説明

ガラス飛散防止用粘着シートおよびガラス飛散防止用粘着積層シート

【課題】印刷を施した後に保護フィルムを積層しても白化が生じにくく、長期間保管してもシミ状斑点が発生しにくく、しかもインキ飛びの発生を抑制できるガラス飛散防止用粘着シートを提供する。
【解決手段】本発明のガラス飛散防止用粘着シート10は、基材11と、基材11の一方の面に設けられた耐溶剤層12と、基材11の他方の面に設けられた粘着剤層13とを備え、基材11は、粘着剤層13側に配置されたポリエチレンテレフタレートフィルム11aと、耐溶剤層12側に配置された易接着層11bとを有し、耐溶剤層12は、セラック樹脂を主成分とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス板が破損した際のガラスの飛散を防止するガラス飛散防止用粘着シートおよびガラス飛散防止用粘着積層シートに関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置等の画像表示装置のディスプレイには、内部の部品を保護する目的で、最表側にガラス板等の前面板が設けられている。その前面板には、衝撃が加わってガラスが破損した際のガラスの飛散を防止するためのガラス飛散防止用粘着シートを貼り付けることがある。
ガラス飛散防止用粘着シートとしては、ポリエチレンテレフタレートフィルムと、該ポリエチレンテレフタレートフィルムの片面に設けられた粘着剤層とを有するものが知られている(特許文献1参照)。
ところで、前面板に貼り付けられるガラス飛散防止用粘着シートには、画像表示装置の電極や光源等を隠すために、ポリエチレンテレフタレートフィルムの粘着剤層とは反対側の面に黒枠の印刷を施すことがある。そのような印刷を施す場合には、ポリエチレンテレフタレートフィルムの粘着剤層とは反対側の面に、印刷インキの密着性を向上させるための易接着層を設けることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−237394号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
通常、易接着層に黒枠の印刷を施した後には、傷付き防止のために、易接着層の黒枠が印刷された面に、保護フィルムを積層する。ところが、従来のガラス飛散防止用粘着シートにおいては、保護フィルムを積層した後に白化することがあった。
また、従来のガラス飛散防止用粘着シートを長期間使用せずに保管しておくと、シートの表面にシミ状の斑点が発生することがあった。その斑点部分は可視光を乱反射させて画像の視認性を低下させるため、ガラス飛散防止用粘着シートにおいてはシミ状斑点の発生が防止されていることが求められる。
さらに、易接着層に黒枠を印刷する際に、微小なインキ滴が飛び散り、黒枠の内側にもインキが付着する、インキ飛びという現象により歩留まりが低くなることもあった。
本発明は、印刷を施した後に保護フィルムを積層しても白化が生じにくく、長期間保管してもシミ状斑点が発生しにくく、しかもインキ飛びの発生を抑制できるガラス飛散防止用粘着シートおよびガラス飛散防止用粘着積層シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らが上記の問題が生じる原因について調べた結果、易接着層に印刷を施した後に保護フィルムを貼り合せた際に白化が生じるのは、乾燥が不充分である場合に残ったインキ中の溶剤が保護フィルムによって揮発せず、易接着層に浸透して易接着層の一部を溶解させるためであることを見出した。
また、長期間保管した際にシミ状斑点が発生するのは、ポリエチレンテレフタレートフィルムに含まれる可塑剤がガラス飛散防止用粘着シートの表面に移行し、析出するためであることを見出した。
これらの知見に基づき、さらに検討した結果、以下のガラス飛散防止用粘着シートおよびガラス飛散防止用粘着積層シートを発明した。
【0006】
本発明は、以下の構成を有する。
