説明

ガラス板面の付着物の検出方法および装置

【課題】ガラス板面の錫付着物と他の付着物とを識別する。
【解決手段】ガラス板の上流又は下流の斜め上方にガラス板の搬送方向と直交する方向にほぼ全幅に亘って設けた照明装置と、該装置の下面側に全幅に亘って配設し、照明装置の照射角度を制限し指向性を持たせる視野選択フィルターと、照明装置によって拡散光が照射されるガラス面全幅を走査し撮像する少なくとも1台のラインカメラと、ラインカメラにより撮像された画像信号を処理する画像処理装置と、画像処理装置によって処理された画像信号より錫付着物の有無を判定する演算処理装置とからなり、前記視野選択フィルターの照射角度α、すなわちラインカメラが走査するガラス板下面への走査線上の各走査点から照明装置側に向けて、ガラス板の搬送方向±α/2の角度範囲にある拡散光のみが該走査点に到達するよう指向性を持たせた視野選択フィルターによって照明の範囲を各走査点毎に対応した範囲にした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス板面に付着した汚れ、付着物等の検出を目的とし、特にフロート法によりガラス板成形時にガラス板のボトム面に付着したドロスと呼ばれるスズ付着による欠陥を検出する方法、装置に関する。
【背景技術】
【0002】
フロート法による板ガラスの成形工程においては、溶融したガラス素地を溶融スズ上に浮かべることによって一定の板厚のガラス板を成形する。しかしながら、溶融スズ上で成形したガラス板をフロートバスの出口から引き出すときに、ガラス板のボトム面(下面)に溶融スズが付着したままフロートバスから搬出されることがある。ガラス板面に付着したスズはドロスと呼ばれ、徐冷後に洗浄しても除去するのは困難であり、ガラス板の使用目的や、ドロスの分布位置、大きさによっては欠陥となる。また、フロートバスの天井等に気化して付着した錫がガラス板のトップ面(上面)上に落下して付着するスズも欠陥となる。
【0003】
また、通常、成形された高温状態のガラス板を徐冷ロールで搬送する場合、ロール面の跡がガラス面につき易いため、徐冷ロールの表面に芒硝(硫酸ナトリウム)を散布し、ロール跡がつかないようにすることが良く行われている。この芒硝は、徐冷工程後の洗浄工程によって容易に除去できるが、搬送されるガラス板が超薄板の場合には破損を防止するために徐冷工程後にガラス板を洗浄できない場合があり、この洗浄工程を経ない場合にはドロスと芒硝とを区別するのが困難となる。
【0004】
これらのガラス板表面に付着した付着物や汚れを検出する方法や装置は、数多く知られている。例えば、ガラス板の欠陥を検出する方法、装置として、レーザーフライングスポットによるレーザー光の透過光、反射光を利用したものや、CCDイメージセンサを使ったラインカメラやエリアカメラで欠陥を撮像し、画像処理装置で処理するもの等、検出しようとする欠陥や、検出用途目的によって、夫々さまざまな技術、文献が知られている。
【0005】
まず、レーザー光を用いた欠点種類識別装置としては、例えば、特開昭54−39681号公報には、移動するガラス板に対し、前記移動方向に対して横断する方向にスポットビームを投射走査する装置と、該ビームの入射光軸における透過光量を測定する装置、ならびに前記入射光軸から離れた遠軸における散乱光量を測定する装置とを有し、かつ、前記透過光量が平常レベルよりも減少している間における前記散乱光量の時間的変化を媒介として、前記ガラス板に存在する各欠点の種類を識別する所用機構を具備したガラス板の欠点種類識別装置が開示されている(特許文献1)。
【0006】
また、カメラを用いたものとして、特開平1−189549号公報に示される様に、ガラスを搬送制御する機構と、線状に配置した光源からの光をスリットを通して、ガラスに投光することにより、ガラスの内部欠点、表面欠点を光の陰影として1次元カメラにて捉え、2次元データに変換後ガラスの良否を判定するガラス欠点検出装置が開示されている(特許文献2)。
【0007】
