ガス漏れ警報器
【課題】センサの点検を点検回路によって行う際に、点検スイッチOFF後の監視状態への移行を早くすることができ、さらに、点検スイッチを操作した際の報知を通常のガス漏れ警報時と異ならせることができるガス漏れ警報器を提供する。
【解決手段】ガス漏れ警報器10のガス検知部3は、ガス検知素子D、補償素子C、および抵抗R1、R2、及び可変抵抗VRからなるブリッジを備えており、補償素子Cと対向する抵抗R1に並列に、点検スイッチSWと抵抗RAの直列回路が接続されている。点検スイッチSWが導通するとガス検知部3の出力は、ガス漏れを検知した状態と同じになり、センサの点検ができる。また、警報部6は、点検スイッチが導通した信号(電位A)を受けて、通常のガス漏れ警報時と異なる報知を行うことが可能となっている。
【解決手段】ガス漏れ警報器10のガス検知部3は、ガス検知素子D、補償素子C、および抵抗R1、R2、及び可変抵抗VRからなるブリッジを備えており、補償素子Cと対向する抵抗R1に並列に、点検スイッチSWと抵抗RAの直列回路が接続されている。点検スイッチSWが導通するとガス検知部3の出力は、ガス漏れを検知した状態と同じになり、センサの点検ができる。また、警報部6は、点検スイッチが導通した信号(電位A)を受けて、通常のガス漏れ警報時と異なる報知を行うことが可能となっている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス漏れを接触燃焼式のガス検知素子で検知し、ブザーや音声にて警報を発するガス漏れ警報器に関し、詳細には、センサの点検回路を備えたガス漏れ警報器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のガス漏れ警報器において、センサ(補償素子、ガス検知素子)は、図9に示すように、数10μmの白金線コイル上に酸化触媒をアルミナ担体とともに焼結したガス検知素子Dと、ガスに不活性なアルミナとガラスの混合物を焼結した補償素子Cから構成され、ガス検知素子Dと補償素子Cとは、センサベース21に立てたニッケルピン22等に各々、両端の白金線部がスポット溶接により接合されており、全体が金網23で覆われている。
そして、約50cm程度の落下衝撃等では、容易に警報機能に影響がでないように、上下ケースでかん合する筐体構造がとられていた。
【0003】
センサには外部から電源が供給され、常時、白金線コイルは300〜450℃に加熱されるようになっており、ガス検知素子Dの表面で可燃性ガスが燃焼すると、ガス検知素子Dの温度が上昇し、この温度変化に伴って素子を構成する白金線コイルの抵抗値も増加することになる。他方、補償素子Cは、ガス濃度の変化に対してその抵抗値が変わらないようになっている。
そして、センサ(補償素子C、ガス検知素子D)と固定抵抗及び可変抵抗等とで構成したホイーストンブリッジ回路により、ガス検知素子Dの抵抗値変化がガスの濃度にほぼ比例して取り出すことができる。ガス漏れ警報器では、このブリッジバランスの崩れることを判別しガス漏れを警報する仕組みで構成されている。
【0004】
図10はこのような従来のガス漏れ警報器の構成図、図11は図10に示したガス漏れ警報器における各状態でのセンサ出力を示す図、図12はガス濃度とセンサ電圧との特性曲線を示す図である。
以下に、従来のガス漏れ警報器の動作を図10、図11、及び図12を使って説明する。
【0005】
ガス漏れ警報器1は、電源基準部2、ガス検知部3、増幅部4、位相比較判別部5、警報部6等を有している。
商用電源が、電源コードAC、ヒューズF、バリスタBを介し、電源トランスTに供給される。トランスTは、2種類の電圧を出力するようになっている。一つは、各部に電源を供給する電源基準部2に供給され、もう一つはガス検知部3のセンサ(ガス検知素子D、補償素子C)や固定抵抗R1、R2及び可変抵抗VR等で構成されるブリッジ回路に電源を供給する。電源基準部2は、整流ブリッジBR等でトランスTの出力を整流し各回路部へ電源を供給するとともに、位相比較判別部5へ警報の基準となる半波信号VRFを供給している。
【0006】
ガス検知部3は、図9で示すようなガス検知素子Dと補償素子Cで構成されるセンサと、固定抵抗R1、R2および可変抵抗VRとで、ホイーストンブリッジを構成している。この可変抵抗VRを調整し、あらかじめセンサ出力Vsが0になる濃度を警報濃度として設定している。清浄大気中で設定されたセンサ出力Vsrmsは数10mV程度と低いため、増幅部4で高倍率増幅し、その増幅された出力と電源基準部2の半波信号VRFとを位相比較判別部5で比較している。
【0007】
図11(1)に基準電圧部2の半波信号VRFの波形を示す。ガス漏れがない通常時は、センサ出力Vsは半波VRFと同相で監視状態となるようにしている(図11(2)のVs(監視))。そして、ガス漏れ警報器周囲のガス濃度が徐々に増加すると、センサ出力Vsが小さくなり(図11(3)のVs(A))、やがて0となる(図11(4)のVs(0クロス))。センサ出力Vsが0になった時点で、位相比較判別部5からガス漏れ警報信号を警報部6に伝え、警報部6のブザーや音声によりガス漏れ警報報知を行う。センサ出力Vsが0を超すと電圧位相は半波信号VRFと逆位相(図11(5)のVs(B))になり、さらに、ガスの増加に合わせて電圧値が大きくなっていく(図11(6)のVs(X))。
【0008】
図12は、電源基準部2からの半波信号VRFに対するセンサ出力Vsの位相差を同相でマイナス、逆相でプラスとした場合の、ガス濃度とセンサ出力Vsの関係を示したものである。ガス漏れがない清浄大気中でのセンサ出力VsはVsrmsとなるように予め設定されている。そして、ガス濃度が高くなるにつれてセンサ出力Vsの絶対値は小さくなり、先述したように、センサ出力Vsが0クロスする際のガス濃度が警報濃度となるように、可変抵抗VRが調整されている。
