説明

ガラス板の搬送装置及びガラス板の搬送方法

【課題】ガラス板の一方の主面に部材を接触させることなくガラス板を搬送することができる搬送装置及び搬送方法を提供する。
【解決手段】搬送装置1は、移動可能な台座部10に対して上下方向に変位可能に設けられており、上方に向かって開口する第1の凹条部24aを有する第1の保持部24と、第1の保持部24の上方において、第1の保持部24に対して上下方向に変位可能に設けられており、下方に向かって開口する第2の凹条部32aを有する第2の保持部32とを備えている。第2の保持部32は、下方に向かって台座部10側に傾斜する第1の壁部32a1と、第1の壁部32a1に対して台座部10とは反対側に位置し、第1の壁部32a1と共に第2の凹条部32aを構成している第2の壁部32a2とを有する。第1の壁部32a1は、第2の壁部32a2よりも下方に位置している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス板の搬送装置及びガラス板の搬送装置に関する。特に、本発明は、液晶表示ディスプレイやプラズマディスプレイ等のフラットパネルディスプレイ、太陽電池用基板、携帯情報端末用窓材、あるいはフォトマスク用ガラス基板などに用いられる大型のガラス板の搬送に適した搬送装置及び搬送方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、液晶表示ディスプレイやプラズマディスプレイ等のフラットパネルディスプレイの薄型化及び大型化に伴い、フラットパネルディスプレイに使用されるガラス板も薄型化及び大型化している傾向にある。このため、フラットパネルディスプレイの製造工程や、ガラス板の製造工程等において、薄く、大きなガラス板を如何に搬送するかが大きな問題となってきている。これに伴い、ガラス板の搬送装置や搬送方法が種々提案されている。
【0003】
例えば、下記の特許文献1には、カセット上に載置されたガラス板の一方の面にロボットのハンドを吸着させ、そのロボットを駆動することにより、ガラス板を反転させ、ガラス板の他方の面が下を向くように、水平な検査台の上に載置する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−315959号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、フラットパネルディスプレイ等に用いられるガラス板には、高い清浄度を保証する必要がある所謂保証面を設ける必要がある。しかしながら、上記特許文献1に記載の方法では、ガラス板の一方の面にはハンドに接触し、他方の面は検査台に接触することとなる。このため、ガラス板の保証面の清浄度が低下したり、保証面に傷等が生じたりしてしまう虞がある。
【0006】
本発明は、斯かる点に鑑みて成されたものであり、その目的は、ガラス板の一方の主面に部材を接触させることなくガラス板を搬送することができる搬送装置及び搬送方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るガラス板の搬送装置は、台座部と、第1の保持部と、第2の保持部と、第1の変位機構と、第2の変位機構とを備えている。台座部は、移動可能である。第1の保持部は、台座部に対して上下方向に変位可能に設けられている。第1の保持部は、第1の凹条部を有する。第1の凹条部は、上方に向かって開口している。第2の保持部は、第1の保持部の上方において、第1の保持部に対して上下方向に変位可能に設けられている。第2の保持部は、第2の凹条部を有する。第2の凹条部は、下方に向かって開口している。第1の変位機構は、第1の保持部を台座部に対して上下方向に変位させる機構である。第2の変位機構は、第2の保持部を第1の保持部に対して上下方向に変位させる機構である。第2の保持部は、第1の壁部と、第2の壁部とを有する。第1の壁部は、下方に向かって台座部側に傾斜している。第2の壁部は、第1の壁部に対して台座部とは反対側に位置している。第2の壁部は、第1の壁部と共に第2の凹条部を構成している。第1の壁部は、第2の壁部よりも下方に位置している。
【0008】
本発明に係る第1のガラス板の搬送方法は、上記本発明に係るガラス板の搬送装置を用いたガラス板の搬送方法に関する。本発明に係る第1のガラス板の搬送方法では、第1の保持部と第2の保持部とにより、ガラス板の表裏面が略鉛直方向に沿うようにガラス板を挟持した状態で前記台座部を移動させる。
【0009】
