説明

ガス調理器

【課題】グリル調理やオーブン調理を行うための加熱庫を備えたガス調理器、特に、加熱庫内の火災を未然に防止する過熱防止機能を備えたガス調理器を提供する。
【解決手段】食材を収容する加熱庫30と、加熱庫内の食材Fを加熱するグリルバーナ32a,32bと、食材Fから加熱庫内へ飛散した油の発火を検知する発火検知器と、発火検知器が前記発火を検知した場合にグリルバーナの燃焼量の低下動作を実行する過熱防止手段とを備えたガス調理器において発火検知器は、加熱庫30内に配設されたフレームロッド35a,35bの出力に基づいて発火を検知することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グリル調理やオーブン調理を行うための加熱庫を備えたガス調理器、特に、上記加熱庫内の火災を未然に防止する過熱防止機能を備えたガス調理器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
バーナから放出されるガスの燃焼炎の輻射熱によって食材を直接的に加熱するグリル調理や上記燃焼炎によって生じる対流熱で食材を加熱するオーブン調理(以下、総称して「加熱調理」という)を行うための加熱庫を備えたガス調理器では、上記加熱調理を行っている間に、加熱庫内が過熱状態になった場合は、食材表面の油や食材から滴下してグリルパン上に回収された油が発火する現象、所謂、庫内火災を引き起こす恐れがある。
【0003】
かかる点を考慮して、従来の一般的なガス調理器は、温度センサによって加熱庫内の雰囲気温度を監視し、この温度センサの出力値が予め設定された基準値を超えた場合にバーナへのガスの供給を強制的に遮断させる過熱防止機能を備えている。
【0004】
しかしながら、上記のものでは、加熱庫内の雰囲気温度の違いから正常状態と過熱状態とを判定する構成であるから、加熱庫内が過熱状態であると判定する基準値の設定によっては、正常状態であるにもかかわらず過熱防止機能が誤動作するという懸念がある。
【0005】
また、魚や鶏肉のような脂分を多く含む食材の加熱調理を行う場合、加熱庫内が過熱状態になる前に、加熱中に食材から加熱庫内へ飛散した油が上記燃焼炎によって瞬間的に発火する現象(以下、「瞬間発火現象」という)を生じるが、この瞬間発火現象が繰り返し発生すると、加熱庫内が過熱状態でなくとも、最終的には食材表面やグリルパン上の油に火移りして庫内火災を引き起こす恐れもある。
【0006】
そこで、上記ガス調理器の改良案として、瞬間発火現象が発生した際の加熱庫内の瞬間的な温度上昇を温度センサによって監視し、この温度センサの出力変化量が予め設定された基準値を超えた場合にバーナへのガスの供給を強制的に遮断させる方法が考えられる。
【0007】
図5は、上記改良案を採用したガス調理器7の概略構成図であり、本体ケース70の上部には、ガスの燃焼炎によって本体ケース70上面に載置された鍋やフライパン等を加熱するコンロバーナ82が設けられている。また、本体ケース70内には、食材Fの加熱調理を行うための加熱庫90が設けられている。
【0008】
加熱庫90の上部には、その加熱庫90内へ収容された食材Fをガスの燃焼炎によって加熱するグリルバーナ92が配設されている。また、加熱庫90内の底部には、上記食材Fから滴下する油を回収するグリルパン93が収容されており、このグリルパン93の上面には、食材Fを載せる焼き網930が載置されている。
【0009】
さらに、加熱庫90内の後部には、加熱庫90内の雰囲気温度を検知する温度センサ95が設けられており、グリルバーナ92の燃焼動作を制御する図示しない制御回路によってこの温度センサ95の出力値が監視されている。また、上記温度センサ95は、グリルバーナ95から放出されるガスの燃焼炎の輻射熱を遮断するためのカバー950で覆われている。
【0010】
上記制御回路には、グリルバーナ92の燃焼中における単位時間経過前後の温度センサ95の出力値を比較し、この出力値の差、即ち、出力変化量が上記瞬間発火現象の発生を示す基準値を超えた場合にグリルバーナ92へのガスの供給を遮断する過熱防止動作の実行プログラムが組み込まれている。
【0011】
