説明

ガス貯蔵システム

【課題】燃料ガス貯蔵装置内の圧力が上昇する場合において、燃料ガス貯蔵装置内の圧力を低減させることができる技術を提供する。
【解決手段】燃料ガスを貯蔵する燃料ガス貯蔵手段と、前記燃料ガス貯蔵手段の状態を監視する監視手段と、前記ガス貯蔵手段を冷却する冷却手段と、前記監視手段によって監視される前記燃料ガス貯蔵手段の状態に応じて、前記冷却手段を制御する制御手段と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス貯蔵システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、二酸化炭素の低減を図るため、自動車等の燃料として水素ガス、LPG(液化石油)ガス、CNG(圧縮天然)ガス等が用いられている。これらの燃料ガスは、車両に設けられたガスタンクに高圧化された状態で貯蔵されているのが一般的である。
【0003】
例えば、水素ガスを燃料とする燃料電池自動車についてみると、火災等の温度上昇によって水素ガスタンクが破損した場合、水素ガス漏れが発生する虞がある。そこで、所定の温度以上で溶ける材料によって形成される溶栓弁を水素ガスタンクに設ける技術が知られている(例えば、特許文献1参照。)。この技術によれば、溶栓弁が溶けることで、水素ガスタンク内の水素ガスが放出されるので、水素ガスタンク内の圧力を低減させることができる。
【0004】
溶栓弁は、所定の温度(例えば105℃)で溶けるように設定されているが、例えば水素吸蔵合金を備える水素ガスタンクにおいては、吸蔵された水素が熱によって放出されることで、水素ガスタンク内の圧力が急激に上昇する虞がある。このような場合、溶栓弁が溶ける前に水素ガスタンクが破損してしまう虞がある。そこで、温度感応式及び圧力感応式の弁を水素ガスタンクに設ける技術が知られている(例えば、特許文献2参照。)この技術によれば、水素ガスタンクの温度上昇又は圧力上昇に応じてそれぞれの弁から水素ガスタンク内の圧力が外部に逃がされるため、水素ガスタンク内の圧力を低減させることができる。その結果、水素ガスタンクの破損を防止することができる。
【特許文献1】特開2002−195499号公報
【特許文献2】特開2004−11765号公報
【特許文献3】特開2005−69417号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来のいわゆる溶栓弁によれば、溶栓弁が所定の温度で溶けることで、水素ガスタンク内の水素ガスが放出されるので、水素ガスタンク内の圧力を低減させることができる。しかしながら、例えば水素吸蔵合金を備える水素ガスタンクにおいては、吸蔵された水素が熱によって放出されることで、水素ガスタンク内の圧力が急激に上昇する虞がある。その結果、溶栓弁が溶ける前に水素ガスタンクが破損してしまう虞があった。
【0006】
また、温度感応式と圧力感応式の弁を有する水素ガスタンクに関する技術によれば、それぞれの弁から水素ガスを外部に放出させることができるので、高圧ガスタンク内の圧力を低減させることができる。しかしながら、例えば、温度感応式の弁が高温部から離れた位置にある場合には、弁の開放が遅れる虞がある。また、温度感応式の弁の取り付け位置によっては、例えば周辺装置からの発熱による温度上昇等、本来反応する必要が無い場合の熱に反応することで水素ガスを放出する虞がある。そこで、これらの問題を解消した、水素ガスタンク内の圧力低減をできる技術の開発が求められていた。
【0007】
本発明では、上記した問題に鑑み、燃料ガス貯蔵装置内の圧力が上昇する場合において、燃料ガス貯蔵装置内の圧力を低減させることができる技術を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明では、上述した課題を解決するため、以下の手段を採用した。すなわち、本発明は燃料ガスを貯蔵する燃料ガス貯蔵手段と、前記燃料ガス貯蔵手段の状態を監視する監視手段と、前記ガス貯蔵手段を冷却する冷却手段と、前記監視手段によって監視される前記燃料ガス貯蔵手段の状態に応じて、前記冷却手段を制御する制御手段と、を備える。
【0009】
本発明によれば、制御手段が冷却手段を制御することでガス貯蔵手段が冷却されるので、燃料ガス貯蔵装置内の圧力が上昇する場合において、燃料ガス貯蔵装置内の圧力を低減させることができる。その結果、燃料ガス貯蔵手段の破損が防止され、安全が確保される。
【0010】
ガス貯蔵手段は、燃料ガスを貯蔵するものであり、燃料ガスには、燃料電池自動車の燃料である水素ガス、ガス燃料自動車の燃料であるLPG(液化石油ガス)、CNG(圧縮天然ガス)が例示される。なお、燃料ガスの貯蔵方法として、高圧状態で燃料ガスを貯蔵可能する高圧ガスタンクが知られている。また、燃料ガスとして水素ガスを貯蔵する方法として、ガスタンク内の水素吸蔵合金(Metal Hydride)に吸蔵させて貯蔵する高圧MH
タンクが知られている。
【0011】
