ガス除害装置
【課題】 組み立て時の取り扱いが容易で、耐久性に優れ、低いランニングコスト、かつ低圧損のガス除害装置を提供する。
【解決手段】 円筒形のMEA7と、MEAの両端において、該MEAの内側と外側とを隔離しながら固定するための第1シール部材31と、MEAを取り囲むように位置する外筒9と、外筒の両端において該外筒の内側と外側とを隔離しながら固定するための第2シール部材36と、外筒を囲む筒状のヒーター41とを備えることを特徴とする。
【解決手段】 円筒形のMEA7と、MEAの両端において、該MEAの内側と外側とを隔離しながら固定するための第1シール部材31と、MEAを取り囲むように位置する外筒9と、外筒の両端において該外筒の内側と外側とを隔離しながら固定するための第2シール部材36と、外筒を囲む筒状のヒーター41とを備えることを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス除害装置であって、より具体的には、組み立てが容易で、耐久性に優れ、有害ガスを効率よく分解することができる、ガス除害装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
環境への意識の高まりから、廃ガス中の臭気成分であるアンモニア等を、ppmオーダーまで分解することを主目的とする除害装置に関心が集まっている。たとえば半導体製造装置の廃ガスには、アンモニア、水素等が含まれるのが普通であり、アンモニアの異臭を完全に除去するには、ppmオーダーにまで除害する必要がある。この目的のために、半導体製造装置の廃ガス放出の際にスクラバーを通して、薬品を含む水分に有害ガスを吸収させる方法が多く用いられてきた。
一方、エネルギーや薬品等の投入なしに、安価なランニングコストを得るために、水素酸素燃料電池型分解方式を用いた、半導体製造装置の排気ガス処理の提案もされている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−45472号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のスクラバーによれば、アンモニア等の除害はppmオーダーまで可能であるが、薬品や外部エネルギー(燃料)を必要とし、さらに触媒の定期的交換やメインテナンスを要し、ランニングコストが高いという問題がある。とくに構成部材について長期間にわたってメインテナンスフリーは許容されない。さらに装置が大掛かりとなり、たとえば既存の設備に付加的に設ける場合に配置が難しい場合も生じる。
一方、水素酸素燃料電池型分解方式については、ppmオーダーまで除害を徹底させると、燃料極において排気ガスの長い流路が必要となり、圧力損失の増大を招く。さらに、水素酸素燃料電池分解方式におけるMEA(Membrane Electrode Assembly)は、強度的に脆弱であり、組み立て時の取り扱いが非常に難しいという問題がある。とくに多層に組み立てる場合に困難性が高く、その結果、組み立て工数の増大や歩留まり低下を招きやすい。
【0005】
本発明は、組み立て時の取り扱いが容易で、耐久性に優れ、低いランニングコスト、かつ低圧損のガス除害装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のガス除害装置は、ガス成分を電気化学反応によって除害する装置である。このガス除害装置は、円筒形の固体電解質、該円筒形の内面に接して位置する円筒形の第1電極、および該円筒形の外面に接して位置する円筒形の第2電極、を主構成部とする円筒形のMEAと、MEAの両端において、該MEAの内側と外側とを隔離しながら固定するための第1シール部と、MEAを取り囲むように位置する外筒と、外筒の両端において該外筒の内側と外側とを隔離しながら固定するための第2シール部と、外筒を囲む筒状の加熱装置とを備えることを特徴とする。
【0007】
上記の円筒形MEAは、除害装置に組み立てる際、強度的に安定しており、また組み立てた後において高い耐久性を得ることができる。また、複数本の円筒形のMEAを並列配置することで、時間当たりの分解容量を増大させることができる。そして、円筒形のMEAの内径等を調整することで、低圧損を容易に実現することができる。さらに電気化学反応には薬液等が不要なので、ランニング経費を低くすることができる。上記の電気化学反応は、350℃〜1000℃の温度で実用レベルに達するので、外筒を囲むように、ヒータ等の加熱装置を配置する。
【0008】
MEAにおける、第1電極をカソードとし、第2電極をアノードとし、円筒形のMEAの内側に空気を流し、MEAの外側にアンモニアを流すことができる。これによって、低圧損を維持して空気を多量に流すことで、両端に位置する第1シール部および第2シール部の温度上昇を抑制することができる。この結果、たとえばろう付けしていたシール部または接合部を、着脱自由のより簡単な部材によって構成することが可能となる。高額経費となるろう付けをやめることで、製造経費等を低減することができる。また、MEAと外筒との間にアンモニア含有気体を流すことで、未分解のまま通り抜けるアンモニア量を抑止することができる。
【0009】
空気を流す方向と、アンモニアを流す方向とを逆方向にすることができる。この除害装置に導入する前の空気およびアンモニアの温度は高温になっていない。空気とアンモニアとを逆方向に流すことで、このガス除害装置の両端ともに、高温になっていない気体が導入されることになる。このため、ガス除害装置の両端に位置する第1および第2シール部は、高温になりにくい。この結果、第1および第2シール部を、たとえばろう付け等の高耐熱性の手段によって形成しなくてもよくなる。これに比して、空気とアンモニアとを同じ方向に流した場合、出口側の端では、両方の気体共に高温になり、出口側の端の第1シール部と第2シール部は高温になる。このため、ろう付け等によらなければ耐熱性が不足するおそれを生じる。
【0010】
第1シール部および第2シール部を、脱着自在の部材で形成することができる。MEAの両端において高温になりにくいので、たとえばゴム系またはガラス系のOリングを用いて、工作精度をそれほど要しない機構によってシール部を構成することができる。
【0011】
MEAと外筒との間に位置するアノード集電体を備え、該アノード集電体を、連続する気孔を有する、すべてめっきで形成された金属多孔体で形成することができる。すべてめっきで形成された金属多孔体は、気孔率を高くすることができ、比較的低圧損であり通気性に優れている。このため、アンモニアの流れを乱流化して、アノードにおけるアンモニアの分解反応を促進させることができる。また、アンモニアの流れを乱流化する程度の障害物としても機能して、アンモニアの素通り(未反応のままの通過)を防止することができる。また、上記の金属多孔体は、金属めっきにより形成されるので、導電性に優れており、電気化学反応における電子の導電体として機能する。
【0012】
カソードは、銀粒子と、イオン導電性セラミックスとを備え、集電体を兼ね、別体のカソード集電体を含まない構成をとることができる。これによって、空気を低圧損で多量に流すことができ、第1および第2シール部における温度上昇をより一層確実に抑制することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、組み立て時の取り扱いが容易で、耐久性に優れ、低いランニングコスト、かつ低圧損のガス除害装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施の形態におけるガス分解装置であるアンモニア分解装置を示す図である。
【図2】図1のアンモニア分解装置の部分拡大図である。
【図3】図1のアンモニア分解装置のMEAにおける電気化学反応を説明するための図である。
【図4】アノードでの電気化学反応を説明するための図である。
【図5】カソードでの電気化学反応を説明するための図である。
【図6】円筒形MEAの製造方法のフローチャートである。
【図7】MEAの外側流路に配置される金属多孔体の製造方法のフローチャートである。
【図8】図7の方法で製造した金属多孔体の比表面積と孔径との関係を示す図である。
【図9】アンモニア分解装置の側面図であり、(a)は1つの円筒形MEAを用いた例、(b)は複数の円筒形MEAを並列配置した例、を示す図である。
【図10】実施例におけるシミュレーション結果であり、出口でのアンモニアモル濃度とMEA外側流路の厚みとの関係を示す図である。
【図11】実施例におけるシミュレーション結果であり、空気流方向と排気ガス(アンモニア含有気体)流方向が同方向の場合と逆方向の場合における、MEA両端部の最高温度と空気流量との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1は、本発明の実施の形態におけるガス除害装置であるアンモニア分解装置10を示す図である。このアンモニア分解装置10では、円筒形の固体電解質の内面を覆うようにカソード(第1電極)が設けられ、また外面を覆うようにアノード(第2電極)が設けられた、円筒形MEA7(1,2,5)を用いる(図3参照)。円筒形MEAの内面側に空気を通す流路R1が設けられ、外面側にアンモニアを含む気体を通す流路R2が設けられる。MEA7の内面を通る流路R1は、チューブ33と、筒状接続体32と、円筒形MEA7とで形成される。円筒形MEA7は、筒状接続体32との間に第1シール部材31を介在させて固定される。
