説明

ガス発生剤成形体

【課題】 ガス発生剤の質量合わせが容易なガス発生剤成形体の提供。
【解決手段】 ガス発生剤成形体1は、燃料、酸化剤及びバインダ等を含むガス発生剤組成物が圧伸成型された紐状体2が芯材の周囲に巻かれた状態で一体にされた後、芯材から外されたものである。長さ方向に貫通孔を有する円柱状のものが好ましい。紐状体2は、長さ当たりの質量が一定であるから、巻き付け長さにより、ガス発生剤の質量合わせが容易になる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス発生剤成形体、その製造方法、前記ガス発生剤成形体を用いた車両の人員拘束装置用ガス発生器に関する。
【背景技術】
【0002】
固形ガス発生剤を使用するガス発生器では、振動によるガス発生剤の粉砕や組立時のガス発生剤充填量(秤量)の誤差をできるだけ抑え、出力のばらつきを抑制する必要がある。通常、固形ガス発生剤は、燃焼表面積を大きくする目的で小径の粒状やペレット形状に成型したものを多数使用するため、充填誤差を少なくできるが、反面、充填後の振動による異音の原因になりやすい。
【0003】
この課題を解決するために、塊状のガス発生剤を1つ或は少数使用することが考えられるが、塊状のガス発生剤では、成型寸法のわずかな相違が充填量の誤差になり、出力のばらつきとなって現れやすい。
【0004】
特許文献1では、中央筒32に線状のガス発生剤40をコイル状に、かつ、隣り合う層で交互に交叉するようにヘリカルに巻回させたものを用いたガス発生器が開示されている。線状のガス発生剤40は、ガス発生剤スラリーと糸状物体(アルミニウム、マグネシウム、鉄、銅等)をノズルから射出した後、重合・硬化させて得られる可撓性を有するものである。
【特許文献1】特開平9−58395号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記した方法で得られる可撓性の線状ガス発生剤は、糸状物体の周囲に均一厚さにスラリー状のガス発生剤を付着させることが難しく、厚さにむらが生じるほか、燃焼ガス源とならない糸状物体がそのまま残存する。
【0006】
よって、このような線状ガス発生剤40を中央筒32に巻き付けたとき、所要量のガス発生剤(燃料、酸化剤及びバインダ等の組み合わせからなるもので、糸状物体は含まれない。)を安定して充填することが難しくなり、巻き終わったときに表面が凸凹になりやすいため、ガス発生器の作動時の出力にもばらつきが生じる。また、糸状物体の分だけガス発生剤の充填量が少なくなる。
【0007】
本発明は、ガス発生剤の質量合わせが容易にでき、設計通りの出力を発揮できるガス発生剤成形体、その製造方法、前記ガス発生剤成形体を用いたガス発生器を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
〔請求項1〕
本発明は、課題の解決手段として、少なくとも燃料、酸化剤及びバインダを含むガス発生剤組成物が圧伸成型された紐状体からなり、前記紐状体が巻かれた状態で一体になったものである、ガス発生剤成形体を提供する。
【0009】
本発明のガス発生剤成形体は、紐状体が巻かれた状態にて一体化され、一定形状を有するものである。本発明のガス発生剤成形体の外形は特に制限されるものはなく、円柱状、角柱状、ディスク状、球状、円錐状、角錐状等にすることができ、必要に応じて、貫通孔や窪みを有するものでもよい。本発明では、長さ方向に1つの貫通孔を有する円柱状のガス発生剤成形体が好ましい。
【0010】
紐状体は、1本でもよいし、2本以上を用いてもよい。2本以上を用いるときは、複数本の紐状体を撚って1本の複合紐状体にしたものを用いてもよい。紐状体の巻き方は特に制限されず、同一方向に巻かれていてもよいし、複数の異なる方向に巻かれていてもよい。
【0011】
