説明

ガラス壜の検査装置および方法

【課題】ガラス壜を透過した透過光を用いてガラス壜の外面に付着した金属スパッタやスプレーペンキ等の色付きの異物を検出することができるガラス壜の検査装置および方法を提供する。
【解決手段】ガラス壜1の側方に配置され、ガラス壜1の側方からガラス壜1に投光する照明2と、ガラス壜1を挟んで照明2の反対側に配置され、ガラス壜1を透過した透過光を撮影してカラー画像を形成する撮像装置3と、撮像装置3で得られたカラー画像を処理する画像処理装置4とを備え、画像処理装置4は、ガラス壜1に付着した異物およびガラス壜1を透過した透過光を撮影することにより得られる色と同一の色をあらかじめ登録しておき、撮像装置3で得られたカラー画像中に登録された色と同一の色があるか否かを判定することにより、ガラス壜1の外面に付着した色付きの異物を検出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビール壜等のガラス壜の外面に付着した金属スパッタやスプレーペンキ等の異物を検出することができるガラス壜の検査装置および方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ビール業界では、専用のリターナブル壜を使用しており、使用後のビール壜は回収して洗壜機で洗浄された後に検査機で検査され、キズやヒビのない壜にビールが詰められ出荷される。リターナブル壜の平均寿命は約8年あり、その間何回も再使用されている。ビール壜が再使用される間、ビール壜は様々な環境におかれることになる。そのため、最近、リターナブル壜のうち件数はきわめて少ないが、壜表面に金属スパッタやスプレーペンキが付着したものが発見された。金属スパッタは溶接工程で発生したスパッタがビール壜に付着したものと推定され、またスプレーペンキはスプレー缶を用いて塗装する工程でビール壜に付着したものと推定される。
金属スパッタやスプレーペンキ等の壜表面に付着した異物は、洗壜機による洗浄では除去することができず、また、既存のラインに設置された壜検査機では検出することができなかった。
【0003】
本発明者らは、既存の壜検査機では検出できなかった金属スパッタやペンキ等の壜表面に付着した異物について、目視によらずに自動的に検出できる検査装置を開発するために種々の研究を行った。本発明者らは、まず、ガラス壜の外面に付着した汚れ等を検出するために通常行われている反射光を用いた検査方式を金属スパッタやペンキを検出するために適用することを検討した。すなわち、ガラス壜の外面を照明し、ガラス壜の外面から反射してくる反射光をCCDカメラで撮像し、得られた画像から画素毎に明るさを比較することにより、ガラス壜の表面に付着した金属スパッタやペンキを検出することを検討した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−119706号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、ガラス壜からの反射光を撮像する反射光撮像方式を採用した場合には、1台のカメラで撮影できる範囲は、カメラに面しているガラス壜の正面側のみであり、ガラス壜の裏面側は撮影することができず、例えば、ガラス壜の全周を検査する必要がある場合には多数のカメラが必要であり、反射光撮像方式ではカメラ台数が増加するという問題点がある。
【0006】
また、ガラス壜をコンベヤで搬送しつつ反射光撮像方式を採用して検査をする場合には、コンベヤで搬送されるガラス壜の壜間の間隔(ボトルピッチ)が小さいと、検査対象のガラス壜の前方にあるガラス壜の影響で検査対象のガラス壜の進行方向の面に影が生じ、また検査対象のガラス壜の前後にあるガラス壜からの反射光が検査対象のガラス壜に入射し、検査結果に悪影響を及ぼすため、搬送されるガラス壜の壜間に所定の間隔(ボトルピッチ)を形成して検査対象のガラス壜を検査する必要がある。
【0007】