本発明に係る第2のガラス板の搬送方法は、上記本発明に係るガラス板の搬送装置を用いたガラス板の搬送方法に関する。本発明に係る第2のガラス板の搬送方法は、第1の工程と、第2の工程と、第3の工程と、第4の工程とを有する。第1の工程は、斜めに保持されたガラス板の下方に第1の保持部を挿入し、ガラス板の下側端縁部を第1の凹条部に挿入させてガラス板の下側端縁部を第1の保持部で保持する工程である。第2の工程は、ガラス板の裏面を押圧し、ガラス板の上側端縁部が第1の壁部に当接するまでガラス板の下側端縁部を起点として回転させる工程である。第3の工程は、第2の変位機構により、ガラス板が第1の保持部と第2の保持部とによって挟持されるまで、第2の保持部を降下させる工程である。第4の工程は、第1の変位機構により、第1の保持部と第2の保持部とによりガラス板を挟持した状態でガラス板を上昇させた後に、台座部を移動させてガラス板を搬送する工程である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ガラス板の一方の主面に部材を接触させることなく、異なる寸法のガラス板を搬送することができる搬送装置及び搬送方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施形態に係る搬送装置の略図的側面図である。
【図2】本発明の一実施形態における搬送コンベアの略図的斜視図である。
【図3】本発明の一実施形態における搬送装置へのガラス板のセッティング工程を説明するための模式的側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施した好ましい形態の一例について説明する。但し、以下の実施形態は、単なる例示である。本発明は、以下の実施形態に何ら限定されない。
【0013】
図1は、本実施形態に係る搬送装置の略図的側面図である。
【0014】
まず、図1〜図3を参照しながら、本実施形態に係る搬送装置1について説明する。図1に示すように、搬送装置1は、台座部10を備えている。台座部10は、台座部本体11を備えている。台座部本体11には、車輪13,14が回転可能に設けられている。このため、台座部10は、移動可能となっている。
【0015】
台座部本体11には、ガイド部12が設けられている。ガイド部12は、鉛直方向であるz方向に延びるように設けられている。ガイド部12には、第1の可動部20がz方向に変位可能に取り付けられている。第1の可動部20は、ガイド部12に対してy方向のy1側に位置している。第1の可動部20のz方向への変位は、第1の変位機構21を操作することによって行うことができる。すなわち、第1の変位機構21を操作することにより、第1の可動部20をガイド部12に沿ってz方向へ変位させることができる。
【0016】
なお、本実施形態では、第1の変位機構21が搬送装置1の操作者が手動で操作可能となっている例について説明する。但し、本発明は、この構成に限定されない。搬送装置1には、第1の変位機構21の駆動機構と、その駆動機構のスイッチとが設けられていてもよい。その場合は、操作者がスイッチを操作した際に、駆動機構により第1の変位機構21が駆動される。
【0017】
第1の可動部20は、支持部22と、ガイド部23とを有する。ガイド部23は、z方向に沿って延びるように設けられている。ガイド部23には、第2の可動部30がz方向に変位可能に設けられている。第2の可動部30は、ガイド部23に対してy1側に位置している。第2の可動部30のz方向への変位は、第2の変位機構31を操作することによって行うことができる。すなわち、第2の変位機構31を操作することにより、第2の可動部30をガイド部23に沿ってz方向に変位させることができる。
【0018】
なお、本実施形態では、第2の変位機構31が搬送装置1の操作者が手動で操作可能となっている例について説明する。但し、本発明は、この構成に限定されない。搬送装置1には、第2の変位機構31の駆動機構とその駆動機構のスイッチとが設けられていてもよい。その場合は、操作者がスイッチを操作した際に、駆動機構により第2の変位機構31が駆動される。
【0019】
支持部22は、ガイド部23の下端部からy1側に延びるように設けられている。支持部22のy1側先端には、第1の保持部24が取り付けられている。第1の保持部24は、z方向のz1側(上側)に向かって開口する、x方向(横方向)に延びる線状の凹条部24aを有する。
【0020】
この第1の保持部24は、第1の変位機構21を操作することにより、z方向に変位可能である。
【0021】
一方、第2の可動部30の先端部には、第2の保持部32が取り付けられている。このため、第2の保持部32は、第1及び第2の変位機構21,31の少なくとも一方を操作することにより、z方向に変位可能である。すなわち、第1の変位機構21を操作することにより、第1及び第2の保持部24,32をz方向に変位させることができる。第2の変位機構31を操作することにより、第1の保持部24に対して第2の保持部32を相対的にz方向に変位させることができ、第1及び第2の保持部24,32の間のz方向における間隔を調整することができる。
【0022】
