説明

ガラスインサート成形用金型

【課題】厚みの大きな平面板を配置し易く、且つ当該平面板の側面周縁部の樹脂枠の厚みを薄く形成することのできるガラスインサート成形用金型を提供すること。
【解決手段】固定型2に、平面板5の裏面の全てに面する対面部分7を設け、対面部分7に、平面板5を保持し得る吸引部6を設け、平面板の端面5aに位置決め可能に接触し得る壁部4aを側面に有するスライドコア4を、平面板の端面5aに壁部4aが接触する平面板位置決め位置と、キャビティが形成されて平面板の端面5aに壁部4aが接触していないキャビティ形成位置との間を、型締め方向に進退可能に固定型2に設け、対面部分7に、平面板5の裏面周縁部5bに臨むようにキャビティの一部を形成する段差9を設けてあるガラスインサート成形用金型1。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、型締めによって固定型と可動型との間にガラス板を主構成とする平面板を挟持すると共に、前記平面板の端部が臨むキャビティを形成するガラスインサート成形用金型に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のガラスインサート成形用金型としては、図19に示すように、その固定型2に、平面板5(ガラス板)の固定型2と対向する裏面周縁部5bに接する底部26と、底部26に連続して平面板の端面5aに位置決め可能に接触する壁部27とから構成されるL字型の窪みを有するスライドコア4を備えるものが提案されている(国際特許出願第PCT/JP2007/068271号参照)。
【0003】
上記スライドコア4は、型締め方向に進退可能に構成されている。即ち、図19(a)に示されるように、平面板5を固定型2に配置する際、スライドコア4は、可動型側に前進移動した状態にあり、配置した平面板の端面5aと裏面周縁部5bが、スライドコアの壁部27と底部26にそれぞれ接し、平面板5の位置決めがなされる。そして、図19(b)に示されるように、可動型3を固定型2側に前進移動させてキャビティ20を形成する際、スライドコア4は、固定型2側に後退移動する。
【0004】
尚、図19は、従来のガラスインサート成形用金型において、平面板5の端部に、樹脂枠が形成される際の当該平面板5の端部付近を概略的に示した縦断側面図であり、図19(a)は、平面板5が、スライドコア4によって固定型2における位置決めがなされて配置される状態を示しており、図19(b)は、可動型3を固定型2側に前進移動させて型締めして金型空間であるキャビティ20が形成されて、溶融樹脂8がキャビティ20内に充填された状態を示している(図19中の破線の矢印はスライドコア4の移動方向を示しており、白抜きの矢印は可動型の移動方向を示している)。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来のガラスインサート成形用金型においては、平面板5を、より位置決め良く確実に固定型2に配置するために、スライドコア4の壁部27の幅(t)をより大きく設定しようとしても、限界があった。
即ち、図19(b)に示すように、スライドコア4の壁部27の幅(t)をより大きく設定しようとすると、キャビティ形成時のスライドコア4の後退移動距離をそれだけ長く取らざるを得なくなるため、平面板の裏面周縁部5bとスライドコアの底部26とが大きく離間することとなる。その結果、平面板の裏面周縁部5bに形成される樹脂枠21の厚み(T)が大きくなり、平面板の端面5aに形成される樹脂枠21との厚み差が増加し得るので、樹脂枠21にヒケ(樹脂の成形収縮によって生じる凹み)が生じ易くなる。
【0006】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであって、その目的は、平面板を配置し易く、且つ当該平面板に形成した樹脂枠にヒケが生じ難いガラスインサート成形用金型を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するため、本発明のうちの請求項1に記載の発明では、型締めによって固定型と可動型との間にガラス板を主構成とする平面板を挟持すると共に、前記平面板の端部が臨むキャビティを形成するガラスインサート成形用金型であって、