なお、図11(3)のVs(A)、および図11(5)のVs(B)の各状態は、図12では、Vs(0クロス)をはさんで反対側に位置している。
半波信号VRFとセンサ電位Vsの位相は、トランスの巻き線方向によっても変えられるので、監視時が逆相で、警報時が同相にして警報するようにすることも可能である。
【0009】
そして、このような従来のガス漏れ警報器においては、ガス漏れ警報器本体とアルコール系のガスを発生させる点検ガスを個装箱に同梱していた。そして、ガス漏れ警報器設置業者により、ガス漏れ警報器の鳴動点検としてガス漏れ警報器本体の点検口(ガス検知部)にガスを吹きかけ、正常にセンサが機能するかどうかの確認を行っていた。
しかし、点検ガスは出荷時点で本体と個装箱に同梱されているものの、ガス漏れ警報器の取り付けに伴い個装箱は廃棄され、長い年月の保管により使用者が紛失したりして、点検が行われない可能性があった。
【0010】
また、点検ガスによる点検では、一定のガス濃度雰囲気を作ることは困難なため、ガス漏れ警報器の警報濃度を正確に測ることはできなかった。したがって点検ガスによる点検の目的は、主としてセンサが断線していないか、鳴動回路は正常か、ケース外部からケース内部にあるセンサにガスが到達するかという目的で使用されていた。
そして、このような点検ガスによる点検では、点検作業に習熟を要するとともに、点検用具も必要となり、さらに、点検時間がかかるという問題があった。
【0011】
このような、問題に対応するため、例えば、特許文献1には、ガス漏れ警報器におけるセンサおよび検出回路の点検を、点検スイッチを有する点検回路によって行うものが提案されている。
【特許文献1】特開2005−32009号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、特許文献1に記載されたガス漏れ警報器では、補償素子側へ点検スイッチを設けているので、点検スイッチのオン・オフによって、補償素子が断線していた場合でも、点検スイッチによる警報が発生する問題点があった。また、補償素子側の点検スイッチとの合成抵抗値が変化することにより、補償素子、ガス検知素子の各々に加わる電圧が変化するため、ガス検知素子の抵抗値も変化し、点検スイッチOFF後に監視状態の抵抗値に戻るのに時間がかかり、警報がなかなか鳴り止まなくなるという問題があった。
【0013】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、ガス漏れ警報器に設けた点検スイッチにより、点検ガスを使用しなくてもガス検知と同様な警報を報知することが可能なガスメータであって、点検時にガス検知素子と補償素子の各々に加わる電圧変動影響を抑え、点検スイッチ復帰後においても、点検スイッチOFF後の監視状態への移行も早くすることができるガス漏れ警報器を提供することをその目的とする。
【0014】
また、本発明は、点検スイッチを操作した際の報知を通常のガス漏れ警報時と異ならせることによって、点検時の警報による無用な混乱を回避することができるガス漏れて警報器を提供することをその目的とする。
【0015】
さらに、本発明は、点検スイッチの操作時に、ガス流入口の開口を合わせて点検することを促すために好適なガス漏れ警報器を提供することをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
請求項1の発明は、ガス濃度に応じて抵抗値が変化するガス検知素子と、補償素子と、抵抗からなるブリッジ回路を有するガス検知部と、該ガス検知部の出力が所定の値を超えた際にガス漏れ警報信号を出力するガス漏れ検出部と、前記ガス漏れ警報信号を受けて警報を発する警報部とを備えたガス漏れ警報器において、前記補償素子と対向するブリッジの抵抗に対して、点検スイッチと固定抵抗からなる直列回路を並列接続し、該点検スイッチを導通させた際に、前記ガス検知部の出力が前記所定の値を超えることを特徴としたものである。
【0017】
請求項2の発明は、請求項1の発明において、前記点検スイッチが導通したことを検出し、点検スイッチが導通したことを示す点検スイッチ導通信号を発する手段をさらに有し、前記警報部は、前記ガス漏れ警報信号と前記点検スイッチ導通信号とを所定の時間内に受けた場合に、ガス漏れ点検スイッチによる警報である旨を報知することを特徴としたものである。
【0018】
請求項3の発明は、請求項1または2の発明において、前記点検スイッチの操作部が、ガス漏れ警報器の筐体ケースにある前記ガス検知素子へのガス流入口スリットの近傍に配置されたことを特徴としたものである。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、点検時に点検スイッチ回路を導通させることによって、ガス漏れ警報と同等なブザーや音声にて報知することができ、ガス検知素子と補償素子の各々に加わる電圧変動影響を抑えられるため、点検スイッチ復帰後においても、点検スイッチOFF後の監視状態への移行も早くすることができる。
また、点検スイッチが押されたときに発生する警報を、通常のガス漏れ時の警報と異ならせているために、ガス漏れ点検による警報である旨を報知することができる。
さらに、点検スイッチの操作部をガス漏れ警報器の筐体ケースに設けた、ガス検知素子へのガス流入口スリットの近傍に配置しているので、点検時に、点検スイッチの操作部を操作することにより、ガス流入口の開口を合わせて点検することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
図1に、本発明の一実施形態に係るガス漏れ警報器の構成を示す。なお、図1において、図10に示した従来のガス漏れ警報器1と同じ構成部材に対応する構成部材については同一の符号を用いて示している。
【0021】
