説明

ガラス破損検知装置

【課題】簡素な構成で暗電流の増大及び信頼性の低下を抑制することができるガラス破損検知装置を提供する。
【解決手段】ウインドウガラス2には、該ウインドウガラス2の破損時に断線する導電パターン12と、その導電パターン12の両端にそれぞれ設けられたガラス側電極13a,13bとを備える断線検知用パターン11が敷設されている。各ガラス側電極13a,13bに対して予め設定された距離を離間させた位置に、それぞれ検知側電極14a,14bが対向配置されている。そして、これら検知側電極14a,14bには、該断線検知用パターン11に対して電気信号を入力するとともに、該断線検知用パターン11からの出力信号を検波する検知回路15が接続されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば車両のウインドウガラス等の破損有無を検知するガラス破損検知装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば特許文献1に記載されるガラス破損検知装置が提案されている。この種のガラス破損検知装置は、ガラスの破損を直接的に検知する直接検知式のガラス破損検知装置であり、検知対象であるガラスに破損検知のための構造を講じることでガラスの破損有無を検知可能となっている。
【0003】
詳しくは、該特許文献1に記載のガラス破損検知装置では、破損検知対象となる合わせガラスの内部に導電膜が形成されるとともに、その導電膜の両端部位にそれぞれリード線の一端が接続され、それらリード線の他端が破損検知センサに接続されている。そして、ガラスの破損時には、その破損に伴って生じる導電膜の電気抵抗値の変化を破損検知センサによって検知することにより、ガラスの破損検知が可能となっている。
【0004】
ところが、こうした従来のガラス破損検知装置ではガラスに対してリード線を配策する必要があることから、可動ガラスに適用した場合には、該リード線の配策が困難である、リード線の断線が生じるおそれがある、などの問題があった。
【0005】
そこで従来、例えば特許文献2に記載されるガラス破損検知装置が提案されている。このガラス破損検知装置は、破損検知対象となるガラスに形成された共振回路と、その共振回路のコイルと電磁結合するコイルを有する検知回路とを備えている。そして、検知回路は、ガラスの破損に伴う該共振周波数の変化を検知することにより、ガラスの破損有無を判断するようになっている。このため、ガラスに対してリード線等を物理的に接続することなく、非接触でガラスの破損有無を検知することができるため、上記問題を解消することができる。
【特許文献1】特開2005−132681号公報(段落[0019]〜[0022]、図1等参照)
【特許文献2】特開2005−43217号公報(段落[0021]〜[0025]、図1、図2等参照)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、こうした従来の非接触式のガラス破損検知装置では、ガラスに共振回路を設ける必要があるため構造が非常に複雑である。また、検知回路とガラス側共振回路とを電磁結合させるために多量の電流を通電させる必要があるため、暗電流も増大する。
【0007】
本発明はこうした実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、簡素な構成で暗電流の増大及び信頼性の低下を抑制することができるガラス破損検知装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、請求項1に記載の発明では、破損検知対象となるガラスの面上に離間して設けられた複数のガラス側電極と、該ガラス面に敷設されて前記複数のガラス側電極間を導通するとともに、該ガラスの破損時に断線する導電パターンと、各ガラス側電極に対して予め設定された距離を離間してそれぞれ配置されることにより、該ガラス側電極と共にそれぞれコンデンサ機能部を構成する複数の検知側電極と、それら検知側電極のうちの一つに接続された発振手段と、該発振手段が接続された検知側電極とは異なる他の検知側電極に接続され、該他の検知側電極からの入力波形に基づく出力信号を出力する出力手段とを備えることをその要旨とする。
【0009】
