説明

ガラスラン

【課題】ドアフレームの形状に沿って取付けることが容易で、且つ、変形や波打ちが生じないガラスランを得る。
【解決手段】ガラスランは、ガラスラン部20とトリム部30とモール部40とから構成される。ガラスラン部20は、押出成形により軟質部材から形成され、トリム部30は、押出成形により硬質部材から形成され、モール部40は、射出成形により硬質部材から形成される。モール部40は、モール頭部41と、モール脚部42からなる断面略T字状をなす。モール頭部41の裏面にモール脚部42を挟んで、トリム部底壁33と車外側側壁21が一体的に接合され、モール脚部42の一方の側面にガラスラン側側壁31が一体的に接合され、モール脚部42の他方の側面にガラスラン部底壁23が一体的に接合される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドアフレームに取付けられ、車体開口部周縁とドアとの間をシールするガラスランに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ドアサッシュが設けられているドアの自動車の車体ドア開口縁とドアとの間をシールするシール構造においては、例えば、車体ドア開口縁のフランジにオープニングトリムウエザストリップを取り付け、ドアサッシュの外周にドアウエザストリップを取り付け、ドア閉時にオープニングトリムウエザストリップの中空シール部がドアサッシュの膨出部に当接し、ドアウエザストリップの中空シール部およびシールリップが車体ドア開口縁のアウターパネルに当接してドアとの間をシールしていた。
【0003】
このとき、ドアの内部において昇降するドアガラスは、その周囲をドアサッシュの内周側に取付けられたガラスランによって保持され、ガラスランの断面略コ字状の溝部内を昇降しており、このドアガラスとドアサッシュとの間のシールは、このガラスランによりなされている。
【0004】
自動車の側面の外観では、ドアガラスの周囲にガラスラン、ドアサッシュやセンターピラーが目立つこととなり、デザイン的に改良の必要性があった。また、ドアサッシュやセンターピラーとドアガラスの間に、ガラスランが存在するため、ドアサッシュとドアガラスとの間の表面でギャップが存在してデザイン的に好ましくなかった。
【0005】
このため、図5に示すように、サッシュレスドアタイプの自動車車体として、ドアサッシュの車外側の面をなくしてフランジのみとして、ドア1のベルトライン部位よりも上部では、ドアガラス5だけを自由に昇降させることが行われている。これによって、自動車の側面では、ドア1のベルトライン部位から上の部分では、ドアガラス5のみの外観とすることができる。
【0006】
この場合に、図6に示すように、ガラスラン110は、ドアガラス5とドアフレーム2の間をシールするガラスラン部120と、ガラスラン110をドアフレーム2の先端のフランジ部3に取付けるトリム部130から構成されている(例えば、特許文献1参照。)。ガラスラン部120は、車外側側壁121、車内側側壁122及び底壁123からなる断面略コ字状の本体と、車外側側壁121及び車内側側壁122の先端からそれぞれ断面略コ字状の内部斜め方向に延設される車外側シールリップ124と車内側シールリップ125から構成されている。そして、車外側シールリップ124と車内側シールリップ125トでドアガラス5をシールしている。
【0007】
トリム部130は、ガラスラン部120の底壁123と一体に形成されるガラスラン側側壁131と、ボディー側側壁132とトリム部底壁133からなる断面略コ字状に形成され、ボディー側側壁132の外面には、ドア閉時に車体開口部周縁6に当接してシールするトリム部シールリップ134、135が形成されている。そして、ガラスラン側側壁131と、ボディー側側壁132とトリム部底壁133の内部には、金属製の断面略コ字状のインサート136が埋設されている。
【0008】
そして、その製造は、ガラスラン部120とトリム部130をインサート136と共に同時に、押出成形により直線状に形成されている。
金属製のインサート136を有するために、ガラスラン110は重量が大きく、ガラスラン110の全体の剛性が大きく、ドアフレーム2の上辺の外形曲面に沿って取付ける場合には、曲面に沿うように、押出成形したガラスラン110を短く切断して、さらに接続部分で屈曲させて、接続する必要があった。
また、ドアフレーム2の曲面に沿うように曲げると、表面にしわや波打ちが生じる場合があった。
【0009】