従って、このものでは、食材Fの加熱調理実行中に加熱庫90内で瞬間発火現象を生じ、温度センサ95の出力変化量が上記基準値を超えた場合には、上記過熱防止動作の実行プログラムによってグリルバーナ92へのガスの供給を遮断し、グリルバーナ92の燃焼を停止させる。これにより、加熱庫90内の過熱や瞬間発火現象による庫内火災を未然に回避できる。
【特許文献1】特開2007−75175号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、上記ガス調理器7では、加熱庫90内へ飛散した油が発火した際の比較的短時間の温度変化を温度センサ95によって検知する構成であるから、温度センサ95を覆うカバー950や加熱庫90内の対流熱の影響を受けて、温度センサ95で上記温度変化を正確に捉えきれず、その結果、過熱防止動作が正確に実行されない可能性がある。
【0013】
本発明は係る点に鑑みてなされたもので、
『食材を収容する加熱庫と、加熱庫内の食材を加熱するグリルバーナと、食材から加熱庫内へ飛散した油の発火を検知する発火検知器と、発火検知器が前記発火を検知した場合にグリルバーナの燃焼量の低下動作を実行する過熱防止手段とを備えたガス調理器』において、過熱防止動作の正確性の向上を図ることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するための請求項1に係る発明の技術的手段は、
『前記発火検知器は、加熱庫内に配設されたフレームロッドの出力に基づいて発火を検知することを特徴とする』ものである。
このものでは、加熱調理中に食材から加熱庫内へ飛散した油が、グリルバーナから放出されたガスの燃焼炎によって発火した際、その発火した油の炎を加熱庫内に配設されたフレームロッドによって直接的に検知するから、上記発火の現象を正確に捉えることが可能である。
【0015】
請求項2に係る発明の技術的手段は、
前記請求項1において、
『前記過熱防止手段は、発火検知器による前記発火の検知回数が所定回数に到達した時点で前記燃焼量の低下動作を実行する』ことである。
このものでは、発火検知器による上記発火の検知回数が所定回数に到達した時点で、グリルバーナの燃焼量を低下させるから、食材からの油の飛散量が少なく、庫内火災を生じる可能性が低い正常状態であるにもかかわらずグリルバーナの燃焼量が低下されてしまう、所謂、誤判定を防止できる。
【0016】
請求項3に係る発明の技術的手段は、
前記請求項1において、
『前記過熱防止手段は、発火検知器による前記発火の単位時間あたりの検知回数が所定回数以上になった時点で前記燃焼量の低下動作を実行する』ことである。
このものでは、発火検知器による上記発火の単位時間あたりの検知回数が所定回数になった場合、即ち、単位時間あたりの油の飛散量が増加し、庫内火災を生じる可能性が高くなった場合にグリルバーナの燃焼量を低下させる。これにより、庫内火災を生じる可能性が低い正常状態であるにもかかわらずグリルバーナの燃焼量が低下されてしまう、所謂、誤判定を防止できる。
【0017】
請求項4に係る発明の技術的手段は、
前記請求項1から3のいずれかにおいて、
『加熱庫内の雰囲気温度を検知する温度センサを備え、
前記過熱防止手段は、前記温度センサの検知温度が所定の基準温度以上である条件下において、発火検知器による前記発火の検知の有無を判定する』ことである。
このものでは、加熱庫内の雰囲気温度が所定の基準温度以上である条件下、即ち、食材や加熱庫内の温度が高く、上記発火した油の炎がそれら食材表面や加熱庫内の油へ火移りしやすい条件下において、発火検知器による発火の検知の有無を判定するから、庫内火災を生じる可能性が低い正常状態であるにもかかわらずグリルバーナの燃焼量が低下されてしまう、所謂、誤判定を防止できる。
【0018】
請求項5に係る発明の技術的手段は、
前記請求項1から4のいずれかにおいて、
『加熱庫内から本体ケース外へ繋がる排気通路の入口側に前記発火検知器を設けた』ことである。
食材から加熱庫内へ飛散した油は、その加熱庫内の空気とともに排気通路の入口側へ導かれるが、このものでは、上記排気通路の入口側に発火検知器であるフレームロッドを設けたことによって、発火した油の炎がそのフレームロッドへ効率良く接触する。従って、上記発火の現象を一層確実に捉えることが可能である。