MEA7の外面を通る円筒状の流路R2は、その内面側を、上記の流路R1を形成する(チューブ33/筒状接続体32/MEA7)によって形成され、外面側を、(チューブ38/筒状接続体37/外筒9)によって形成される。すなわち流路R2は、(チューブ33/筒状接続体32/MEA7)と、(チューブ38/筒状接続体37/外筒9)との間に形成される。外筒9は、筒状接続体37との間に、第2シール部材36a,36bを介在させて固定される。第2シール部材36は、外筒端シール部材36aと、外筒内側スペーサリング36bとで構成される。外筒9、チューブ33,38、筒状接続体32,37は、ステンレススティール製とするのがよい。
外筒9を取り囲むように、加熱装置のヒーター41が配置され、アンモニア分解の場合、650℃〜950℃の範囲の所定温度に加熱する。ヒーター41には、たとえばカーボンヒーターを用いるのがよい。
【0016】
上記のような円筒形MEA7は、素材は強度的に脆弱であるが、円筒形であることによって強度を高めることができる。薄片状のMEAを多段に積層した板状多層MEAに比べて、強度的に安定している。このため、ガス分解装置10に組み立てる際の取り扱いにおいて、少しの力の付加で破損することが避けられ、製造歩留まりの向上を得ることができる。板状多層MEAの場合、高い寸法精度がないと、少しの押さえ込みなどによって簡単に破損してしまう。また、組み立てた後でも、稼働と非稼働とのサイクルで、加熱と冷却とを繰り返すので、板状多層MEAの場合は、応力集中部から亀裂を発生して破損にいたりやすい。この点で、円筒形MEA7は、単に端部で固定するので、加工精度はそれほど高くする必要はなく、加熱と冷却のサイクルで亀裂が発生しやすい応力集中部は少ない。このため、使用後の耐久性にも優れている。
【0017】
図2は、図1の円筒形MEA7の端の部分の拡大図である。MEA7の外側の流路R2は、すべてめっきで形成された金属多孔体11によって占められている。MEA7の外側の流路R2を金属多孔体11で占めることによって、除害対象のアンモニアの流れを乱流化して、アノード表面に接触する気体流の部分を絶えず剥ぎ取り、新たなアンモニア含有気体を供給することができる。この結果、アンモニアの分解効率を高めることができる。また、金属多孔体11の存在によって、アンモニア含有気体を未反応のまま素通りするのを大きく抑制することができる。さらに、導電性が高いため、アノード集電体として機能する。
このあと説明するように、カソード5は、イオン導電性だけでなく導電性(電子伝導度)も高いため、集電体を配置する必要はない。しかし、カソード集電体を配置してもよい。カソード集電体を配置する場合には、アノード集電体と同様に、すべてめっきで形成され、連続した気孔を有する金属多孔体を用いるのがよい。
【0018】
図2において、注目すべきポイントは、次の2つのシール部を形成する部材である。
(1)円筒形MEA7と筒状接続体32との間に介在する第1シール部材31
(2)外筒9と筒状接続体37との間に介在する第2シール部材36(36a,36b)
円筒形MEAの端面が当接する第1シール部材31、および外筒9の端面が当接する第2シール部材36aは、ガラスシール材であり、プリフォームによりリング状に形成されている。また、外筒9の端の内面と、筒状接続体37の内面側の突出部との間に介在する第2シール部材36bは、ゴム系またはガラス系の絶縁性Oリングである。
ヒータ41により、MEA7の電気化学反応箇所は、650℃〜950℃に加熱されるので、上記の第1および第2シール部材31,36の位置の温度は高くなる。このため、空気を円筒形MEA7の内面側に多量に流すことがなければ、上記のシールは、ろう付けで接合する必要がある。ろう付けは、ろう材自体高価であるだけでなく、ろう付け工数を要し、製造コストを増大させる。本実施の形態では、次の構成によって、シール部の高温化を抑制する。
(1)空気を円筒形MEA7の内面側に多量に流し、かつ、アンモニア含有気体を外面側に流す。これによって、円筒形内面側にアンモニア含有気体を流すことによる、アンモニアの素通りを防止しながら、空気流による冷却効果を確保する。
(2)空気の流れと、アンモニア含有気体の流れとを、逆方向にする。電気化学反応前の、気体およびアンモニア含有気体は、室温か、または室温よりも少し高い温度である。逆方向から流すと、一方の端では一方の気体が冷却を行い、他方の端では他方の気体が冷却を行うことができる。この結果、両端に位置するシール部31,36を両端ともに温度上昇を抑制することができる。これに比して、両方の気体を同じ方法に流す場合は、入口側の端のシール部は十分に冷却されるが、出口側の端では、両方の気体ともに加熱されているので、シール部の温度は大きく上昇する。このため、出口側の端では、たとえばろう付けが避けられず、製造コスト上昇をもたらす可能性が高い。
しかし、空気とアンモニア含有気体とを常に逆方向に流す必要はなく、要求使用(分解対象ガス、加熱温度など)に応じて、同じ方向に流してもよい。アンモニア分解のように高温にしない場合、たとえばNOxの分解等では、加熱温度は350℃〜650℃程度なので、同方向に流してもよい場合が増える。
【0019】
図3は、本実施の形態におけるアンモニア分解装置の電気化学反応を示す図である。図2において、分解対象の流体(ガス)は、流路R2を経てアノード2に導入され、また酸素イオンを供給するための空気は流路R1を経てカソード5に導入される。導入された気体は、アノード2(カソード5)で所定の反応をした後、放出される。所定の反応は、発電を伴う電気化学反応であり、アノード集電体11およびカソード5から電力を取り出し、負荷に電力を供給することができる。すなわちガス分解装置10は燃料電池として機能する。負荷としては、加熱装置、たとえばヒーターとすることができる。
【0020】
アノード2は、表面酸化されて酸化層を有する金属粒連鎖体21と、酸素イオン導電性のセラミックス22とを主成分とする焼結体とするのがよい。酸素イオン導電性のセラミックス22としては、SSZ(スカンジウム安定化ジルコニア)、YSZ(イットリウム安定化ジルコニア)、SDC(サマリウム安定化セリア)、LSGM(ランタンガレート)、GDC(ガドリア安定化セリア)などを用いることができる。
また、カソード5は、銀(Ag)51と、酸素イオン導電性のセラミックス52とを主成分とする焼結体とするのがよい。この場合の酸素イオン導電性のセラミックス52として、LSM(ランタンストロンチウムマンガナイト)、LSC(ランタンストロンチウムコバルタイト)、SSC(サマリウムストロンチウムコバルタイト)などを用いるのがよい。
固体電解質1は、酸素イオン導電性がある、固体酸化物、溶融炭酸塩、リン酸、固体高分子などを用いることができる。円筒形に焼結されたものを購入する。固体酸化物1としては、SSZ、YSZ、SDC、LSGM、GDCなどを用いるのがよい。
【0021】
本実施の形態では、分解対象のガスはアンモニア(NH3)とし、酸素イオンを供給する気体は、空気すなわち酸素(O2)とする。アノード2に導入されたアンモニアは、2NH3+3O2−→N2+3H2O+6e−の反応(アノード反応)をする。反応後の気体であるN2+3H2Oはアノードから放出される。また、カソード5に導入された空気中の酸素は、O2+2e−→2O2−の反応(カソード反応)をする。酸素イオンは、カソード5中のLSM52から固体電解質1を通って、アノード2に到達する。アノード2に到達した酸素イオンは、アンモニアと上記反応をして、アンモニアは分解される。分解されたアンモニアは、窒素ガスおよび水蒸気(H2O)となって、放出される。アノード2で生成した電子e−は、負荷5を経てカソード5に向かって流れる。上記の反応の結果、アノード2とカソード5との間に電位差が生じ、カソード5は、アノード2よりも電位が高くなる。
【0022】
図4は、アノード2における電気化学反応を説明するための図である。アノード2は、上述のように、表面酸化された金属粒連鎖体21と、SSZ22との焼結体で構成される。金属粒連鎖体21の金属は、ニッケル(Ni)とするのがよい。Niに鉄(Fe)を少し含むものであってもよい。さらに好ましくはTiを2〜10000ppm程度の微量含むものである。(1)Ni自体、アンモニアの分解を促進する触媒作用を有する。また、FeやTiを微量含むことでさらに触媒作用を高めることができる。さらに、このNiを酸化させて形成されたニッケル酸化物は、これら金属単味の促進作用をさらに大きく高めることができる。(2)上記の触媒作用に加えて、アノードにおいて、酸素イオンを分解反応に参加させている。すなわち、分解を電気化学反応のなかで行う。上記のアノード反応2NH3+3O2−→N2+3H2O+6e−では、酸素イオンの寄与があり、アンモニアの分解速度を大きく向上させる。(3)アノード反応では、自由な電子e−が生じる。電子e−がアノード2に滞留すると、アノード反応の進行は、妨げられる。金属粒連鎖体21は、ひも状に細長く、酸化層21bで被覆された中身21aは良導体の金属(Ni)である。電子e−は、ひも状の金属粒連鎖体の長手方向に、スムースに流れる。このため、電子e−がアノード2に滞留することはなく、金属粒連鎖体21の中身21aを通って、外に流れる。金属粒連鎖体21により、電子e−の通りが、非常に良くなる。要約すると、本発明の実施の形態におけるアノードは、次の(1)、(2)および(3)の作用を有する。