本発明が適用可能な燃料ガスや貯蔵方法は特に限定されるものでないが、上記のうち高圧MHタンクに好適に用いることができる。高圧MHタンクでは、例えば火災等によって外部から急激な熱が加えられた場合、温度上昇による体積膨張・圧力上昇と水素吸蔵合金からの水素放出が同時に起こることから高圧MHタンク内の圧力上昇速度が極めて速い。すなわち、火災等によって外部から熱が加えられた場合、高圧MHタンクは、通常の高圧タンクよりもタンク内の圧力上昇速度が速い。高圧タンクでは、温度上昇に伴って圧力が増加するが(PV=nRT、Pは圧力、Vは体積、nはモル数、Rは気体定数、Tは絶対温度)、高圧MHタンクでは、温度上昇に伴って水素吸蔵合金から水素が放出される(水素モル数が増加)からである。従って、高圧MHタンクでは、例えば高圧MHタンクに従来のいわゆる溶栓弁が設けられている場合でも、溶栓弁が105℃といった所定の温度で溶け始める前にタンク内の圧力が急激に上昇し、ガスタンクが破損して水素漏れが発生するといった虞がある。しかし、本発明によれば、火災等による燃料ガス貯蔵手段の温度上昇や圧力上昇を監視手段によって監視し、燃料ガス貯蔵手段の状態に応じて、燃料ガス貯蔵手段を冷却手段によって効果的に冷却することができる。その結果、本発明によれば、火災時等においてタンク内の急激な圧力上昇が予想される高圧MHタンク内についても、タンク内の圧力を低減することができる。
【0012】
監視手段は、燃料ガス貯蔵手段の状態を監視するものである。監視手段には、各種センサが例示される。燃料ガス貯蔵手段の状態とは、燃料ガス貯蔵手段の冷却をする必要があるか否かを判断する際の基準となる要素である。すなわち、燃料ガス貯蔵手段の状態には、燃料ガス貯蔵手段の温度状態や圧力状態が例示される。
【0013】
冷却手段は、燃料ガス貯蔵手段を冷却することで、燃料ガス貯蔵手段内の圧力を低減できるものあればよい。例えば、冷却手段には、冷却ファン、ラジエタ等が例示でき、冷却性能を有するものであれば特に限定されない。なお、例えば燃料電池自動車には、このような冷却ファンやラジエタ、ウォーターポンプといった冷却設備が予め設けられている。従って、これら既設の冷却設備で冷却された冷媒(例えば冷却水)が流れる配管を用いて、冷却手段と燃料ガス貯蔵手段とを接続することで、燃料ガス貯蔵手段の冷却が可能となる。
【0014】
制御手段は、監視手段によって監視される前記燃料ガス貯蔵手段の状態に応じて、前記冷却手段を制御する。例えば、制御手段は、監視手段及び冷却手段と電気的に接続され、
監視手段で監視された燃料ガス貯蔵手段の温度状態や圧力状態に応じて冷却手段を制御する。
【0015】
ここで、本発明は、前記監視手段で監視される前記燃料ガス貯蔵手段の状態に基づいて、該燃料ガス貯蔵手段内の圧力を低減させる必要があるか否かを判断する判断手段を更に備え、前記制御手段は、前記判断手段が前記燃料ガス貯蔵手段内の圧力を低減させる必要があると判断した場合、前記冷却手段の冷却性能を向上させることで前記燃料ガス貯蔵手段内の圧力を低減させてもよい。
【0016】
本発明によれば、判断手段を備えることで、判断手段に基づく適格な制御が可能となる。なお、圧力を低減させる必要がある場合とは、火災等によって外部から熱が加えられることで、燃料ガス貯蔵手段内部の圧力が上昇し、燃料ガス貯蔵手段が破損する虞がある場合である。冷却性能を向上させるとは、燃料ガス貯蔵手段内の圧力を低減させるために、例えば冷却ファン等の冷却手段の出力を上げることであり、制御対象となる冷却手段によって具体的な制御は異なる。
【0017】
また、本発明において、前記監視手段は、前記燃料ガス貯蔵手段の周囲温度と該燃料ガス貯蔵手段内の温度である内部温度と該燃料ガス貯蔵手段内の圧力である内部圧力とのうち少なくとも何れか一つの状態を監視し、前記判断手段は、前記周囲温度と前記内部温度と前記内部圧力とのうち何れか一つが、それぞれに設けられた閾値を上回った場合に、前記燃料ガス貯蔵手段内の圧力を低減させる必要があると判断するようにしてもよい。
【0018】
監視手段で監視される燃料ガス貯蔵手段の状態には、燃料ガス貯蔵手段の周囲温度、燃料ガス貯蔵手段内の温度や圧力が含まれる。これらのうち、少なくともいずれか一つを監視すればよいが、全てを監視することでより正確に燃料ガス貯蔵手段の状態を把握することが可能となる。判断手段が判断する際の基準とする閾値は、周囲温度、内部温度、内部圧力のそれぞれに予め設定することが好ましい。閾値は、実験等によって、燃料ガス貯蔵手段の安全を確保できる値として適宜設定することができる。そして、いずれか一つの閾値を上回った場合に、判断手段が燃料ガス貯蔵手段内の圧力を低減させる必要があると判断し、判断結果に基づいて制御手段が冷却手段の冷却性能を向上させることで、燃料ガス貯蔵手段内の圧力を低減させることができる。その結果、燃料ガス貯蔵装置の破損を防止して安全を確保することができる。
【0019】
なお、上記発明では、閾値を上回った場合に燃料ガス貯蔵手段内の圧力を低減させることとしたが、上記閾値を上限閾値とすると、下限閾値を別途設け、下限閾値を下回った場合に、今まで行っていた燃料ガス貯蔵手段内の圧力を低減させるための制御を解除するにようにしてもよい。これにより、燃料ガス貯蔵装置内の圧力を一定の範囲内に保つことが可能となる。
【0020】
また、本発明において、前記燃料ガス貯蔵手段には、所定温度以上で溶けることで該燃料ガス貯蔵手段から燃料ガスを放出する溶栓弁が設けられ、前記判断手段は、前記溶栓弁が燃料ガスを放出することでは前記燃料ガス貯蔵手段内の圧力低減が十分に行えないと判断した場合に、前記燃料ガス貯蔵手段内の圧力を低減させる必要があると判断するようにしてもよい。
【0021】
溶栓弁から放出される燃料ガスの流量は、溶栓弁を形成する可溶合金の溶融温度、可溶合金が溶けることで形成される開口部の大きさに基づいて予め求めることができる。従って、溶栓弁毎に予め算出した溶栓弁で放出可能な燃料ガスの流量に基づいて、燃料ガス貯蔵手段内の圧力低減が可能であるか否かを判断することができる。これにより、溶栓弁では燃料ガス貯蔵手段の冷却が十分に行えない場合であっても、燃料ガス貯蔵手段内の圧力
を低減させることができる。換言すると、溶栓弁によって燃料ガス貯蔵手段内の圧力を低減させることができない範囲を冷却手段によって補うことが可能となる。
【0022】
