説明

ガラスの酸化防止紫外線遮蔽膜形成用ハードコート塗布液及びこれを用いた膜及びガラス

【課題】酸化防止、光触媒消臭、除菌、帯電防止、紫外線遮蔽の各機能を有するガラスの酸化防止紫外線遮蔽膜形成用ハードコート塗布液を提供する。
【解決手段】光触媒消臭及び除菌用金属酸化物と帯電防止材料と紫外線吸収材料と希釈溶媒と硬化触媒とを含有した常温で硬化可能なガラスの酸化防止紫外線遮蔽膜形成用ハードコート塗布液である。帯電防止材料は酸化スズ系帯電防止剤(SnO、ATO、ITO等)と酸化亜鉛系帯電防止剤(AZO、GZO等)の内の1種以上からなる平均粒径35nm以下の微粒子である。紫外線吸収材料は酸化セリウム系紫外線吸収剤と酸化亜鉛系紫外線吸収剤と酸化チタン系紫外線吸収剤の内の1種以上からなる平均粒径35nm以下の微粒子である。光触媒消臭及び除菌用金属酸化物は酸化チタンと亜鉛ドープ酸化チタンと窒素ドープ酸化チタンの内の1種以上からなる平均粒径35nm以下の微粒子である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は酸化等の劣化防止、その他光触媒消臭及び除菌機能と帯電防止機能と紫外線遮蔽機能とを同時に必要とするLow−Eガラス等のガラスに用いて好適であり、より詳しくは、太陽光線の特定の波長を選択的に吸収または反射する成分と、化学物質やタバコ等の臭いを分解消臭し且つ除菌する成分を含み、常温硬化が可能である、ガラスの酸化防止紫外線遮蔽膜形成用ハードコート塗布液及びこれを用いた膜及びガラスに関する。
【背景技術】
【0002】
太陽光線は、赤外線、可視光線、紫外線の3つに大きく分けられる。このうち、長波長領域の赤外線は熱エネルギーとして人体に感じる光であり、室内、車内の温度上昇の原因となる。また、短波長領域の紫外線は、日焼け、しみ、発癌、視力障害など人体へ悪影響を及ぼす原因となり、また物品の機械的強度の低下、色褪せ等の外観の劣化、食品の劣化、印刷物の色調の低下なども引き起こす。
【0003】
そして現在、断熱性能を高めるためのガラスとして、Low−E(Low−emissivity)ガラスが実用化されている。このLow−Eガラスは、ガラス板の表面に低放射膜(特殊な金属膜)をコーティングしたものであり、赤外線による熱エネルギーの放射率を低くし、これによって熱を通しにくく、遮熱性、断熱性を高めたガラスである。Low−Eガラスは、赤外線を吸収する金属酸化膜(ITO又はATO)をスパッタリング方式でガラス表面に均一メッキ状に密着させ工場生産ラインで製造されている。前記Low−Eガラスに形成される金属酸化膜は、酸素や湿度に弱く、酸化劣化するためその管理に充分な注意が必要とされ、現在では、単板での使用には不向きで、ペアガラスの内側に真空又は乾燥剤を入れて使用されている。Low−Eガラスは遮熱性が高く、可視光透過率も高いので、これを単板のまま使用することができれば、製造コストや材料費が安価になり、好適であり、単板で使用できるLow−Eガラスの出現が望まれていた。
【0004】
一方、ガラス上に形成して、紫外線を遮蔽し、可視光のみを透過する帯電防止・紫外線遮蔽材料には、貴金属(Au、Ag)、銅(Cu)、窒化チタン(TiN)、アルミニウム(Al)などの伝導電子を多量にもつ材料を応用した帯電防止・紫外線遮蔽膜が従来より用いられていた。このような帯電防止・紫外線遮蔽材料を含有する塗布液をガラス上に塗布して帯電防止・紫外線遮蔽膜を形成することで、簡単かつ低コストに帯電防止・紫外線遮蔽機能をもたせたガラスを製造することができる。この場合、例えば、光の波長よりも1桁以上微細な微粒子を分散した塗布液の製造が試みられているが、上記従来の金属材料では微粒子化による酸化が問題となった。又、表面が傷付きやすいため実用硬度6H以上の透明ハードコート膜が求められている。
【0005】
また帯電防止機能をもつ材料として、アンチモン含有酸化錫(ATO)や錫含有酸化インジウム(ITO)や酸化スズ(SnO2)やアルミナ含有亜鉛(AZO)やガリウムドープ酸化亜鉛などが知られている。しかしながら従来のこれらの材料は、膜強度も低く、ガラスへの密着性も悪く、実用的ではなかった。
【0006】