(1)ニッケル粒連鎖体のニッケル酸化層による分解反応の促進(高い触媒機能)
(2)酸素イオンによる分解促進(電気化学反応の中での分解促進)
(3)金属粒連鎖体のひも状良導体による電子の導通性確保(高い電子伝導性)
上記の(1)、(2)および(3)によって、アノード反応は非常に大きく促進される。温度を上げて、触媒に分解対象ガスを接触させるだけで、その分解対象ガスの分解は進行する。しかし、上記のように、燃料電池を構成する素子において、カソード5からイオン導電性の固体電解質1を経て、酸素イオンを反応に関与させ、その結果、生じる電子を外に導通させることで、上記の(1)、(2)および(3)により、分解反応速度は飛躍的に向上する。
【0023】
図5は、カソード5における電気化学反応を説明するための図である。本実施の形態におけるカソード5は、上述のように、Ag粒子51と、LSM52とで構成される。この中で、Ag51はカソード反応O2+2e−→2O2−を大きく促進させる触媒機能を有する。この結果、カソード反応は非常に大きい速度で進行することができる。
【0024】
次に、図6により、円筒形MEA7の製造方法の概要について説明する。図7には、アノード2、およびカソード5ごとに、焼成を行う工程を示す。まず、市販されている円筒形固体電解質1を購入して準備する。次いで、カソード5を形成する場合は、所定の流動性を持つようにカソード構成材料を溶媒に溶かした溶液を調整して、円筒形固体電解質の内面に均等になるように塗布する。次いで、カソード5に適切な焼成条件で焼成する。このあとアノード2の形成に移る。図6に示す製造方法の他に、多くのバリエーションがある。焼成回数を1回ですます場合で、図6に示すように、各部分ごとに焼成を行うのではなく、塗布状態のまま、各部分を形成して、最後に、各部分の最大公約数的な条件で焼成を行う。この他、多くのバリエーションがあり、各部分を構成する材料と、目標とする分解効率と、製造経費等を総合的に考えて製造条件を決めることができる。
【0025】
上記の円筒形MEAの製造方法における各部分の材料、焼成条件等の具体例は、次にとおりである。
1.アノード
(1)金属粒連鎖体21
金属粒連鎖体21は、還元析出法によって製造するのがよい。この金属粒連鎖体21の還元析出法については、特開2004−332047号公報などに詳述されている。ここで紹介されている還元析出法は、還元剤として3価チタン(Ti)イオンを用いる方法であり、析出する金属粒(Ni粒など)は微量のTiを含む。このため、Ti含有量を定量分析することで、3価チタンイオンによる還元析出法で製造されたものと特定することができる。3価チタンイオンとともに存在する金属イオンを変えることで、所望の金属の粒を得ることができる。Niの場合はNiイオンを共存させる。Feイオンを微量加えると、微量Feを含むNi粒連鎖体が形成される。
また、連鎖体を形成するには、金属が強磁性金属であり、かつ所定のサイズ以上であることを要する。NiもFeも強磁性金属なので、金属粒連鎖体を容易に形成することができる。サイズについての要件は、強磁性金属が磁区を形成して、相互に磁力で結合し、その結合状態のまま金属の析出→金属層の成長が生じて、金属体として全体が一体になる過程で、必要である。所定サイズ以上の金属粒が磁力で結合した後も、金属の析出は続き、たとえば結合した金属粒の境界のネックは、金属粒の他の部分とともに、太く成長する。アノード2に含まれる金属粒連鎖体21の平均直径Dは5nm以上、500nm以下の範囲とするのがよい。また、平均長さLは0.5μm以上、1000μm以下の範囲とするのがよい。また、上記平均長さLと平均径Dとの比は3以上とするのがよい。ただし、これら範囲外の寸法を持つものであってもよい。
(2)表面酸化
金属粒連鎖体または金属粒の表面酸化処理は、(i)気相法による熱処理酸化、(ii)電解酸化、(iii)化学酸化の3種類が好適な手法である。(i)では大気中で500〜700℃にて1〜30分処理するのがよい。最も簡便な方法であるが、酸化膜厚の制御が難しい。(ii)では標準水素電極基準で3V程度に電位を印加し、陽極酸化することにより表面酸化を行うが、表面積に応じ電気量により酸化膜厚を制御できる特徴がある。しかし、大面積化した場合、均一に酸化膜をつけることは難しい手法である。(iii)では硝酸などの酸化剤を溶解した溶液に1〜5分程度浸漬することで表面酸化する。酸化膜厚は時間と温度、酸化剤の種類でコントロールできるが薬品の洗浄が手間となる。いずれの手法も好適であるが、(i)または(iii)がより好ましい。
望ましい酸化層の厚みは、1nm〜100nmであり、より好ましくは10nm〜50nmの範囲とする。ただし、この範囲外であってもかまわない。酸化皮膜が薄すぎると触媒機能が不十分となる。また、わずかな還元雰囲気でもメタライズされてしまう恐れがある。逆に酸化皮膜が厚すぎると触媒性は充分保たれるが、反面、界面での電子伝導性が損なわれ、発電性能が低下する。
(3)焼成条件
SSZの原料粉末の平均径は0.5μm〜50μm程度とする。表面酸化された金属粒連鎖体21と、SSZ22との配合比は、mol比で0.1〜10の範囲とする。焼結方法は、たとえば大気雰囲気中で、温度1200℃〜1600℃の範囲に、30分〜180分間保持することで行う。
【0026】
2.カソード
(1)銀
Ag粒子の平均径は、10nm〜100nmとするのがよい。
(2)焼成条件
SSZの平均径は0.5μm〜50μm程度のものを用いるのがよい。銀と、SSZとの配合比は、0.01〜10程度とするのがよい。焼成条件は、大気雰囲気で、1000℃〜1600℃に、30分〜180分間程度保持する。
【0027】
本実施の形態では、円筒形MEA7の外画の流路R2を占める、すべてめっきで形成された金属多孔体11が、重要な役割を演じる。すなわち、MEA7の外側の流路R2を金属多孔体11で占めることによって、(1)除害対象のアンモニアの流れを乱流化して、アノード表面に接触する気体流の部分を絶えず剥ぎ取り、新たなアンモニア含有気体を供給することができる。この結果、アンモニアの分解効率を高めることができる。また、(2)金属多孔体11の存在によって、アンモニア含有気体を未反応のまま素通りするのを抑止することができる。さらに、(3)導電性が高いため、アノード集電体として機能する。
上記の金属多孔体11の作用は、圧力損失をできるだけ増大させずに得ることが好ましい。この点、すべてめっきで形成された金属多孔体11は、気孔率を高く、0.6以上0.98以下にとることができる。したがって、すべてめっきで形成された金属多孔体11は、上記(1)〜(3)の作用に加えて、(4)圧力損失の増大を抑制することができる。
【0028】
図7は、すべてめっきで形成された金属多孔体の製造方法の一例を示す図である。図7において、まずウレタン等の樹脂に発泡処理を施し発泡させたものを準備する。次いで、発泡した気孔を連続する気孔連続化処理を行う。気孔連続化処理は、除膜処理を主内容とする。孔の上に出来た薄膜を爆発処理等の加圧処理もしくは化学処理により除膜することで連続気孔化する。このあと、気孔内壁に、導電性炭素膜を付着させるか、または無電解めっき等により導電薄膜を形成する。次いで、電気めっきによって、金属めっき層を導電性炭素膜または導電薄膜上に形成する。この金属めっき層が立体網状金属体の骨格部となる。金属めっきはニッケルイオンを含むめっき液を用い、Niめっき層を形成する。Niは、比較的高い耐高温酸化性を有し、かつめっき層の形成が容易である。次いで、熱処理によって樹脂を消散させて、金属めっき層のみを残して、Ni多孔体またはNiめっき多孔体とする。
【0029】
図7に示す方法で製造したNi多孔体11の、比表面積(y:m2/m3)と孔径(x:mm)との関係を図8に示す。図8の小黒丸が実測値である。孔径0.05mm〜3.2mmにわたって、上記の方法で製造することができる。実測値は、ウレタンを用いた場合は、(x−0.3)y=400または600の双曲線に比して、同じ孔径において大きな比表面積を持つ。ここで双曲線の孔径の最小極限値(漸近線)の0.3mmは、ウレタンを用いた場合のものである。(x−0.3)yの値が大きいと、流路R2を経てアノード2に導入されるアンモニア含有気体と接触して、気体を乱流状態にしてアノード2が常に新しい気体と接触して反応できる機能を保持しながら、圧力損失を低くできる効果を生み出す。このため、400≦(x−0.3)y、とするのがよい。より好ましくは、600≦(x−0.3)y、とするのがよい。孔径をあまり大きくすると、分解対象の成分ガスの素通りなどが生じるおそれがあるので、上限は3000程度、より好ましくは2000程度とするのがよい。