また、図7に示すように、ガラスラン210の場合は、図6の場合と同様に、ドアガラス5とドアフレーム2の間をシールするガラスラン部220と、ガラスラン210をドアフレーム2の先端のフランジ部3に取付けるトリム部230から構成されている。ガラスラン部220は、車外側側壁221、車内側側壁222及び底壁223からなる断面略コ字状の本体と、車外側側壁221及び車内側側壁222の先端からそれぞれ断面略コ字状の内部斜め方向に延設される車外側シールリップ224と車内側シールリップ225から構成されている。そして、車外側シールリップ224と車内側シールリップ225トでドアガラス5をシールしている。
【0010】
トリム部230は、ガラスラン部220の底壁223と一体に形成されるガラスラン側側壁231と、ボディー側側壁232とトリム部底壁233からなる断面略コ字状に形成され、ボディー側側壁232の外面には、ドア閉時に車体開口部周縁6に当接してシールするトリム部シールリップ234が形成されている。そして、インサートを有しないため、車外側側壁221、底壁223、ガラスラン側側壁231と、ボディー側側壁232とトリム部底壁133は硬質の合成樹脂で形成されている。そして、車外側側壁221、ボディー側側壁232とトリム部底壁133の外面には車外側からの見栄えを向上させるために、光輝フィルム201が貼付されている(例えば、特許文献2参照。)。
【0011】
しかしながら、この場合においても、硬質の合成樹脂で形成されている部分のガラスラン210の剛性が大きく、ドアフレーム2の上辺の外形曲面に沿って取付ける場合には、曲面に沿うように曲げると、湾曲の急な部分では、光輝フィルム201に変形や波打ち等の不具合が生じる場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2005−247294号公報
【特許文献2】特開2010−18130号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
このため、サッシュレスドアタイプの自動車において、ドアフレームの形状に沿って取付けることが容易で、且つ、変形や波打ちが生じないガラスランが求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するために請求項1の本発明は、ドアフレームに取付けられ、車体開口部周縁とドアとの間をシールするガラスランにおいて、
ガラスランは、ドアフレームの内周に取付けられるガラスラン部と、ドアフレームの先端に取付けられるトリム部と、トリム部とガラスラン部とを一体的に接合するモール部とから構成され、
ガラスラン部は、押出成形により軟質部材から形成され、車外側側壁、車内側側壁及びガラスラン部底壁からなる断面略コ字状をなすとともに、車外側側壁及び車内側側壁の先端から断面略コ字状の内部方向斜めにそれぞれ車外側シールリップと車内側シールリップを延設し、
トリム部は、押出成形により硬質部材から形成され、ガラスラン側側壁、ボディー側側壁及びトリム部底壁からなる断面略コ字状をなし、
モール部は、射出成形により硬質部材から形成され、ドアフレームの車外側側面に位置するモール頭部と、モール頭部の裏面から延設されるモール脚部からなる断面略T字状をなし、
モール頭部の裏面にモール脚部を挟んで、トリム部底壁と車外側側壁がモールの射出成形時に一体的に接合され、モール脚部の一方の側面にガラスラン側側壁が一体的に接合され、モール脚部の他方の側面にガラスラン部底壁が一体的に接合されたことを特徴とするガラスランである。
【0015】
請求項1の本発明では、ガラスランは、ドアフレームの内周に取付けられるガラスラン部と、ドアフレームの先端に取付けられるトリム部と、トリム部とガラスラン部とを一体的に接合するモール部とから構成される。このため、ガラスラン部、トリム部及びモール部を別々にそれぞれ別の材料で別々に分けて形成することができ、それぞれの部分の形状を容易に成形することができ、その後、全体として一体化するため、全体として複雑な形状も容易に形成することができる。また、柔軟性を有する部分と剛性を有する部分を適切な材料を選択することができる。
【0016】
ガラスラン部は、押出成形により軟質部材から形成され、車外側側壁、車内側側壁及びガラスラン部底壁からなる断面略コ字状をなすとともに、車外側側壁及び車内側側壁の先端から断面略コ字状の内部方向斜めにそれぞれ車外側シールリップと車内側シールリップを延設している。このため、車外側側壁、車内側側壁及びガラスラン部底壁からなる断面略コ字状の内部をドアガラスの端部が摺動して、ドアガラスを保持することができる。また、軟質部材から形成されて、柔軟に撓むことができ、車外側シールリップと車内側シールリップが、ドアガラスの端部に当接して、ドアガラスとドアフレームの間をシールすることができる。
【0017】
トリム部は、押出成形により硬質部材から形成され、ガラスラン側側壁、ボディー側側壁及びトリム部底壁からなる断面略コ字状をなしている。このため、ドアフレームの先端のフランジ部をトリム部で挟持することができ、ガラスランをドアフレームに保持することができる。
【0018】