【0019】
請求項6に係る発明の技術的手段は、
前記請求項1から5のいずれかにおいて、
『加熱庫の正面開口部に前記発火検知器を設けた』ことである。
加熱庫内へ飛散した油は、比較的酸素濃度の高い加熱庫の正面開口部側で発火しやすいが、このものでは、上記加熱庫の正面開口部に発火検知器であるフレームロッドを設けたことによって、発火した油の炎がそのフレームロッドへ効率良く接触する。従って、上記発火の現象を一層確実に捉えることが可能である。
【発明の効果】
【0020】
本発明は、上記構成であるから次の特有の効果を有する。
請求項1に係る発明では、加熱庫内へ飛散した油の発火をフレームロッドによって直接検知することで、上記発火の現象を正確に捉えることが可能であるから、過熱防止動作の正確性が向上する。
【0021】
請求項2および請求項3に係る発明では、油の飛散量が増加するのを待ってから過熱防止動作を実行する構成にしたことによって、誤判定を防止できるから、過熱防止動作の正確性が一層向上する。
【0022】
請求項4に係る発明では、加熱庫内の雰囲気温度が高くなった状態で上記発火の検知の有無を判定する構成にしたことによって、誤判定を防止できるから、過熱防止動作の正確性が一層向上する。
【0023】
請求項5および請求項6に係る発明では、発火した油の炎が発火検知器であるフレームロッドへ効率良く接触する構成にしたことによって、上記発火の現象を一層確実に捉えることが可能であるから、過熱防止動作の正確性が一層向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
次に、上記した本発明を実施するための最良の形態について、添付図面を参照しながら詳述する。
図1は、本発明の実施の形態に係るガス調理器1の縦断面概略図であり、図2は、そのガス調理器1の回路構成概略図である。以下、各部の詳細を説明する。
【0025】
図1に示すガス調理器1は、システムキッチンのカウンタトップC内に埋設して使用するビルトイン式のガスコンロであり、本体ケース10を上記カウンタトップCに開設された取付口C1へ上方から落とし込み状態で装着される本体ケース10と、この本体ケース10の上面側を覆う天板11とでその外郭のケーシングが構成されている。
【0026】
天板11の上面には、鍋やフライパン等の調理器具を支持する五徳21が載置されているとともに、上記五徳21の中央には、ガスの燃焼炎によって上記調理器具を加熱するコンロバーナ22が配設されている。
【0027】
一方、本体ケース10の正面は、カウンタトップCの正面側下方に開設された窓孔C2へ臨んでおり、この本体ケース10の正面側には、後述する加熱庫30の内部空間へ繋がるグリル開口部100を覆うグリル扉12と、後述するグリルバーナ32a,32bの点消火機能および火力調整機能を兼備する操作ボタン13と、加熱庫30が過熱状態であることを点灯表示するエラーランプ14と、加熱庫30が過熱状態であることを音声出力するスピーカ15とが配設されている。
【0028】
本体ケース10内には、食材Fの加熱調理を行うための加熱庫30が形成されており、この加熱庫30の正面側に上記グリル開口部100が開設されている。また、本体ケース10の後部には、加熱庫30の内部空間から天板11の上面後方に開設された排気孔110へ繋がる排気通路31が形成されている。
【0029】
加熱庫30の上部および両側底部には、その加熱庫30内へ収容された食材Fをガスの燃焼炎によって加熱するグリルバーナ32a,32bが配設されている。この加熱庫30の上部に配設される上火側のグリルバーナ32aは、加熱庫30の天井を覆うように形成されており、その炎孔321は後述する焼き網330の上面側に向かって下方へ開放している。一方、加熱庫30の両側底部に配設される下火側のグリルバーナ32bは、加熱庫30の側壁に沿って前後へ延びるように形成されており、その炎孔322は後述する焼き網330の下面側中央に向かって斜め上方へ開放している。
【0030】
加熱庫30内の底部には、上記食材Fから滴下する油を回収するグリルパン33が収容されている。上記グリルパン33は、グリル扉12の背面から加熱庫30内へ延びる支持アーム120に載置されており、グリル扉12を本体ケース10の正面側へスライド開放させるのに伴って、グリル開口部100から本体ケース10外へ引き出される。
