説明

ガス検知部およびガス警報器

【課題】 効率的に動作点検を行なうことができるガス検知部および当該ガス検知部を備えたガス警報器を提供する。
【解決手段】 被検知ガスを検出するセンサ1と、センサ1に点検用ガスGを吹き掛けるガス点検口4とを備えたガス検知部Aであって、ガス点検口4から吹き掛けられた点検用ガスGを貯留する貯留部6と、当該貯留部6の点検用ガスGをセンサ1に案内する案内流路8を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検知ガスを検出するセンサと、当該センサに点検用ガスを供給するガス点検口を備えたガス検知部、および、当該ガス検知部を備えたガス警報器に関する。
【背景技術】
【0002】
家庭用のガス警報器を新たに取り付ける場合、或いは、既に取り付けたガス警報器の定期点検を行う際には、点検用の被検知ガスをセンサ部分に吹き掛け、適正に鳴動するか否かを点検する。この点検は、例えば次のような手法により行なう。
【0003】
ガス警報器の点検者は、そのガス検知回路に組み込まれているガス検知素子に、被検知ガス、もしくは、そのガス検知素子がその被検知ガスと同等のガス検知能を示す点検用ガスを供給する。これにより、ガス検知部を実際に作動させて、そのガス検知動作、或いは、ガス検知部の出力等を確認する(特許文献1〔0023〕乃至〔0025〕段落参照)。
【0004】
【特許文献1】特開2002-269657号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
点検者が、このような動作点検を行う場合、例えば、通常のライターに充填されているイソブタンガスを用いる。都市ガス警報器のように炭化水素ガスを検知するガス警報器に対しては、イソブタンガスであっても十分に代用可能である。
【0006】
ガス警報器の点検を迅速に行うには、点検用ガスを、センサの内部に設けたガス検知素子に素速く到達させ、接触させる必要がある。そのために、前記センサの何れかの場所に点検用の開口部が設けてあり、点検用のガスをセンサの内部に導くように構成してある。
ただし、ライターに充填してある前記イソブタンガスは、ある程度の高濃度を有している。そのため、センサに過剰に供給されると、センサは直ちに鳴動を開始するものの、センサの周囲のガス濃度が長時間に亘って高く維持され、そのあいだガス警報器が鳴動し続けることとなる。
【0007】
従来の検査方法によれば、例えば、ライター操作の技量差によって、センサに吹き掛けられるイソブタンガスの濃度が大きく変動する。その結果、ガス警報器が長時間に亘って鳴動したり、あるいは、鳴動しないために再度イソブタンガスを吹き掛ける手間が生じる等、常に効率の良い点検作業を行うことは困難であった。
【0008】
そこで、本発明は上記実状に鑑み、効率的に動作点検を行なうことができるガス検知部および当該ガス検知部を備えたガス警報器を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(特徴構成1)
本発明のガス検知部の特徴構成は、被検知ガスを検出するセンサと、当該センサに点検用ガスを吹き掛けるガス点検口とを備えたものであって、前記点検口から吹き掛けられた点検用ガスを貯留する貯留部と、当該貯留部の点検用ガスを前記センサに案内する案内流路とを備えた点にある。
【0010】
(作用効果)
本構成では、センサに点検用ガスを直接吹き掛けるのではなく、点検口から吹き掛けられた点検用ガスをまず貯留部に貯留する。そして、この点検用ガスを案内流路を介してセンサに案内する。
本構成であれば、従来のごとく、点検用ガスをセンサに直接吹き掛ける必要が無く、貯留部に点検用ガスを吹き掛けるだけでよい。つまり、点検用ガスの吹き掛け要領に拘わらず、センサに点検用ガスを確実に供給することができ、センサの点検を容易に行うことができる。
【0011】
(特徴構成2)
