説明

ガス検知装置及び該装置を用いた校正方法並びに波長確認方法

【課題】LDモジュールの参照光に応じた検知信号に基づき装置内で波長ずれを自己校正できる。
【解決手段】LDモジュール11から出射されたレーザ光をハーフミラーで測定光と参照光とに分岐する。測定光は通常のガス検知に用いられ、参照光はガスセルを通過させた後に波長処理用受光器12cで受光する。そしてLDモジュール11の駆動温度値を所定の振り幅で掃引させながら、波長処理用受光器12cで受光した検知信号から検出されるッf信号の強度変化に基づく2f値の中から最大値となる最大2f値を算出し、この算出された最大2f値と、記憶部31に記憶された基準2f値とを比較して、最大2f値が基準2f値の所定基準以上であった場合は、この最大2f値からLDモジュール11の設定温度値を算出して記憶部31に記憶された設定温度値の変更し、LDモジュール11の波長校正を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体レーザを光源とし、ガスの赤外線吸収特性を利用して光学的にガスを検知するガス検知装置に係り、簡易的な構成でガス検知始業前やガス検知時において装置内で最適な波長に自己校正することができるガス検知装置及び該装置を用いた校正方法並びに波長確認方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばメタン、二酸化炭素、アセチレン、アンモニア等の気体には、分子の回転や構成原子間の振動等に応じて特定波長の光を吸収する吸収帯があることが既に知られている。この吸収帯を利用したガス検知装置では、所定距離(この距離によって測定光路長が確定される)隔てて光源部と受光部とを配置し、光源部の半導体レーザにより周波数変調されたレーザ光を測定対象ガスを含む雰囲気中に通し、その透過光を受光部の光検出器で受光してガスを検知し、このときの出力信号から測定対象ガスのガス濃度を測定している。また、下記特許文献1に開示されるように、上述した光源部と受光部を共通の筐体に収容して携帯できるように構成したガス検知装置も知られている。なお、光源部と受光部は同じ位置に配置されていても測定光を反射光として受光できれば測定光路長は確保される。
【0003】
ここで、受光部の出力信号から検出される変調周波数の基本波位相敏感検波信号(以下、1f信号と略称する)には、強度変調に起因する大きなオフセットが生じる。このため、特に微小なガス濃度を高感度で測定するには、1f信号に比べてオフセットのかなり小さい2倍波位相敏感検波信号(以下、2f信号と略称する)が用いられる。
【0004】
実際にガス濃度を測定するにあたっては、測定ガス吸収線に合わせた波長の測定光が測定ガス雰囲気中を通ると、被測定ガスにより測定光が吸収され、ガス濃度光路長積に応じた強度で変調周波数の2倍の周波数の強度変化(2f信号成分:2f値)による2f信号が生成される。そして、この2f信号の強度変化と元の変調周波数である1f信号の強度変化(1f信号成分:1f値)の比率2f/1fの値は、ガス濃度光路長積に比例するので、この値に係数をかければガス濃度になる。なお、この種の従来のガス検知装置としては、下記特許文献1に開示されたガス濃度測定装置などが開示されている。
【0005】
図11に示すように、特許文献1のガス濃度測定装置51は、全体が銃型形状をなし、一面に開口穴52を有する有底筒型形状の筐体53と、筐体53の後端側に位置して筐体53を把持する把持部54とを備えている。筐体53内には、半導体レーザユニット55が組み込まれるとともに、筐体53内の中心軸線上の奥部に受光器56が配置される。半導体レーザユニット55は、測定雰囲気のガスを検知するための測定光を出射する半導体レーザを含む半導体レーザモジュール57と、レーザポインタ58と、合波手段59とからなる。筐体53の開口穴52には、測定光の出射に伴う測定雰囲気からの反射測定光を受光器56に集光する集光レンズ60が固設される。レーザポインタ58は、逆V字状の支持部材61によって筐体53の集光レンズ60後方に固定され、測定光の出射位置を確認するための可視光をガイド光として出射している。合波手段59は、筐体53の集光レンズ60後方で受光器56の光軸L−L上に配置され、測定光とガイド光とを受光器56の光軸L−L上で合波して集光レンズ60の中央のガラス窓62から出射している。
【特許文献1】特開2005−106521号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記特許文献1のガス濃度検知装置を含むこの種のガス検知装置における測定対象ガスの漏れ検査(以下、リークテストともいう)の検知精度は、装置に実装された光源部である半導体レーザモジュールから出射される測定光の波長が安定しているか否かに依存するため、ガス検知装置には正確な波長安定化が要求される。
【0007】
そのため、現行のガス検知装置では波長安定化の確認方法として位相検波による波長安定化方法を用いて波長安定化を図っているが、この方法では波長安定化に伴う調整に時間が掛かるとともに、この方法を実現するための波長安定化回路等を構成する部品コストが嵩んでしまうという問題があった。
【0008】
また、ガス検知を行うユーザからは、ガス検知測定の始業前点検の時点で、実際に測定対象となるガスの検知が確実に測定できることを確認した上でガス検知測定を行いたいという要望がある。
【0009】
