来の技術では、被験者から離れた位置でエタノール濃度を検出する場合には、呼気が大気中で任意に希釈され、精度良くエタノールガスの濃度を検出することができない、という問題があった。
【0006】
また、赤外線吸収を利用した上記従来の技術では、赤外線ランプ等の光源を装置に組み込む必要がある、という問題があった。
【0007】
本発明は、上記問題点を解消するためになされたもので、呼気が大気中で希釈されても精度良くエタノールガスの濃度を検出することができるガス検出方法及びガス検出装置を提供することを第1の目的とする。
【0008】
また、本発明は、人間の顔を光源として利用することにより、ランプ等の光源を用いることなく、エタノールの濃度を検出することができるガス検出方法及びガス検出装置を提供することを第2の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記第1の目的を達成するために、本発明のガス検出方法は、エタノールガスの濃度に関する物理量を検出すると共に、酸素からなる補正ガスの濃度に関する物理量を検出し、検出した補正ガスの濃度に関する物理量とエタノールガスの濃度に関する物理量とに基づいて、呼気中のエタノールガスの濃度に関する物理量を検出するようにしたものである。
【0010】
また、本発明のガス検出装置は、エタノールガスの濃度に関する物理量を検出するエタノール検出手段と、酸素からなる補正ガスの濃度に関する物理量を検出する補正ガス検出手段と、検出した補正ガスの濃度に関する物理量とエタノールガスの濃度に関する物理量とに基づいて、呼気中のエタノールガスの濃度に関する物理量を検出する濃度検出手段と、を含んで構成したものである。
【0011】
本発明のガス検出方法及びガス検出装置によれば、エタノールの濃度に関する物理量を検出すると共に、酸素からなる補正ガスの濃度に関する物理量を検出し、検出した補正ガスの濃度に関する物理量とエタノールの濃度に関する物理量とに基づいて、呼気中のエタノールガスの濃度に関する物理量を検出するようにしているので、呼気が大気中で希釈されても精度良くエタノール濃度に関する物理量を検出することができる。
【0012】
上記の発明の補正ガス検出手段を構成する補正ガスの濃度を検出するガスセンサとしては、固体電解質を用いて酸素濃度を検出する酸素センサを用いることができる。
【0013】
上記の発明において使用する補正ガス(例えば、水蒸気、二酸化炭素、または酸素)の長所及び短所を以下の表1に基づいて説明する。
【0014】
【表1】
【0015】
水蒸気濃度は、周囲の温度や降雨により変化する大気中の湿度によって変化し、大気中濃度(ベースライン)が安定しない欠点がある。それに対し、二酸化炭素の大気中濃度は0.04%の一定値である。同様に、酸素の大気中濃度は21%のー定値である。従って、大気中濃度の安定性の観点からは、二酸化炭素または酸素を用いるのが好ましい。
【0016】
また、車室内の二酸化炭素は、搭乗者がいなければ大気中と同様であるが、搭乗者がいれば二酸化炭素濃度は徐々に増加する。この理由は、人の呼気には大気中の約100倍の二酸化炭素が含まれているためである。したがって、少人数が乗車している場合には問題は少ないが、閉め切った車室内に多人数が乗車した場合には、二酸化炭素のベースラインは増加し安定しない場合がある。また、窓を開ける等の行為により大気を導入すると二酸化炭素濃度は減少する。
【0017】
一方、車室内の酸素濃度は、乗車人数の如何に関わらずほぼ一定である。人の呼気中の酸素濃度は約16%であり、大気中より約5%低いが、二酸化炭素の濃度差に比べて小さく、多人数が乗り込んで長時間車室内にいても、車室内の酸素濃度は大気中と事実上大差ない。
【0018】
水蒸気濃度は、車室内の乗員に応じて変化する。
【0019】
従って、車室内の濃度安定性の観点からは、二酸化炭素または酸素を用いるのが好ましく、酸素を用いるのがより好ましい。
【0020】
さらに、標高が高い高地では、大気圧が低くなるため、アルコール濃度を正確に検出するためには、気圧補正が必要となる。通常は、気圧センサによって気圧を検出し、アルコール濃度の気圧補正を行うことになる。一方、大気中の酸素分圧は、大気圧と相関するため、気圧センサに代えて酸素センサを用いて気圧補正を行うことが可能である。
【0021】
したがって、気圧補正を行う必要がある場合には、補正ガスとして酸素ガスを用いるのが好ましい。
【0022】
上記の理由から、上記の発明では、補正ガスとして酸素ガスを用いている。
【0023】
大気圧補正された呼気中のエタノールガスの濃度に関する物理量を検出するガス検出装置は、エタノールガスの濃度に関する物理量を検出するエタノール検出手段と、酸素からなる補正ガスの濃度に関する物理量を検出する補正ガス検出手段と、検出した補正ガスの濃度に関する物理量とエタノールガスの濃度に関する物理量とに基づいて、前記検出した補正ガスの濃度に基づいて大気圧補正された呼気中のエタノールガスの濃度に関する物理量を検出する濃度検出手段と、を含んで構成することができる。
【0024】
また、大気圧補正された呼気中のエタノールガスの濃度に関する物理量を検出するガス検出方法では、エタノールガスの濃度に関する物理量を検出すると共に、酸素からなる補正ガスの濃度に関する物理量を検出し、検出した補正ガスの濃度に関する物理量とエタノールガスの濃度に関する物理量とに基づいて、前記検出した補正ガスの濃度に基づいて大気圧補正された呼気中のエタノールガスの濃度に関する物理量を検出することができる。
【0025】
なお、補正ガスとして水蒸気または二酸化炭素を用いることも可能であるので、以下で説明する発明では、補正ガスとして水蒸気または二酸化炭素を用いるか、または補正ガスとして水蒸気、二酸化炭素、及び酸素の少なくとも1種のガスを用いている。
【0026】
補正ガスとして水蒸気、二酸化炭素、及び酸素の少なくとも1種のガスを用いる発明のガス検出装置は、エタノールガスの濃度に関する物理量を検出するエタノール検出手段と、水蒸気、二酸化炭素、及び酸素の少なくとも1種のガスからなる補正ガスの濃度に関する物理量を検出する補正ガス検出手段と、検出された補正ガスの濃度に関する物理量、または検出した補正ガスの濃度に関する物理量及びエタノールガスの濃度に関する物理量から呼気周波数成分を通過させる呼気フィルタと、前記呼気フィルタを通過した補正ガス濃度に関する物理量と前記エタノール検出手段で検出されたエタノールガスの濃度に関する物理量、または前記呼気フィルタを通過した補正ガス濃度に関する物理量と前記呼気フィルタを通過したエタノールガスの濃度に関する物理量と基づいて、呼気中のエタノールガスの濃度に関する物理量を検出する濃度検出手段と、を含んで構成したものである。
【0027】
本発明では、呼気周波数成分の信号を通過させる後述する例えばハイパスフィルタ等で構成された呼気フィルタを用いているので、呼気周期に応じて検出信号が変動する場合においても精度良くエタノールの濃度に関する物理量を検出することができる。
【0028】
上記の発明の補正ガス検出手段は、人間の顔から放射された赤外線との相互作用によって生じる吸収スペクトルであって二酸化炭素のC−O伸縮振動による吸収スペクトルを含む所定波長帯域の赤外線を透過する二酸化炭素用光学フィルタと、前記二酸化炭素用光学フィルタを透過した赤外線を電気信号に変換する二酸化炭素用変換手段とを含む二酸化炭素検出手段、人間の顔から放射された赤外線との相互作用によって生じる吸収スペクトルであって水蒸気による吸収スペクトルを含む所定波長帯域の赤外線を透過する水蒸気用光学フィルタと、前記水蒸気用光学フィルタを透過した赤外線を電気信号に変換する水蒸気用変換手段とを含む水蒸気検出手段、水蒸気、二酸化炭素、及び酸素の少なくとも1種のガスからなる補正ガスの濃度に関する物理量を検出するガスセンサ、赤外線を放射する光源と赤外線検出器とで構成された水蒸気センサ、または赤外線を放射する光源と赤外線検出器とで構成された二酸化炭素センサで構成することができる。
【0029】
補正ガスの濃度を検出するガスセンサとしては、酸化物半導体または高分子膜静電容量を用いて水蒸気の濃度を検出する水蒸気センサ、固体電解質を用いて二酸化炭素の濃度を検出する二酸化炭素センサ、または、固体電解質を用いて酸素濃度を検出する酸素センサを用いることができる。
【0030】
上記の赤外線を放射する光源としては、半導体レーザ、黒体炉、またはセラミックヒータ等を用いた光源を用いることができ、赤外線検出器としてはボロメータ、SOIダイオード、サーモパイル、または強誘電型の検出器を用いることができる。
【0031】
赤外線を用いて水蒸気の濃度に関連する物理量を検出する場合には、エタノールガスの濃度に関する物理量を検出するエタノール検出手段と、人間の顔から放射された赤外線との相互作用によって生じる吸収スペクトルであって水蒸気による吸収スペクトルを含む所定波長帯域の赤外線を透過する水蒸気用光学フィルタと、前記水蒸気用光学フィルタを透過した赤外線を電気信号に変換する水蒸気用変換手段とを含む水蒸気検出手段、または赤外線を放射する光源と赤外線検出器とを含む水蒸気センサで構成され、水蒸気の濃度に関する物理量を補正ガスの濃度に関する物理量として検出する補正ガス検出手段と、検出した補正ガスの濃度に関する物理量とエタノールガスの濃度に関する物理量とに基づいて、呼気中のエタノールガスの濃度に関する物理量を検出する濃度検出手段と、を含んで構成するようにしてもよい。
【0032】
また、上記で説明した各発明のエタノール検出手段は、人間の顔から放射された赤外線との相互作用によって生じる吸収スペクトルであってエタノールのC−O伸縮振動による吸収スペクトルを含む所定波長帯域の赤外線を透過するエタノール用光学フィルタと、前記エタノール用光学フィルタを透過した赤外線を電気信号に変換するエタノール用変換手段とを含むエタノール検出器、酸化物半導体を用いてエタノールガスの濃度に関する物理量を検出するガスセンサ、または赤外線を放射する光源と赤外線検出器とで構成されたアルコールセンサで構成することができる。
【0033】
アルコールセンサの赤外線を放射する光源としては、上記と同様に半導体レーザ、黒体炉、またはセラミックヒータ等を用いた光源を用いることができ、赤外線検出器としては上記と同様にボロメータ、SOIダイオード、サーモパイル、または強誘電型の検出器を用いることができる。
【0034】
そして、上記の各発明の濃度検出手段は、以下の(1)式〜(4)式のいずれか1つの式に従って呼気中のエタノールガスの濃度、または濃度に比例した値を濃度に関する物理量として検出するようにすることができる。
【0035】
エタノールガスの濃度に関する物理量=(Δa/Δb) ・・・(1)
エタノールガスの濃度に関する物理量=(Δa/Δb)・BG ・・・(2)
エタノールガスの濃度に関する物理量=(Δa/Δb)・(BG−AG)
+[EtOH]base・・・(3)