前記固定型に、前記平面板の裏面の全てに面する対面部分を設け、
前記対面部分に、前記平面板を保持し得る吸引部を設け、
前記平面板の端面に位置決め可能に接触し得る壁部を側面に有するスライドコアを、前記平面板の端面に前記壁部が接触する平面板位置決め位置と、前記キャビティが形成されて前記平面板の端面に前記壁部が接触していないキャビティ形成位置との間を、型締め方向に進退可能に前記固定型に設け、前記対面部分に、前記平面板の裏面周縁部に臨むようにキャビティの一部を形成する段差を設けてあることを特徴とする。
【0008】
〔作用及び効果〕
本発明のガラスインサート成形用金型においては、固定型に、平面板の裏面の全てに面する対面部分、及び、平面板位置決め位置とキャビティ形成位置との間を型締め方向に進退可能なスライドコアを設けており、スライドコアが平面板位置決め位置にあるとき、平面板の裏面の全てが対面部分に面した状態で、スライドコアの壁部が当該平面板の端面に接触することによって、当該平面板が、固定型において位置決め配置される構成となっている。
【0009】
即ち、本発明においては、図19に示す上記従来のガラスインサート成形用金型におけるスライドコア4の有する底部26と壁部27の機能を分離させており、従来のスライドコアの底部26に相当する部分を、本発明における対面部分の縁部によって構成し得るものである。
【0010】
従って、本発明においては、平面板位置決め位置におけるスライドコアの固定型からの突出量を自在に調節し得るように構成することが可能であり、スライドコアの突出量を大きくすればそれだけ平面板の端面と接触する壁部の幅が大きくなるので、従来のガラスインサート成形用金型と比べて、平面板が配置し易い(図12参照)。
【0011】
さらに、本発明においては、上記従来のガラスインサート成形用金型におけるスライドコアの底部に相当する部分を、対面部分の縁部によって構成し得るため、平面板の裏面周縁部5bに形成された樹脂枠の厚み(T)は、スライドコアの形状によらず常に一定となり、平面板の裏面周縁部5bに形成される樹脂枠21と、平面板の端面5aに形成される樹脂枠21との厚み差が生じ難く、その結果、樹脂枠21にヒケが生じるのを防止し易くなる(図14参照)。
【0012】
また、さらに本発明によれば、平面板を対面部分に配置させて溶融樹脂をキャビティ内に充填すると、対面部分の段差にも溶融樹脂が充填され、平面板の端面と、当該端面に連続する平面板の裏面周縁部とを覆うように樹脂枠が形成されるので、平面板と、形成された樹脂枠とがより強固に一体化され得る。
【0013】
本発明のうちの請求項2に記載の発明では、前記対面部分を複数の対面形成部材で構成し、それら複数の対面形成部材の対向面同士の間に、前記吸引部を形成してあることを特徴とする。
【0014】
〔作用及び効果〕
本発明によれば、対面部分を形成する複数の対面形成部材の対向面同士の間に、平面板を保持し得る吸引部を形成するものであるため、例えば、吸引部を、対面部分に円形の吸引孔を設けて構成するような場合と比べて、当該吸引部の幅をより小さく構成することが可能である。
そのため、溶融樹脂を空打ち(金型内に平面板を配置せず溶融樹脂を射出すること)する際、対面部分に溶融樹脂の一部が流れ込んだとしても、その溶融樹脂が吸引部内に侵入し難くなるため、吸引部が、溶融樹脂によって閉塞される心配も少ない。
【0015】
本発明のうちの請求項3に記載の発明では、前記スライドコアが、前記段差と隣接する位置に設けられており、そのスライドコアの平面板側角部に斜面を形成してあることを特徴とする。
【0016】
〔作用及び効果〕
本発明によれば、スライドコアが、段差と隣接する位置に設けられており、スライドコアの平面板側角部に斜面を形成してあるため、平面板端部に形成される樹脂枠の急激な肉厚変化を回避することが可能であり、ヒケの発生をより効果的に防止し得る(図18参照)。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下に本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