そこで、本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであって、安価で、且つ、簡易的な構成で、ガス検知始業前やガス検知時に波長の安定化の確認や最適な波長に自己校正して高精度なガス検知を行うことのできるガス検知装置及び該装置を用いた校正方法並びに波長確認方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明の請求項1に記載されたガス検知装置は、レーザ光を出射する半導体レーザを実装したLDモジュール11と、
該LDモジュールから出射されたレーザ光を測定光と参照光とに分岐するハーフミラー12aと、測定対象となるガスと同種のガスが封入されたガスセル12bと、該ガスセルを通過した前記参照光を受光し、この受光した前記参照光に応じた検知信号を出力する波長処理用受光器12cとを備えた波長処理機構部12と、
所定の発振周波数で前記半導体レーザを駆動するために予め設定される設定温度値と、波長校正時に基準値として用いられる基準2f値とを記憶している記憶部31と、
前記LDモジュールの駆動温度値を前記記憶部に記憶された前記設定温度値に温度安定化するための温度安定化制御部32と、
前記温度安定化制御部で制御された前記LDモジュールの駆動温度値を所定の振り幅で掃引させながら、前記波長処理機構部から出力された前記検知信号から検出される変調周波数の基本波敏感検波信号の2倍の検波信号である2倍波位相敏感検波信号の強度変化に基づく2f値を算出し、該算出された2f値の中から最大値となる最大2f値を算出して出力する波長校正用算出手段33Baと、前記波長校正用算出手段から出力された最大2f値と前記記憶部に記憶された前記基準2f値とを比較し、前記最大2f値が基準2f値の所定基準以上であった場合は、前記最大2f値から前記LDモジュールの設定温度値を算出し、この算出した前記設定温度値を前記記憶部に出力して変更を行う波長校正用判別手段33Bcとを有する波長処理制御部33と、
を備えたことを特徴とする。
【0011】
請求項2記載のガス検知装置は、請求項1記載のガス検知装置において、
前記波長処理機構部12は、前記ガスセル12b近傍で検出した温度値を補正温度値として出力する温度センサ12dを備え、
前記波長処理制御部33は、前記波長校正用算出手段33Baで算出された2f値を必要に応じて前記補正温度値に基づき補正し、この補正した2f値を前記波長校正用算出手段に出力する波長校正用補正手段33Bbを備えたことを特徴とする。
【0012】
請求項3記載のガス検知装置は、請求項1記載のガス検知装置において、
前記記憶部31は、波長確認時に基準値として用いられる基準2f/1f値をさらに記憶しており、
前記波長処理制御部33は、前記波形処理用受光器12cからの検知信号から検出される変調周波数の基本波敏感検波信号の強度変化に基づく1f値と、該1f値の2倍の検波信号である前記2倍波位相敏感検波信号の強度変化に基づく2f値とを算出し、両値の比率である2f/1f値を算出して出力する波長確認用算出手段33Aaと、
前記算出された2f/1f値と、前記記憶部に記憶された基準2f/1f値とを比較し、前記2f/1f値が前記基準2f/1f値の所定範囲内であった場合は、前記LDモジュール11の波長が安定化されていると判別する波長確認用判別手段33Acとを有する波長確認処理部33Aを備えたことを特徴とする。
【0013】
請求項4記載のガス検知装置は、請求項3記載のガス検知装置において、
前記波長処理機構部12は、前記ガスセル12b近傍で検出した温度値を補正温度値として出力する温度センサ12dを備え、
前記波長処理制御部33は、前記波長確認用算出手段で算出された2f/1f値を必要に応じて前記補正温度値に基づき補正し、この補正した2f値を波長確認用算出手段に出力する波長確認用補正手段33Abを備えたことを特徴とする。
【0014】
本発明の請求項5に記載されたガス検知装置の校正方法は、請求項1記載のガス検知装置1を用いた校正方法であって、
前記温度安定化制御部32において前記LDモジュール11の温度安定化処理を行うステップと、
前記LDモジュールの駆動温度値を所定の振り幅で掃引させながら、前記波長処理機構部12から出力された前記検知信号から検出される変調周波数の基本波敏感検波信号の2倍の検波信号である2倍波位相敏感検波信号の強度変化に基づく2f値を算出するステップと、
該算出された2f値の中から最大値となる最大2f値を算出するステップと、
前記算出された最大2f値と、前記記憶部31に記憶された基準2f値とを比較するステップと、
前記最大2f値が基準2f値の所定基準以上であった場合は、前記最大2f値から前記LDモジュールの設定温度値を算出して前記記憶部に記憶された前記設定温度値の変更を行うステップと、
を含むことを特徴とする。
【0015】
請求項6記載のガス検知装置の波長確認方法は、請求項3に記載のガス検知装置1を用いた波長確認方法であって、
前記温度安定化制御部32において前記LDモジュール11の温度安定化処理を行うステップと、
前記波長処理機構部12から出力された前記検知信号から検出される変調周波数の基本波敏感検波信号の強度変化に基づく1f値と、該1f値の2倍の検波信号である前記2倍波位相敏感検波信号の強度変化に基づく2f値とを算出し、両値の比率である2f/1f値を算出するステップと、
前記2f/1f値と、前記記憶部に記憶された基準2f/1f値とを比較するステップと、
前記2f/1f値が基準2f/1f値の所定範囲内であった場合は、前記LDモジュールの波長が安定化されていると判別するステップと、
を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、従来のようなガスセル内に封入した検出対象ガスを常時検出することができるので、半導体レーザの劣化や使用環境の温度変化等よって目的とする波長が波長ずれした場合であっても、参照光の検知信号の変化により波長ずれしたことを確認し、装置内で波長ずれを自己校正することができる。