さらに、実開平3−27343号公報に示されるように、移動する板ガラスの一表面より隔離して設けられ板ガラスに光線を照射する点状の光源と、板ガラスの他の表面から隔離して設けられ、該光源から照射され板ガラスを透過した透過光線により形成される映像を映写するスクリーンと、該スクリーン上を走査し板ガラスの欠点の映像をラインセンサーにより検出する板ガラス欠点検出装置が開示されている(特許文献3)。
【0008】
一方、特表2009−516852号公報に示されるように、板ガラス(例えば、LCDガラス基板)上又は板ガラス内の欠陥(例えば、内包物、表面付着物、傷、染み、気泡、すじ、又は表面の不連続性や材料の複数の均一性に関連する他の不完全性)を特定するために用いられる、傾斜照明検査システム及び方法が開示されている(特許文献4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開昭54−39681号公報
【特許文献2】特開平1−189549号公報
【特許文献3】実開平3−27343号公報
【特許文献4】特表2009−516852号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
前記特許文献1に記載の発明については、レーザーフライングスポットによるレーザー光の透過光、反射光を利用したものについては、装置構成自体が大型化かつ複雑であり、非常に高価格であり、ガラス板のボトム面に付着したドロス欠陥を検出することは可能であるが、同時に埃や等の他の付着物等も検出してしまい、ドロス欠陥だけを検出するというのは困難であり、また誤検出も多いという問題点がある。
【0011】
また、特許文献2に記載の発明については、線状に配置した光源からの光を1つのスリットを通して移動する板ガラスに投光することにより、板ガラスの欠点を光の陰影として1次元カメラにて検出し画像処理するものであり、該例においては、透明板状体に付着した埃、汚れとドロス欠陥の判別が不可能であるという問題点がある。
【0012】
さらに、特許文献3に記載の発明については、移動する板ガラスに点状の光源による光線を照射し、板ガラスを透過後のスクリーンへの投影像を1次元カメラにて走査し、欠点による明暗部を検出する例においては、歪み欠陥の検出は可能であるが、外乱(外部光、埃、汚れ等)の影響を受け易く、ドロス欠陥等の微細な欠陥の検出が困難であるという問題点がある。
【0013】
さらにまた、特許文献4に記載の発明については、透過型照明を用いているため、前記特許文献1〜3と同様に検出したいドロス欠陥と埃等の付着物との区別が困難であるという問題点がある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、従来困難であったガラス板のボトム面に付着した50μm程度の微少なドロス欠陥や、ガラス表面の反射率よりも高い反射率を有する欠陥を、ガラス板の表面に付着した埃や芒硝(硫酸ナトリウム)等の白い表面付着物と区別して、非常にコンパクトで安価に、しかも確実に、かつ速いタクトで自動的に識別検査することを目的とする。
【0015】
すなわち、本発明は、搬送されるガラス板の上方に設けた照明装置より照射した拡散光を、ガラス板面で正反射させ、ガラス板の上方に設けたラインカメラにてガラス板面を走査撮像し、得られた画像信号によりガラス板面の錫付着物を検出する装置において、ガラス板の上流又は下流の斜め上方にガラス板の搬送方向と直交する方向にほぼ全幅に亘って設けた照明装置と、該照明装置の下面側の照明に全幅に亘って配設し、照明装置の照射角度を制限し指向性を持たせる視野選択フィルターと、前記照明装置によって拡散光が照射されるガラス面全幅を走査し撮像する少なくとも1台のラインカメラと、ラインカメラによって撮像された画像信号を処理する画像処理装置と、画像処理装置によって処理された画像信号より錫付着物の有無を判定する演算処理装置とからなり、
前記視野選択フィルターの照射角度α、すなわち、ラインカメラが走査するガラス板下面への走査線上の各走査点から照明装置側に向けて、ガラス板の搬送方向の±α/2の角度範囲にある拡散光のみが該走査点に到達するように指向性を持たせた視野選択フィルターによって照明の範囲を各走査点毎に対応した範囲に選択可能にして、錫付着物と他の付着物とを識別可能としたことを特徴とするガラス板面の錫付着物の検出装置である。