〔実施形態〕
<本発明のガラスインサート成形用金型の構成>
図1は、本発明のガラスインサート成形用金型1の固定型2を、可動型3側から見たときの様子を概略的に示した図であり、図2及び図3はそれぞれ、図1の矢視線II−II及び矢視線III−IIIにおける縦断側面図である。尚、図2中の破線の矢印は、スライドコア4の移動方向を示しており、図3中の矢印は、溶融樹脂の射出方向を示す。
図4は、本発明のガラスインサート成形用金型の可動型3を、固定型2側から見たときの様子を概略的に示した図であり、図5は、図3の矢視線V−Vにおける縦断側面図である。
【0018】
本発明のガラスインサート成形用金型1は、以下に記載する固定型2及び可動型3を備えて構成される。
【0019】
(1)固定型
図1〜図3に示すように、固定型2は、第1対面形成部材11及び第2対面形成部材12を備えて構成されており、固定型2には、平面板を配置する対面部分7、配置した平面板を対面部分7に保持する吸引部(スリット6)、対面部分7の外側を構成するパーティング面14a、溶融樹脂をキャビティ内に射出するためのゲート10、平面板の端面に位置決め可能に接触し得るスライドコア4、配置した平面板の裏面周縁部に臨むようにキャビティの一部を形成する段差9、及びスライドコア4がキャビティ形成位置まで後退移動したときに、スライドコアの端面4bと面一となるスライドコア引退面29が設けられている。
【0020】
(対面部分)
図1及び図2に示すように、対面部分7は、第1対面形成部材11の第1対面部分7a、第2対面形成部材12の第2対面部分7b、及び段差9の底面7cから構成されており、平面板を対面部分7に配置した際、平面板の裏面(対面部分7と接する側の面)の全てが、対面部分7に面するように構成されている。
【0021】
尚、対面部分7については、上記構成に限定されるものではなく、固定型2がさらにより多くの対面形成部材を備えるものであって、対面部分7が、さらにより多くの対面形成部材によって構成されるようにしても良い。
【0022】
(吸引部)
第1対面形成部材11は、第2対面形成部材12の内部に形成されている中空部内に、第1対面形成部材の外周面11aと、中空部に面する第2対面形成部材の内周面12aとの間にスリット6を設けた状態で設置されており、平面板を対面部分7に保持する吸引部は、当該スリット6によって構成されている。
即ち、スリット6は、第1対面部分7aの外周に沿って形成されており(図1参照)、図示しない空気吸引装置によって空気を吸引して、平面板を対面部分7に吸着固定し得るように構成されている。尚、本実施形態においては、第1対面部分7aの全周にわたってスリット6を設ける構成を示しているが、この構成に限定されるものではなく、第1対面部分7aの外周の一部分にスリット6を設ける構成としても良い。
【0023】
固定型2を、第1対面形成部材11及び第2対面形成部材12によって構成し、第1対面形成部材11と第2対面形成部材12との対向面の間にスリット6を設けて吸引部を形成することによって、例えば、吸引部を、対面部分7に円形の吸引孔を設けて構成するような場合と比べて、当該吸引部の幅をより小さく構成することが可能となる。
その結果、例えば、溶融樹脂を空打ち(金型内に平面板5を配置せず溶融樹脂を射出すること)する際、対面部分7に溶融樹脂の一部が流れ込んだとしても、その溶融樹脂がスリット6(吸引部)内に侵入し難くなるため、スリット6が、溶融樹脂によって閉塞される心配も少ない。
【0024】
(スライドコア)
図1及び図2に示すように、対面部分7の外周部分に、固定型2内の型締め方向に形成されたスライドコア用孔13、及び、そのスライドコア用孔13内部を型締め方向に進退摺動し得るスライドコア4が、左右上下に2箇所ずつ(即ち、合計8箇所)設けられている。
スライドコア4は、その側面に壁部4aを有しており、図示しない駆動機構によって、対面部分7に配置された平面板の端面に壁部4aが接触し得る位置(平面板位置決め位置)と、キャビティが形成されて平面板の端面に壁部4aが接触していない位置(キャビティ形成位置)との間を、型締め方向(左右方向)に進退し得るように構成されている。