なお、ウレタンの代わりにメラミンを用いた場合には、孔径の最小極限値は0.05mmとなる。メラミンを用いて製作した骨格部については、孔径と比表面積との積の表式は示さないが、気孔率が0.6以上0.98以下の範囲に入れば、メラミンを用いて製作した金属多孔体も本発明の範囲に入る。
金属粉焼結体の場合、孔径は0.05mm〜0.3mmの範囲、より好ましくは0.10〜0.2mmの範囲にある。また、比表面積は、ウレタンの樹脂多孔体鋳型を用いて製作した図8に示す関係(x−0.3)y=400よりも、かなり小さい範囲にある。気孔率は、骨格の形状にも影響を受けるが、一般的に気孔率が高いものほど比表面積は大きい。したがって、図7に示す方法で作製したNi多孔体は、同じ導電性、同じ乱流生成作用を得ながら、金属粉焼結体よりも圧力損失を低下することができる。
【0030】
図9(a)は、1つの円筒形MEA7を用いた場合のガス除害装置であり、また、図9(b)は、図9(a)に示すものを、複数(12個)、並列に配置した構成のガス除害装置である。1つのMEA7では処理容量が不足する場合に、複数の並列配置は、面倒な加工無しに容量増大をはかることができる。複数のどの円筒形MEA7についても、内面側に空気を大量に流して、円筒形MEA7の両端に位置する、第1および第2シール部の温度上昇を抑制することができ、ろう付けによる接合を避けて、着脱自由のシール部材31,36a,36bを用いることができる。また、加熱装置であるヒーター41については、複数、並列配置した円筒形MEA7の全体をまとめて結束する態様により、設けることができる。このような全体をまとめて結束する態様をとることで、小型化をはかることができる。MEA7を1つ用いる場合と同様に、複数、並列配置するMEA7の態様の場合も、空気を流す方向と、アンモニア含有気体を流す方向とは逆にすることで、両端のシール部ともに、所定温度以下に抑えることができる。
【0031】
(本発明の他の実施の形態)
本発明のガス除害装置は、表1に示すすべての除害反応R1〜R7に用いることができる。上記実施の形態1は、反応R1について説明した。本発明のガス除害装置は、表1以外のガス除害反応にも用いてもよい。
【0032】
【表1】
【0033】
アンモニアの除害についていえば、その他にR2〜R4の反応が可能である。このうち反応R4は燃料電池反応ではなく電気分解反応であるが、電力の取り出しと投入との相違があるだけで、電気化学反応という点で、上記の実施の形態1と同じである。また、VOC(Volatile Organic Compounds)の除害、NOxの除害もある。これらすべての電気化学反応について、円筒形MEA7を用いることで、除害装置に組み立てる際、強度的に安定しており、また組み立てた後において高い耐久性を得ることができる。また、複雑で高精度の加工をすることなく、複数本の円筒形のMEAを並列配置することで、時間当たりの分解容量を増大させることができる。また、円筒形のMEAの内径等を調整することで、低圧損を容易に実現することができる。さらに電気化学反応には薬液等が不要なので、ランニング経費を低くすることができる。
【実施例】
【0034】
計算によって、次の実施例1および2をシミュレートした結果について説明する。
(実施例1−アンモニア含有気体を流したときの出口濃度に及ぼす流路R2の厚み(径方向厚み)の影響−)
条件は次のとおりである。
(1)除害装置には、図1に示す装置を用いた。ただし、空気流の方向と、アンモニア含有気体の方向とは、同じ方向とした。
(2)円筒形MEA7の長さ200mm、外筒9の外径35mm
(3)アンモニア含有気体:アンモニアと水素との混合気体で、混合比は1:1
混合気体の流量10SLM一定
(4)MEA7と外筒9との間には、金属多孔体11を配置
(5)アノードに到達したアンモニアは100%分解すると仮定
上記の前提条件の下で、表2および図10に示す結果を得た。
【0035】
【表2】
【0036】
図10(表2)によれば、アンモニアモル濃度1ppm以下にするのに、MEA外側流路R2の厚みを3mm程度にすればよいことが分かる。流路R2の径方向の厚み3mmは、容易に実行可能な厚みである。これによって、脆弱な素材である固体電解質を円筒形にすることで、実用化可能なアンモニア分解性能を得ながら、強度向上により組み立て歩留まりおよび耐久性を高めることができる。
【0037】
(実施例2−両端部の最高温度に及ぼす、空気等の流れ方向(同方向または逆方向)の影響−)
条件はつぎのとおりである。
(1)円筒形MEA:長さ600mm、直径(外径)30mm、厚み5mm
(2)ヒーター:長さ400mm
(3)温度:ヒーター設定温度850℃、MEA高温部温度780℃〜800℃
(4)排気ガス(アンモニア含有ガス):流量5L/min
(5)空気流量:10L/min〜250L/min
結果を表3および図11に示す。
【0038】
【表3】
【0039】
表3および図11より、2つの顕著な傾向を認めることができる。
(E1)空気流量の増大にともないMEA両端部の最高温度は、急激に低下する。これによって、空気による冷却効果を明確に知ることができる。
(E2)空気とアンモニア含有気体とを逆方向に流すことにより、最高温度を200℃程度下げることができる。この結果、空気流量100L/min以上流して、排気ガスと逆方向にすることで、400℃以下にすることが可能である。これによって、高価なろう付けによる接合を避けて、ゴム系またはガラス系のOリングによるシールが可能になり、経済性を向上させることができる。
【0040】
上記において、本発明の実施の形態について説明を行ったが、上記に開示された本発明の実施の形態は、あくまで例示であって、本発明の範囲はこれら発明の実施の形態に限定されない。本発明の範囲は、特許請求の範囲の記載によって示され、さらに特許請求の範囲の記載と均等の意味および範囲内でのすべての変更を含むものである。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明によれば、小型、低いランニングコスト、低圧損で、かつ強度安定性が高く耐久性が高い、ガス除害装置を得ることができ、さらに分解対象ガスの相手側の気体に空気を用いる場合には、空気を円筒形内側に大量に通すことで、MEAの両端部の温度上昇を抑えることができ、高価なろう付けによる接合を避けて、ゴム系またはガラス系Oリングによるシールが可能になる。
【符号の説明】
【0042】
1 円筒形固体電解質、2 アノード、5 カソード、7 円筒形MEA、9 外筒、10 ガス分解装置(アンモニア分解装置)、11 金属多孔体(アノード集電体)、21 金属粒連鎖体、21a 金属粒連鎖体の芯部(金属部)、21b 酸化層、22 アノードのイオン導電性セラミックス(SSZなど)、31 第1シール部材、32 筒状接続体、33 チューブ、36 第2シール部材、36a 外筒端シール部材、36b 外筒内側スペーサリング、37 筒状接続体、38 チューブ、41 加熱装置(ヒーター)、51 銀粒子、52 カソードのイオン導電性セラミックス(LSMなど)、R1 MEA内面側流路、R2 MEA外面側流路。
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス除害装置であって、より具体的には、組み立てが容易で、耐久性に優れ、有害ガスを効率よく分解することができる、ガス除害装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
環境への意識の高まりから、廃ガス中の臭気成分であるアンモニア等を、ppmオーダーまで分解することを主目的とする除害装置に関心が集まっている。たとえば半導体製造装置の廃ガスには、アンモニア、水素等が含まれるのが普通であり、アンモニアの異臭を完全に除去するには、ppmオーダーにまで除害する必要がある。この目的のために、半導体製造装置の廃ガス放出の際にスクラバーを通して、薬品を含む水分に有害ガスを吸収させる方法が多く用いられてきた。
一方、エネルギーや薬品等の投入なしに、安価なランニングコストを得るために、水素酸素燃料電池型分解方式を用いた、半導体製造装置の排気ガス処理の提案もされている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−45472号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のスクラバーによれば、アンモニア等の除害はppmオーダーまで可能であるが、薬品や外部エネルギー(燃料)を必要とし、さらに触媒の定期的交換やメインテナンスを要し、ランニングコストが高いという問題がある。とくに構成部材について長期間にわたってメインテナンスフリーは許容されない。さらに装置が大掛かりとなり、たとえば既存の設備に付加的に設ける場合に配置が難しい場合も生じる。