紐状体は、少なくとも燃料、酸化剤及びバインダを含むガス発生剤組成物が圧伸成型されたものであり、幅方向の断面は円形が好ましいが、これに限定されるものではない。ガス発生剤組成物は公知のもので、前記成分以外にも公知の各種添加剤を含有していてもよい。なお、本発明のガス発生剤組成物及びガス発生剤成形体には、特許文献1に記載のような芯材となる糸状物体は含まれない。
【0012】
圧伸成型は周知の方法であり、具体的には、燃料、酸化剤、バインダ等を含むガス発生剤組成物を乾式混合した後、水を加え十分に混合し、金型を備えた圧伸成型機を用いて成形する方法である。
【0013】
〔請求項3〕
本発明は、他の課題の解決手段として、
少なくとも燃料、酸化剤及びバインダを含むガス発生剤を圧伸成型して紐状体を製造する工程、
芯材の周囲に前記紐状体を巻き取る工程、
前記芯材を取り除く工程、
を有するガス発生剤成形体の製造方法を提供する。
【0014】
圧伸成型して紐状体を得る工程は、金型を備えた圧伸成型機を用いた公知の方法であり、例えば、特開平10−87390号公報等に記載されている。
【0015】
得られた紐状体の外径は均一であるから、長さ当たりの質量(mg/mm)も一定している。なお、圧伸成型して紐状体を得る工程の後、必要に応じて複数本の紐状体を撚って1本の複合紐状体にする工程を設けてもよい。
【0016】
芯材の周囲に前記紐状体を巻き取る工程は、例えば、回転自在に支持された芯材を有する巻き取り装置を用意して、前記芯材の一端部に紐状体の一端を固定した状態にて、前記芯材を回転させることで紐状体を巻き取る方法を適用できる。紐状体は1本でもよいし、複数本を用いてもよい。このとき、ガス発生剤成形体の質量を所定量にするため、所定長さ(即ち、所定量)を巻き取る方法、巻き取り装置に質量検知センサーを取り付けておき、所定量になった時点で巻き取りを終了する方法等を適用できる。
【0017】
芯材は、円柱状、角柱状等の所望形状のものを用いることができるが、円柱状の芯材が好ましい。芯材は次工程で取り除く(或いは巻き取られたガス発生剤成形体を芯材から取り出す)ものであるため材質は特に制限されず、金属、合成樹脂、木材、紙等からなるものを用いることができる。また、芯材は、紐状体を巻き付けやすいように表面を粗くしたものでもよいし、予め紐状体を巻き付けるための溝が形成されたものでもよい。
【0018】
本発明の製造方法を適用した場合、ガス発生剤成形体には芯材が外されたことによる貫通孔が形成される。貫通孔が形成されたものは燃焼面積が大きくなるので着火燃焼性が向上される点で好ましいが、充填効率をより高めるため、貫通孔内に粉末状乃至はペレット状のガス発生剤組成物を充填する等して、貫通孔がない形状のものにしてもよい。
【0019】
本発明の製造方法では、ガス発生剤成形体の質量合わせが容易になり、所望量のガス発生剤を含む成形体を得ることができる。また、紐状体の外径が均一であるため、ガス発生剤成形体の外表面も滑らかで、燃焼室等に収容し易い。
【0020】
〔請求項4−6〕
本発明は、別の課題の解決手段として、
ガス発生源として請求項1又は2記載のガス発生剤成形体を用いた、車両の人員拘束装置用ガス発生器、
伝火薬として請求項1又は2記載のガス発生剤成形体を用いた、車両の人員拘束装置用ガス発生器、及び
ガス発生源として請求項1又は2記載のガス発生剤成形体と加圧ガスを併用した、車両の人員拘束装置用ガス発生器、を提供する。
【0021】
本発明のガス発生剤成形体を用いたガス発生器は、所要量のガス発生剤成形体を充填することができるため、安定した出力が発揮できる。ガス発生剤成形体は1つでよいが、2〜4個程度を用いてもよい。2〜4個程度のガス発生剤成形体を用いる場合、各成形体の向きを揃えて配置し、互いに当接させて1つの塊を形成するように配置することが好ましい。
【発明の効果】
【0022】
本発明のガス発生剤成形体は、特許文献1の発明のような芯材を含んでおらず、紐状体が均一径を有するものであるため、質量合わせが容易であり、ガス発生器に使用したときの出力調整も容易である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