本発明のガス検知部には、前記貯留部に吹き掛けられた前記点検用ガスのうち、前記貯留部の容量以上の点検用ガスを排出する過量ガス排出手段を備えることができる。
【0012】
(作用効果)
ガス検知部の点検を行う際には、過剰な点検用ガスを供給することは好ましくない。特に、過剰なガスを供給すると、点検用ガスがセンサ部分に長時間滞留することとなり、警報が鳴り続けたり、点検作業の時間そのものが長くなるなど、円滑な点検作業を行うことが困難となる。
そこで、本構成のごとく、過量ガス排出手段を設けておき、所定量以上の点検用ガスを排出することで、上記不都合が生じるのを防止することができる。
また、本構成であれば、経験が浅い作業者が点検作業を行う場合でも、センサに供給するガス量が一定となる。よって、ガス検知部の点検精度が安定したものとなる。
【0013】
(特徴構成3)
本発明のガス検知部においては、前記案内流路を、所定の内径を有する筒状の通路によって構成することができる。
【0014】
(作用効果)
点検用ガスをガス検知部に供給する際には、ガスの供給総量の他に、供給する流量も重要である。つまり、ガス供給があまりに少ない流量で行われると、点検用ガスが供給されるものの、ガス検知部からの点検用ガスの排出も同時に行われるため、ガス検知部の出力が警報を発令するのに必要な閾値にまで上昇せず、点検ができなくなる。
一方、点検用ガスの流量が多過ぎると、供給したガスの一部しか点検作業に寄与しないこととなり、点検用ガスに無駄が生じて効率的な点検作業を行えなくなる。
【0015】
そこで、本構成のごとく、所定の内径を有する筒状の通路を用いて案内流路を構成することで、点検用ガスの流量が一定となり、センサに対するガス供給量あるいはガスの供給時間を常に一定にすることができる。この結果、ガス検知部の出力が略一定となり、かつ、当該一定の出力を発生する時間が均一になる。ガス検知部の応答特性、あるいは、鳴動時間などがいつも同じであれば、ガス検知部が健全であるか否かの判定がし易くなり、点検作業の精度が高まると共に作業を効率化することができる。
【0016】
(特徴構成4)
本発明のガス検知部では、前記センサをセンサケースの内部に設けると共に、当該センサケースの壁部に、その内部と外部とに渡って前記点検用ガスの出入りを許容する開口部を備えることができる。
【0017】
(作用効果)
一般に、ガスを検知するセンサは、センサケースの内部に設けてあることが多い。例えば、フィルタを通過したガスのみがセンサケースの内部に進入できるように構成することで、ガスの選択性を高め、雑ガス等に対するセンサの耐被毒性が高まる。
しかし、上記フィルタを介して点検用ガスの供給を行うと、センサ出力が所定値に高まるまでに長時間を要する。また、センサケースの内部に侵入した点検用ガスが外部に排出されるまでの時間が長くなり、警報機の警報鳴動が持続するなど不都合が生じる。
【0018】
そこで、本構成のごとく、センサケースの壁部に、その内部と外部とに渡って点検用ガスの出入りを許容する開口部を備えることで、センサ出力を速やかに高め、かつ、センサが反応した後は、速やかにセンサケースの内部のガスを排出して、センサ出力を下げることができる。このように、本構成のガス検知部であれば、点検作業を一層効率化することができる。
【0019】
(特徴構成5)
本発明のガス検知部では、前記開口部を、前記センサケースの壁部に、高さを異ならせて少なくとも二つ設けておき、前記点検用ガスを前記開口部のうちの少なくとも何れか一つに案内するように前記案内流路を構成することができる。
【0020】
(作用効果)
点検用ガスの比重は、通常、空気の比重と異なる。よって、本構成のごとく、前記開口部を、高さを異ならせて少なくとも二つ設けておけば、点検用ガスの流動性を利用してセンサケースの内部に対するガスの供給・排出が容易となる。そして、点検用ガスをセンサケースの壁部に設けた開口部のうち少なくとも何れか一つに案内するように案内流路を構成することで、点検用ガスをセンサケースの内部に確実に注入することができる。