エタノールガスの濃度に関する物理量=Δa・Di+[EtOH]base・・・(4)
ただし、Δaは前記エタノール検出手段で検出されたエタノールガスの濃度に関する物理量の変化量、変化率、または所定時間内の積分値、Δbは前記補正ガス検出手段で検出された補正ガスの濃度に関する物理量の変化量、変化率、または所定時間内の積分値、BGは予め求められた呼気中補正ガスの濃度に関する物理量、AGは前記補正ガス検出手段で検出された大気中補正ガスの濃度に関する物理量、[EtOH]baseは前記エタノール検出手段で検出された大気中エタノールガスの濃度に関する物理量、Diは以下の式で表わされる呼気希釈倍率である。
【0036】
Di=(BG−AG)/Δb ・・・(5)
上記(1)式及び(2)式を用いることにより、大気に対して呼気の量が充分小さいときのエタノールガスの濃度に関する物理量を精度良く検出することができる。
【0037】
また、上記(3)式及び(4)式では、大気に対する呼気の量を考慮しているので、呼気が希釈される場合のみならず呼気が希釈されずに直接検出手段に接触する場合においてもエタノールガスの濃度に関する物理量を精度良く検出することができる。
【0038】
上記第2の目的を達成するために本発明のガス検出方法は、人間の顔から放射された赤外線との相互作用によって生じる吸収スペクトルであってエタノールのC−O伸縮振動による吸収スペクトルを含む所定波長帯域の赤外線の強度をエタノールの赤外線吸収強度として検出し、検出したエタノールの赤外線吸収強度の大きさに基づいて、呼気中のエタノールガスの濃度に関する物理量を検出することを特徴としている。
【0039】
本発明者等は以下の点に着目し、人間の顔を光源として人間の顔から放射された赤外線を用いることにより本発明に到達したものである。人間の顔からの赤外線放射のピークは、27℃で9.66μm、37℃で9.35μmであり、エタノールのC−O伸縮振動による吸収スペクトルの中心波長9.5μmと略同一の波長帯である。また、人間の顔から放射される赤外線の方向と呼気吹き出し方向とが同じであり、呼気中のエタノールガスと人間の顔から放射された赤外線とが相互作用する。
【0040】
このため、本発明では、人間の顔を光源として用い、人間の顔から放射された赤外線との相互作用によって生じる吸収スペクトルであって、例えば呼気中のエタノールのC−O伸縮振動による吸収スペクトルを含む所定波長域、好ましくはこの吸収スペクトルを中心波長とする所定波長域の赤外線を抽出し、この赤外線の強度から呼気中のエタノールガスの濃度に関する物理量を検出する。
【0041】
本発明では、人間の顔を光源として用いているため、赤外線ランプ等の光源を用いることなく、高精度に呼気中のエタノール濃度に関する物理量を検出することができる。
【0042】
本発明では、人間の顔から放射された赤外線との相互作用によって生じる吸収スペクトルであってエタノールのC−O伸縮振動による吸収スペクトルを含む所定波長帯域の赤外線の強度をエタノールの赤外線吸収強度として検出すると共に、人間の顔から放射された赤外線との相互作用によって生じる吸収スペクトルであって二酸化炭素のC−O伸縮振動による吸収スペクトルを含む所定波長帯域の赤外線の強度を二酸化炭素の赤外線吸収強度として検出し、検出した二酸化炭素の赤外線吸収強度とエタノールの赤外線吸収強度とに基づいて、呼気中のエタノールガスの濃度に関する物理量を検出するようにすることができる。
【0043】
人間は呼吸を行っているため、呼吸のリズムに応じて呼気中に含まれるエタノールの濃度が周期的に変化する。また、人間の口から離れた位置で呼気を採取する場合、呼吸のリズムに応じて採取位置での呼気中に含まれるエタノールの濃度が変化すると共に、大気中にエタノールが含まれていた場合には大気中のエタノールがノイズとして検出され、精度良く、エタノールの濃度を検出できない場合が生じる。本発明では、大気中の二酸化炭素の濃度の変化は呼吸リズムに比較して充分遅いことに着目し、検出した二酸化炭素の赤外線吸収強度とエタノールの赤外線吸収強度とに基づいて、例えば、検出した二酸化炭素の赤外線吸収強度に対するエタノールの赤外線吸収強度の大きさに基づいて、呼気中のエタノールガスの濃度に関する物理量を検出する。
【0044】
これにより、呼吸によってエタノールガスの濃度が変動したり、呼気が薄められたり、または人間の口から離れた位置で呼気を採取する場合においても、精度良く呼気中のエタノールガスの濃度に関する物理量を検出することができる。
【0045】
呼気中にエタノールが含まれている場合、大気中に放出されるエタノール濃度及び二酸化炭素濃度は呼気のリズムに応じて変動する。それに比較して大気中に元々存在するエタノール濃度及び二酸化炭素濃度の変動は、呼気のリズムに比較して充分遅いと仮定することができる。したがって、呼気中のエタノールガス濃度の検出信号にノイズ成分が含まれないようにするためには、後述するように、呼気周波数成分の信号を通過させるハイパスフィルタ等で構成された呼気フィルタを用いることができる。この場合、二酸化炭素濃度に関する物理量の検出信号(第2の信号)、またはエタノールガス濃度に関する物理量の検出信号(第1の信号)及び二酸化炭素濃度に関する物理量の検出信号(第2の信号)の両方の検出信号を、呼気フィルタを通過させ、呼気フィルタを通過した第2の信号と第1の信号、または呼気フィルタを通過した第2の信号と呼気フィルタを通過した第1の信号とに基づいて、例えば、呼気フィルタを通過した第2の信号に対する第1の信号の大きさ、または呼気フィルタを通過した第2の信号に対する呼気フィルタを通過した第1の信号の大きさに基づいて、エタノールガスの濃度に関する物理量を検出することができる。
【0046】
人間の口から離れた位置で呼気を採取する場合等において、人間の呼気中に含まれる水蒸気も二酸化炭素と同様の上記で説明した特性を有しているので、二酸化炭素に代えて水蒸気を用い、以下のようにして精度良く呼気中のエタノールガスの濃度に関する物理量を検出することもできる。
【0047】
すなわち、人間の顔から放射された赤外線との相互作用によって生じる吸収スペクトルであってエタノールのC−O伸縮振動による吸収スペクトルを含む所定波長帯域の赤外線の強度をエタノールの赤外線吸収強度として検出すると共に、人間の顔から放射された赤外線との相互作用によって生じる吸収スペクトルであって水蒸気の吸収スペクトルを含む所定波長帯域の赤外線の強度を水蒸気の赤外線吸収強度として検出し、検出した水蒸気の赤外線吸収強度とエタノールの赤外線吸収強度とに基づいて、例えば、検出した水蒸気の赤外線吸収強度に対するエタノールの赤外線吸収強度の大きさに基づいて、呼気中のエタノールガスの濃度に関する物理量を検出するようにしてもよい。
【0048】
水蒸気の赤外線吸収強度を検出する場合においても、上記で説明した呼気フィルタを用い、上記と同様に呼気中のエタノールガスの濃度に関する物理量を検出することもできる。
【0049】
本発明のガス検出装置は、人間の顔から放射された赤外線との相互作用によって生じる吸収スペクトルであってエタノールのC−O伸縮振動による吸収スペクトルを含む所定波長帯域の赤外線を透過するエタノール用光学フィルタと、前記エタノール用光学フィルタを透過した赤外線を電気信号に変換するエタノール用変換手段と、前記エタノール用変換手段で変換された電気信号の大きさに基づいて、呼気中のエタノールガスの濃度に関する物理量を検出する検出手段と、を含んで構成することができる。
【0050】
このガス検出装置によれば、上記で説明したように、人間の顔を光源として用いて、赤外線ランプ等の光源を用いることなく、高精度に呼気中のエタノール濃度に関する物理量を検出することができる。
【0051】
上記の検出手段は、以下の式に従ってエタノールガスの濃度に関する物理量[EtOH]を検出するようにすることができる。
【0052】
[EtOH]=−ln(Te/To)/ke・L ・・・(6)
ただし、Teは前記エタノール用変換手段で変換された電気信号より得られる赤外線の透過光量、Toは人間の顔から放射された赤外線の光量、keはエタノールガスの吸収係数、Lはエタノールガスと人間の顔から放射された赤外線との相互作用長であり、lnは自然対数を表わす。
【0053】
また、本発明のガス検出装置は、人間の顔から放射された赤外線との相互作用によって生じる吸収スペクトルであってエタノールのC−O伸縮振動による吸収スペクトルを含む所定波長帯域の赤外線を透過するエタノール用光学フィルタと、人間の顔から放射された赤外線の波長の帯域を含み、かつ前記所定波長帯域以外の帯域の赤外線を透過させる参照用光学フィルタと、前記エタノール用光学フィルタを透過した赤外線を電気信号に変換するエタノール用変換手段と、前記参照用光学フィルタを透過した赤外線を電気信号に変換する参照用変換手段と、前記エタノール用変換手段で変換された電気信号と前記参照用変換手段で変換された電気信号とに基づいて、呼気中のエタノールガスの濃度に関する物理量を検出する検出手段と、を含んで構成することができる。
【0054】
このガス検出装置によれば、人間の顔から放射された赤外線の波長の帯域を含み、かつ上記所定波長帯域以外の帯域の赤外線の透過光量を用いているため、人間の顔から放射された赤外線の光量が変動した場合においてもこの透過光量を用いることにより精度良く呼気中のエタノールの濃度に関する物理量を検出することができる。
【0055】
このガス検出装置の検出手段は、以下の式に従ってエタノールガスの濃度に関する物理量[EtOH]を検出することができる。
【0056】
[EtOH]=−ln(Te/To)/ke・L ・・・(7)
ただし、Teは前記エタノール用変換手段で変換された電気信号より得られる赤外線の透過光量、Toは前記参照用変換手段で変換された電気信号より得られる人間の顔から放射された赤外線の透過光量、keはエタノールガスの吸収係数、Lはエタノールガスと人間の顔から放射された赤外線との相互作用長であり、lnは自然対数を表わす。
【0057】
また、本発明のガス検出装置は、人間の顔から放射された赤外線との相互作用によって生じる吸収スペクトルであってエタノールのC−O伸縮振動による吸収スペクトルを含む所定波長帯域の赤外線を透過するエタノール用光学フィルタと、人間の顔から放射された赤外線との相互作用によって生じる吸収スペクトルであって二酸化炭素のC−O伸縮振動による吸収スペクトルを含む所定波長帯域の赤外線を透過する二酸化炭素用光学フィルタと、前記エタノール用光学フィルタを透過した赤外線を電気信号に変換するエタノール用変換手段と、前記二酸化炭素用光学フィルタを透過した赤外線を電気信号に変換する二酸化炭素用変換手段と、前記二酸化炭素用変換手段で変換された電気信号と前記エタノール用変換手段で変換された電気信号とに基づいて、呼気中のエタノールガスの濃度に関する物理量を検出する検出手段と、を含んで構成することもできる。
【0058】
