説明

ガラス基板の再資源化方法

【課題】廃ガラス基板から、少ない労力とエネルギーにて、廃液など廃棄物の発生を伴わず、かつ、大がかりな設備を使用せず、液晶パネル用ガラスを再生利用することが可能であるガラス基板の再資源化方法を提供する。
【解決手段】ガラス基板を粗破砕する粗破砕工程と、粗破砕工程で得られた破砕物を分級する分級工程とを含み、分級工程で分級された破砕片のサイズに応じて再資源化の方策を選定し次工程を決定することを特徴とするガラス基板の再資源化方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス基板の再資源化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、社会における生産・消費活動全般について一般廃棄物や産業廃棄物が増加し、不法投棄や埋立地逼迫などの地球環境問題が注目を集め、これまでの大量生産、大量消費、大量廃棄型の経済システムから資源循環型経済システムへの転換が社会的に重要な課題となってきている。
【0003】
このような状況を受け、たとえば、2001年4月より家電リサイクル法が施行された。家電リサイクル法においては、2010年3月現在において、エアコン、テレビ、冷蔵庫、洗濯機の家電4品目のリサイクルが義務付けられ、また、それぞれの製品の再商品化率については、エアコン70%以上、ブラウン管式テレビ55%以上、薄型テレビ50%以上、冷蔵庫60%以上、洗濯機65%以上の法定基準値が定められている。
【0004】
ところで、近年、表示部品として液晶パネル、プラズマディスプレイパネル(PDP)、有機ELパネル、電界放出型ディスプレイパネルなどの薄型パネルを搭載した薄型テレビの需要が、省電力、省スペース、軽量であること、ならびにテレビ放送のデジタル化と相俟って、急激に増加している。特に、大型の薄型パネルを搭載した大画面薄型テレビの需要が劇的に拡大している。これに伴い、薄型テレビの廃棄量も今後急激に増加していくことが予想される。
【0005】
現状として、適切な薄型パネルの処理方法が確立されておらず、CRT(Cathode Ray Tube)その他の家電製品や部品と比較して技術確立などが遅れているのが実状である。今後、廃薄型パネルの増加に備えた処理方法の確立が早急に要求される。
【0006】
現在、薄型テレビのパネル(薄型パネル)は、比較的新しい製品であること、また、廃棄物の量としては少ないこともあり、廃棄物の処理施設にて製品ごと破砕された後、プラスチックを多量に含むシュレッダーダストなどと共に、埋立処理あるいは焼却処理されているのが現状である。
【0007】
薄型パネルの重量の大半はガラスが占めており、廃棄物の低減と資源を大切にする観点から、再生利用することが好ましい。薄型パネルに用いられているガラスには一般的に無アルカリガラスが用いられており、一般的な建材、容器用に用いられているソーダライムガラスに比べ高価であることから、有効に活用することが望まれている。ガラスをリサイクルするためには、使用用途に合わせてガラスを適切なサイズに破砕し、カレット化または粉体化することが好ましい。
【0008】
液晶パネルの破砕方法として、特開2002−239833号公報(特許文献1)には、液晶パネルの製造工程で発生したものや市場から回収された廃液晶パネルを、回転式破砕機に投入し破砕を行なう方法が開示されている。この方法により得られる破砕片のサイズは20mm以下であり、用途として非鉄精錬における珪石代替材料として用いられている。
【0009】
廃液晶パネルを破砕せずにガラスを回収する方法として、特開2004−230229号公報(特許文献2)には、廃液晶パネルを減圧状態で加熱することで有機物をガス化し除去する方法が開示されている。またガラス基板に付着している金属類は薬液処理を行なうことで分離除去し、ガラスを回収している。しかしながらこの方法では加熱処理、薬液処理を含むため処理コスト、エネルギー消費が大きいといった課題がある。また、この方法は、ガラスを分離回収する方法に関しての記載のみで、利用先の用途および該用途に対しての処方に関して記載されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2002−239833号公報
【特許文献2】特開2004−230229号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、廃ガラス基板から、少ない労力とエネルギーにて、廃液など廃棄物の発生を伴わず、かつ、大がかりな設備を使用せず、液晶パネル用ガラスを再生利用することが可能であるガラス基板の再資源化方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、ガラス基板を粗破砕し適切なサイズに分級することで、有用な再資源化用途への使用が可能であるということを見出し、本発明を完成させた。すなわち、本発明は以下のとおりである。