[1]基材と、該基材の一方の面に設けられた耐溶剤層と、前記基材の他方の面に設けられた粘着剤層とを備え、前記基材は、粘着剤層側に配置されたポリエチレンテレフタレートフィルムと、耐溶剤層側に配置された易接着層とを有し、前記耐溶剤層は、セラック樹脂を主成分とすることを特徴とするガラス飛散防止用粘着シート。
[2]耐溶剤層が帯電防止剤を含有する[1]に記載のガラス飛散防止用粘着シート。
[3]耐溶剤層の露出面に印刷層が設けられている[1]または[2]に記載のガラス飛散防止用粘着シート。
[4][1]〜[3]のいずれか1項に記載のガラス飛散防止用粘着シートと、該ガラス飛散防止用粘着シートの粘着剤層に貼り合わされた剥離シートとを備えることを特徴とするガラス飛散防止用粘着積層シート。
【発明の効果】
【0007】
本発明のガラス飛散防止用粘着シートおよびガラス飛散防止用粘着積層シートは、易接着層に印刷を施した後に保護フィルムを積層しても白化が生じにくく、また、長期間保管してもシミ状斑点が発生しにくい。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明のガラス飛散防止用粘着積層シートおよびガラス飛散防止用粘着シートの一実施形態を示す断面図である。
【図2】図1に示すガラス飛散防止用粘着積層シートおよびガラス飛散防止用粘着シートにおける印刷パターンを示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明のガラス飛散防止用粘着積層シートおよびガラス飛散防止用粘着シートの一実施形態について説明する。
図1に、本実施形態のガラス飛散防止用粘着積層シートの断面図を示す。本実施形態のガラス飛散防止用粘着積層シート1は、ガラス飛散防止用粘着シート10と、剥離シート20とを備える。
【0010】
(ガラス飛散防止用粘着シート)
ガラス飛散防止用粘着シート10は、基材11と、基材11の一方の面に設けられた耐溶剤層12と、基材11の他方の面に設けられた粘着剤層13とを備える。
【0011】
[基材]
本実施形態では、基材11は、粘着剤層13側に配置されたポリエチレンテレフタレートフィルム11aと、ポリエチレンテレフタレートフィルム11aの耐溶剤層12側に配置された易接着層11bとを有する。
基材11は透明である。具体的には、JIS K7105に従って測定した際の全光線透過率が80%以上である。好ましくは、基材11の全光線透過率は90%以上である。
ポリエチレンテレフタレートフィルム11aの厚さは10〜250μmであることが好ましく、20〜150μmであることがより好ましい。ポリエチレンテレフタレートフィルム11aの厚さが前記下限値以上であれば、充分な引張強度を確保でき、前記上限値以下であれば、容易に薄型化できる。
【0012】
易接着層11bは、ポリエチレンテレフタレートフィルム11aと耐溶剤層12との接着性を向上させるものであり、易接着性樹脂を主成分として含む。
易接着性樹脂は、後述するインキと反応して結合する官能基を有する樹脂である。易接着性樹脂としては、ポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、オレフィン系樹脂、フッ素系樹脂、塩化ビニル系樹脂、スチレン系樹脂、エポキシ系樹脂、シリコーン系樹脂などを使用することができる。易接着性樹脂は1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
上記易接着性樹脂の中でも、ポリエチレンテレフタレートフィルム11aと屈折率の近く、基材11の透明性を高くできることから、ポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂が好ましい。
【0013】
易接着層11bには、さらに接着性を向上させるために、架橋剤を併用することができる。架橋剤としては、メラミン系樹脂、エポキシ系樹脂、オキサゾリン系樹脂が挙げられる。
また、易接着層11bには、基材11の滑り性および耐ブロッキング性向上のために、無機粒子、有機粒子を含有することもできる。無機粒子としては、シリカ、アルミナ、カオリン、タルク、マイカ、炭酸カルシウム、チタンなどを用いることができる。有機粒子としては、球状架橋ポリアクリル、球状架橋ポリスチレン、球状シリコーンなどを用いることができる。