ガス漏れ警報器10は、電源基準部2、ガス検知部3、増幅部4、位相比較判別部5、警報部6等を有しており、電源基準部2、増幅部4、位相比較判別部5、警報部6の構成は、図10で示した従来のガス漏れ警報器1と同じであるため、これらについては説明を省略する。
【0022】
そして、ガス漏れ警報器10は、センサブリッジを構成する補償素子Cと対向する位置の抵抗R1に並列に挿入した、点検スイッチSWと固定抵抗RAを直列接続してなる点検スイッチ回路を備えている。また、この点検スイッチSWは、後述するように、ガス漏れ警報器10の外部から操作できるように取付けられている。
なお、増幅部4および位相比較判断部5は、ガス検知部3の出力に基づいて、ガス漏れがあるか否かを判別し、ガス漏れがあった場合にガス漏れ信号を警報部6に対して送信するガス漏れ検出部を構成している。
【0023】
図2から図6は、図1に示した本発明の一実施形態に係るガス漏れ警報器の動作を説明するための図であり、センサ検知部3と点検スイッチSWを含む回路の各動作電位について以下に説明する。
【0024】
図2に示すように、トランスTの2次電圧は、ガス検知素子Dと補償素子Cとの直列回路、および、抵抗R1、R2、および可変抵抗VRに加わるが、ガス検知素子Dと補償素子Cとの接続点の電位をVrefとし、抵抗R2の電位をEyzとすると、ブリッジの出力であるセンサ出力Vsは、Vs=Eyz −Vrefとして取り出される。
【0025】
図3に示すように、ブリッジの固定抵抗側の一辺をなす抵抗R1と可変抵抗VRとの合成抵抗値RXは、可変抵抗VRで設定されている抵抗値VR1と固定抵抗R1との並列抵抗値となる。また、他の一辺の抵抗R2と可変抵抗VRとの合成抵抗値RYは、可変抵抗VRで設定されている抵抗値VR2と固定抵抗R2との並列抵抗値となる。
そして、センサのガス検知素子Dの抵抗値をDr、補償素子側Cの抵抗値をCrとすると、監視状態にするには、Dr・RY<Cr・RX、Vref>Eyz、すなわちVs<0となるようにし、電源基準部VRFとは同相状態となるようにセンサの安定状態で各抵抗の値を設定する。
点検スイッチが押されない状況においては、ガス漏れ警報器10は、従来のガス漏れ警報器1と同様の動作となるため、この監視状態が図11(2)で示す状態となる。
【0026】
次に、センサのガス検知素子Dが、ガスを検知するとその抵抗値Drはガス濃度に応じて増加し、やがて、Dr・RY=Cr・RX、Vref=Eyzとなり、センサ出力Vsがゼロクロスすると、位相比較判別部5から警報部6にガス漏れ警報信号を伝え、警報部6がブザーや音声によりガス漏れ警報報知を行う。この状態が、図11(4)あるいは図12で示すVs(0クロス)で状態である。センサ出力Vsが0クロスする際のガス濃度が警報濃度となるように、可変抵抗VRが調整されている点は、従来のガス警報器1と同様である。
さらに、ガスの濃度の増加に伴い、図4で示すように、Dr・RY>Cr・RX、Vref<Eyz、すなわちVs>0で、電源基準部VRFとは逆相になり警報を継続する。この状態が、図11(5)あるいは図11(6)で示す状態である。
【0027】
次に、図5に、監視状態において、本発明の点検スイッチSWが押されたときの状態を示す。点検スイッチSWと固定抵抗RAの直列回路が導通し、抵抗R1及び可変抵抗VRとの並列回路にさらに固定抵抗RAが並列に接続されることなる。この場合、固定抵抗RAは固定抵抗R1より通常抵抗値を小さく設定してあるが、抵抗RAの抵抗値をRaとし、抵抗値RXと抵抗値Raの並列抵抗値を(RX//Ra)で表すと、Dr・RY>Cr・(RX//Ra)、Vref<Eyzとなるように抵抗値Raが設定されている。したがって、監視状態において点検スイッチSWを押した場合、ガス検知部3のブリッジの各電位は、ガス漏れ検知時と同様の状態となり、位相比較判別部5から警報部6に対してガス漏れ警報信号を送出するため、点検スイッチSWの役目を果たすことが可能となる。
【0028】
このように、センサブリッジの補償素子Cと対向する固定抵抗R1側へ、点検スイッチSWと固定抵抗R1からなる直列回路を並列に設けているので、ガス検知素子Dと補償素子C各々に加わる電圧変動の影響を抑えることが可能になり、点検スイッチSW復帰後においても、点検スイッチOFF後の監視状態への移行を早くすることができる。
【0029】
図6は、補償素子Cが断線していた際に、点検スイッチSWが押された場合を示す。
このとき、センサの補償素子Cが断線によりVrefはほぼ電源電圧と等しくなるため、Vref>Eyzとなる。したがって、点検スイッチSWを押しているにもかかわらず、ブリッジは監視状態と同様の状態となるため、警報器6はガス漏れ警報を開始しない。これによって、使用者や設置業者は、点検スイッチSWによる警報ができないことを知ることができ、ガス検知部3の異常を確認することができる。
【0030】
なお、監視状態においてガス検知素子D側が断線した場合は、ガス検知素子Dの抵抗値Drが増大したことと同様の状態となることから、警報部6によって警報鳴動し、すぐに使用者へ異常を知らせることができる。
【0031】
このように、本実施形態では、点検スイッチSWを使用することで付属の点検ガスを使用しなくても警報鳴動を確認でき、センサの補償素子断線時には警報しないことをもって異常を確認することができる。
なお、本発明では、点検スイッチSWに直列に固定抵抗RAを挿入しているが、固定抵抗RAの抵抗値Raが0Ωでも同様な警報点検が可能である。この場合、固定抵抗RAは不要になる。通常、固定抵抗RAは、電源電圧が影響を受けないようにするためと、スイッチからのノイズ防止目的で挿入している。
【0032】
図7に、本発明の他の実施形態に係るガス漏れ警報器の構成を示す。なお、図7において、図10に示した従来のガス漏れ警報器1と同じ構成部材に対応する構成部材については同一の符号を用いて示している。
【0033】