モール部は、射出成形により硬質部材から形成され、ドアフレームの車外側側面に位置するモール頭部と、モール頭部の裏面から延設されるモール脚部からなる断面略T字状をなしている。このため、モール頭部がドアフレームの車外側側面の意匠面を形成することができ、見栄えが良い。モール脚部は、モール頭部を保持して、ガラスラン部とトリム部を接合することができる。また、金属製のインサートを有しないためガラスランを軽くして、車両の軽量化に貢献することができる。
【0019】
モール頭部の裏面にモール脚部を挟んで、トリム部底壁と車外側側壁が一体的に接合され、モール脚部の一方の側面にガラスラン側側壁がモールの射出成形時に一体的に接合され、モール脚部の他方の側面にガラスラン部底壁が一体的に接合された。このため、モール部の剛性によりガラスランを形成し、別々に形成されたガラスラン部とトリム部をドアフレームの形状に沿うようにそれぞれ曲げてから、モール部で一体に接合して、ガラスランの全体の形状をドアフレームの形状に合わせて、湾曲させて形成することができる。
【0020】
モール部により、ガラスラン部の車外側側壁と底壁の剛性を大きくして、ドアガラスを保持する力を向上させることができ、高速走行時にドアガラスが車外側に移動しても、その移動を制限することができる。また、ドアガラスが上昇して、底壁に当接しても、底壁やガラスラン部の変形を防止できる。
【0021】
請求項2の本発明は、トリム部のガラスラン側側壁の先端又はガラスラン部底壁の車内側側壁側の外面にドアフレームに係合する係合凸部を形成したガラスランである。
【0022】
請求項2の本発明では、トリム部のガラスラン側側壁の先端又はガラスラン部底壁の車内側側壁側の外面にドアフレームに係合する係合凸部を形成したため、ガラスランをドアフレームに取付けたときに、係合凸部がドアフレームのフランジ部の段部に係合して、トリム部がドアフレームのフランジ部から抜けることを防止できる。
【0023】
請求項3の本発明は、トリム部のボディー側側壁の外面に、ドア閉時に車体開口部周縁に当接するシールリップを設けたガラスランである。
【0024】
請求項3の本発明では、トリム部のボディー側側壁の外面に、ドア閉時に車体開口部周縁に当接するシールリップを設けたため、ドア閉時にシールリップにより車体開口部周縁とドアフレームの間をシールすることができる。
【0025】
請求項4の本発明は、トリム部のボディー側側壁の先端に、ドアフレームに係合する係合リップを設けたガラスランである。
【0026】
請求項4の本発明では、トリム部のボディー側側壁の先端に、ドアフレームに係合する係合リップを設けたため、ガラスランをドアフレームに取付けたときに、係合リップがドアフレームのフランジ部の根元に係合して、トリム部がドアフレームのフランジ部から抜けることを防止できる。
【0027】
請求項5の本発明は、モール部のモール頭部の外面に装飾部材が設けられたガラスランである。
【0028】
請求項5の本発明では、モール部のモール頭部の外面に装飾部材が設けられたため、モール頭部の外面の装飾部材が、ドアフレームの車外側側面の意匠面を形成することができ、見栄えが良い。装飾部材を選択することにより、車体と調和した意匠面を形成することができる。
【0029】
請求項6の本発明は、ガラスランに、ドアフレームの縦辺部に装着されるガラスラン部が接続されたガラスランである。
【0030】
請求項6の本発明では、ガラスランに、ドアフレームの縦辺部に装着されるガラスラン部が接続されたため、ドアフレームの上辺ばかりでなく、ドアガラスの側端の縦辺側の部分をガラスラン部が保持してシールすることができる。
【0031】
請求項7の本発明は、ガラスラン部は、オレフィン系熱可塑性エラストマーで形成され、トリム部とモール部はオレフィン系合成樹脂で形成されたガラスランである。
【0032】
請求項7の本発明では、ガラスラン部は、オレフィン系熱可塑性エラストマーで形成されたため、柔軟性を有してドアガラスの昇降に応じて、ドアガラスと当接してシールすることができる。トリム部とモール部はオレフィン系合成樹脂で形成されたため、剛性を有してドアフレームを挟持して取付けることができる。いずれもオレフィン系であるため、耐候性に優れて、リサイクルも容易である。
【0033】
請求項8の本発明は、ドアフレームに取付けられ、車体開口部周縁とドアとの間をシールするガラスランの製造方法において、
ガラスランは、ドアフレームの内周に取付けられるガラスラン部と、ドアフレームの先端に取付けられるトリム部と、トリム部とガラスラン部とを一体的に接合するモール部とを個別に製造し、
ガラスラン部は、車外側側壁、車内側側壁及びガラスラン部底壁からなる断面略コ字状をなすとともに、車外側側壁及び車内側側壁の先端から断面略コ字状の内部方向斜めにそれぞれ車外側シールリップと車内側シールリップを延設する形状を、軟質部材により押出成形で製造し、