【0014】
易接着層11bの厚さは、20〜500nmであることが好ましく、50〜150nmであることがより好ましい。易接着層11bの厚さが、前記下限値以上であれば、耐溶剤層12との接着性をより高くでき、前記上限値以下であれば、透明性をより高くできる上に干渉縞の発生を防止できる。
【0015】
[耐溶剤層]
耐溶剤層12は、セラック樹脂を主成分とし、耐溶剤性を有する層である。ここで、耐溶剤性とは、有機溶剤の気体が充満した密閉容器の中に試験片を暴露させても白化が起きないことを意味する。具体的に「耐溶剤性を有する」とは、1リットルの密閉容器中に、基材11の耐溶剤層12が設けられた面と反対面にポリエチレンテレフタレート系保護フィルム(「SAT116」、サンエー化研(株)社製)を貼合した5cm角の大きさの試験片とメチルエチルケトン(MEK)2mlを含ませた脱脂綿を一緒に入れ、温度23℃、相対湿度50%の環境下に3日間放置した際に、試験片のヘイズ値が1%以下のことである。ヘイズ値は、温度23℃、相対湿度50%の環境下に3日間放置した試験片から保護フィルムを剥離した後、JIS K7105−1981に従って、ヘイズメーター(「NDH2000」、日本電色工業(株)社製)を用いて測定した。
セラック樹脂はラックカイガラムシと呼ばれる昆虫が分泌する樹脂状物質を熱溶融法やアルカリ抽出法、溶剤抽出法などで抽出精製して得られる天然樹脂であり、耐溶剤性に優れた樹脂である。セラック樹脂の中でも、不純物を除去した精製セラック、化学的に色素を漂白した漂白セラック、吸着剤を使用して物理的に色素を取り除いた脱色セラックは、基材の透明性を維持できるために好ましい。
耐溶剤層12におけるセラック樹脂の含有割合は、耐溶剤層12全体を100質量%とした際の50%質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましく、100質量%であることが特に好ましい。セラック樹脂の含有割合が前記下限値以上であれば、耐溶剤性がより高くなる。
【0016】
耐溶剤層12には、セラック樹脂以外に、他の樹脂を含有してもよい。他の樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、アクリル樹脂、ポリアミド樹脂などが挙げられる。
特にアミド基の一部をメトキシメチル化しアルコール可溶に変性したポリアミド樹脂は、セラック樹脂と同様、ケトン、エステル、石油系等の溶剤には耐性を有するので好ましい。
また、耐溶剤層12には、各種添加剤を含有してもよい。添加剤としては、例えば、酸化防止剤、耐熱安定剤、紫外線吸収剤、有機粒子、無機粒子、顔料、染料、帯電防止剤、核剤、カップリング剤等が挙げられる。
【0017】
また、耐溶剤層12に帯電防止剤を含有させて、帯電防止性を付与することもできる。耐溶剤層12が帯電防止性を有すると、ガラス飛散防止用粘着積層シート1を巻取りにした場合、その巻取りから連続的に繰り出した際の剥離帯電を抑制することができる。そのため、後述のように、耐溶剤層12に印刷を施す際に、帯電による所定以外の場所へのインキの飛散を防止できる。
帯電防止剤としては、アルカリ金属塩、金属粒子、金属酸化物粒子、導電性高分子、界面活性剤が挙げられ、これらの中でも、耐溶剤層12の印刷性を損なわないことから、アルカリ金属塩、金属粒子、金属酸化物粒子、導電性高分子が好ましく、アルカリ金属塩がより好ましい。
アルカリ金属塩としては、例えば、Li、Na、Kから選ばれるカチオンとCl、Br、I、BF4、PF6、SCN、ClO4、CF3SO3、(CF3SO22、(CF3SO23から選ばれるアニオンとから構成される金属塩などが挙げられる。これらの中でもイオン伝導性に優れ、帯電防止性に優れる点で、リチウム塩が好ましい。
金属粒子としては、銀粒子、銅粒子、金粒子、アルミニウム粒子などが挙げられる。
金属酸化物粒子としては、酸化亜鉛粒子、酸化錫粒子、酸化インジウム粒子などが挙げられる。
導電性高分子としては、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェンなどが挙げられる。