さらに、ガラス壜をコンベヤで搬送しつつ反射光撮像方式を採用して検査をする場合には、照明とカメラとを全く同一方向に配置することはできないため、照明とカメラとの間に角度の位相を設けざるを得ない。例えば、ガラス壜の進行方向に対して、45°の角度に照明を配置して135°の角度にカメラを配置する等の角度位相差を設けてガラス壜を撮影しようとする場合に、コンベヤで搬送されるガラス壜の壜間の間隔(ボトルピッチ)が小さいと、検査対象のガラス壜の反射光ばかりでなく、検査対象のガラス壜の前後にあるガラス壜からの反射光もカメラに入射してしまい、検査対象のガラス壜の検査に支障を来たす場合がある。
【0008】
本発明は、上述の事情に鑑みなされたもので、ガラス壜を透過した透過光を用いてガラス壜の外面に付着した金属スパッタやスプレーペンキ等の色付きの異物を検出することができるガラス壜の検査装置および方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述の目的を達成するため、本発明のガラス壜の検査装置は、ガラス壜の外面に付着した色付きの異物を検出するガラス壜の検査装置であって、ガラス壜の側方に配置され、ガラス壜の側方からガラス壜に投光する照明と、ガラス壜を挟んで前記照明の反対側に配置され、ガラス壜を透過した透過光を撮影してカラー画像を形成する撮像装置と、前記撮像装置で得られたカラー画像を処理する画像処理装置とを備え、前記画像処理装置は、ガラス壜に付着した異物およびガラス壜を透過した透過光を撮影することにより得られる色と同一の色をあらかじめ登録しておき、前記撮像装置で得られたカラー画像中に前記登録された色と同一の色があるか否かを判定することにより、ガラス壜の外面に付着した色付きの異物を検出することを特徴とする。
【0010】
本発明のガラス壜の検査方法は、ガラス壜の外面に付着した色付きの異物を検出するガラス壜の検査方法であって、ガラス壜の側方に配置された照明によりガラス壜に投光し、ガラス壜を挟んで前記照明の反対側に配置された撮像装置によりガラス壜を透過した透過光を撮影してカラー画像を形成し、ガラス壜に付着した異物およびガラス壜を透過した透過光を撮影することにより得られる色と同一の色をあらかじめ画像処理装置に登録しておき、前記撮像装置で得られたカラー画像中に前記登録された色と同一の色があるか否かを判定することにより、ガラス壜の外面に付着した色付きの異物を検出することを特徴とする。
【0011】
本発明のガラス壜の検査装置および方法によれば、照明からの光はガラス壜に入射し、ガラス壜に入射した光はガラス壜を透過して撮像装置により撮影され、撮像装置により撮影された画像は画像処理装置により処理される。画像処理装置において、撮像装置により得られた画像中に検査ゲートを設定し、検査ゲート内にあらかじめ登録した色と同一色の画像部分があるか否かを判定することによりガラス壜の外面に付着した色付きの異物を検出する。
【0012】
本発明の一態様によれば、前記画像処理装置は、前記色登録をする場合に当該色が占める面積範囲と、前記面積範囲内にある当該色の個数とを設定しておき、前記撮像装置で得られたカラー画像中に前記登録された色と同一の色があると判定した場合に、当該色が占める面積が前記設定された面積範囲にあり、かつ前記設定された面積範囲にある当該色の個数が前記設定された当該色の個数より多い場合に、ガラス壜の外面に色付きの異物が付着した不良壜と判定することを特徴とする。
本発明によれば、画像処理装置において、撮像装置により得られた画像中に検査ゲートを設定し、検査ゲート内にあらかじめ登録した色と同一色の画像部分があるか否かを判定し、同一色がある場合にはその画像部分の面積があらかじめ設定された面積範囲内にあるか否かを判定し、そして、設定された面積範囲内にある画像部分の個数をカウントし、設定した個数より多い場合に、異物が許容範囲を越えて付着しているため不良壜と判定する。
【0013】
本発明の一態様によれば、前記色登録は、色相、彩度、明度の3つの属性を数値を用いて登録することを特徴とする。
本発明によれば、色登録は、色を物理量として定量的に表すマンセルカラーシステムを用い、色を色相、彩度、明度の3つの属性を用いて登録する。画像処理装置に多数の色の登録が可能であり、色相、彩度、明度の3つの属性の微妙な調整が可能になっており、これら色の3属性を適宜調整することにより壜表面の異物がどのような色でも検出可能になっている。