また、本発明は、前記燃料ガス貯蔵手段から排出される燃料ガスを消費する燃料ガス消費手段を更に備え、前記制御手段は、前記冷却手段とともに、前記監視手段によって監視される前記燃料ガス貯蔵手段の状態に応じて、前記消費手段を制御してもよい。
【0023】
上記のように冷却手段によって燃料ガス貯蔵手段を冷却すること燃料ガス貯蔵手段内の圧力を低減させることができるが、燃料ガス貯蔵手段内の圧力を低減させるに当たっては、燃料ガス貯蔵手段から排出される燃料ガスを消費するようにしてもよい。本発明では、冷却手段と共に消費手段を設ける構成としたが、これに限定されわけではない。冷却手段に代えて、消費手段を設ける構成としてもよい。なお、消費手段には、燃料ガスを燃料する燃焼ヒータが例示できる。また、消費手段は、燃料電池に酸化ガスを供給する酸化ガス通路に水素ガスを流入させるための、水素ガス流入弁を設け、酸化ガスに燃料ガスを混入し燃料電池内の触媒で燃焼させるようにしてもよい。なお、消費手段は、制御手段によって、制御することができる。本発明によれば、冷却手段に加えて消費手段を備えることで、燃料ガス貯蔵装置内の圧力が上昇する場合において、より効果的に燃料ガス貯蔵装置内の圧力を低減させることができる。その結果、燃料ガス貯蔵装置の安全性をより向上させることができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、燃料ガス貯蔵装置内の圧力が上昇する場合において、燃料ガス貯蔵装置内の圧力を低減させるがことができる技術を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
次に、本発明に係るガス貯蔵システムの実施形態について図面に基づいて説明する。なお、本実施形態においては、燃料電池自動車に搭載される高圧MH(Metal Hydride)タ
ンクを例に説明する。
【0026】
<第一実施形態>
(構成)
図1は、第一実施形態のガス貯蔵システムの構成を示す図である。同図に示すように、本実施形態のガス貯蔵システムは、高圧MHタンク11(本発明の燃料ガス貯蔵手段に相当する。)と、圧力センサ12(本発明の監視手段に相当する。)と、温度センサ13(本発明の監視手段に相当する。)と、冷却ファン14(本発明の冷却手段に相当する。)と、ラジエタ15(本発明の冷却手段に相当する。)と、ウォーターポンプ16(本発明の冷却手段に相当する。)と、冷却水が流れる冷却通路17a、17b(本発明の冷却手段に相当する。)と、各種装置の電子制御を行うECU(electronic control unit)1
8(本発明の制御手段に相当する。)と、溶栓弁19と、を備える。
【0027】
高圧MHタンク11は、燃料ガスとしての水素ガスを貯蔵し、燃料電池40に水素ガスを供給する。すなわち、高圧MHタンク11は、水素吸蔵合金を内蔵することで(図示せず)、水素吸蔵合金に水素を吸蔵させて水素ガスの貯蔵を行うと共に、水素吸蔵合金から水素ガスを放出させることができる。なお、水素吸蔵合金は、水素の吸蔵時に発熱し、放出時に吸熱する特性を有する。従って、水素の吸蔵及び放出を円滑に行うため、高圧MHタンクには、熱交換器を設けることが好ましい。
【0028】
高圧MHタンク11には、圧力センサ12及び温度センサ13が設けられている。圧力センサ12は、高圧MHタンク11内の圧力を検出し、温度センサ13は、高圧MHタンク11内の温度を検出する。なお、本実施形態に加えて、高圧MHタンク11の周囲の温
度を検出するセンサを設けてもよい。なお、高圧MHタンク11の状態を監視するためのこれらの監視手段(センサ)の取付位置や取付個数等は、特に限定されるものではない。
【0029】
また、高圧MHタンク11には、溶栓弁19が設けられている。溶栓弁19は、所定の温度で溶ける可溶合金を有し、この可溶合金が溶けることで開口部が形成され、水素ガスを外部に放出する。所定の温度は、燃料電池自動車の通常走行時では溶融せず、火災時等において溶融する温度に設定すればよい。例えば、所定の温度は、105〜110℃とするのが一般的である。
【0030】
また、高圧MHタンク11には、冷却通路17a、17bが接続されている。冷却通路17a、17bは、ラジエタ15と高圧MHタンク11との間を巡回するように設けられている。具体的には、ラジエタ15で冷却された冷却水が、送り冷却通路17aによって、高圧MHタンク11に供給される。これにより、高圧MHタンク11内の水素吸蔵合金の冷却が可能となる。そして、水素吸蔵合金の熱を吸収することで温度が高くなった冷却水が、戻り冷却通路17bによって、再びラジエタ15に戻され冷却される。以上が適宜繰り返されることで、高圧MHタンク11内の水素吸蔵合金を冷却することができる。また、送り冷却通路17aには、通路途中にウォーターポンプ16が設けられている。これにより、冷却通路17を流れる流量の調節が可能となる。更に、ウォーターポンプ16の下流側の戻り冷却通路17aには、燃料電池40が設けられている。すなわち、本実施形態では、ラジエタ15から供給される冷却水によって、燃料電池40及び高圧MHタンク11の双方を冷却可能な構成となっている。
【0031】
ラジエタ15の前面には、ラジエタ15に送風を供給してラジエタを冷却するための冷却ファン14が設けられている。冷却ファン14の回転数を調節することで、ラジエタ15内を流れる冷却水の温度調節をすることができる。
【0032】
更に、上述した圧力センサ12、温度センサ13、冷却ファン14、ウォーターポンプ16がECU18と電気的に接続されている。ECU18は、圧力センサ12で取得される高圧MHタンク11内の圧力と温度センサ13で取得される高圧MHタンク11内の温度とに基づいて、冷却ファン14の電圧及びウォーターポンプ16の回転数を制御する。その結果、冷却ファン14から供給される送風の流量が調整される。また、冷却通路17a、17b内を流れる冷却水の流量が調整される。