【0031】
また、グリルパン33の上面には、焼き網330が載置されており、食材Fはこの焼き網330の上面に載せられ、上記グリルバーナ32a,32bから放出されるガスの燃焼炎によって加熱される。従って、食材Fから滲出した油は、焼き網330の隙間を通ってグリルパン33上へ滴下する。
【0032】
加熱庫30の構成壁300で且つ上記排気通路31の入口側近傍の後壁内側には、加熱庫30内の雰囲気温度を検知する温度センサ34と、食材Fから加熱庫12内へ飛散した油の発火を検知するフレームロッド35aとが配設されている。また、加熱庫30の構成壁300で且つ上記グリル開口部110近傍の両側壁内側にも、上記油の発火を検知するフレームロッド35bが配設されている。
【0033】
加熱庫30の構成壁300およびフレームロッド35a,35bは、導電性の高い金属材料で形成されており、それら加熱庫30の構成壁300とフレームロッド35a,35bとの相互間は、導電性の低いセラミック材料で形成された碍子350によって絶縁状態で保持されている。
【0034】
また、本体ケース10内には、図2に示すように、ガス供給元から送り込まれたガスをグリルバーナ32a,32bへ導くガス管路Gが配設されている。上記ガス管路Gの上流側から分岐して、上火側のグリルバーナ32aへ繋がる下流側の管路には、そのグリルバーナ32aへのガスの供給を遮断可能な元弁V1と、グリルバーナ32aから放出されるガス量を調整可能な火力調整弁V2とがこの順序で上流側より配設されている。一方、上記ガス管路Gの上流側から分岐して、下火側のグリルバーナ32bへ繋がる下流側の管路にも、そのグリルバーナ32bへのガスの供給を遮断可能な元弁V1と、グリルバーナ32bから放出されるガス量を調整可能な火力調整弁V2とがこの順序で上流側より配設されている。
【0035】
さらに、本体ケース10内には、加熱庫30内での食材Fの加熱調理を制御する制御回路40が配設されており、上述の操作ボタン13、エラーランプ14、スピーカ15、温度センサ34、フレームロッド35a,35b、元弁V1,V1および火力調整弁V2,V2は、この制御回路40へ電気的に接続されている。
【0036】
一方、加熱庫30の構成壁300には、電気配線を接続するための接続端子36が設けられており、フレームロッド35a,35bは、制御回路40を介して上記接続端子36へ電気的に接続されている。また、フレームロッド35a,35bおよび接続端子36相互間には、制御回路40を通じて所定の交流電圧(例えば、15V)が印加されており、加熱庫30の構成壁300とフレームロッド35a,35bとの間に炎が接触した場合には、その炎の整流作用によって、フレームロッド35a,35bから加熱庫30の構成壁300への微弱な直流電流(例えば、5μA)を生じる。制御回路40は、この直流電流をフレームロッド35a,35bからの発火検知出力として監視する。
【0037】
尚、上記「フレームロッド35a,35bと加熱庫30の構成壁300との間に生じる直流電流を発火検知出力として監視する」制御回路40の機能部が、既述請求項1の発明特定事項としての「発火検知器」に対応する。
【0038】
上記制御回路40には、操作ボタン13による点消火操作に応じてグリルバーナ32a,32bを点消火させる燃焼動作や、フレームロッド35a,35bからの発火検知出力があった際にグリルバーナ32a,32bの燃焼量を低下させる過熱防止動作、上記強制消火する際にエラーランプ14およびスピーカ15によって加熱庫30が過熱状態であることを報知させるエラー報知動作等の各制御動作を実行するプログラム(図3の作動フローチャートを実行する制御プログラム)を格納したマイクロコンピュータが組み込まれている。
【0039】
[制御動作の実際]
次に、制御回路40による上記各制御動作を、図3の作動フローチャートに従って説明する。
尚、ガス調理器1が使用される前の初期状態において、制御回路40の図示しないメモリへ記憶された発火回数Nおよび監視時間M(後述する)は、予め「0」にリセットされている。
【0040】