有機紫外線吸収剤には、短波長領域の紫外線を効率よく吸収する透明材料として、ベンゾフェノンやベンゾトリアゾールなどが知られている。これらの紫外線吸収剤は有機物のため長期間使用すると蒸散、白濁黄変(ブリードアウト)などが起こり、ガラスの紫外線遮蔽能が劣化し、且つガラス自体が劣化する問題があった。これに対して無機系紫外線吸収剤を使用すれば、上記ブリードアウトは生じないが、例えば無機系紫外線吸収剤として酸化亜鉛、酸化チタン、酸化セリウム等を用いた場合は、従来は粒径が大きく、ヘイズがかかり、透明性を損ない、透明性を重要視するガラスに使用することができなかった。
【0007】
一方光触媒によって消臭及び除菌を図るために用いる光触媒消臭及び除菌用金属酸化物としては、紫外線対応の酸化チタンが一般的に知られているが、近年、可視光対応型の酸化チタンや、亜鉛ドープ酸化チタンにより、紫外線から可視光線の広い範囲で光触媒機能を発揮することができるようになった。しかしながら従来の光触媒消臭及び除菌用金属酸化物の使用方法は、室内の壁、クロス、天井等へのコート液がほとんどで、可視光及び紫外光が一番室内に入る窓ガラスの内側へコートする透明タイプの可視光及び紫外光対応型の光触媒コーティング液はなかった。何故なら従来のコーティング液では、有機物が含まれている為、光触媒機能によって有機物が分解されブリードアウトが発生するからである。
【0008】
そこで本願発明者は、Low−Eガラス等のガラスを単板で使用しても確実にその酸化等の劣化防止が図れ、さらに光触媒消臭及び除菌機能と帯電防止機能と紫外線遮蔽機能とを同時に効果的に発揮することができる塗布液で、しかもガラスに塗布することができて常温で硬化が可能な塗布液の開発を行った。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記従来技術の問題点を解決し、酸化防止機能と光触媒消臭及び除菌機能と帯電防止機能と紫外線遮蔽機能の全ての機能を同時に有効に発揮でき、且つLow−Eガラス等のガラスを単板で使用することもでき、さらに常温での塗膜形成が容易に行える、ガラスの酸化防止紫外線遮蔽膜形成用ハードコート塗布液及びこれを用いた膜及びガラスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
発明者は上記従来の問題点を解決するため、帯電防止材料として自由電子を多量に保有する酸化スズ系帯電防止剤(SnO2、ATO、ITO等)と酸化亜鉛系帯電防止剤(AZO、GZO等)に着目し、ヘイズがおきない分散液をつくるため、平均粒径を35nm以下に微粒子化し、同時に硬化触媒としてシランカップリング剤を入れることで透明性、耐候性、膜の強度を上げることに成功し、また紫外線吸収材料として無機系の酸化セリウム系紫外線吸収剤や酸化亜鉛系紫外線吸収剤や酸化チタン系紫外線吸収剤を使用し、さらに光触媒消臭及び除菌用金属酸化物として酸化チタンと亜鉛ドープ酸化チタンと窒素ドープ酸化チタンのうちの1つまたは2つ以上を使用し、これによって無機100%のガラスの酸化防止紫外線遮蔽膜形成用ハードコート塗布液及びこれを用いた膜及びガラスを発明するに至った。なおシランカップリング剤溶液を混合すると、分散性がよくなって透明性が向上し、また塗布膜の表面が劣化しないで耐候性が向上し、膜の強度が向上してハードコート塗布膜として維持できる。しかも無機なので、ブリードアウトしない。
【0011】
すなわち本願の請求項1に記載の発明は、ガラスに塗布され、光触媒消臭及び除菌用金属酸化物と、帯電防止材料と、紫外線吸収材料と、希釈溶媒と、硬化触媒とを含有した、常温で硬化可能なガラスの酸化防止紫外線遮蔽膜形成用ハードコート塗布液であって、前記帯電防止材料は、酸化スズ系帯電防止剤(SnO2、ATO、ITO等)と酸化亜鉛系帯電防止剤(AZO、GZO等)のうちの1種以上からなる平均粒径35nm以下の微粒子であり、前記紫外線吸収材料は、酸化セリウム系紫外線吸収剤と酸化亜鉛系紫外線吸収剤と酸化チタン系紫外線吸収剤のうちの1種以上からなる平均粒径35nm以下の微粒子であり、前記光触媒消臭及び除菌用金属酸化物は、酸化チタンと亜鉛ドープ酸化チタンと窒素ドープ酸化チタンのうちの1種以上からなる平均粒径35nm以下の微粒子であることを特徴とするガラスの酸化防止紫外線遮蔽膜形成用ハードコート塗布液にある。
【0012】