【0014】
本発明の一態様によれば、前記撮像装置により得られた1枚の画像中には、ガラス壜の撮像装置側および/又は照明側に付着した異物により形成された画像部分が含まれることを特徴とする。
本発明によれば、ガラス壜の撮像装置側の面に異物が付着していると仮定すると、照明光は、ガラス壜の照明側の壁部、液体(壜内に液体が充填されている場合)、ガラス壜の撮像装置側の壁部、異物の順に透過する。また、ガラス壜の照明側の面に異物が付着していると仮定すると、照明光は、異物、ガラス壜の照明側の壁部、液体、ガラス壜の撮像装置側の壁部の順に透過する。したがって、異物がガラス壜の撮像装置側および照明側のいずれの面に付着している場合でも、照明光が透過する対象物はガラス壜の壁部、液体、異物の3つであって同一のものである。そのため、撮像装置により撮影された1枚の画像中では、特定の色のペンキや金属スパッタ等の異物がガラス壜の撮像装置側および照明側のいずれの面に付着していても同一または略同一の色の画像部分となる。
【0015】
本発明の一態様によれば、前記ガラス壜には液体が充填されていることを特徴とする。
本発明によれば、ガラス壜にはビール等の液体が充填されている。液体が透過光を通す媒体であれば、ガラス壜に液体が充填されていても、ガラス壜の外面に付着したペンキ等の異物を検出できる。
【0016】
本発明の一態様によれば、前記照明は赤色LED照明からなり、前記撮像装置はCCDカラーカメラからなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明は、以下に列挙する効果を奏する。
(1)ガラス壜を透過した透過光を撮像する透過光撮像方式を用いてガラス壜の外面に付着した金属スパッタやスプレーペンキ等の色付きの異物を検出するようにしているため、ガラス壜の表裏側の異物を1台の撮像装置で同時に検出できる。したがって、ガラス壜からの反射光を撮像する反射光撮像方式に比べ、1台の撮像装置でガラス壜のより広範囲を検査することができ、ガラス壜の全周を検査する必要がある場合に撮像装置の台数を飛躍的に減らすことができる。
(2)ガラス壜を透過した透過光を撮像する透過光撮像方式を用いて検査を行うことができるため、ガラス壜をコンベヤで搬送しつつ検査を行う場合に、ガラス壜の壜間に間隔(ボトルピッチ)を形成するピッチ割りの必要がなく、装置構成を簡易にすることができる。
(3)ガラス壜を透過した透過光を撮像する透過光撮像方式を用いて検査を行うことができるため、ガラス壜をコンベヤで搬送しつつ検査を行う場合に、コンベヤを挟んで照明と撮像装置とを対向して配置するだけで検査対象のガラス壜の前後にあるガラス壜からの外乱光の影響を受けることなく検査対象のガラス壜のみの検査ができる。
(4)検出すべき異物の色をあらかじめ登録し、撮像装置により得られた画像中に検査ゲートを設定し、検査ゲート内にあらかじめ登録した色と同一色の画像部分があるか否かを判定し、同一色がある場合にはその画像部分の面積があらかじめ設定された面積範囲内にあるか否かを判定し、設定された面積範囲内にある画像部分の個数をカウントし、設定した個数より多い場合に、異物が許容範囲を越えて付着しているため不良壜と判定するようにしたため、異物の付着がなく正常な壜であるにも拘らず不良壜として排斥してしまうムダバネの減少を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図1は、本発明に係るガラス壜の検査方法及び装置の基本構成を示す模式図である。
【図2】図2は、CCDカラーカメラによりガラス壜の肩部を撮影した画像である。
【図3】図3は、あらかじめ登録した色と同一色の画像部分があるか否かを判定し、同一色がある場合にはその画像部分の面積があらかじめ設定された範囲内にあるか否かを判定する工程を示す模式図である。
【図4】図4は、図1に示すガラス壜検査装置の設置場所を示す模式的平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係るガラス壜の検査装置および方法の実施形態を図1乃至図4を参照して説明する。図1乃至図4において、同一または相当する構成要素には、同一の符号を付して重複した説明を省略する。