トリム部は、ガラスラン側側壁、ボディー側側壁及びトリム部底壁からなる断面略コ字状をなす形状を、硬質部材により押出成形で製造し、
ガラスラン部とトリム部を所定の長さに切断して、モール部を形成する射出成形金型に取付け、
ドアフレームの車外側側面に位置するモール頭部と、モール頭部の裏面から延設されるモール脚部からなる断面略T字状をなすモール部を射出成形金型で射出成形するとともに、射出成形時に、トリム部底壁と車外側側壁がモール頭部の裏面に一体的に接合して、モール脚部の一方の側面にガラスラン側側壁が一体的に接合して、モール脚部の他方の側面にガラスラン部底壁が一体的に接合して製造したことを特徴とするガラスランの製造方法である。
【0034】
請求項8の本発明では、ガラスランは、ドアフレームの内周に取付けられるガラスラン部と、ドアフレームの先端に取付けられるトリム部と、トリム部とガラスラン部とを一体的に接合するモール部とを個別に製造した。このため、ガラスラン部、トリム部及びモール部を別々にそれぞれ別の材料で別々に分けて製造することができ、それぞれの部分の形状を容易に成形することができ、その後、全体として一体化するため、全体として複雑な形状も容易に製造することができる。また、柔軟性を有する部分と剛性を有する部分を適切な材料を選択して製造することができる。
【0035】
ガラスラン部は、車外側側壁、車内側側壁及びガラスラン部底壁からなる断面略コ字状をなすとともに、車外側側壁及び車内側側壁の先端から断面略コ字状の内部方向斜めにそれぞれ車外側シールリップと車内側シールリップを延設する形状を、軟質部材により押出成形で製造した。このため、車外側側壁、車内側側壁、ガラスラン部底壁、車外側シールリップ及び車内側シールリップを押出成形で同時に成形することができる。また、それらからなる断面略コ字状の内部をドアガラスの端部が摺動して、軟質部材から形成されて、柔軟に撓むことができる。また、ドアガラスの端部に車外側シールリップと車内側シールリップが当接して、ドアガラスとドアフレームの間をシールすることができるガラスラン部を製造することができる。
【0036】
トリム部は、ガラスラン側側壁、ボディー側側壁及びトリム部底壁からなる断面略コ字状をなす形状を、硬質部材により押出成形で製造する。このため、ガラスラン側側壁、ボディー側側壁及びトリム部底壁を押出成形で同時に成形することができる。また、剛性の大きなトリム部で、ドアフレームの先端のフランジ部を挟持することができ、ガラスランをドアフレームに保持することができる。
【0037】
ガラスラン部とトリム部を所定の長さに切断して、モール部を形成する射出成形金型に取付ける。このため、押出成形で成形したガラスラン部とトリム部を射出成型金型内にそれぞれ所定の形状に撓ませて取付けることができ、モール部を射出成型するときに、硬質合成樹脂で形成されるモール部と一体的に接合して、ドアフレームの曲面に適合するように、所定の形状に撓んだガラスランを得ることができる。
【0038】
ドアフレームの車外側側面に位置するモール頭部と、モール頭部の裏面から延設されるモール脚部からなる断面略T字状をなすモール部を射出成形金型で射出成形する。このため、モール頭部がドアフレームの車外側側面の意匠面を形成し、見栄えが良く、モール脚部は、モール頭部を保持して、ガラスラン部とトリム部を接合することができるモール部を製造することができる。
【0039】
射出成形時に、トリム部底壁と車外側側壁がモール頭部の裏面に一体的に接合して、モール脚部の一方の側面にガラスラン側側壁が一体的に接合して、モール脚部の他方の側面にガラスラン部底壁が一体的に接合して製造した。このため、モール部の剛性によりガラスランを形成し、別々に形成されたガラスラン部とトリム部をそれぞれ所定の形状に撓ませた後に、一体に接合して、トリム部の形状に合わせて湾曲させることができる。モール部により、ガラスラン部の車外側側壁と底壁の剛性を大きくして、ドアガラスを保持する力を向上させたガラスランを製造することができる。
【発明の効果】
【0040】
ガラスランは、押出成形で形成され、ドアフレームの内周に取付けられるガラスラン部と、押出成形で形成され、ドアフレームの先端に取付けられるトリム部と、射出成形で形成され、トリム部とガラスラン部とを一体的に接合するモール部とから構成されるため、ガラスラン部、トリム部及びモール部を別々にそれぞれ別の材料で形成して、ドアフレームの形状に合わせて一体的に接合することができる。モール頭部の裏面にモール脚部を挟んで、トリム部底壁と車外側側壁が一体的に接合され、モール脚部の一方の側面にガラスラン側側壁が一体的に接合され、モール脚部の他方の側面にガラスラン部底壁が一体的に接合することができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の実施の形態における、ガラスランの断面図であり、図4のA−A線に沿った断面図である。