上記構成によれば、非接続状態で配置された各ガラス側電極と各検知側電極とによってそれぞれコンデンサ機能部が構成され、それらコンデンサ機能部の一つに対して発振手段から電気的信号が入力されるとともに、他のコンデンサ機能部から出力手段に入力された波形に基づく出力信号が出力手段から出力される。よって、導電パターンが断線した際には、出力手段に入力される前記他のコンデンサ機能部からの波形が変化するため、該出力手段からの出力信号も一変する。それゆえ、こうした出力手段の出力信号の変化に基づいて導電パターンの断線有無、すなわちガラスの破損有無を確実に検知可能となる。しかも、ガラス側電極と検知側電極とを物理的に接続することなく、ガラスに敷設された導電パターンの断線有無を検知可能となる。また、導電パターンの断線有無を検知するだけでガラスの破損有無を検知可能となるため、装置自体が簡素な構成で済むとともに、導電パターンに通電する電流量も少なくて済み、暗電流も抑制される。さらには、ガラス側電極と検知側電極との間に水等の異物が介在した場合においてもコンデンサ機能部の容量が変化するのみであるため、該異物の介在によりガラスの破損検知精度に大きな影響を与えることもない。よって、信頼性の低下を招くことなくガラスの破損有無検知を行うことができる。
【0010】
請求項2に記載の発明では、請求項1に記載のガラス破損検知装置において、前記ガラス側電極及び前記検知側電極のうちの一方は、他方に比較して大面積となるように構成されていることをその要旨とする。
【0011】
上記構成によれば、ガラスの位置ずれや各電極の設置誤差が生じた場合においても、ガラス側電極と検知側電極との対向面積を常に一定に確保することができる。このため、該位置ずれ等に起因するコンデンサ機能部の静電容量の変動が抑制される。すなわち、コンデンサ機能部の静電容量が安定する。よって、出力手段に入力される信号波形が安定するため、信頼性の低下を招くことなく破損検知を行うことができる。
【0012】
請求項3に記載の発明では、請求項2に記載のガラス破損検知装置において、前記ガラスはスライド移動することにより開閉自在な可動ガラスであり、前記大面積で構成された側の電極は、該ガラスの位置が変化しても、対向する電極との対向面積が同一となるべくガラスの移動方向に沿って延設されていることをその要旨とする。
【0013】
上記構成によれば、ガラスが開閉状態のどの状態にあっても、ガラス側電極と検知側電極とが同じ対向面積で対向してコンデンサ機能部を構成することとなる。しかも、そのコンデンサ機能部の静電容量も一定となる。よって、ガラスの開閉状態に拘わらず該ガラスの破損検知が可能となるとともに、信頼性の低下を招くことなく破損検知を行うことができる。
【0014】
請求項4に記載の発明では、請求項1〜3のいずれか1項に記載のガラス破損検知装置において、前記ガラスは車両のドアに配設されるウインドウガラスであり、前記各ガラス側電極及び前記導電パターンは、該ウインドウガラスにおいて全閉状態にあってもドア内から露出しない部位に設けられていることをその要旨とする。
【0015】
上記構成によれば、各ガラス側電極及び導電パターンは常にドア内に収納された状態となるため、該各ガラス側電極及び導電パターンを透明導電材料で構成しなくても、車両の美観を損なうことはない。
【発明の効果】
【0016】
以上詳述したように、本発明によれば、簡素な構成で暗電流の増大及び信頼性の低下を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明を具体化した一実施形態を図1〜図6に基づき詳細に説明する。
【0018】
図2及び図3に示すように、車両用ドア(ドア)1には、破損有無検知対象としてのウインドウガラス2と、そのウインドウガラス2の破損有無を検知するガラス破損検知装置10とが配設されている。図3に示すように、ドア1は、車外側に配設されるアウターパネル3と、室内側に配設される内装パネル4と、それらの間に配設されるインナーパネル5とを備えている。アウターパネル3及びインナーパネル5は鋼板によって構成され、アウターパネル3は車両の外装をなす。内装パネル4は樹脂材等によって構成され、インナーパネル5はそれらアウターパネル3及び内装パネル4によって囲まれた空間内に配設され、外部に露出しないようになっている。そして、ウインドウガラス2は、アウターパネル3と内装パネル4との間において、インナーパネル5に配設された図示しないパワーウインドウレギュレータによって略上下方向(図3に示す矢印F1,F2方向)にスライド移動可能となっている。すなわち、ウインドウガラス2は、面方向(スライド方向)に移動することにより開閉自在な可動ガラスである。
