説明

ガソリンエンジン用排気ガス浄化装置の触媒担持体の基材と触媒担持体の製造方法

【課題】ガソリンエンジンの排気ガス浄化装置の触媒担持体の基材として、セラミック製あるいはステンレス薄板製のハニカム構造体が一般的に用いられているが、セラミック製の基材は壊れやすい点、またステンレス薄板製の基材は安価に製造できない点、加えてコンパクトに製造することが難しいといった点を解消する。
【解決手段】本発明は、複数枚の金網を積層した素材を焼結した多孔体を触媒担持体の基材とし、この基材の表面に、触媒物質を分散担持したアルミナ薄層を形成して、排気ガス浄化装置の触媒担持体を製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガソリンエンジンで駆動される自動車及び二輪車の排気ガス浄化装置に用いる触媒担持体の基材に関するもので、一般的に用いられているステンレス薄板製及びセラミック製のハニカム構造体に代わるガソリンエンジン用排気ガス浄化装置の触媒担持体の基材と触媒担持体の製造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在、ガソリンエンジンを駆動源とする自動車及び二輪車の排気ガスの浄化処理については、セラミック製あるいはステンレス薄板製のハニカム構造体を触媒担持体の基材として、当該触媒担持体中に直線的な流路を設け、これに排気ガスを通過させて、排気ガスと触媒物質を接触させて触媒反応を得ることを主としている。
【0003】
従来の触媒担持体の基材では、十分な触媒反応を得るために、排気ガスの流路を長くする、あるいは狭くすることが不可欠で、当該基材をコンパクトに成形することが難しい、あるいは製造コストが大きくなるといった問題があった。そこで、これらを解決する基材に関する先行出願の調査したところ文献は見つからなかった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
解決しようとする問題点は、従来の触媒担持体の基材では、十分な触媒反応を得るために、排気ガスの流路を長くする、あるいは狭くすることが不可欠で、当該基材をコンパクトに成形することが難しい、あるいは製造コストが大きくなるといった点である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のガソリンエンジン用排気ガス浄化装置の触媒担持体の基材は、複数の金網を積層した素材を焼結した多孔体を触媒担持体の基材とすることを主要な特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明は、触媒担持体の基材として、従来の素材に比べて比較的粗い金網を素材として焼結することで、排気ガスが通過する際の圧力損失を抑えることができる一方、排気ガスが通過する流路を容易に狭くできるという利点がある。
【0007】
また、排気ガスの通過する流路を三次元にわたる曲線状にして、排気ガスと触媒物質の接触可能性を高めることで触媒反応の効率向上を実現すること、その結果当該基材をコンパクトにできること、製造コストを低減すること、および貴重な触媒物質を節約することができるという利点がある。
【0008】
また、本発明のガソリンエンジン用排気ガス浄化装置の触媒担持体の基材は、板状の焼結金網となるから、切断、曲げによる成形の自由度がある、使用する金網の枚数を変えることで触媒担持体全体の厚みを比較的容易に調整できる、排気ガスが通過する上流に例えば還元触媒加工した触媒担持体、下流に酸化触媒加工した触媒担持体を設置することで二重構造の排気ガス浄化装置とすることができ、さらに複数の基材を交互に重ねて多重構造としたり、あるいは個々の基材毎に触媒物質の担持量を変化させる、といった自由度の確保が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1(a)〜(c)は、本発明の効果を確認するための実験の結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は、例えば以下の形態で実施可能である。本発明のガソリンエンジン用排気ガス浄化装置の触媒担持体の基材は、複数の金網を積層した素材を焼結し、これを一体化して板状の多孔体としたものであるが、さらにその触媒担持体の基材の表面に、触媒物質を分散担持したアルミナ薄層を形成して、ガソリンエンジン用排気ガス浄化装置に用いる触媒担持体を製造する。
【0011】
本発明のガソリンエンジン用排気ガス浄化装置の触媒担持体の基材は、触媒担持体の基材として多孔体である焼結金網を用いることで、同じサイズの板と比較して表面積を大きく確保できるとともに、開孔径の異なった金網を用いることで変化にとんだ開孔の組み合わせとすることが可能である、という利点がある。
【0012】
また、複数の金網を積層した素材を焼結によって一体化する理由は、剛性を高めることができるとともに、個々の金網の接触する線材同士、あるいは金網同士を強固に結合して個々の線材の位置ずれが起きず、安定した開孔を確保するためである。