このガス検出装置によれば、上記で説明したように、人間の顔を光源として用いると共に、大気中の二酸化炭素の濃度の変化は呼吸リズムに比較して充分遅いことに着目し、検出した二酸化炭素の赤外線吸収強度に対するエタノールの赤外線吸収強度の大きさに基づいて、エタノールガスの濃度に関する物理量を検出しているので、人間の口から離れた位置で呼気を採取する場合においても、精度良く呼気中のエタノールガスの濃度に関する物理量を検出することができる。
【0059】
このガス検出装置の検出手段は、二酸化炭素用変換手段で変換された電気信号に対するエタノール用変換手段で変換された電気信号の大きさに基づいて、呼気中のエタノールガスの濃度に関する物理量を検出する以下の式に従ってエタノールガスの濃度に関する物理量[EtOH]を検出することができる。
【0060】
[EtOH]=(ne(t2)−ne(t1))/(nc(t2)−nc(t1))
・・・(8)
ここで、ne(t2)、ne(t1)は各々時刻t2、t1における以下の式のneで表わされるエタノールガスの濃度に関する物理量、nc(t2)、nc(t1)は各々時刻t2、t1における以下の式のncで表わされる二酸化炭素の濃度に関する物理量である。
【0061】
ne=−ln(Te/To)/ke・L
nc=−ln(Tc/To)/kc・L
ただし、Teは前記エタノール用変換手段で変換された電気信号より得られる赤外線の透過光量、Tcは前記二酸化炭素用変換手段で変換された電気信号より得られる赤外線の透過光量、Toは人間の顔から放射された赤外線の光量、keはエタノールガスの吸収係数、kcは二酸化炭素の吸収係数、Lはエタノールガス及び二酸化炭素と人間の顔から放射された赤外線との相互作用長である。
【0062】
また、呼気中に含まれる二酸化炭素と呼気中に含まれる水蒸気とは同様の特性を有しているので、人間の顔から放射された赤外線との相互作用によって生じる吸収スペクトルであってエタノールのC−O伸縮振動による吸収スペクトルを含む所定波長帯域の赤外線を透過するエタノール用光学フィルタと、人間の顔から放射された赤外線との相互作用によって生じる吸収スペクトルであって水蒸気の吸収スペクトルを含む所定波長帯域の赤外線を透過する水蒸気用光学フィルタと、前記エタノール用光学フィルタを透過した赤外線を電気信号に変換するエタノール用変換手段と、前記水蒸気用光学フィルタを透過した赤外線を電気信号に変換する水蒸気用変換手段と、前記水蒸気用変換手段で変換された電気信号と前記エタノール用変換手段で変換された電気信号と基づいて、呼気中のエタノールガスの濃度に関する物理量を検出する検出手段と、を含んで構成してもよい。
【0063】
この場合、検出手段は、水蒸気用変換手段で変換された電気信号に対するエタノール用変換手段で変換された電気信号の大きさに基づいて、呼気中のエタノールガス濃度に関する物理量を検出する以下の式に従って呼気中のエタノールガスの濃度に関する物理量[EtOH]を検出することができる。
【0064】
[EtOH]=(ne(t2)−ne(t1))/(nw(t2)−nw(t1))
・・・(9)
ここで、ne(t2)、ne(t1)は各々時刻t2、t1における以下の式のneで表わされるエタノールガスの濃度に関する物理量、nw(t2)、nw(t1)は各々時刻t2、t1における以下の式のnwで表わされる水蒸気の濃度に関する物理量である。
【0065】
ne=−ln(Te/To)/ke・L
nw=−ln(Tw/To)/kw・L
ただし、Teは前記エタノール用変換手段で変換された電気信号より得られる赤外線の透過光量、Twは前記水蒸気用変換手段で変換された電気信号より得られる赤外線の透過光量、Toは人間の顔から放射された赤外線の光量、keはエタノールガスの吸収係数、kwは水蒸気の吸収係数、Lはエタノールガス及び水蒸気と人間の顔から放射された赤外線との相互作用長である。
【0066】
なお、上記(8)式及び(9)式は、上記(1)式に相当する式である。
【0067】
上記の二酸化炭素の濃度に関する物理量または水蒸気濃度に関する物理量を用いるガス検出装置では、人間の顔から放射された赤外線の波長帯域を含み、かつ前記所定波長帯域以外の帯域の赤外線を透過させる参照用光学フィルタと、前記参照用光学フィルタを透過した赤外線を電気信号に変換する参照用変換手段と、を更に設け、検出手段が、前記参照用変換手段で変換された電気信号を更に用いてエタノールガス濃度に関する物理量を検出するようにしてもよい。
【0068】
また、人間の顔から放射された赤外線の波長帯域を含み、かつ前記所定波長帯域以外の帯域の赤外線を透過させる参照用光学フィルタと、前記参照用光学フィルタを透過した赤外線を電気信号に変換する参照用変換手段と、を更設け、検出手段が、人間の顔から放射された赤外線の光量Toとして前記参照用変換手段で変換された電気信号より得られる人間の顔から放射された赤外線の透過光量を用いてエタノールガスの濃度に関する物理量[EtOH]を検出するようにしてもよい。
【0069】
上記で説明したガス検出装置では、前記エタノール用変換手段で変換された電気信号から呼気周波数成分の信号を通過させる呼気フィルタを更に設け、前記検出手段が、前記エタノール用変換手段で変換され、かつ前記呼気フィルタを通過した電気信号の大きさに基づいて、エタノールガスの濃度に関する物理量を検出するようにしてもよい。
【0070】
このように電気信号から呼気周波数成分の信号を通過させる呼気フィルタを設け、呼気フィルタを通過した電気信号の大きさに基づいて、エタノールガスの濃度に関する物理量を検出することにより、呼吸のリズムに応じて採取位置での呼気中に含まれるエタノールの濃度に関する物理量が変化する場合においても、精度良くエタノールの濃度に関する物理量を検出することができる。
【0071】
呼気フィルタでは、エタノール用変換手段で変換された電気信号のみでなく、エタノール用変換手段で変換された電気信号及び前記二酸化炭素用変換手段で変換された電気信号から呼気周波数成分の信号を通過させてもよく、またエタノール用変換手段で変換された電気信号及び前記水蒸気用変換手段で変換された電気信号から呼気周波数成分の信号を通過させてもよい。
【0072】
呼気中に含まれる二酸化炭素及び水蒸気は、呼吸のリズムに応じて採取位置での呼気中に含まれ濃度に関する物理量が変化する場合があるが、このように電気信号から呼気周波数成分の信号を通過させる呼気フィルタを設けることにより、精度良くエタノールの濃度に関する物理量を検出することができる。
【0073】
上記で説明した各発明の濃度に関する物理量としては、濃度、または濃度に比例した値を用いることができる。また、呼気フィルタで呼気周波数成分の信号を通過させるようにしたが、呼気周波数成分の信号のみを通過させるようにしてもよい。
【発明の効果】
【0074】
以上説明したように本発明によれば、エタノールの濃度に関する物理量を検出すると共に、呼気中に含まれる二酸化炭素または酸素からなる補正ガスの濃度、水蒸気、二酸化炭素、及び酸素の少なくとも1種のガスからなる補正ガスの濃度を基準にして呼気中のエタノールガスの濃度を検出するようにしているので、呼気が薄められたり大気中の成分がノイズとして混入する場合においても、精度良く呼気中のエタノール濃度に関する物理量を検出することができる、という効果が得られる。
【0075】
また、人間の顔を光源として用い、人間の顔から放射された赤外線との相互作用によって生じる吸収スペクトルであって呼気中のエタノールのC−O伸縮振動による吸収スペクトルを含む所定波長域の赤外線を抽出し、この赤外線の強度からエタノールガスの濃度に関する物理量を検出しているので、赤外線ランプ等の光源を用いることなく、高精度に呼気中のエタノール濃度に関する物理量を検出することができる、という効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0076】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を詳細に説明する。以下で説明する実施の形態では、濃度に関連する物理量として濃度を用いた場合について説明するが、濃度に比例する値を用いる場合も同様に説明することができる。
【0077】
本実施の形態は、図1に示すように、エタノール濃度検出器10を運転席に設けられたステアリングコラム12に、ドライバの顔から放射された赤外線を受光可能で、かつドライバの呼気が到達可能な位置に取り付け、ドライバの呼気からアルコールの一種であるエタノールを検出するようにしたものである。
【0078】
以下、ガス検出装置としてのエタノール濃度検出器の実施の形態について説明する。第1の実施の形態のエタノール濃度検出器10は、図2に示すように、エタノールのC−O伸縮振動による吸収スペクトル(波長9.5μm)を含む所定波長帯域(例えば、エタノールのC−O伸縮振動による吸収スペクトルを中心波長とする9μm〜10μmの波長帯域)の赤外線を透過するバンドパスフィルタで構成された光学フィルタ20と、光学フィルタ20を透過した赤外線を電気信号に変換し、透過光量に応じた電気信号を出力するボロメータ、SOIダイオード、またはサーモパイル等で構成されたエタノール用光電変換素子22とを備えている。
【0079】
エタノール用光電変換素子22には、エタノールガスの濃度を検出すると共に、検出したエタノールの濃度と閾値とを比較し、エタノール濃度を判定するエタノール濃度判定器24が接続されている。エタノール濃度判定器24は、マイクロコンピュータで構成することができる。
【0080】
人間の顔から放射される赤外線の波長帯域は、300°Kの温度で約2μm〜100μmであり、波長9.5μm前後で放射強度が最も高くなる。一方、エタノールのC−O伸縮振動による吸収スペクトルの中心波長は、図18に示すように、略9.5μmであり、人間の顔から放射される赤外線の放射強度が最も高くなる波長とエタノールのC−O伸縮振動による吸収スペクトルの中心波長とは略同一である。
【0081】
また、ドライバの顔から放射される赤外線の方向と呼気吹き出し方向とが同じであるので、呼気中のエタノールガスとドライバの顔から放射された赤外線とが、ドライバの顔とエタノール濃度検出器との間で相互作用する。
【0082】
したがって、本実施の形態のエタノール濃度検出器によれば、ドライバの顔から放射
された赤外線と呼気中のエタノールとの相互作用によって、エタノールのC−O伸縮振動による吸収スペクトル生じ、吸収スペクトルを含む所定波長帯域の赤外線の強度が低下する。
【0083】
エタノール用光電変換素子22から出力される電気信号の強度Te、すなわちフィルタ20を透過した赤外線の透過光量は以下の式で表わされる。
【0084】
Te=ToEXP(−ne・ke・L) ・・・(10)
ただし、Toは光源であるドライバの顔の光量、neはエタノールガスの濃度、keはエタノールガスの吸収係数、Lはガスと光の相互作用長(光学フィルタ20からドライバの顔までの距離で表わされる光路長)であり、EXPは指数関数を表わす。