【図2】本発明の実施の形態における、ガラスランを構成するガラスラン部、トリム部及びモール部のそれぞれの断面図である。
【図3】本発明の実施の形態における、図5のB−B線に沿った車体開口部周縁上部の一部断面図である。
【図4】本発明の実施の形態における、ガラスランの正面図である。
【図5】自動車の側面図である。
【図6】従来のガラスラン断面図である。
【図7】従来の他のガラスラン断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
本発明の実施の形態を図1〜図5に基づき説明する。
図1〜図4は、本発明の実施の形態を示すものである。図5は、自動車の側面図である。図5に示すように、本発明のガラスラン10は、サッシュレスドアタイプの自動車に使用されるもので、自動車の側面のドア1であるフロントドアとリヤドアの両方のベルトライン部位よりも上部には、ドアサッシュの車外側の面がなくドアガラス5が車外側からは、ほぼ全面に見えるように構成され、ドアガラス5はドア1から上下に昇降することができる。
【0043】
図4に示すように、ガラスラン10の先端には、端末部12が形成されている。
なお、ガラスラン10のフロント側とリヤ側のコーナー部13には、ドアフレーム2の縦辺部に装着されるガラスラン部20が下方に接続されている。このため、ドアフレーム2の上辺ばかりでなく、ドアガラス5の側端の縦辺側の部分をガラスラン部20が保持してシールすることができる。ドアフレーム2の上辺と縦辺の接続部分に取付けられるガラスラン部20は、コーナー部13を構成し、ガラスラン部20の上辺部分と縦辺部分のそれぞれのコーナー部13を型成形により接続して形成される。
【0044】
図1と図2に示すように、ガラスラン10は、ドアフレーム2の内周に取付けられるガラスラン部20と、ドアフレーム2の先端に形成されるフランジ部3に取付けられるトリム部30と、トリム部30とガラスラン部20とを一体的に接合するモール部40とから構成される。まず、ガラスラン部20、トリム部30及びモール部40のそれぞれの形状について説明し、ガラスラン10全体の形状とドアフレーム2への取付については後述する。
図2にガラスラン10を構成するガラスラン部20、トリム部30及びモール部40のそれぞれの形状が示されている。
【0045】
ガラスラン部20は、車外側側壁21、車内側側壁22及びガラスラン部底壁23からなる断面略コ字状の本体部と、車外側側壁21及び車内側側壁22の先端から断面略コ字状の内部方向斜めにそれぞれ車外側シールリップ24と車内側シールリップ25を延設している。このため、車外側側壁21、車内側側壁22及びガラスラン部底壁23からなる断面略コ字状の内部をドアガラス5の端部が摺動して、ドアガラス5を保持することができる。
【0046】
ガラスラン部20は、軟質部材から形成されている。軟質部材として、オレフィン系熱可塑性エラストマーを使用することが好ましい。軟質部材を使用するため、車外側シールリップ24と車内側シールリップ25が柔軟に撓むことができ、ドアガラス5が上昇するときに、ドアガラス5の端部を確実に当接して、ドアガラス5とドアフレーム2の間をシールすることができる。
オレフィン系熱可塑性エラストマーを使用すると、トリム部30及びモール部40がオレフィン系合成樹脂を使用した場合に、両者が溶着し易く、リサイクルも容易である。なお、発泡体を使用することもできる。
【0047】
車内側側壁22と車内側シールリップ25を車外側側壁21と車外側シールリップ24よりも大きく、肉厚に形成することが好ましい。この場合には、ドアガラス5が上昇してガラスラン10内に位置したときに、ドアガラス5を車外側にシフトさせることができ、ドア1の車外側面の段差を小さくして、見栄えを良くし、風切り音を減少させることができる。
【0048】
車外側シールリップ24と車内側シールリップ25の表面(ドアガラス5と接触する面)には、低摺動部材を塗布することが好ましい。低摺動部材として、低摺動性のTPV(動的架橋型オレフィン系熱可塑性
エラストマー)を薄層に形成したり、シリコン塗料、ウレタン塗料等を塗布したりして使用することができる。これにより、ドアガラスの昇降をスムースにするとともに、異音の発生を防止できる。
【0049】
ガラスラン部底壁23の内面側に、車内側側壁22との連結部分から底壁リップ26を形成することができる。底壁リップ26は、ドアガラス5が上昇したときに、ドアガラス5の上端が底壁リップ26に当接して、ガラスラン部底壁23への衝撃を吸収することができる。底壁リップ26の表面にも低摺動部材を塗布することが好ましい。
【0050】