本願請求項2に記載の発明は、前記紫外線吸収材料の含有量が5〜20wt%であることを特徴とする請求項1に記載のガラスの酸化防止紫外線遮蔽膜形成用ハードコート塗布液にある。
【0013】
本願請求項3に記載の発明は、前記硬化触媒は、シランカップリング剤であることを特徴とする請求項1又は2に記載のガラスの酸化防止紫外線遮蔽膜形成用ハードコート塗布液にある。
【0014】
本願請求項4に記載の発明は、固形分としてさらに、コロイダルシリカ(SiO2)、ホウ素(B)、Ag2O、Al23、TiO2、ZnO2等の無機微粒子、又はシランカップリング剤を1種以上含むことを特徴とする請求項1又は2又は3に記載のガラスの酸化防止紫外線遮蔽膜形成用ハードコート塗布液にある。
【0015】
本願請求項5に記載の発明は、請求項1乃至4のいずれかに記載のガラスの酸化防止紫外線遮蔽膜形成用ハードコート塗布液をガラスに塗布し、硬化させてなることを特徴とするガラスの光触媒消臭及び除菌及び帯電防止機能付き酸化防止紫外線遮蔽膜にある。
【0016】
本願請求項6に記載の発明は、請求項5に記載のガラスの光触媒消臭及び除菌及び帯電防止機能付き酸化防止紫外線遮蔽膜が形成されたガラスにある。
【0017】
本願請求項7に記載の発明は、前記ガラスは、Low−Eガラスであることを特徴とする請求項6に記載のガラスにある。
【発明の効果】
【0018】
請求項1に記載の発明によれば、新規の無機系の紫外線吸収材料を用い、微粉末化されたATO、ITO、SnO2、AZO、GZO等のアルコール分散液を添加することで、常温で硬化し、紫外線吸収材料のブリードアウトが無い無機のガラスの酸化防止紫外線遮蔽膜形成用ハードコート塗布液が提供される。本発明により、Low−Eガラス等のガラスに長期間安定な高い光触媒消臭及び除菌機能と高い帯電防止機能と紫外線遮蔽機能とを同時に簡便な方法で付与することが可能になる。即ち例えば窓ガラスを通して入ろうとする紫外線を遮蔽し、同時に窓ガラスを通して入る紫外線、可視光線または、室内照明の可視光線を触媒として、室内のVOC化学物質やタバコ等生活臭を分解消臭し且つ除菌することができる塗布膜及びこれを用いたガラスを提供できる。
【0019】
請求項2に記載の発明によれば、紫外線吸収材料の含有量を5〜20wt%とすることで、ヘイズが生じないで透明性を維持した状態で、紫外線遮蔽率を75%以上とすることができる。実験によれば、前記含有率が5wt%以下になると紫外線遮蔽率が75%以下になり、また20wt%を越えるとヘイズを生じる恐れが生じる。
【0020】
請求項3に記載の発明によれば、硬化触媒としてシランカップリング剤を用いることで、分散性がよくなって透明性が向上し、また塗布膜の表面が劣化しないで耐候性が向上し、膜の強度が向上して7H以上のハードコート塗布膜として維持できる。また膜の厚みを3μm以上に厚くすることができる。従って、特にLow−Eガラスに形成される金属酸化膜の酸化等の劣化防止が確実に図れ、遮熱性が高く、可視光透過率も高いLow−Eガラスを単板で使用することが可能となる。従ってLow−Eガラスをペアガラスとしなくても、単板のまま使用することができ、製造コストや材料費が安価になる。もちろんペアガラスとして使用してもよい。その際、内側を真空又は乾燥剤を入れて使用しなくてもよくなる。
【0021】
請求項4に記載の発明によれば、無機材料からなる固形分を添加することで、塗布液の塗布性の改良、塗布膜の硬度の改良、ガラスへの密着力の改良などが成される。
【0022】
請求項5,6,7に記載の発明によれば、前記効果を有するガラスの酸化防止紫外線遮蔽膜形成用ハードコート塗布液を用いたガラスの酸化防止紫外線遮蔽膜やガラスが提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本発明においては、上述したように、光触媒消臭及び除菌用金属酸化物と、帯電防止材料と、紫外線吸収材料と、希釈溶媒と、硬化触媒とを含有することで、常温で硬化可能なガラスの酸化防止紫外線遮蔽膜形成用ハードコート塗布液を得ることができた。
【0024】