帯電防止剤の含有量は、耐溶剤層12全体を100質量%とした際の0〜10質量%であることが好ましく、1〜5質量%であることがより好ましい。帯電防止剤の含有量が前記下限値以上であれば、充分な帯電防止性を得ることができ、前記上限値以下であれば、透明性の低下を防止できる。
【0018】
耐溶剤層12の厚さは0.1〜3.0μmであることが好ましく、0.5〜2.0μmであることがより好ましい。耐溶剤層12の厚さが前記下限値以上であれば、充分な耐溶剤性を確保でき、前記上限値以下であれば、容易に耐溶剤層12を形成でき、透明性の低下も防止できる。
【0019】
本実施形態では、図2に示すように、耐溶剤層12の露出面12aに、枠印刷が施されている。ここで、枠印刷とは、露出面12aに枠状の印刷パターンの印刷層12bを設ける印刷のことである。
印刷に使用されるインキは、樹脂成分と着色剤と溶剤とを含むものであり、具体的には、1液蒸発乾燥型インキ、2液硬化型インキ、紫外線硬化型インキが挙げられる。これらの中でも、1液蒸発乾燥型インキが好ましい。ここで、1液蒸発乾燥型インキは、熱可塑性の樹脂と着色剤と溶剤とを含有するインキであって、溶剤を揮発させることによって印刷層を形成するものである。1液蒸発乾燥型インキを用いた印刷では、インキに含まれる樹脂の架橋を必要とせず、容易に連続印刷することができ、印刷の生産性を高めることができる。
【0020】
1液蒸発乾燥型インキに含まれる熱可塑性樹脂としては、アクリル樹脂、ポリスチレン、ポリウレタン、アクリル−スチレン系共重合体、アクリル−ウレタン系共重合体、アクリル−エポキシ系共重合体、ポリウレタンアクリレート、ポリエポキシアクリレート、ポリエステルアクリレート、ポリエーテルアクリレート、ポリブタジエンアクリレート、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、エポキシ樹脂が挙げられる。これら樹脂成分は1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
着色剤としては、例えば、カーボンブラック、銅粉、銅合金粉(ブロンズ粉)、アルミニウム粉、炭酸カルシウム、カオリン、白色雲母などの無機顔料、アゾ系顔料などの有機顔料、各種染料などが挙げられる。
溶剤としては,例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の炭化水素系溶剤、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸−2−メトキシエチル、酢酸−2−エトキシエチル等のエステル系溶剤、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール等のアルコール系溶剤、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、イソホロン等のケトン系溶剤、ジエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶剤、水などが挙げられる。上記溶剤の中でも、耐溶剤層12を侵しにくいことから、ケトン系溶剤、エーテル系溶剤が好ましい。
溶剤は1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0021】
2液硬化型インキは、熱硬化性樹脂と架橋剤と着色剤と溶剤とを含有するインキである。熱硬化性樹脂としては、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、フェノキシ樹脂、ウレタン樹脂などが挙げられる。架橋剤としては、ポリイソシアネート、エポキシ樹脂などが挙げられる。溶剤は、1液蒸発乾燥型インキに含まれるものと同様のものを使用することができる。
紫外線硬化型インキは、紫外線硬化型の樹脂と光重合開始剤と着色剤と溶剤とを含有するインキである。紫外線硬化型樹脂としては、ウレタンアクリレート、エポキシアクリレート、ポリエステルアクリレートなどが挙げられる。光重合開始剤としては、アセトフェノン、ベンゾフェノン等が挙げられる。溶剤は、1液蒸発乾燥型インキに含まれるものと同様のものを使用することができる。