ガラスラン部底壁23の外面側に、車内側側壁22との連結部分(最も車内側)からガラスラン部底壁23と略直角に、ドアフレーム2のフランジ部3の直角方向に係合凸部23aを形成することができる。この場合には、ガラスラン10をドアフレーム2に取付けたときに、ドアフレーム2のフランジ部3の根元付近の段部に係合凸部23aが係止されて、フランジ部3からガラスラン10が外れることを防止できる。なお、後述するように、係合凸部23aの代わりに、トリム部30のガラスラン側側壁31の先端に係合凸部を形成することができる。
【0051】
車内側側壁22の先端の外面に車内側取付凹部29が形成されている。ガラスラン10をドアフレーム2に取付けたときに、車内側取付凹部29には、ドアフレーム2の突部が係合されて、ガラスラン部20の車内側側壁22が係止される。
車外側側壁21と車内側側壁22の先端には、断面略コ字状の外方に向かって車外側カバーリップ27と車内側カバーリップ28が形成されている。
【0052】
次に、トリム部30について説明する。トリム部30は、ガラスラン部底壁23と接合するガラスラン側側壁31と、車体開口部周縁6と対向するボディー側側壁32及びトリム部底壁33からなる断面略コ字状をなしている。この断面略コ字状の内部に、ドアフレーム2の先端のフランジ部3が挿入され、トリム部30で挟持し、ガラスラン10をドアフレーム2に保持する。
【0053】
トリム部30のボディー側側壁32の外面(車体開口部周縁6と対向する面)には、第1トリム部シールリップ34と第2トリム部シールリップ35が形成されている。図3に示すように、ドア閉時に、第1トリム部シールリップ34と第2トリム部シールリップ35が車体開口部周縁6に当接して、車体開口部周縁6とドアフレーム2の間を二重にシールする。
【0054】
ボディー側側壁32の断面略コ字状の内面には、第1保持リップ36と第2保持リップ37が形成され、ガラスラン側側壁31の断面略コ字状の内面には、第1保持突条38と第2保持突条39が形成されている。図3に示すように、ドアフレーム2のフランジ部3がトリム部30の断面略コ字状の内部に挿入されたときに、フランジ部3の一方の面を第1保持リップ36と第2保持リップ37で保持し、フランジ部3の他方の面を第1保持突条38と第2保持突条39で保持することができる。
【0055】
ボディー側側壁32の先端の内面には、係合リップ32aが形成されている。図3に示すように、ドアフレーム2のフランジ部3がトリム部30の断面略コ字状の内部に挿入されたときに、フランジ部3の根元部分の屈曲した部分に係合リップ32aが当接して、トリム部30がフランジ部3から外れることを防止している。
【0056】
トリム部30は、ガラスラン側側壁31と、ボディー側側壁32、トリム部底壁33、第1保持突条38及び第2保持突条39は、硬質部材で形成され、第1トリム部シールリップ34、第2トリム部シールリップ35、第1保持リップ36及び第2保持リップ37は軟質部材で形成され、トリム部全体が硬質部材と軟質部材の同時成形により押出成形される。
【0057】
これにより、トリム部30の本体部分は剛性が強く、フランジ部3を保持することができるとともに、第1トリム部シールリップ34、第2トリム部シールリップ35は、車体開口部周縁6の形状に合わせて、柔軟に当接してシールし、第1保持リップ36及び第2保持リップ37はフランジ部3に柔軟に当接して、シールすることができる。
【0058】
次に、モール部40について説明する。モール部40は、ドアフレーム2の車外側側面に位置するモール頭部41と、モール頭部41の裏面から延設されるモール脚部42からなる断面略T字状をなしている。モール頭部41の表面は、モール表面部43を形成し、モール表面部43には装飾部材を貼着することができる。装飾部材としては、光輝フィルムや、模様フィルムを使用することができる。この場合には、モール頭部41のモール表面部43がドアフレーム2の車外側側面を装飾する意匠面を形成することができ、見栄えが良い。
【0059】
モール部40は、モール頭部41とモール脚部42を射出成型により同時に形成する。モール部40は、硬質部材で形成される。このため、後述するように、モール部40を射出成形するときに、ガラスラン部20とトリム部30を強固に結合して、モール部40の剛性により、形状を維持することができる。
【0060】
次に、ガラスラン部20とトリム部30をモール部40により結合した構成について説明する。
上述のとおり、ガラスラン部20とトリム部30の接合は、モール部40を射出成形するときに、モール部40を形成する溶融した合成樹脂の熱で、ガラスラン部20とトリム部30を溶着することにより行われる。
【0061】
