説明

ガス発生材料及びガス発生装置

【課題】構造が簡素で、腐食等の問題が生じ難い構成、構造を有し、しかも、水素ガス及び酸素ガスを効率良く発生させ得るガス発生材料を提供する。
【解決手段】ガス発生材料120は、p型不純物を含有する第1半導体材料層21とn型不純物を含有する第2半導体材料層22とが積層されて成り、第1半導体材料層21におけるバレンスバンドと第2半導体材料層22におけるコンダクションバンドとがエネルギー的に一致するヘテロ接合を有し、第1半導体材料層21及び第2半導体材料層22のそれぞれの表面から異なるガスが生成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス発生材料及びガス発生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
光触媒分野において、光触媒機能を有する半導体材料に光を照射することで電子/ホール対を生成させ、例えば水を還元・酸化して水素ガス及び酸素ガスを生成する技術が知られている。そして、近年、これまで研究・開発の対象であったワイド・バンドギャップのTiO2系材料に代わり、様々な材料系の探索がなされている。そして、近年では、窒化物半導体材料による光触媒技術の開発も精力的に進められている。例えば、特開2003−024764には、窒化物半導体極及び金属極から構成されたガス発生装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−024764
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Japanese Journal of Applied Physics, Vol.44, No.10, 2005, pp.7433-7435
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特開2003−024764に開示された技術にあっては、窒化物半導体極と金属極とを導体(配線)で接続する必要があり、構造の複雑化、導体(配線)の腐食、劣化といった問題がある。また、可視域に光吸収を有する窒化物半導体材料は、In組成を多くしたInxGa1-xN(例えば、x=0.2では、吸収端波長約500nm)において、伝導帯エネルギーが水素生成エネルギーレベルを超えてしまう。云い換えれば、電子エネルギーとしては低くなってしまう(Japanese Journal of Applied Physics, Vol.44, No.10, 2005, pp.7433-7435 参照)ため、単一膜では、水素ガスを効率良く発生できないといった問題を有している。
【0006】
従って、本発明の目的は、構造が簡素で、腐食等の問題が生じ難い構成、構造を有し、しかも、水素ガス及び酸素ガスを効率良く発生させ得るガス発生材料、及び、係るガス発生材料を用いたガス発生装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するための本発明のガス発生材料は、p型不純物を含有する第1半導体材料層とn型不純物を含有する第2半導体材料層とが積層されて成り、第1半導体材料層におけるバレンスバンドと第2半導体材料層におけるコンダクションバンドとがエネルギー的に一致するヘテロ接合を有し、
第1半導体材料層及び第2半導体材料層のそれぞれの表面から異なるガスが生成する。
【0008】
上記の目的を達成するための本発明のガス発生装置は、溶液中に浸漬されたガス発生材料を備えており、
ガス発生材料は、p型不純物を含有する第1半導体材料層とn型不純物を含有する第2半導体材料層とが積層されて成り、第1半導体材料層におけるバレンスバンドと第2半導体材料層におけるコンダクションバンドとがエネルギー的に一致するヘテロ接合を有し、
第1半導体材料層の溶液との接触表面から水素ガスが生成し、
第2半導体材料層の溶液との接触表面から酸素ガスが生成する。
【発明の効果】
【0009】
本発明にあっては、光励起により、n型不純物を含有する第2半導体材料層側では、ホール(正孔)が第2半導体材料層の表面に集まり、酸素ガスが生成される。一方、p型不純物を含有する第1半導体材料層側では、電子が第1半導体材料層の表面に供給され、水素ガスが生成される。n型不純物を含有する第2半導体材料層で生成した電子、p型不純物を含有する第1半導体材料層で生成したホールは、それぞれ、第1半導体材料層と第2半導体材料層との界面(ヘテロ接合面)に向かう。ここで、界面(ヘテロ接合面)にあっては、第1半導体材料層におけるバレンスバンドと第2半導体材料層におけるコンダクションバンドとがエネルギー的に一致しているので、ホールと電子はスムースに結合される。従って、第1半導体材料層と第2半導体材料層とを電気的に接続するための導体(配線)等が本質的に不要であり、構造が簡素で、腐食等の問題が生じ難い。しかも、水素ガス及び酸素ガスを効率良く発生させることができる。尚、太陽光の効率良い吸収を達成するためのバンドギャップ(ナロー・バンドギャップ)を有し、且つ、効率の良いキャリアトランスファーを達成するための第1半導体材料層及び第2半導体材料層を構成する材料の選択は、容易である。
【0010】
また、本発明において、第2半導体材料層の光入射面上に形成され、パターニングされた金属層の間に位置する第2半導体材料層の部分に第2半導体材料層保護膜を形成すれば、酸素ガス発生サイトにおける光溶解の発生を確実に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1の(A)、(B)及び(C)は、それぞれ、実施例1のガス発生材料の模式的な断面図、実施例1のガス発生装置概念図、及び、第1半導体材料層と第2半導体材料層の電位の状態を模式的に示す図である。