図1は、本発明に係るガラス壜の検査方法及び装置の基本構成を示す模式図である。図1に示すように、ガラス壜検査装置GBIは、ガラス壜1に投光するための照明2と、ガラス壜1を挟んで照明2の反対側に配置されガラス壜1を水平方向から撮影する撮像装置を構成するCCDカラーカメラ3と、CCDカラーカメラ3で撮影された画像を処理する画像処理装置4とから構成されている。ガラス壜1は搬送コンベヤ10により直線的に搬送されている。また、搬送コンベヤ10の搬送経路の上方には、検査位置にガラス壜1が到達したことを検知する近接スイッチ11が設置されている。本実施形態では、ガラス壜1はビール壜であり、ビール壜にはビールが充填されている場合を説明する。照明2は赤色LEDを縦横に配列したLED照明からなっている。CCDカラーカメラ3の光軸3xは、ガラス壜1の肩部1sに向かって水平方向に延びている。
【0020】
図1に示すように構成されたガラス壜検査装置GBIにおいて、近接スイッチ11によりガラス壜1が検査位置に到達したことが検知されると、赤色LED照明からなる照明2からの光はガラス壜1に入射し、ガラス壜1に入射した光はガラス壜1を透過してCCDカラーカメラ3により撮影される。CCDカラーカメラ3により撮影された画像は画像処理装置4により処理される。CCDカラーカメラ3は、各画素毎にRGBの3原色光に対応した信号を出力して色情報を画像処理装置4に出力するようになっている。
【0021】
図2は、CCDカラーカメラ3によりガラス壜1の肩部1sを撮影した画像である。図2に示す画像中ではスプレーペンキのような多数のスポット状の異物が映っている。
次に、図2に示すような画像を画像処理装置4により処理して異物を検出する画像処理工程について説明する。
本発明は、検出対象の金属スパッタやスプレーペンキが色付きであるため、ガラス壜1を透過した透過光をCCDカラーカメラ3により撮影して得られた画像からビール壜の地色(例えば、茶色と緑色)とは異なった色がある画像部分をラベリング検査原理を用いて検出することにより、壜表面に付着した金属スパッタやスプレーペンキ等の色付きの異物を検出するようにしている。
【0022】
本実施形態においては、照明に赤色LEDを用いており、赤色照明がガラス壜とビールと異物とを透過してからの色を登録する。この場合、ガラス壜のカメラ側の面に異物が付着していると仮定すると、照明光は、ガラス壜の照明側の壁部、ビール、ガラス壜のカメラ側の壁部、異物の順に透過する。また、ガラス壜の照明側の面に異物が付着していると仮定すると、照明光は、異物、ガラス壜の照明側の壁部、ビール、ガラス壜のカメラ側の壁部の順に透過する。したがって、異物がガラス壜のカメラ側および照明側のいずれの面に付着している場合でも、照明光が透過する対象物はガラス壜の壁部、ビール、異物の3つであって同一のものである。そのため、CCDカラーカメラ3により撮影された1枚の画像中では、特定の色のペンキや金属スパッタ等の異物がガラス壜のカメラ側および照明側のいずれの面に付着していても同一または略同一の色の画像部分となる。
【0023】
特定の色(例えば、赤色)のペンキが検出対象であると仮定すると、照明がガラス壜とビールとペンキを透過してからCCDカラーカメラ3によって撮影された画像中における前記特定の色(例えば、赤色)のペンキに相当する画像部分の色を画像処理装置4に登録する。この色登録は、色を物理量として定量的に表すマンセルカラーシステムを用い、色を色相、彩度、明度の3つの属性を用いて登録する。そして、色登録をする場合には、当該色が占める面積範囲と、画像中においてこの面積範囲内にある当該色の個数とを同時に画像処理装置4に設定する。面積範囲は、画素の集合体であり、上限面積〜下限面積の範囲で設定する。
【0024】
次に、画像処理装置4において、CCDカラーカメラ3により得られた画像中に検査ゲートGを設定し、検査ゲートG内にあらかじめ登録した色と同一色の画像部分があるか否かを判定し、同一色がある場合にはその画像部分の面積があらかじめ設定された上限面積〜下限面積の範囲内にあるか否かを判定する。図3は、この判定の工程を示す図である。