【0017】
さらに、ガス検知装置におけるガス漏洩テストが低コストで、且つ、調整が短時間で容易にできる。また、ガス検知始業前の点検の時点で測定対象となるガスの検知が確実に測定できることを確認することできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照しながら具体的に説明する。図1は本発明に係るガス検知装置の第1形態の構成を説明するための概略構成図であり、図2は本発明に係るガス検知装置に実装されるLDモジュールの構成を説明するための概略構成図であり、図3は本発明に係るガス検知装置における波長処理制御部の構成を説明するための概略ブロック図であり、図4は本発明に係るガス検知装置の波長確認処理を説明するためのフローチャート図であり、図5は本発明に係るガス検知装置の波長校正処理を説明するためのフローチャート図であり、図6は本発明に係るガス検知装置の第2形態を説明するための概略構成図であり、図7は本発明に係るガス検知装置の第3形態を説明するための概略構成図であり、図8は本発明に係るガス検知装置の第4形態を説明するための概略構成図であり、図9は本発明に係るガス検知装置の第5形態を説明するための概略構成図であり、図10は本発明に係るガス検知装置の第6形態を説明するための概略構成図である。
【0019】
図1に示すように、本例の第1形態のガス検知装置1は、測定雰囲気中に測定光を出射する出射部10と、出射部10から出射された測定光を受光する受光部20と、出射部10と受光部20との各種制御を行う制御器30とが装置本体に実装されている。
【0020】
出射部10は、LDモジュール11、波長処理機構部12、レーザポインタ13とで構成し、各部品がガス検知装置1の所定箇所に配設されるヒートシンク14上に設けれている。
【0021】
LDモジュール11は、半導体の再結合発光を利用した半導体レーザを備えたモジュールで構成される。LDモジュール11は、測定ガス特有の吸収線に合致した波長のレーザ光を発生し、このレーザ光がレーザポインタ13から出射されるガイド光(可視光レーザ)と測定位置において略一致するように、所定位置から測定雰囲気中に向けて出射している。
【0022】
ここで、図2を参照しながら、LDモジュール11の構成について説明する。図2に示すように、LDモジュール11は、半導体レーザ11aと、ペルチェ素子11b、第1温度検出手段11cと、第2温度検出手段11dとが密封容器11e内に密封収容されてモジュール構成されている。
【0023】
半導体レーザ11aは、半導体の再結合発光を利用したレーザであり、本例ではペルチェ素子11b上に設けられている。半導体レーザ11aは、密封容器11e内に鍍金処理(例えばAu鍍金)された接続端子部11fと、ワイヤ(例えばAu線)11gを介して配線接続されており、所定の通電電流がワイヤ11gを介して通電されることで所定波長のレーザ光を出射している。
【0024】
ペルチェ素子11bは、異種の金属の接合部に電流を流すと、片方の金属からもう片方へ熱が移動するというペルチェ効果(Peltier effect)を利用した板状の半導体素子であり、密封容器11e内に実装されている。ペルチェ素子11bは、後述する温度安定化制御部32の制御により、通電された電流に応じた吸熱/発熱により半導体レーザ11aの温度を所定温度に温度調整している。
【0025】
第1温度検出手段11cは、例えばサーミスタや白金薄膜温度センサ等の温度が変化することにより抵抗値が変化することを利用した温度センサで構成され、密封容器11e内に収容された半導体レーザ11aの温度と同期するペルチェ素子11bの温度を測定するため、密封容器11e内における半導体レーザ11a近傍(本例ではペルチェ素子11b上に実装)に実装されている。すなわち、ペルチェ素子11bの温度を測定することで、半導体レーザ11aの温度を測定しているのと同等となる。第1温度検出手段11cは、ペルチェ素子11bの温度を検出し、この検出した温度を第1検出温度として温度安定化制御部32に出力している。
【0026】
第2温度検出手段11dは、第1温度検出手段11cと同様にサーミスタ等の温度センサで構成され、密封容器11e内に収容された半導体レーザ11aと接続端子部11fとの間に結線されたワイヤ11gを含む接続端子部11fの温度を測定するため、密封容器11e内における半導体レーザ11aとワイヤ11g接続される接続端子部11f上に設けられている。第2温度検出手段11dは、接続端子部11fと半導体レーザ11aとの間に結線されたワイヤ11gの温度を検出し、この検出した温度を第2検出温度として温度安定化制御部32に出力している。
【0027】
波長処理機構部12は、ハーフミラー12aと、ガスセル12bと、波長処理用受光器12cと、温度センサ12dを備えて構成される。波長処理機構部12は、後述する波長処理制御部33の制御により、ガス検知始業開始前や始業後における測定光の波長校正を行うための参照光を受光し、この受光した受光信号を波長処理制御部33に出力している。
【0028】
ハーフミラー12aは、透過方向表面に外光の乱反射を防止するためのARコートが施された、光束を二つに分割する(例えば1:1)光学ミラーであり、LDモジュール11から出射されたレーザ光を入射して分割し、一方の光をガスセル12bへ参照光として反射し、もう一方の光は測定光として測定雰囲気中へ透過している。
【0029】
ガスセル12bは、封入ガスの吸収波長を減衰させないガラス等で形成された容器で構成され、この容器内に例えばメタン、二酸化炭素、アセチレン、アンモニア等の測定対象となるガスが気密封入されている。ハーフミラー12aで反射した参照光は、ガスセル12bを通過してた後、波長処理用受光器12cに入射している。