【0013】
本発明のガラス基板の再資源化方法は、ガラス基板を粗破砕する粗破砕工程と、粗破砕工程で得られた破砕片を分級する分級工程とを含み、分級工程で分級された破砕片のサイズに応じて再資源化の方策を選定し次工程を決定することを特徴とする。
【0014】
本発明におけるガラス基板は、液晶表示装置のガラス基板であることが好ましい。
本発明のガラス基板の再資源化方法において、前記分級工程は、破砕片を700μm未満と、700μm以上5mm未満と、5mm以上との3種類以上に分級することが好ましい。この場合、前記分級工程で得られた700μm以上5mm未満の破砕片をさらに粉砕する、粉砕工程を含むことがより好ましい。
【0015】
本発明のガラス基板の再資源化方法は、前記分級工程で得られた700μm未満の破砕片と、前記粉砕工程で得られた粉砕片を混合する混合工程を含むことが、好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、ガラス基板から用途に応じて効率的にかつ無駄なくガラスを回収することが可能となり、さらには多大なエネルギーを消費せず、廃棄物の発生を伴わないことから低環境負荷であり、簡便な設備で薄型パネルの重量の大半を占めるガラスを再生利用することが可能となるガラス基板の再資源化方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に供される典型的な一例の薄型パネル1を模式的に示す断面図である。
【図2】本発明のガラス基板の再資源化方法の好ましい一例を模式的に示すフローチャートである。
【図3】実施例1の粗破砕で得られた破砕片の粒度分布を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の説明に先立ち、まずは、本発明に供されるガラス基板を備える薄型パネルの典型的な構造について説明する。図1は、本発明に供される典型的な一例の薄型パネル1を模式的に示す断面図である。本発明には、従来公知の適宜の構造の薄型パネルを特に制限されることなく供することができる。図1には、一例として、TFT(Thin Film Transistor)などのアクティブ素子(図示せず)を備えた薄型パネル(液晶パネル)1を示しているが、本発明には、TN(Twisted Nematic)液晶パネル、STN(Super Twisted Nematic)液晶パネルなどのデューティ液晶パネルも勿論適用可能である。また、プラズマディスプレイパネル(PDP)、有機ELパネルも適用可能である。
【0019】
図1に示す例の薄型パネル1は、たとえば、対向配置された厚み0.7〜1.1mm程度の2枚のガラス基板(カラーフィルタ側ガラス基板2a、TFT側ガラス基板2b)を備える。これらガラス基板2a,2bは、対向配置された側(内面側)に、周縁部に沿ってシール樹脂体(シール材)3が設けられ、互いに貼り合わされてなる。また、これらガラス基板2a,2bとシール樹脂体3とによって密封された領域には、液晶が封入され、厚み4〜6μm程度の液晶層4が形成されている。また、各ガラス基板2a,2bの対向配置された側とは反対側(外面側)には、厚み0.2〜0.4mm程度の偏光板(薄型パネルが液晶パネルの場合は偏光フィルタおよび位相差フィルムなどの光学フィルム)5が粘着剤により貼着されている。さらに、薄型パネルの周縁部には、液晶駆動用のドライバーICが接続され、周縁部の外側がベゼル・プラスチックで覆われている(図示せず)。
【0020】
典型的な薄型パネル1では、図1に示すように、カラーフィルタ側ガラス基板2aの内面側に、カラーフィルタ6、反射防止膜7、透明導電膜8および配向膜9が形成されている。カラーフィルタ6は有機物を主体とした材料からなる。反射防止膜7は炭素を主成分とした薄膜などからなる。透明導電膜8はインジウムなどを含む薄膜からなる。配向膜9はポリイミドなどの有機物からなる。
【0021】
また、典型的な薄型パネル1では、図1に示すように、TFT側ガラス基板2bの内面側に、画素電極10、バス電極11、絶縁膜12、透明導電膜8および配向膜9が形成されている。透明導電膜8は、インジウムなどを含む薄膜からなる。画素電極10およびバス電極11はタンタル、モリブデン、アルミニウム、チタンなどの金属を主成分とする薄膜からなる。前記カラーフィルタ6、反射防止膜7、透明導電膜8、配向膜9、画素電極10、バス電極11および絶縁膜12の膜厚は、前記2枚のガラス基板2a,2bの厚みと比較して、十分に薄い。