即ち、平面板を対面部分7に配置する際には、スライドコア4は平面板位置決め位置まで前進移動してスライドコア用孔13から突出し、また、固定型2と可動型が当接して内部にキャビティが形成される際には、スライドコア4はキャビティ形成位置まで後退移動する。
【0025】
(段差)
図1及び図2に示すように、段差9は、第2対面部分7bの縁部のうち平面板5の短辺に対応する部分(図6参照)に沿ってそれぞれ設けられており、対面部分7に配置された平面板の裏面周縁部5b(対面部分7と接する側の面)にキャビティ20の一部を形成し得るように構成されている(図9及び図13参照)。尚、段差9の底面7cは、対面部分7の一部を構成するものである。
【0026】
(スライドコア引退面)
図1及び図3に示すように、スライドコア引退面29は、段差9に沿って設けた段状部分の底面に形成されており、その面の高さが、パーティング面14aと、段差9の底面7cとの間に位置するように構成されている。
【0027】
(ゲート)
図1に示すように、固定型2には、ゲート10が、段差9の底面7cに設けられている。
また、図3に示すように、ゲート10に通じるランナ15は、型締め方向に形成されており、溶融樹脂は、ランナ15内を移動して、ゲート10からキャビティ内に射出される構成となっている。このような構成を採用することによって、溶融樹脂が、ゲート10から平面板の端面5a(図6及び図7参照)に向けて直接射出される状態が回避され得るため、平面板の端面5aが溶融樹脂の射出圧力を受け難くなり、平面板の位置ずれが生じ難くなる。
【0028】
(2)可動型
図4及び図5に示すように、可動型3には、キャビティを形成するための凹部16、及び凹部16の外側を構成するパーティング面14bが設けられており、図示しない駆動機構によって、固定型2と接触又は離間し得るように型締め方向(左右方向)に移動可能に構成してある。
【0029】
(凹部)
図5に示すように、凹部16の深さH(パーティング面14bから凹部16の底面まで距離)は、平面板の厚みと略同じ長さに設定しており、凹部16の内周面には、成形品の離型を容易にするための抜き勾配17が設けられている。
【0030】
<本発明のガラスインサート成形用金型を用いたガラスインサート成形>
上述のように構成された本発明のガラスインサート成形用金型1を用いて、ガラスインサート成形を行う方法を説明する。
【0031】
図6は、本発明のガラスインサート成形用金型1において、固定型2の対面部分7に平面板5を配置したときの様子を概略的に示した図(固定型2を可動型3側から見た図)であり、図7は、図6の矢視線VII−VIIにおける縦断側面図である。
【0032】
図8は、本発明のガラスインサート成形用金型1において、型締めによって固定型2と可動型3との間に平面板5を挟持する様子を概略的に示した縦断面図である(図6の矢視線VII−VIIに相当する部分のガラスインサート成形用金型1の縦断面図)。尚、図8中の矢印は空気の吸引方向を示しており、破線の矢印はスライドコア4の移動方向を示しており、白抜きの矢印は可動型3の移動方向を示す。
【0033】
図9は、本発明のガラスインサート成形用金型1において、固定型2と可動型3とが互いに当接して平面板の端部が臨むキャビティ20が形成された様子を概略的に示した縦断面図である(図6の矢視線VII−VIIに相当する部分のガラスインサート成形用金型1の縦断面図)。尚、図9中の矢印は、空気の吸引方向を示す。
【0034】
図10は、本発明のガラスインサート成形用金型1において、形成されたキャビティ20に溶融樹脂8を充填して平面板5の端部に樹脂枠21が形成された様子を概略的に示した縦断面図である(図6の矢視線VII−VIIに相当する部分のガラスインサート成形用金型1の縦断面図)。尚、図10中の矢印は、空気の吸引方向を示す。
【0035】
図11は、本発明のガラスインサート成形用金型1において、平面板5の端部に樹脂枠21を形成した成形品19を取り出す様子を概略的に示した縦断面図である(図6の矢視線VII−VIIに相当する部分のガラスインサート成形用金型1の縦断面図)。