【0033】
(制御フロー)
次に、第一実施形態のガス貯蔵システムにおける、高圧MHタンク11の冷却制御について説明する。なお、以下に説明する制御は、ECU18によって実行されるものである。図2は、第一実施形態の冷却制御を示すフロー図である。まず、ステップS01では、高圧MHタンク11内のタンク内温度(以下、タンク内温度という。)又は高圧MHタンク11内のタンク内圧力(以下、タンク内圧力という。)が閾値2を上回っているか否か判断される。すなわち、本発明の判断手段に相当するECU18によって、圧力センサ12で取得されたタンク内圧力又は温度センサ13で取得されたタンク内温度が、タンク内圧力とタンク内温度に対して予め設定された閾値2を上回っているか否か判断される。ここで、図3Aは、タンク内圧力と時間との関係を示す図である。図3Bは、タンク内温度と時間との関係を示す図である。また、図3Cは、図3A及び図3Bに対応する冷却ファンの電圧と時間との関係を示すマップである。また、図3Dは、図3A及び図3Bに対応するウォーターポンプの回転数と時間との関係を示すマップである。図3Aに示すように、タンク内圧力は、時間と共に上昇し、時間t2を境に減少している。そして、閾値の上限値として閾値2が設定され、閾値の下限値として閾値1が設定されている。また、図3Bに示すように、タンク内温度と時間との関係を示す図においても、閾値の上限値として閾値2が設定され、閾値の下限値として閾値1が設定されている。
【0034】
なお、上記閾値2(タンク内圧力の上限値又はタンク内温度の上限値)は、火災等が発生した場合において、高圧MHタンク11が破損しない値として実験等によって予め算出することができる。また閾値1(タンク内圧力の下限値又はタンク内温度の下限値)は、冷却ファン14及びウォーターポンプ16によって高圧MHタンク11が冷却されることで、タンク内圧力又はタンク内温度が一定の値を下回り、高圧MHタンク11の破損の虞がない値として実験等によって予め算出することができる。以上より、本実施形態では、ECU18によって、時間t1において、タンク内圧力とタンク内温度が閾値2を上回っていると判断され、時間t3において閾値1を下回っていると判断される。タンク内圧力又はタンク内温度が閾値2を上回っていると判断された場合、ステップS02へ進む。一方、タンク内圧力又はタンク内温度が閾値2を上回っていると判断さなかった場合、第一実施形態の冷却制御処理が終了する。
【0035】
ステップS02では、冷却ファン14の電圧が上げられ、ウォーターポンプ16の回転数が上げられる。すなわち、ECU18によって、冷却ファン14の電圧が通常運転時のV1(時間t1)から急速冷却時のV2(時間t2)へ上げられ(図3C参照。)、ウォーターポンプ16の回転数が通常運転時のR1(時間t1)から急速冷却時のR2(時間t2)へ上げられる(図3D参照。)。冷却ファン14の電圧が上げられることで、ラジエタ15の冷却効果が高められ、ウォーターポンプ16の回転数が上げられることで、冷却水の流量が増加する。その結果、高圧MHタンク11の効果的な冷却が可能となる。なお、冷却ファンの電圧V1、V2、及びウォーターポンプ16の回転数R1、R2は、高圧MHタンク11を十分に冷却可能な値として、実験等によって予め求めることができる。ステップS02処理が終了すると次のステップへ進む。
【0036】
ステップS03では、タンク内温度とタンク内圧力が閾値1を下回っているか否か判断される。すなわち、本発明の判断手段に相当するECU18によって、圧力センサ12で取得されたタンク内圧力又は温度センサ13で取得されたタンク内温度が、タンク内圧力及びタンク内温度に対して予め設定された閾値1を下回っているか否か判断される。なお、ステップS01では、タンク内温度又はタンク内圧力のいずれか一方が閾値2を上回っている場合に、冷却ファン14等の電圧を上げる制御を行った。これに対し、ステップS03では、タンク内温度とタンク内圧力の双方が閾値1を下回った場合に、冷却ファン14等の電圧を下げる制御を行っている。これは、ガス貯蔵システムの安全性をより高めるためである。すなわち、冷却するための制御(ステップS02)は、火災などにおける安全性を確保することを目的とするものである。従って、各センサの一つでも温度上昇や圧力上昇といった状態を検知した場合には、これに基づいて冷却制御を実行した方がより安全だからである。これに対し、ステップS04の制御は、安全性を確保するために行った制御(ステップS02)を解除するためのものであるため、全てのセンサにおいて閾値1を下回った場合に冷却制御を解除した方がより安全だからである。タンク内温度又はタンク内圧力が閾値1を下回っていると判断された場合、ステップS04へ進む。一方、タンク内圧力又はタンク内温度が閾値1を下回っていると判断さなかった場合、ステップS02へ戻る。
【0037】
ステップS04では、冷却ファン14の電圧が下げられ、ウォーターポンプ16の回転数が下げられる。すなわち、ECU18によって、冷却ファン14の電圧がV2(時間t1)からV1(時間t3)へ下げられ(図3C参照。)、ウォーターポンプ16の回転数がR2(時間t1)からR1(時間t3)へ下げられる(図3D参照。)。冷却ファン14の電圧が下げられ、また、ウォーターポンプ16の回転数が下げられることで、冷却ファン14及びウォーターポンプ16は、ステップ02の処理を実行する前の状態、換言すると通常運転に復帰する。ステップS04の処理が終了すると、第一実施形態の冷却制御処理が終了する。