【0022】
薄型パネルから資源を回収し有効に再利用するためには、薄型パネルを部材ごとに分離することが望まれる。また、薄型パネルの重量の大部分を占めるパネルガラスをリサイクルするためには、その使用用途に合わせてガラスを適切なサイズに破砕し、カレット化または粉体化することが望まれる。
【0023】
図2は、本発明のガラス基板の再資源化方法の好ましい一例を模式的に示すフローチャートである。本発明のガラス基板の再資源化方法は、基本的にガラス基板を粗破砕する工程(ステップS5)と、粗破砕により得られた破砕片を各種サイズに分級する工程(ステップS6)と、分級された破砕片をさらに粉砕する工程(ステップS7)とを含む。また、分級された破砕片の微粉末と粉砕により得られた粉砕片を混合する工程(ステップS8)を含むことが好ましい。なお、本発明において、粗破砕工程において破砕されたガラス基板を「破砕片」、粉砕工程において粉砕された破砕片を「粉砕片」と呼称し、これらを特に区別しない場合には「ガラス片」と総称する。
【0024】
さらに、粗破砕工程の前にガラス品種を選別する工程(ステップS1)、偏光板を剥離する工程(ステップS2)、貼り合わされたガラス基板を2枚に分離する工程(ステップS3)、露出した液晶を回収する工程(ステップS4)を含んでもよい。また分級工程、混合工程の後に金属回収工程(ステップS9)を含んでもよい。
【0025】
なお、本発明のガラス基板の再資源化方法は、上述したように粗破砕工程(ステップS5)、分級工程(ステップS6)、粉砕工程(ステップS7)を少なくとも含んでいればよく、図2のフローチャートに示した手順に限定されるものではなく、図2に示したステップの一部が削除または置換されてもよく、また、図2に示されていないステップが必要により付加されてもよい。以下、実施の形態を示して本発明をより詳細に説明する。
【0026】
〔S1〕ガラス品種選別工程
まず、薄型パネルを使用しているパネルガラスの種類(品種)別に選別する(ステップS1)。ガラスは、ガラスメーカによって、あるいはガラス品種、品番などによって組成が異なる。したがって、回収したガラスをたとえばガラス基板用の材料として再利用するためには、多種多様なガラスを品種別に選別することが必要となる。また、回収したガラスをたとえば一般ガラス用の材料として再利用する場合にも、ある程度、ガラスを品種別に選別することが要求される場合がある。
【0027】
本発明のガラス基板の再資源化方法においては、蛍光X線装置を用いて、薄型パネルのパネルガラスを品種別に選別するようにしてもよい。この場合、具体的には、エネルギー分散型蛍光X線分析装置を用い薄型パネルに軟X線を直接照射することが挙げられる。これにより、薄型パネルのパネルガラスに含まれるそれぞれの元素に特有なエネルギーをもった蛍光X線が発せられる。この蛍光X線を蛍光X線センサにてエネルギーごとにカウントすることで、薄型パネルのパネルガラスにどのような元素がどのような割合で含まれているかを測定(分析)する。パネルガラスの化学組成を品種ごとに予め調べておき、それらの値と薄型パネルのパネルガラスでの測定値とを比較することにより、パネルガラスをガラス品種ごとに短時間で、確実に、かつ経済的に選別することができる。また、薄型パネルのパネルガラスにガラス品種の表示を予め設けておくようにしてもよい。
【0028】
なお、図2に示すフローチャートでは、このガラス品種選別工程(ステップS1)を偏光板剥離工程(ステップS2)の前に行なう場合を例示しているが、この順序に限定されるものではない。
【0029】
複数の品種のパネルガラスが混合していても問題ない用途にパネルガラスを再生利用する場合はガラス品種選別工程を省略することができる。
【0030】
〔S2〕偏光板剥離工程
図1に示したように、各ガラス基板の外面側に偏光板が貼着された薄型パネルユニットの場合には、偏光板を剥離する偏光板剥離工程(ステップS2)を含むことが好ましい。なお、図2のフローチャートでは、この偏光板剥離工程をガラス品種選別工程(ステップS1)とガラス分離工程(ステップS3)との間に行なう場合を例示しているが、偏光板剥離工程は最終的にガラスを回収するまでのいずれかのステップで行なえばよく、この順序に限定されるものではない。また偏光板が含まれたままで問題ない用途にガラス片を使用する場合には、この偏光板剥離工程を省略してもよい。また、偏光板を有しない薄型パネルユニットの場合には、この偏光板剥離工程を省略しても勿論よい。
【0031】