【0085】
上記(10)式より、呼気中のエタノールの濃度[EtOH]は、以下の(11)式で表わされる。
【0086】
[EtOH]=ne=−ln(Te/To)/ke・L ・・・(11)
ただし、lnは、自然対数を表わす。
【0087】
したがって、エタノール濃度判定器24で上記(11)式に従って呼気中のエタノールの濃度[EtOH]を演算し、演算した値と予め定めた閾値とを比較し、演算した値が閾値以上の場合にエタノールの濃度が高いと判定し、エンジンが始動できないようにする等の不正ができないように制御する。
【0088】
なお、光源の光量Toは、予め検出した複数の被験者の顔の光量の平均値を用いるか、またはエタノール濃度を検出する前にドライバの顔から放射された赤外線を光学フィルタ20を透過させずに光電変換素子22で検出した値を用いるようにすればよい。なお、時間帯や季節に応じて光源の光量Toが変化するので、時間帯や季節に応じて光源の光量Toを変化させるようにしてもよい。
【0089】
本実施の形態のエタノール濃度検出器によれば、ドライバの顔から放射された赤外線との相互作用によって生じる呼気中のエタノールのC−O伸縮振動による吸収スペクトルを含む所定波長帯域の赤外線の強度が、エタノールの赤外線吸収強度として検出され、検出されたエタノールの赤外線吸収強度の大きさに基づいて、呼気中のエタノールガスの濃度が検出される。
【0090】
次に、図3を参照して本発明の第2の実施の形態について説明する。第2の実施の形態は、第1の実施の形態における光源(ドライバの顔)の光量Toに相当する赤外線光量を検出するための参照用赤外線検出器を設けたものである。したがって、図3において図2と対応する部分には同一符号を付して説明を省略する。
【0091】
参照用赤外線検出器は、エタノールのC−O伸縮振動による吸収スペクトル以外の所定波長帯域の赤外線を透過する参照用光学フィルタ30と、参照用光学フィルタ30を透過した赤外線を電気信号に変換するボロメータ、SOIダイオード、またはサーモパイル等で構成された参照用光電変換素子32とを含んで構成されている。光学フィルタ30としては、エタノールのC−O伸縮振動による吸収スペクトルを含む所定波長帯域(例えば、9μm〜10μm)の赤外線を遮断し、かつこの所定帯域以外の赤外線を透過するバンドカットフィルタで構成された光学フィルタを用いることができる。
【0092】
本実施の形態のエタノール濃度判定器24では、上記(11)式の光源の光量Toとして参照用光電変換素子32から出力された電気信号の強度を用いて上記(11)式に従って呼気中のエタノールの濃度[EtOH]を演算し、演算した値と予め定めた閾値とを比較してエタノール濃度を判定し、不正に対する制御を行う。
【0093】
本実施の形態によれば、ドライバの顔から放射された赤外線を用いて呼気に含まれるエタノールガス濃度を検出することができる。本実施の形態によれば、光源の光量Toとして参照用赤外線検出器で検出された光量を用いているため、気温の変動や体調の変動等によって光源であるドライバの顔から放射された赤外線光量が変動した場合においても、光源の変動の影響を受けることなくエタノール濃度を検出することができる。
【0094】
次に、図4を参照して本発明の第3の実施の形態について説明する。第3の実施の形態は、第1の実施の形態におけるエタノールガス濃度を示す電気信号から呼気のタイミングに相当する呼気周波数成分の信号のみを抽出し、エタノール濃度を検出するものである。したがって、図4において図2と対応する部分には同一符号を付して説明を省略する。
【0095】
本実施の形態には、エタノール用光電変換素子22の出力側とエタノール濃度判定器24との間に、光電変換素子22から出力された電気信号から呼気周波数成分以上の信号のみを通過させるハイパスフィルタで構成された呼気信号フィルタ34を接続し、エタノール用光電変換素子22から出力された電気信号から呼気周波数成分に相当する成分の電気信号のみを抽出し、エタノール濃度判定器24に入力するようにしたものである。
【0096】
本実施の形態のエタノール濃度判定器24では、上記(11)式に従って図5に示すように呼気周波数に応じて時間変化するエタノール濃度が演算される。エタノール濃度判定器24では、演算されたエタノール濃度の所定時間(t2−t1)内の変化量nep=ne(t2)−ne(t1)(ただし、ne(t2)は時刻t2におけるエタノールの濃度、ne(t1)は時刻t1におけるエタノールの濃度を示す)をエタノールの濃度として演算し、上記の実施の形態と同様に不正を防止する制御を行う。なお、所定時間(t2−t1)内の変化量nepに代えて、ピークからピークまでの値、すなわちピークトゥピーク値を用いてもよく、単位時間当たりの変化量である変化率、または所定時間内のエタノールの濃度の積分値を用いてもよい。
【0097】
本実施の形態によれば、呼気中のエタノール成分を検出し、エタノールの濃度を所定時間内の変化量nepで求めているため、より正確にエタノール濃度を検出することができる。
【0098】
次に、図6を参照して本発明の第4の実施の形態について説明する。第4の実施の形態は、第2の実施の形態におけるエタノール用光電変換素子出力及び参照用光電変換素子出力の各々から呼気のタイミングに相当する呼気周波数成分の信号のみを抽出し、エタノール濃度を測定するものである。したがって、図6において図3と対応する部分には同一符号を付して説明を省略する。
【0099】
本実施の形態では、エタノール用光電変換素子22の出力側及び参照用光電変換素子32の出力側とエタノール濃度判定器24との間に、光電変換素子22及び光電変換素子32から出力された電気信号の各々から呼気周波数成分のみの信号を通過させるハイパスフィルタで構成された呼気信号フィルタ36が接続されている。
【0100】
この呼気信号フィルタ36により、光電変換素子22及び光電変換素子32の各々から出力された電気信号のうち呼気周波数成分に相当する成分の電気信号のみが抽出され、エタノール濃度判定器24に入力される。
【0101】
本実施の形態のエタノール濃度判定器24では、呼気信号フィルタ36から出力される光電変換素子22及び光電変換素子32の各々から出力された電気信号から呼気周波数成分に相当する成分の電気信号のみを用いて、上記(11)式に従って図7に示すように呼気周波数に応じて時間変化するエタノール濃度が演算される。エタノール濃度判定器24では、演算されたエタノール濃度の変化量nep=ne(t2)−ne(t1)をエタノールの濃度として演算し、上記の実施の形態と同様に不正を防止する制御を行う。
【0102】
本実施の形態によれば、光源の光量Toとして参照用光電変換素子から出力された光量を用いているため、気温の変動や体調の変動等によって光源であるドライバの顔から放射された赤外線光量が変動した場合においても光源の光量変動によるエタノール濃度検出への影響を防止することができると共に、呼気として排出されたガス中のエタノール成分を検出し、エタノールの濃度を変化量で求めているため、より正確にエタノール濃度を測定することができる。
【0103】
なお、第4の実施の形態では、エタノール用光電変換素子出力及び参照用光電変換素子出力から呼気周波数成分に相当する周波数成分を抽出する例について説明したが、光源であるドライバの顔から放射される赤外線量は、呼気周波数に応じた変動は少ないと考えられるので、呼気信号フィルタを参照用光電変換素子の出力側に接続することなく、エタノール用光電変換素子の出力側にのみ接続するようにしてもよい。
【0104】
次に、本発明の第5の実施の形態について説明する。第5の実施の形態は、二酸化炭素ガス濃度に対するエタノール濃度の割合を算出することで、ドライバの顔からエタノール濃度検出器までの距離(光路長)の変動による影響を防止するようにしたものである。なお、図8において図2と対応する部分には同一符号を付して説明を省略する。
【0105】
本実施の形態のエタノール濃度検出器には、図8に示すように、上記で説明したエタノール用光学フィルタ20及びエタノール用光電変換素子22が設けられると共に、二酸化炭素のC−O伸縮振動による吸収スペクトル(図18から理解されるように中心波長15μm)を含む所定波長帯域(例えば、15μmを中心波長とする14μm〜16μmの所定波長帯域)の赤外線を透過する二酸化炭素用光学フィルタ40、及び光学フィルタ40を透過した赤外線を電気信号に変換するボロメータ、SOIダイオード、またはサーモパイル等で構成された二酸化炭素用光電変換素子42が設けられている。
【0106】
二酸化炭素用光電変換素子42とエタノール濃度判定器44との間には、二酸化炭素用光電変換素子42から出力された電気信号から呼気周波数成分以上の信号を通過させ、呼気周波数成分未満の信号を減衰させるハイパスフィルタで構成された呼気信号フィルタ38が設けられている。
【0107】
エタノール用光電変換素子22及び呼気信号フィルタ38は、エタノール濃度判定器44に接続されている。エタノール濃度判定器44は、以下の(3)式に従って呼気信号フィルタ38を通過した電気信号から得られる二酸化炭素ガス濃度ncに対するエタノール用光電変換素子22から出力された電気信号から得られるエタノール濃度neの割合を呼気中のエタノール濃度[EtOH]として演算する。
【0108】
[EtOH]=ne/nc ・・・(12)
ただし、neは上記(11)式で求められるエタノールガス濃度、ncは下記(13)式で求められる二酸化炭素ガス濃度である。
【0109】
nc=−ln(Tc/To)/kc・L ・・・(13)
ただし、Tcは二酸化炭素用光電変換素子から出力され、かつ呼気信号フィルタを通過した電気信号より得られる透過光量、kcは二酸化炭素の吸収係数である。光源の光量Toは、第1の実施の形態で説明した値が用いられる。
【0110】
なお、エタノールガス濃度は、上記(12)式に代えて下記で説明する(20)式の二酸化炭素濃度の変化量ncp=nc(t2)−nc(t1)に対するエタノール濃度の変化量(nep=ne(t2)−ne(t1)の割合の大きさで求めるようにしてもよく、二酸化炭素濃度の変化率Δncに対するエタノール濃度の変化率Δneの割合の大きさで求めるようにしてもよく、二酸化炭素濃度の所定時間内の積分値に対するエタノール濃度の所定時間内の積分値の割合の大きさで求めるようにしてもよい。
【0111】
以下、本実施の形態において二酸化炭素濃度を用いる理由について説明する。特許文献2に記載されているように、採取バッグを用いる場合、採取バッグ中のガス濃度として、エタノールガス濃度及び二酸化炭素濃度各々に同一倍率αを乗算した測定値が得られる。したがって、エタノールガス濃度及び二酸化炭素濃度各々の測定値をnem、ncmとし、呼気中二酸化炭素濃度ncbが既知であれば下記(14)式より呼気中エタノール濃度nebが得られる。
