説明

ガラスをコーティングする方法および装置

本発明は、少なくとも1つまたはそれ以上の液体原材料を使用してガラス(2)をコーティングするプロセスおよび装置に関する。液体原材料は、本質的にガラス方面の少なくとも一部上で反応し、コーティングをそこに形成する。液体原材料の少なくとも一部は、1つまたはそれ以上の2流体アトマイザで飛沫(17)に霧化される。1つまたはそれ以上の2流体アトマイザで使用されるガスの少なくとも一部は帯電させられ、飛沫(17)の少なくとも一部は、霧化の間またはその後に帯電させられる。本発明によれば、飛沫(17)は、別個に形成される電場内に形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の序文によるガラスをコーティングするためのプロセスに関する。より具体的には、本発明は、ガラス表面の少なくとも一部に本質的に反応してガラス上にコーティングを形成する少なくとも1つまたはそれ以上の液体原材料を使用する、ガラスをコーティングするプロセスに関し、本プロセスは、1つまたはそれ以上の2流体アトマイザで、液体原材料の少なくとも一部を霧状の飛沫にするステップと、1つまたは2つ以上の液体アトマイザで用いられるガスの少なくとも一部に電荷を与え、霧状にするときまたはその後に飛沫の少なくとも一部を帯電させるステップと、を有する。本発明はさらに、請求項9の序文による、ガラスをコーティングするための装置に関する。より具体的には、本発明は、ガラス表面の少なくとも一部に本質的に反応してコーティングを形成する、少なくとも1つまたはそれ以上の液体原材料を使用する、ガラスをコーティングする装置に関し、本装置は、少なくとも液体原材料の一部を飛沫に霧化するための1つまたはそれ以上の2流体アトマイザと、少なくとも飛沫の一部が霧化のときまたはその後に帯電するように、1つまたはそれ以上の2流体アトマイザで用いられるガスの少なくとも一部に電荷を与えるための帯電手段と、を有する。
【背景技術】
【0002】
コートされたガラスは、様々な目的のために製造され、ガラスのいくつかの望ましい特性を付与するためにコーティングが選択される。建築上のガラスおよび自動車のガラスのためのコーティングの重要な例は、コートされた面の赤外放射に関する放射を低減するように設計され(低eコーティング、low-e coatings)、コーティングは総太陽エネルギーの透過を低減するように設計され、また、コーティングは、親水性を提供するようにまたは自己洗浄ガラス表面を提供するように設計される。光起電性の用途のガラスのために、透明導電性酸化物(transparent conductive oxide, TCO)コーティングが非常に重要である。たとえば、フッ素ドープスズ酸化物(FTO)またはアルミニウムドープ亜鉛酸化物のコーティングは、TCOおよび低eコーティングによく用いられる。チタン酸化物コーティング、特に、アナターゼ結晶構造のものが、自己洗浄コーティングとして用いられ、鉄−コバルト−クロムベースの酸化物コーティングが近赤外反射コーティングとして用いられる。
【0003】
ガラスに適用されるコーティングは、通常、高いそして均一な光学的な品質を備えるべきである。コーティングは、通常、用途に応じて約10nmから1500nmの間の厚さで適用される。コーティング材料は、通常、ガラス材料とは異なる屈折率を備え、したがって、コーティングの厚さの変動は、よくない干渉効果を生じさせることがあり、それゆえ、均一な厚さであることが良好な光学品質にとって重要である。
【0004】
ガラス上のコーティングは、2つの異なるグループに分けることができ、すなわちソフトコーティングとハードコーティングに分けることができる。ソフトコーティングは、典型的にはスパッタリングにより付与され、ガラス表面へのそれらの接着は幾分貧弱である。ハードコーティングは、典型的には、すぐれた接着性を備え、高いはく離抵抗を備え、典型的には、化学気相成長法(chemical vapor deposition, CVD)およびスプレー熱分解法(spray-pyrolysis)のような熱分解方法(pyrolytic method)により付与される。
【0005】