【0016】
あるいはまた、本発明は、前記ラインカメラの視野の右側ゾーンと左側ゾーンのそれぞれに照射する視野選択フィルターの照射角度αが視野選択フィルターからみて左右対称でなく、カメラの視野中心側にずらした角度で拡散光を照射させるように配設したことを特徴とする上述のガラス板面の錫付着物の検出装置である。
【0017】
あるいはまた、本発明は、上述の検出装置を用いて、搬送されるガラス板の上方より拡散光を照射してガラス板面で反射させ、ガラス板の上方に設けたラインカメラにてガラス板面を走査撮像し、得られた画像信号によりガラス板面の錫付着物を検出する方法において、ガラス板の上流又は下流側の斜め上方よりガラス板の搬送方向と直交する方向にほぼ全幅に亘って設けた照明装置の拡散光の幅方向の出射角度を制限し指向性を持たせる視野選択フィルターを介してガラス板面に照射し、概視野選択フィルターの照射角度α、すなわち、ガラス板面に付着した錫付着物に照射される拡散光の入射角度がガラス板の搬送方向±α/2の角度範囲の幅方向からの拡散光のみに制限して、該角度範囲外からの散乱光の入射を遮断することによって他の付着物を光らせないようにし、前記ガラス板面での正反射光をラインカメラによって走査し撮像した信号を画像処理し、錫付着物と他の付着物とを識別することを特徴とするガラス板面の錫付着物の検出方法である。
【0018】
あるいはまた、本発明は、前記視野選択フィルターの照射角度をα、カメラの視野角をβとしたときに、α>βとすることを特徴とする上述のガラス板面の錫付着物の検出方法である。
【0019】
あるいはまた、本発明は、前記ガラス板が連続したリボン状のフロートガラス板であることを特徴とする上述のガラス板面の錫付着物の検出方法である。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、非常にシンプルで、かつコンパクト、並びに、非常に安価な構造にして、従来困難であったガラス板のボトム面に付着した50μm程度の遮光性の微少なドロス欠陥や、ガラス表面の反射率よりも高い反射率を有する欠陥と、ガラス板の表面に付着した欠陥ではない埃や芒硝等(硫酸ナトリウム)等のその他の白い表面付着物とを識別することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の検出装置の構成を表す概略模式図。
【図2】本発明の検出装置の原理を説明する概念図。
【図3】本発明の検出装置の視野選択フィルターによる照射角度を説明する図。
【図4】本発明の検出装置の視野選択フィルターの照射角度とカメラの視野角との関係を説明する図。
【図5】本発明の検出装置の左右対称でない視野選択フィルターの照射角度とカメラの視野角との関係を説明する図。
【図6】(a)、(b)は、それぞれ視野選択フィルター無しと有りで、ラインカメラによって撮像したカメラの視野中央部のドロスの画像。
【図7】(a)、(b)は、それぞれ視野選択フィルター無しと有りで、ラインカメラによって撮像したカメラの視野中央部の芒硝片の画像。
【図8】従来の検出装置の構成を表す概略模式図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の装置の構成を図1に基づき説明する。本発明は、搬送コンベア20によって水平姿勢で搬送移動されガラス板Gの上流又は下流の斜め上方にガラス板Gの搬送方向と直交する方向にほぼ全幅に亘って設けた照明装置3と、前記照明装置3の下面側の開口スリット部に全幅に亘って被覆した拡散板にさらに重ねて配設した視野選択フィルター4と、該視野選択フィルター4を介して拡散光が照射されるガラス面全幅を走査し撮像する少なくとも1台のラインカメラ10と、該ラインカメラ10によって撮像された画像信号を処理する画像処理装置13と、画像処理装置13によって処理された画像信号より欠陥となる錫付着物の有無を判定する演算処理装置14とからなる。
【0023】