【図2】図2の(A)及び(B)は、それぞれ、実施例2のガス発生材料の模式的な断面図、及び、金属層等の配置を模式的に示す図である。
【図3】図3の(A)及び(B)は、それぞれ、実施例3のガス発生材料の模式的な断面図、及び、実施例3のガス発生装置概念図である。
【図4】図4の(A)及び(B)は、実施例3のガス発生材料の製造方法を説明するための第1半導体材料層等の模式的な一部端面図であり、図4の(C)は、実施例4のガス発生材料の製造方法を説明するための第1半導体材料層等の模式的な一部端面図である。
【図5】図5は、実施例5のガス発生材料の模式的な断面図である。
【図6】図6は、実施例2のガス発生材料における金属層等の別の模式的な配置を示す図である。
【図7】図7は、実施例2のガス発生材料における金属層等の更に別の模式的な配置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して、実施例に基づき本発明を説明するが、本発明は実施例に限定されるものではなく、実施例における種々の数値や材料は例示である。尚、説明は、以下の順序で行う。
1.本発明のガス発生材料及びガス発生装置、全般に関する説明
2.実施例1(本発明のガス発生材料及びガス発生装置、第1の構成)
3.実施例2(実施例1の変形)
4.実施例3(実施例1の別の変形、第2の構成)
5.実施例4(実施例3の変形)
6.実施例5(実施例1の別の変形、その他)
【0013】
[本発明のガス発生材料及びガス発生装置、全般に関する説明]
本発明のガス発生材料あるいは本発明のガス発生装置にあっては、ヘテロ接合の界面において第1半導体材料層におけるバレンスバンドと第2半導体材料層におけるコンダクションバンドとがエネルギー的に一致しているが、具体的には、ヘテロ接合の界面において、第1半導体材料層におけるバレンスバンドと第2半導体材料層におけるコンダクションバンドとの差が、最大、0.2eVであっても、「エネルギー的に一致する」とする。但し、次に述べるように、シリコンから成る第1半導体材料層とInxGa1-xNから成る第2半導体材料層との間に、厚さ5nm程度のAlN層やAlGaInN層を形成する場合、これらの層が5nm〜10nm以下の厚さであれば、トンネル効果が生じるので、コンダクションバンドとの差は、このような値に限定されない場合がある。
【0014】
本発明のガス発生材料あるいは本発明のガス発生装置において、第1半導体材料層は、シリコン又は酸化白金から成り、第2半導体材料層は、InGaN、酸化鉄(Fe23)又は酸化銅(CuO)から成る形態とすることができる。即ち、(第1半導体材料層の構成材料,第2半導体材料層の構成材料)の組合せとして、(シリコン,InGaN)、(シリコン,酸化鉄)、(シリコン,酸化銅)、(酸化白金,InGaN)、(酸化白金,酸化鉄)、(酸化白金,酸化銅)を挙げることができる。あるいは又、第1半導体材料層はシリコンから成り、第2半導体材料層はInxGa1-xN(但し、x≧0.4)から成る形態とすることができ、このような組成とすることでエネルギーバンドEgを2eV程度に抑えることができ、効率良く太陽光を吸収することができる。シリコンから成る第1半導体材料層と、InxGa1-xNから成る第2半導体材料層との間に、厚さ5nm程度のAlN層やAlGaInN層を形成してもよく、これによって、シリコンから成る第1半導体材料層上に成長するInxGa1-xNから成る第2半導体材料層の結晶欠陥を減らし、非発光再結合によるエネルギー損失を抑えることができる。ここで、第1半導体材料層をシリコンから構成する場合、p型不純物としてホウ素やアルミニウム等のIII族原子を挙げることができる。また、第2半導体材料層をInGaNから構成する場合、n型不純物としてケイ素(Si)や酸素(O)を挙げることができる。更には、第2半導体材料層を酸化鉄(Fe23)から構成する場合、n型不純物としてインジウム(In)を挙げることができるし、第2半導体材料層を酸化銅(CuO)から構成する場合、n型不純物としてリチウム(Li)を挙げることができる。
【0015】
上述した好ましい形態を含む本発明のガス発生材料あるいは本発明のガス発生装置にあっては、第1半導体材料層と第2半導体材料層との界面と対向する第1半導体材料層の表面から第1半導体材料層に光が入射し、第1半導体材料層と第2半導体材料層との界面と対向する第2半導体材料層の表面から第2半導体材料層に光が入射する構成とすることができる。尚、このような構成を、便宜上、『本発明の第1の構成』と呼ぶ。そして、本発明の第1の構成にあっては、外部からの光を第1半導体材料層に入射させる第1光反射部材、及び、第2半導体材料層に入射させる第2光反射部材を更に備えている形態とすることができる。ここで、第1光反射部材や第2光反射部材は、例えば、平面鏡や凹面鏡といった鏡から構成することができる。係る形態を含む本発明の第1の構成にあっては、第1半導体材料層と接する溶液(『第1溶液』と呼ぶ)と、第2半導体材料層と接する溶液(『第2溶液』と呼ぶ)とは、例えば、塩橋や隔壁によって分離されていることが望ましい。また、これらの形態を含む本発明の第1の構成にあっては、第1半導体材料層の表面には保護膜が形成されている形態とすることができる。更には、第2半導体材料層の溶液との接触表面には、パターニングされた金属層及び第2半導体材料層保護膜が形成されており、第2半導体材料層保護膜は、パターニングされた金属層の間に位置する第2半導体材料層の溶液との接触表面の部分に形成されている構成とすることができる。