【0030】
波長処理用受光器12cは、例えばフォトダイオード等の光によって引き起こされる電気現象の光起電力効果を利用し、光エネルギーに比例した電気エネルギーに変換する半導体素子で構成される。波長処理用受光器12cは、ガスセル12b内を通過した参照光を受光し、この受光した参照光に応じた電気信号を検知信号として波長処理制御部33に出力している。
【0031】
温度センサ12dは、例えばサーミスタや白金薄膜温度センサ等の温度が変化することにより抵抗値が変化することを利用したセンサである。温度センサ12dは、雰囲気温度による発振波長を補正するためガスセル12b近傍の温度を検出し、この検出した波長校正時の補正温度値として波長処理制御部33に出力している。
【0032】
レーザポインタ13は、LDモジュール11から出射された測定光が出射されている位置確認用のガイド光(可視光)を出射している。
【0033】
受光部20は、受光レンズ21、検知用受光器22とを備えて構成され、LDモジュール11からの測定光の出射に伴い、測定雰囲気から反射した測定光を集光して受光している。
【0034】
受光レンズ21は、例えばフルネルレンズで構成され、測定雰囲気を通過して反射物によって反射してくる光を集光する集光レンズで構成され、測定対象から反射した測定光を検知用受光器22に集光している。
【0035】
検知用受光器22は、例えばフォトダイオード等の光によって引き起こされる電気現象の光起電力効果を利用し、光エネルギーに比例した電気エネルギーに変換する半導体素子で構成される。検知用受光器22は、受光レンズ21で集光された測定光を受光し、この受光した測定光に応じた電気信号を検知信号としてガス検知制御部に出力している。
【0036】
制御器30は、記憶部31と、温度安定化制御部32と、波長処理制御部33と、ガス検知制御部34とを備えて構成され、出射部10や受光部20の各部から出力された信号に基づいて各種処理を行う。
【0037】
記憶部31は、例えばROM、RAMなどの半導体メモリやHDDからなる記憶媒体で構成される。記憶部31は、所定の発振周波数で半導体レーザ11aを駆動するために予め設定された設定温度値、波長確認用判別手段33Acで波長確認時に基準値として用いられる基準2f/1f値、波長校正用判別手段33Bcで波長校正時に基準値として用いられる基準2f値を記憶している他、ガス検知装置1の各部の駆動に関する各種処理制御情報や測定ガスのガス濃度等のガス検知に係る各種データ等を記憶している。
【0038】
温度安定化制御部32は、半導体レーザ11aの温度を記憶部31に記憶された設定温度値(すなわち、所望の発振波長を出射するのに必要な半導体レーザ11aの駆動温度値を指す)に補正制御して、半導体レーザ11aの温度安定化を図っている。
【0039】
ここで、温度安定化制御部32が行う温度安定化処理について説明する。温度安定化処理としては、まず第2温度検出手段11dから補正温度値となる第2温度検出値を取得する。そして、第2温度検出手段11dから取得した第2温度検出値を用いて記憶部31に記憶された設定温度値を補正し、半導体レーザ11aの目標温度となるLD目標温度値を算出する。次に、第1温度検出手段11cから入力した第1温度検出値から前記算出したLD目標温度値を差し引いて、現在の半導体レーザ11aの温度と前記算出した目標温度との誤差値(温度差)を算出する。そして、この算出した誤差値に応じてペルチェ素子11bを駆動制御するためのペルチェ制御設定値を算出し、このペルチェ制御設定値に応じてペルチェ素子11bに通電する通電電流値を制御し、第1温度検出値とLD目標温度値との差が±0となる様に半導体レーザ11a、すなわちLDモジュール11の温度安定化を図っている。
また、温度安定化制御部32は、後述する波長確認判別手段から出力された温度調整信号に基づいて設定温度値を補正している。
【0040】
波長処理制御部33は、波長確認処理部33Aと、波長校正処理部33Bとで構成され、検知始業前や始業後におけるLDモジュール11の波長確認や波長校正に関する各種制御を行う。
【0041】
波長確認処理部33Aは、波長確認用算出手段33Aaと、波長確認用補正手段33Abと、波長確認用判別手段33Acとを備えて構成される。
【0042】
波長確認用算出手段33Aaは、波長処理用受光器12cからの検知信号から検出される変調周波数の基本波敏感検波信号(以下、1f信号と略称する)の強度変化に基づく1f値と、この1f値の2倍の検波信号である2倍波位相敏感検波信号(以下、2f信号と略称する)の強度変化に基づく2f値を算出する。また、波長確認用算出手段33Aaは、この算出した1f値,2f値の比率である2f/1f値を算出し、この2f/1f値を波長確認用補正手段33Abに出力している。
【0043】
波長確認用補正手段33Abは、必要に応じて、温度センサ12dから出力された補正温度値に基づいて周囲温度により変動する2f/1f値を補正し、この補正した2f/1f値を波長確認用判別手段33Acに出力している。
【0044】
波長確認用判別手段33Acは、波長確認用補正手段33Abから出力された2f/1f値と、記憶部31に記憶された基準となる基準2f/1f値とを比較判別する。そして、出力された2f/1f値が基準2f/1f値の所定範囲内(例えば基準2f/1f値の±10%以内)であった場合は、LDモジュール11の波長が安定化されていること判別する。また、出力された2f/1f値が基準2f/1f値の所定範囲外であった場合は、波長安定化を図るべく、現在のLDモジュール11の駆動温度値を補正するための温度調整信号を温度安定化制御部32に出力している。