前記照明装置3は、ガラス板の全幅に亘って設けられ、その下面側に開口スリット部を有する箱状の光源ボックス3b内に少なくとも1本の高周波蛍光灯3cを配設し、その下面側に設けた開口スリット部に全幅に亘って乳白色の拡散板3aを被覆し、さらに該拡散板3aに拡散板3aと略同一の長さの視野選択フィルター4を重ねて配設したものである。
【0024】
また、前記視野選択フィルター4は、照明装置3の各幅方向からの照明から出射する拡散光の出射角度を制限して幅方向に指向性を持たせる機能を有しており、ガラス板Gの搬送方向に対しては視野選択の機能は有していない。
【0025】
よって、ガラス板Gの幅方向の中央部を照射する拡散光は、照明装置3の中央部からの拡散光のみとなり、照明装置3の両端側部分からの拡散光は遮断され、ガラス板Gの幅方向の一端側を照射する拡散光は、照明装置3の対応する一端側からの拡散光のみの照射となる。このように、ガラス板Gの各検査対象部分を照射する拡散光は、照明装置3の視野選択フィルター4の対応する部分近傍からの拡散光のみによって照射されることになる。
【0026】
すなわち、図3に示したように、前記ラインカメラ10が走査するガラス板Gの下面を走査する走査線上の各走査点から照明装置3側に向けて、ガラス板Gの搬送方向±α/2の角度範囲(図3の符号Lの範囲)にある拡散光のみが該走査点を照射するように指向性を持たせた視野選択フィルター4によって拡散光の出射範囲を各走査点位置に対応した範囲に選択可能にして、欠陥となるドロス等の錫付着物と芒硝等の他の付着物とを識別可能とした。
【0027】
また、視野選択フィルターの照射角αが小さい方が余分な拡散光が抑えられ、錫付着物による欠陥と芒硝との識別性能は向上する反面、図4に示したように、視野選択フィルターの照射角度をα、カメラの視野角をβとしたときに、カメラの視野角をβより視野選択フィルターの照射角度αが小さいと、カメラの視野の端部において正反射光が入射しなくなるため、視野選択フィルターの照射角度α>カメラの視野角βとする必要がある。
【0028】
前記視野選択フィルター4のガラス板面への照射角度αは、視野選択フィルター4の全幅に亘って配設し、図4に示したように、左右対称方向に拡散光を照射させるようにしたが、図5に示したように、前記ラインカメラの視野の右側ゾーンと左側ゾーンのそれぞれに照射する視野選択フィルター4の照射角度αが視野選択フィルター4からみて左右対称でなく、カメラの視野中心側にずらした角度で拡散光を照射させるように配設しても良い。
【0029】
前記ラインカメラ10については、ガラス板Gの上方より、ガラス板Gの幅方向に線条に往復走査するように少なくとも1台ガラス板Gの上流側又は下流側の斜め上方に向けて設ける。該ラインカメラの取付角度は、拡散板3aと視野選択フィルター4を介してガラス板面に拡散光を照射する照明装置3からの拡散光をガラス板面で正反射させて該反射光をラインカメラ10に入射させるように配置した。
【0030】
前記照明装置の下面側の開口スリット部の幅は、狭いほうが余分な拡散光の照射を抑えられて、ドロス欠陥のような錫付着物と、芒硝との識別性能が向上する。このため、搬送されるガラスリボンの板厚が比較的薄く一定で、搬送中にガラス板が上下に波打つバタツキがなければ、2、3mmという狭いスリット幅でも良い。しかし、超薄板ガラスの場合にはガラスリボンが波打つ状況となりやすいので、ガラス板のバタツキがあっても、スリットを通してガラス板面に照射され、ガラス板面で正反射した拡散光がカメラに入射できる程度に幅広いスリット幅であれば良く、ガラスの板厚や搬送状態等によって、条件が異なる。
【0031】
前記装置を用いてドロス欠陥となる錫付着物の検出方法としては、ガラス板の上流又は下流側の斜め上方よりガラス板の搬送方向と直交する方向にほぼ全幅に亘って設けた照明装置の拡散光の幅方向の出射角度を制限し指向性を持たせる視野選択フィルターを介してガラス板面に照射し、前記としたときに、ガラス板面に付着した錫付着物に照射される拡散光の入射角度がガラス板の搬送方向の±α/2の角度範囲となる幅方向からの拡散光のみに制限して、該角度範囲外からの散乱光の入射を遮断することによって他の付着物を光らせないようにし、前記ガラス板面での正反射光をラインカメラによって走査し撮像した信号を画像処理し、錫付着物と他の付着物とを識別する。