図3の上図に示すように、検査ゲートG内には複数の色に相当する画像部分があるが、例えば、赤色をあらかじめ登録した場合(図では赤色は黒塗りで示し、それ以外の色を白塗りで示す)、図3の下図に示すように、登録した色(赤色)に該当し、かつ設定された面積範囲内にある画像部分だけが検出される。そして、画像処理装置4により、登録した色(赤色)に該当し、設定された面積範囲内にある画像部分の個数をカウントし、設定した個数より多い場合に、ペンキ(赤色)が許容範囲を越えて付着しているため不良壜と判定する。
【0025】
本実施形態においては、画像処理装置4に多数の色(例えば、8色程度)の登録が可能であり、色相、彩度、明度の3つの属性の微妙な調整が可能になっており、これら色の3属性を適宜調整することにより壜表面の異物がどのような色でも検出可能になっている。したがって、ガラス壜1のカメラ側および照明側に同一色のペンキが付着している場合でも、撮影した画像中でカメラ側と照明側の画像部分でわずかに異なった色となる場合にはこれらの色を2色別々に登録して個別に検出できる。
【0026】
また、本実施形態においては、ガラス壜1の肩部1sを透過光により撮影することによりペンキ等の異物の付着を検出するようにしているため、肩部1sは胴部より外径が小さく隣接する壜の肩部との間に隙間が形成されるので、搬送される壜間に間隔を形成するピッチ割りの必要がない。検出対象のペンキやスパッタ等の異物は散点状にガラス壜1に付着しているため、肩部1sで付着していることを確認できれば、胴部でも付着していることを検証しており、肩部の検査のみで充分である。
【0027】
図4は、図1に示すガラス壜検査装置GBIの設置場所を示す模式的平面図である。図4に示すように、実壜検査機(Filled Bottle Inspection System)FBIの入口にガラス壜検査装置GBIを設置している。すなわち、実壜検査機FBIの入口コンベヤ21の一側に照明2を設置し、入口コンベヤ21を挟んで照明2の反対側にCCDカラーカメラ3を設置している。ガラス壜検査装置GBIの上流側には、ガラス壜に付着した水滴を除去するためのエアブロー設備が設置されている。実壜検査機は、ビール壜にビールが充填されて打栓された後に、入り味検査、王冠検査、壜口部や壜底部検査等の各部の最終検査を行う検査機である。本発明のガラス壜検査装置GBIを実壜検査機FBIの入口に設置した理由は、全数を1本ずつ検査するために単列コンベヤの位置に設置する必要があること、ガラス壜検査装置GBIにて不良壜を検出した際に下流側で自動リジェクト(自動排斥)が必要であるためにリジェクト機能を持つ設備の上流が適当であることからである。そして、ビールが充填されて打栓された後のため壜内に異物混入のリスクがなく、また、実壜検査機FBIの入口側にある既設のエアブロー設備を利用できるというメリットがある。
【0028】
実壜検査機FBIは、入口コンベヤ21からガラス壜1を受け取って検査部に搬入する入口スターホイール22と、入口スターホイール22から受け渡されたガラス壜1の各部の検査を行う検査部であるメインロータ23と、メインロータ23からガラス壜1を受け取って搬送する排出スターホイール24とを備えている。排出スターホイール24に隣接して出口コンベヤ25が配置されており、また排出スターホイール24に隣接してリジェクトコンベヤ26が配置されている。入口スターホイール22に隣接するとともに入口コンベヤ21に平行して、スクリュー28が設けられている。
【0029】
図4に示すシステムにおいて、エアブロー設備で水滴が除去されたガラス壜1は、相隣接した壜が接触して連続した状態で入口コンベヤ21により搬送されつつ、ガラス壜検査装置GBIにおいて壜外面に付着したペンキや金属スパッタ等の色付きの異物の有無が検査される。ペンキ等の色付き異物の有無の検査が終了したガラス壜1は、入口コンベヤ21により搬送されつつスクリュー28により壜間に一定の間隔が形成されるピッチ割りがなされた後に入口スターホイール22に順次受け渡される。そして、ガラス壜1は入口スターホイール22からメインロータ23に受け渡され、メインロータ23にて円形軌道に沿って搬送されている間に複数の検査ステーションにおいて撮像され、順次、ガラス壜1の各部の検査が行われる。メインロータ23において各部の検査を終了したガラス壜1は排出スターホイール24に受け渡される。そして、検査で良壜と判定されたガラス壜1は、排出スターホイール24から出口コンベヤ25に受け渡され、出口コンベヤ25により次工程に搬送される。また、不良壜と判定されたガラス壜1は、排出スターホイール24によりリジェクトコンベヤ26に排出される。リジェクトコンベヤ26では、不良壜は排斥壜として排出される。