【0021】
例えば、点検用ガスとして空気よりも重いイソブタンガスを用いる場合には、上下方向に位置が異なる開口部のうち、下方の開口部に向けて被検知ガスを吹き掛ける。つまり、イソブタンガスが逃げようとする側の開口部から点検用ガスを供給する。これにより、センサケースの内部に注入された点検用ガスが内部に留まり、センサケース内部のガス濃度が早期に高まる。この結果、センサの動作確認を迅速に行なうことができる。
一方、点検用ガスの流入が停止すると、それまでガスの注入孔として機能していた下方の開口部がガスの排出孔として機能するようになる。上方の開口は、点検用ガスの排出に応じた空気の侵入口として機能し始めるから、当該ガスが極めて円滑に排出される。
【0022】
このように、本構成のガス検知部であれば、センサケースの内部へのガスの注入と、センサケースの外部へのガスの排出を確実に行うことができる。よって、センサの動作点検を行なう際に少量の点検用ガスを吹き掛けるだけでよく、効率よくセンサの動作点検を行なうことができる。さらに、点検用ガスの供給量が少なくなれば、センサケースからの点検用ガスの抜けが早くなる。この結果、警報確認を行った後、早期に鳴動を停止させることができる。
【0023】
(特徴構成6)
本発明のセンサ検知部には、前記センサの点検に用いた後の点検用ガスをガス検知部の外部に排出するガス排出口を備えることができる。
【0024】
(作用効果)
本構成のごとく、点検に用いたガスをガス検知部の外部に排出できるガス排出口を設けることで、ガス検知素子の周囲およびセンサケースの周囲に点検用ガスが滞留するのを防止することができる。この結果、点検作業中にセンサケースから点検用ガスが順次排出される際に、センサケースの外部のガス濃度を低く維持することができるから、センサケースからのガスの排出が阻害されることがない。この結果、上記特徴構成5と同様に、点検用ガスの抜けがより早くなり、センサの鳴動を早期に停止させることができて、点検作業を円滑に行うことができる。
【0025】
(特徴構成7)
本発明のセンサ検知部を用いて、ガス警報器を構成することができる。
【0026】
(作用効果)
例えば、ガス警報器は、一般家庭に備えることが多く個数も膨大である。そして、ガス警報器は定期的に点検が必要であり、点検作業は正確かつ迅速に行われるべきである。上記センサ検知部であれば、点検作業者の技量に拘らず、一定の精度を出すことができ、しかも、試験鳴動の停止時期がバラつくことも無い。
このように、本構成のセンサ検知部は、ガスの濃度を検出する各種の装置に適用可能であるが、特に、ガス警報器に適用すれば本発明の作用効果をより有効に発揮させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
(概要)
本発明の装置は、例えば、家庭用燃料ガスを使用する各種燃焼器具からのガス漏れを検知するものであって、その設置場所における動作点検を確実かつ容易に行えるガス検知部、および、当該ガス検知部を備えたガス警報器である。
本発明のガス検知部は、定期的に点検する必要がある。その際には、例えば、イソブタンガスを点検用ガスとしてセンサに吹き掛ける。このとき、点検用ガスの吹き掛け量が少ないとガス検知部が反応しない。一方、吹き掛け量が多いと、ガス検知部は反応するものの、センサの周辺から点検用ガスが拡散するまでの時間が長くなり、センサの出力が低下するまで警報が鳴り続くことになる。
【0028】
本発明は、ガス検知部の点検に際し、センサへの点検用ガスの吹き掛け量を一定にし、点検作業を効率的に行えるガス検知部および当該ガス検知部を備えたガス警報器を提供するものである。
以下、本発明のガス検知部およびガス警報器を図面に基づいて説明する。
【0029】
(ガス点検口)
図1には、本発明に係るガス警報器Bの概観、および、ガス点検器具2を用いて点検作業を行う様子を示す。