【0032】
前記照明装置3に取付けた視野選択フィルター4から出射する拡散光の出射角度をガラス板Gの水平面、すなわち搬送方向を0度として、±α/2度(視野選択フィルターの照射角度をα)の角度範囲とし、該角度から外れた方向には拡散光は視野選択フィルター4によって遮られて拡散光を到達させない。
【0033】
前記ラインカメラ10によってガラス板の下面に付着した錫付着物(ドロス)8で正反射する光を撮像して画像処理装置に取り込み、図2に示したように、設定したスライスレベルで二値化処理し、画像処理し、演算装置14により欠陥種類の識別を行う。
【0034】
前記拡散板3aは、例えば樹脂製や摺りガラス板のものが用いられ、該拡散板3aによって照明3による照明のムラを低減できて、均一にすることができるので望ましい。該光源ボックス3b内の光源から拡散板3aを通してガラス板Gで正反射される正反射照明の入射角度、反射角度は、ガラス板Gの水平面に対して65度±10度程度とするのが望ましい。
【0035】
正反射照明の入射角度がガラス板G面の水平面に対して、65度±10度程度とするのが望ましいとしたのは、75度を超えると、カメラと照明装置とが干渉しやすい位置関係となり、55度未満とすると搬送されるガラス板が超薄板のリボン状であるときに発生しやすい波打つ状態、すなわちバタツキによって照明装置3による反射光がカメラの光軸からずれ易くなるという問題点があるためである。
【0036】
また、前記照明装置3は、ガラス板Gの幅方向、すなわち搬送方向と直交する方向を長手方向とする光源ボックス3bを上部面を開口した状態でガラス板Gの下部位置に設け、該光源ボックス3b内に少なくとも1本の高周波蛍光灯3cを水平方向に配設して面状とし、その開口部に高周波蛍光灯からの照明を拡散して均一な拡散光とする拡散板3aを配設し、該拡散板3aが高周波蛍光灯3cとガラス板G間となるように配置した。拡散板3aは、例えば乳白色の樹脂製や摺りガラス板製のものが用いられ、該拡散板3aによって照明装置3による照明のムラを低減でき、均一にすることができるので望ましい。
【0037】
以下に、本発明の作用を説明する。
【0038】
図8に示したように、ガラス板の下面にドロス8による欠陥を含むその周辺部を各ラインカメラ10によって撮像した場合には、照明装置3からの拡散光を視野選択フィルター4を通さず、そのままガラス板面に照射しても、ドロス8による鏡面作用によって正反射して、これによって撮像されたドロス8は、図6(a)に示したような白い明画像としてラインカメラ10のコントローラ11によって取り込まれる。
【0039】
しかしながら、芒硝片等の白い付着物等を前記と同様に各ラインカメラ10によって撮像した場合、照明装置3からの拡散光を視野選択フィルターを通さずに、そのままガラス板面に照射すると、これによって撮像された芒硝片等の白い付着物9は、ドロスのような鏡面作用がないが、図7(a)に示したような白い明画像としてラインカメラ10のコントローラ11によって取り込まれ、ドロス8と芒硝片9とがいずれも「明信号」となるので、これらを区別することは困難である。
【0040】
これに対して、図1、3に示したように、ドロスによる欠陥の周辺部を各ラインカメラ10によって撮像した場合には、照明装置3からの拡散光を視野選択フィルター4を通して限定された角度の範囲(図3の符号Lの範囲)内だけからガラス板面に照射し、限定された角度の範囲外からの拡散光を除外しても、ドロスによる鏡面作用によって照明装置からの拡散光は正反射して、これによって撮像されたドロス8は図6(b)に示したような白い明画像としてラインカメラ10のコントローラ11によって取り込まれるので、図2の符号8に示したようにスライスレベルよりも明るい信号となる。
【0041】