CVDにおいて、コーティングの先駆的な材料は気相状態にあり、気相は、コーティングチャンバに入るようにされ、コートされる基板に対してよく制御され均一な流れで流れるようにされる。コーティングの形成速度は幾分遅く、コーティングの成長速度は、典型的には温度が上昇すると指数関数的に大きくなるので、それゆえ、プロセスは、典型的には650℃を超える温度で行われる。高温度の要求は、CVDプロセスを、フロートガラスプロセスの外側で行われるガラスコーティング動作に対して不向きにし、つまり、オフラインコーティング応用に対して不向きにする。
【0006】
約650℃よりも低い温度で、厚いコーティング、典型的には400nmを超える厚さのコーティングを形成するために、基板上にコーティング先駆溶液の飛沫の流れをスプレーするためのスプレーコーティング装置を用いることが慣習的である。しかし、従来のスプレー熱分解システムは、急な熱勾配の生成およびコーティングの均一性、品質に関する問題のような多数の欠点がある。プロセスの大きな改善は、出願人による現在のところ非公開のフィンランド特許出願(currently non-public Finnish patent applications)FI20071003号およびFI20080217号に説明されているように、飛沫のサイズを減少させることにより達成しえる。
【0007】
スプレー熱分解プロセスを改良する他の方法は、静電スプレー堆積を用いることである。ドイツ特許公開DE3211282A1、Albers、August、1983年9月29日は、粒子または飛沫によりガラスをコーティングするプロセスを説明し、ここで粒子または飛沫はガラスと異なる電位を備えている。ガラスの温度は400℃から900℃である。粒子または飛沫の帯電は、自動車の仕上げのような別種の範囲の用途において導体表面をコーティングするのに慣習的に用いられる静電スプレーガンにより行われる。
【0008】
液体を静電スプレーで帯電させるには3つの主たる方法があり、直接電導、コロナ、および誘電である。直接電導において、スプレー材料は、比較的高い導電性を備えなければならず、電圧がスプレーされる材料のソースに与えられる。スプレーは、既に帯電したスプレーノズルから放出され、即座に霧化される。コロナ帯電システムにおいて、スプレーされる飛沫は、コロナ場を通すことにより、霧化された後に帯電される。これは有効な技術であるが、高いアークの可能性により安全性の危険を生じさせる。この技術の他の欠点は、液体が、帯電の前にコロナ生成電極に付着し、性能を低下させることである。したがって、コロナ帯電は、通常、飛沫よりもむしろ乾燥した粒子に主に用いられる。誘導帯電において、ノズルの近くに電圧が付与され、液体がソースの近くを移動し、いくらかの電荷を得る。供給タンクに電流が流れ戻るのを避けるために、材料は、高いバルク抵抗を備える必要がある。比較的低い帯電効率により、スプレーを霧化するのに機械的な補助が必要であり、典型的には回転噴霧器、空気支援噴霧器、またはそれらの組み合わせが必要となる。
【0009】
静電スプレーに用いられる電圧は、典型的には非常に高い。DE3211282A1公報は、90kVの電圧がスプレー装置に用いられることを記載している。
静電スプレーは、スプレー熱分解における均一な飛沫の堆積に大きな改良を与え得る。しかし、現在の静電スプレープロセスの実際的な問題は、主に、高い電圧、高いプロセス温度、および望ましくない領域への付着であり、これらの問題は困難であり、静電スプレープロセスは、熱分解ガラスコーティングに用いられていない。
【0010】
国際公開第2004/094324A1号、Likki Oy、2004年11月4日は、粒子を帯電させる方法を開示する。この粒子は、材料を処理するのに用いられる。この公報によれば、電荷は、粒子形成において、プロセスのその段階において反応物と反応するガスにより導入され、ここで、ガス状の反応物は酸化され、粒子が形成される。有利には、電荷は、反応物と反応する酸素のような酸化ガスによりプロセスに導入される。電荷は、適当な帯電方法によりガスに生成され、好ましくはコロナ帯電器により生成される。この公報は、飛沫の帯電については説明していない。
【0011】