【0016】
あるいは又、上述した好ましい形態を含む本発明のガス発生材料あるいは本発明のガス発生装置にあっては、
第1半導体材料層及び第2半導体材料層の内の一方の半導体材料層上に、他方の半導体材料層が隙間を空けて形成されており、
第1半導体材料層と第2半導体材料層との界面と対向する他方の半導体材料層の表面から他方の半導体材料層に光が入射し、第1半導体材料層と第2半導体材料層との界面に対応する露出した一方の半導体材料層の表面から一方の半導体材料層に光が入射する構成とすることができる。尚、このような構成を、便宜上、『本発明の第2の構成』と呼ぶ。ここで、一方の半導体材料層は第1半導体材料層であり、他方の半導体材料層は第2半導体材料層である構成とすることができる。また、第2半導体材料層は薄膜状である構成とすることができる。一方の半導体材料層上に形成された他方の半導体材料層の形状として、ライン・アンド・ストライプ状や同心円状とすることができるし、あるいは又、マトリックス状に配列された点状領域の集合から構成されていてもよい。本発明の第2の構成にあっては、第1半導体材料層及び第2半導体材料層のそれぞれの表面にて生成した異なるガス(水素ガス及び酸素ガス)を、適切な方法、手段で分離する必要がある。本発明の第2の構成にあっては、他方の半導体材料層と他方の半導体材料層との間に露出した一方の半導体材料層の表面には保護膜が形成されている形態とすることができる。そして、更には、第2半導体材料層の溶液との接触表面には、パターニングされた金属層及び第2半導体材料層保護膜が形成されており、第2半導体材料層保護膜は、パターニングされた金属層の間に位置する第2半導体材料層の溶液との接触表面の部分に形成されている構成とすることができる。
【0017】
保護膜を構成する材料として、TiO2、ZnO2、SnO2、SiO2、SiN、TiNx、InGaN、ZrO、Ta25、AlNを挙げることができる。
【0018】
また、第2半導体材料層保護膜は、酸化シリコン(SiOX)、酸化タンタル(TaOX)、酸化ジルコニウム(ZrOX)、酸化アルミニウム(AlOX)、酸化クロム(CrOX)、酸化バナジウム(VOX)、酸化チタン(TiO)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化スズ(SnO)、酸化ハフニウム(HfOX)、酸化ニオブ(NbOX)、酸化スカンジウム(ScOX)、酸化イットリウム(YOX)、窒化シリコン(SiNY)、窒化チタン(TiN)、窒化タンタル(TaN)、窒化アルミニウム(AlN)、酸窒化シリコン(SiOXY)、フッ化アルミニウム(AlFX)、フッ化セリウム(CeFX)、フッ化カルシウム(CaFX)、フッ化ナトリウム(NaFX)、フッ化アルミニウム・ナトリウム(NaYAlZX)、フッ化ランタン(LaFX)、フッ化マグネシウム(MgFX)、フッ化イットリウム(YFX)及び硫化亜鉛(ZnSX)から成る群から選択された少なくとも1種類の材料から成る構成とすることができる。あるいは又、場合によっては、第2半導体材料層保護膜を、2層以上の誘電体多層膜(例えば、SiO2等の低屈折率薄膜とTiO2やTa25等の高屈折率薄膜とを積層した誘電体多層膜)から成る構成とすることもできる。尚、第2半導体材料層保護膜を構成する透明な絶縁材料は、入射光の95%以上を透過する材料から構成されていることが好ましい。
【0019】
保護膜あるいは第2半導体材料層保護膜の形成は、使用する材料に依存して、各種の物理的気相成長法(PVD法)、各種の化学的気相成長法(CVD法)にて行うことができる。また、保護膜あるいは第2半導体材料層保護膜のパターニングは、例えば、リソグラフィ技術及びエッチング技術の組合せ、リフトオフ法、各種印刷法に基づき行うことができる。保護膜や第2半導体材料層保護膜は反射防止膜(Anti Reflection Coaitng,ARC)としての機能を有する構成とすることもできる。
【0020】
金属層を構成する材料は助触媒から成る構成とすることが、効果的な電子/ホール対の生成に基づくガス生成効率の向上といった観点から望ましい。そして、この場合、金属層は、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、イリジウム(Ir)、ロジウム(Rh)及びルテニウム(Ru)から成る群から選択された少なくとも1種類の材料や、コバルト錯体から成ることが望ましい。あるいは又、金属層は、周期表において第5〜6周期、第8〜10族に位置する白金族元素から構成されていることが望ましい。尚、金属層の概念には、合金、金属化合物(例えば、酸化ルテニウム、酸化イリジウム、酸化白金、酸化ニッケルといった金属酸化物)が包含される。金属層はパターニングされているが、このパターニングの形状は本質的に任意であり、例えば、ライン・アンド・ストライプ状や同心円状とすることができるし、あるいは又、パターニングされた金属層はマトリックス状に配列された点状領域の集合から構成されている形態とすることもできる。第2半導体材料層の光入射面に対して金属層が占める割合は、種々の試験を行い、効果的な電子/ホール対の生成に基づくガス生成効率の向上といった観点から、適宜、決定すればよい。
【0021】
あるいは又、上述した好ましい形態を含む本発明のガス発生材料あるいは本発明のガス発生装置にあっては、第2半導体材料層は微粒子の集合体あるいはナノ・ロッドやナノ・ファイバの集合体から成る構成とすることもできる。このように、第2半導体材料層を微粒子の集合体あるいはナノ・ロッドやナノ・ファイバの集合体から構成することで、第2半導体材料層の比表面積の増加を図ることができ、光利用効率の向上を図ることができる。このような第2半導体材料層の表面には、上述した材料から成る助触媒層を形成してもよいし、あるいは又、助触媒粒子を付着、固着させてもよい。