そのとき使用した帯電防止材料は、アンチモン含有酸化錫(ATO)と錫含有酸化イリジウム(ITO)と酸化スズ(SnO2)とアルミナ含有亜鉛(AZO)とガリウムドープ酸化亜鉛(GZO)のうちの1種以上からなる平均粒径35nm以下の微粒子であり、紫外線吸収材料は、無機系の酸化セリウム系紫外線吸収剤と酸化亜鉛系紫外線吸収剤と酸化チタン系紫外線吸収剤のうちの1種以上からなる平均粒径35nm以下の微粒子であり、光触媒消臭及び除菌用金属酸化物は、酸化チタンと亜鉛ドープ酸化チタンと窒素ドープ酸化チタンのうちの1種以上からなる平均粒径35nm以下の微粒子である。
【0025】
いずれの材料(光触媒消臭及び除菌用金属酸化物と、帯電防止材料と、紫外線吸収材料)もその平均粒径が35nm以下の微粒子であることが必要である。平均粒径が35nmを超えると微粒子同士の凝集傾向が強くなり、塗布液中の微粒子の沈降の原因となるからである。また、35nmを超える粒子もしくはそれらの擬集した粗大粒子の存在は、それによる光散乱により可視光透過率低下の原因となるので好ましくない。
【0026】
帯電防止材料であるATO、ITO、SnO2、AZO、GZOの内のATO,ITOの微粒子は金属的伝導性を示す黒色粉末であり、SnO2、AZO、GZOの微粒子は金属的伝導性を示す白色粉末である。粒径35nm以下の微粒子として薄膜中に分散した状態では可視光透過性が生ずるが、帯電防止機能は十分強く保持できる。
【0027】
希釈溶媒は特に限定されるものではなく、塗布条件や、塗布環境、塗布液中の固形分の種類に合わせて選択可能である。例えば、メタノール、エタノール、イソブチルアルコール等のアルコール類、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル等のエーテルアルコール類、酢酸メチル、酢酸エチル等のエステル類、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類など各種溶媒が使用可能である。用途によって2種類以上の溶媒を組み合わせて使用しても良い。
【0028】
硬化触媒としては、前述のように、シランカップリング剤が好適である。シランカップリング剤を入れることで透明性、耐候性、膜の強度を上げることに成功した。この硬化触媒は、特にLow−Eガラスに形成される金属酸化膜の酸化等による劣化防止等に好適である。
【0029】
また、ガラスの酸化防止紫外線遮蔽膜形成用ハードコート塗布液中の固形分として、コロイダルシリカ(SiO2)、ホウ素(B)、Ag2O、Al23、TiO2、ZnO2等の無機超微粒子、種々のシランカップリング剤等を1種以上添加してもよい。これによって塗布液の塗布性の改良、塗布膜の硬度の改良、ガラスへの密着力の改良などが成される。なおこれら固形分を混合しないと、塗布液が乾いた後に粉になってしまい、膜にならなくなる。
【0030】
そして以上の構成要素からなるガラスの酸化防止紫外線遮蔽膜形成用ハードコート塗布液を、例えばLow−Eガラスに塗布し常温で硬化させることによってLow−Eガラス上に長期間安定なLow−Eガラスの光触媒消臭及び除菌及び帯電防止機能付き酸化防止紫外線遮蔽膜を形成することができる。
【0031】
ガラスの酸化防止紫外線遮蔽膜形成用ハードコート塗布液の塗布方法は特に限定されるものではなく、スピンコート法、スプレーコート法、ディップコート法、スクリーン印刷法、フローコーター法、布、スポンジや刷毛による方法等、処理液を平坦かつ薄く均一に塗布できる方法であればいかなる方法でも良い。ガラス上に形成されたガラスの光触媒消臭及び除菌及び帯電防止機能付き酸化防止紫外線遮蔽膜はガラスに長期間安定な光触媒消臭及び除菌機能と、帯電防止機能と、酸化防止機能と、紫外線遮蔽機能とを同時に付与する。同時にガラスそのものの紫外線による劣化をも抑制する。
【0032】
このようにしてガラスの光触媒消臭及び除菌及び帯電防止機能付き酸化防止紫外線遮蔽膜が形成されたガラスは長期間安定な高い光触媒消臭及び除菌機能と、高い帯電防止機能と高い酸化防止機能と高い紫外線遮蔽機能とを同時に有する。従ってこの膜をLow−Eガラスの金属酸化膜上に形成すれば、金属酸化膜の酸化等の劣化防止が図れ、単板のまま使用できる。そして例えばこの単板のLow−Eガラスを室内窓ガラスとして用いた場合、この窓ガラスに侵入する太陽光などの紫外線を効果的に遮蔽でき、同時に可視光はその多くを透過し、また同時にこの窓ガラスを通して入る紫外線、可視光線又は室内照明の可視光線を触媒として、室内のVOC化学物質やタバコ等生活臭を分解消臭及び除菌する。またこの塗布膜は、鉛筆硬度7H以上の堅い塗布膜で強固にガラスに密着した。