【0038】
以上説明した第一実施形態のガス貯蔵システムによれば、圧力センサ12で検出されるタンク内圧力又は温度センサ13で検出されるタンク内温度が閾値2を上回った場合には、冷却ファン14の電圧及びウォーターポンプ16の回転数が上げられる。その結果、高圧MHタンク11に供給される冷却水の流量が増加するので、高圧MHタンク11内を急激に冷却することが可能となる。これにより、水素吸蔵合金からの水素の放出が抑制され、また、高圧MHタンク11内の圧力上昇が抑制されので、火災時等の外部から熱が加えられた場合であっても、高圧MHタンク11の破損を防止することができる。すなわち、本実施形態のガス貯蔵システムによれば、火災等における高圧MHタンクの安全性を確保することできる。
【0039】
<第二実施形態>
次に第二実施形態のガス貯蔵システムについて説明する。なお、同一の構成要素については、同一の符号を付すことでその詳細な説明を省略する。
【0040】
(構成)
図4は、第二実施形態のガス貯蔵システムの構成を示す図である。第二実施形態のガス貯蔵システムは、高圧MHタンク11と、圧力センサ12と、温度センサ13と、冷却ファン14と、ラジエタ15と、ウォーターポンプ16と、冷却水が流れる冷却通路17a、17bと、各種装置の電子制御を行うECU18と、溶栓弁19と、を備える点で、第一実施形態のガス貯蔵システムと一致する。そして、第二実施形態のガス貯蔵システムは、上記構成に加えて、冷却ファン14a、ラジエタ15a、冷却通路切替バルブ20を備える点で、第一実施形態のガス貯蔵システムと相違する。
【0041】
冷却ファン14a及びラジエタ15aの基本的な性能は、上述した冷却ファン14a及びラジエタ15aと同様である。このようなラジエタ15aが、冷却通路17にラジエタ15と直列に設けられている。すなわち、ラジエタ及びラジエタに送風を供給する冷却ファンが二基設けられることで、本実施形態のガス貯蔵システムの冷却性能が、第一実施形態のガス貯蔵システムよりも向上されている。そして、ラジエタ15とラジエタ15aとを接続する冷却通路には、冷却通路を切り替える冷却通路切替バルブ20が設けられている。冷却通路切替バルブ20が開かれると、冷却水はラジエタ15及びラジエタ15aの双方を通過することになる。一方、冷却通路切替バルブ20が閉じられると冷却水は、ラジエタ15aのみを通過することになる。なお、冷却ファン14a、ラジエタ15a、及び冷却通路切替バルブ20は、ECU18と電気的に接続されており、ECU18による制御が可能である。
【0042】
(制御フロー)
次に、第二実施形態のガス貯蔵システムにおける、高圧MHタンク11の冷却制御について説明する。なお、以下に説明する制御は、ECU18によって実行されるものである。図5は、第二実施形態の冷却制御を示すフロー図である。
【0043】
まず、第一実施形態と同じくステップS01の処理が実行される。タンク内圧力又はタンク内温度が閾値2を上回っていると判断された場合、ステップS02−1へ進む。一方、タンク内圧力又はタンク内温度が閾値2を上回っていると判断さなかった場合、第二実施形態の冷却制御処理が終了する。
【0044】
ステップS02−1では、冷却ファン14、14aの電圧及びウォーターポンプ16の回転数が上げられること加えて、冷却通路切替バルブ20がECU18によって開かれる。図6は、図3A及び図3Bに対応する、冷却通路切替バルブの開度と時間との関係を示すマップである。図6に示すように、本実施形態では、閾値2を上回った場合に冷却通路
切替バルブ20が開かれる。これにより、冷却水は、ラジエタ15a及びラジエタ15の双方を通過することになり、冷却性能がより向上される。
【0045】
ステップS02−1の処理が終了すると、第一実施形態と同じくステップS03の処理が実行される。タンク内温度とタンク内圧力が閾値1を下回っていると判断された場合、ステップS04−1へ進む。一方、タンク内圧力とタンク内温度が閾値1を下回っていると判断さなかった場合、ステップS02−1へ戻る。
【0046】
ステップS04−1では、冷却ファン14、14aの電圧及びウォーターポンプ16の回転数が下げられる。これにより、冷却ファン14、14a及びウォーターポンプ16は、通常運転に復帰する。ステップS04−1の処理が終了すると、第二実施形態の冷却制御処理が終了する。
【0047】
以上説明した第二実施形態のガス貯蔵システムによれば、電動ファン及びラジエタを二基有することで、第一実施形態のガス貯蔵システムよりも冷却性能を向上させることができる。その結果、本実施形態のガス貯蔵システムによれば、火災等に対する高圧MHタンクの安全性をより高めることができる。
【0048】
<第三実施形態>
次に第三実施形態のガス貯蔵システムについて説明する。なお、同一の構成要素については、同一の符号を付すことでその詳細な説明を省略する。
【0049】
(構成)
図7は、第三実施形態のガス貯蔵システムの構成を示す図である。第三実施形態のガス貯蔵システムは、高圧MHタンク11と、圧力センサ12と、温度センサ13と、冷却ファン14と、ラジエタ15と、ウォーターポンプ16と、冷却水が流れる冷却通路17a、17bと、各種装置の電子制御を行うECU18と、溶栓弁19と、を備える点で、第一実施形態のガス貯蔵システムと一致する。そして、第三実施形態のガス貯蔵システムは、上記構成に加えて、冷却ファン14b、熱交換器としてのコンデンサ21、膨張弁22、熱交換器としてのエバポレータ23、コンプレッサ24を備える点で、第一実施形態のガス貯蔵システムと相違する。すなわち、第三実施形態のガス貯蔵システムでは、エアコン用の冷媒によって冷却水を更に冷却することで、冷却性能がより高められている。