第2の保持部32は、第1の保持部24のz方向のz1側(上側)に位置している。すなわち、第1の保持部24と第2の保持部32とは、z方向に配列されている。よって、第1及び第2の保持部24,32により狭持されたガラス板40は、略鉛直方向に延びることとなる。ここで、「略鉛直方向」とは、水平面に対する方向が70°〜110°の範囲にあることをいう。
【0023】
第2の保持部32は、z方向のz2側に向かって開口する、x方向(横方向)に延びる線状の凹条部32aを有する。この第2の保持部32の凹条部32aと、第1の保持部24の凹条部24aとは、z方向において対面している。このため、第1及び第2の保持部24,32によりガラス板40が狭持可能となっている。
【0024】
第1及び第2の保持部24,32のそれぞれは、ガラス板40との接触により、ガラス板40を損傷しないような材料からなるものであることが好ましい。第1及び第2の保持部24,32のそれぞれは、例えば、MCナイロンや、超高分子ポリエチレン等により形成することができる。
【0025】
本実施形態では、第2の保持部32は、凹条部32aを構成している第1及び第2の壁部32a1,32a2を有する。第1の壁部32a1は、z方向のz2側(下方)に向かって台座部10側(y2側)に傾斜している。一方、第2の壁部32a2は、第1の壁部32a1に対して台座部10とは反対側(y1側)に位置している。第2の壁部32a2は、z方向のz2側(下方)に向かって台座部10とは反対側(y1側)に傾斜している。この結果、本実施形態では、凹条部32aの横断面は、V字状となっている。よって、第一の壁部32a1と第2の壁部32a2に対してガラス板40の上方側の端縁部が接触するだけであり、ガラス板40の主面(保証面)40aが接触することなく凹条部32aでガラス板40aを保持することが可能となっている。ガラス板40の主面40aは、不要な接触によりその表面に傷などの痕跡が残留することは、極力避けねばならないからである。
【0026】
第1の壁部32a1は、第2の壁部32a2よりもz方向のz2側(下方)に位置している。すなわち、第1の壁部32a1の下端は、第2の壁部32a2の下端よりもz2側に位置している。
【0027】
なお、本実施形態では、第1及び第2の壁部32a1,32a2のそれぞれが平面状である例について説明するが、本発明は、この構成に限定されない。第1及び第2の壁部32a1,32a2のそれぞれは、凹面状や凸面状などの曲面状であってもよい。また、第2の壁部32a2がz方向のz2側(下方)に向かって台座部10とは反対側(y1側)に傾斜している必要は、必ずしもない。第2の壁部32a2は、例えば、z方向に略平行に延びるように設けられていてもよい。
【0028】
次に、上記搬送装置1を用いたガラス板40の搬送方法について説明する。ここでは、図2に示す搬送コンベア50上に配置されたガラス板40を、搬送コンベア50から他の場所に搬送する例について説明する。
【0029】
図2に示すように、搬送コンベア50には、複数のローラー51が横方向に沿って配列されている。複数のローラー51のそれぞれは、傾斜して設けられている。これら複数のローラー51の上に、ガラス板40が載置されている。
【0030】
まず、図3に示すように、搬送装置1を搬送コンベア50に載置されたガラス板40に対面して配置する。この状態では、第1の保持部24がガラス板40の下側端縁よりもz2側(下側)に位置し、かつ、第2の保持部32がガラス板40の上側端縁よりもz1側(上側)に位置するようにしておく。より詳細には、第2の保持部32に関しては、第1の保持部24からの距離がガラス板40の高さよりも長くなるように位置させておく。さらに詳細には、第1の壁部32a1の下端と第1の凹条部24aとの距離が、ガラス板40の縦寸法(高さ寸法)よりも短く、かつ第2の壁部32a2の下端と第1の凹条部24aとの距離が、ガラス板40の縦寸法(高さ寸法)よりも長くなるように第2の保持部32を位置させておく。
【0031】
その状態で台座部10をy1側に前進させ、ガラス板40の下方に第1の保持部24を挿入する。そして、第1の変位機構21を操作し、第1の保持部24を上昇させることにより、ガラス板40の下側端縁部を凹条部24aに挿入させてガラス板40の下側端縁部を第1の保持部24で保持する(第1の工程)。
【0032】
次に、シリンダ52を用いてガラス板40の主面40aに対向する裏面40bをy2側(台座部10側)に押圧し、ガラス板40の上側端縁部が第1の壁部32a1に当接するまで、第1の保持部24により保持されているガラス板40の下側端縁部を起点として回転させる(第2の工程)。
【0033】
次に、第2の変位機構31を操作して、ガラス板40が第1の保持部24と第2の保持部32とによって挟持されるまで、第2の保持部32を降下させる(第3の工程)。これにより、第1及び第2の保持部24,32によってガラス板40が握持された状態とする。以上の第1〜第3の工程により、ガラス板40を搬送装置1にセッティングする。