すべてのスプレーベースのコーティング技術において、目的物の望まない部分およびコーティングチャンバにコートしないことが好ましい。特に、本願の出願人による現在のところ非公開のファインランド特許出願FI20071003号およびFI20080217に記載されているように、コーティングプロセスが小さな飛沫に基づく場合、小さな飛沫の拡散は、望まない領域に小飛沫が到達する傾向を与え、これはシールドの必要を生じさせ、またはこれらの領域の洗浄を必要とする。
【0012】
従来技術によれば、飛沫は、2流体アトマイザに使用されるガスを帯電させることにより帯電させることができ、飛沫が帯電する。帯電した飛沫は、基板を飛沫と反対の極性で帯電させることにより、静電力により基板の表面上に堆積される。したがって、飛沫および基板は、飛沫の表面への堆積を増強するために反対の極性に帯電される。
【0013】
上述の従来技術の解決策の問題は、帯電した飛沫を基板上に堆積させるために基板が帯電されるとき、堆積効率および均一性が基板に特有であるということである。これは、各基板材料が異なる帯電特性を備え、あるいは、電荷を運ぶ能力を含む異なる電気的特性を備えるという事実によるものである。また、基板の厚さおよび体積は、帯電した飛沫の堆積に影響を与え、また、そのため基板上のコーティングの形成に影響を与える。それゆえ、帯電した飛沫を用いて基板をコーティングするプロセスおよび装置は、すべての基板について同様に機能するわけではない。これは、コーティングの制御を困難にする。さらに、帯電した飛沫の堆積の前に各基板を帯電させるので、装置およびプロセスが複雑になる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明の目的は、上述の問題を解決するためのプロセスおよび装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の目的は、請求項1に記載されるプロセスにより達成される。このプロセスは、
別個に形成される電場を提供するステップと、帯電した飛沫の少なくとも一部を、静電力によりガラスの表面の上述の部分に堆積させるために、2流体アトマイザにより形成される飛沫を別個に形成される電場に供給するステップと、を有する。本発明の目的は、さらに、請求項9に記載される装置により達成される。この装置は、静電力によりガラス表面の上述の部分に、帯電した飛沫の少なくとも一部を堆積させるために、別個に形成される電場を有する。
【0016】
本発明の好ましい実施形態は従属請求項に開示される。
本発明の主な目的は、ガラスをコーティングするのに用いられる、特に、スプレー熱分解法によりガラスをコーティングするのに用いられるプロセスおよび装置を提供することである。コーティングは、ガラス基板上へのエアロゾル堆積から形成され、液体原材料は、飛沫状に霧化され、エアロゾル内の飛沫は、ガラス表面上で実質的に反応し、ガラス基板上にコーティングが形成される。本発明によれば、飛沫は帯電され、帯電した飛沫は、静電力を用いてガラス基板上に少なくとも一部が堆積される。液体原材料は、2流体アトマイザにより飛沫状に霧化され、霧化に用いられるガスの少なくとも一部を帯電させる。帯電したガスは、その後、霧化ステップの間またはその後に飛沫を帯電させる。帯電した飛沫は、別個の電場を用いて少なくとも静電力により、ガラスの表面の上述の部分に堆積される。
【0017】
霧化する空気の帯電は、できるだけノズル出口近くで行うことが有利である。これは、導管壁へのイオンの損失を最小化するからである。霧化ノズルにおいて、電荷は、生成される飛沫に均一に分配され、また、電荷はガスから飛沫への輸送のためにできるだけ多くの機会を備える。
【0018】
本発明の好ましい実施形態において、霧化するガスの電荷付与は、アトマイザノズルにおいてコロナ電荷により行われる。前記電荷付与は、同時に、高い電荷密度、均一な電荷フィールドを達成し、および絶縁破壊の傾向を最小化することを可能にする。好ましい実施形態において、アトマイザノズルおよび電荷付与部材を通るガスの流れの速度は非常に大きく、コロナ放電に有利な効果を備える。コロナポイントにおける大きな流れ速度は、電荷付与の点から非常に価値がある。これは、たとえば、形成されるイオンがコロナの近隣から迅速にドリフトするからである。イオンにより生成される電荷付与の空間の減少は、コロナ電極の周りを形成する放電を弱める電場を減少させ、それゆえ、必要とされるコロナ電圧を増加させる。減少した電圧要求は、今度は、電気的な絶縁破壊のリスクを低減し、また、放電を維持するのに必要な電力を減少させる。アトマイザノズルにおいて高速度ガスに電荷付与することにより、電荷がアトマイザノズルの前に生成される場合と比較して、電荷の構造物への移動を減少させることが可能である。高速度アトマイザガスの他の利点は、ガスと液体との間の大きな速度差であり、これは、飛沫サイズを減少させる。