図1に示すように、ガラスラン部20は、ガラスラン部底壁23がモール脚部42のドアガラス5側(図1におけるモール脚部42に対して下側)に接合され、車外側側壁21が、モール頭部41の裏面のドアガラス5側(図1におけるモール脚部42に対して下側)に接合されている。このため、車外側側壁21がモール頭部41に保持されて、ドアガラス5が車外側にシフトしても、ドアガラス5の移動を防止することができる。また、ガラスラン部底壁23にドアガラス5の先端が当接しても、ガラスラン部20の変形を防止することができる。
【0062】
トリム部30は、ガラスラン側側壁31がモール脚部42の車体開口部周縁6側(図1におけるモール脚部42に対して上側)に接合され、トリム部底壁33が、モール頭部41の裏面の車体開口部周縁6側(図1におけるモール脚部42に対して上側)に接合されている。即ち、モール頭部41の裏面の車体開口部周縁6側(図1におけるモール脚部42に対して上側)に、トリム部底壁33が一体的に接合され、モール脚部42を挟んでモール頭部41の裏面のドアガラス5側(図1におけるモール脚部42に対して下側)に、車外側側壁21が一体的に接合されている。
このため、ガラスラン側側壁31とトリム部底壁33がモール部40に強固に保持されて、ドアフレーム2のフランジ部3を確実に保持することができるとともに、ガラスラン部20の車外側側壁21とガラスラン部底壁23がドアガラス5の端部を保持することができる。
【0063】
次に、図3に基づき、本発明の実施の形態のガラスラン10をドアフレーム2に取付けたが場合について説明する。
ドアフレーム2は、先端において、ドアフレーム2を構成するパネルが折り曲げられてフランジ部3を形成している。フランジ部3は根元部分で水平方向に屈曲している。ドアフレーム2の上面のフランジ部3よりも車内側の車体開口部周縁6の車内側に対向する部分には凹部が形成され、ドアウエザストリップ50が取付けられている。ドア閉時に、ドアウエザストリップ50は、車体開口部周縁6に当接して、トリム部30の第1トリム部シールリップ34と第2トリム部シールリップ35とともに、ドアフレーム2と車体開口部周縁6の間のシール性を向上させている。
【0064】
ドアフレーム2のフランジ部3は、トリム部30の断面略コ字状の内部に挿入されている。フランジ部3は、第1トリム部シールリップ34と第2トリム部シールリップ35が上面(図3における上面)から当接し、第1保持突条38と第2保持突条39が下面(図3における下面)から当接して、保持されている。
【0065】
フランジ部3の根元部分のパネルが折り曲げられた先端の段差の部分に、ガラスラン部底壁23に形成された係合凸部23aが係止されて、フランジ部3が抜け出ることを防止している。このとき、トリム部30のボディー側側壁32に形成された係合リップ32aがフランジ部3の屈曲した根元部分に当接して、同様にフランジ部3が抜け出ることを防止している。
【0066】
ガラスラン部20は、フランジ部3の下面に取付けられ、ドアガラス5が昇降して、ガラスラン部20の断面略コ字状の内部を出入りする。
ガラスラン部20の車内側側壁22の外面の車内側取付凹部29には、ドアフレーム2の下側に形成された突起が挿入され、車内側側壁22を保持している。ドアフレーム2の突起には、車内側カバーリップ28が当接し、ドアフレーム2の下側の見栄えを向上させている。
【0067】
車外側側壁21の先端からモール頭部41の端部を覆うように車外側カバーリップ27が延設されている。車外側カバーリップ27と車外側シールリップ24は連続して形成され、モール表面部43の側端下面に接合して、車外側側壁21の端面の見栄えを向上させている。
モール部40のモール表面部43は、ドアフレーム2の車外側外面に位置して、フランジ部3とガラスラン10の車外側外面を覆い、ドアフレーム2の見栄えを向上させている。
【0068】
なお、ガラスラン部20とトリム部30をモール部40と一体的に接合するには、押出成形後、冷却され固化したガラスラン部20とトリム部30を所定の長さに切断して、モール部40を形成する射出成形金型に取付ける。このとき、押出成形で成形したガラスラン部20とトリム部30を射出成型金型内に所定の形状に撓ませて取付ける。そして、モール部40を射出成型するときに、硬質合成樹脂で形成されるモール部40と一体的に接合して、所定の形状に撓んだガラスラン10を得ることができる。
【0069】
ガラスラン10は、軟質部材では、ソリッド材もスポンジ材もいずれも、熱可塑性エラストマー、軟質合成樹脂が使用され、例えば熱可塑性エラストマーでは、オレフィン系エラストマー、軟質合成樹脂では、軟質塩化ビニル等が使用される。硬質部材では、オレフィン系合成樹脂が使用され、例えば、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂等が使用される。
【符号の説明】
【0070】
1 ドア
6 車体開口部周縁
10 ガラスラン
20 ガラスラン部
21 車外側側壁
22 車内側側壁
23 底壁
30 トリム部