【0036】
図12、図13、及び図14はそれぞれ、図7、図9、及び図10におけるスライドコア4付近を拡大した図である。
【0037】
使用する平面板5は、ガラス板を主構成とする平面板であり、ガラス板としては、例えば、普通板ガラス、強化板ガラス、磨き板ガラス等を用いることができる。また、前記平面板5は、ガラス板の表面又は/及び裏面に予め加飾が施されたものであっても良い。例えば、得られるガラスインサート成形品が、表示装置を備えた電子機器の筐体である場合、ガラス板に、少なくとも表示装置のための表示窓部を除いて予め加飾を施しておくと良い。また、前記平面板5は、当該平面板5と前記樹脂枠21との密着力を向上させるための層を有していても良い。
【0038】
先ず、図6、図7及び図12に示すように、スライドコア4を、その壁部4aが平面板の端面5aに接触する位置(平面板位置決め位置)まで十分に突出させた状態で、固定型2の対面部分7に平面板5を配置する。即ち、平面板5は、その端面5aがスライドコアの壁部4aに接触することによって位置決めされた状態で対面部分7に配置される。
【0039】
本発明のガラスインサート成形用金型1においては、スライドコア4の平面板位置決め位置における固定型2からの突出量を、自在に調節するように構成することが可能であり、スライドコア4の突出量を大きくすればそれだけ、平面板の端面5aと接触する壁部4aの幅(t)が大きくなり、平面板5を配置し易くなる。
【0040】
次いで、図8に示すように、対面部分7に設けられているスリット6から、図示しない空気吸引装置によって空気を吸引することによって平面板5を対面部分7に吸着固定して、可動型3を、平面板5を吸着した固定型2に向って前進移動させると共に、図9及び図13に示すように、スライドコア4を、その壁部4aが平面板の端面5aに接触していない位置(キャビティ形成位置)まで、固定型2側に後退移動させる(尚、本実施形態においては、スライドコア4の端面4bが、対面部分7の外周部分のうちスライドコア引退面29を設けた箇所ではスライドコア引退面29と面一となる位置(図13参照)まで、又スライドコア引退面29を設けていない箇所ではパーティング面14aと面一となる位置まで、スライドコア4を後退移動させている)。
【0041】
そして、図9及び図13に示すように、型締めによって、固定型2の対面部分7と、可動型3の凹部16底面との間に平面板5を挟持すると、固定型2及び可動型3の互いのパーティング面14a,14bが当接し、平面板5の端部が臨むキャビティ20が内部に形成される。
【0042】
そして、図10及び図14に示すように、ゲート10から溶融樹脂8を射出してキャビティ20内に充填することによって、平面板5の外周に樹脂枠21が一体形成される。
【0043】
尚、溶融樹脂8の材料としては、ポリスチレン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ABS樹脂、AS樹脂、AN樹脂などの汎用樹脂を挙げることができる。また、ポリフェニレンオキシド・ポリスチレン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアセタール系樹脂、ポリアクリル系樹脂、ポリカーボネート変性ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、超高分子量ポリエチレン樹脂などの汎用エンジニアリング樹脂やポリスルホン樹脂、ポリフェニレンサルファイド系樹脂、ポリフェニレンオキシド系樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリイミド樹脂、液晶ポリエステル樹脂、ポリアリル系耐熱樹脂などのスーパーエンジニアリング樹脂を使用することもできる。
【0044】
そして、可動型3を固定型2から離間するように後退移動、すなわち型開きした後、スリット6からの空気吸引を停止し、図11に示すように、スライドコア4を前進移動させる。これにより、スライドコア4が、エジェクターピンの役割を果たし、成形品19は、固定型2から良好に引離されることになり、本発明のガラスインサート成形用金型1から容易に取り外すことが可能になる。