ガス漏れ警報器20は、電源基準部2、ガス検知部3、増幅部4、位相比較判別部5、警報部6等を有しており、電源基準部2、増幅部4、位相比較判別部5、警報部6の構成は、図10で示した従来のガス漏れ警報器1と同じであるため、これらについては説明を省略する。
【0034】
ガス漏れ警報器20では、図1で示したガス漏れ警報器10の点検スイッチSWに代えて、点検スイッチSWとして2回路のスイッチを有している。一方のスイッチは、図1で示したガス漏れ警報器10と同様の、ブリッジを構成する補償素子Cと対向する位置の抵抗R1に並列に挿入され、固定抵抗RAと直列回路を構成する点検スイッチであり、他方のスイッチは、警報部6へスイッチSWが導通したことを知らせる信号発生のためのスイッチである。
ガス漏れ警報器20の点検スイッチが押されないときは、ガス漏れ警報器20は図1のガス漏れ警報器と同様の動作を行う。
【0035】
そして、点検スイッチSWとして2回路のスイッチを用いることで、点検スイッチSWが操作された場合、ガス検知部3に対しては、図1のガス漏れ警報器10と同様に動作し、位相比較判別部5から警報部6に対してガス漏れ警報信号を送出する。また同時に、警報部6に対する点検スイッチSWからの点検スイッチの導通信号(A点の電位)がHレベルからLレベルに変わる。
警報部6は、この双方の信号を同時に検知した場合は、通常のガス漏れ警報信号(例えピッ、ピッ、ピッ、ピッ、…)とは異なる報知(報知例として、ブザー音の場合は、(ピー、ピッ)や音声メッセージの場合は(ピッ、正常です。))を行う。また、点検スイッチSWが押されているにもかかわらず、位相比較判別部5からガス漏れ警報信号が上がってこない場合は、点検正常時とは異なる報知(報知例として、ブザー音の場合は、報知なしにしたり、音声メッセージの場合は、(ピッ、故障です。))を行う。
【0036】
また、ガス漏れ警報器20が本来のガス漏れを検知して、ガス漏れ警報を報知している時に、不用意に点検スイッチSWが押された場合に対応するため、警報部6に、警報信号の受信と点検スイッチ信号の受信の時間差を計測するタイマ機能を設け、その時間差が所定時間内の場合に点検正常時の報知を行い、時間差が所定時間外の場合は、ガス漏れ警報メッセージを優先して報知することも可能である。
なお、本実施の形態では、点検スイッチSWが導通したことを検出するために、2回路のスイッチを用いたが、点検スイッチSWの導通を検知し、警報部6へ点検スイッチSWの導通信号を通知できるものであれば他の点検スイッチ導通検出手段であってもよい。
【0037】
図8に、本発明のさらに他の実施形態に係るガス漏れ警報器の構成を示す。
同図において、11はガス漏れ警報器本体、12はブザーや音声による警報音を報知する報音孔、13は、通電/警報表示するLED、14はガス流入口のスリット、15はガス検知素子と補償素子からなるセンサ、16は点検スイッチSWの操作部であり、ノブやボタンで構成されている。また、17はセンサと点検スイッチSWが搭載されたプリント基板を示している。
【0038】
そして、点検スイッチを操作するには、ガス流入口のスリット14の間に、棒状のマイナスドライバー等を使用して点検スイッチの操作部16を操作する。これにより、スリット間に埃やゴミで塞がっていた場合は、点検者が清掃の必要性を認識することができ、たとえ埃等の塞がりがあっても、点検スイッチの操作により、ガスが流入できる開口部が確保できる。
したがって、本実施形態では、ガス漏れ警報器のガス流入口のスリットが埃やゴミで塞がれ、ケース外部からケース内部にあるセンサにガスが到達するかという点での確認を点検者に促し、埃等の除去作業も合わせて可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の一実施形態に係るガス漏れ警報器の構成を示す図である。
【図2】図1のガス漏れ警報器の動作説明図である。
【図3】図1のガス漏れ警報器の監視時の動作説明図である。
【図4】図1のガス漏れ警報器の警報時の動作説明図である。
【図5】図1のガス漏れ警報器の点検時の動作説明図である。
【図6】図1のガス漏れ警報器の断線時の動作説明図である
【図7】本発明の他の実施形態に係るガス漏れ警報器の構成を示す図である。
【図8】本発明のさらに他の実施形態に係るガス漏れ警報器の構成を示す図である。
【図9】ガス漏れ警報器のセンサの構成を示す図である。
【図10】従来のガス漏れ警報器の構成を示す図である。
【図11】図10のガス漏れ警報器における各状態でのセンサ出力を示す図である。
【図12】図10のガス漏れ警報器におけるガス濃度とセンサ出力の関係を示す図である。
【符号の説明】
【0040】
1、10、20…ガス漏れ警報器、2…電源基準部、3…ガス検知部、4…増幅部、5…位相比較判別部、6…警報部、7…第1の断線判別部、8…第2の断線判別部、11…ガス漏れ警報器本体、12…報音孔、13…LED、14…ガス流入口のスリット、15…センサ、16…点検スイッチの操作部、17…プリント基板、21…センサベース、22…ニッケルピン、23…金網。
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス漏れを接触燃焼式のガス検知素子で検知し、ブザーや音声にて警報を発するガス漏れ警報器に関し、詳細には、センサの点検回路を備えたガス漏れ警報器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のガス漏れ警報器において、センサ(補償素子、ガス検知素子)は、図9に示すように、数10μmの白金線コイル上に酸化触媒をアルミナ担体とともに焼結したガス検知素子Dと、ガスに不活性なアルミナとガラスの混合物を焼結した補償素子Cから構成され、ガス検知素子Dと補償素子Cとは、センサベース21に立てたニッケルピン22等に各々、両端の白金線部がスポット溶接により接合されており、全体が金網23で覆われている。
そして、約50cm程度の落下衝撃等では、容易に警報機能に影響がでないように、上下ケースでかん合する筐体構造がとられていた。