一方、芒硝片等の白い付着物を前記と同様に各ラインカメラ10によって撮像した場合には、照明装置3からの拡散光を視野選択フィルターを通して限定的にガラス板面に照射し、限定された角度の範囲外からの拡散光を除外するようにしたので、これによって撮像された芒硝片等の付着物9は、散乱光の照射が抑えられるため、ドロスほど白く光らず、図2の符号9に示したようにスライスレベルよりも低い信号となり、図7(b)に示したような淡い灰色画像としてラインカメラ10のコントローラ11によって取り込まれる。
【0042】
すなわち、図3に示したように、照明装置3からの拡散光を視野選択フィルター4を通して限定された角度の範囲(図3の符号Lの範囲)内だけからガラス板面に照射し、限定された角度の範囲外からの拡散光を除外するようにすれば、芒硝片等の白い付着物が白く光ることは無く、ドロスだけが鏡面作用によって白く光るので、ドロスを容易に検出することができる。
【0043】
尚、ガラス板中の異物やアワ状物については、白く光らないため本発明の検出装置で検出することはない。
【0044】
以上のようにして、ガラス板Gの下面に付着したドロス等の錫付着物や、ガラス板の上面に付着した錫付着物によって周辺部の反射率が高くなる欠陥についても検出することができ、芒硝片等の白い付着物と区別することができる。
【0045】
ラインカメラ10によって撮像された画像は、コントローラ(図示しない)によって取り込まれ、輝度レベルを表す電気信号に変換後、画像処理装置13に取り込まれ、濃淡画像として記憶され、さらに、ガラス板Gの検査幅方向の各ラインカメラ10の走査位置に合わせて重ね合わせ合成されて二次元画像が形成される。
【0046】
前記ドロスの画像の濃淡レベルについては、設定されたスライスレベルで二値化し、明信号「0」と暗信号「1」に分け、パソコン等の演算処理装置14でそれぞれのX座標(搬送方向)、Y座標(ガラス板の幅方向)等を記憶させ、明信号の各画素を連結して組み立てたドロスの画像、サイズにより設定した判断基準に基づき、欠陥と判別する。
【0047】
このようにしてガラス板Gを複数台のラインカメラ10、10、・・で走査すると共に、搬送コンベア20の搬送ロール21、21、・・を回転させてガラス板Gを搬送させることにより、フロート法によって成形されたガラスリボンのような幅広の連続したガラス板であっても、ガラス板Gの全面について連続して芒硝片等と区別してドロス等の錫付着物の検出を行うことができる。
【0048】
さらに、得られた結果をパソコン14等に出力して記憶処理させれば、前記ラインカメラ10、10、・・の搬送コンベア20による搬送位置と合わせて、ガラス板GのX軸、Y軸方向の欠陥位置、大きさ等の欠陥情報を記憶し、また管理情報を得ることが出来る。さらに、前記欠陥情報を利用し、後工程においてパソコン等の指示制御に基づいて欠陥と判定された部分を含むガラス板を切断除去し、あるいは各種管理情報に加工することもできる。
【0049】
前記ラインカメラ10は、ガラス板G面の斜め上方位置にあって、搬送されるガラス板Gの搬送方向と直交する幅方向に走査する少なくとも1台以上のラインカメラ10を図示しない架台上に一列に取り付けるが、該ラインカメラ10の設置台数は、ガラス板Gが幅広の場合はラインカメラの分解能と検出精度次第であって、ガラス板Gの検査幅に応じて複数台のラインカメラ10、10・・により走査幅を分担させれば良く、また、各ラインカメラ10、10・・の走査線の両端部と隣接するラインカメラ10の走査線とが若干重なるようにして走査漏れの無いようにした。また、該ラインカメラ10の分解能としては、1画素の大きさが検出すべき欠陥の最小サイズの1/4以下となるようにするのが一般的であるが欠陥部のコントラストが高い場合には1/2程度としてもよい。
【0050】
また、該ラインカメラ10はCCDカメラが望ましいがこれに限るものではなく、またその焦点位置をガラス板Gに合わせるようにする。ラインカメラ10で走査撮像した原画像データはカメラコントローラーにより電気信号に変換され、各画素毎に多段階、例えば256階調の濃淡信号に変換される。
【0051】
ラインカメラ10で撮像した濃淡の画像データを画像処理装置に順次蓄積して、あたかも2次元エリアカメラで撮像したかのような視野画像を形成した後、欠陥の識別処理を行うようにしても良い。