【0022】
耐溶剤層12の印刷が施された面には、インキの乾燥後に、保護フィルムを積層してもよい。保護フィルムとしては、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、エチレン−酢酸ビニル共重合体フィルム、これらの積層フィルム等を使用することができる。
【0023】
[粘着剤層]
粘着剤層13は透明な粘着剤によって構成される。
粘着剤層13を構成する粘着剤としては、天然ゴム系粘着剤、合成ゴム系粘着剤、アクリル系粘着剤、ウレタン系粘着剤、シリコーン系粘着剤などが使用される。また、溶剤系、エマルジョン系、水系のいずれであってもよい。
粘着剤には、必要に応じて他の助剤が添加されてもよい。他の助剤としては、増粘剤、pH調整剤、タッキファイヤ、架橋剤、粘着性微粒子、消泡剤、防腐防黴剤、顔料、無機充填剤、安定剤、濡れ剤、湿潤剤などが挙げられる。
【0024】
(剥離シート)
剥離シート20は、粘着剤層13の基材11と反対側の面に設けられ、少なくとも片面に離型性を有するシートである。ガラス飛散防止用粘着シート10をガラス板に貼り付ける際には、剥離シート20は、粘着剤層13から剥離される。
剥離シート20としては、剥離シート用基材と該剥離シート用基材の片面に設けられた剥離剤層とを有する剥離性積層シート、あるいは、ポリエチレンフィルムやポリプロピレンフィルム等のポリオレフィンフィルムが挙げられる。
剥離性積層シートにおける剥離シート用基材としては、紙類、高分子フィルムが使用される。
剥離剤層を構成する剥離剤としては、例えば、汎用の付加型もしくは縮合型のシリコーン系剥離剤や長鎖アルキル基含有化合物が用いられる。特に、反応性が高い付加型シリコーン系剥離剤が好ましく用いられる。
シリコーン系剥離剤としては、具体的には、東レ・ダウコーニング社製のBY24−4527、SD−7220等や、信越化学工業(株)製のKS−3600、KS−774、X62−2600などが挙げられる。また、シリコーン系剥離剤中にSiO単位と(CHSiO1/2単位あるいはCH=CH(CH)SiO1/2単位を有する有機珪素化合物であるシリコーンレジンを含有することが好ましい。シリコーンレジンの具体例としては、東レ・ダウコーニング社製のBY24−843、SD−7292、SHR−1404等や、信越化学工業(株)製のKS−3800、X92−183等が挙げられる。
【0025】
(製造方法)
上記ガラス飛散防止用粘着積層シート1は、例えば、以下の製造例で製造される。
本製造例では、まず、基材11の易接着層11bに、セラック樹脂と溶剤とを含む耐溶剤層形成用塗工液を塗布し、乾燥して、耐溶剤層12を形成する。
耐溶剤層形成用塗工液の塗工方法としては、例えば、リバースコート法、グラビアコート法、ロッドコート法、バーコート法、ダイコート法、スプレーコート法などが適用される。これらの中でも、塗工精度の点から、リバースコート法、特に小径グラビアロールを用いたリバースコート法が好ましい。
耐溶剤層形成用塗工液に含まれる溶剤としては、イソプロピルアルコール、エタノール、メタノール等を用いることができる。
また、剥離シート20の剥離剤層の露出面に粘着剤層形成用塗工液を塗工して、粘着剤層13を形成して、粘着シートAを得る。その際の粘着剤層形成用塗工液の塗工方法としては、易接着層形成用塗工液の塗工方法と同様の方法を適用でき、溶剤としては、インキに含まれる溶剤と同様のものを使用できる。
次いで、基材11の易接着層11bが設けられていないポリエチレンテレフタレートフィルム11aの面に、粘着シートAを粘着剤層13により貼り付ける。
その後、耐溶剤層12の露出面12aに枠印刷を施し、乾燥させて、枠状の印刷パターンからなる印刷層12bを設ける。印刷方法としては、オフセット印刷法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法などを適用することができる。
これにより、ガラス飛散防止用粘着シート10を得る。
【0026】