【0019】
静電力によりガラス表面上へ飛沫を堆積させることを達成するために、別個の電場が提供される。本発明によれば、帯電した飛沫は、1つまたはそれ以上の2流体アトマイザにより別個の電場内に供給される。1つまたはそれ以上の2流体アトマイザは、別個の電場の連結部内に配置することができ、液体原材料が別個の電場内で霧化される。別個の電場は、第1電極および第2電極との間に提供され、別個の電場は、さらに、ガラスの少なくとも一部を受け入れるように配置される。帯電した飛沫は、別個の電場により電荷付与された飛沫に生成された少なくとも静電力によりガラス表面に輸送される。
【0020】
本発明において、静電力は、飛沫をガラス表面に堆積させるのに用いられ、少なくとも液体原材料が、本質的に少なくともガラス表面の少なくとも一部で反応し、そこにコーティングを形成する。ガラスまたはガラス表面、あるいはガラスの表面層は、コーティング温度まで加熱することができ、または、少なくとも前記ガラスのアニール温度まで加熱することができる。また、帯電した飛沫を加熱することができ、これは飛沫からの液体蒸発を増強する。これは飛沫サイズを減少させるであろう。あるレベルで、小さな飛沫内の電荷は非常に高くなり、飛沫がいくつかのより小さな飛沫に崩壊するであろう。より小さい飛沫はコーティングの成長速度を速め、そのため、この現象はコーティングの成長にとって有利である。
【0021】
帯電した飛沫は、第1電極と第2電極との間に生成される別個の静電場を用いて堆積され、ここで、電極は、電極間に生成される電場が帯電した飛沫をガラス表面へ移動させるように位置決めされる。
【0022】
本発明の利点は、別個の静電場を容易に制御でき、また、ガラスの材料特性に関わらず、帯電した飛沫を移動させるための予測可能な電気力を形成することである。さらに、別個の電場は、ガラスを帯電させることへの要求を排除する。これはコーティングプロセスを簡略化し高速化する。また、ガラス自身が帯電されないので、コーティングのための装置が複雑でなくなる。
【0023】
本発明のさらなる利点は、ガラスに均一なコーティングを生成することができるということである。また、本プロセスは、従来の静電スプレーにおいて必要とされた高電圧の問題を解決する。帯電した飛沫により形成される電場の外部で、別個の電場を用いることは、プロセスおよび装置に自由度を与えることができる。外部の電場は、アトマイザノズルから離れて配置することができ、飛沫の電荷付与により多くの機会を提供する。電極間に用いられる比較的に小さな距離は、合理的に高い電場強度を生成する。
【0024】
以下において、本発明が添付の図面とともにより詳細に説明される。添付図面は以下の通りである。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】平坦なガラス目的物の好ましい表面上にコーティングを提供するための装置の概略図である。
【図2】好ましい表面上にコーティングを提供するための、および望まない表面上へのコーティングの形成を排除するための装置の概略図である。
【図3】好ましい表面上へのコーティングの形成を増強するための装置の概略図である。
【図4】本発明による、外部電場を用いて好ましい表面上にコーティングを提供するための装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明によれば、少なくとも液体原材料は、コーティングを形成するガラス表面の少なくとも一部上で本質的に反応する。ガラス表面は、少なくとも前記ガラスアニール温度まで加熱することができる。液体原材料は、1つまたは2つ以上の2流体アトマイザにより飛沫状に霧化され、霧化に使用されるガスの少なくとも一部は帯電される。帯電したガスは、霧化ステップの間またはその後に飛沫を帯電させる。帯電した飛沫は、少なくとも静電力により前記部分に堆積される。