【0022】
以上に説明した好ましい構成、形態を含む本発明のガス発生材料あるいは本発明のガス発生装置(以下、これらを総称して、単に、『本発明』と呼ぶ場合がある)にあっては、第2半導体材料層の厚さは、ガス生成効率の向上といった観点から、1×10-6m以下であることが好ましい。あるいは又、第1半導体材料層と第2半導体材料層との界面における第1半導体材料層及び/又は第2半導体材料層の不純物濃度は、空乏層を拡げ、光利用効率を向上させるといった観点から、1×1018/cm3以下、好ましくは1×1017/cm3以下、より好ましくは1×1016/cm3以下であることが望ましい。尚、空乏層の幅は、例えば1×10-7m以上であることが望ましい。半導体材料層における不純物濃度は、半導体材料層の厚さ方向に沿って一定でもよいし、半導体材料層の表面に向かって不純物濃度が低下する形態としてもよい。
【0023】
InGaN層の形成方法(成膜方法)として、有機金属化学的気相成長法(MOCVD法、MOVPE法)や有機金属分子線エピタキシー法(MOMBE法)、ハロゲンが輸送あるいは反応に寄与するハイドライド気相成長法(HVPE法)を挙げることができる。あるいは又、スパッタリング法を挙げることもできる。
【0024】
ガス発生装置における溶液(媒質)として、水だけでなく、酸性水溶液、アルカリ性水溶液、アルコール類を挙げることができる。あるいは又、溶液として、硫酸ナトリウム水溶液や塩化カリウム水溶液、塩化ナトリウム水溶液、塩化マグネシウム水溶液、塩化カルシウム水溶液、各種の電解液を挙げることもできる。酸性水溶液として、希硫酸、希塩酸、希硫酸と希塩酸の混合液を挙げることができるし、アルカリ性水溶液として、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液を挙げることができる。本発明の第1の構成にあっては、ガス発生材料を構成する第1半導体材料層及び第1半導体材料層が浸漬される溶液は、ガス発生装置を構成する第1槽に収納され、ガス発生材料を構成する第2半導体材料層及び第2半導体材料層が浸漬される溶液は、ガス発生装置を構成する第2槽に収納される。一方、本発明の第2の構成にあっては、ガス発生材料及び溶液は、ガス発生装置を構成する槽に収納される。ここで、使用する溶液にも依るが、第1槽と第2槽とは、例えば、塩橋といったイオン透過膜や、下部に穴部が設けられた隔壁(仕切り部材)によって区切られている。ガス発生材料には光が照射されるが、この場合の光源として、太陽光、Xeランプ、水銀灯、水銀キセノン灯、ハロゲンランプ、メタルハライドランプ、白熱灯、蛍光灯、発光ダイオード、レーザ等を例示することができる。
【実施例1】
【0025】
実施例1は、本発明のガス発生材料及びガス発生装置に関し、より詳しくは、本発明の第1の構成に関する。
【0026】
実施例1のガス発生材料(ガス発生部材)120は、模式的な断面図を図1の(A)に示し、第1半導体材料層と第2半導体材料層の電位の状態を模式的に図1の(C)に示すように、p型不純物を含有する第1半導体材料層21とn型不純物を含有する第2半導体材料層22とが積層されて成り、第1半導体材料層21におけるバレンスバンドと第2半導体材料層22におけるコンダクションバンドとがエネルギー的に一致するヘテロ接合を有しており、第1半導体材料層21及び第2半導体材料層22のそれぞれの表面から異なるガスが生成する。
【0027】
また、実施例1のガス発生装置110は、図1の(B)に概念図を示すように、溶液18A,18B中に浸漬されたガス発生材料120を備えている。そして、このガス発生材料120は、p型不純物を含有する第1半導体材料層21とn型不純物を含有する第2半導体材料層22とが積層されて成り、第1半導体材料層におけるバレンスバンドと第2半導体材料層におけるコンダクションバンドとがエネルギー的に一致するヘテロ接合を有し、第1半導体材料層21の溶液との接触表面から水素ガスが生成し、第2半導体材料層22の溶液との接触表面から酸素ガスが生成する。
【0028】
尚、ヘテロ接合の界面23において、第1半導体材料層21におけるバレンスバンドと第2半導体材料層22におけるコンダクションバンドとがエネルギー的に一致するが、より具体的には、第1半導体材料層21におけるバレンスバンドと第2半導体材料層22におけるコンダクションバンドとの差が0eVとなるように、第1半導体材料層21及び第2半導体材料層22の組成を制御している。後述する実施例2〜実施例5においても同様である。
【0029】
実施例1あるいは後述する実施例2〜実施例5にあっては、p型不純物を含有する第1半導体材料層21は、p型不純物であるホウ素がドーピングされたシリコン(より具体的には、不純物濃度が1×1017cm-3であるp型シリコン半導体基板)から成り、n型不純物を含有する第2半導体材料層22は、InGaN、より具体的には、不純物濃度5×1016cm-3のSiがドーピングされたInxGa1-xN(但し、x≧0.4であり、実施例にあっては、x=0.45)から成る。このような組成とすることでエネルギーバンドEgを2eV程度に抑えることができ、効率良く太陽光を吸収することができる。また、実施例1あるいは後述する実施例2〜実施例4にあっては、第1半導体材料層21と第2半導体材料層22との界面23における第1半導体材料層21の不純物濃度を、空乏層を拡げ、光利用効率を向上させるといった観点から、上述のとおりとした。これによって、空乏層の幅は1×10-7m以上となる。更には、実施例1あるいは後述する実施例2〜実施例4にあっては、第1半導体材料層21の表面には、厚さ5nmのTiO2から成る保護膜24が形成されている。また、ガス生成効率の向上といった観点から、第2半導体材料層22の厚さを、1×10-6m以下、具体的には0.2μmとした。