(1)ガス発生剤成形体
図1は、ガス発生剤成形体の斜視図(但し、紐状体2の表示は一部を略している)、図2は、ガス発生剤成形体の製造方法に使用する巻き取り装置の概略図及び前記製造方法の説明図である。
【0024】
図1に示すガス発生剤成形体1は、紐状体2が巻かれて一体にされたものであり、円柱状で、中心部に長さ方向への1つの貫通孔3を有している。
【0025】
紐状体2は、燃料、酸化剤及びバインダ等を含むガス発生剤組成物を用い、公知の圧伸成型法により成形されたものであり、本実施形態では、直径が約0.5〜5.0mmのものを用いている。
【0026】
本発明で用いるガス発生剤組成物は特に制限されず、公知のものを用いることができ、例えば、特開2005−199867号公報、特開2005−154167号公報、特開2005−126262号公報、特開2005−119926号公報、特開2005−145718号公報、特開2004−155645号公報等に記載のものを用いることができる。
【0027】
ガス発生剤成形体1の寸法は、適用するガス発生器に応じて決定されるものであるが、例えば、高さが約10〜200mmで、直径が約10〜100mmにすることができる。なお、貫通孔3は、製造時に用いた芯材を外すことで形成されたものであるから、芯材の直径と同じ直径を有することになる。
【0028】
(2)ガス発生剤成形体の製造方法
最初の工程にて、圧伸成型機を用い、圧伸成型して紐状体2を得る。この工程では、燃料、酸化剤及びバインダを含むガス発生剤100質量部に対して10〜30質量部程度の水を加え、均一になるように混合した後、ガス発生剤組成物の成分組成により、4000〜14,000kPaから選ばれる加圧条件下で圧伸成型して、紐状体2を得ることができる。圧伸は連続して行い、得られる紐状体2も切れ目のない連続したものである。
【0029】
次工程にて、芯材6の周囲に前記紐状体2を巻き取る。本工程では、例えば、図2に示すような、芯材6と2つのガイド部材7、8を有する巻き取り装置5を用いることができる。
【0030】
2つのガイド部材7、8は、芯材6と共に軸方向に移動自在となっており、ガイド部材7、8の間隔は、得ようとするガス発生剤成形体1の高さに合わせた状態にて固定しておく。
【0031】
芯材6は、一端又は両端が図示していない駆動装置に接続されており、軸方向(X方向及びY方向の両方)に移動自在であり、かつ周方向に回転自在である。芯材6は、ステンレス製のものであり、直径及び長さは特に制限されない。
【0032】
圧伸成型して得た紐状体2の一端部は、芯材6の一端側(ガイド部材7側)に固定し、その途中で紐状体2が弛まないように軽く張力をかける。例えば、芯材6までの途中にローラーを配置して、前記ローラーにより、紐状体2を支持したり、張力を加えたりする。紐状体2の他端側を少し引っ張った状態にて維持しておく。そして、芯材6を周方向に回転させながら、かつX方向に移動させながら、ガイド8方向に紐状体2を巻き取っていく。紐状体2の巻き始めの一端部の固定は、例えば、ごく少量の有機系接着剤にて固定する方法、芯材6に紐状体2を固定するための孔等を設けておき、前記孔に差し込んで固定する方法を適用する。
【0033】
紐状体2は、ガイド8まで巻き取った後、そこで巻き取りを終了してもよいし、今度は芯材6をY方向に移動させながら巻き取りを継続して、再度ガイド7まで巻き取って終了してもよいし、同様にして巻き取りを繰り返して、芯材6の周囲に二重、三重に巻き取ってもよい。
【0034】
紐状体2の巻き取りは、巻き取り装置5に取り付けた質量センサーにより、紐状体2が所定量になった時点で終了し、紐状体2を切断して芯材6から外し、ガス発生剤成形体1を得る。なお、紐状体2の切断端部は、有機系接着剤等で固定する。
【0035】