一方、水素酸素燃料電池型分解方式については、ppmオーダーまで除害を徹底させると、燃料極において排気ガスの長い流路が必要となり、圧力損失の増大を招く。さらに、水素酸素燃料電池分解方式におけるMEA(Membrane Electrode Assembly)は、強度的に脆弱であり、組み立て時の取り扱いが非常に難しいという問題がある。とくに多層に組み立てる場合に困難性が高く、その結果、組み立て工数の増大や歩留まり低下を招きやすい。
【0005】
本発明は、組み立て時の取り扱いが容易で、耐久性に優れ、低いランニングコスト、かつ低圧損のガス除害装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のガス除害装置は、ガス成分を電気化学反応によって除害する装置である。このガス除害装置は、円筒形の固体電解質、該円筒形の内面に接して位置する円筒形の第1電極、および該円筒形の外面に接して位置する円筒形の第2電極、を主構成部とする円筒形のMEAと、MEAの両端において、該MEAの内側と外側とを隔離しながら固定するための第1シール部と、MEAを取り囲むように位置する外筒と、外筒の両端において該外筒の内側と外側とを隔離しながら固定するための第2シール部と、外筒を囲む筒状の加熱装置とを備えることを特徴とする。
【0007】
上記の円筒形MEAは、除害装置に組み立てる際、強度的に安定しており、また組み立てた後において高い耐久性を得ることができる。また、複数本の円筒形のMEAを並列配置することで、時間当たりの分解容量を増大させることができる。そして、円筒形のMEAの内径等を調整することで、低圧損を容易に実現することができる。さらに電気化学反応には薬液等が不要なので、ランニング経費を低くすることができる。上記の電気化学反応は、350℃〜1000℃の温度で実用レベルに達するので、外筒を囲むように、ヒータ等の加熱装置を配置する。
【0008】
MEAにおける、第1電極をカソードとし、第2電極をアノードとし、円筒形のMEAの内側に空気を流し、MEAの外側にアンモニアを流すことができる。これによって、低圧損を維持して空気を多量に流すことで、両端に位置する第1シール部および第2シール部の温度上昇を抑制することができる。この結果、たとえばろう付けしていたシール部または接合部を、着脱自由のより簡単な部材によって構成することが可能となる。高額経費となるろう付けをやめることで、製造経費等を低減することができる。また、MEAと外筒との間にアンモニア含有気体を流すことで、未分解のまま通り抜けるアンモニア量を抑止することができる。
【0009】
空気を流す方向と、アンモニアを流す方向とを逆方向にすることができる。この除害装置に導入する前の空気およびアンモニアの温度は高温になっていない。空気とアンモニアとを逆方向に流すことで、このガス除害装置の両端ともに、高温になっていない気体が導入されることになる。このため、ガス除害装置の両端に位置する第1および第2シール部は、高温になりにくい。この結果、第1および第2シール部を、たとえばろう付け等の高耐熱性の手段によって形成しなくてもよくなる。これに比して、空気とアンモニアとを同じ方向に流した場合、出口側の端では、両方の気体共に高温になり、出口側の端の第1シール部と第2シール部は高温になる。このため、ろう付け等によらなければ耐熱性が不足するおそれを生じる。
【0010】
第1シール部および第2シール部を、脱着自在の部材で形成することができる。MEAの両端において高温になりにくいので、たとえばゴム系またはガラス系のOリングを用いて、工作精度をそれほど要しない機構によってシール部を構成することができる。
【0011】
MEAと外筒との間に位置するアノード集電体を備え、該アノード集電体を、連続する気孔を有する、すべてめっきで形成された金属多孔体で形成することができる。すべてめっきで形成された金属多孔体は、気孔率を高くすることができ、比較的低圧損であり通気性に優れている。このため、アンモニアの流れを乱流化して、アノードにおけるアンモニアの分解反応を促進させることができる。また、アンモニアの流れを乱流化する程度の障害物としても機能して、アンモニアの素通り(未反応のままの通過)を防止することができる。また、上記の金属多孔体は、金属めっきにより形成されるので、導電性に優れており、電気化学反応における電子の導電体として機能する。
【0012】
カソードは、銀粒子と、イオン導電性セラミックスとを備え、集電体を兼ね、別体のカソード集電体を含まない構成をとることができる。これによって、空気を低圧損で多量に流すことができ、第1および第2シール部における温度上昇をより一層確実に抑制することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、組み立て時の取り扱いが容易で、耐久性に優れ、低いランニングコスト、かつ低圧損のガス除害装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施の形態におけるガス分解装置であるアンモニア分解装置を示す図である。
【図2】図1のアンモニア分解装置の部分拡大図である。
【図3】図1のアンモニア分解装置のMEAにおける電気化学反応を説明するための図である。
【図4】アノードでの電気化学反応を説明するための図である。
【図5】カソードでの電気化学反応を説明するための図である。
【図6】円筒形MEAの製造方法のフローチャートである。
【図7】MEAの外側流路に配置される金属多孔体の製造方法のフローチャートである。
【図8】図7の方法で製造した金属多孔体の比表面積と孔径との関係を示す図である。
【図9】アンモニア分解装置の側面図であり、(a)は1つの円筒形MEAを用いた例、(b)は複数の円筒形MEAを並列配置した例、を示す図である。
【図10】実施例におけるシミュレーション結果であり、出口でのアンモニアモル濃度とMEA外側流路の厚みとの関係を示す図である。
【図11】実施例におけるシミュレーション結果であり、空気流方向と排気ガス(アンモニア含有気体)流方向が同方向の場合と逆方向の場合における、MEA両端部の最高温度と空気流量との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1は、本発明の実施の形態におけるガス除害装置であるアンモニア分解装置10を示す図である。このアンモニア分解装置10では、円筒形の固体電解質の内面を覆うようにカソード(第1電極)が設けられ、また外面を覆うようにアノード(第2電極)が設けられた、円筒形MEA7(1,2,5)を用いる(図3参照)。円筒形MEAの内面側に空気を通す流路R1が設けられ、外面側にアンモニアを含む気体を通す流路R2が設けられる。MEA7の内面を通る流路R1は、チューブ33と、筒状接続体32と、円筒形MEA7とで形成される。円筒形MEA7は、筒状接続体32との間に第1シール部材31を介在させて固定される。
MEA7の外面を通る円筒状の流路R2は、その内面側を、上記の流路R1を形成する(チューブ33/筒状接続体32/MEA7)によって形成され、外面側を、(チューブ38/筒状接続体37/外筒9)によって形成される。すなわち流路R2は、(チューブ33/筒状接続体32/MEA7)と、(チューブ38/筒状接続体37/外筒9)との間に形成される。外筒9は、筒状接続体37との間に、第2シール部材36a,36bを介在させて固定される。第2シール部材36は、外筒端シール部材36aと、外筒内側スペーサリング36bとで構成される。外筒9、チューブ33,38、筒状接続体32,37は、ステンレススティール製とするのがよい。
外筒9を取り囲むように、加熱装置のヒーター41が配置され、アンモニア分解の場合、650℃〜950℃の範囲の所定温度に加熱する。ヒーター41には、たとえばカーボンヒーターを用いるのがよい。
【0016】
上記のような円筒形MEA7は、素材は強度的に脆弱であるが、円筒形であることによって強度を高めることができる。薄片状のMEAを多段に積層した板状多層MEAに比べて、強度的に安定している。このため、ガス分解装置10に組み立てる際の取り扱いにおいて、少しの力の付加で破損することが避けられ、製造歩留まりの向上を得ることができる。板状多層MEAの場合、高い寸法精度がないと、少しの押さえ込みなどによって簡単に破損してしまう。また、組み立てた後でも、稼働と非稼働とのサイクルで、加熱と冷却とを繰り返すので、板状多層MEAの場合は、応力集中部から亀裂を発生して破損にいたりやすい。この点で、円筒形MEA7は、単に端部で固定するので、加工精度はそれほど高くする必要はなく、加熱と冷却のサイクルで亀裂が発生しやすい応力集中部は少ない。このため、使用後の耐久性にも優れている。
【0017】
図2は、図1の円筒形MEA7の端の部分の拡大図である。MEA7の外側の流路R2は、すべてめっきで形成された金属多孔体11によって占められている。MEA7の外側の流路R2を金属多孔体11で占めることによって、除害対象のアンモニアの流れを乱流化して、アノード表面に接触する気体流の部分を絶えず剥ぎ取り、新たなアンモニア含有気体を供給することができる。この結果、アンモニアの分解効率を高めることができる。また、金属多孔体11の存在によって、アンモニア含有気体を未反応のまま素通りするのを大きく抑制することができる。さらに、導電性が高いため、アノード集電体として機能する。