図1に示すごとく、ガス警報器Bの警報器本体3には、ガス点検器具2を当接させるガス点検口4を設けてある。具体的には、当該ガス点検器具2としては一般のライターを改造したものを使用し、ガス点検器具2に設けたノズル5をガス点検口4に挿入する。このガス点検口4に対してガス点検器具2から点検用ガスGを供給する。当該ガス点検口4の内径は所定寸法に形成してあり、このガス点検口4にノズル5を挿入すると、ノズル5の方向が自動的に固定される。ノズル5を固定したのち、点検作業者は一定時間のあいだ点検用ガスGを吹き掛ける。
【0030】
(貯留部)
前記ガス点検口4に正対する位置には、前記吹き掛けられた点検用ガスGを一旦受け止める貯留部6を設けてある。図1に示したごとく、貯留部6には、比較的大きなガス受入部7を設けてあり、ガス点検器具2から吹き掛ける点検用ガスGの殆どが当該貯留部6に導かれる。
【0031】
前記貯留部6は、上方が広く開口してガス受入部7を形成し、最下部に筒状部材8aを設けたロート形状を備える。この貯留部6の中に一定量の点検用ガスGが貯留される。この一定量の点検用ガスGは、センサ1の出力機能を確認するために十分なものである。
尚、貯留するとはいえ、吹き掛けられた点検用ガスGは、順次、最下部の筒状部材8aを介して排出される。よって、貯留部6に貯められたガスは、一定時間が経過した後には全て排出される。
【0032】
前記貯留部6の上縁部9aは過量ガス排出手段9としての機能を奏する。つまり、過剰の点検用ガスGが貯留部6に吹き掛けられた場合には、余分な点検用ガスGが当該上縁部9aを乗り越えて排出される。排出された点検用ガスGは、ガス検知部Aの下方に設けた例えばスリット状のガス排出口10から警報器本体3の外部に排出される。
尚、前記過量ガス排出手段9から排出する点検用ガスGが、センサ1の側に流動しないように、図1に示すごとく仕切部材11を備えている。
【0033】
ガス警報器Bの点検業者は、必ずしも適量の点検用ガスGを吹き掛けるとは限らない。しかしながら、本構成のごとく貯留部6を設けることで、点検用ガスGの吹き掛け量に拘らず、適量の点検用ガスGをセンサ1に供給することができる。よって、点検作業者の技量に左右されることなく、点検作業を確実かつ効率的に行うことができる。
【0034】
図1には、下向きのロート形状を有する貯留部6を示したが、これは、点検用ガスGとして空気よりも比重の重いイソブタンガスを用いる場合を示したからである。よって、空気よりも比重の軽い点検用ガスGを用いる場合には、ロートの上下を反転させ、筒状部材8aを上方に設けるものであっても良い。
【0035】
(案内流路)
図1および図2に示したごとく、前記貯留部6の下部には、点検用ガスGをセンサ1に導く案内流路8を設けてある。当該案内流路8は、例えば、前記筒状部材8aが該当する。筒状部材8aで構成することで、周囲の風などに影響されることなく点検用ガスGをセンサ1に導くことができる。
また、点検用ガスGをセンサ1に供給する際には、ガスの供給総量の他に、センサ1に供給する流量が重要である。つまり、ガス供給があまりに少ない流量で行われると、センサ1の出力が、警報を発令するのに必要な閾値にまで上昇せず、点検ができなくなる。一方、点検用ガスGの流量が多過ぎると、供給したガスの一部しか点検作業に寄与しないこととなり、点検用ガスGに無駄が生じて、効率的な点検作業を行えなくなる。
【0036】
そこで、本実施形態では、前記筒状部材8aに設けた流路を所定の内径に構成し、点検用ガスGの流量および供給時間を一定にしている。この結果、センサ1に対する点検用ガスGの供給状態が一定となる。例えば、点検ガスの吹き掛けを開始したのちガス検知部Aが反応するまでの時間を略一定にでき、さらには、センサ1が所定の出力を発生する時間が均一になる。このように、ガス検知部Aの応答のタイミング、あるいは、鳴動時間が一定であれば、ガス検知部Aが健全であるか否かの判定がし易くなる。
【0037】