【0112】
(nem/ncm)ncb=(α・neb/α・ncb)ncb=neb
・・・(14)
一方、第5の実施の形態のようにドライバから離れた位置で時々刻々ガスを採取する場合について図9を参照して説明すると、呼吸のリズムに応じて、すなわち時間tに応じて倍率α(t)が変動する。また、採集されたガスには時間tに応じて濃度が変動する大気中のエタノール(濃度nen(t))及び二酸化炭素(濃度ncn(t))が含まれている場合には、大気中のエタノール及び二酸化炭素がノイズとして検出されることになる。エタノール及び二酸化炭素各々の測定値nem(t)、ncm(t)は以下の(15)式で表わされるため、上記(14)式の原理を用いてエタノール濃度を検出することはできない。
【0113】
ncm(t)=α(t)ncb+ncn(t)
nem(t)=α(t)neb+nen(t) ・・・(15)
以下、二酸化炭素濃度を用いる本実施の形態の検出原理を説明する。一般的に大気中の二酸化炭素濃度の変化は呼気リズムに比較して充分遅いと仮定することができる。したがって、大気中の二酸化炭素の濃度ncn(t)の変動周波数と、エタノール濃度の変動周波数との相違を利用して、ncm(t)をハイパスフィルタで構成された上記で説明した呼気信号フィルタを通過させることにより、変動周波数が低い大気中の二酸化炭素の濃度ncn(t)を示す信号が除去された呼気信号フィルタ通過信号ncm’(t)=α(t)ncbを得ることができる。
【0114】
ここで、α(t)とnen(t)とが無相関であると仮定すれば、下記(16)式より呼気中エタノール濃度nebが得られる。
【0115】
【数1】
【0116】
ただし、(16)式中の演算子○は以下の(17)式で定義される相関関数を表わす。
【0117】
【数2】
【0118】
ただし、Tは任意の時間長である。
【0119】
上記の特別な場合として大気中のエタノール及び二酸化炭素が時間的に変動しないと仮定できる場合は、呼気信号フィルタを用いてnem(t)及びncm(t)の両方を呼気信号フィルタを通過させてnem’(t)及びncm’(t)を求めることにより下記のように時間変動分のみを取り出すことができる。なお、この特別な場合の実施の形態は、第6の実施の形態として以下で説明する。
【0120】
nem’(t)=α(t)neb
ncm’(t)=α(t)ncb ・・・(18)
この場合には、より簡易な下記(19)式より呼気中エタノール濃度nebが得られる。
【0121】
【数3】
【0122】
この(19)式による概念図を図10に示す。図から理解されるように以下の式によってエタノール濃度を検出することができる。
【0123】
エタノール濃度=(Δa/Δc)・呼気中二酸化炭素濃度 ・・・(20)
ただし、Δaは上記で説明したエタノール濃度の変化量(nep=ne(t2)−ne(t1))、変化率、または所定時間内の積分値であり、Δcは上記(13)式で演算される二酸化炭素濃度の変化量、変化率、または所定時間内の積分値であり、呼気中の二酸化炭素濃度は約3.8%で一定である。
【0124】
光源から検出器までの距離で表わされる光路長が変化すると、ガスと赤外線との相互作用長が変化することから光路長に応じて呼気中のエタノール濃度の検出値が変化する可能性がある。また、呼気が空気等の気体によって薄められるとエタノール濃度が実際の濃度より薄く検出される可能性がある。
【0125】
ところで、呼気中の二酸化炭素ガス濃度の割合は略一定であり、エタノール濃度が変化しなければ、光路長が変化したり呼気が薄められても、呼気中の二酸化炭素濃度に対するエタノール濃度の割合は一定である。そこで、本実施の形態では、上記で説明したように、検出された呼気中の二酸化炭素濃度に対するエタノール濃度の割合を算出することにより、光路長が変化したり呼気が薄められた場合であっても正確にエタノールの濃度を検出することができる。
【0126】
次に、図11を参照して本発明の第6の実施の形態について説明する。第6の実施の形態は、上記の実施の形態の二酸化炭素濃度を用いる検出原理において説明した大気中のエタノール及び二酸化炭素が呼気変動に比べて時間的にゆっくり変動すると仮定できる場合の実施の形態を示すものである。本実施の形態では、第5の実施の形態におけるエタノール用光電変換素子出力及び二酸化炭素用光電変換素子出力の各々から呼気のタイミングに相当する成分の信号のみを抽出し、呼気中の二酸化炭素濃度に対するエタノール濃度の割合をエタノール濃度として検出するようにしたものである。したがって、図11において図8と対応する部分には同一符号を付して説明を省略する。
【0127】
本実施の形態では、エタノール用光電変換素子22の出力側及び二酸化炭素用光電変換素子42の出力側とエタノール濃度判定器44との間に、光電変換素子22及び光電変換素子42から出力された電気信号の各々から呼気周波数成分以上の信号を通過させるハイパスフィルタで構成された呼気信号フィルタ38が接続されている。この呼気信号フィルタ38により、光電変換素子22及び光電変換素子42の各々から出力された電気信号のうち呼気周波数成分に相当する成分の電気信号が抽出され、エタノール濃度判定器44に入力される。
【0128】
本実施の形態のエタノール濃度判定器44では、呼気信号フィルタ38から出力される光電変換素子22及び光電変換素子42の各々から出力された電気信号のうち呼気周波数成分に相当する成分の電気信号を用いて、上記(12)式に従って呼気周波数に応じて時間変化するエタノール濃度が演算される。エタノール濃度判定器44では、下記(21)式に従って、二酸化炭素濃度の変化量(nc(t2)−nc(t1))に対するエタノール濃度の変化量((ne(t2)−ne(t1))の割合をエタノールの濃度として演算し、上記の各実施の形態と同様に不正を防止する制御を行う。なお、上記で説明したように変化量に代えて、変化率または所定時間内の積分値を用いてよい。
【0129】
[EtOH]=(ne(t2)−ne(t1))/(nc(t2)−nc(t1))
・・・(21)
ここで、図12に示すように、ne(t2)、ne(t1)は各々時刻t2、t1における以下の式のneで表わされるエタノールガスの濃度、nc(t2)、nc(t1)は各々時刻t2、t1における以下の式のncで表わされる二酸化炭素の濃度である。
【0130】
ne=−ln(Te/To)/ke・L
nc=−ln(Tc/To)/kc・L ・・・(22)
本実施の形態によれば、呼気周波数成分を抽出して呼気中の二酸化炭素濃度に対するエタノール濃度の割合をエタノール濃度として検出しているため、大気中のエタノール及び二酸化炭素が呼気変動に比べて時間的にゆっくり変動すると仮定できる場合のエタノール濃度を精度良く検出することができる。
【0131】
次に、図13を参照して本発明の第7の実施の形態について説明する。第7の実施の形態は、第5の実施の形態の呼気信号フィルタを設けない態様に第2の実施の形態で説明した参照用光学フィルタ及び参照用光電変換素子を設け、光源としてのドライバの顔から放射される赤外線の光量T0を検出するようにしたものである。したがって、図13において図3及び図8に対応する部分には同一符号を付して説明を省略する。
【0132】
本実施の形態のエタノール用光電変換素子22、参照用光電変換素子32、及び二酸化炭素用光電変換素子42は、各々エタノール濃度判定器46に接続されている。エタノール濃度判定器46は、上記(12)式に従って二酸化炭素ガス濃度ncに対するエタノール濃度neの割合を呼気中のエタノール濃度[EtOH]として演算する。この場合、エタノール濃度neは、第2の実施の形態で説明したように、光源の光量T0として光電変換素子32から出力される電気信号より得られる透過光量が使用される。
【0133】
本実施の形態によれば、第2の実施の形態で説明したように参照用光学フィルタ及び参照用光電変換素子を用いることで、光源の光量の変動による誤差を防止することができると共に、呼気中の二酸化炭素濃度に対するエタノール濃度の割合を算出することにより、光路長が変化したり呼気が薄められた場合であっても正確にエタノールの濃度を検出する
ことができる。
【0134】
なお、第7の実施の形態にも第5の実施の形態と同様に二酸化炭素用光電変換素子42とエタノール濃度判定器44との間に、二酸化炭素用光電変換素子42から出力された電気信号から呼気周波数成分以上の信号を通過させ、呼気周波数成分未満の信号を減衰させるハイパスフィルタで構成された呼気信号フィルタ38を設け、(1)式または(2)式に従ってエタノール濃度を検出するようにしてもよい。
【0135】
次に、図14を参照して本発明の第8の実施の形態について説明する。第8の実施の形態は、第7の実施の形態におけるエタノール用光電変換素子出力、参照用光電変換素子出力、及び二酸化炭素用光電変換素子出力の各々から呼気のタイミングに相当する成分の信号のみを抽出し、呼気中の二酸化炭素濃度に対するエタノール濃度の割合をエタノール濃度として検出するようにしたものである。したがって、図14において図13と対応する部分には同一符号を付して説明を省略する。
【0136】
本実施の形態では、エタノール用光電変換素子22の出力側、参照用光電変換素子32の出力側、及び二酸化炭素用光電変換素子42の出力側とエタノール濃度判定器46との間に、光電変換素子22、光電変換素子32、及び光電変換素子42から出力された電気信号の各々から呼気周波数成分以上の信号を通過させるハイパスフィルタで構成された呼気信号フィルタ38が接続されている。この呼気信号フィルタ38により、光電変換素子22、光電変換素子32、及び光電変換素子42の各々から出力された電気信号のうち呼気周波数成分に相当する成分以上の電気信号のみが抽出され、エタノール濃度判定器46に入力される。
【0137】
本実施の形態のエタノール濃度判定器46では、呼気信号フィルタ38から出力される光電変換素子22、光電変換素子32、及び光電変換素子42の各々から出力された電気信号のうち呼気周波数成分に相当する成分の電気信号を用いて、下記(23)式に従って、図15に示した二酸化炭素ガス濃度の変化量(=nc(t2)−nc(t1))に対するエタノールガス濃度の変化量(=ne(t2)−ne(t1))の割合がエタノールの濃度として演算され、上記の各実施の形態と同様に不正を防止する制御が行われる。なお、上記で説明したように変化量に代えて、変化率、または所定時間内の積分値を用いても良い。
【0138】
[EtOH]={ne(t2)−ne(t1)}/{nc(t2)−nc(t1)}
・・・(23)
本実施の形態によれば、光源の光量の変動による誤差を防止することができると共に、呼気周波数成分を抽出して呼気中の二酸化炭素濃度に対するエタノール濃度の割合をエタノール濃度として検出しているため、より正確にエタノール濃度を測定することができる。
【0139】