また、上記製造方法以外の方法でガラス飛散防止用粘着積層シート1を製造してもよい。例えば、基材11の易接着層11bが設けられていないポリエチレンテレフタレートフィルム11aの面に粘着剤層形成用塗工液を塗工して粘着剤層13を形成し、その粘着剤層13に剥離シート20を貼り合わせてもよい。
【0027】
(作用効果)
上記ガラス飛散防止用粘着積層シート1では、印刷が施されているものの、セラック樹脂を含む耐溶剤層12によって易接着層11bへのインキ中の溶剤の浸透が防止されているため、易接着層11bの溶解による白化が防止されている。特に、大気圧での沸点が150℃以上で乾燥後にも残留しやすい溶剤(例えば、イソホロン等)がインキに含まれても、或いは、印刷後の乾燥が不充分のまま保護フィルムが積層されても、耐溶剤層12によって易接着層11bへの溶剤の浸透が防止されている。
また、長期間保管した際に、ポリエチレンテレフタレートフィルムに含まれる可塑剤が易接着層11b側に移行し、易接着層11bを通過しても、耐溶剤層12で遮蔽でき、耐溶剤層12の表面に可塑剤が析出することを防止できる。そのため、シミ状の斑点の発生を防止できる。
また、上記ガラス飛散防止用粘着積層シート1では、易接着層11bを備えているため、耐溶剤層12が充分な接着力で接着されており、実用に適したものとなる。なお、易接着層11bを備えない場合には、インキの溶剤の浸透による白化は起こらないが、ポリエチレンテレフタレートフィルム11aに対する耐溶剤層12の接着性が低下するため、実用に適さないものとなる。
さらに、セラック樹脂を主成分とする耐溶剤層12は印刷層12bに対して密着性を有するため、印刷層12bの剥離を防止できる。印刷層12bの耐溶剤層12に対する密着性は、印刷層12bが易接着層11bに接する場合の密着性に比べれば、高くない。しかし、印刷層12bはディスプレイの内部側に配置され、剥離しやすい環境にはないため、印刷層12bの耐溶剤層12に対する密着性は、実用上、充分である。
【0028】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されない。例えば、耐溶剤層12に施す印刷は枠印刷でなくてもよく、模様や文字等の印刷であってもよい。
【実施例】
【0029】
(実施例)
耐溶剤性樹脂として漂白セラック樹脂(「RU−03」、(株)岐阜セラツク製作所製)100質量部、リチウム塩系の帯電防止剤(サンコノールPEO−20R、三光化学工業製)0.5質量部を、イソプロピルアルコールを希釈溶媒として混合して、固形分濃度25質量%の耐溶剤層形成用塗工液を調製した。
次いで、両面に易接着層が形成された厚さ100μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(「コスモシャインA4300」、東洋紡績(株)製)の一方の面に、上記耐溶剤層形成用塗工液をリバースコート法により塗布、乾燥して、厚み1.0μmの耐溶剤層を形成して、耐溶剤層付き基材を得た。
攪拌機、温度計、還流冷却器、滴下装置、窒素導入管を備えた反応装置に、窒素ガスを封入後、溶媒である酢酸エチル及びアセトンを添加した。次いで、反応装置内にアクリル単量体であるブチルアクリレート65質量部、メチルアクリレート35質量部、アクリル酸2質量部、重合開始剤である2,2’−アゾイソブチロニトリル0.1質量部を添加し、攪拌しながら窒素ガス気流中、溶媒の還流温度で8時間重合した。反応終了後、トルエンを添加してアクリル重合体を得た。
次いで、このアクリル重合体を粘着剤主剤とし、該粘着剤の固形分100質量部に対して、硬化剤である1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサンを0.5質量部混合し、酢酸エチルを希釈溶媒として、固形分濃度45質量%の粘着剤層形成用塗工液を得た。
厚さ38μmの剥離シート(「E7002」、東洋紡績(株)製)の剥離剤層の露出面に上記粘着剤層形成用塗工液をリップコート法により塗工し、乾燥させて、厚み20μmの粘着剤層を形成した。その後、この粘着剤層に、上記耐溶剤層付き基材の耐溶剤層のない面を貼り合わせて、ガラス飛散防止用粘着シートを得た。