【0003】
センサには外部から電源が供給され、常時、白金線コイルは300〜450℃に加熱されるようになっており、ガス検知素子Dの表面で可燃性ガスが燃焼すると、ガス検知素子Dの温度が上昇し、この温度変化に伴って素子を構成する白金線コイルの抵抗値も増加することになる。他方、補償素子Cは、ガス濃度の変化に対してその抵抗値が変わらないようになっている。
そして、センサ(補償素子C、ガス検知素子D)と固定抵抗及び可変抵抗等とで構成したホイーストンブリッジ回路により、ガス検知素子Dの抵抗値変化がガスの濃度にほぼ比例して取り出すことができる。ガス漏れ警報器では、このブリッジバランスの崩れることを判別しガス漏れを警報する仕組みで構成されている。
【0004】
図10はこのような従来のガス漏れ警報器の構成図、図11は図10に示したガス漏れ警報器における各状態でのセンサ出力を示す図、図12はガス濃度とセンサ電圧との特性曲線を示す図である。
以下に、従来のガス漏れ警報器の動作を図10、図11、及び図12を使って説明する。
【0005】
ガス漏れ警報器1は、電源基準部2、ガス検知部3、増幅部4、位相比較判別部5、警報部6等を有している。
商用電源が、電源コードAC、ヒューズF、バリスタBを介し、電源トランスTに供給される。トランスTは、2種類の電圧を出力するようになっている。一つは、各部に電源を供給する電源基準部2に供給され、もう一つはガス検知部3のセンサ(ガス検知素子D、補償素子C)や固定抵抗R1、R2及び可変抵抗VR等で構成されるブリッジ回路に電源を供給する。電源基準部2は、整流ブリッジBR等でトランスTの出力を整流し各回路部へ電源を供給するとともに、位相比較判別部5へ警報の基準となる半波信号VRFを供給している。
【0006】
ガス検知部3は、図9で示すようなガス検知素子Dと補償素子Cで構成されるセンサと、固定抵抗R1、R2および可変抵抗VRとで、ホイーストンブリッジを構成している。この可変抵抗VRを調整し、あらかじめセンサ出力Vsが0になる濃度を警報濃度として設定している。清浄大気中で設定されたセンサ出力Vsrmsは数10mV程度と低いため、増幅部4で高倍率増幅し、その増幅された出力と電源基準部2の半波信号VRFとを位相比較判別部5で比較している。
【0007】
図11(1)に基準電圧部2の半波信号VRFの波形を示す。ガス漏れがない通常時は、センサ出力Vsは半波VRFと同相で監視状態となるようにしている(図11(2)のVs(監視))。そして、ガス漏れ警報器周囲のガス濃度が徐々に増加すると、センサ出力Vsが小さくなり(図11(3)のVs(A))、やがて0となる(図11(4)のVs(0クロス))。センサ出力Vsが0になった時点で、位相比較判別部5からガス漏れ警報信号を警報部6に伝え、警報部6のブザーや音声によりガス漏れ警報報知を行う。センサ出力Vsが0を超すと電圧位相は半波信号VRFと逆位相(図11(5)のVs(B))になり、さらに、ガスの増加に合わせて電圧値が大きくなっていく(図11(6)のVs(X))。
【0008】
図12は、電源基準部2からの半波信号VRFに対するセンサ出力Vsの位相差を同相でマイナス、逆相でプラスとした場合の、ガス濃度とセンサ出力Vsの関係を示したものである。ガス漏れがない清浄大気中でのセンサ出力VsはVsrmsとなるように予め設定されている。そして、ガス濃度が高くなるにつれてセンサ出力Vsの絶対値は小さくなり、先述したように、センサ出力Vsが0クロスする際のガス濃度が警報濃度となるように、可変抵抗VRが調整されている。
なお、図11(3)のVs(A)、および図11(5)のVs(B)の各状態は、図12では、Vs(0クロス)をはさんで反対側に位置している。
半波信号VRFとセンサ電位Vsの位相は、トランスの巻き線方向によっても変えられるので、監視時が逆相で、警報時が同相にして警報するようにすることも可能である。
【0009】
そして、このような従来のガス漏れ警報器においては、ガス漏れ警報器本体とアルコール系のガスを発生させる点検ガスを個装箱に同梱していた。そして、ガス漏れ警報器設置業者により、ガス漏れ警報器の鳴動点検としてガス漏れ警報器本体の点検口(ガス検知部)にガスを吹きかけ、正常にセンサが機能するかどうかの確認を行っていた。
しかし、点検ガスは出荷時点で本体と個装箱に同梱されているものの、ガス漏れ警報器の取り付けに伴い個装箱は廃棄され、長い年月の保管により使用者が紛失したりして、点検が行われない可能性があった。
【0010】
また、点検ガスによる点検では、一定のガス濃度雰囲気を作ることは困難なため、ガス漏れ警報器の警報濃度を正確に測ることはできなかった。したがって点検ガスによる点検の目的は、主としてセンサが断線していないか、鳴動回路は正常か、ケース外部からケース内部にあるセンサにガスが到達するかという目的で使用されていた。
そして、このような点検ガスによる点検では、点検作業に習熟を要するとともに、点検用具も必要となり、さらに、点検時間がかかるという問題があった。
【0011】
このような、問題に対応するため、例えば、特許文献1には、ガス漏れ警報器におけるセンサおよび検出回路の点検を、点検スイッチを有する点検回路によって行うものが提案されている。
【特許文献1】特開2005−32009号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、特許文献1に記載されたガス漏れ警報器では、補償素子側へ点検スイッチを設けているので、点検スイッチのオン・オフによって、補償素子が断線していた場合でも、点検スイッチによる警報が発生する問題点があった。また、補償素子側の点検スイッチとの合成抵抗値が変化することにより、補償素子、ガス検知素子の各々に加わる電圧が変化するため、ガス検知素子の抵抗値も変化し、点検スイッチOFF後に監視状態の抵抗値に戻るのに時間がかかり、警報がなかなか鳴り止まなくなるという問題があった。