なお、第8の実施の形態では、光電変換素子22、光電変換素子32、及び光電変換素子42から出力された電気信号の各々を呼気信号フィルタ38を通過させる例について説明したが、第5の実施の形態と同様に二酸化炭素用光電変換素子42とエタノール濃度判定器44との間に、二酸化炭素用光電変換素子42呼気信号フィルタ38を設け、呼気信号フィルタ38を通過した信号及び光電変換素子22から出力された電気信号を用いてエタノール濃度を検出するようにしてもよい。
【0140】
上記の実施の形態では、光路長が変化したり呼気が薄められた場合であっても正確にエタノールの濃度を検出するために、第5〜第8の実施の形態では、呼気中の二酸化炭素濃度を検出し、呼気中の二酸化炭素濃度に対するエタノール濃度の割合を算出することにより、正確なエタノールの濃度を検出する場合について説明した。
【0141】
一方、呼気中の水蒸気濃度の割合も二酸化炭素ガス濃度の割合と同様に略一定である。このため、上記で説明した第5〜第8の実施の形態において二酸化炭素ガス濃度に代えて水蒸気濃度を用いることができる。
【0142】
以下、二酸化炭素ガス濃度に代えて水蒸気濃度を用いる例として、第8の実施の形態において二酸化炭素ガス濃度に代えて水蒸気濃度を用いる場合について図16を参照して説明する。なお、図16において図14と対応する部分には同一符号を付して説明を省略する。
【0143】
本実施の形態では、図16に示すように、二酸化炭素用光学フィルタ40に代えて水蒸気の吸収スペクトルを中心波長とする所定波長帯域の赤外線を透過する水蒸気用光学フィルタ50が設けられると共に、二酸化炭素用光電変換素子42に代えて水蒸気用光学フィルタ50を透過した赤外線を電気信号に変換する水蒸気用光電変換素子52が設けられている。
【0144】
エタノール用光電変換素子22の出力側、参照用光電変換素子32の出力側、及び水蒸気用光電変換素子52の出力側とエタノール濃度判定器46との間には、光電変換素子22、光電変換素子32、及び光電変換素子52から出力された電気信号の各々から呼気周波数成分の信号を通過させるバンドパスフィルタで構成された呼気信号フィルタ38が接続されている。この呼気信号フィルタ38により、光電変換素子22、光電変換素子32、及び光電変換素子52の各々から出力された電気信号のうち呼気周波数成分に相当する成分の電気信号のみが抽出され、エタノール濃度判定器46に入力される。
【0145】
本実施の形態のエタノール濃度判定器46では、呼気信号フィルタ38から出力される光電変換素子22、光電変換素子32、及び光電変換素子52の各々から出力された電気信号のうち呼気周波数成分に相当する成分の電気信号を用いて、下記(24)式に従って、図17に示す水蒸気濃度の変化量(=nw(t2)−nw(t1))に対するエタノールガス濃度の変化量(=ne(t2)−ne(t1))の割合がエタノールの濃度として演算され、上記の各実施の形態と同様に不正を防止する制御が行われる。なお、上記で説明したように変化量に代えて、変化率、または所定時間内の積分値を用いても良い。
【0146】
[EtOH]={ne(t2)−ne(t1)}/{nw(t2)−nw(t1)}
・・・(24)
なお、二酸化炭素の濃度検出に代えて水蒸気濃度を検出する場合においても、二酸化炭素の濃度検出で説明したように、第5の実施の形態と同様に二酸化炭素用光電変換素子42とエタノール濃度判定器44との間に、二酸化炭素用光電変換素子42呼気信号フィルタ38を設け、呼気信号フィルタ38を通過した信号及び光電変換素子22から出力された電気信号を用いてエタノール濃度を検出するようにしてもよい。
【0147】
次に、エタノールを含んだ呼気モデルを用い、人間の顔を光源として遠赤外線検知器によりエタノールを測定した結果について説明する。ここでは、図23に示すように、遠赤外線検知器として遠赤外線カメラ80を用い、エタノールを含んだ呼気モデルとしてエタノールガスを充填したガス袋82を人間の顔と遠赤外線カメラ80との間に配置し、ガス袋82を透して人間の顔を撮影した場合の計測結果について説明する。
【0148】
図24に、大気を充填したガス袋を遠赤外線カメラで撮影した場合の画像(図24(1))と、2mg/lのエタノールガスを充填したガス袋を遠赤外線カメラで撮影した場合の画像(図24(2))とを比較して示した。また、撮影した顔画像について、左右頬、眉間、及び鼻の頭の4箇所について顔温度を比較した結果を図25に示した。鼻の頭(ガス袋内における光路長:150mm)を例に説明すると、約0.34℃の温度低下がみられた。この現象が生じた理由は、顔から放射された遠赤外線がエタノールガスに吸収され、結果として顔温度として計測されたためである。遠赤外線カメラの最小温度差検出は、0.01℃であるので、上記の計測の場合0.06mg/l以上の呼気エタノールガスを検出することができる。
【0149】
この測定結果から人間の顔を光源とする場合においても遠赤外線検知器によりエタノールの濃度を精度良く測定することができることが理解できる。
【0150】
上記では、大気中の二酸化炭素(または水蒸気)の濃度の変化が呼気リズムに比較して充分遅いことに着目した発明について、赤外線吸収強度を検出する赤外検出器を用いた実施の形態について説明したが、大気中の二酸化炭素(または水蒸気)の濃度の変化が呼吸リズムに比較して充分遅いことに着目した発明では、赤外検出器に代えて酸化物半導体を用いてエタノールガスの濃度を検出するエタノールガスセンサ、及び固体電解質を用いて二酸化炭素の濃度を検出する二酸化炭素センサ、または酸化物半導体または高分子膜静電容量を用いて水蒸気の濃度を検出する水蒸気センサを用いるようにしてもよい。さらに、呼気中の酸素濃度の割合も二酸化炭素ガス濃度の割合と同様に略一定であるため、水蒸気センサ及び二酸化炭素センサに代えて、固体電解質を用いて酸素の濃度を検出する酸素センサを用いることもできる。
【0151】
すなわち、ガスを検出するセンサを用いる場合には、エタノールの濃度を検出する酸化物半導体センサと、水蒸気、二酸化炭素、及び酸素の少なくとも1種のガスからなる補正ガスの濃度を検出するガスセンサで構成された補正センサとを用いて、エタノールの濃度を検出することができる。
【0152】
以下、ガスセンサを利用した第10の実施の形態について図19を参照して説明する。この実施の形態は、ガスセンサを利用してエタノール濃度及び二酸化炭素濃度を検出するようにしたものである。図19に示すように、先端部に拡径した吸い込み口60Aが形成された細長円筒状のガス採取管60が取り付けられている。ガス採取管60の基端部には、ドライバの呼気を吸い込み口60Aから吸い込むために駆動される吸い込みファン62が設けられている。
【0153】
ガス採取管60の中間部の内部には、酸化物半導体を用いてエタノールガスの濃度を検出するアルコールセンサであるエタノールガスセンサ(例えば、酸化錫の半導体を用いたTGS822(フィガロ技研社製、商品名))、及び固体電解質を用いて二酸化炭素の濃度を検出する二酸化炭素センサ(例えば、フィガロ技研社製、CDM4160)を有するセンサ64が取り付けられている。このセンサには、上記の実施の形態で説明したのと同様のエタノール濃度判定器(図示を省略)が接続されている。
【0154】
この実施の形態によれば、吸い込みファン62を駆動することにより、ドライバの呼気が吸い込み口60Aから吸い込まれ、エタノールガスセンサによって呼気中のエタノールガスの濃度が検出されると共に、二酸化炭素センサによって呼気中の二酸化炭素の濃度が検出される。
【0155】
センサで検出された呼気中のエタノールの濃度及び二酸化炭素の濃度は、エタノール濃度判定器に入力され、検出した二酸化炭素の濃度に対するエタノールの濃度の大きさに基づいて、上記(1)式または(2)式に従ってエタノールガスの濃度が検出され、上記で説明したように不正が行われないように制御される。
【0156】
なお、本実施の形態では、二酸化炭素センサに変えて、以下で説明するように酸化物半導体を用いて水蒸気の濃度を検出する水蒸気センサを用いて呼気中のエタノールの濃度及び水蒸気の濃度を検出し、検出した水蒸気の濃度に対するエタノールの濃度の大きさに基づいて、エタノールガスの濃度を検出するようにしてもよい。
【0157】
次に、酸化物半導体を用いたガスセンサを利用してエタノール濃度を検出すると共に、ジルコニア固体電解質を用いたガスセンサを利用して空気中に含まれる酸素の濃度を検出する第11の実施の形態について図20を参照して説明する。図20に示すように、円筒状の呼気導入管70の一端には、ドライバ等の人間の呼気を呼気導入管70の他端から吸い込むために駆動される吸い込みファン72が設けられている。
【0158】
呼気導入管70の中間部の内部には、酸化物半導体を用いてエタノールガス成分の濃度を検出するアルコールセンサ74、及びジルコニア固体電解質を用いて酸素の濃度を検出する酸素センサ76が対向するように取り付けられている。このセンサの各々は、上記の実施の形態で説明したのと同様のエタノール濃度判定器(図示せず)に接続されている。
【0159】
アルコールセンサは、呼気導入管内を流れる空気中に含まれるエタノール成分を検出するセンサであり、例えば、酸化錫の半導体を用いたTGS822(フィガロ技研社製、商品名)を使用することができる。
【0160】
酸素センサ76は呼気導入管70内を流れる酸素を検出するセンサであり、例えば、ジルコ二ア固体電解質を用いたFCX−MVL(フジクラ社製、商品名)を使用することができる。
【0161】
この実施の形態によれば、吸い込みファン72を駆動することにより、人間から吐き出された呼気は呼気導入管の他端から呼気導入管内に吸入され、アルコールセンサ及び酸素センサに接触した後ファン背面に排出される。
【0162】
呼気がアルコールセンサ及び酸素センサに接触することによりアルコールセンサによって呼気を含む空気中のエタノールガス成分の濃度が検出されると共に、酸素センサによって呼気を含む空気中の酸素の濃度が検出される。これによって、上記と同様にセンサで検出された空気中のエタノール成分の濃度及び酸素の濃度は、エタノール濃度判定器に入力され、検出した酸素の濃度に対するエタノール成分の濃度の大きさに基づいて、エタノールガスの濃度が検出され、上記で説明したように不正が行われないように制御される。本実施の形態では、上記(1)式または(2)式及び酸素センサで検出された酸素濃度の変化量、変化率、所定時間内の積分値を用いると共に、呼気中酸素濃度(例えば、約15.2%で一定)を用いてエタノールガスの濃度が検出される。
【0163】
なお、酸素濃度を用いる場合には、上記の実施の形態で説明した二酸化炭素濃度を用いる場合とは反対に、大気中に比べて呼気中の濃度は減少するので、酸素センサの検出値は、大気中の酸素センサ出力値より減少することになる。
【0164】