【0030】
次に、図4に示すシステムによってサンプル壜を用いてオンラインテストを実施した結果について説明する。
ラベリング検査によってオンラインテストを実施するにあたり、ペンキをスポット状に付着させたサンプル壜を作成し、作成したサンプル壜を用いて表1に示す4色の色を登録した。4色の色は、それぞれ、色相、彩度、明度の3つの属性を数値を用いて登録した。次に、サンプル壜を確実に検出できるように表2に示す各種設定値を調整した。すなわち、表2に示すように、検査対象の登録した色の面積範囲(表2中の1−15は画素数を示す)、その面積範囲にある個数を設定した。また照明設定(表2中の4はコントローラに設定された16段階の照度のうち4段階目を示す)を行った。
【表1】

【表2】

【0031】
次に、正常なビール壜が流れている図4に示す実ラインにサンプル壜を混入させ、サンプル壜を全数検出できることを確認した。表3はオンラインテストの結果を示す。表3において、通壜数(本)とは実ラインに流された壜数であり、排斥数(本)とは不良壜として排斥された壜数であり、排斥率(%)とは排斥数/通壜数である。
【表3】

【0032】
表3に示すように、オンラインテストの結果、排斥率は0.06%であり、きわめて低い値であった。この理由として、ペンキの付着がなく正常な壜であるにも拘らず不良壜として排斥するムダバネの減少が挙げられる。まず、ムダバネ要因となる壜表面に付着した水滴については、あらかじめ登録した色と水滴の色が異なるため、欠陥として検出することはなかった。また、ムダバネ要因となる壜表面の傷については、壜表面の微小傷の有無にとらわれず検査を行うことができた。本オンラインテストにおいて壜傷は欠陥として検出するが、最終的にはその個数をカウントし、総数が欠陥数となるため、ゲート内に1つの傷がある場合などは不良壜と判定することはない。
以上の結果より、排斥率は0.06%ときわめて低い値であり、本発明の装置および方法が実用化レベルに到達していることが確認できた。
【0033】
上述した実施形態においては、ガラス壜がビール壜である場合を説明したが、ガラス壜は日本酒等を充填するための壜であってもよい。また、ガラス壜に充填される液体はビール以外の飲料であってもよく、また飲料以外の液体であってもよい。さらに、ガラス壜に液体を充填していない、空壜の場合にも、本発明の検査装置により壜外面に付着したペンキ等の異物を検出することができることは勿論である。
【0034】
これまで本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されず、その技術思想の範囲内において、種々の異なる形態で実施されてよいことは勿論である。
【符号の説明】
【0035】
1 ガラス壜
1s 肩部
2 照明
3 CCDカラーカメラ
4 画像処理装置
10 搬送コンベヤ
11 近接スイッチ
21 入口コンベヤ
22 入口スターホイール
23 メインロータ
24 排出スターホイール
25 出口コンベヤ
26 リジェクトコンベヤ
28 スクリュー
FBI 実壜検査機
GBI ガラス検査装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス壜の外面に付着した色付きの異物を検出するガラス壜の検査装置であって、
ガラス壜の側方に配置され、ガラス壜の側方からガラス壜に投光する照明と、
ガラス壜を挟んで前記照明の反対側に配置され、ガラス壜を透過した透過光を撮影してカラー画像を形成する撮像装置と、
前記撮像装置で得られたカラー画像を処理する画像処理装置とを備え、