尚、前記筒状部材8aの内径は、点検用ガスGの種類に応じて適宜決定する。例えば、空気に比べて比重の差が大きい点検用ガスGを用いる場合には、内径をある程度小さくする。これにより、ガスの下降速度あるいは上昇速度が抑制されて流量を一定量に規制することができる。
一方、空気に比べて比重の差が小さい点検用ガスGを用いる場合には、内径をある程度大きくする。つまり、流路内での抵抗を小さくすることで、ガスの下降速度あるいは上昇速度が減少するのを防止し、円滑に点検用ガスGを流通させる。
また、この他に、筒状部材8aの長さを加減することで、比重の異なるガスに対応することも可能である。例えば、空気の比重との差が大きなガスの場合には筒状部材8aを長く設定し、空気の比重との差が小さなガスでは、筒状部材8aの長さを短くすると良い。
【0038】
(センサおよびセンサケース)
図3に示すごとく、センサ1は、略円筒状のセンサケース12の内部にガス検知素子13を設けて構成してある。当該ガス検知素子13は、センサケース12の長手方向に沿った一方側に設けてある。前記センサケース12の他方側は開放構造となっているが、当該部分には、点検用ガスG以外の雑ガスを吸着してセンサ1の検知精度を向上させるためのフィルタ14を設けてある。当該フィルタ14は、例えば、活性炭を備えている。
【0039】
(開口部)
前記センサケース12の壁部12aには、その内部と外部とに渡って前記点検用ガスGの出入りを許容する開口部15を設けてある。
図3に示すごとく、ガス検知素子13は、一方にフィルタ14を備えたセンサケース12の内部に設けてある。本構成により、フィルタ14を通過したガスのみをセンサケース12の内部に進入させ、ガスの選択性を高め、雑ガス等に対するセンサ1の耐被毒性を高めている。
しかし、仮に、上記フィルタ14を介して点検用ガスGの供給を行うとすると、点検用ガスGがガス検知素子13に到達し難く、センサ1の出力が所定値に高まるまでに長時間を要する。また、一旦、センサケース12の内部に侵入した点検用ガスGが外部に排出され難くなり、警報鳴動が長時間に亘って続くことになる。さらに、点検に用いる点検用ガスGは、例えば通常のライターに用いられるイソブタンガスである。このイソブタンガスは、前記フィルタ14に吸着され易い。よって、前記フィルタ14の汚染を少しでも防止するためには、点検用ガスGは前記フィルタ14を介さずにセンサケース12の内部に導くのが好ましい。
【0040】
そこで、本構成のごとく、センサケース12の壁部12aに、その内部と外部とに渡って点検用ガスGの出入りを許容する開口部15を備えることで、点検用ガスGの出入りを円滑に行わせてセンサ1の応答性を高め、かつ、センサ1が反応した後は、速やかにセンサケース12の内部の点検用ガスGを排出して、センサ1の出力を下げることができる。このように、本構成のガス検知部Aであれば、点検作業時間を短縮して点検作業を一層効率化することができる。
【0041】
図2に示すごとく、本実施形態では、前記開口部15を二つ設けてある。当該二つの開口部15は、前記センサケース12の壁部12aに、互いに高さを異ならせて設けてある。そして、これら開口部15のうちの少なくとも何れか一つに向けて点検用ガスGを案内するように、案内流路8を設けてある。
【0042】
本構成のごとく、互いに高さの異なる開口部15を設けておき、特定の開口部15に案内流路8によって点検用ガスGを導くことで、ガスの比重に応じて、センサケース12へのガスの注入および排出を効率的に行うことができる。
例えば、点検用ガスGとして空気よりも重いイソブタンガスを用いる場合には、上下方向に位置が異なる開口部15のうち、上方の開口部15にガスを注入するように案内流路8を設定する。このとき、上方の開口部15がセンサケース12の頂上位置にあるときは、案内流路8の軸心を当該開口部15に向けるものとする。また、図2に示すごとく、上方の開口部15がセンサケース12の頂上位置にないときは、案内流路8の軸心を当該開口部15よりも頂上側に向けるものとする。