このような製造方法を適用することで、ガス発生剤成形体1の質量を所望量に調整することができ、外表面の凹凸の形成が抑制される。このため、ガス発生剤成形体1を用いたインフレータは、設計どおりの出力を発揮することができる。
【0036】
(3)図3のシングル型パイロインフレータ
図3は、点火器が1つで、燃焼室が1つのシングル型パイロインフレータ(火工式ガス発生器)10Aの縦断面図である。パイロインフレータ10Aは、本発明のガス発生剤成形体1を用いた以外、構造自体は公知のもの(例えば、特開平10−181516号公報の図1に類似したもの)である。
【0037】
パイロインフレータ10Aは、ディフューザシェル11とクロージャシェル12が溶接一体化されたハウジング13により外殻が形成されている。ディフューザシェル11は複数のガス排出口14を有し、ガス排出口14は、アルミニウムやステンレスからなる粘着テープ15で内側から閉塞されている。
【0038】
ハウジング13内の中央部には、伝火孔17を有する内筒部材16が配置されており、内筒部材16内には、電気式点火器20とアルミニウム製の容器に充填された伝火薬21が収容されている。
【0039】
ハウジング13内には、ガス排出口14及び粘着テープ15との間に筒状の間隙が形成されるようにして、燃焼ガスを濾過及び冷却する機能を有する筒状のクーラント・フィルタ24が配置されている。
【0040】
ハウジング13内の内筒部材16とクーラント・フィルタ24で挟まれた空間が燃焼室25となり、図1で示す形状のガス発生剤成形体1が収容されている。ガス発生剤成形体1は、上面4aと下面4bが、それぞれ第1リテーナ22と第2リテーナ23で支持固定され、外周面4cがクーラント・フィルタ24の内周面と対向配置され、貫通孔3の内周面が内筒部材16の外周面と対向している。
【0041】
ガス発生剤成形体1は、下記組成からなるガス発生剤組成物が圧伸成型された直径2mmの紐状体からなるものであり、外径50mm、内径(Dで示される貫通孔3の直径)22mm、高さ32mmで、質量が約38gのものである。
【0042】
(ガス発生剤組成物)
硝酸グアニジン41.3質量%
塩基性硝酸銅48.7質量%
水酸化アルミニウム5.0質量%
カルボキシメチルセルロースナトリウム塩5.0質量%
図3に示すパイロインフレータ10Aを自動車のエアバッグシステムで用いたときの動作を説明する。自動車が衝突したとき、衝撃センサからの指令を受け、点火器20が作動して、伝火薬21が着火燃焼して火炎や高温ガス等が発生する。火炎等は伝火孔17を通って燃焼室内に流入して、ガス発生剤成形体1を着火燃焼させる。ガス発生剤成形体1の着火燃焼により発生したガスは、クーラント・フィルタ24を通り、粘着テープ15を破壊した後、ガス排出口14から排出され、エアバッグを膨張させる。
【0043】
(4)図4のデュアル型パイロインフレータ
図4は、点火器が2つで、燃焼室が2つのデュアル型パイロインフレータ(火工式ガス発生器)10Bの縦断面図である。パイロインフレータ10Bは、本発明のガス発生剤成形体1を伝火薬として用いた以外、構造自体は公知のもの(例えば、特開2001−225711号公報の図1のガス発生器と類似した構造)である。なお、図3と同一番号は、同一の構成部品であることを意味する。
【0044】
パイロインフレータ10Bは、第1燃焼室25aと、ハウジング13内に配置されたカップ部材30で囲まれた第2燃焼室25bを有しており、それぞれ第1点火器20aと第2点火器20bが収容されている。第1燃焼室25aと第2燃焼室25bには、それぞれ図示されていない第1ガス発生剤と第2ガス発生剤が収容されている。これらのガス発生剤は公知のガス発生剤(例えば、ペレット状)であるが、本発明のガス発生剤成形体と同じものを用いてもよい。
【0045】
第1燃焼室25aに配置された第1点火器20aの点火部を含む部分は伝火室カップ31で覆われており、内部に図1で示すガス発生剤成形体1からなる伝火薬が収容されている。伝火室カップ31はリテーナ35で固定されている。
【0046】