このあと説明するように、カソード5は、イオン導電性だけでなく導電性(電子伝導度)も高いため、集電体を配置する必要はない。しかし、カソード集電体を配置してもよい。カソード集電体を配置する場合には、アノード集電体と同様に、すべてめっきで形成され、連続した気孔を有する金属多孔体を用いるのがよい。
【0018】
図2において、注目すべきポイントは、次の2つのシール部を形成する部材である。
(1)円筒形MEA7と筒状接続体32との間に介在する第1シール部材31
(2)外筒9と筒状接続体37との間に介在する第2シール部材36(36a,36b)
円筒形MEAの端面が当接する第1シール部材31、および外筒9の端面が当接する第2シール部材36aは、ガラスシール材であり、プリフォームによりリング状に形成されている。また、外筒9の端の内面と、筒状接続体37の内面側の突出部との間に介在する第2シール部材36bは、ゴム系またはガラス系の絶縁性Oリングである。
ヒータ41により、MEA7の電気化学反応箇所は、650℃〜950℃に加熱されるので、上記の第1および第2シール部材31,36の位置の温度は高くなる。このため、空気を円筒形MEA7の内面側に多量に流すことがなければ、上記のシールは、ろう付けで接合する必要がある。ろう付けは、ろう材自体高価であるだけでなく、ろう付け工数を要し、製造コストを増大させる。本実施の形態では、次の構成によって、シール部の高温化を抑制する。
(1)空気を円筒形MEA7の内面側に多量に流し、かつ、アンモニア含有気体を外面側に流す。これによって、円筒形内面側にアンモニア含有気体を流すことによる、アンモニアの素通りを防止しながら、空気流による冷却効果を確保する。
(2)空気の流れと、アンモニア含有気体の流れとを、逆方向にする。電気化学反応前の、気体およびアンモニア含有気体は、室温か、または室温よりも少し高い温度である。逆方向から流すと、一方の端では一方の気体が冷却を行い、他方の端では他方の気体が冷却を行うことができる。この結果、両端に位置するシール部31,36を両端ともに温度上昇を抑制することができる。これに比して、両方の気体を同じ方法に流す場合は、入口側の端のシール部は十分に冷却されるが、出口側の端では、両方の気体ともに加熱されているので、シール部の温度は大きく上昇する。このため、出口側の端では、たとえばろう付けが避けられず、製造コスト上昇をもたらす可能性が高い。
しかし、空気とアンモニア含有気体とを常に逆方向に流す必要はなく、要求使用(分解対象ガス、加熱温度など)に応じて、同じ方向に流してもよい。アンモニア分解のように高温にしない場合、たとえばNOxの分解等では、加熱温度は350℃〜650℃程度なので、同方向に流してもよい場合が増える。
【0019】
図3は、本実施の形態におけるアンモニア分解装置の電気化学反応を示す図である。図2において、分解対象の流体(ガス)は、流路R2を経てアノード2に導入され、また酸素イオンを供給するための空気は流路R1を経てカソード5に導入される。導入された気体は、アノード2(カソード5)で所定の反応をした後、放出される。所定の反応は、発電を伴う電気化学反応であり、アノード集電体11およびカソード5から電力を取り出し、負荷に電力を供給することができる。すなわちガス分解装置10は燃料電池として機能する。負荷としては、加熱装置、たとえばヒーターとすることができる。
【0020】
アノード2は、表面酸化されて酸化層を有する金属粒連鎖体21と、酸素イオン導電性のセラミックス22とを主成分とする焼結体とするのがよい。酸素イオン導電性のセラミックス22としては、SSZ(スカンジウム安定化ジルコニア)、YSZ(イットリウム安定化ジルコニア)、SDC(サマリウム安定化セリア)、LSGM(ランタンガレート)、GDC(ガドリア安定化セリア)などを用いることができる。
また、カソード5は、銀(Ag)51と、酸素イオン導電性のセラミックス52とを主成分とする焼結体とするのがよい。この場合の酸素イオン導電性のセラミックス52として、LSM(ランタンストロンチウムマンガナイト)、LSC(ランタンストロンチウムコバルタイト)、SSC(サマリウムストロンチウムコバルタイト)などを用いるのがよい。
固体電解質1は、酸素イオン導電性がある、固体酸化物、溶融炭酸塩、リン酸、固体高分子などを用いることができる。円筒形に焼結されたものを購入する。固体酸化物1としては、SSZ、YSZ、SDC、LSGM、GDCなどを用いるのがよい。
【0021】
本実施の形態では、分解対象のガスはアンモニア(NH3)とし、酸素イオンを供給する気体は、空気すなわち酸素(O2)とする。アノード2に導入されたアンモニアは、2NH3+3O2−→N2+3H2O+6e−の反応(アノード反応)をする。反応後の気体であるN2+3H2Oはアノードから放出される。また、カソード5に導入された空気中の酸素は、O2+2e−→2O2−の反応(カソード反応)をする。酸素イオンは、カソード5中のLSM52から固体電解質1を通って、アノード2に到達する。アノード2に到達した酸素イオンは、アンモニアと上記反応をして、アンモニアは分解される。分解されたアンモニアは、窒素ガスおよび水蒸気(H2O)となって、放出される。アノード2で生成した電子e−は、負荷5を経てカソード5に向かって流れる。上記の反応の結果、アノード2とカソード5との間に電位差が生じ、カソード5は、アノード2よりも電位が高くなる。
【0022】
図4は、アノード2における電気化学反応を説明するための図である。アノード2は、上述のように、表面酸化された金属粒連鎖体21と、SSZ22との焼結体で構成される。金属粒連鎖体21の金属は、ニッケル(Ni)とするのがよい。Niに鉄(Fe)を少し含むものであってもよい。さらに好ましくはTiを2〜10000ppm程度の微量含むものである。(1)Ni自体、アンモニアの分解を促進する触媒作用を有する。また、FeやTiを微量含むことでさらに触媒作用を高めることができる。さらに、このNiを酸化させて形成されたニッケル酸化物は、これら金属単味の促進作用をさらに大きく高めることができる。(2)上記の触媒作用に加えて、アノードにおいて、酸素イオンを分解反応に参加させている。すなわち、分解を電気化学反応のなかで行う。上記のアノード反応2NH3+3O2−→N2+3H2O+6e−では、酸素イオンの寄与があり、アンモニアの分解速度を大きく向上させる。(3)アノード反応では、自由な電子e−が生じる。電子e−がアノード2に滞留すると、アノード反応の進行は、妨げられる。金属粒連鎖体21は、ひも状に細長く、酸化層21bで被覆された中身21aは良導体の金属(Ni)である。電子e−は、ひも状の金属粒連鎖体の長手方向に、スムースに流れる。このため、電子e−がアノード2に滞留することはなく、金属粒連鎖体21の中身21aを通って、外に流れる。金属粒連鎖体21により、電子e−の通りが、非常に良くなる。要約すると、本発明の実施の形態におけるアノードは、次の(1)、(2)および(3)の作用を有する。
(1)ニッケル粒連鎖体のニッケル酸化層による分解反応の促進(高い触媒機能)
(2)酸素イオンによる分解促進(電気化学反応の中での分解促進)
(3)金属粒連鎖体のひも状良導体による電子の導通性確保(高い電子伝導性)
上記の(1)、(2)および(3)によって、アノード反応は非常に大きく促進される。温度を上げて、触媒に分解対象ガスを接触させるだけで、その分解対象ガスの分解は進行する。しかし、上記のように、燃料電池を構成する素子において、カソード5からイオン導電性の固体電解質1を経て、酸素イオンを反応に関与させ、その結果、生じる電子を外に導通させることで、上記の(1)、(2)および(3)により、分解反応速度は飛躍的に向上する。
【0023】
図5は、カソード5における電気化学反応を説明するための図である。本実施の形態におけるカソード5は、上述のように、Ag粒子51と、LSM52とで構成される。この中で、Ag51はカソード反応O2+2e−→2O2−を大きく促進させる触媒機能を有する。この結果、カソード反応は非常に大きい速度で進行することができる。
【0024】
次に、図6により、円筒形MEA7の製造方法の概要について説明する。図7には、アノード2、およびカソード5ごとに、焼成を行う工程を示す。まず、市販されている円筒形固体電解質1を購入して準備する。次いで、カソード5を形成する場合は、所定の流動性を持つようにカソード構成材料を溶媒に溶かした溶液を調整して、円筒形固体電解質の内面に均等になるように塗布する。次いで、カソード5に適切な焼成条件で焼成する。このあとアノード2の形成に移る。図6に示す製造方法の他に、多くのバリエーションがある。焼成回数を1回ですます場合で、図6に示すように、各部分ごとに焼成を行うのではなく、塗布状態のまま、各部分を形成して、最後に、各部分の最大公約数的な条件で焼成を行う。この他、多くのバリエーションがあり、各部分を構成する材料と、目標とする分解効率と、製造経費等を総合的に考えて製造条件を決めることができる。