【0050】
コンデンサ21とエバポレータ23とは、冷媒送り管25aと冷媒戻り管25bによって接続されている。また、冷媒送り管25aには、膨張弁22が設けられ、冷媒戻り管25bには、コンプレッサ24が設けられている。コンプレッサ24では、低温低圧の気体状態の冷媒が圧縮され高温高圧化される。コンデンサ21では、コンプレッサ24から受け取った高温高圧化された冷媒が放熱、すなわち冷却されことで液化される。膨張弁22では、高温高圧の液体が低温低圧の霧状の冷媒にされ、蒸発しやすい状態とされる。エバポレータ23では、霧状の冷媒が気化されることで、周囲からの熱を奪う。すなわち、本実施形態では、エバポレータ23によって、冷却通路17を流れる冷却水が冷却される。
【0051】
なお、エバポレータ23は、例えば、冷却通路17cに巻きつけるように配置することで、効率よく冷却通路17cを流れる冷却水を冷却することができる。本実施形態では、エバポレータ23が、燃料電池40と高圧MHタンク11とを接続する冷却通路17cに設けられている。これにより、高圧MHタンク11に供給される直前の冷却水を効果的に冷却することができる。但し、エバポレータ23の配置位置は、これに限定されるものではない。
【0052】
(制御フロー)
次に、第三実施形態のガス貯蔵システムにおける、高圧MHタンク11の冷却制御について説明する。なお、以下に説明する制御は、ECU18によって実行されるものである。図8は、第三実施形態の冷却制御を示すフロー図である。
【0053】
まず、第一実施形態と同じくステップS01の処理が実行される。タンク内圧力又はタンク内温度が閾値2を上回っていると判断された場合、ステップS02−2へ進む。一方、タンク内圧力又はタンク内温度が閾値2を上回っていると判断されなかった場合、第三実施形態の冷却制御処理が終了する。
【0054】
ステップS02−2では、冷却ファン14、14bの電圧及びウォーターポンプ16の回転数が上げられるとともに、コンプレッサ24の電源がONにされる。図9は、図3A及び図3Bに対応する、コンプレッサのON/OFF状態と時間との関係を示すマップである。図9に示すように、本実施形態では、閾値2を上回った場合にコンプレッサ24の電源がONとされる。これにより、冷却水が、エバポレータ23で冷却され、高圧MHタンク11を冷却する冷却性能がより向上される。ステップS02−1の処理が終了すると次のステップへ進む。
【0055】
ステップS02−2の処理が終了すると、第一実施形態と同じくステップS03の処理が実行される。そして、タンク内温度とタンク内圧力が閾値1を下回っていると判断された場合、ステップS04−2へ進む。一方、タンク内圧力とタンク内温度が閾値1を下回っていると判断さなかった場合、ステップS02−2へ戻る。
【0056】
ステップS04−2では、冷却ファン14、14bの電圧及びウォーターポンプ16の回転数が下げられ、コンプレッサ24の電源がOFFにされる。これにより、冷却ファン14、14b及びウォーターポンプ16は、通常運転に復帰する。ステップS04−2の処理が終了すると、第三実施形態の冷却制御処理が終了する。
【0057】
以上説明した第三実施形態のガス貯蔵システムによれば、エアコン用の冷媒によって冷却水を更に冷却することで、第一実施形態のガス貯蔵システムよりも冷却性能を向上させることができる。その結果、本実施形態のガス貯蔵システムによれば、火災等に対する高圧MHタンクの安全性をより高めることができる。
【0058】
<第四実施形態>
次に第四実施形態のガス貯蔵システムについて説明する。なお、同一の構成要素については、同一の符号を付すことでその詳細な説明を省略する。
【0059】
図10は、第四実施形態のガス貯蔵システムの構成を示す図である。第四実施形態のガス貯蔵システムは、高圧MHタンク11と、圧力センサ12と、温度センサ13と、冷却ファン14と、ラジエタ15と、ウォーターポンプ16と、各種装置の電子制御を行うECU18と、溶栓弁19と、を備える点で、第一実施形態のガス貯蔵システムと一致する。そして、第四実施形態のガス貯蔵システムは、上記構成に加えて、本発明の消費手段としての、水素循環ポンプ26、排気バルブ27、燃焼式ヒータ28を備える点で、第一実施形態のガス貯蔵システムと相違する。すなわち、第四実施形態のガス貯蔵システムでは、燃焼式ヒータ28で水素を燃焼させて水素を消費することでタンク内圧力上昇を抑制することが可能となっている。なお、図においては、本発明の消費手段(水素循環ポンプ26、排気バルブ27、燃焼式ヒータ28)の構成をわかり易くするため、ラジエタ15と高圧MHタンク11との間に接続される冷却通路は省略しているが、本発明の冷却手段(ラジエタ15等)は第一実施形態と同様に構成することができる。
【0060】
高圧MHタンク11には、燃料電池40へ水素ガスを導く水素ガス供給通路33が接続
されている。水素ガス供給通路33には、水素ガスの供給を遮断する主止弁33aが設けられている。燃料電池40には、燃料電池40のアノード側から排出されるアノードオフガスを外部へ導くアノードオフガス通路29が設けられている。そして、アノードオフガス通路29には、上流から順に、排気バルブ27、燃焼式ヒータ28が設けられている。また、排気バルブ27よりも上流側のアノードオフガス通路29には、アノードオフガスを水素ガス供給通路33へ循環させる循環通路30が設けられている。循環通路30には、アノードオフガスを水素ガス供給通路33へ供給する水素循環ポンプ26が設けられている。また、燃焼式ヒータ28には、燃焼式ヒータ28を冷却するための燃焼式ヒータ用ブロアファン31と、同じく燃焼式ヒータ28を冷却するためラジエタ15からで冷却された冷却水が流れる冷却通路32が接続されている。