ガス発生剤成形体(伝火薬)1は、下記組成からなるガス発生剤組成物が圧伸成型された直径1mmの紐状体からなるものであり、外径13mm、内径2mm、高さ11mmで、質量が約1.1gのものである。
【0047】
(ガス発生剤組成物)
ニトログアニジン 38.77質量%
過塩素酸カリウム 35.16質量%
硝酸ストロンチウム 15.07質量%
酸性白土 1.00質量%
カルボキシメチルセルロースナトリウム塩 10.00質量%
図4に示すパイロインフレータ10Bを自動車のエアバッグシステムで用いたときの一部動作を説明する。自動車が衝突したとき、衝撃センサからの指令を受け、点火器20aが作動して、ガス発生剤成形体(伝火薬)1が着火燃焼して火炎や高温ガスが発生する。この火炎や高温ガスにより伝火室カップ31が破壊され、第1燃焼室25a内の第1ガス発生剤が着火燃焼されてガスが発生する。発生したガスはクーラント・フィルタ24を通り、粘着テープ15を破壊した後、ガス排出口14から排出され、エアバッグを膨張させる。
【0048】
本実施形態では、ガス発生剤成形体(伝火薬)1は、第1ガス発生剤を着火燃焼させるための伝火薬として作用するものであるが、ガス発生剤成形体(伝火薬)1の燃焼により発生した高温ガス自体もエアバッグの膨張に利用される。
【0049】
(5)図5のシングル型パイロインフレータ
図5は、点火器が1つで、燃焼室が1つのシングル型パイロインフレータ(火工式ガス発生器)10Cの縦断面図である。パイロインフレータ10Cは、本発明のガス発生剤成形体1を伝火薬として用いた以外、構造自体は公知のものであり、図3のインフレータ10Aとほぼ同一構造のものである。なお、図3と同一番号は、同一の構成部品であることを意味する。
【0050】
内筒部材16内には、点火器20が収容固定されており、伝火薬として図1に示すようなガス発生剤成形体1が収容されている。本実施形態では、ガス発生剤成形体(伝火薬)1は、ガス発生剤を着火燃焼させるための伝火薬として作用するものであるが、ガス発生剤成形体(伝火薬)1の燃焼により発生した高温ガス自体もエアバッグの膨張に利用される。
【0051】
ガス発生剤成形体1は、下記組成からなるガス発生剤組成物が圧伸成型された直径1mmの紐状体からなるものであり、外径15mm、内径2mm、高さ13mmで、質量が約1.7gのものである。燃焼室25に充填されたガス発生剤は、公知のガス発生剤成形体(例えば、ニトログアニジン31.5質量%、硝酸ストロンチウム51.5質量%、カルボキシメチルセルロースナトリウム塩10.0質量%、酸性白土7.0質量%からなるペレット状のもの)を多数充填したものであるが、本発明のガス発生剤成形体と同じものを用いてもよい。
【0052】
(ガス発生剤組成物)
ニトログアニジン38.77質量%
過塩素酸カリウム35.16質量%
硝酸ストロンチウム15.07質量%
酸性白土1.00質量%
カルボキシメチルセルロースナトリウム塩10.00質量%
(6)図6のハイブリッドインフレータ
図6は、ガス源としてアルゴン等の加圧ガスと本発明のガス発生剤成形体を用いたハイブリッドインフレータ100の縦断面図である。ハイブリッドインフレータ100は、本発明のガス発生剤成形体を用いた以外は公知の構造のもの(例えば、特開2005−247289号公報の図1に類似のもの)である。
【0053】
ハイブリッドインフレータ100は、筒状の加圧ガスハウジング101の一端側開口部に燃焼室ハウジング111が接続固定され、他端側開口部にガス排出口105を有するディフューザ部103が接続固定されている。それぞれの接続部は、第1破裂板114と第2破裂板104で閉塞されている。
【0054】
加圧ガス室102内には、アルゴン、ヘリウム等の不活性ガスが高圧充填(30,000〜67,000kPa)されている。
【0055】
燃焼室ハウジング111内は燃焼室112となっており、端部には電気式点火器113が収容固定され、残りの燃焼室112内には、図1で示すようなガス発生剤成形体1が収容されている。