【0013】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、ガス漏れ警報器に設けた点検スイッチにより、点検ガスを使用しなくてもガス検知と同様な警報を報知することが可能なガスメータであって、点検時にガス検知素子と補償素子の各々に加わる電圧変動影響を抑え、点検スイッチ復帰後においても、点検スイッチOFF後の監視状態への移行も早くすることができるガス漏れ警報器を提供することをその目的とする。
【0014】
また、本発明は、点検スイッチを操作した際の報知を通常のガス漏れ警報時と異ならせることによって、点検時の警報による無用な混乱を回避することができるガス漏れて警報器を提供することをその目的とする。
【0015】
さらに、本発明は、点検スイッチの操作時に、ガス流入口の開口を合わせて点検することを促すために好適なガス漏れ警報器を提供することをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
請求項1の発明は、ガス濃度に応じて抵抗値が変化するガス検知素子と、補償素子と、抵抗からなるブリッジ回路を有するガス検知部と、該ガス検知部の出力が所定の値を超えた際にガス漏れ警報信号を出力するガス漏れ検出部と、前記ガス漏れ警報信号を受けて警報を発する警報部とを備えたガス漏れ警報器において、前記補償素子と対向するブリッジの抵抗に対して、点検スイッチと固定抵抗からなる直列回路を並列接続し、該点検スイッチを導通させた際に、前記ガス検知部の出力が前記所定の値を超えることを特徴としたものである。
【0017】
請求項2の発明は、請求項1の発明において、前記点検スイッチが導通したことを検出し、点検スイッチが導通したことを示す点検スイッチ導通信号を発する手段をさらに有し、前記警報部は、前記ガス漏れ警報信号と前記点検スイッチ導通信号とを所定の時間内に受けた場合に、ガス漏れ点検スイッチによる警報である旨を報知することを特徴としたものである。
【0018】
請求項3の発明は、請求項1または2の発明において、前記点検スイッチの操作部が、ガス漏れ警報器の筐体ケースにある前記ガス検知素子へのガス流入口スリットの近傍に配置されたことを特徴としたものである。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、点検時に点検スイッチ回路を導通させることによって、ガス漏れ警報と同等なブザーや音声にて報知することができ、ガス検知素子と補償素子の各々に加わる電圧変動影響を抑えられるため、点検スイッチ復帰後においても、点検スイッチOFF後の監視状態への移行も早くすることができる。
また、点検スイッチが押されたときに発生する警報を、通常のガス漏れ時の警報と異ならせているために、ガス漏れ点検による警報である旨を報知することができる。
さらに、点検スイッチの操作部をガス漏れ警報器の筐体ケースに設けた、ガス検知素子へのガス流入口スリットの近傍に配置しているので、点検時に、点検スイッチの操作部を操作することにより、ガス流入口の開口を合わせて点検することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
図1に、本発明の一実施形態に係るガス漏れ警報器の構成を示す。なお、図1において、図10に示した従来のガス漏れ警報器1と同じ構成部材に対応する構成部材については同一の符号を用いて示している。
【0021】
ガス漏れ警報器10は、電源基準部2、ガス検知部3、増幅部4、位相比較判別部5、警報部6等を有しており、電源基準部2、増幅部4、位相比較判別部5、警報部6の構成は、図10で示した従来のガス漏れ警報器1と同じであるため、これらについては説明を省略する。
【0022】
そして、ガス漏れ警報器10は、センサブリッジを構成する補償素子Cと対向する位置の抵抗R1に並列に挿入した、点検スイッチSWと固定抵抗RAを直列接続してなる点検スイッチ回路を備えている。また、この点検スイッチSWは、後述するように、ガス漏れ警報器10の外部から操作できるように取付けられている。
なお、増幅部4および位相比較判断部5は、ガス検知部3の出力に基づいて、ガス漏れがあるか否かを判別し、ガス漏れがあった場合にガス漏れ信号を警報部6に対して送信するガス漏れ検出部を構成している。
【0023】
図2から図6は、図1に示した本発明の一実施形態に係るガス漏れ警報器の動作を説明するための図であり、センサ検知部3と点検スイッチSWを含む回路の各動作電位について以下に説明する。
【0024】
図2に示すように、トランスTの2次電圧は、ガス検知素子Dと補償素子Cとの直列回路、および、抵抗R1、R2、および可変抵抗VRに加わるが、ガス検知素子Dと補償素子Cとの接続点の電位をVrefとし、抵抗R2の電位をEyzとすると、ブリッジの出力であるセンサ出力Vsは、Vs=Eyz −Vrefとして取り出される。
【0025】
図3に示すように、ブリッジの固定抵抗側の一辺をなす抵抗R1と可変抵抗VRとの合成抵抗値RXは、可変抵抗VRで設定されている抵抗値VR1と固定抵抗R1との並列抵抗値となる。また、他の一辺の抵抗R2と可変抵抗VRとの合成抵抗値RYは、可変抵抗VRで設定されている抵抗値VR2と固定抵抗R2との並列抵抗値となる。
そして、センサのガス検知素子Dの抵抗値をDr、補償素子側Cの抵抗値をCrとすると、監視状態にするには、Dr・RY<Cr・RX、Vref>Eyz、すなわちVs<0となるようにし、電源基準部VRFとは同相状態となるようにセンサの安定状態で各抵抗の値を設定する。
点検スイッチが押されない状況においては、ガス漏れ警報器10は、従来のガス漏れ警報器1と同様の動作となるため、この監視状態が図11(2)で示す状態となる。
【0026】