【0030】
実施例1のガス発生材料120あるいはガス発生装置110にあっては、第1半導体材料層21と第2半導体材料層22との界面23と対向する第1半導体材料層21の表面から第1半導体材料層21に光が入射し、第1半導体材料層21と第2半導体材料層22との界面23と対向する第2半導体材料層22の表面から第2半導体材料層22に光が入射する。そして、実施例1のガス発生装置110にあっては、外部からの光を第1半導体材料層21に入射させる第1光反射部材15、及び、第2半導体材料層22に入射させる第2光反射部材16が備えられている。第1光反射部材15及び第2光反射部材16は、例えば、平面鏡から構成されている。また、第1半導体材料層21が浸漬される溶液18A(具体的には、1NのHCl溶液から成る)は、ガス発生装置110を構成する第1槽12に収納されている。一方、第2半導体材料層22が浸漬される溶液18B(具体的には、1NのHCl溶液から成る)は、ガス発生装置110を構成する第2槽13に収納されている。ここで、第1槽12と第2槽13とは、例えば、塩橋14といったイオン透過膜によって区切られている。第1槽12及び第2槽13には、溶液投入部17A,17B、並びに、生成したガスの排気部19A,19Bが設けられている。
【0031】
以下、実施例1のガス発生材料120及びガス発生装置110の製造方法の概要を説明する。
【0032】
実施例1のガス発生材料120の製造にあっては、先ず、p型不純物を含有するシリコン半導体基板(不純物濃度:1×1017cm-3)をMOCVD装置に搬入し、シリコン半導体基板(p型不純物を含有する第1半導体材料層21に相当する)の主面上に、厚さ0.2μmのn−In0.45Ga0.55Nから成るn型不純物を含有する第2半導体材料層を形成する。具体的には、シリコン半導体基板の温度を700゜Cとし、窒素キャリア中で原料ガスであるTMI(トリメチルインジウム)ガス、TMG(トリエチルガリウム)ガス及びモノシランガスを流し、第1半導体材料層21上に第2半導体材料層22を成膜する。第1半導体材料層21と第2半導体材料層22との界面23における第1半導体材料層のn型不純物濃度を5×1016cm-3とした。その後、シリコン半導体基板を裏面から研磨して100μm程度の厚さとし、ウェットエッチング法あるいはドライエッチング法によってシリコン半導体基板の研磨面(裏面)を10μm程度、除去して、ダメージ層を取り除く。その後、TiO2から成り,厚さ5nmの保護膜24を、スパッタリング法に基づきシリコン半導体基板の研磨面(裏面)上に形成する。こうして、図1の(A)に示したガス発生材料120を得ることができる。そして、ガス発生材料120を、図1の(B)に示すように、塩橋14や物理的な穴を開けた隔壁(仕切り部材)に適切な方法で取り付け、溶液18A,18B中に浸する。そして、第1光反射部材15によって、外部からの光(例えば、太陽光)を第1半導体材料層21に入射させる一方、第2光反射部材16によって、外部からの光(太陽光)を第2半導体材料層22に入射させる。あるいは又、直接、光(太陽光)を、第1半導体材料層21及び第2半導体材料層22に入射させてもよい。
【0033】
実施例1にあっては、図1の(C)に示すように、光励起により、n型不純物を含有する第2半導体材料層側では、ホール(正孔)が第2半導体材料層22の表面に集まり、酸素ガスが生成される。一方、p型不純物を含有する第1半導体材料層側では、電子が第1半導体材料層21の表面に供給され、水素ガスが生成される。そして、n型不純物を含有する第2半導体材料層22で生成した電子、p型不純物を含有する第1半導体材料層21で生成したホールは、それぞれ、第1半導体材料層21と第2半導体材料層22との界面(ヘテロ接合面)23に向かう。ここで、界面23(ヘテロ接合面)にあっては、第1半導体材料層21におけるバレンスバンドと第2半導体材料層22におけるコンダクションバンドとがエネルギー的に一致しているので、即ち、大きなエネルギーギャップ(エネルギー障壁)が存在しないので、ホールと電子はスムースに結合される。即ち、このように、SiのバレンスバンドとInGaNのコンダクションバンドが一致あるいは近い材料系において、InGaNのような真空準位に比べて深いエネルギー準位を形成する材料に対してn型不純物のドーピングを行い、Siのような材料に対してp型不純物のドーピングを行うことによって、図1の(C)に示した効率的な光触媒システムを構築することができる。そして、実施例1にあっては、第1半導体材料層21と第2半導体材料層22とを電気的に接続するための導体(配線)等が本質的に不要であり、構造が簡素で、腐食等の問題が生じ難い。しかも、水素ガス及び酸素ガスを効率良く発生させることができる。後述する実施例においても同様である。また、第1半導体材料層21が溶液18Aと接する表面には保護膜24が形成されているので、溶液18Aによって第1半導体材料層21に損傷が生じることもない。
【実施例2】
【0034】