【0033】
このガラスの酸化防止紫外線遮蔽膜形成用ハードコート塗布液を3mmのソーダライム系ガラス基板上にバーコーターを用いて塗布し、常温で硬化して塗布膜を得た。測定器を用い、ISO9035に従って前記塗布膜の紫外線透過率(τuv)を算出した。塗布硬化してから常温の室内に放置し、35日後に膜表面の観察を行ってブリードアウトの有無を調べた。またテーバー摩耗試験機で摩耗輪CS12fを用いて荷重235g、35回転の摩耗試験を行い、試験前後のヘイズの変化量(△H)で膜の摩耗強度を評価した。
【0034】
指触乾燥までの硬化時間は40分であった。τuvは0.04%であり紫外線の遮蔽能も優れていた。また35日後の膜表面にブリードアウトはなかった。
【0035】
またこの塗布膜は、爪では全く傷が付かない強固な膜が形成されており、テーバー摩耗試験によるヘイズの劣化△Hは0.6%という値となった。
【0036】
またガラス上に本実施形態の塗布膜を形成した前記試料を、容量2リットルの容器に入れ、臭気として、硫化水素(20ppm)をその容器に2リットル添加後、室温にて紫外線ランプによって紫外線を照射しながら放置して2時間後、6時間後の臭気残存濃度を測定した。臭気としてアンモニア(52ppm)についても同様に測定した。その結果、硫化水素の場合は、2時間後で9(ppm)、6時間後で2(ppm)に臭気が減少し、またアンモニアの場合は、2時間後で6(ppm)、6時間後で2(ppm)に臭気が減少し、顕著な消臭効果があることを確認できた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラスに塗布され、光触媒消臭及び除菌用金属酸化物と、帯電防止材料と、紫外線吸収材料と、希釈溶媒と、硬化触媒とを含有した、常温で硬化可能なガラスの酸化防止紫外線遮蔽膜形成用ハードコート塗布液であって、
前記帯電防止材料は、酸化スズ系帯電防止剤(SnO2、ATO、ITO等)と酸化亜鉛系帯電防止剤(AZO、GZO等)のうちの1種以上からなる平均粒径35nm以下の微粒子であり、
前記紫外線吸収材料は、酸化セリウム系紫外線吸収剤と酸化亜鉛系紫外線吸収剤と酸化チタン系紫外線吸収剤のうちの1種以上からなる平均粒径35nm以下の微粒子であり、
前記光触媒消臭及び除菌用金属酸化物は、酸化チタンと亜鉛ドープ酸化チタンと窒素ドープ酸化チタンのうちの1種以上からなる平均粒径35nm以下の微粒子であることを特徴とするガラスの酸化防止紫外線遮蔽膜形成用ハードコート塗布液。
【請求項2】
前記紫外線吸収材料の含有量が5〜20wt%であることを特徴とする請求項1に記載のガラスの酸化防止紫外線遮蔽膜形成用ハードコート塗布液。
【請求項3】
前記硬化触媒は、シランカップリング剤であることを特徴とする請求項1又は2に記載のガラスの酸化防止紫外線遮蔽膜形成用ハードコート塗布液。
【請求項4】
固形分としてさらに、コロイダルシリカ(SiO2)、ホウ素(B)、Ag2O、Al23、TiO2、ZnO2等の無機微粒子、又はシランカップリング剤を1種以上含むことを特徴とする請求項1又は2又は3に記載のガラスの酸化防止紫外線遮蔽膜形成用ハードコート塗布液。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載のガラスの酸化防止紫外線遮蔽膜形成用ハードコート塗布液をガラスに塗布し、硬化させてなることを特徴とするガラスの光触媒消臭及び除菌及び帯電防止機能付き酸化防止紫外線遮蔽膜。
【請求項6】
請求項5に記載のガラスの光触媒消臭及び除菌及び帯電防止機能付き酸化防止紫外線遮蔽膜が形成されたガラス。
【請求項7】
前記ガラスは、Low−Eガラスであることを特徴とする請求項6に記載のガラス。

【公開番号】特開2007−51204(P2007−51204A)
【公開日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−236686(P2005−236686)
【出願日】平成17年8月17日(2005.8.17)
【出願人】(505140052)
【出願人】(505140063)
【Fターム(参考)】