上記の各実施の形態では、呼気中のエタノール、二酸化炭素、酸素、及び水蒸気のいずれか1種のガスからなる補正ガスが時間的に変動しない、すなわち大気に対して吐き出される呼気の量が充分小さい(呼気が大気により薄まる)と仮定して上記(1)式または(2)式に従ってエタノール濃度を検出する場合について説明した。
【0165】
しかしながら、人間から吐き出された呼気は空気と混合されることで任意に希釈され、アルコールセンサ及び補正センサ(酸素センサ、二酸化炭素センサ、または水蒸気センサ)に接触することとなる。上記の式では、呼気をノズル等の導入管を通して直接センサに接触させる場合(呼気希釈倍率1倍の場合)等では、大気に対して呼気の量が充分小さいと仮定しているため、呼気の体積が原因となって誤差が生じる。
【0166】
このため本実施の形態では、呼気の体積の影響を考慮して呼気希釈倍率という概念を導入することによりエタノール濃度を更に精度良く検出するようにしてもよい。この呼気希釈倍率は、呼気が検出される前後の酸素濃度(または二酸化炭素濃度、または水蒸気濃度)を用いて下記(25)式に示すように算出することができる。(25)式は補正ガス濃度として酸素濃度を用いた場合について示している。
【0167】
[EtOH]breath=([EtOH]peak−[EtOH]base)×Di+[EtOH]base
・・・(25)
Di=([O2]breath−[O2]base)/(O2]peak−[O2]base)
・・・(26)
ただし、Diは呼気がセンサに到達するまでに空気によって希釈される割合を示す呼気希釈倍率であり、
[O2]breath:呼気中の酸素濃度
[O2]base:呼気が導入される前の酸素センサの出力濃度
[O2]peak:呼気が導入されたときの酸素センサの出力濃度の最大値
[EtOH]breath:呼気中のエタノール濃度
[EtOH]base:呼気が導入される前のアルコールセンサの出力濃度
[EtOH]peak:呼気が導入されたときのアルコールセンサの出力濃度の最大値
上記(25)式の計算は、呼気が任意に希釈されてもエタノールの希釈倍率と酸素の希釈倍率とは常に等しいことに着目して導出されたものである。呼気中の酸素濃度[O2]breathは常に一定濃度(例えば、15.2%で一定)であることから、酸素センサの出力濃度値からまず呼気希釈倍率Diが算出される。次に、エタノールがこの呼気希釈倍率Diで希釈されるため、呼気希釈倍率Diとアルコールセンサの出力濃度値とから呼気中のエタノール濃度[EtOH]breathが算出される。
【0168】
なお、上記では、呼気が導入されたときのアルコールセンサ及び酸素センサの出力値(出力濃度)として最大値を用いているが、必ずしも最大値である必要はなく、上記で説明したように呼気導入管内に導入され呼気がアルコールセンサ及び酸素センサに接触した時点以降の出力値であればこの出力値の変化量または変化率を用いて上記と同様に呼気中のエタノールガス濃度を算出可能である。
【0169】
被験者18名を対象に、飲酒時の呼気を採取してガスクロマトグラフにより濃度分析した値と本実施の形態で上記(25)式を用いて算出した吸気エタノール定量値との対応を調べた結果を図21及び図22に示す。図21に示すように、人間から吐き出された呼気は、大気によって任意の希釈倍率で希釈されるので、アルコールセンサで計測されたエタノール濃度はガスクロマトグラフの分析値とは低い相関(寄与率:0.53)を示した。
【0170】
一方、計測されたエタノールガス濃度と、酸素センサの出力値から算出された呼気希釈倍率を用いて、上記(15)式に基づいて呼気エタノール濃度を算出すると、図22に示すように、呼気エタノール定量値とガスクロマトグラフの分析値とは寄与率0.91という良好な相関関係がみられた。
【0171】
なお、上記では補正センサとして酸素センサを用いた例について説明したが、酸素センサに代えて二酸化炭素センサを用い、上記(26)式の酸素濃度に代えて二酸化炭素濃度を用いて二酸化炭素の濃度変化から呼気希釈倍率を算出し、上記と同様の方法でエタノール濃度を算出することができる。二酸化炭素センサを用いる場合は、呼気中の二酸化炭素濃度は約3.8%で一定である。
【0172】
また、酸素センサに代えて水蒸気センサを用い、上記(26)式の酸素濃度に代えて水蒸気濃度を用いて水蒸気の濃度変化から呼気希釈倍率を算出し、上記と同様の方法でエタノール濃度を算出することができる。水蒸気センサを用いる場合は、呼気中の水蒸気濃度の一定値として、例えば、34℃の飽和水蒸気濃度の値が用いられる。また、水蒸気センサとしては、酸化物半導体である酸化錫の半導体を用いた水蒸気センサ(例えば、TGS2180(フィガロ技研社製、商品名)を用いることができる。
【0173】
以上説明したように第11の実施の形態によれば、大気により呼気が希釈される場合ばかりでなく、呼気が希釈されずに直接センサに接触する場合においても精度良くエタノール濃度を検出することができる。
【0174】
上記(25)式は変形すると下記の式で表わすことができる。
【0175】
[EtOH]breath=Δa/Δo([O2]breath−[O2]base)+[EtOH]base
・・・(27)
ただし、Δaは上記で説明したエタノール濃度の変化量または変化率であり、Δoは酸素濃度の変化量、変化率、または所定時間内の積分値である。Δoに代えて、二酸化炭素濃度の変化量、変化率、または所定時間内の積分値、若しくは水蒸気濃度の変化量、変化率、または所定時間内の積分値を用いることもできる。
【0176】
したがって、本実施の形態では、呼気希釈倍率Diを算出することなく、エタノール濃度の変化量、変化率、または所定時間内の積分値、酸素濃度(または二酸化炭素濃度、または水蒸気濃度)の変化量、変化率、または所定時間内の積分値、一定値である呼気中の酸素濃度(または二酸化炭素濃度、または水蒸気濃度)からセンサで検出された大気中の酸素濃度(または二酸化炭素濃度、または水蒸気濃度)を減算した差、及びセンサで検出された大気中のエタノール濃度とを用いて、上記(27)式に基づいてエタノール濃度を算出することもできる。
【0177】
酸化物半導体を用いたセンサを利用する実施の形態においても、上記で説明したように、呼気中のエタノールガス濃度の検出信号にノイズ成分が含まれないようにするために、呼気周波数成分の信号のみを通過させるハイパスフィルタ等で構成された呼気信号フィルタを用いることができる。この場合、水蒸気濃度、酸素濃度、または二酸化炭素濃度の検出信号(第2の信号)、またはエタノールガス濃度の検出信号(第1の信号)及び第2の信号の両方の検出信号を、呼気信号フィルタを通過させ、呼気信号フィルタを通過した第2の信号に対する第1の信号の大きさ、または呼気信号フィルタを通過した第2の信号に対する呼気信号フィルタを通過した第1の信号の大きさに基づいて、エタノールガスの濃度を検出ことができる。
【0178】
なお、希釈倍率を考慮した(25)式及び(27)式は、上記で説明した補正ガスを用いる全ての実施の形態に適用することができるものであり、これによって大気により呼気が希釈される場合、及び呼気が希釈されずに直接センサに接触する場合において精度良くエタノール濃度を検出することができる。
【0179】
次に、本発明の第12の実施の形態について説明する。図26に示すように標高の高い高地では大気圧が低くなるため、アルコール濃度を正確に算出するには、気圧補正が必要となる。一般的には、気圧補正が必要な場合には気圧センサによる補正を行うこととなる。本実施の形態では、大気中の酸素分圧は、図27に示すように大気圧と相関し、標高が高くなって大気圧が低くなるに従って大気中の酸素分圧が低下することに着目し、気圧センサの代わりに酸素センサで代用した例について説明する。
【0180】
図28は、酸化物半導体方式のセンサを用いた本実施の形態を示す概略図である。呼気導入管70と、呼気導入管70のー端に取り付けられたファン72と、呼気導入管70の中途に設置されたアルコールセンサ74及び酸素センサ78と、により構成されている。
【0181】
ファン72は呼気導入管70へ呼気を効率よく取り入れるためのものであり、人間から吐き出された呼気は、ファン72により呼気導入管70の一端から吸入され、アルコールセンサ74及び酸素センサ78に接した後、呼気導入管70の他端から排出される。
【0182】
アルコールセンサ74は呼気導入管70内を流れる空気中に含まれるエタノール成分を検出するセンサであり、例えば、酸化錫の半導体を用いたフイガロ技研社製TGS2620(商品名)を使用することができる。
【0183】
酸素センサ78は呼気導入管70内を流れる酸素を検出するセンサであり、例えば、ジルコ二ア固体電解質を用いたフジクラ社製FCX−MVL(商品名)を使用することができる。
【0184】
人間から吐き出された呼気は空気と混合されることで任意に希釈され、アルコールセンサ及び酸素センサヘ到達することになる。
【0185】
アルコールセンサ74及び酸素センサ78の各出力端は、マイクロコンピュータ等で構成された上記と同様のエタノール濃度判定器(図示せず)に接続されている。
【0186】
このエタノール濃度判定器には、大気圧と大気中の酸素濃度(大気中の酸素分圧)との相関、すなわち図27に示す関係を定めたテーブル、及び大気中の酸素濃度(大気中の酸素分圧)と呼気中の酸素濃度(大気中の酸素分圧)との相関、すなわち図29に示す関係を定めたテーブルが予め記憶されている。なお、これらのテーブルに代えて、式によって相関を定めて記憶してもよい。
【0187】
エタノール濃度判定器は、この希釈された呼気に対するセンサ出力の変化から、呼気中のエタノール濃度を下記の計算式に従って算出する。
【0188】
また、本実施の形態では、標高が高く1気圧(760mmHg)より低い大気圧の場合でも、酸素センサから大気圧を算出し、気圧補正をした呼気アルコール濃度を出力することができる。なお、大気圧が1気圧でない場合、大気中の酸素濃度の変化に従って呼気中の酸素濃度も変化するが、両者には図29に示すように、大気中の酸素分圧が高くなるに従って呼気中の酸素分圧も高くなるという相関があるため、この相関を用いて呼気中のエタノール濃度を算出することができる。
【0189】
[EtOH]breath =(([EtOH]peak−[EtOH]base)×(呼気希釈倍率)+[EtOH]base) / Pair ・・・(28)
(呼気希釈倍率)-=( [O2]breath−[O2]base) / ([O2]peak−[O2]base)
ただし、式中の記号は、以下の通りである。
[EtOH]breath:呼気中のエタノール濃度(気圧補正後)
[EtOH]base:呼気が導入される前のアルコールセンサの出力濃度
[EtOH]peak:呼気が導入されたときのアルコールセンサ出力濃度の最大値
(呼気希釈倍率):呼気がセンサ到達までに希釈される倍率
Pair:大気圧
大気圧と大気中酸素濃度([O2]base)との相関から算出(図27参照)
[O2]breath:呼気中酸素濃度