前記画像処理装置は、ガラス壜に付着した異物およびガラス壜を透過した透過光を撮影することにより得られる色と同一の色をあらかじめ登録しておき、前記撮像装置で得られたカラー画像中に前記登録された色と同一の色があるか否かを判定することにより、ガラス壜の外面に付着した色付きの異物を検出することを特徴とするガラス壜の検査装置。
【請求項2】
前記画像処理装置は、前記色登録をする場合に当該色が占める面積範囲と、前記面積範囲内にある当該色の個数とを設定しておき、前記撮像装置で得られたカラー画像中に前記登録された色と同一の色があると判定した場合に、当該色が占める面積が前記設定された面積範囲にあり、かつ前記設定された面積範囲にある当該色の個数が前記設定された当該色の個数より多い場合に、ガラス壜の外面に色付きの異物が付着した不良壜と判定することを特徴とする請求項1記載のガラス壜の検査装置。
【請求項3】
前記色登録は、色相、彩度、明度の3つの属性を数値を用いて登録することを特徴とする請求項1または2記載のガラス壜の検査装置。
【請求項4】
前記撮像装置により得られた1枚の画像中には、ガラス壜の撮像装置側および/又は照明側に付着した異物により形成された画像部分が含まれることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のガラス壜の検査装置。
【請求項5】
前記ガラス壜には液体が充填されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載のガラス壜の検査装置。
【請求項6】
前記照明は赤色LED照明からなり、前記撮像装置はCCDカラーカメラからなることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載のガラス壜の検査装置。
【請求項7】
ガラス壜の外面に付着した色付きの異物を検出するガラス壜の検査方法であって、
ガラス壜の側方に配置された照明によりガラス壜に投光し、
ガラス壜を挟んで前記照明の反対側に配置された撮像装置によりガラス壜を透過した透過光を撮影してカラー画像を形成し、
ガラス壜に付着した異物およびガラス壜を透過した透過光を撮影することにより得られる色と同一の色をあらかじめ画像処理装置に登録しておき、前記撮像装置で得られたカラー画像中に前記登録された色と同一の色があるか否かを判定することにより、ガラス壜の外面に付着した色付きの異物を検出することを特徴とするガラス壜の検査方法。
【請求項8】
前記色登録をする場合に当該色が占める面積範囲と、前記面積範囲内にある当該色の個数とを設定しておき、前記撮像装置で得られたカラー画像中に前記登録された色と同一の色があると判定した場合に、当該色が占める面積が前記設定された面積範囲にあり、かつ前記設定された面積範囲にある当該色の個数が前記設定された当該色の個数より多い場合に、ガラス壜の外面に色付きの異物が付着した不良壜と判定することを特徴とする請求項7記載のガラス壜の検査方法。
【請求項9】
前記色登録は、色相、彩度、明度の3つの属性を数値を用いて登録することを特徴とする請求項7または8記載のガラス壜の検査方法。
【請求項10】
前記撮像装置により得られた1枚の画像中には、ガラス壜の撮像装置側および/又は照明側に付着した異物により形成された画像部分が含まれることを特徴とする請求項7乃至9のいずれか1項に記載のガラス壜の検査方法。
【請求項11】
前記ガラス壜には液体が充填されていることを特徴とする請求項7乃至10のいずれか1項に記載のガラス壜の検査方法。
【請求項12】
前記照明は赤色LED照明からなり、前記撮像装置はCCDカラーカメラからなることを特徴とする請求項7乃至11のいずれか1項に記載のガラス壜の検査方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−68037(P2012−68037A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−210651(P2010−210651)
【出願日】平成22年9月21日(2010.9.21)
【出願人】(307027577)麒麟麦酒株式会社 (350)
【Fターム(参考)】