【0045】
図15は、上記ガラスインサート成形用金型1を用いて製造された成形品19の表側の平面図であり、図16及び図17はそれぞれ、図15の矢視線XVI−XVI及び矢視線XVII−XVIIにおける縦断側面図である。
【0046】
成形品19は、平面板5と、平面板5の外周全体に一体形成された樹脂枠21とを備えて構成されている。
図15〜図17に示すように、成形品19の右辺22及び左辺23の樹脂枠21は、平面板の端面5aにのみ形成されており(以下、当該樹脂枠部分を端面樹脂枠21aと称する)、成形品19の上辺24と下辺25の樹脂枠21は、平面板の端面5aと裏面周縁部5bとを覆うように形成されている(以下、当該樹脂枠部分を周縁樹脂枠21bと称する)。
周縁樹脂枠21bは、平面板5を固定型2の対面部分7に配置したときに対面部分7の段差9に面する平面板の裏面周縁部5bと、その裏面周縁部5bに連続する端面5aにわたって形成されたものであり、周縁樹脂枠21bが形成されることによって、平面板5と、形成された樹脂枠21とがより強固に一体化され得る。つまり、平面板5の表面側から押圧力が加わっても、平面板5が周縁部樹脂枠21bによって支持されるからである。
【0047】
尚、本実施形態における周縁樹脂枠21bは、図16に示すように成形品19の裏側の断面が階段状に形成されており、これによって、形成される樹脂枠21の急激な肉厚変化を回避し得る。
【0048】
また、図17に示すように、成形品19の右辺22及び左辺23の樹脂枠21の裏側は、平面板5と面一となっており段差がないので、成形品19の裏側に対する飛散防止シートや静電センサー等の貼り合わせが容易となる。
【0049】
〔別実施形態〕
〔1〕図18に示すように、前述の実施形態における段差9を設けた側のスライドコア4の平面板5側角部に斜面28を形成しても良い。この場合、平面板5の端部に形成される樹脂枠21の急激な肉厚変化がより一層回避され易く、ヒケの発生をより効果的に防止し得る。尚、この構成においては、スライドコア引退面29の平面板5側角部にも、前記スライドコア4の斜面28と同じ傾斜角度を有する傾斜面を設ける。
〔2〕前述の実施形態のスライドコア4は、前述の実施形態のように対面部分7の全周に対して部分的に設けても良いし、あるいは、対面部分7の全周をスライドコア4で囲うように設けても良い。
〔3〕前述の実施形態における吸引部6は、空気吸引以外の手段を用いても良く、例えば、吸盤等で構成するようにしても良い。
〔4〕前述の実施形態における対面部分7を、一つの対面形成部材で構成しても良く、この場合、空気を吸引し得る複数の吸引孔を当該対面形成部材に設けて、吸引部6を構成するようにしても良い。
〔5〕前述の実施形態におけるスライドコア引退面29を設けない構成としても良い。
〔6〕前記の実施形態における段差9及びスライドコア引退面29の長さを短くしても良い。また段差9及びスライドコア引退面29を対面部分7の左右上下全辺に沿って配置しても良い。
〔7〕本発明のガラスインサート成形用金型は、前述の実施形態における前記可動型3と、前記平面板5を吸着した状態の前記固定型2との間に、転写フィルムを挟み込み可能である成形同時絵付け手段を備えていても良い。この場合、前記可動型3と、前記平面板5を吸着した状態の前記固定型2との間に転写フィルムを挟み込む工程を経た後に型締めすることにより、溶融樹脂の射出と同時に前記転写フィルムの絵付け部分を前記平面板5に一体化された前記樹脂枠21に転写することができる。即ち、本発明のガラスインサート成形用金型に、成形同時転写用金型としての働きもさせるものである。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明のガラスインサート成形用金型(一実施形態)の固定型を、可動型側から見たときの様子を概略的に示した図
【図2】図1の矢視線II−IIにおける縦断側面図
【図3】図1の矢視線III−IIIにおける縦断側面図
【図4】本発明のガラスインサート成形用金型(一実施形態)の可動型を、固定型側から見たときの様子を概略的に示した図