実施例2は、実施例1の変形である。実施例2にあっては、ガス発生材料220の模式的な断面図を図2の(A)に示すように、第2半導体材料層22の溶液18Bとの接触表面には、パターニングされた金属層25及び第2半導体材料層保護膜26が形成されている。そして、第2半導体材料層保護膜26は、パターニングされた金属層25の間に位置する第2半導体材料層22の溶液18Bとの接触表面の部分に形成されている。ここで、パターニングされた金属層25は、図2の(B)に模式的な配置を示すように、ライン・アンド・ストライプ状の平面形状を有する。尚、図2の(B)において、金属層25を明示するために、斜線を付した。金属層25を構成する材料は、助触媒(酸素ガス発生助触媒)、具体的には、イリジウム(Ir)や、IrO、Pt、NiO、Pd等から成る。また、第2半導体材料層保護膜26は、SiN(屈折率:約2.0)から成る。
【0035】
SiNから成る第2半導体材料層保護膜26は、第2半導体材料層22の光入射面上にCVD法に基づき成膜すればよい。また、金属層25は、第2半導体材料層22の光入射面上における第2半導体材料層保護膜26の上にレジスト層を形成し、レジスト層にリソグラフィ技術に基づき、幅5μm、ピッチ50μmのストライプ状の開口部を形成し、その後、開口部の底部に露出した第2半導体材料層保護膜26を除去して第2半導体材料層22を露出させ、次いで、Irから成り、助触媒として機能する厚さ0.1μmの金属層25をスパッタリング法にて全面に形成した後、第2半導体材料層保護膜26上の金属層25及びレジスト層を除去するといった、所謂リフトオフ法に基づき、ライン・アンド・ストライプ状の金属層25を形成することができる。
【0036】
尚、第2半導体材料層保護膜26は反射防止膜(Anti Reflection Coaitng,ARC)としての機能を有する。具体的には、第2半導体材料層22の光入射面上における第2半導体材料層保護膜26の厚さを、入射光の波長の1/4の厚さとなるように、約45nmとした。即ち、第2半導体材料層保護膜26を構成する材料(具体的には、SiN)の屈折率をn1(具体的には、2.0)、平均膜厚をd、入射光の中心波長をλ(具体的には、360nm)としたとき、
{(2m+1)−0.5}×(λ/4)≦n1・d≦{(2m+1)+0.5}×(λ/4) (mは整数)
を満足している。また、第2半導体材料層22を構成する材料の屈折率をn2、第2半導体材料層保護膜26を構成する材料の屈折率をn1、第2半導体材料層保護膜26に光が入射する直前の空間を占める媒質(具体的には、溶液18B)の屈折率をn0としたとき、
0.8≦n1/(n0・n21/2≦1.5
を満足している。即ち、
0.8≦2.0/(2.4×1.33)1/2≦1.5
である。
【0037】
実施例2にあっては、水の光分解活性を示すガス発生材料220の酸素ガス発生サイト(具体的には第2半導体材料層22の表面)に、助触媒として機能する金属層25及び第2半導体材料層保護膜26が形成されている。即ち、第2半導体材料層22は金属層25及び第2半導体材料層保護膜26によって完全に覆われており、第2半導体材料層22は溶液18Bと、直接、接することがない。従って、第2半導体材料層22への光照射により電荷分離・生成されたホールが金属層25に移動し、助触媒として機能する金属層25上でのみ溶液18Bの酸化反応が促進する。こうして、第2半導体材料層22が酸化されて溶液18B中に光溶解するといった反応が抑制され、化学的安定性が向上し、水分解光触媒デバイスとして長期間に亙る使用が可能となる。しかも、反射防止膜(ARC)としても機能する第2半導体材料層保護膜26を設けることで、反射による第2半導体材料層22への入射光のロスを低減することができ、電荷分離に供される入射フォトンを増加させることができる結果、溶液の分解効率の向上を図ることができる。
【実施例3】
【0038】
実施例3も、実施例1の変形であるが、本発明の第2の構成に関する。実施例3にあっては、ガス発生材料320の模式的な断面図を図3の(A)に示し、ガス発生装置310の概念図を図3の(B)に示すように、第1半導体材料層21及び第2半導体材料層22の内の一方の半導体材料層(具体的には、第1半導体材料層21)上に、他方の半導体材料層(具体的には、第2半導体材料層22)が隙間を空けて形成されている。そして、第1半導体材料層21と第2半導体材料層22との界面23と対向する他方の半導体材料層(第2半導体材料層22)の表面から他方の半導体材料層(第2半導体材料層22)に光が入射し、第1半導体材料層21と第2半導体材料層22との界面23に対応する露出した一方の半導体材料層(第1半導体材料層21)の表面から一方の半導体材料層(第1半導体材料層21)に光が入射する。即ち、実施例1〜実施例2にあっては、ガス発生材料120,220の両面から光(例えば、太陽光)を入射させたが、実施例3にあっては、ガス発生材料320の片面から光(太陽光)を入射させる。ここで、第2半導体材料層22は薄膜状である。また、実施例3にあっては、他方の半導体材料層(第2半導体材料層22)と他方の半導体材料層(第2半導体材料層22)との間に露出した一方の半導体材料層(第1半導体材料層21)の表面には、厚さ5nmのTiO2から成る保護膜24が形成されている。
【0039】
実施例3のガス発生材料320あるいはガス発生装置310にあっては、第1半導体材料層21及び第2半導体材料層22が浸漬される溶液18(具体的には、1NのHCl溶液から成る)は、ガス発生装置310を構成する槽11に収納されている。槽11には、溶液投入部17、並びに、生成したガスの排気部19が設けられている。尚、排気部19から排気された水素ガスと酸素ガスの混合ガスは、図示しないガス分離装置にて水素ガスと酸素ガスとに分離される。
【0040】
以下、実施例3のガス発生材料320及びガス発生装置310の製造方法の概要を説明する。
【0041】