【0013】
触媒担持体の基材となる金網は、例えば耐食性・耐熱性に優れるステンレス材料を主材料とすることが望ましい。鉄または鉄合金の材料による金網でもよいが、同様に耐食性・耐熱性を考慮した材料とすることが好ましい。
【0014】
また、触媒担持体の基材となる金網は6メッシュから20メッシュの範囲で、個々の金網の開孔径は0.5mm〜2.5mmの範囲とすることが望ましい。この理由は、排気ガスの通過抵抗をできる限り抑えて、かつ触媒物質との接触可能性を大きくして触媒効率を高めるためである。
【実施例】
【0015】
(製造)
SUS316製の金網20メッシュ(線径0.4mm、開孔0.87mm)と同16メッシュ(線径0.45mm、開孔1.1mm)を16メッシュ、20メッシュ、16メッシュ、20メッシュ、16メッシュの順番で5枚積層し、真空熱処理炉で真空及び加圧下、約1200〜1300℃で金網同士を焼結することで、板状の多孔体である触媒担持体の基材1を製造した。これを図1(a)に示す。
【0016】
同様に、SUS316製の金網16メッシュ(線径0.45mm、開孔1.1mm)と同10メッシュ(線径0.57mm、開孔2.0mm)を10メッシュ、16メッシュ、10メッシュ、16メッシュ、10メッシュの順番で5枚積層し、真空熱処理炉で真空及び加圧下、約1200〜1300℃で金網同士を焼結することで、板状の多孔体である触媒担持体の基材2を製造した。これを図1(b)に示す。
【0017】
さらに、同様に、SUS316製の金網16メッシュ(線径0.45mm、開孔1.1mm)と同8メッシュ(線径0.8mm、開孔2.4mm)を8メッシュ、16メッシュ、8メッシュ、16メッシュ、8メッシュの順番で5枚積層し、真空熱処理炉で真空及び加圧下、約1200〜1300℃で金網同士を焼結することで、板状の多孔体である触媒担持体の基材3を製造した。これを図1(c)に示す。
(確認と実施)
【0018】
前述のようにして製造した本発明の触媒担持体の基材1〜3を直径40mmの円板状に切断してから、その表面をショットブラス加工で粗面化し、その後に一般的に行われている酸化触媒加工、すなわち硝酸パラジウムを加えたアルミナゾル溶液を当該基材に塗布・乾燥後、大気雰囲気下約650℃で焼成した。
【0019】
また、基材1〜3において、担持した触媒はパラジウムのみで、担持量は、重量比でアルミナ100に対してパラジウムを2(%)とした。担持方法は、アルミナゾル溶液に硝酸パラジウムを加えて基材(1〜3)に塗布した後、焼成している。
【0020】
前述の3種類の基材1〜3を、排気量118cc、単気筒、出力2.6KW/3600rpmにおいて、試験時にエンジン回転数を3920〜3950rpmとしたホンダ製GX120T1(2009年製)に適用して触媒性能を試験した。
【0021】
なお、図1(a)〜(c)において、「空気投入量」とは、試験に供したエンジンの排気ガスは酸化に必要な酸素が十分ではなかったため、酸素を得るために空気を投入した排気量に対する割合を示している。また、「排気ガス温度」とは、触媒担持体通過直後の排気ガスの温度を示す。「CO(%)」、「HC(ppm)」の測定値はいずれも5回計測した値の平均値である。
【0022】
以上の試験から、図1に示すように、本発明の有効性が確認できた。さらに、通常用いられているハニカム構造の基材と比べてコンパクトにできることが分った。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数枚の金網を積層した素材を焼結した多孔体からなるガソリンエンジン用排気ガス浄化装置の触媒担持体の基材。
【請求項2】
積層する個々の金網を6メッシュから20メッシュとし、それらの金網の開孔径を0.5〜2.5mmの範囲とすることを特徴とする請求項1に記載のガソリンエンジン用排気ガス浄化装置の触媒担持体の基材
【請求項3】
積層する金網の主材料をステンレス材、又は鉄もしくは鉄合金材とする請求項1又は2に記載のガソリンエンジン用排気ガス浄化装置の触媒担持体の基材。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかのガソリンエンジン用排気ガス浄化装置の触媒担持体の基材の表面に、触媒物質を分散担持したアルミナ薄層を形成して製造することを特徴とするガソリンエンジン用排気ガス浄化装置の触媒担持体の製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2011−230016(P2011−230016A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−100189(P2010−100189)
【出願日】平成22年4月23日(2010.4.23)
【出願人】(505038900)ニチダイフィルタ株式会社 (9)
【Fターム(参考)】