偏光板の剥離は、偏光板に対し応力を付加することによって行なうことができる。偏光板の剥離は、たとえば手作業で行なってもよく、また市販の偏光板剥離装置、クラッシャーなどを用い応力を付加してもよい。
【0032】
〔S3〕ガラス分離工程
図2に示す例では、続くガラス分離工程において、貼り合わされたガラス基板を2枚に分離する(ステップS3)。分離方法としては、たとえばシール樹脂体を加熱する方法、ガラス基板の周縁部を切断する方法などが挙げられる。ガラス基板を分離すると、ガラス基板の隙間に封入されていた液晶層が表面に露出する。
【0033】
シール樹脂体を加熱して分離する方法では、シール樹脂体を加熱し、シール樹脂体の強度を低下させることにより分離する。上述したように、2枚のガラス基板は、通常、対向配置された側(内面側)に、周縁部に沿ってシール樹脂体が設けられ、互いに貼り合わされてなる。シール樹脂体としては、通常、エポキシ系樹脂などが用いられ、加熱することでシール樹脂体の強度を低下させることができる。シール樹脂体の加熱温度としては、シール樹脂体の形成材料に応じて適宜選択することができ、特に制限されるものではないが、たとえばエポキシ系樹脂のシール樹脂体の場合には、300℃以上が望ましく、400℃以上がより望ましい。加熱の方法としては、たとえば、ランプ加熱、赤外線加熱、ヒートプレスなどが挙げられる。加熱によりシール樹脂体の強度を低下させることで、手作業で容易にガラス基板を分離することが可能となる。
【0034】
また、ガラス基板の周縁部を切断することによってガラス基板を分離する場合には、ガラス基板の内側の四辺を切断することで、それぞれ1枚ずつガラスを切り出すようにすればよい。ガラス基板の切断には、たとえばガラスカッター、ダイヤモンドソー、スクライバーなどを用いることができる。
【0035】
また、ガラス基板の分離と同時に、薄型パネルユニットに接続されているドライバーICを取り外す。ドライバーICは、通常、薄型パネルユニットの周縁部に、導電性の接着剤を用いて、接続されている。取り外しの方法としては、通常、手作業でドライバーICを引き剥がす。導電性の接着剤の接着力は弱いため、外力を加えることにより接続部を容易に引き剥がすことができる。また、カッターナイフのような刃物で接続部を切断することもできる。取り外したドライバーICは、非鉄精錬所などで適切な処理を施すことで、含有される金属を回収することができる。ドライバーICは、手作業で容易に取り外すことが可能なため、このドライバーICの取り外しは、ガラスを回収するまでのいずれの工程で行なってもよい。また、ガラス基板の周縁部を切断することによってガラス基板を分離する場合には、ドライバーICも同時に取り外される。また、液晶を回収しなくてもよい場合には、このガラス分離工程を省略することができる。
【0036】
〔S4〕液晶回収工程
図2に示す例では、続く液晶回収工程において、上述のようにして分離されたガラス基板上に露出する液晶を回収する(ステップS4)。液晶は、たとえば、ガラス基板の表面を液晶回収用のスクレーパを用いてスクレーピングすることによって回収することができる。液晶回収用のスクレーパとしては、ガラス基板上に形成されている配向膜よりも柔らかいポリプロピレンゴム、ポリエチレンゴムなどで形成されたスクレーパを好適に用いることができる。また、ゴム製のスキージを用いることにより、配向膜を削り取らずに液晶のみを回収することができる。また、液晶を有しない薄型パネルユニットの場合には、この液晶回収工程を削除しても勿論よい。また、液晶を回収しなくてもよい場合には、この液晶回収工程を省略することができる。
【0037】
〔S5〕粗破砕工程
図2に示す例では、続く粗破砕工程において、ガラス基板(カラーフィルタ側ガラス基板およびTFT側ガラス基板)を粗破砕する(ステップS5)。粗破砕工程は、上述したガラス品種選別工程(ステップS1)で選別した単一の品種のパネルガラスを使用しているガラス基板ごとに行なう。ただし、品種が分かれていなくてもよい用途にガラス片を使用する場合には、品種が混在した状態でガラス基板を粗破砕することができる。
【0038】
ガラス基板の破砕には市販の各種方式の破砕機を用いることができ、破砕機の種類は特に制限されるものではないが、塵の発生が少なく容易に破砕することができ、環境に悪影響を及ぼさず、かつ、ランニングコストが安価であるなどの観点から、2軸剪断方式の破砕機がより好ましい。また2軸剪断方式の破砕機は、サイズの揃った破砕片が得られやすいこと、微粉末の発生比率が小さく、破砕片をガラスカレットとして最終的に再利用しやすいことなどの利点も有している。また他にも、市販のハンマークラッシャー、ロールミル、ジョークラッシャーなどを用いることができる。