本構成であれば、案内流路8から放出された点検用ガスGが、必ず上方の開口部15の位置を通過するから、センサケース12の内部に供給する点検用ガスGの量を多く確保することができる。この結果、用いる点検用ガスGの量を少なくすることができる。
【0043】
また、図示は省略するが、案内流路8の先端部を屈曲形成して、下方の開口部15に向けて点検用ガスGを吹き掛ける構成としても良い。つまり、イソブタンガスが逃げようとする側の開口部15から点検用ガスGを供給する。これにより、センサケース12の内部に注入された点検用ガスGが内部に留まり、センサケース12内部のガス濃度が早期に高まる。この結果、センサ1の動作確認を迅速に行なうことができる。
【0044】
上記何れの場合であっても、点検用ガスGの注入を停止すると、下方の開口部15が点検用ガスGの排出孔として機能するようになり、上方の開口部15は、点検用ガスGの排出に応じた空気の侵入口として機能し始めるから、当該ガスが極めて円滑に排出される。
【0045】
このように、本構成のガス検知部Aであれば、センサケース12の内部への点検用ガスGの注入と、センサケース12の外部への点検用ガスGの排出とを円滑かつ速やかに行うことができ、効率よくセンサ1の動作点検を行なうことができる。さらに、センサケース12からの点検用ガスGの抜けが早くなる結果、警報確認を行った後、早期に鳴動を停止させることができる。
【0046】
尚、上記開口部15の形状は、丸形状あるいは長方形状など任意の形状でよい。
また、前記開口部15の数は、必ずしも二つである必要はない。例えば、三つ以上の開口部15を設けても上記と同様の効果を得ることができる。
さらに、開口部15を一つだけ備えた構成にすることもできる。この場合には、単に丸形状の開口部15を設けることとしてもよいし、その他に、例えば、長孔状の開口部15を設けてもよい。長孔状とする場合には、開口部15の下端部の高さと上端部の高さとを適宜設定することで、点検用ガスGの注入・排出を効率的に行うことができる。要するに用いる点検用ガスGの特性に応じて、ガスの注入・排出を容易にするいかなる構成も採用可能である。
【0047】
本構成のごとく、前記センサケース12の外形を円筒状に構成すると、点検用ガスGをセンサケース12の周囲に沿って滑らかに流通させることができる。特に、センサケース12の表面のうち筒状部材8aに面した側では吹き掛けられた点検用ガスGの圧力が高まり、筒状部材8aとは反対の裏側では、点検用ガスGの圧力が低くなる。この構成であれば、筒状部材8aに面した側の開口部15から点検用ガスGが注入され易くなる。
一方、裏側の開口部15にあっては、センサケース12の裏側に点検用ガスGが回り込む際に乱流となり、場合によっては負圧が発生する。この結果、センサケース12の内部の空気を積極的に吸引する効果を生じ、前記筒状部材8aに近い側の開口部15からの点検用ガスGの注入を援助することにもなる。これにより、センサ1の動作点検をより迅速に行なえることとなる。
【0048】
本実施形態では、図1及び図2に示すごとく、センサケース12を横向きに配置してある。より詳細には、前記センサケース12は、当該センサケース12の円筒の軸心が水平になるように設けてある。そして、前記二つの開口部15は、同一の円周上に位置するように設けてある。つまり、円筒の軸心に対して垂直な平面を想定し、当該平面とセンサケース12の外表面との交線上に前記二つの開口部15を形成する。さらに、前記筒状部材8aからの点検用ガスGは、当該平面に沿って前記交線に向けて吹き掛ける。
【0049】
双方の開口部15は円筒状の外表面に開口しており、前記筒状部材8aに対する当該開口部15の対面角度が異なる。この結果、双方の開口部15の周辺を流れる点検用ガスGの流速には差が生じる。特に、一方の開口部15を前記筒状部材8aの側に向け、他方の開口部15を前記筒状部材8aからみて裏面に設けることで、前記筒状部材8aの側の開口部15におけるガス圧が正圧となり、前記裏側の開口部15におけるガス圧が低圧もしくは負圧になる。