【0019】
このウインドウガラス2は、図2及び図3に示すように、上方移動限界位置(全閉位置)においても下端部位がドア2内に収容された状態となるように構成されている。そして、該下端部位における室内側面には、ガラス破損検知装置10を構成する断線検知用のパターン回路部11が敷設されている。詳しくは、図1及び図2に示すように、パターン回路部11は、ガラス面に一筆書きで構成された導電パターン12と、その導電パターン12の両端に形成されたガラス側電極13a,13bとによって構成されている。該導電パターン12は、ウインドウガラス2の破損時に確実に断線するように形成されており、具体的には、例えばガラス面に塗布・焼成処理されて形成された銀ペーストや、CVD法等の薄膜成形技術によって形成された酸化シリコン等の導電膜によって構成されている。ちなみに、該パターン回路部11は、不透明材料、透明材料のどちらによって構成されていてもよい。なお、本実施形態において導電パターン12は、ウインドウガラス2の横方向(ウインドウガラス2の可動方向と直交する方向)に延びるパルス波形状をなしている。また、各ガラス側電極13a,13bは同形同大の略正方形状をなし、導電パターン12の両端部位に形成されている。よって、断線検知用パターン11は、非常に簡素な構成をなしている。
【0020】
一方、図3に示すように、インナーパネル5は、ウインドウガラス2の全閉位置において該ウインドウガラス2のドア2内に位置する箇所の面と対向する面を有している。そして、このインナーパネル5には、前記断線検知用のパターン回路部11と共にガラス破損検知装置10を構成する検知側電極14a,14b及び検知回路15が配設されている。詳しくは、インナーパネル5において前記各ガラス側電極13a,13bと対向する箇所に、それぞれ検知側電極14a,14bが形成されている。これらガラス側電極13a,13bと検知側電極14a,14bとの離間距離(対向距離)は予め設定されており、本実施形態においては2〜10ミリの範囲内に設定されている。
【0021】
各検知側電極14a,14bは、各ガラス側電極13a,13bよりも小面積に形成された略正方形状をなし、ウインドウガラス2の全閉状態において、対応するガラス側電極13a,13bと中心位置が対向するように設置されている。このため、各ガラス側電極13a,13bと各検知側電極14a,14bとの対向面積は、各検知側電極14a,14bの面積と一致する。また、各ガラス側電極13a,13bは各検知側電極14a,14bよりも大面積に設定されているため、ウインドウガラス2が全閉位置において少々の位置ずれを生じても、両電極13a,13b,14a,14bの対向面積は一定に維持される。そして、図4に示すように、ガラス側電極13aと検知側電極14aとにより、「面積=検知側電極14aの面積」、「離間距離=2〜10ミリ」、「誘電体=空気」によって導かれる静電容量の第1コンデンサ機能部C1が構成される。同様に、ガラス側電極13bと検知側電極14bとにより、第1コンデンサ機能部C1と等しい第2コンデンサ機能部C2が構成される。
【0022】
また、図3に示すように、インナーパネル5には、各検知側電極14a,14bとリード線等によって電気的に接続された検知回路15が配設されている。図4に示すように、この検知回路15は、一方の検知側電極14aに接続された発振手段としての発振回路21と、他方の検知側電極14bに接続されたフロントエンド22と、該フロントエンド22に接続された増幅器23と、該増幅器23に接続された検波器24とを備えている。そして、本実施形態においては、図4に2点鎖線で示すように、これらフロントエンド22、増幅器23及び検波器24によって出力手段が構成されている。
【0023】
発振回路21は、検知側電極14aに対して予め設定された周波数(例えば20kz)のパルス信号を出力する。なお、発振回路21は、必ずしもパルス信号を出力するものである必要はなく、正弦波信号を出力するものであってもよい。フロントエンド22は、検知側電極14bからの入力信号を低インピーダンス電圧信号に調整するための増幅器(チャージアンプ)であり、その出力信号を増幅器23に出力する。増幅器23は、該フロントエンド22からの入力信号をハイパスフィルタリングするとともに増幅して出力する。検波器24は、増幅器23のほか、発振回路21の出力端子とも接続されており、増幅器23からの出力信号と、発振回路21からの出力信号とが入力されるようになっている。そして、検波器24は、発振回路21からの出力信号に同期して増幅器23からの出力信号の検波を行い、その検波信号を外部に出力する。