【0039】
破砕片の大きさは特に制限されるものではないが、150mm未満であることが好ましく、15mm未満であることがより好ましい。大きさが15mm以上の破砕片は篩で分け、15mm未満になるまで破砕を行なう。破砕片の大きさが150mmを超える場合には、破砕片を再溶融せずに用いることのできる有効な再資源化用途がなく、破砕片をガラス材料として再溶融して用いる場合であっても再溶融時の溶融効率が極端に低くなってしまう。破砕片のサイズが15mm未満であれば再溶融時の溶融効率が高いため、再溶融用ガラス材料として使用することができる。
【0040】
〔S6〕分級工程
上述した粗破砕工程では、破砕片のサイズは、好ましくは150mm未満、より好ましくは15mm未満の範囲で幅広く発生する。そのためガラスの再資源化を考慮し、続く分級工程において、使用方法に適したサイズに分級する(ステップS6)。たとえば、700μm未満の破砕片(微粉末)においては、煉瓦やタイルなどの建材用原料に使用することができる。また50μm未満の破砕片(微粉末)は、一般的に用いられている塗料に添加することで耐摩耗性、耐食性といった効果を付与することができる。また、このような粉砕片は、酸化物などの各種材料と混合し焼成することで各種セラミックを作ることができる。
【0041】
またガラス片を再溶融用ガラス材料として用いる場合には、破砕片のサイズが5mm未満になると破砕片の表面積が大きくなり、溶融時に混入する気泡が増加する。また破砕片のサイズが15mm以上である場合には、再溶融時の溶融効率が低くなる。そのため、ガラス片を再溶融用ガラス材料として用いる場合には、5mm以上15mm未満の破砕片を用いることが好ましい。
【0042】
このように本発明のガラス基板の再資源化方法では、分級工程において、粗破砕工程で得られた破砕片を複数のグループに分け、分級された破砕片のサイズに応じて再資源化の方策を選定し次工程を決定することを大きな特徴とする。分級のサイズは特に制限されるものではないが、ガラス片の有効な使用用途を考慮すると、破砕片のサイズは700μm未満、700μm以上5mm未満、5mm以上の3種類以上に分級することが好ましい。分級には各種方式の分級機を用いることができ、その種類は特に制限されるものではなく、公知であるサイクロン方式、または振動式ふるい分け分級機などを用いることができる。図2に示す例では、破砕片が15mm未満と上述した好ましい大きさであり、5mm以上の場合は5mm以上15mm未満として分級している。
【0043】
〔S7〕粉砕工程
本発明のガラス基板の再資源化方法では、分級工程で得られた700μm以上5mm未満の破砕片をさらに粉砕する工程を含むことが好ましい。上記分級工程において分級された700μm以上5mm未満の破砕片については、有効な再資源化用途がないため、粉砕処理することでサイズを700μm未満にすることが好ましい。700μm未満の粉砕片(微粉末)においては、煉瓦やタイルなどの建材用原料に使用することができる。さらに、50μm未満まで粉砕し得られた粉砕片は、一般的に用いられている塗料に添加することで耐摩耗性、耐食性といった効果を付与することができる。また、このような粉砕片は、酸化物などの各種材料と混合し焼成することで各種セラミックを作ることができる。粉砕片の大きさに特に制限はないが、上述したように有効な用途に使用可能な700μm未満に粉砕することが望ましく、50μm未満に粉砕することがより望ましい。
【0044】
図2には、上述した分級工程(ステップS6)の後に、粉砕工程(ステップS7)を行なう例を示している。粉砕工程では、上記分級工程で得られた700μm以上5mm未満の破砕片を、再資源化用途に適したサイズに調整するため、粉砕を行なう。粉砕方法として、たとえば、ボールミルやハンマーミルにより破砕片を粉体化する方法が挙げられる。破砕片の粉砕には各種方式の粉砕機を用いることができ、その種類は特に制限されるものではない。
【0045】
〔S8〕混合工程
上述した粗破砕工程では、破砕片のサイズは、好ましくは150mm未満、より好ましくは15mm未満の範囲で幅広く発生し、破砕方法によっては700μm未満の破砕片の微粉末も多く発生する。そのため、上記分級工程で分級された破砕片の微粉末(700μm未満)と粉砕工程で得られた粉砕片である微粉末(700μm未満)を混合することで、発生した微粉末を無駄なく再資源化することができる。700μm未満の微粉末のガラス片は、煉瓦やタイルなどの建材用原料に使用することができる。さらに、50μm未満の微粉末のガラス片は、一般的に用いられている塗料に添加することで耐摩耗性、耐食性といった効果を付与することができる。また、酸化物などの各種材料と混合し焼成することで各種セラミックスを作ることができる。