次に、センサのガス検知素子Dが、ガスを検知するとその抵抗値Drはガス濃度に応じて増加し、やがて、Dr・RY=Cr・RX、Vref=Eyzとなり、センサ出力Vsがゼロクロスすると、位相比較判別部5から警報部6にガス漏れ警報信号を伝え、警報部6がブザーや音声によりガス漏れ警報報知を行う。この状態が、図11(4)あるいは図12で示すVs(0クロス)で状態である。センサ出力Vsが0クロスする際のガス濃度が警報濃度となるように、可変抵抗VRが調整されている点は、従来のガス警報器1と同様である。
さらに、ガスの濃度の増加に伴い、図4で示すように、Dr・RY>Cr・RX、Vref<Eyz、すなわちVs>0で、電源基準部VRFとは逆相になり警報を継続する。この状態が、図11(5)あるいは図11(6)で示す状態である。
【0027】
次に、図5に、監視状態において、本発明の点検スイッチSWが押されたときの状態を示す。点検スイッチSWと固定抵抗RAの直列回路が導通し、抵抗R1及び可変抵抗VRとの並列回路にさらに固定抵抗RAが並列に接続されることなる。この場合、固定抵抗RAは固定抵抗R1より通常抵抗値を小さく設定してあるが、抵抗RAの抵抗値をRaとし、抵抗値RXと抵抗値Raの並列抵抗値を(RX//Ra)で表すと、Dr・RY>Cr・(RX//Ra)、Vref<Eyzとなるように抵抗値Raが設定されている。したがって、監視状態において点検スイッチSWを押した場合、ガス検知部3のブリッジの各電位は、ガス漏れ検知時と同様の状態となり、位相比較判別部5から警報部6に対してガス漏れ警報信号を送出するため、点検スイッチSWの役目を果たすことが可能となる。
【0028】
このように、センサブリッジの補償素子Cと対向する固定抵抗R1側へ、点検スイッチSWと固定抵抗R1からなる直列回路を並列に設けているので、ガス検知素子Dと補償素子C各々に加わる電圧変動の影響を抑えることが可能になり、点検スイッチSW復帰後においても、点検スイッチOFF後の監視状態への移行を早くすることができる。
【0029】
図6は、補償素子Cが断線していた際に、点検スイッチSWが押された場合を示す。
このとき、センサの補償素子Cが断線によりVrefはほぼ電源電圧と等しくなるため、Vref>Eyzとなる。したがって、点検スイッチSWを押しているにもかかわらず、ブリッジは監視状態と同様の状態となるため、警報器6はガス漏れ警報を開始しない。これによって、使用者や設置業者は、点検スイッチSWによる警報ができないことを知ることができ、ガス検知部3の異常を確認することができる。
【0030】
なお、監視状態においてガス検知素子D側が断線した場合は、ガス検知素子Dの抵抗値Drが増大したことと同様の状態となることから、警報部6によって警報鳴動し、すぐに使用者へ異常を知らせることができる。
【0031】
このように、本実施形態では、点検スイッチSWを使用することで付属の点検ガスを使用しなくても警報鳴動を確認でき、センサの補償素子断線時には警報しないことをもって異常を確認することができる。
なお、本発明では、点検スイッチSWに直列に固定抵抗RAを挿入しているが、固定抵抗RAの抵抗値Raが0Ωでも同様な警報点検が可能である。この場合、固定抵抗RAは不要になる。通常、固定抵抗RAは、電源電圧が影響を受けないようにするためと、スイッチからのノイズ防止目的で挿入している。
【0032】
図7に、本発明の他の実施形態に係るガス漏れ警報器の構成を示す。なお、図7において、図10に示した従来のガス漏れ警報器1と同じ構成部材に対応する構成部材については同一の符号を用いて示している。
【0033】
ガス漏れ警報器20は、電源基準部2、ガス検知部3、増幅部4、位相比較判別部5、警報部6等を有しており、電源基準部2、増幅部4、位相比較判別部5、警報部6の構成は、図10で示した従来のガス漏れ警報器1と同じであるため、これらについては説明を省略する。
【0034】
ガス漏れ警報器20では、図1で示したガス漏れ警報器10の点検スイッチSWに代えて、点検スイッチSWとして2回路のスイッチを有している。一方のスイッチは、図1で示したガス漏れ警報器10と同様の、ブリッジを構成する補償素子Cと対向する位置の抵抗R1に並列に挿入され、固定抵抗RAと直列回路を構成する点検スイッチであり、他方のスイッチは、警報部6へスイッチSWが導通したことを知らせる信号発生のためのスイッチである。
ガス漏れ警報器20の点検スイッチが押されないときは、ガス漏れ警報器20は図1のガス漏れ警報器と同様の動作を行う。
【0035】
そして、点検スイッチSWとして2回路のスイッチを用いることで、点検スイッチSWが操作された場合、ガス検知部3に対しては、図1のガス漏れ警報器10と同様に動作し、位相比較判別部5から警報部6に対してガス漏れ警報信号を送出する。また同時に、警報部6に対する点検スイッチSWからの点検スイッチの導通信号(A点の電位)がHレベルからLレベルに変わる。
警報部6は、この双方の信号を同時に検知した場合は、通常のガス漏れ警報信号(例えピッ、ピッ、ピッ、ピッ、…)とは異なる報知(報知例として、ブザー音の場合は、(ピー、ピッ)や音声メッセージの場合は(ピッ、正常です。))を行う。また、点検スイッチSWが押されているにもかかわらず、位相比較判別部5からガス漏れ警報信号が上がってこない場合は、点検正常時とは異なる報知(報知例として、ブザー音の場合は、報知なしにしたり、音声メッセージの場合は、(ピッ、故障です。))を行う。
【0036】
また、ガス漏れ警報器20が本来のガス漏れを検知して、ガス漏れ警報を報知している時に、不用意に点検スイッチSWが押された場合に対応するため、警報部6に、警報信号の受信と点検スイッチ信号の受信の時間差を計測するタイマ機能を設け、その時間差が所定時間内の場合に点検正常時の報知を行い、時間差が所定時間外の場合は、ガス漏れ警報メッセージを優先して報知することも可能である。
なお、本実施の形態では、点検スイッチSWが導通したことを検出するために、2回路のスイッチを用いたが、点検スイッチSWの導通を検知し、警報部6へ点検スイッチSWの導通信号を通知できるものであれば他の点検スイッチ導通検出手段であってもよい。