【0024】
次に、このように構成されたガラス破損検知装置10の動作について説明する。
【0025】
図5に示すように、発振回路21からパルス信号が出力されると、そのパルス信号は第1コンデンサ機能部C1、導電パターン12、第2コンデンサ機能部C2を介してフロントエンド22に入力される。このため、導電パターン12に断線が生じていない状態にあっては、同図にポイントP1で示すように検波器24の出力信号はHレベル(高電位)となる。一方、ウインドウガラス2の破損に伴って導電パターン12が断線すると、発振回路21の出力信号はフロントエンド22に入力されなくなるため、同図にポイントP2で示すように検波器24の出力信号はLレベル(低電位)となる。すなわち、導電パターン12に断線が生じている場合と生じていない場合とで、検知回路15から出力される出力信号は一変する。
【0026】
よって、こうした検波器24の出力信号のレベルに基づいて、ウインドウガラス2の破損有無を検知可能となる。それゆえ、例えば該ウインドウガラス2の破損を検知したことを条件として警報を発する車両セキュリティシステムのガラス破損検知装置として適用可能となる。ちなみに、図6に示すように、導電パターン12の非断線時と断線時との電位差は、各ガラス側電極13a,13bと各検知側電極14a,14bとの離間距離が短いほど大きくなり、該離間距離が長いほど小さくなる。このため、該離間距離を短く設定した方が断線判定閾値(同図に示す閾値Th)の設定幅を広く確保することができ、誤判定の抑制が可能となる。
【0027】
なお、本実施形態においてガラス破損検知装置10は、ウインドウガラス2の全閉状態でのみ作動するようになっており、該全閉状態において常時作動しているわけではなく、予め設定された時間ごとに間欠的に作動するようになっている。このため、常時作動する場合に比べて車両バッテリの消費電力量が過大に増大してしまうこと、すなわち暗電流の増大を抑止している。
【0028】
したがって、本実施形態によれば以下のような効果を得ることができる。
【0029】
(1)非接続状態で配置されたガラス側電極13a,13bと検知側電極14a,14bとによって第1コンデンサ機能部C1及び第2コンデンサ機能部C2が構成され、それらコンデンサ機能部C1,C2が導電パターン12によって接続された状態となる。そして、第1コンデンサ機能部C1に対して発振回路21から電気的信号(パルス信号)が入力され、導電パターン12、第2コンデンサ機能部C2、フロントエンド22、及び増幅器23を介して出力される出力波形が検波器24によって検波される。よって、導電パターン12が断線した際には、第2コンデンサ機能部C2、フロントエンド22、及び増幅器23を介して検波器24に入力される波形が変化するため、該検波器24からの出力信号も一変する。導電パターンはウインドウガラス2の破損時に確実に断線するように構成されているため、こうした検波器24の出力信号の変化に基づいて導電パターン12の断線有無、すなわちウインドウガラス2の破損有無を確実に検知することができる。
【0030】
(2)ガラス側電極13a,13bと検知側電極14a,14bとを物理的に接続することなく、ウインドウガラス2に敷設された導電パターン12の断線有無を検知することができる。また、導電パターン12の断線有無を検知するだけでウインドウガラス2の破損有無を検知可能となるため、導電パターン12に通電する電流量も少なくて済み、ガラス破損検知装置10の作動に必要な暗電流も抑制することができる。
【0031】
(3)ガラス側電極13a,13bと検知側電極14a,14bとの間に水等の異物が介在した場合においても、コンデンサ機能部C1,C2の静電容量が変化するのみであるため、該異物の介在がウインドウガラス2の破損検知精度に与える影響は小さい。よって、高い信頼性でウインドウガラス2の破損有無検知を行うことができる。
【0032】
(4)ガラス側電極13a,13bは、検知側電極14a,14bよりも大面積に構成されているため、ウインドウガラス2の位置ずれや各電極13a,13b,14a,14bの設置誤差が生じた場合においても、ガラス側電極13a,13bと検知側電極14a,14bとの対向面積を一定に確保することができる。このため、該位置ずれ等に起因する各コンデンサ機能部C1,C2の静電容量の変動を抑制することができる。よって、検波器24に入力される波形が安定し、高い信頼性で破損検知を行うことができる。