操作ボタン13が押されると、火力調整弁V2,V2が予め設定された点火開度まで開放されるとともに、操作ボタン13の操作に連動してオンオフする図示しない点消火スイッチがオンになる。そして、上記点消火スイッチのオンが確認されると、元弁V1,V1を開放させてグリルバーナ32a,32bへガスを供給すると同時に、グリルバーナ32a,32bの各炎孔321,322の近傍に設けられた図示しない点火電極へ高電圧を印加して火花放電させる。これにより、グリルバーナ32a,32bが点火され、加熱庫30内における食材Fの加熱調理が開始される(ST1〜2)。
【0041】
グリルバーナ32a,32bが点火されると、温度センサ34の出力値が所定の基準温度に対応する値Ts以上であるか否か、即ち、加熱庫30内の温度(以下、「庫内温度」という)Tが所定の基準温度(例えば、90℃)Ts以上であるか否かの監視を開始する(ST3)。
【0042】
この間に、操作ボタン13が再び押されて、図示しない点消火スイッチがオフになった場合は、元弁V1,V1を閉塞させてグリルバーナ32a,32bへのガスの供給を遮断する。これにより、グリルバーナ32a,32bが消火され、上記加熱調理が終了する。尚、上記点消火スイッチがオフになった場合は、後述する発火回数Nおよび監視時間Mを「0」にリセットする(ST4〜6)。
【0043】
一方、ステップST3にて、庫内温度Tが所定の基準温度Ts以上になった場合は、フレームロッド35a,35bから上記発火検知出力があったか否かを判定し、上記発火検知出力がなければ、再び、上述したステップST4以降の動作を繰り返す(ST7)。
【0044】
そして、庫内温度Tが所定の基準温度Ts以上である間に、フレームロッド35a,35bから上記発火検知出力があった場合、具体的には、魚や鶏肉のような脂分を多く含む食材Fの加熱調理中に、食材Fから加熱庫30内へ飛散してグリルバーナ32a,32bの燃焼炎によって瞬間的に発火した油の炎が、例えば加熱庫30の構成壁300である後壁とフレームロッド35aとの間に接触し、上述の直流電流が発生した場合は、その直流電流の発生回数、即ち、発火検知出力があった回数(以下、「発火回数」という)Nを制御回路40に組み込まれた図示しないメモリへ記憶する(ST8)。
【0045】
また、上記メモリに記憶された発火回数Nが1回であることを確認した後、制御回路40に組み込まれた図示しないタイマを作動させ、上記発火が検知された時点からの経過時間(以下、「監視時間」という)Mの計測を開始する(ST9〜10)。
【0046】
さらに、上記発火回数Nが予め設定された基準回数(例えば、5回)Nsになったか否かを確認し、発火回数Nがまだ基準回数Nsでない場合は、上記監視時間Mが予め設定された単位時間(例えば、5秒)Msに到達したか否かを確認する。そして、監視時間Mが単位時間Msに到達していなければ、再び、上述したステップST4以降の動作を実行する(ST11〜12)。
【0047】
一方、ステップST12にて、監視時間Mが単位時間Msに到達した場合には、メモリに記憶された発火回数Nおよび監視時間Mを「0」にリセットした上で、ステップST4以降の動作を実行する。即ち、単位時間Ms内に発火回数Nが基準回数Nsに達しなければ、食材Fからの油の飛散量が未だ少ない状態であると判定し、タイマをリセットして発火回数Nをカウントしなおす。そして、再び、上述したステップST4以降の動作を実行する(ST13)。
【0048】
上述したステップST3からST4、ステップST7からST13の動作を繰り返す間に、ステップST11にて、発火回数Nが基準回数Nsに達すれば、加熱庫30が過熱状態であることをエラーランプ14の点灯表示やスピーカ15からの音声出力によって報知するとともに、上記ステップST5およびST6の動作を実行して、グリルバーナ32a,32bを強制的に消火させる。即ち、監視時間Mが単位時間Msに到達するまでの間に、発火回数Nが基準回数Nsになった場合は、その時点でグリルバーナ32a,32bの燃焼量を低下させる動作(ここでは、元弁V1,V1を閉塞させてグリルバーナ32a,32bへのガスの供給を遮断する動作)を実行する(ST14,ST5〜6)。
【0049】