【0027】
図1、コーティング装置1内のガラス2の頂部表面にコーティングを形成する装置の概略を示す。平坦なガラス部片2は、典型的な寸法である1100mm×1400mmを備え、左から右へ移動する。ガラス2は、まず、ヒーター5を備える加熱炉4に入る。ヒーター5は、放射、伝達、またはそれら類似のものに基づくことができる。加熱炉4において、ガラス2は、ガラス2のアニールポイント(アニール温度)よりも高い温度まで加熱される。アニールポイントは、ガラス2の組成に依存し、典型的には、ソーダ石灰ガラスでは約500℃であり、フューズドシリカでは約1100℃である。ガラス2は、その後、コーティングユニット9に入り、ここでガラス2の頂部表面にスプレー17が堆積される。ガラスは、アニーリング温度とは異なるコーティング温度まで加熱することができる。ガラス2のコーティング温度は、適用されるコーティングまたはコーティング材料、およびガラスの組成に依存する。コーティング温度は、少なくとも100℃とすることができ、好ましくは少なくとも200℃であり、最も好ましくは少なくとも300℃である。以下にコーティング材料およびコーティング温度が例として開示する。
アンチモンドープスズ酸化物(Antimony doped tin oxide, ATO) 200−400℃
インジウムドープスズ酸化物(Indium doped tin oxide, ITO) 300−400℃
ボロンドープ亜鉛酸化物 200−400℃
アルミニウムドープ亜鉛酸化物(Aluminum doped zinc oxide, AZO)400−500℃
フッ素ドープスズ酸化物(Fluorine doped tin oxide, FTO) 400−500℃
チタン二酸化物 500−800℃
Piioxynitride(SiOxNy) 500−800℃
Piioxykarbidi(SiOxCy) 500−800℃
空気浮遊装置は、ガス吹き込み運動によりガラス基板2を浮遊させ、ガスは導管7を通って供給される。スプレーが2流体アトマイザ16により形成される。先駆液体が導管10を通ってアトマイザ16内に供給され、霧化ガスが導管11を通ってアトマイザ16に供給される。霧化ガスは、コロナ帯電器13を通過し、ここに電源12から高電圧が供給される。コロナ電極13は、絶縁体14によりコーティングユニット9のケーシングから隔離される。カウンター電極15は、好ましくは、帯電ノズルの一部を形成し、この表面は、ノズルの内側壁を形成する。霧化ガスがコロナ電極13を介して流れるとき、ガスが帯電される。コロナ帯電は、高電荷密度、均一な電荷場を達成することを可能にし、また、同時に、絶縁破壊の傾向を最小限にすることを可能にする。さらに、コロナ帯電は、同一の装置1により、正および負の両方に帯電した飛沫を生成することを可能にする。
【0028】
アトマイザ16において、霧化ガスの非常に大きい流速を使用することが有利であり、有利には、50m/sから音速の流速である。大きなガス流速は、いくつかの利点を備える。第1に、帯電の観点から非常に有利である。これは、たとえば、形成されるイオンがコロナ付近から迅速にドリフトするからである。このイオンにより生じる空間の帯電の追放は、放電を減衰させ且つコロナ電極13の周りを形成する電場を減少させ、それにより、必要なコロナ電圧を減少させる。たとえば、コロナ電極13で略150m/sの流速で霧化ガスが導管11を通るときに、窒素ガスを供給することにより、コロナ電極13の帯電電圧として約5kVを使用することができる。第2に、大きな流速は、アトマイザ16の周囲へのイオンの損失を減少させ、帯電ガスのアトマイザ内の好ましい滞在時間を1m/sまたはそれ未満にする。第3に、アトマイザ16の出口ノズルにおける大きな流速は、飛沫のサイズを減少させる。
【0029】