【0030】
(比較例)
基材として、易接着層を有さない厚さ100μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(「コスモシャインA4300」、東洋紡績(株)製)を用いた以外は実施例と同様にしてガラス飛散防止用粘着シートを得た。
【0031】
[耐溶剤性試験]
上記耐溶剤層付き基材の耐溶剤層が設けられた面と反対面(比較例の場合はいずれか一方の面)にPET系保護フィルム(「SAT116」、サンエー化研(株)製)を貼合し、これを5cm角の大きさに切り出して、試験片を作製した。
その試験片と、メチルエチルケトン(MEK)2mlを含ませた脱脂綿とを1リットルの密閉容器の内部に一緒に入れ、温度23℃、相対湿度50%の環境下に3日間放置させた。
その後、PET系保護フィルムを剥離した後、JIS K7105−1981に従い、ヘイズメーター(「NDH2000」、日本電色工業(株)社製)を用いてヘイズ値を測定した。
【0032】
[保存性試験]
上記耐溶剤層付き基材の耐溶剤層が設けられた面と反対面(比較例の場合はいずれか一方の面)にPET系保護フィルム(「SAT116」、サンエー化研(株)製)を貼合し、これを5cm角の大きさに切り出して、試験片を作製した。
その試験片を温度60℃、相対湿度90%の環境下に90日間放置させた。その後、PET系保護フィルムを剥離した後、試験片の表面におけるシミ状斑点の発生の有無を目視で調べた。
【0033】
[インキ飛び試験]
ガラス飛散防止用粘着シートの耐溶剤層表面に、黒色インキ(「SG700」、セイコーアドバンス社製)を用いて、大きさ40mm×50mm(枠幅:5mm、厚さ:5μm)の黒枠印刷(1000枚の連続印刷、印刷速度30m/分)した。その際の良品率を求めた。
【0034】
【表1】

【0035】
耐溶剤層を設けた実施例では、耐溶剤性が高いため、保護フィルムを積層しても白化が生じにくく、長期間保管してもシミ状斑点が発生しにくかった。さらに、印刷の際、インキ飛びの発生を抑制できた。
耐溶剤層を設けない比較例では、耐溶剤性が低いため、保護フィルムを積層した際に白化が生じやすく、長期間保管した際にシミ状斑点が発生しやすかった。さらに、印刷の際、インキ飛びの発生の抑制が不充分であった。
【符号の説明】
【0036】
1 ガラス飛散防止用粘着積層シート
10 ガラス飛散防止用粘着シート
11 基材
11a ポリエチレンテレフタレートフィルム
11b 易接着層
12 耐溶剤層
12a 露出面
12b 印刷層
13 粘着剤層
20 剥離シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、該基材の一方の面に設けられた耐溶剤層と、前記基材の他方の面に設けられた粘着剤層とを備え、
前記基材は、粘着剤層側に配置されたポリエチレンテレフタレートフィルムと、耐溶剤層側に配置された易接着層とを有し、
前記耐溶剤層は、セラック樹脂を主成分とすることを特徴とするガラス飛散防止用粘着シート。
【請求項2】
耐溶剤層が帯電防止剤を含有する請求項1に記載のガラス飛散防止用粘着シート。
【請求項3】
耐溶剤層の露出面に印刷層が設けられている請求項1または2に記載のガラス飛散防止用粘着シート。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載のガラス飛散防止用粘着シートと、該ガラス飛散防止用粘着シートの粘着剤層に貼り合わされた剥離シートとを備えることを特徴とするガラス飛散防止用粘着積層シート。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−102292(P2012−102292A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−254040(P2010−254040)
【出願日】平成22年11月12日(2010.11.12)
【出願人】(309033127)新タック化成株式会社 (11)
【出願人】(000122298)王子製紙株式会社 (2,055)
【Fターム(参考)】