尚、上記ステップST3からST13における「フレームロッド35a,35bから発火検知出力があった場合にグリルバーナ32a,32bの燃焼量を低下させる動作」を実行する制御回路40の機能部が、既述請求項1から4の発明特定事項としての「過熱防止手段」に対応する。
【0050】
このものでは、加熱調理中に食材Fから加熱庫30内へ飛散し、グリルバーナ32a,32bの燃焼炎によって発火した油の炎を、加熱庫30内に配設されたフレームロッド35a,35bによって直接的に検知するから、上記発火の現象を正確に捉えることが可能である。これにより、グリルバーナ32a,32bの燃焼量を強制的に低下(ここでは、消火)させる過熱防止動作の正確性が向上する。
【0051】
また、上記油の発火回数Nが予め設定された基準回数Nsより少ない間は、庫内火災を生じる可能性が低い状態であるとして上記過熱防止動作を行わず、油の飛散量が増加して発火回数Nが基準回数Nsに到達した時点で過熱防止動作が実行される。これにより、例えば、グリルバーナ32a,32bを点火した直後にその燃焼炎がフレームロッド35a,35bへ飛び火する現象を、加熱庫30が過熱状態であると誤判定されるのを防止できるし、油の飛散量が少なく、加熱庫30内の食材F表面やグリルパン33上の油へ火移りする恐れのない正常状態であるにもかかわらず、加熱庫30が過熱状態であると誤判定されるのも防止できる。その結果、過熱防止動作の正確性が一層向上する。
【0052】
さらに、庫内温度Tが所定の基準温度Tsより低く、上記発火した油の炎がその加熱庫30内の食材F表面やグリルパン33上の油へ火移りしにくい状態である間は、庫内火災を生じる可能性が低い状態であるとして上記発火検知出力の有無を判定せず、庫内温度Tが所定の基準温度Ts以上になってから上記発火検知出力の有無を判定するから、上述の誤判定を一層効果的に防止できる。その結果、過熱防止動作の正確性が一層向上する。
【0053】
また、フレームロッド35a,35bを、上記油の発火が検知されやすい排気通路31の入口側近傍とグリル開口部110近傍に配設したことによって、発火した油の炎がフレームロッド35a,35bへ効率良く接触し、その結果、上記発火の現象を一層確実に捉えることが可能であるから、過熱防止動作の正確性が一層向上する。
【0054】
[その他]
尚、上記実施の形態では、フレームロッド35a,35bから発火検知出力があった場合は、元弁V1,V1を閉塞させることでグリルバーナ32a,32bの燃焼量を低下(ここでは、消火)させたが、火力調整弁V2,V2を所定の最小開度まで(所謂、燃焼炎が「小火」の状態になるまで)絞ることでグリルバーナ32a,32bの燃焼量を低下させても良い。このものでは、加熱庫30が過熱状態にならない範囲において、食材Fの加熱調理を継続できるから、使い勝手が良い。
【0055】
また、上記実施の形態では、監視時間Mが単位時間Msに到達するまでの間に、発火回数Nが基準回数Nsになった時点でグリルバーナ32a,32bの燃焼量を低下(ここでは、消火)させるものを説明したが、監視時間Mが単位時間Msに到達した時点で発火回数Nが基準回数Ns以上であれば、グリルバーナ32a,32bの燃焼量を低下させる構成にしても良いし、タイマによる経過時間の監視をしないで、発火回数Nが基準回数Nsに到達した時点でグリルバーナ32a,32bの燃焼量を低下させる構成にしても良い。
【0056】
さらに、上記実施の形態では、発火回数Nが1回になった時点からタイマをスタートさせたが、庫内温度Tが基準温度Ts以上になった時点からタイマをスタートさせても良いし、グリルバーナ32a,32bが点火された時点からタイマをスタートさせても良い。
【0057】
また、上記実施の形態では、温度センサ34によって加熱庫30内の温度を監視し、その庫内温度Tが基準温度Ts以上である条件下において、上記発火検知出力の監視が行われるものを説明したが、庫内温度Tが基準温度Ts以上であるか否かにかかわらず、グリルバーナ32a,32bが点火された時点から上記発火検知出力の監視を行っても良い。
【0058】