コーティングが望まれない、ガラス表面上の領域が存在し得る。たとえば、ガラスプレートが透明導電酸化物(Transparent Conductive Oxide, TCO)でコートされる場合、ガラスプレートのある表面だけをコートすることが有利である。本発明は、コーティングが望まれないガラスの第2の部分が飛沫と同一の極性で帯電させられ、この電荷は、帯電した飛沫の第2の部分への堆積を減少させる、プロセスを含む。ガラス目的物の望まない部分、すなわち、ガラス目的物のコーティング形成が望まれない部分への帯電した飛沫の堆積は、望まない部分を、飛沫と同一の極性で帯電させることにより減少させることができる。好ましい実施形態において、コーティングノズルの方を向いた頂部表面を備え、反対方向を向いた底部表面を備えるガラスプレートは、ガラス浮遊輸送装置によりコーティングユニット内に移動される。ガラスプレートを浮遊させるのに使用するガスは、飛沫と同一の極性に帯電させられ、これは、ガラスプレートの底部表面上への堆積を最小化する。
【0030】
図2は、装置の概略を示し、ここで、図1で説明したのと同様にガラス加熱動作およびコーティングが行われる。コロナ帯電器13は、空気浮遊装置6で使用される空気を帯電させるために用いられる。図2は、コロナ帯電器13がコロナ帯電器13と同一の電源12を使用する実施形態を示す。しかし、異なる電圧の他の電源を使用することもできることが当業者に明らかであろう。ガラスプレート2を支持する空気が、ガラス基板2の底部表面を、飛沫と同一の極性に帯電させるということが本発明の本質である。同一極性の電荷により生じる斥力は、ガラス基板2の底部表面へのコーティングの形成を減少させる。また、ガラス基板のより制限された領域だけを帯電させてもよいことが明らかであろう。
【0031】
図3は、従来技術の装置の概略を示し、ガラスプレート2の頂部表面を飛沫17の電荷と反対の電荷で帯電させることで、飛沫の堆積のための静電力が増強される。好ましくは、コロナ帯電器13**により、導管11**を通る空気を帯電させることにより、帯電が実行される。図3に示されるように、コロナ帯電器13**は、コロナ帯電器13と反対の極性を備える。図3は、コロナ帯電器13**がコロナ帯電器13と同一の電源を使用する実施形態を示す。しかし、異なる電圧を備える他の電源を使用することができることが当業者に明らかであろう。
【0032】
図4は、本発明による装置の概略を示し、帯電した飛沫17の堆積を増強するために、別個の外部電場が用いられる。飛沫は、図1で説明したのと同様に帯電させられる。また、ガラスの加熱、浮遊、移動は、図1と同様に行うことができる。大きな速度の飛沫が、第1電極18と第2電極との間に生成される電場に入る。第1電極18は、コーティングユニット9のケーシングから、電気絶縁体19により隔離され、電源12の第1出力部に接続される。第2電極は、この場合、空気支持装置6を電源12の他方の出力部に接続することにより形成され、空気支持装置6を、電気絶縁体20によりコーティングユニット9のケーシングから電気的に絶縁する。電源12の第2出力部は、同様に、コーティングユニット9の様々な他の部品に接続することができることが当業者に明らかである。たとえば、1つまたはローラー3に接続することができ(本装置の他の部分から電気的に絶縁される)、ローラー3は電源12の第2出力をガラス基板接触ローラーに接続する。代替的に、第1および第2の電極は、別個の電場を提供するためだけに配置される別個の電極とすることができる。電極は、装置の他の部分から電気的に絶縁される。図4に示されるように、1つまたはそれ以上のアトマイザ16は、飛沫が別個の電場に入るように、別個の電場に関して配置される。
【0033】
別個の電場は、ガラス基板2の少なくとも一部を受け入れるように配置される。帯電した飛沫17が別個の電場の中で形成されるので、静電力は、飛沫をガラス表面上に移動させ、ガラス表面上にコーティングを提供する。これは、ガラス表面上に飛沫を堆積させるために、ガラス基板が少なくとも部分的に別個の電場内に輸送または配置されることを意味する。ガラス基板は、その後、好ましくは、別個の電場を形成する第1電極と第2電極との間に配置される。一方、帯電した飛沫をガラス基板へ移動させるように電場が付与される。帯電した飛沫17は、別個の電場内に供給され、帯電した飛沫17の少なくとも一部を静電力によりガラス表面の一部に堆積させる。それゆえ、アトマイザ16は、別個の電場に関して配置される。アトマイザは、液体原材料を第1電極と第2電極との間の別個の電場内に霧化するように配置することができる。