なお、2f/1f値が基準2f/1f値の所定範囲内であった場合は、それぞれ波長確認処理完了通知などを不図示の通知制御部などに出力し、オペレータに対して波長確認処理の処理状態を通知する構成とすることも可能である。
【0045】
波長校正処理部33Bは、波長校正用算出手段33Baと、波長校正用補正手段33Bbと、波長校正用判別手段33Bcとを備えて構成される。
【0046】
波長校正用算出手段33Baは、LDモジュール11の安定化する温度、すなわち温度安定化制御部32で制御された現在の半導体レーザ11aの設定温度値を所定の振り幅で掃引(変化)させながら、波長処理用受光器12cからの検知信号から検出される変調周波数の2f信号に基づく2f値を算出し、一旦波長校正用補正手段33Bbに出力する。 そして、波長校正用算出手段33Baは、波長校正用補正手段33Bbから出力された2f値の中から最大値(この場合、温度を所定の振り幅で掃引しているので2f値が複数算出され、その算出された2f値の中の最大値を指す)となる最大2f値を算出し、この最大2f値を波長校正用判別手段33Bcに出力している。
【0047】
波長校正用補正手段33Bbは、必要に応じて、波長校正用算出手段33Baから出力された2f値を温度センサ12dから出力された補正温度値に基づき補正し、この補正した2f値を波長校正用算出手段33Baに出力している。
【0048】
波長校正用判別手段33Bcは、波長校正用算出手段33Baから出力された最大2f値と、記憶部31に記憶された基準となる基準2f値とを比較判別する。そして、出力された最大2f値が基準2f値の所定基準以上(例えば基準2f値の70%以上)であった場合は、この最大2f値からLDモジュール11の設定温度値を算出し、記憶部31に出力して設定温度値の変更を行う。これにより、LDモジュール11の発振波長が測定ガス吸収線に合せた波長に校正される。
また、出力された最大2f値が基準2f値の所定基準以下であった場合は、掃引する温度幅を変更(振り幅の拡大)して、再度2f値を算出するための2f値算出信号を波長校正用算出手段33Baに出力している。
【0049】
ガス検知制御部34は、測定光増幅手段34aと、受光信号検出手段34bと、演算手段34cとを備えて構成される。
【0050】
測定光増幅手段34aは、プリアンプで構成され、測定用受光器22から入力した測定光に応じた検知信号を、受光信号検出手段34bで検出する1f信号、2f信号が測定対象ガス濃度範囲で同等の検出レベルになるように、増幅度が1f信号、2f信号それぞれ最適な増幅度に増幅して受光信号検出手段34bに出力している。
【0051】
受光信号検出手段34bは、測定光増幅手段34aで増幅された測定光信号を信号処理し、1f信号と2f信号を位相敏感検波している。
【0052】
演算手段34cは、受光信号検出手段34bからの1f信号、2f信号を入力とし、この2f信号の強度変化に基づく2f値と元の変調周波数である1f信号の強度変化に基づく1f値の比率2f/1fに基づいて測定対象ガスのガス濃度を演算している。
【0053】
次に、図4、5を参照しながら、上述したガス検知装置1の処理動作についてそれぞれ説明する。ここでは、図4に示す主にガス検知始業前の点検時に行うLDモジュール11の波長確認処理と、図5に示すLDモジュール11の駆動温度値に伴う発振波長のずれを正しい吸収線に校正するための波長校正処理について説明する。
【0054】
まず、図4を参照しながら、ガス検知始業前における波長確認処理について説明する。ガス検知装置1の駆動に伴い、LDモジュール11を所定の設定温度値に基づいて駆動させるため、上述した温度安定化処理を行う(ST1)。次に、LDモジュール11から出射されたレーザ光がハーフミラー12aで測定光と参照光とに分岐され、この分岐された参照光がガスセル12bを通過し、波長処理用受光器12cに受光される(ST2)。
【0055】
そして、ST2において波長処理用受光器12cが受光した参照光に応じた検知信号を波長処理制御部33に出力し、この検知信号に応じて検出される1f信号に基づく1f値と、この1f値の2倍の検波信号である2f信号に基づく2f値を算出する(ST3)。また、この算出した1f値,2f値の比率である2f/1f値を算出する(ST4)。
なお、ST4において、ガスセル12b近傍の周囲温度により2f/1f値が変動している場合は、必要に応じて温度センサ12dから出力された補正温度値に基づき2f/1f値を補正する。
【0056】
次に、ST4において算出された2f/1f値(補正された場合は補正された2f/1f値を用いる)と、記憶部31に記憶された基準となる基準2f/1f値とを比較する(ST5)。そして、出力された2f/1f値が基準2f/1f値の所定範囲内(例えば基準2f/1f値の±10%以内)であった場合(ST6−Yes)は、LDモジュール11の波長が安定化されていることが確認される。
【0057】
一方、出力された2f/1f値が基準2f/1f値の所定範囲外であった場合(ST6−No)は、再度LDモジュール11の波長安定化を図るべく、ST7でLD目標温度値を変更(例えば−0.1℃)した後に、ST1へ戻り波長確認処理を行う。
【0058】
なお、ST6−Noにおいて、LDモジュール11の波長安定化を図るべくST1へ戻るが、所定回数繰り返してもLDモジュール11の波長安定化が図れない場合は、装置自体の故障等によるものとしてエラーを出力する構成としてもよい。
【0059】