【0061】
(制御フロー)
次に、第四実施形態のガス貯蔵システムにおける、高圧MHタンク11の冷却制御について説明する。なお、以下に説明する制御は、ECU18によって実行されるものである。図11は、第四実施形態の冷却制御を示すフロー図である。
【0062】
まず、最初の処理として第一実施形態と同じくステップS01の処理が実行される。そして、タンク内圧力又はタンク内温度が閾値2を上回っていると判断された場合、ステップS02−3へ進む。一方、タンク内圧力又はタンク内温度が閾値2を上回っていると判断されなかった場合、第四実施形態の冷却制御処理が終了する。
【0063】
ステップS02−3では、冷却ファン14の電圧及びウォーターポンプ16の回転数が上げられるとともに、水素循環ポンプ26がOFFとされ、排気バルブ27が開かれ、燃焼式ヒータ28がONとされる。ここで、図12Aは、図3A及び図3Bに対応する、水素循環ポンプ26のON/OFF状態と時間との関係を示すマップである。また、図12Bは、図3A及び図3Bに対応する、排気バルブ27の開度と時間との関係を示すマップであり、図12Cは、図3A及び図3Bに対応する、燃焼式ヒータ28のON/OFF状態と時間との関係を示すマップである。このように、本実施形態では、閾値2を上回った場合に、水素循環ポンプ26がOFFとされ、排気バルブ27が開かれ、燃焼式ヒータ28がONとされる。これにより、燃料電池40から排出されるアノードオフガスは、排気バルブ27を通過して、燃焼式ヒータ28で燃焼されるので、高圧MHタンク11内の圧力が低下される。すなわち、本実施形態では、冷却手段(ラジエタ15等)による高圧MHタンク11の冷却と消費手段(燃焼式ヒータ28等)による水素ガスの消費が行われる。ステップS02−3の処理が終了すると次のステップへ進む。
【0064】
ステップS02−3の処理が終了すると、第一実施形態と同じくステップS03の処理が実行される。そして、タンク内温度とタンク内圧力が閾値1を下回っていると判断された場合、ステップS04−3へ進む。一方、タンク内圧力とタンク内温度が閾値1を下回っていると判断されなかった場合、ステップS02−3へ戻る。
【0065】
ステップS04−3では、冷却ファン14の電圧及びウォーターポンプ16の回転数が下げられ、また、水素循環ポンプ26がONとされ、排気バルブ27が閉じられ、燃焼式ヒータ28がOFFとされる。ステップS04−3の処理が終了すると、第四実施形態の冷却制御処理が終了する。
【0066】
以上説明した第四実施形態のガス貯蔵システムによれば、冷却手段(ラジエタ15等)による高圧MHタンク11の冷却と消費手段(燃焼式ヒータ28等)による水素ガスの消費が行われるので、より効果的に高圧MHタンク11内の圧力を低減することができる。その結果、本実施形態のガス貯蔵システムによれば、火災等に対する高圧MHタンク11の安全性をより高めることができる。
【0067】
<その他の実施形態>
なお、第四実施形態で説明した本発明の燃料ガス消費手段に相当する構成は、以下のようにしてもよい。図13は、燃料ガス消費手段のその他の実施形態を示す図である。同図に示すように、本実施形態では、水素ガス供給通路33が分岐して燃料電池40へ空気を供給する酸化ガス供給通路34に接続されている。また、分岐点と酸化ガス供給通路34との接続点との間には、水素シャットバルブ38が設けられている。なお、符号35は、水素レギュレータ、符号36はコンプレッサ、符号37はカソードオフガス通路37である。
【0068】
なお、水素シャットバルブの開閉制御は、以下のように行えばよい。図14は、水素シャットバルブの開閉制御を示すフロー図である。同図に示すように、上述した各実施形態と同じく、ステップS01の処理が実行され、タンク内圧力又はタンク内温度が閾値2を上回っていると判断された場合、ステップ02−4では、水素シャットバルブ38が開かれる。なお、図15は、図3A及び図3Bに対応する、水素シャットバルブ38の開度と時間との関係を示すマップを示す。このように、本実施形態では、閾値2を上回った場合に、水素シャットバルブ38が開かれ、閾値1を下回った場合に、水素シャットバルブ38が閉じられる。ステップS02−4の処理が終了すると、ステップS03の処理が実行される。そして、タンク内圧力とタンク内温度が閾値1を下回っていると判断された場合、ステップ04−4では、水素シャットバルブ38が閉じられる。
【0069】
このように本実施形態によれば、水素シャットバルブ38を開いて、水素ガスを燃料電池40のカソード側に混入させることで、燃料電池40内の触媒(図示せず)で水素ガスを燃焼させることができる。その結果、高圧MHタンク11内の圧力を低減することができる。このような本発明の消費手段に相当する上記構成を、上述した実施形態を組み合わせることで、火災等に対するガス貯蔵システムの安全性をより高めることができる。
【0070】
なお、上述した実施形態では、ECU18によって高圧MHタンク11内のタンク内温度又は高圧MHタンク11内のタンク内圧力が閾値2を上回っているか否か判断し、上回っている場合に、例えばウォーターポンプ16の回転数が上げらなどの冷却制御を実行した。しかし、冷却制御を実行するか否かは、例えば、溶栓弁19が水素ガスを放出することで高圧MHタンク11の圧力低減が十分に行えるか否かで判断してもよい。より詳細には、冷却制御を実行するか否かは、溶栓弁19から放出される水素ガスの流量に基づいて判断してもよい。なお、溶栓弁19から放出される水素ガスの流量は、溶栓弁19を形成する可溶合金の溶融温度、可溶合金が溶けることで形成される開口部の断面積に基づいて実験等によって予め求めることができる。冷却制御を実行するか否かの判断を上記のようにすることで、溶栓弁19では高圧MHタンク11内の圧力低減が行えない場合であっても、例えばウォーターポンプ16の回転数を上げるなどの冷却制御を実行することで、高圧MHタンク11内の圧力を低減させることができる。