【0034】
本発明はさらに、コーティングを形成するガラス表面の少なくとも一部に本質的に反応する、少なくとも1つまたはそれ以上の液体原材料を用いて、ガラスをコーティングするプロセスを提供する。このプロセスにおいて、1つまたはそれ以上の2流体アトマイザ16で、液体原材料の少なくとも一部を飛沫17状に霧化する。1つまたはそれ以上の2流体アトマイザ16で使用されるガスの少なくとも一部は帯電させられ、飛沫17の少なくとも一部は、霧化の間またはその後に帯電させられる。このプロセスはさらに、別個に形成される電場を提供し、別個に形成した電場の中に2流体アトマイザ16で飛沫17を形成し、静電力によりガラス表面の上述の部分に帯電した飛沫17の少なくとも一部を堆積させる。
【0035】
本プロセスにおいて、ガラス2は、帯電した飛沫17をガラス表面の前述の部分に堆積させる前に、少なくとも前述のガラス2のアニール温度まで加熱することができる。また、霧化した帯電した飛沫18は、たとえば、加熱された霧化ガスにより加熱することができる。本発明のプロセスによれば、ガラス2の少なくとも一部は、別個に形成される電場内に配置され、静電力によりガラス表面の前述の部分上に帯電した飛沫17の少なくとも一部を堆積させる。ガラスは、好ましくは、別個の電場を提供する第1電極と第2電極との間に受け入れられるように配置される。
【0036】
コロナ放電電極およびその対向電極は、上述の実施形態で説明されていない様々な方法で位置決めすることができる。たとえば、対向電極をガラス基板の外側のプレートに接続することができる。上述の本発明の異なる実施形態に関して開示されたモードおよび構造を様々な方法で組み合わせることにより、本発明の趣旨に基づき本発明の様々な実施形態を生成することができる。それゆえ、技術の進歩により、本発明のコンセプトは様々な方法で実行することができることが当業者に明らかであろう。本発明およびその実施形態は、上述の例示に限定されず、特許請求の範囲内で変更可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つまたはそれ以上の液体原材料を用いてガラス(2)をコーティングするプロセスであって、前記液体原材料は本質的にガラス表面の少なくとも一部上で反応し、コーティングを形成し、前記プロセスは、
前記液体原材料の少なくとも一部を、1つまたはそれ以上の2流体アトマイザ(16)で飛沫(17)に霧化するステップと、
前記飛沫(17)の少なくとも一部を霧化中にまたはその後に帯電させるように、前記1つまたはそれ以上の2流体アトマイザ(16)で使用されるガスの少なくとも一部を帯電させるステップと、を有し、
前記プロセスはさらに、
別個に形成される電場を提供するステップと、
帯電した前記飛沫(17)の少なくとも一部を静電力により前記ガラスの表面の前記部分上に堆積させるために、前記2流体アトマイザ(16)で形成された前記飛沫(17)を、前記別個に形成された電場内に供給するステップと、を有する、プロセス。
【請求項2】
請求項1に記載のプロセスであって、前記飛沫(17)を前記別個に形成された電場内に直接的に形成するステップを有する、プロセス。
【請求項3】
請求項1または2に記載のプロセスであって、帯電した前記飛沫(17)を前記ガラス表面の前記部分上に堆積させる前に、前記ガラス(2)または前記ガラス表面を、実質的にアニール温度まで、または前記ガラス(2)のコーティング温度まで加熱するステップを有する、プロセス。
【請求項4】
請求項3に記載のプロセスであって、前記ガラス(2)を、少なくとも100℃まで、好ましくは少なくとも200℃まで、最も好ましくは少なくとも300℃まで加熱するステップを有する、方法。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか一項に記載のプロセスであって、霧化され帯電した前記飛沫(17)を加熱するステップを有する、プロセス。
【請求項6】