【0034】
その後、第1の保持部24と第2の保持部32とによりガラス板40を狭持した状態で、第1の変位機構21を操作し、ガラス板40を搬送ローラー53から浮かせた後、台座部10を移動させてガラス板40の搬送を行う(第4の工程)。
【0035】
以上説明したような本実施形態の搬送装置1を用いたガラス板の搬送方法では、ガラス板40の主面40aには、部材が実質的に接触することなく、主面40aに汚れや傷が生じることなく、ガラス板40を好適に搬送することができる。
【0036】
本実施形態のガラス板40の搬送方法は、厚みが0.2mm〜5mm程度のガラス板の搬送に特に好適に適用される。ガラス板40の厚みが薄すぎる場合は、ガラス板40がたるみやすくなり、ガラス板40が脱落しやすくなる傾向にある。
【0037】
また、ガラス板40を略鉛直方向に保持しつつ搬送することで、搬送中などにガラス板40上に落下する異物が、ガラス板40の表面に沈積し、付着したりするのを防ぐことができる。
【0038】
なお、第1の保持部24及び第2の保持部32のそれぞれは、1つだけ設けられていてもよいし、複数設けられていてもよい。また、第1の保持部の数と、第二の保持部の数とは同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0039】
搬送するガラス板40の寸法が変化した場合は、予め、第1の保持部24と第2の保持部32との間隔を変更しておけばよい。また、ガラス板40の横寸法が変化した場合は、複数設けられた第1及び第2の保持部24,32の間隔を適宜調整すればよい。
【符号の説明】
【0040】
1…搬送装置
10…台座部
11…台座部本体
12…ガイド部
13,14…車輪
20…第1の可動部
21…第1の変位機構
22…支持部
23…ガイド部
24…第1の保持部
24a…第1の凹条部
30…第2の可動部
31…第2の変位機構
32…第2の保持部
32a…第2の凹条部
32a1…第1の壁部
32a2…第2の壁部
40…ガラス板
40a…主面(保証面)
40b…裏面
50…搬送コンベア
51…ローラー
52…シリンダ
53…搬送ローラー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動可能な台座部と、
前記台座部に対して上下方向に変位可能に設けられており、上方に向かって開口する第1の凹条部を有する第1の保持部と、
前記第1の保持部の上方において、前記第1の保持部に対して上下方向に変位可能に設けられており、下方に向かって開口する第2の凹条部を有する第2の保持部と、
前記第1の保持部を前記台座部に対して上下方向に変位させる第1の変位機構と、
前記第2の保持部を前記第1の保持部に対して上下方向に変位させる第2の変位機構と、
を備え、
前記第2の保持部は、
下方に向かって前記台座部側に傾斜する第1の壁部と、
前記第1の壁部に対して前記台座部とは反対側に位置し、前記第1の壁部と共に前記第2の凹条部を構成している第2の壁部と、
を有し、
前記第1の壁部は、前記第2の壁部よりも下方に位置している、ガラス板の搬送装置。
【請求項2】
請求項1に記載のガラス板の搬送装置を用いたガラス板の搬送方法であって、
前記第1の保持部と前記第2の保持部とにより、前記ガラス板の表裏面が略鉛直方向に沿うように前記ガラス板を挟持した状態で前記台座部を移動させる、ガラス板の搬送方法。
【請求項3】
請求項1に記載のガラス板の搬送装置を用いたガラス板の搬送方法であって、
斜めに保持されたガラス板の下方に前記第1の保持部を挿入し、前記ガラス板の下側端縁部を前記第1の凹条部に挿入させて前記ガラス板の下側端縁部を前記第1の保持部で保持する第1の工程と、
前記ガラス板の裏面を押圧し、前記ガラス板の上側端縁部が前記第1の壁部に当接するまで前記ガラス板の下側端縁部を起点として回転させる第2の工程と、
前記第2の変位機構により、前記ガラス板が前記第1の保持部と前記第2の保持部とによって挟持されるまで、前記第2の保持部を降下させる第3の工程と、
前記第1の変位機構により、前記第1の保持部と前記第2の保持部とによりガラス板を挟持した状態で前記ガラス板を上昇させた後に、前記台座部を移動させて前記ガラス板を搬送する第4の工程と、
を備える、ガラス板の搬送方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−174821(P2012−174821A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−34155(P2011−34155)
【出願日】平成23年2月21日(2011.2.21)
【出願人】(000232243)日本電気硝子株式会社 (1,447)
【Fターム(参考)】