上記実施の形態におけるフレームロッド35a,35bは、油の発火が検知されやすい排気通路31の入口側近傍とグリル開口部110近傍に配設したが、グリルバーナ32a,32bからの燃焼炎と接触しない位置であれば、グリルバーナ32a,32bの炎孔321,322近傍に配設しても良いし、加熱庫30の構成壁300の上壁や側壁、底壁の内側の一箇所もしくは複数個所に配設しても良い。
【0059】
また、上記実施の形態におけるフレームロッド35a,35bは、制御部40を介して加熱庫30の構成壁300と電気的に接続したが、図4に示すように、導電性の高い金属材料で形成したアース端子37を各碍子350に対してフレームロッド35a,35bとの絶縁状態を保持した状態で挿設し、このアース端子37と制御回路40を介して電気的に接続させても良い。
【0060】
このものでは、フレームロッド35a,35bと上記アース端子37との間に炎が接触した場合に、その炎の整流作用によって生じるフレームロッド35a,35bからアース端子37への直流電流を発火検知出力として制御回路40で監視する。その結果、上記実施の形態と同様の作用効果が発揮される。
尚、この構成においては「フレームロッド35a,35bとアース端子37との間に生じる直流電流を発火検知出力として監視する」制御回路40の機能部が、既述請求項1の発明特定事項としての「発火検知器」に対応する。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明の実施の形態に係るガス調理器1の縦断面概略図
【図2】本発明の実施の形態に係るガス調理器1の回路構成概略図
【図3】本発明の実施の形態に係るガス調理器1の過熱防止動作の作動フローチャート
【図4】本発明の他の実施形態に係るガス調理器1のフレームロッド35a,35bの説明図
【図5】従来のガス調理器7の縦断面概略図
【符号の説明】
【0062】
1・・・ガス調理器
30・・・加熱庫
32a,32b・・・グリルバーナ
35a,35b・・・フレームロッド
F・・・食材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
食材を収容する加熱庫と、加熱庫内の食材を加熱するグリルバーナと、食材から加熱庫内へ飛散した油の発火を検知する発火検知器と、発火検知器が前記発火を検知した場合にグリルバーナの燃焼量の低下動作を実行する過熱防止手段とを備えたガス調理器において、
前記発火検知器は、加熱庫内に配設されたフレームロッドの出力に基づいて発火を検知することを特徴とする、ガス調理器。
【請求項2】
請求項1に記載のガス調理器において、
前記過熱防止手段は、発火検知器による前記発火の検知回数が所定回数に到達した時点で前記燃焼量の低下動作を実行する、ガス調理器。
【請求項3】
請求項1に記載のガス調理器において、
前記過熱防止手段は、発火検知器による前記発火の単位時間あたりの検知回数が所定回数以上になった時点で前記燃焼量の低下動作を実行する、ガス調理器。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載のガス調理器において、
加熱庫内の雰囲気温度を検知する温度センサを備え、
前記過熱防止手段は、前記温度センサの検知温度が所定の基準温度以上である条件下において、発火検知器による前記発火の検知の有無を判定する、ガス調理器。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載のガス調理器において、
加熱庫内から本体ケース外へ繋がる排気通路の入口側に前記発火検知器を設けた、ガス調理器。
【請求項6】
請求項1から5のいずれかに記載のガス調理器において、
加熱庫の正面開口部に前記発火検知器を設けた、ガス調理器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−178387(P2009−178387A)
【公開日】平成21年8月13日(2009.8.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−20844(P2008−20844)
【出願日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【出願人】(000115854)リンナイ株式会社 (1,534)
【Fターム(参考)】