次に、図5を参照しながら、LDモジュール11の駆動温度値に伴う発振波長のずれを正しい吸収線に校正するための波長校正処理について説明する。まず、LDモジュール11を所定の設定温度値に基づいて駆動させるため、上述した温度安定化処理を行う(ST11)。次に、LDモジュール11から出射されたレーザ光がハーフミラー12aで測定光と参照光に分岐され、この分岐された参照光がガスセル12bを通過し、波長処理用受光器12cに受光される(ST12)。
【0060】
そして、ST12において波長処理用受光器12cが受光した参照光に応じた検知信号を波長処理制御部33に出力し、現在のLDモジュール11の駆動温度値を所定の振り幅で掃引(変化)させながら、波長処理用受光器12cからの検知信号から検出される変調周波数の2f信号に基づく2f値を算出する(ST13)。次に、算出された2f値の中から最大となる最大2f値を算出する(ST14)。
なお、ST13において、ガスセル12b近傍の周囲温度により2f値に変動がある場合は、必要に応じて温度センサ12dから出力された補正温度値に基づき補正する。
【0061】
次に、算出された最大2f値と、記憶部31に記憶された基準となる基準2f値とを比較する(ST15)。そして、出力された最大2f値が基準2f値の所定基準以上(例えば基準2f値の70%以上)であった場合(ST16−Yes)は、この最大2f値からLDモジュール11の設定温度値を算出し、記憶部31に出力して設定温度値の変更を行う(ST17)。これにより、LDモジュール11の発振波長が測定ガス吸収線に合せた波長に校正される。
一方、出力された最大2f値が基準2f値の所定基準以下であった場合(ST16−No)は、掃引する温度幅を変更(振り幅の拡大)して(ST18)、再度2f値を算出するためのST13へ戻る。
【0062】
このように、上述したガス検知装置1では、LDモジュール11から出射されたレーザ光をハーフミラーで測定光と参照光とに分岐する。測定光は通常のガス検知に用いられ、参照光はガスセルを通過させた後に波長処理用受光器12cで受光し、この受光した参照光に応じた検知信号に基づき、波長処理制御部33においてLDモジュール11の波長確認処理や波長校正処理を行っている。
これにより、従来のようなガスセル内に封入した検出対象ガスを常時検出することができるので、半導体レーザ11aの劣化や使用環境の温度変化等よって半導体レーザ11aの波長がずれた場合であっても、参照光の検知信号の変化により波長ずれしたことを確認し、装置内で波長ずれを自己校正することができる。また、低コストで波長確認に伴う調整が短時間で容易にでき、且つ、ガス検知測定の始業前点検の時点で測定対象となるガスの検知が確実に測定できることを確認することできる。
【0063】
ところで、上述した形態では、LDモジュール11から出力されたレーザ光をハーフミラー12aで一部を参照光として反射させ、この反射させた参照光をガスセル12bに通過させた後に波長処理用受光器12cで受光し、この受光した参照光に応じた検知信号に基づいてLDモジュール11の波長確認処理や波長校正処理を行っているが、これに限定されることはなく、以下に示すような第2形態〜第6形態(図6〜図10)であっても上述した波長確認処理や波長校正処理と同様な効果を奏することができる。
【0064】
図6に示すように、第2形態のガス検知装置1は、LDモジュール11の密封容器内に測定対象ガスを充填して気密封止した構造である。また、第2形態のガス検知装置1では、半導体レーザ11aは前後両面から発光するため、第2形態のガス検知装置1では、前方の面から出射されるレーザ光を測定光とし、後方の面から出射されるレーザ光を校正用の参照光とし、参照光を半導体レーザ11aの後方に設けられた波長処理用受光器12cで受光し、この受光した参照光に応じた検知信号に基づいて波長確認処理や波長校正処理を行うことで、上述した最良の形態と同様の処理が可能となる。
なお、この第2形態では、LDモジュール11内に測定対象ガスが充填されているため、LDモジュール11から出射された測定光は、LDモジュール11内に充填された測定対象ガスによって光が吸収された状態で出射される。そのため、測定雰囲気から反射した測定光を受光レンズ21で集光して検知用受光器22で受光した際に、LDモジュール11内に充填された測定対象ガスのガス濃度を差し引く(オフセット)ことで、測定雰囲気のガス濃度を正確に検知することができる。
【0065】
図7に示すように、第3形態のガス検知装置1は、LDモジュール11の前方にガスセル12bが設けられた構造である。そして、第3形態のガス検知装置1では、LDモジュール11から出射された測定光と参照光を兼ねたレーザ光がガスセル12bを通過後に測定雰囲気中に出射され、測定雰囲気から反射したレーザ光を受光レンズ21で集光し、検知用受光器22で受光し、この受光した参照光に応じた検知信号に基づいて波長確認処理や波長校正処理を行うことで、上述した最良の形態と同様の処理が可能となる。
なお、この第3形態では、LDモジュール11の前方に測定対象ガスが充填されているガスセル12bを設けているため、ガス検知時の測定光として出射されたレーザ光は、ガスセル12b内に充填された測定対象ガスによって光が吸収された状態で出射される。そのため、ガス検知時では測定雰囲気から反射したレーザ光を受光レンズ21で集光して検知用受光器22で受光した際に、ガスセル12b内に充填された測定対象ガスのガス濃度を差し引く(オフセット)ことで、測定雰囲気のガス濃度を正確に検知することができる。
【0066】