実施例3のガス発生材料320の製造にあっては、先ず、p型不純物を含有するシリコン半導体基板(不純物濃度:1×1017cm-3)をMOCVD装置に搬入し、実施例1にて説明したと同様に、シリコン半導体基板(p型不純物を含有する第1半導体材料層21に相当する)の主面上に、厚さ0.2μmのn−In0.45Ga0.55Nから成るn型不純物を含有する第2半導体材料層22を成膜する。その後、フォトリソグラフィ技術及びエッチング技術に基づき、レジスト層27を形成し、第2半導体材料層22を、係るレジスト層27をエッチング用マスクとして用いて、例えば、ライン・アンド・ストライプ状にパターニングする(図4の(A)の模式的な一部端面図参照)。次いで、全面に保護膜24を形成した後(図4の(B)の模式的な一部端面図参照)、レジスト層27、及び、その上の保護膜を除去するといった、所謂リフトオフ技術に基づき、第2半導体材料層22と第2半導体材料層22との間に露出した第1半導体材料層21の表面に保護膜24を形成する。こうして、図3の(A)に示したガス発生材料320を得ることができる。そして、ガス発生材料320を、図3の(B)に示すように、溶液18中に浸する。そして、外部からの光(例えば、太陽光)を第1半導体材料層21及び第2半導体材料層22に入射させる。直接、光(太陽光)を、第1半導体材料層21及び第2半導体材料層22に入射させてもよいし、レンズ等の集光手段によって集光した光(太陽光)を、第1半導体材料層21及び第2半導体材料層22に入射させてもよい。
【0042】
以上の点を除き、実施例3のガス発生材料320及びガス発生装置310の構成、構造は、実施例1にて説明したガス発生材料120及びガス発生装置110の構成、構造と同様とすることができるので、詳細な説明は省略する。
【実施例4】
【0043】
実施例4は、実施例3の変形である。実施例3にあっては、第2半導体材料層22の成膜、第2半導体材料層22のパターニング、第2半導体材料層22と第2半導体材料層22との間に露出した第1半導体材料層21の表面における保護膜24の形成を、この順で行った。一方、実施例4にあっては、先ず、第1半導体材料層21の表面に、パターニングされた保護膜24を周知の方法で形成する(図4の(C)の模式的な一部端面図参照)。次いで、保護膜24と保護膜24とに間に露出した第1半導体材料層21の表面に、所謂選択エピタキシャル成長法に基づき第2半導体材料層22を成長させる。こうして、図3の(A)に示したと同様のガス発生材料320を得ることができる。
【0044】
以上の点を除き、実施例4のガス発生材料及びガス発生装置の構成、構造は、実施例3にて説明したガス発生材料320及びガス発生装置310の構成、構造と同様とすることができるので、詳細な説明は省略する。尚、以上に説明した実施例3あるいは実施例4のガス発生材料における第2半導体材料層22の表面に、実施例2において説明した金属層25及び第2半導体材料層保護膜26を設けてもよい。
【実施例5】
【0045】
実施例5も、実施例3の変形であるが、実施例5にあっては、第2半導体材料層22は微粒子の集合体から構成されている。実施例5のガス発生材料520の模式的な一部断面図を図5に示す。実施例5にあっては、p型不純物がドーピングされたシリコン半導体基板あるいはシートから構成された第1半導体材料層21の上に、水熱合成法等に基づき形成されたn型不純物がドーピングされたInGaN微結晶(粒径:30nm程度)を焼結法により形成する。その後、例えば、IrやCo錯体等の助触媒を含む溶液中に浸漬し、乾燥、焼結を行うことで、表面に助触媒粒子28が付着した第2半導体材料層(具体的には、n型不純物がドーピングされた層状のInGaN微結晶22Aの集合)が第1半導体材料層21の上に付着あるいは固着したガス発生材料520を得ることができる。
【0046】
実施例5にあっては、第2半導体材料層は、n型不純物がドーピングされたInGaN微結晶から構成されたInGaN微粒子22Aから成るので、ラフネスファクターや比表面積を増加させることができる結果、光利用効率の向上を図ることができる。尚、微粒子の代わりに、ナノ・ロッドやナノ・ファイバの集合体から成る構成とすることもできる。
【0047】
以上の点を除き、実施例5のガス発生材料及びガス発生装置の構成、構造は、実施例3にて説明したガス発生材料320及びガス発生装置310の構成、構造と同様とすることができるので、詳細な説明は省略する。
【0048】
以上、本発明を好ましい実施例に基づき説明したが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。実施例にて説明したガス発生材料及びガス発生装置の構成、構造、用いた材料や仕様等は例示であり、適宜、選択、変更することができる。例えば、実施例2の光触媒装置において、図6に金属層等の模式的な配置を示すように、パターニングされた金属層が、マトリックス状に配列された点状領域の集合から構成されていてもよい。あるいは又、図7に金属層等の模式的な配置を示すように、パターニングされた金属層の形状を同心円状とすることもできる。また、シリコンから成る第1半導体材料層21とInxGa1-xNから成る第2半導体材料層22との間に、厚さ5nm程度のAlN層やAlGaInN層を形成してもよい。
【符号の説明】
【0049】