【図5】図3の矢視線V−Vにおける縦断側面図
【図6】本発明のガラスインサート成形用金型(一実施形態)において、固定型の対面部分7に平面板を配置したときの様子を概略的に示した図
【図7】図6の矢視線VII−VIIにおける縦断側面図
【図8】本発明のガラスインサート成形用金型(一実施形態)において、型締めによって固定型と可動型との間に平面板を挟持する様子を概略的に示した縦断面図
【図9】本発明のガラスインサート成形用金型(一実施形態)において、固定型と可動型とが互いに当接して平面板の端部が臨むキャビティが形成された様子を概略的に示した縦断面図
【図10】本発明のガラスインサート成形用金型(一実施形態)において、形成されたキャビティに溶融樹脂を充填して平面板の端部に樹脂枠が形成された様子を概略的に示した縦断面図
【図11】本発明のガラスインサート成形用金型(一実施形態)において、平面板の端部に樹脂枠を形成した成形品を取り出す様子を概略的に示した縦断面図
【図12】図7におけるスライドコア付近を拡大した図
【図13】図9におけるスライドコア付近を拡大した図
【図14】図10におけるスライドコア付近を拡大した図
【図15】本発明のガラスインサート成形用金型(一実施形態)を用いて製造された成形品の表側の平面図
【図16】図15の矢視線XVI−XVIにおける縦断側面図
【図17】図15の矢視線XVII−XVIIにおける縦断側面図
【図18】本発明のガラスインサート成形用金型のその他の実施形態におけるスライドコア付近を拡大した図
【図19】従来のガラスインサート成形用金型において、平面板の端部に、樹脂枠が形成される際の当該平面板の端部付近を概略的に示した縦断側面図
【符号の説明】
【0051】
1 ガラスインサート成形用金型
2 固定型
3 可動型
4 スライドコア
5 平面板
6 スリット(吸引部)
7 対面部分
8 溶融樹脂
9 段差
10 ゲート
11 第1対面形成部材
12 第2対面形成部材
13 スライドコア用孔
14 パーティング面
15 ランナ
16 凹部
17 抜き勾配
19 成形品
20 キャビティ
21 樹脂枠
22 右辺
23 左辺
24 上辺
25 下辺
26 底部
27 壁部
28 斜面
29 スライドコア引退面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
型締めによって固定型と可動型との間にガラス板を主構成とする平面板を挟持すると共に、前記平面板の端部が臨むキャビティを形成するガラスインサート成形用金型であって、
前記固定型に、前記平面板の裏面の全てに面する対面部分を設け、
前記対面部分に、前記平面板を保持し得る吸引部を設け、
前記平面板の端面に位置決め可能に接触し得る壁部を側面に有するスライドコアを、前記平面板の端面に前記壁部が接触する平面板位置決め位置と、前記キャビティが形成されて前記平面板の端面に前記壁部が接触していないキャビティ形成位置との間を、型締め方向に進退可能に前記固定型に設け、前記対面部分に、前記平面板の裏面周縁部に臨むようにキャビティの一部を形成する段差を設けてあるガラスインサート成形用金型。
【請求項2】
前記対面部分を複数の対面形成部材で構成し、それら複数の対面形成部材の対向面同士の間に、前記吸引部を形成してある請求項1に記載のガラスインサート成形用金型。
【請求項3】
前記スライドコアが、前記段差と隣接する位置に設けられており、そのスライドコアの平面板側角部に斜面を形成してある請求項1又は2のいずれか1項に記載のガラスインサート成形用金型。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2009−131999(P2009−131999A)
【公開日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−308905(P2007−308905)
【出願日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【出願人】(000231361)日本写真印刷株式会社 (477)
【Fターム(参考)】