図8に示すように、第4形態のガス検知装置1は、LDモジュール11の前方にガスセル12bが設けられ、さらにガスセル12bの前方に一方が所定角度に揺動可能に軸支された反射板23が設けられた構造である。そして、第4形態のガス検知装置1において、ガス検知時では反射板23が図中の破線の位置にあり、LDモジュール11から出射された測定光が測定雰囲気中に出射され、測定雰囲気から反射した測定光を受光レンズ21で集光し、検知用受光器22で受光してガス検知を行う。また、波長確認時や波長校正時では、反射板23が図中の実線の位置に揺動され、LDモジュール11からガスセル12bを通過した参照光が、反射板23で検知用受光器22に向けて反射され、この反射された参照光を検知用受光器22で受光し、この受光した参照光に応じた検知信号に基づいて波長確認処理や波長校正処理を行うことで、上述した最良の形態と同様の処理が可能となる。
なお、この第4形態では、LDモジュール11の前方に測定対象ガスが充填されているガスセル12bを設けているため、ガス検知時の測定光として出射されたレーザ光は、ガスセル12b内に充填された測定対象ガスによって光が吸収された状態で出射される。そのため、ガス検知時では測定雰囲気から反射したレーザ光を受光レンズ21で集光して検知用受光器22で受光した際に、ガスセル12b内に充填された測定対象ガスのガス濃度を差し引く(オフセット)ことで、測定雰囲気のガス濃度を正確に検知することができる。
【0067】
図9に示すように、第5形態のガス検知装置1は、検知用受光器22の前方にガスセル12bが設けられた構造である。そして、第5形態のガス検知装置1では、LDモジュール11から出射された測定光と参照光を兼ねたレーザ光がガスセル12bを通過後に測定雰囲気中に出射され、測定雰囲気から反射したレーザ光を受光レンズ21で集光し、検知用受光器22で受光し、この受光した参照光に応じた検知信号に基づいて波長確認処理や波長校正処理を行うことで、上述した最良の形態と同様の処理が可能となる。
なお、この第5形態では、LDモジュール11の前方に測定対象ガスが充填されているガスセル12bを設けているため、ガス検知時の測定光として出射されたレーザ光は、ガスセル12b内に充填された測定対象ガスによって光が吸収された状態で出射される。そのため、ガス検知時では測定雰囲気から反射したレーザ光を受光レンズ21で集光して検知用受光器22で受光した際に、ガスセル12b内に充填された測定対象ガスのガス濃度を差し引く(オフセット)ことで、測定雰囲気のガス濃度を正確に検知することができる。
【0068】
図10に示すように、第6形態のガス検知装置1は、受光レンズ21の前方にガスセル12bが設けられた構造である。そして、第5形態のガス検知装置1では、LDモジュール11から出射された測定光と参照光を兼ねたレーザ光がガスセル12bを通過後に測定雰囲気中に出射され、測定雰囲気から反射したレーザ光を受光レンズ21で集光し、検知用受光器22で受光し、この受光した参照光に応じた検知信号に基づいて波長確認処理や波長校正処理を行うことで、上述した最良の形態と同様の処理が可能となる。
なお、この第6形態では、LDモジュール11の前方に測定対象ガスが充填されているガスセル12bを設けているため、ガス検知時の測定光として出射されたレーザ光は、ガスセル12b内に充填された測定対象ガスによって光が吸収された状態で出射される。そのため、ガス検知時では測定雰囲気から反射したレーザ光を受光レンズ21で集光して検知用受光器22で受光した際に、ガスセル12b内に充填された測定対象ガスのガス濃度を差し引く(オフセット)ことで、測定雰囲気のガス濃度を正確に検知することができる。
【0069】
以上、本願発明における最良の形態について説明したが、この形態による記述及び図面により本発明が限定されることはない。すなわち、この形態に基づいて当業者等によりなされる他の形態、実施例及び運用技術等はすべて本発明の範疇に含まれることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】本発明に係るガス検知装置の第1形態の構成を説明するための概略構成図である。
【図2】本発明に係るガス検知装置に実装されるLDモジュールの構成を説明するための概略構成図である。
【図3】本発明に係るガス検知装置における波長処理制御部の構成を説明するための概略ブロック図である。
【図4】本発明に係るガス検知装置の波長確認処理を説明するためのフローチャート図である。
【図5】本発明に係るガス検知装置の波長校正処理を説明するためのフローチャート図である。
【図6】本発明に係るガス検知装置の第2形態を説明するための概略構成図である。
【図7】本発明に係るガス検知装置の第3形態を説明するための概略構成図である。
【図8】本発明に係るガス検知装置の第4形態を説明するための概略構成図である。
【図9】本発明に係るガス検知装置の第5形態を説明するための概略構成図である。
【図10】本発明に係るガス検知装置の第6形態を説明するための概略構成図である。
【図11】従来のガス検知装置の構成を説明するための概略構成図である。
【符号の説明】
【0071】
1 ガス検知装置
10 出射部
11 LDモジュール
12 波長処理機構部
12a ハーフミラー
12b ガスセル
12c 波長処理用受光器
12d 温度センサ
13 レーザポインター
20 受光部
21 受光レンズ
22 測定用受光器
30 制御器
31 記憶部
32 温度安定化制御部
33 波長処理制御部
33A 波長確認処理部
33Aa 波長確認用算出手段
33Ab 波長確認用補正手段
33Ac 波長確認用判別手段
33B 波長校正処理部
33Ba 波長校正用算出手段
33Bb 波長校正用補正手段
33Bc 波長校正用判別手段
34 ガス検知制御部
34a 測定光増幅手段
34b 受光信号検出手段
34c 演算手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ光を出射する半導体レーザを実装したLDモジュール(11)と、