【0050】
このように、点検用ガスGが双方の開口部15の周辺を通過する状況を作ることで、双方の位置におけるガス圧の差を形成する。ガス検知部Aであれば、一方の開口部15を点検用ガスGの注入口として機能させ、他方の開口部15を点検用ガスGの吸引口として機能させることができるから、少量の点検用ガスGを流通させる場合であってもセンサ1の動作確認を確実に行なえる。
【0051】
さらに、上記ガス検知部Aをガス警報器Bに用いることは、現実に多数のガス警報器Bを販売し、点検する場合に極めて有効である。
例えば、一般家庭に備えるガス警報器は、販売個数が膨大であり、定期的な点検の手間も多大である。
その点、上記ガス検知部Aであれば、点検作業者の技量に拘らず、一定の精度を出すことができ、しかも、試験鳴動の停止時期がバラつくことも無い。
このように、本構成のガス検知部Aは、ガスの濃度を検出する各種の装置に適用可能であるが、特に、ガス警報器に適用すれば本発明の作用効果をより有効に発揮させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明は、主に家庭用の各種燃焼器具からのガス漏れを検出したときに警報を発するガス警報器等であって、その設置場所において確実に点検することができるガス検知部およびそのようなガス検知部を備えたガス警報器に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明のガス検知部及びガス警報器を示す一部切欠斜視図
【図2】本発明のガス検知部を示す側断面図
【図3】センサの詳細を示す説明図
【符号の説明】
【0054】
1 センサ
4 ガス点検口
6 貯留部
8 案内流路
9 過量ガス排出手段
10 ガス排出口
12 センサケース
15 開口部
A ガス検知部
B ガス警報器
G 点検用ガス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検知ガスを検出するセンサと、当該センサに点検用ガスを供給するガス点検口とを備えたガス検知部であって、
前記ガス点検口から吹き掛けられた点検用ガスを貯留する貯留部と、当該貯留部の点検用ガスを前記センサに案内する案内流路とを備えたガス検知部。
【請求項2】
前記貯留部に吹き掛けられた前記点検用ガスのうち、前記貯留部の容量以上の点検用ガスを排出する過量ガス排出手段を備えている請求項1に記載のガス検知部。
【請求項3】
前記案内流路が、所定の内径を有する筒状の通路である請求項1または2に記載のガス検知部。
【請求項4】
前記センサをセンサケースの内部に設けると共に、当該センサケースの壁部に、その内部と外部とに渡って前記点検用ガスの出入りを許容する開口部を備えた請求項1から3の何れか一項に記載のガス検知部。
【請求項5】
前記開口部を、前記センサケースの壁部に、高さを異ならせて少なくとも二つ設けてあり、
前記案内流路を、前記点検用ガスを前記開口部のうちの少なくとも何れか一つに案内するように構成してある請求項4に記載のガス検知部。
【請求項6】
前記センサの点検に用いた後の点検用ガスをガス検知部の外部に排出するガス排出口を備えた請求項1から5の何れか一項に記載のガス検知部。
【請求項7】
請求項1〜6の何れか一項に記載のガス検知部を備えたガス警報器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−85260(P2006−85260A)
【公開日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−266983(P2004−266983)
【出願日】平成16年9月14日(2004.9.14)
【出願人】(000190301)新コスモス電機株式会社 (112)
【Fターム(参考)】