【0052】
本発明の検出方法によよって検出対象となるガラス板Gは、フロート法によって溶融成形された連続した幅広のリボン状のフロートガラス板を対象とするものであるが、方形に切断されたガラス板に対しても検出することができる。
【符号の説明】
【0053】
G ガラス板
1 検出装置
3 照明装置
3a 拡散板
3b 光源ボックス
3c 高周波蛍光灯
4 視野選択フィルタ
8 錫付着物(ドロス)
9 他の付着物
10 ラインカメラ
11 コントローラ
13 画像処理装置
14 演算処理装置
20 搬送コンベア

【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送されるガラス板の上方に設けた照明装置より照射した拡散光を、ガラス板面で正反射させ、ガラス板の上方に設けたラインカメラにてガラス板面を走査撮像し、得られた画像信号によりガラス板面の錫付着物を検出する装置において、
ガラス板の上流又は下流の斜め上方にガラス板の搬送方向と直交する方向にほぼ全幅に亘って設けた照明装置と、該照明装置の下面側に全幅に亘って配設し、照明装置の照射角度を制限し指向性を持たせる視野選択フィルターと、前記照明装置によって拡散光が照射されるガラス面全幅を走査し撮像する少なくとも1台のラインカメラと、ラインカメラによって撮像された画像信号を処理する画像処理装置と、画像処理装置によって処理された画像信号より錫付着物の有無を判定する演算処理装置とからなり、
前記視野選択フィルターの照射角度α、すなわち、ラインカメラが走査するガラス板下面への走査線上の各走査点から照明装置側に向けて、ガラス板の搬送方向の±α/2の角度範囲にある拡散光のみが該走査点に到達するように指向性を持たせた視野選択フィルターによって照明の範囲を各走査点毎に対応した範囲に選択可能にして、錫付着物と他の付着物とを識別可能としたことを特徴とするガラス板面の錫付着物の検出装置。
【請求項2】
前記ラインカメラの視野の右側ゾーンと左側ゾーンのそれぞれに照射する視野選択フィルターの照射角度αが視野選択フィルターからみて左右対称でなく、カメラの視野中心側にずらした角度で拡散光を照射させるように配設したことを特徴とする請求項1記載のガラス板面の錫付着物の検出装置。
【請求項3】
請求項1または2の検出装置を用いて、搬送されるガラス板の上方より拡散光を照射してガラス板面で反射させ、ガラス板の上方に設けたラインカメラにてガラス板面を走査撮像し、得られた画像信号によりガラス板面の錫付着物を検出する方法において、ガラス板の上流又は下流側の斜め上方よりガラス板の搬送方向と直交する方向にほぼ全幅に亘って設けた照明装置の拡散光の幅方向の出射角度を制限し指向性を持たせる視野選択フィルターを介してガラス板面に照射し、概視野選択フィルターの照射角度α、すなわち、ガラス板面に付着した錫付着物に照射される拡散光の入射角度がガラス板の搬送方向の±α/2の角度範囲の幅方向からの拡散光のみに制限して、該角度範囲外からの散乱光の入射を遮断することによって他の付着物を光らせないようにし、前記ガラス板面での正反射光をラインカメラによって走査し撮像した信号を画像処理し、錫付着物と他の付着物とを識別することを特徴とするガラス板面の錫付着物の検出方法。
【請求項4】
前記視野選択フィルターの照射角度をα、カメラの視野角をβとしたときに、α>βとすることを特徴とする請求項3記載のガラス板面の錫付着物の検出方法。
【請求項5】
前記ガラス板が連続したリボン状のフロートガラス板であることを特徴とする請求項3または4に記載のガラス板面の錫付着物の検出方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−43415(P2011−43415A)
【公開日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−191985(P2009−191985)
【出願日】平成21年8月21日(2009.8.21)
【出願人】(000002200)セントラル硝子株式会社 (1,198)
【Fターム(参考)】