請求項5に記載のプロセスであって、霧化した帯電した飛沫(17)を加熱された霧化ガスにより加熱するステップを有する、プロセス。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか一項に記載のプロセスであって、帯電した前記飛沫(17)の少なくとも一部を、静電力により前記ガラス表面の前記部分上に堆積させるために、前記ガラス(2)の少なくとも一部を、前記別個に形成された電場内に配置するステップを有する、プロセス。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか一項に記載のプロセスであって、前記2流体アトマイザ(16)で使用されるガスの少なくとも一部をコロナ帯電器(13)により帯電させるステップを有する、プロセス。
【請求項9】
少なくとも1つまたはそれ以上の液体原材料を使用してガラス(2)をコーティングするための装置(1)であって、前記液体原材料は、前記ガラスの表面の少なくとも一部上で本質的に反応し、コーティングを形成し、
前記装置(1)は、前記液体原材料の少なくとも一部を飛沫817)へ少なくとも霧化させるための、1つまたはそれ以上の2流体アトマイザ(16)と、
前記飛沫(17)の少なくとも一部が霧化の間またはその後に帯電するように、前記1つまたはそれ以上の2流体アトマイザ(16)で使用されるガスの少なくとも一部を帯電させるための帯電手段と、を有し、
前記装置(1)はさらに、静電力により、前記ガラス表面の前記部分上に帯電した前記飛沫(17)の少なくとも一部を堆積させるために、別個の形成される電場を有する、装置。
【請求項10】
請求項9に記載の装置であって、1つまたはそれ以上の2流体アトマイザ(16)は、前記別個に形成される電場内に前記飛沫(17)を形成するように配置される、装置。
【請求項11】
請求項9または10に記載の装置(1)であって、霧化した帯電した前記飛沫(17)を加熱するための加熱手段を有する、装置。
【請求項12】
請求項9乃至11のいずれか一項に記載の装置(1)であって、加熱手段が、霧化され帯電される前記飛沫(17)を加熱するための霧化ガスを加熱するように配置される、装置。
【請求項13】
請求項9乃至12のいずれか一項に記載の装置(1)であって、静電力により、前記ガラス表面の前記部分上に、帯電した前記飛沫(17)の少なくとも一部を堆積させるように、前記別個に形成される電場は、前記ガラス(2)の少なくとも一部を受け入れるように配置される、装置。
【請求項14】
請求項9乃至13のいずれか一項に記載の装置(1)であって、前記装置(1)は、前記別個に形成される電場を提供するために、第1電極(18)と、第2電極と、前記第1電極(18)および前記第2電極に接続される電源(12)と、を有する、装置。
【請求項15】
請求項14に記載の装置(1)であって、前記第1電極(18)または前記第2電極、あるいは前記第1電極(18)および前記第2電極は、前記装置(1)の一部である、装置。
【請求項16】
請求項14または15に記載の装置(1)であって、前記第1電極(18)および前記第2電極は、前記装置(1)の他の部品から電気的に絶縁される、装置。
【請求項17】
請求項9乃至16のいずれか一項に記載の装置(1)であって、前記装置(1)はさらに、前記2流体アトマイザ(16)で使用されるガスの少なくとも一部を帯電させるための、コロナ帯電手段を有する、装置。
【請求項18】
請求項9乃至17のいずれか一項に記載の装置(1)であって、前記装置(1)は、帯電した前記飛沫(17)を前記ガラス表面の前記部分上に堆積させる前に、前記ガラス(2)を実質的にアニール温度まで、または少なくとも前記ガラス(2)のコーティング温度まで加熱する、加熱手段(4、5)を有する、装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2012−513357(P2012−513357A)
【公表日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−541529(P2011−541529)
【出願日】平成21年12月21日(2009.12.21)
【国際出願番号】PCT/FI2009/051023
【国際公開番号】WO2010/072899
【国際公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【出願人】(506425734)ベネク・オサケユキテュア (24)
【Fターム(参考)】