110,310・・・ガス発生装置、11・・・槽、12・・・第1槽、13・・・第2槽、14・・・塩橋、15・・・第1光反射部材、16・・・第2光反射部材、17,17A,17B・・・溶液投入部、18,18A,18B・・・溶液、19,19A,19B・・・排気部、120,220,320,520・・・ガス発生材料(ガス発生部材)、21・・・第1半導体材料層、22・・・第2半導体材料層、23・・・界面(ヘテロ接合面)、24・・・保護膜、25・・・金属層、26・・・第2半導体材料層保護膜、27・・・レジスト層、28・・・助触媒粒子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶液中に浸漬されたガス発生材料を備えたガス発生装置であって、
ガス発生材料は、p型不純物を含有する第1半導体材料層とn型不純物を含有する第2半導体材料層とが積層されて成り、第1半導体材料層におけるバレンスバンドと第2半導体材料層におけるコンダクションバンドとがエネルギー的に一致するヘテロ接合を有し、
第1半導体材料層の溶液との接触表面から水素ガスが生成し、
第2半導体材料層の溶液との接触表面から酸素ガスが生成するガス発生装置。
【請求項2】
第1半導体材料層は、シリコン又は酸化白金から成り、
第2半導体材料層は、InGaN、酸化鉄又は酸化銅から成る請求項1に記載のガス発生装置。
【請求項3】
第1半導体材料層はシリコンから成り、
第2半導体材料層はInxGa1-xN(但し、x≧0.4)から成る請求項1に記載のガス発生装置。
【請求項4】
第1半導体材料層と第2半導体材料層との界面と対向する第1半導体材料層の表面から第1半導体材料層に光が入射し、第1半導体材料層と第2半導体材料層との界面と対向する第2半導体材料層の表面から第2半導体材料層に光が入射する請求項1に記載のガス発生装置。
【請求項5】
外部からの光を第1半導体材料層に入射させる第1光反射部材、及び、第2半導体材料層に入射させる第2光反射部材を更に備えている請求項4に記載のガス発生装置。
【請求項6】
第1半導体材料層及び第2半導体材料層の内の一方の半導体材料層上に、他方の半導体材料層が隙間を空けて形成されており、
第1半導体材料層と第2半導体材料層との界面と対向する他方の半導体材料層の表面から他方の半導体材料層に光が入射し、第1半導体材料層と第2半導体材料層との界面に対応する露出した一方の半導体材料層の表面から一方の半導体材料層に光が入射する請求項1に記載のガス発生装置。
【請求項7】
他方の半導体材料層と他方の半導体材料層との間に露出した一方の半導体材料層の表面には保護膜が形成されている請求項6に記載のガス発生装置。
【請求項8】
一方の半導体材料層は第1半導体材料層であり、
他方の半導体材料層は第2半導体材料層である請求項6に記載のガス発生装置。
【請求項9】
第2半導体材料層は薄膜状である請求項1に記載のガス発生装置。
【請求項10】
第2半導体材料層の溶液との接触表面には、パターニングされた金属層及び第2半導体材料層保護膜が形成されており、
第2半導体材料層保護膜は、パターニングされた金属層の間に位置する第2半導体材料層の溶液との接触表面の部分に形成されている請求項9に記載のガス発生装置。
【請求項11】
第2半導体材料層は微粒子の集合体から成る請求項1に記載のガス発生装置。
【請求項12】
p型不純物を含有する第1半導体材料層とn型不純物を含有する第2半導体材料層とが積層されて成り、第1半導体材料層におけるバレンスバンドと第2半導体材料層におけるコンダクションバンドとがエネルギー的に一致するヘテロ接合を有し、
第1半導体材料層及び第2半導体材料層のそれぞれの表面から異なるガスが生成するガス発生材料。
【請求項13】
第1半導体材料層は、シリコン又は酸化白金から成り、
第2半導体材料層は、InGaN、酸化鉄又は酸化銅から成る請求項12に記載のガス発生材料。
【請求項14】
第1半導体材料層はシリコンから成り、
第2半導体材料層はInxGa1-xN(但し、x≧0.4)から成る請求項12に記載のガス発生材料。
【請求項15】
第1半導体材料層と第2半導体材料層との界面と対向する第1半導体材料層の表面から第1半導体材料層に光が入射し、第1半導体材料層と第2半導体材料層との界面と対向する第2半導体材料層の表面から第2半導体材料層に光が入射する請求項12に記載のガス発生材料。
【請求項16】
第1半導体材料層及び第2半導体材料層の内の一方の半導体材料層上に、他方の半導体材料層が隙間を空けて形成されており、
第1半導体材料層と第2半導体材料層との界面と対向する他方の半導体材料層の表面から他方の半導体材料層に光が入射し、第1半導体材料層と第2半導体材料層との界面に対応する露出した一方の半導体材料層の表面から一方の半導体材料層に光が入射する請求項12に記載のガス発生材料。
【請求項17】
他方の半導体材料層と他方の半導体材料層との間に露出した一方の半導体材料層の表面には保護膜が形成されている請求項16に記載のガス発生材料。
【請求項18】
第2半導体材料層は薄膜状である請求項12に記載のガス発生材料。
【請求項19】
第2半導体材料層の溶液との接触表面には、パターニングされた金属層及び第2半導体材料層保護膜が形成されており、
第2半導体材料層保護膜は、パターニングされた金属層の間に位置する第2半導体材料層の溶液との接触表面の部分に形成されている請求項18に記載のガス発生材料。
【請求項20】
第2半導体材料層は微粒子の集合体から成る請求項12に記載のガス発生材料。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−260029(P2010−260029A)
【公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−114810(P2009−114810)
【出願日】平成21年5月11日(2009.5.11)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】