31 ガラスラン側側壁
32 ボディー側側壁
33 トリム部底壁
40 モール部
41 モール頭部
42 モール脚部
43 モール表面部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドアフレームに取付けられ、車体開口部周縁とドアとの間をシールするガラスランにおいて、
該ガラスランは、上記ドアフレームの内周に取付けられるガラスラン部と、上記ドアフレームの先端に取付けられるトリム部と、該トリム部とガラスラン部とを一体的に接合するモール部とから構成され、
上記ガラスラン部は、押出成形により軟質部材から形成され、車外側側壁、車内側側壁及びガラスラン部底壁からなる断面略コ字状をなすとともに、上記車外側側壁及び車内側側壁の先端から断面略コ字状の内部方向斜めにそれぞれ車外側シールリップと車内側シールリップを延設し、
上記トリム部は、押出成形により硬質部材から形成され、ガラスラン側側壁、ボディー側側壁及びトリム部底壁からなる断面略コ字状をなし、
上記モール部は、射出成形により硬質部材から形成され、上記ドアフレームの車外側側面に位置するモール頭部と、該モール頭部の裏面から延設されるモール脚部からなる断面略T字状をなし、
上記モール頭部の裏面に上記モール脚部を挟んで、上記トリム部底壁と上記車外側側壁が一体的に接合され、上記モール脚部の一方の側面に上記ガラスラン側側壁がモールの射出成形時に一体的に接合され、上記モール脚部の他方の側面に上記ガラスラン部底壁が一体的に接合されたことを特徴とするガラスラン。
【請求項2】
上記トリム部のガラスラン側側壁の先端又は上記ガラスラン部底壁の車内側側壁側の外面に上記ドアフレームに係合する係合凸部を形成した請求項1に記載のガラスラン。
【請求項3】
上記トリム部のボディー側側壁の外面に、ドア閉時に車体開口部周縁に当接するシールリップを設けた請求項1又は請求項2に記載のガラスラン。
【請求項4】
上記トリム部のボディー側側壁の先端に、ドアフレームに係合する係合リップを設けた請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のガラスラン。
【請求項5】
上記モール部のモール頭部の外面に装飾部材が設けられた請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載のガラスラン。
【請求項6】
上記ガラスランに、上記ドアフレームの縦辺部に装着されるガラスラン部が接続された請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載のガラスラン。
【請求項7】
上記ガラスラン部は、オレフィン系熱可塑性エラストマーで形成され、上記トリム部と上記モール部はオレフィン系合成樹脂で形成された請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載のガラスラン。
【請求項8】
ドアフレームに取付けられ、車体開口部周縁とドアとの間をシールするガラスランの製造方法において、
該ガラスランは、上記ドアフレームの内周に取付けられるガラスラン部と、上記ドアフレームの先端に取付けられるトリム部と、該トリム部とガラスラン部とを一体的に接合するモール部とを個別に製造し、
上記ガラスラン部は、車外側側壁、車内側側壁及びガラスラン部底壁からなる断面略コ字状をなすとともに、上記車外側側壁及び車内側側壁の先端から断面略コ字状の内部方向斜めにそれぞれ車外側シールリップと車内側シールリップを延設する形状を、軟質部材により押出成形で製造し、
上記トリム部は、ガラスラン側側壁、ボディー側側壁及びトリム部底壁からなる断面略コ字状をなす形状を、硬質部材により押出成形で製造し、
上記ガラスラン部と上記トリム部を所定の長さに切断して、上記モール部を形成する射出成形金型に取付け、
上記ドアフレームの車外側側面に位置するモール頭部と、該モール頭部の裏面から延設されるモール脚部からなる断面略T字状をなすモール部を上記射出成形金型で射出成形するとともに、該射出成形時に、上記トリム部底壁と上記車外側側壁が上記モール頭部の裏面に一体的に接合して、上記モール脚部の一方の側面に上記ガラスラン側側壁が一体的に接合して、上記モール脚部の他方の側面に上記ガラスラン部底壁が一体的に接合して製造したことを特徴とするガラスランの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−71570(P2013−71570A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−211437(P2011−211437)
【出願日】平成23年9月27日(2011.9.27)
【出願人】(000241463)豊田合成株式会社 (3,467)
【Fターム(参考)】