【0033】
(5)導電パターン12を単純な形状で構成することができるとともに、過度に高い精度で構成する必要がないため、断線検知用パターン11をウインドウガラス2に容易に形成することができる。
【0034】
(6)断線検知用パターン11は、ウインドウガラス2において常にドア1内に収納される箇所に設けられているため、該断線検知用パターン11を透明導電材料で構成するなどの工夫を施さなくても、車両の美観を損なうことはない。よって、断線検知用パターン11の材料及び製法の自由度を向上させつつ、車両の美観を確保することができる。
【0035】
なお、本発明の実施形態は以下のように変更してもよい。
【0036】
・ ガラス側電極13a,13b及び検知側電極14a,14bは、同形同大に構成されていてもよい。
【0037】
・ 例えば図7に示すように、検知側電極14a,14bをガラス側電極13a,13bよりも大面積で形成してもよい。要は、ウインドウガラス2の位置ずれ等が生じた場合によっても、ガラス側電極13a,13bと検知側電極14a,14bとの対向面積が変化しにくい構成となっていれば、どちらの電極13a,13b,14a,14bが大面積で形成されていてもよい。
【0038】
・ さらに、例えば図7に示すように、ガラス側電極13a,13bの形状を変更せず、検知側電極14a,14bを下方に延設した長方形状に変更してもよい。このようにすれば、ウインドウガラス2の全閉状態に限らず、該ウインドウガラス2の開状態においても破損有無検知を行うことができる。なお、検知側電極14a,14bの形状を変更せず、ガラス側電極13a,13bを上方に延設した長方形状に変更しても、同等の作用効果を得ることができる。
【0039】
・ 例えば図8(a)に示すように、ウインドウガラス2における室外側面に断線検知用パターン11を形成し、各ガラス側電極13a,13bと各検知側電極14a,14bとの間にウインドウガラス2を介在させてもよい。また、図8(b)に示すように、ウインドウガラス2を室内側ガラス2aと室外側ガラス2bとからなる合わせガラスとしてもよく、それらガラス12a,12b間に断線検知用パターン11を形成してもよい。このようにすれば、断線検知用パターン11の耐侵食性を向上させることができる。さらには、図8(c)に示すように、室内側に一方の検知側電極14a、室外側に他方の検知側電極14bを設置するようにしてもよい。このようにすれば、検知側電極14a,14bの設置制限が存在する場合に有効となる。
【0040】
・ 導電パターン12の両端に限らず、例えば図9に示すように、導電パターン12の途中箇所にガラス側電極13c,13dを設けてもよい。すなわち、導電パターン12を第1パターン部12a、第2パターン部12b及び第3パターン部12cに分割し、それらパターン部12a〜12cの両端に、対応するガラス側電極13a〜13dを設けてもよい。それとともに、各ガラス側電極13c,13dと対向して検知側電極14c,14dを設置することにより、ガラス側電極13c及び検知側電極14cによって第3コンデンサ機能部を構成し、ガラス側電極13d及び検知側電極14dによって第4コンデンサ機能部を構成してもよい。このようにすれば、各パターン部12a〜12cの断線有無を個別に検知可能となり、ウインドウガラス2の破損箇所を特定可能となる。
【0041】
・ ガラス側電極13a,13b及び検知側電極14a,14bの少なくとも一方に誘電体を固着させてもよい。
【0042】
・ 検知回路15は、必ずしもフロントエンド22、増幅器23及び検波器24を全て備えている必要はなく、出力手段は、フロントエンド22のみ、またはフロントエンド22及び増幅器23によって構成されていてもよい。なお、出力手段がフロントエンド22のみによって構成されている場合、検知回路15の出力はフロントエンド22の出力となる。また、出力手段がフロントエンド22及び増幅器23によって構成されている場合、検知回路15の出力は増幅器23の出力となる。このように変更した場合、導電パターン12が断線していない場合には検知回路15からはパルス信号が出力されるものの、導電パターン12が断線している場合には検知回路15からはパルス信号が出力されなくなる。このため、導電パターン12の断線有無によって検知回路15からの出力信号は一変する。よって、こうした変更例にあっても、該出力信号に基づいてウインドウガラス2の破損有無を確実に検知可能となる。