【0037】
図8に、本発明のさらに他の実施形態に係るガス漏れ警報器の構成を示す。
同図において、11はガス漏れ警報器本体、12はブザーや音声による警報音を報知する報音孔、13は、通電/警報表示するLED、14はガス流入口のスリット、15はガス検知素子と補償素子からなるセンサ、16は点検スイッチSWの操作部であり、ノブやボタンで構成されている。また、17はセンサと点検スイッチSWが搭載されたプリント基板を示している。
【0038】
そして、点検スイッチを操作するには、ガス流入口のスリット14の間に、棒状のマイナスドライバー等を使用して点検スイッチの操作部16を操作する。これにより、スリット間に埃やゴミで塞がっていた場合は、点検者が清掃の必要性を認識することができ、たとえ埃等の塞がりがあっても、点検スイッチの操作により、ガスが流入できる開口部が確保できる。
したがって、本実施形態では、ガス漏れ警報器のガス流入口のスリットが埃やゴミで塞がれ、ケース外部からケース内部にあるセンサにガスが到達するかという点での確認を点検者に促し、埃等の除去作業も合わせて可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の一実施形態に係るガス漏れ警報器の構成を示す図である。
【図2】図1のガス漏れ警報器の動作説明図である。
【図3】図1のガス漏れ警報器の監視時の動作説明図である。
【図4】図1のガス漏れ警報器の警報時の動作説明図である。
【図5】図1のガス漏れ警報器の点検時の動作説明図である。
【図6】図1のガス漏れ警報器の断線時の動作説明図である
【図7】本発明の他の実施形態に係るガス漏れ警報器の構成を示す図である。
【図8】本発明のさらに他の実施形態に係るガス漏れ警報器の構成を示す図である。
【図9】ガス漏れ警報器のセンサの構成を示す図である。
【図10】従来のガス漏れ警報器の構成を示す図である。
【図11】図10のガス漏れ警報器における各状態でのセンサ出力を示す図である。
【図12】図10のガス漏れ警報器におけるガス濃度とセンサ出力の関係を示す図である。
【符号の説明】
【0040】
1、10、20…ガス漏れ警報器、2…電源基準部、3…ガス検知部、4…増幅部、5…位相比較判別部、6…警報部、7…第1の断線判別部、8…第2の断線判別部、11…ガス漏れ警報器本体、12…報音孔、13…LED、14…ガス流入口のスリット、15…センサ、16…点検スイッチの操作部、17…プリント基板、21…センサベース、22…ニッケルピン、23…金網。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス濃度に応じて抵抗値が変化するガス検知素子と、補償素子と、抵抗からなるブリッジ回路を有するガス検知部と、
該ガス検知部の出力が所定の値を超えた際にガス漏れ警報信号を出力するガス漏れ検出部と、
前記ガス漏れ警報信号を受けて警報を発する警報部と
を備えたガス漏れ警報器において、
前記補償素子と対向するブリッジの抵抗に対して、点検スイッチと固定抵抗からなる直列回路を並列接続し、
該点検スイッチを導通させた際に、前記ガス検知部の出力が前記所定の値を超えることを特徴とするガス漏れ警報器。
【請求項2】
前記点検スイッチが導通したことを検出し、点検スイッチが導通したことを示す点検スイッチ導通信号を発する手段をさらに有し、前記警報部は、前記ガス漏れ警報信号と前記点検スイッチ導通信号とを所定の時間内に受けた場合に、ガス漏れ点検スイッチによる警報である旨を報知することを特徴とする請求項1に記載のガス警報器。
【請求項3】
前記点検スイッチの操作部が、ガス漏れ警報器の筐体ケースにある前記ガス検知素子へのガス流入口スリットの近傍に配置されたことを特徴とする請求項1または2に記載のガス漏れ警報器。
【請求項1】
ガス濃度に応じて抵抗値が変化するガス検知素子と、補償素子と、抵抗からなるブリッジ回路を有するガス検知部と、
該ガス検知部の出力が所定の値を超えた際にガス漏れ警報信号を出力するガス漏れ検出部と、
前記ガス漏れ警報信号を受けて警報を発する警報部と
を備えたガス漏れ警報器において、
前記補償素子と対向するブリッジの抵抗に対して、点検スイッチと固定抵抗からなる直列回路を並列接続し、
該点検スイッチを導通させた際に、前記ガス検知部の出力が前記所定の値を超えることを特徴とするガス漏れ警報器。
【請求項2】
前記点検スイッチが導通したことを検出し、点検スイッチが導通したことを示す点検スイッチ導通信号を発する手段をさらに有し、前記警報部は、前記ガス漏れ警報信号と前記点検スイッチ導通信号とを所定の時間内に受けた場合に、ガス漏れ点検スイッチによる警報である旨を報知することを特徴とする請求項1に記載のガス警報器。
【請求項3】
前記点検スイッチの操作部が、ガス漏れ警報器の筐体ケースにある前記ガス検知素子へのガス流入口スリットの近傍に配置されたことを特徴とする請求項1または2に記載のガス漏れ警報器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2009−301484(P2009−301484A)
【公開日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−157980(P2008−157980)
【出願日】平成20年6月17日(2008.6.17)
【出願人】(000006932)リコーエレメックス株式会社 (708)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年6月17日(2008.6.17)
【出願人】(000006932)リコーエレメックス株式会社 (708)
【Fターム(参考)】
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