【0025】
上記の円筒形MEAの製造方法における各部分の材料、焼成条件等の具体例は、次にとおりである。
1.アノード
(1)金属粒連鎖体21
金属粒連鎖体21は、還元析出法によって製造するのがよい。この金属粒連鎖体21の還元析出法については、特開2004−332047号公報などに詳述されている。ここで紹介されている還元析出法は、還元剤として3価チタン(Ti)イオンを用いる方法であり、析出する金属粒(Ni粒など)は微量のTiを含む。このため、Ti含有量を定量分析することで、3価チタンイオンによる還元析出法で製造されたものと特定することができる。3価チタンイオンとともに存在する金属イオンを変えることで、所望の金属の粒を得ることができる。Niの場合はNiイオンを共存させる。Feイオンを微量加えると、微量Feを含むNi粒連鎖体が形成される。
また、連鎖体を形成するには、金属が強磁性金属であり、かつ所定のサイズ以上であることを要する。NiもFeも強磁性金属なので、金属粒連鎖体を容易に形成することができる。サイズについての要件は、強磁性金属が磁区を形成して、相互に磁力で結合し、その結合状態のまま金属の析出→金属層の成長が生じて、金属体として全体が一体になる過程で、必要である。所定サイズ以上の金属粒が磁力で結合した後も、金属の析出は続き、たとえば結合した金属粒の境界のネックは、金属粒の他の部分とともに、太く成長する。アノード2に含まれる金属粒連鎖体21の平均直径Dは5nm以上、500nm以下の範囲とするのがよい。また、平均長さLは0.5μm以上、1000μm以下の範囲とするのがよい。また、上記平均長さLと平均径Dとの比は3以上とするのがよい。ただし、これら範囲外の寸法を持つものであってもよい。
(2)表面酸化
金属粒連鎖体または金属粒の表面酸化処理は、(i)気相法による熱処理酸化、(ii)電解酸化、(iii)化学酸化の3種類が好適な手法である。(i)では大気中で500〜700℃にて1〜30分処理するのがよい。最も簡便な方法であるが、酸化膜厚の制御が難しい。(ii)では標準水素電極基準で3V程度に電位を印加し、陽極酸化することにより表面酸化を行うが、表面積に応じ電気量により酸化膜厚を制御できる特徴がある。しかし、大面積化した場合、均一に酸化膜をつけることは難しい手法である。(iii)では硝酸などの酸化剤を溶解した溶液に1〜5分程度浸漬することで表面酸化する。酸化膜厚は時間と温度、酸化剤の種類でコントロールできるが薬品の洗浄が手間となる。いずれの手法も好適であるが、(i)または(iii)がより好ましい。
望ましい酸化層の厚みは、1nm〜100nmであり、より好ましくは10nm〜50nmの範囲とする。ただし、この範囲外であってもかまわない。酸化皮膜が薄すぎると触媒機能が不十分となる。また、わずかな還元雰囲気でもメタライズされてしまう恐れがある。逆に酸化皮膜が厚すぎると触媒性は充分保たれるが、反面、界面での電子伝導性が損なわれ、発電性能が低下する。
(3)焼成条件
SSZの原料粉末の平均径は0.5μm〜50μm程度とする。表面酸化された金属粒連鎖体21と、SSZ22との配合比は、mol比で0.1〜10の範囲とする。焼結方法は、たとえば大気雰囲気中で、温度1200℃〜1600℃の範囲に、30分〜180分間保持することで行う。
【0026】
2.カソード
(1)銀
Ag粒子の平均径は、10nm〜100nmとするのがよい。
(2)焼成条件
SSZの平均径は0.5μm〜50μm程度のものを用いるのがよい。銀と、SSZとの配合比は、0.01〜10程度とするのがよい。焼成条件は、大気雰囲気で、1000℃〜1600℃に、30分〜180分間程度保持する。
【0027】
本実施の形態では、円筒形MEA7の外画の流路R2を占める、すべてめっきで形成された金属多孔体11が、重要な役割を演じる。すなわち、MEA7の外側の流路R2を金属多孔体11で占めることによって、(1)除害対象のアンモニアの流れを乱流化して、アノード表面に接触する気体流の部分を絶えず剥ぎ取り、新たなアンモニア含有気体を供給することができる。この結果、アンモニアの分解効率を高めることができる。また、(2)金属多孔体11の存在によって、アンモニア含有気体を未反応のまま素通りするのを抑止することができる。さらに、(3)導電性が高いため、アノード集電体として機能する。
上記の金属多孔体11の作用は、圧力損失をできるだけ増大させずに得ることが好ましい。この点、すべてめっきで形成された金属多孔体11は、気孔率を高く、0.6以上0.98以下にとることができる。したがって、すべてめっきで形成された金属多孔体11は、上記(1)〜(3)の作用に加えて、(4)圧力損失の増大を抑制することができる。
【0028】
図7は、すべてめっきで形成された金属多孔体の製造方法の一例を示す図である。図7において、まずウレタン等の樹脂に発泡処理を施し発泡させたものを準備する。次いで、発泡した気孔を連続する気孔連続化処理を行う。気孔連続化処理は、除膜処理を主内容とする。孔の上に出来た薄膜を爆発処理等の加圧処理もしくは化学処理により除膜することで連続気孔化する。このあと、気孔内壁に、導電性炭素膜を付着させるか、または無電解めっき等により導電薄膜を形成する。次いで、電気めっきによって、金属めっき層を導電性炭素膜または導電薄膜上に形成する。この金属めっき層が立体網状金属体の骨格部となる。金属めっきはニッケルイオンを含むめっき液を用い、Niめっき層を形成する。Niは、比較的高い耐高温酸化性を有し、かつめっき層の形成が容易である。次いで、熱処理によって樹脂を消散させて、金属めっき層のみを残して、Ni多孔体またはNiめっき多孔体とする。
【0029】
図7に示す方法で製造したNi多孔体11の、比表面積(y:m2/m3)と孔径(x:mm)との関係を図8に示す。図8の小黒丸が実測値である。孔径0.05mm〜3.2mmにわたって、上記の方法で製造することができる。実測値は、ウレタンを用いた場合は、(x−0.3)y=400または600の双曲線に比して、同じ孔径において大きな比表面積を持つ。ここで双曲線の孔径の最小極限値(漸近線)の0.3mmは、ウレタンを用いた場合のものである。(x−0.3)yの値が大きいと、流路R2を経てアノード2に導入されるアンモニア含有気体と接触して、気体を乱流状態にしてアノード2が常に新しい気体と接触して反応できる機能を保持しながら、圧力損失を低くできる効果を生み出す。このため、400≦(x−0.3)y、とするのがよい。より好ましくは、600≦(x−0.3)y、とするのがよい。孔径をあまり大きくすると、分解対象の成分ガスの素通りなどが生じるおそれがあるので、上限は3000程度、より好ましくは2000程度とするのがよい。
なお、ウレタンの代わりにメラミンを用いた場合には、孔径の最小極限値は0.05mmとなる。メラミンを用いて製作した骨格部については、孔径と比表面積との積の表式は示さないが、気孔率が0.6以上0.98以下の範囲に入れば、メラミンを用いて製作した金属多孔体も本発明の範囲に入る。
金属粉焼結体の場合、孔径は0.05mm〜0.3mmの範囲、より好ましくは0.10〜0.2mmの範囲にある。また、比表面積は、ウレタンの樹脂多孔体鋳型を用いて製作した図8に示す関係(x−0.3)y=400よりも、かなり小さい範囲にある。気孔率は、骨格の形状にも影響を受けるが、一般的に気孔率が高いものほど比表面積は大きい。したがって、図7に示す方法で作製したNi多孔体は、同じ導電性、同じ乱流生成作用を得ながら、金属粉焼結体よりも圧力損失を低下することができる。
【0030】
図9(a)は、1つの円筒形MEA7を用いた場合のガス除害装置であり、また、図9(b)は、図9(a)に示すものを、複数(12個)、並列に配置した構成のガス除害装置である。1つのMEA7では処理容量が不足する場合に、複数の並列配置は、面倒な加工無しに容量増大をはかることができる。複数のどの円筒形MEA7についても、内面側に空気を大量に流して、円筒形MEA7の両端に位置する、第1および第2シール部の温度上昇を抑制することができ、ろう付けによる接合を避けて、着脱自由のシール部材31,36a,36bを用いることができる。また、加熱装置であるヒーター41については、複数、並列配置した円筒形MEA7の全体をまとめて結束する態様により、設けることができる。このような全体をまとめて結束する態様をとることで、小型化をはかることができる。MEA7を1つ用いる場合と同様に、複数、並列配置するMEA7の態様の場合も、空気を流す方向と、アンモニア含有気体を流す方向とは逆にすることで、両端のシール部ともに、所定温度以下に抑えることができる。
【0031】
(本発明の他の実施の形態)
本発明のガス除害装置は、表1に示すすべての除害反応R1〜R7に用いることができる。上記実施の形態1は、反応R1について説明した。本発明のガス除害装置は、表1以外のガス除害反応にも用いてもよい。
【0032】
【表1】
【0033】