呼気中酸素濃度([O2]breath)と大気中酸素濃度([O2]base)との相関から算出(図29参照)
[O2]base:呼気が導入される前の酸素センサの出力濃度(大気中酸素濃度)
[O2]peak:呼気が導入されたときの酸素センサ出力濃度の最大値
なお、上記では、センサの出力値(出力濃度)として最大値を用いているが、必ずしも最大値である必要はなく、上記で説明したように呼気導入管内に導入され呼気がアルコールセンサ及び酸素センサに接触した時点以降の出力値であればこの出力値の変化量または変化率を用いて上記と同様に呼気中のエタノールガス濃度を算出することが可能である。
【0190】
上記では、ドライバの呼気からエタノールを検出する例について説明したが、エタノール濃度検出器を携帯可能に構成する等により、本発明はドライバ以外の人間の呼気からエタノールを検出する場合にも適用できるものである。
【産業上の利用可能性】
【0191】
本発明は、車両に搭載したり、携帯することによって、人間の呼気からエタノールガスの濃度を検出し、酒気帯び状態であるか否かを判定することができる。車両に搭載する場合には、酒気帯び状態で車両駆動系が駆動しないように制御する際の酒気帯び状態の判定に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0192】
【図1】本実施の形態のエタノール濃度検出器を運転席のステアリングコラムに取り付けた状態を示す概略図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態を示す概略図である。
【図3】本発明の第2の実施の形態を示す概略図である。
【図4】本発明の第3の実施の形態を示す概略図である。
【図5】第3の実施の形態の呼気周波数に応じたエタノール濃度の時間変化を示す線図である。
【図6】本発明の第4の実施の形態を示す概略図である。
【図7】第4の実施の形態の呼気周波数に応じたエタノール濃度の時間変化を示す線図である。
【図8】本発明の第5の実施の形態を示す概略図である。
【図9】二酸化炭素濃度を用いてエタノール濃度を検出する場合の概念を示す図である。
【図10】二酸化炭素濃度及びエタノール濃度の変化を示す線図である。
【図11】本発明の第6の実施の形態を示す概略図である。
【図12】第6の実施の形態のエタノール濃度及び二酸化炭素濃度の時間変化を示す線図である。
【図13】本発明の第7の実施の形態を示す概略図である。
【図14】本発明の第8の実施の形態を示す概略図である。
【図15】第8の実施の形態のエタノール濃度及び二酸化炭素濃度の時間変化を示す線図である。
【図16】本発明の第9の実施の形態を示す概略図である。
【図17】第9の実施の形態のエタノール濃度及び水蒸気濃度の時間変化を示す線図である。
【図18】エタノール及び二酸化炭素の波長に対する吸収度を示す線図である。
【図19】本発明の第10の実施の形態を示す概略図である。
【図20】本発明の第11の実施の形態を示す概略図である。
【図21】第11の実施の形態のアルコールセンサ定量値とガスクロマトグラムの分析値との相関を示す図である。
【図22】第11の実施の形態の呼気エタノール定量値とガスクロマトグラムの分析値との相関を示す図である。
【図23】人間の顔を光源として遠赤外線カメラによりエタノールを測定する状態を示す概略図である。
【図24】遠赤外線カメラにより撮影された画像を示す概略図である。
【図25】遠赤外線カメラにより撮影された顔温度を比較して示す線図である。
【図26】標高と大気圧との関係を示す線図である。
【図27】大気圧と大気圧中酸素濃度(酸素分圧)との関係を示す線図である。
【図28】本発明の第12の実施の形態を示す概略図である。
【図29】呼気中酸素濃度(酸素分圧)と大気中酸素濃度(酸素分圧)との相関を示す線図である。
【符号の説明】
【0193】
10 エタノール濃度検出器
12 ステアリングコラム
20 エタノール用光学フィルタ
22 エタノール用光電変換素子
24 エタノール濃度判定器
30 参照用光学フィルタ
32 参照用光電変換素子
34 36 38 呼気信号フィルタ
40 二酸化炭素用光学フィルタ
42 二酸化炭素用光電変換素子
50 水蒸気用光学フィルタ
52 水蒸気用光電変換素子
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エタノールガスの濃度に関する物理量を検出するエタノール検出手段と、
人間の顔から放射された赤外線との相互作用によって生じる吸収スペクトルであって水蒸気による吸収スペクトルを含む所定波長帯域の赤外線を透過する水蒸気用光学フィルタと、前記水蒸気用光学フィルタを透過した赤外線を電気信号に変換する水蒸気用変換手段とを含む水蒸気検出手段で構成され、水蒸気の濃度に関する物理量を補正ガスの濃度に関する物理量として検出する補正ガス検出手段と、
検出した補正ガスの濃度に関する物理量とエタノールガスの濃度に関する物理量とに基づいて、呼気中のエタノールガスの濃度に関する物理量を検出する濃度検出手段と、
を含むガス検出装置。
【請求項2】
前記エタノール検出手段を、
人間の顔から放射された赤外線との相互作用によって生じる吸収スペクトルであってエタノールのC−O伸縮振動による吸収スペクトルを含む所定波長帯域の赤外線を透過するエタノール用光学フィルタと、前記エタノール用光学フィルタを透過した赤外線を電気信号に変換するエタノール用変換手段とを含むエタノール検出器、
酸化物半導体を用いてエタノールガスの濃度に関する物理量を検出するガスセンサ、または
赤外線を放射する光源と赤外線検出器とで構成されたアルコールセンサで構成した請求項1に記載のガス検出装置。
【請求項3】
前記濃度検出手段が、以下の(1)式〜(4)式のいずれか1つの式に従って呼気中のエタノールガスの濃度に関する物理量を検出するようにした請求項1または請求項2に記載のガス検出装置。
エタノールガスの濃度に関する物理量=(Δa/Δb) ・・・(1)
エタノールガスの濃度に関する物理量=(Δa/Δb)・BG ・・・(2)
エタノールガスの濃度に関する物理量=(Δa/Δb)・(BG−AG)
+[EtOH]base・・・(3)
エタノールガスの濃度に関する物理量=Δa・Di+[EtOH]base ・・・(4)
ただし、Δaは前記エタノール検出手段で検出されたエタノールガスの濃度に関する物理量の変化量、変化率、または所定時間内の積分値、Δbは前記補正ガス検出手段で検出された補正ガスの濃度に関する物理量の変化量、変化率、または所定時間内の積分値、BGは予め求められた呼気中補正ガスの濃度に関する物理量、AGは前記補正ガス検出手段で検出された大気中補正ガスの濃度に関する物理量、[EtOH]baseは前記エタノール検出手段で検出された大気中エタノールガスの濃度に関する物理量、Diは以下の式で表わされる呼気希釈倍率である。
Di=(BG−AG)/Δb ・・・(5)
【請求項1】
エタノールガスの濃度に関する物理量を検出するエタノール検出手段と、
人間の顔から放射された赤外線との相互作用によって生じる吸収スペクトルであって水蒸気による吸収スペクトルを含む所定波長帯域の赤外線を透過する水蒸気用光学フィルタと、前記水蒸気用光学フィルタを透過した赤外線を電気信号に変換する水蒸気用変換手段とを含む水蒸気検出手段で構成され、水蒸気の濃度に関する物理量を補正ガスの濃度に関する物理量として検出する補正ガス検出手段と、
検出した補正ガスの濃度に関する物理量とエタノールガスの濃度に関する物理量とに基づいて、呼気中のエタノールガスの濃度に関する物理量を検出する濃度検出手段と、
を含むガス検出装置。
【請求項2】
前記エタノール検出手段を、
人間の顔から放射された赤外線との相互作用によって生じる吸収スペクトルであってエタノールのC−O伸縮振動による吸収スペクトルを含む所定波長帯域の赤外線を透過するエタノール用光学フィルタと、前記エタノール用光学フィルタを透過した赤外線を電気信号に変換するエタノール用変換手段とを含むエタノール検出器、
酸化物半導体を用いてエタノールガスの濃度に関する物理量を検出するガスセンサ、または
赤外線を放射する光源と赤外線検出器とで構成されたアルコールセンサで構成した請求項1に記載のガス検出装置。
【請求項3】
前記濃度検出手段が、以下の(1)式〜(4)式のいずれか1つの式に従って呼気中のエタノールガスの濃度に関する物理量を検出するようにした請求項1または請求項2に記載のガス検出装置。
エタノールガスの濃度に関する物理量=(Δa/Δb) ・・・(1)
エタノールガスの濃度に関する物理量=(Δa/Δb)・BG ・・・(2)
エタノールガスの濃度に関する物理量=(Δa/Δb)・(BG−AG)
+[EtOH]base・・・(3)
エタノールガスの濃度に関する物理量=Δa・Di+[EtOH]base ・・・(4)
ただし、Δaは前記エタノール検出手段で検出されたエタノールガスの濃度に関する物理量の変化量、変化率、または所定時間内の積分値、Δbは前記補正ガス検出手段で検出された補正ガスの濃度に関する物理量の変化量、変化率、または所定時間内の積分値、BGは予め求められた呼気中補正ガスの濃度に関する物理量、AGは前記補正ガス検出手段で検出された大気中補正ガスの濃度に関する物理量、[EtOH]baseは前記エタノール検出手段で検出された大気中エタノールガスの濃度に関する物理量、Diは以下の式で表わされる呼気希釈倍率である。
Di=(BG−AG)/Δb ・・・(5)
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
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【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【公開番号】特開2009−56293(P2009−56293A)
【公開日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−196489(P2008−196489)
【出願日】平成20年7月30日(2008.7.30)
【分割の表示】特願2008−524288(P2008−524288)の分割
【原出願日】平成19年12月21日(2007.12.21)
【出願人】(000003609)株式会社豊田中央研究所 (4,200)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年7月30日(2008.7.30)
【分割の表示】特願2008−524288(P2008−524288)の分割
【原出願日】平成19年12月21日(2007.12.21)
【出願人】(000003609)株式会社豊田中央研究所 (4,200)
【Fターム(参考)】
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