該LDモジュールから出射されたレーザ光を測定光と参照光とに分岐するハーフミラー(12a)と、測定対象となるガスと同種のガスが封入されたガスセル(12b)と、該ガスセルを通過した前記参照光を受光し、この受光した前記参照光に応じた検知信号を出力する波長処理用受光器(12c)とを備えた波長処理機構部(12)と、
所定の発振周波数で前記半導体レーザを駆動するために予め設定される設定温度値と、波長校正時に基準値として用いられる基準2f値とを記憶している記憶部(31)と、
前記LDモジュールの駆動温度値を前記記憶部に記憶された前記設定温度値に温度安定化するための温度安定化制御部(32)と、
前記温度安定化制御部で制御された前記LDモジュールの駆動温度値を所定の振り幅で掃引させながら、前記波長処理機構部から出力された前記検知信号から検出される変調周波数の基本波敏感検波信号の2倍の検波信号である2倍波位相敏感検波信号の強度変化に基づく2f値を算出し、該算出された2f値の中から最大値となる最大2f値を算出して出力する波長校正用算出手段(33Ba)と、前記波長校正用算出手段から出力された最大2f値と前記記憶部に記憶された前記基準2f値とを比較し、前記最大2f値が基準2f値の所定基準以上であった場合は、前記最大2f値から前記LDモジュールの設定温度値を算出し、この算出した前記設定温度値を前記記憶部に出力して変更を行う波長校正用判別手段(33Bc)とを有する波長処理制御部(33)と、
を備えたことを特徴とするガス検知装置。
【請求項2】
前記波長処理機構部(12)は、前記ガスセル(12b)近傍で検出した温度値を補正温度値として出力する温度センサ(12d)を備え、
前記波長処理制御部(33)は、前記波長校正用算出手段(33Ba)で算出された2f値を必要に応じて前記補正温度値に基づき補正し、この補正した2f値を前記波長校正用算出手段に出力する波長校正用補正手段(33Bb)を備えたことを特徴とする請求項1記載のガス検知装置。
【請求項3】
前記記憶部(31)は、波長確認時に基準値として用いられる基準2f/1f値をさらに記憶しており、
前記波長処理制御部(33)は、前記波形処理用受光器(12c)からの検知信号から検出される変調周波数の基本波敏感検波信号の強度変化に基づく1f値と、該1f値の2倍の検波信号である前記2倍波位相敏感検波信号の強度変化に基づく2f値とを算出し、両値の比率である2f/1f値を算出して出力する波長確認用算出手段(33Aa)と、
前記算出された2f/1f値と、前記記憶部に記憶された基準2f/1f値とを比較し、前記2f/1f値が前記基準2f/1f値の所定範囲内であった場合は、前記LDモジュール11の波長が安定化されていると判別する波長確認用判別手段(33Ac)とを有する波長確認処理部(33A)を備えたことを特徴とする請求項1記載のガス検知装置。
【請求項4】
前記波長処理機構部(12)は、前記ガスセル(12b)近傍で検出した温度値を補正温度値として出力する温度センサ(12d)を備え、
前記波長処理制御部(33)は、前記波長確認用算出手段で算出された2f/1f値を必要に応じて前記補正温度値に基づき補正し、この補正した2f値を波長確認用算出手段に出力する波長確認用補正手段(33Ab)を備えたことを特徴とする請求項3記載のガス検知装置。
【請求項5】
請求項1記載のガス検知装置(1)を用いた校正方法であって、
前記温度安定化制御部(32)において前記LDモジュール(11)の温度安定化処理を行うステップと、
前記LDモジュールの駆動温度値を所定の振り幅で掃引させながら、前記波長処理機構部(12)から出力された前記検知信号から検出される変調周波数の基本波敏感検波信号の2倍の検波信号である2倍波位相敏感検波信号の強度変化に基づく2f値を算出するステップと、
該算出された2f値の中から最大値となる最大2f値を算出するステップと、
前記算出された最大2f値と、前記記憶部(31)に記憶された基準2f値とを比較するステップと、
前記最大2f値が基準2f値の所定基準以上であった場合は、前記最大2f値から前記LDモジュールの設定温度値を算出して前記記憶部に記憶された前記設定温度値の変更を行うステップと、
を含むことを特徴とするガス検知装置の校正方法。
【請求項6】
請求項3に記載のガス検知装置(1)を用いた波長確認方法であって、
前記温度安定化制御部(32)において前記LDモジュール(11)の温度安定化処理を行うステップと、
前記波長処理機構部(12)から出力された前記検知信号から検出される変調周波数の基本波敏感検波信号の強度変化に基づく1f値と、該1f値の2倍の検波信号である前記2倍波位相敏感検波信号の強度変化に基づく2f値とを算出し、両値の比率である2f/1f値を算出するステップと、
前記2f/1f値と、前記記憶部に記憶された基準2f/1f値とを比較するステップと、
前記2f/1f値が基準2f/1f値の所定範囲内であった場合は、前記LDモジュールの波長が安定化されていると判別するステップと、
を含むことを特徴とするガス検知装置の波長確認方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2008−232920(P2008−232920A)
【公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−74922(P2007−74922)
【出願日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【出願人】(000000572)アンリツ株式会社 (838)
【Fターム(参考)】