【0043】
・ 増幅器23は、バンドパスフィルタの機能を有していてもよい。
【0044】
・ 破損検知対象となるガラスは、必ずしも前記ウインドウガラス2のような可動ガラスであることに限らず、固定ガラスであってもよい。また、ガラス破損検知装置10は、車両用のガラスに限らず、例えば住宅等の窓ガラスの破損有無検知装置として適用されてもよい。
【0045】
・ ガラス破損検知装置10は、必ずしも間欠的に作動するようになっている必要はなく、常時作動するようになっていてもよい。また、ガラス破損有無検知装置10は、ウインドウガラス2の開状態においても破損検知を行う場合、全閉状態において常時作動し、開状態において間欠的に作動するようになっていてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の一実施形態のガラス破損検知装置の設置状態を概略的に示す斜視図。
【図2】同実施形態のガラス破損検知装置が設置されたドアの一部を破断して示す正面図。
【図3】図2のA−A線断面図。
【図4】同実施形態のガラス破損検知装置の電気的構成を概略的に示すブロック図。
【図5】同実施形態のガラス破損検知装置の電気信号の入出力特性を示すタイムチャート。
【図6】同実施形態のガラス破損検知装置の電気的特性を示すグラフ。
【図7】他の実施形態のガラス破損検知装置の設置状態を概略的に示す斜視図。
【図8】(a)〜(c)は、他の実施形態の電極の設置状態を模式的に示す図。
【図9】他の実施形態のガラス破損検知装置の設置状態を概略的に示す正面図。
【符号の説明】
【0047】
1…ドア、2…ウインドウガラス、5…インナーパネル、10…ガラス破損検知装置、11…断線検知用パターン、12,12a〜12c…導電パターン、13a〜13d…ガラス側電極、14a〜14d…検知側電極、15…検知回路、21…発振手段としての発振回路、24…出力手段としての検波器、C1…第1コンデンサ機能部、C2…第2コンデンサ機能部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
破損検知対象となるガラスの面上に離間して設けられた複数のガラス側電極と、
該ガラス面に敷設されて前記複数のガラス側電極間を導通するとともに、該ガラスの破損時に断線する導電パターンと、
各ガラス側電極に対して予め設定された距離を離間してそれぞれ配置されることにより、該ガラス側電極と共にそれぞれコンデンサ機能部を構成する複数の検知側電極と、
それら検知側電極のうちの一つに接続された発振手段と、
該発振手段が接続された検知側電極とは異なる他の検知側電極に接続され、該他の検知側電極からの入力波形に基づく出力信号を出力する出力手段とを備えることを特徴とするガラス破損検知装置。
【請求項2】
前記ガラス側電極及び前記検知側電極のうちの一方は、他方に比較して大面積となるように構成されていることを特徴とする請求項1に記載のガラス破損検知装置。
【請求項3】
前記ガラスはスライド移動することにより開閉自在な可動ガラスであり、
前記大面積で構成された側の電極は、該ガラスの位置が変化しても、対向する電極との対向面積が同一となるべくガラスの移動方向に沿って延設されていることを特徴とする請求項2に記載のガラス破損検知装置。
【請求項4】
前記ガラスは車両のドアに配設されるウインドウガラスであり、
前記各ガラス側電極及び前記導電パターンは、該ウインドウガラスにおいて全閉状態にあってもドア内から露出しない部位に設けられていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のガラス破損検知装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−249522(P2008−249522A)
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−91834(P2007−91834)
【出願日】平成19年3月30日(2007.3.30)
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)
【Fターム(参考)】