【0046】
〔S9〕金属回収工程
各種のサイズの破砕片、粉砕片には、透明電極として希少金属であるインジウムを含むインジウムスズ酸化物(ITO)が付着しているため、たとえば塩酸に浸漬してITOを溶解し、インジウム含有塩酸溶液を中和することで、水酸化インジウムとして回収することができる。また、公知である亜臨界水処理、または超臨界水処理を行なうことで、破砕片、粉砕片からインジウムを回収することができる。また、金属が含まれてもよい用途に破砕片、粉砕片を使用する場合には、この金属回収工程を省略することができる。
【0047】
以下、実施例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0048】
<実施例1>
図2に示した手順に従い、100mm×100mmの液晶表示装置用薄型パネルの偏光板剥離、ガラス分離、液晶回収を機械的(物理的)手法により行なった。その後、ガラス基板の粗破砕をハンマークラッシャーにより行なった。このとき、15mmのメッシュを使用し、ガラスを粗破砕した。図3は、粗破砕で得られた破砕片の粒度分布を示すグラフであり、左側の縦軸は占有率(%)、右側の縦軸は累積(%)、横軸は階級(mm)である。
【0049】
粗破砕した破砕片を振動式ふるい分け分級機を用い分級した。分級したガラス片のサイズはそれぞれ700μm未満、700μm以上5mm未満、5mm以上(15mm未満)とした。各サイズの破砕片の分布を表1に示す。
【0050】
【表1】

【0051】
分級により得られた700μm以上5mm未満のサイズの破砕片をボールミルにより粉砕した。ポットはジルコニア製、容積1Lのものを用いた。またボールは径10mmのジルコニアボールを約100個使用した。またポットの回転数を60rpmとした。上記条件で60秒処理した結果、98%の前記破砕片を700μm未満まで粉体化することができた。
【0052】
分級された破砕片の微粉末(700μm未満)と粉砕により得られた粉砕片である微粉末(700μm未満)を混合した。その結果、700μm未満、5mm以上のガラス片をそれぞれ15.2%、84.5%得ることができた。
【0053】
得られたガラス片に付着した金属を化学的手法により除去した。その結果得られたガラス片のうち、700μm未満のものは建材用原料として使用し、タイルを作製した。5mm以上のガラス片は再溶融用ガラス材料として使用した。
【0054】
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は前記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0055】
1 薄型パネル、2a カラーフィルタ側パネルガラス、2b TFT側パネルガラス、3 シール樹脂体、4 液晶層、5 偏光板、6 カラーフィルタ、7 反射防止膜、8 透明導電膜、9 配向膜、10 画素電極、11 バス電極、12 絶縁膜。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス基板を粗破砕する粗破砕工程と、
粗破砕工程で得られた破砕片を分級する分級工程とを含み、
分級工程で分級された破砕片のサイズに応じて再資源化の方策を選定し次工程を決定することを特徴とするガラス基板の再資源化方法。
【請求項2】
前記ガラス基板は、液晶表示装置のガラス基板であることを特徴とする請求項1に記載のガラス基板の再資源化方法。
【請求項3】
前記分級工程は、700μm未満と、700μm以上5mm未満と、5mm以上との3種類以上に破砕片を分級することを特徴とする請求項1または2に記載のガラス基板の再資源化方法。
【請求項4】
前記分級工程で得られた700μm以上5mm未満の破砕片をさらに粉砕する、粉砕工程を含むことを特徴とする請求項3に記載のガラス基板の再資源化方法。
【請求項5】
前記分級工程で得られた700μm未満の破砕片と、前記粉砕工程で得られた粉砕片とを混合する、混合工程を含むことを特徴とする請求項4に記載のガラス基板の再資源化方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−235252(P2011−235252A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−110287(P2010−110287)
【出願日】平成22年5月12日(2010.5.12)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】