【0071】
以上本発明の実施形態について説明したが、本発明のガス貯蔵システムはこれらに限らず、可能な限りこれらの組合せを含むことができる。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】第一実施形態のガス貯蔵システムの構成を示す図である。
【図2】第一実施形態の冷却制御を示すフロー図である。
【図3A】タンク内圧力と時間との関係を示す図である。
【図3B】タンク内温度と時間との関係を示す図である。
【図3C】冷却ファンの電圧と時間との関係を示すマップである。
【図3D】ウォーターポンプの回転数と時間との関係を示すマップである。
【図4】第二実施形態のガス貯蔵システムの構成を示す図である。
【図5】第二実施形態の冷却制御を示すフロー図である。
【図6】冷却通路切替バルブの開度と時間との関係を示すマップである。
【図7】第三実施形態のガス貯蔵システムの構成を示す図である。
【図8】第三実施形態の冷却制御を示すフロー図である。
【図9】コンプレッサのON/OFF状態と時間との関係を示すマップである。
【図10】第四実施形態のガス貯蔵システムの構成を示す図である。
【図11】第四実施形態の冷却制御を示すフロー図である。
【図12A】水素循環ポンプのON/OFF状態と時間との関係を示すマップである。
【図12B】排気バルブの開度と時間との関係を示すマップである。
【図12C】燃焼式ヒータON/OFF状態と時間との関係を示すマップである。
【図13】燃料ガス消費手段のその他の実施形態を示す図である。
【図14】水素シャットバルブの開閉制御を示すフロー図である。
【図15】水素シャットバルブの開度と時間との関係を示すマップを示す。
【符号の説明】
【0073】
1、2、3、4・・・ガス貯蔵システム
11・・・高圧MHタンク
12・・・圧力センサ
13・・・温度センサ
14・・・冷却ファン
15・・・ラジエタ
16・・・ウォーターポンプ
18・・・ECU
20・・・冷却通路切替バルブ
21・・・コンデンサ
22・・・膨張弁
23・・・エバポレータ
24・・・コンプレッサ
26・・・水素循環ポンプ
27・・・排気バルブ
28・・・燃焼式ヒータ
38・・・水素シャットバルブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料ガスを貯蔵する燃料ガス貯蔵手段と、
前記燃料ガス貯蔵手段の状態を監視する監視手段と、
前記ガス貯蔵手段を冷却する冷却手段と、
前記監視手段によって監視される前記燃料ガス貯蔵手段の状態に応じて、前記冷却手段を制御する制御手段と、
を備えるガス貯蔵システム。
【請求項2】
前記監視手段で監視される前記燃料ガス貯蔵手段の状態に基づいて、該燃料ガス貯蔵手段内の圧力を低減させる必要があるか否かを判断する判断手段を更に備え、
前記制御手段は、前記判断手段が前記燃料ガス貯蔵手段内の圧力を低減させる必要があると判断した場合、前記冷却手段の冷却性能を向上させることで前記燃料ガス貯蔵手段内の圧力を低減させる、請求項1に記載のガス貯蔵システム。
【請求項3】
前記監視手段は、前記燃料ガス貯蔵手段の周囲温度と該燃料ガス貯蔵手段内の温度である内部温度と該燃料ガス貯蔵手段内の圧力である内部圧力とのうち少なくとも何れか一つの状態を監視し、
前記判断手段は、前記周囲温度と前記内部温度と前記内部圧力とのうち何れか一つが、それぞれに設けられた閾値を上回った場合に、前記燃料ガス貯蔵手段内の圧力を低減させる必要があると判断する、
請求項2に記載のガス貯蔵システム。
【請求項4】
前記燃料ガス貯蔵手段には、所定温度以上で溶けることで該燃料ガス貯蔵手段から燃料ガスを放出する溶栓弁が設けられ、
前記判断手段は、前記溶栓弁が燃料ガスを放出することでは前記燃料ガス貯蔵手段内の圧力低減が十分に行えないと判断した場合に、前記燃料ガス貯蔵手段内の圧力を低減させる必要があると判断する、
請求項2又は請求項3に記載のガス貯蔵システム。
【請求項5】
前記燃料ガス貯蔵手段から排出される燃料ガスを消費する燃料ガス消費手段を更に備え、
前記制御手段は、前記冷却手段とともに、前記監視手段によって監視される前記燃料ガス貯蔵手段の状態に応じて、前記消費手段を制御する、請求項1から請求項4のいずれかに記載のガス貯蔵システム。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図3D】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12A】
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【図12B】
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【図12C】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2008−223931(P2008−223931A)
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−64828(P2007−64828)
【出願日】平成19年3月14日(2007.3.14)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】