アンモニアの除害についていえば、その他にR2〜R4の反応が可能である。このうち反応R4は燃料電池反応ではなく電気分解反応であるが、電力の取り出しと投入との相違があるだけで、電気化学反応という点で、上記の実施の形態1と同じである。また、VOC(Volatile Organic Compounds)の除害、NOxの除害もある。これらすべての電気化学反応について、円筒形MEA7を用いることで、除害装置に組み立てる際、強度的に安定しており、また組み立てた後において高い耐久性を得ることができる。また、複雑で高精度の加工をすることなく、複数本の円筒形のMEAを並列配置することで、時間当たりの分解容量を増大させることができる。また、円筒形のMEAの内径等を調整することで、低圧損を容易に実現することができる。さらに電気化学反応には薬液等が不要なので、ランニング経費を低くすることができる。
【実施例】
【0034】
計算によって、次の実施例1および2をシミュレートした結果について説明する。
(実施例1−アンモニア含有気体を流したときの出口濃度に及ぼす流路R2の厚み(径方向厚み)の影響−)
条件は次のとおりである。
(1)除害装置には、図1に示す装置を用いた。ただし、空気流の方向と、アンモニア含有気体の方向とは、同じ方向とした。
(2)円筒形MEA7の長さ200mm、外筒9の外径35mm
(3)アンモニア含有気体:アンモニアと水素との混合気体で、混合比は1:1
混合気体の流量10SLM一定
(4)MEA7と外筒9との間には、金属多孔体11を配置
(5)アノードに到達したアンモニアは100%分解すると仮定
上記の前提条件の下で、表2および図10に示す結果を得た。
【0035】
【表2】
【0036】
図10(表2)によれば、アンモニアモル濃度1ppm以下にするのに、MEA外側流路R2の厚みを3mm程度にすればよいことが分かる。流路R2の径方向の厚み3mmは、容易に実行可能な厚みである。これによって、脆弱な素材である固体電解質を円筒形にすることで、実用化可能なアンモニア分解性能を得ながら、強度向上により組み立て歩留まりおよび耐久性を高めることができる。
【0037】
(実施例2−両端部の最高温度に及ぼす、空気等の流れ方向(同方向または逆方向)の影響−)
条件はつぎのとおりである。
(1)円筒形MEA:長さ600mm、直径(外径)30mm、厚み5mm
(2)ヒーター:長さ400mm
(3)温度:ヒーター設定温度850℃、MEA高温部温度780℃〜800℃
(4)排気ガス(アンモニア含有ガス):流量5L/min
(5)空気流量:10L/min〜250L/min
結果を表3および図11に示す。
【0038】
【表3】
【0039】
表3および図11より、2つの顕著な傾向を認めることができる。
(E1)空気流量の増大にともないMEA両端部の最高温度は、急激に低下する。これによって、空気による冷却効果を明確に知ることができる。
(E2)空気とアンモニア含有気体とを逆方向に流すことにより、最高温度を200℃程度下げることができる。この結果、空気流量100L/min以上流して、排気ガスと逆方向にすることで、400℃以下にすることが可能である。これによって、高価なろう付けによる接合を避けて、ゴム系またはガラス系のOリングによるシールが可能になり、経済性を向上させることができる。
【0040】
上記において、本発明の実施の形態について説明を行ったが、上記に開示された本発明の実施の形態は、あくまで例示であって、本発明の範囲はこれら発明の実施の形態に限定されない。本発明の範囲は、特許請求の範囲の記載によって示され、さらに特許請求の範囲の記載と均等の意味および範囲内でのすべての変更を含むものである。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明によれば、小型、低いランニングコスト、低圧損で、かつ強度安定性が高く耐久性が高い、ガス除害装置を得ることができ、さらに分解対象ガスの相手側の気体に空気を用いる場合には、空気を円筒形内側に大量に通すことで、MEAの両端部の温度上昇を抑えることができ、高価なろう付けによる接合を避けて、ゴム系またはガラス系Oリングによるシールが可能になる。
【符号の説明】
【0042】
1 円筒形固体電解質、2 アノード、5 カソード、7 円筒形MEA、9 外筒、10 ガス分解装置(アンモニア分解装置)、11 金属多孔体(アノード集電体)、21 金属粒連鎖体、21a 金属粒連鎖体の芯部(金属部)、21b 酸化層、22 アノードのイオン導電性セラミックス(SSZなど)、31 第1シール部材、32 筒状接続体、33 チューブ、36 第2シール部材、36a 外筒端シール部材、36b 外筒内側スペーサリング、37 筒状接続体、38 チューブ、41 加熱装置(ヒーター)、51 銀粒子、52 カソードのイオン導電性セラミックス(LSMなど)、R1 MEA内面側流路、R2 MEA外面側流路。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス成分を電気化学反応によって除害する装置であって、
円筒形の固体電解質、該円筒形の内面に接して位置する円筒形の第1電極、および該円筒形の外面に接して位置する円筒形の第2電極、を主構成部とする円筒形のMEAと、
前記MEAの両端において、該MEAの内側と外側とを隔離しながら固定するための第1シール部と、
前記MEAを取り囲むように位置する外筒と、
前記外筒の両端において該外筒の内側と外側とを隔離しながら固定するための第2シール部と、
前記外筒を囲む筒状の加熱装置とを備えることを特徴とする、ガス除害装置。
【請求項2】
前記MEAにおける、第1電極をカソードとし、第2電極をアノードとし、前記円筒形のMEAの内側に空気を流し、前記MEAの外側にアンモニアを流すことを特徴とする、請求項1に記載のガス除害装置。
【請求項3】
前記空気を流す方向と、前記アンモニアを流す方向とを逆方向にすることを特徴とする、請求項2に記載のガス除害装置。
【請求項4】
前記第1シール部および第2シール部が、脱着自在の部材で形成されていることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載のガス除害装置。
【請求項5】
前記MEAと前記外筒との間に位置するアノード集電体を備え、該アノード集電体が、連続する気孔を有する、すべてめっきで形成された金属多孔体で形成されることを特徴とする、請求項2〜4のいずれか1項に記載のガス除害装置。
【請求項6】
前記カソードは、銀粒子と、イオン導電性セラミックスとを有し、集電体を兼ね、別体のカソード集電体を含まないことを特徴とする、請求項2〜5のいずれか1項に記載のガス除害装置。
【請求項1】
ガス成分を電気化学反応によって除害する装置であって、
円筒形の固体電解質、該円筒形の内面に接して位置する円筒形の第1電極、および該円筒形の外面に接して位置する円筒形の第2電極、を主構成部とする円筒形のMEAと、
前記MEAの両端において、該MEAの内側と外側とを隔離しながら固定するための第1シール部と、
前記MEAを取り囲むように位置する外筒と、
前記外筒の両端において該外筒の内側と外側とを隔離しながら固定するための第2シール部と、
前記外筒を囲む筒状の加熱装置とを備えることを特徴とする、ガス除害装置。
【請求項2】
前記MEAにおける、第1電極をカソードとし、第2電極をアノードとし、前記円筒形のMEAの内側に空気を流し、前記MEAの外側にアンモニアを流すことを特徴とする、請求項1に記載のガス除害装置。
【請求項3】
前記空気を流す方向と、前記アンモニアを流す方向とを逆方向にすることを特徴とする、請求項2に記載のガス除害装置。
【請求項4】
前記第1シール部および第2シール部が、脱着自在の部材で形成されていることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載のガス除害装置。
【請求項5】
前記MEAと前記外筒との間に位置するアノード集電体を備え、該アノード集電体が、連続する気孔を有する、すべてめっきで形成された金属多孔体で形成されることを特徴とする、請求項2〜4のいずれか1項に記載のガス除害装置。
【請求項6】
前記カソードは、銀粒子と、イオン導電性セラミックスとを有し、集電体を兼ね、別体のカソード集電体を含まないことを特徴とする、請求項2〜5のいずれか1項に記載のガス除害装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2010−274213(P2010−274213A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−130303(P2009−130303)
【出願日】平成21年5月29日(2009.5.29)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年5月29日(2009.5.29)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】
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