【0056】
図6に示すハイブリッドインフレータ100を自動車のエアバッグシステムで用いたときの動作を説明する。自動車が衝突したとき、衝撃センサからの指令を受け、点火器113が作動して、ガス発生剤成形体1が着火燃焼してガスを発生する。そして、発生したガスにより、燃焼室112内の圧力が上昇して、第1破裂板114が破壊され、高温ガスが加圧ガス室102内に流入する。その結果、加圧ガス室102の圧力が上昇して、第2破裂板104が破壊され、ガス排出口105からガスが排出され、エアバッグを膨張させる。
【実施例】
【0057】
実施例1
硝酸グアニジン41.3質量%、塩基性硝酸銅48.7質量%、水酸化アルミニウム5.0質量%、カルボキシメチルセルロースナトリウム塩5.0質量%を乾式混合したガス発生剤組成物100質量部に対して、20質量部の水を加えたものを用い、圧伸成型機を用いて、直径2mmの紐状体を製造した。
【0058】
次に、図2で示す巻き取り装置を用意し、直径22mm、ガイド部材7,8間の幅32mmのステンレス製芯材の一端側の外周面に、上記紐状体の一端を固定した状態にて、芯材を回転させて紐状体を質量を計測しながら巻き取り、所定質量になった時点で巻き取りを止めた。その後、端部を切断して、芯材から外した。
【0059】
得られたガス発生剤成形体は、中心部に貫通孔のあるもので、直径50mm、内径22mm、高さ32mm、質量38gであった。目視により観察したが、外表面には凹凸が見られなかった。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】ガス発生剤成形体及びその製造方法を説明するための斜視図。
【図2】図1に示すガス発生剤成形体の製造方法の説明図。
【図3】図1のガス発生剤成形体を用いたシングル型パイロインフレータの縦断面図。
【図4】図1のガス発生剤成形体を用いたデュアル型パイロインフレータの縦断面図。
【図5】図1のガス発生剤成形体をエンハンサ剤として用いたシングル型パイロインフレータの縦断面図。
【図6】図1のガス発生剤成形体を用いたハイブリッドインフレータの縦断面図。
【符号の説明】
【0061】
1 ガス発生剤成形体
2 紐状体
3 貫通孔
5 巻き取り装置
6 芯材
7、8 ガイド部材
10A、10B、10C ガス発生器
100 ハイブリッドインフレータ



【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも燃料、酸化剤及びバインダを含むガス発生剤組成物が圧伸成型された紐状体からなり、前記紐状体が巻かれた状態で一体になったものである、ガス発生剤成形体。
【請求項2】
長さ方向に貫通孔を有する円柱状のものである、請求項1記載のガス発生剤成形体。
【請求項3】
少なくとも燃料、酸化剤及びバインダを含むガス発生剤を圧伸成型して紐状体を製造する工程、
芯材の周囲に前記紐状体を巻き取る工程、
前記芯材を取り除く工程、
を有するガス発生剤成形体の製造方法。
【請求項4】
ガス発生源として請求項1又は2記載のガス発生剤成形体を用いた、車両の人員拘束装置用ガス発生器。
【請求項5】
伝火薬として請求項1又は2記載のガス発生剤成形体を用いた、車両の人員拘束装置用ガス発生器。
【請求項6】
ガス発生源として請求項1又は2記載のガス発生剤成形体と加圧ガスを併用した、車両の人員拘束装置用ガス発生器。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−308352(P2007−308352A)
【公開日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−141256(P2006−141256)
【出願日】平成18年5月22日(2006.5.22)
【出願人】(000002901)ダイセル化学工業株式会社 (1,236)
【Fターム(参考)】