説明

ガン細胞に特異的な抗体を見出すための方法およびそれによって見出される抗体

正常な細胞に対してではなく、ガン細胞に結合する抗体が、負の選択プロセスを使用して同定される。本発明の方法は、ガン細胞により免疫された被験体から抗血清を集める工程;該抗血清をヒト赤血球と接触させる工程;および該抗血清の、該ヒト赤血球に結合しない部分を回収する工程を包含する。好ましい実施形態では、本発明の方法は、前記抗血清を、ヒト白血球に結合する抗体と接触させる工程;および、該抗血清の、該ヒト白血球に結合しない部分を回収する工程をさらに包含する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願)
本出願は米国仮特許出願第60/586,811号(2004年7月10日出願)の優先権を主張する(その開示はその全体が本明細書中に援用される)。
【0002】
(技術分野)
本開示は、望ましい特徴を有する抗体を多様な抗体の集団から選択するための方法に関連する。より具体的には、本開示は、ガン細胞には結合するが、ヒトの赤血球にも、白血球にも、正常な組織細胞にも結合しない抗体を同定するための方法を提供する。
【背景技術】
【0003】
(関連技術の背景)
モノクローナル抗体治療の有望性が実現され始めようとしている。効力が、腫瘍細胞の表面抗原(例えば、B細胞イディオタイプ、悪性B細胞上のCD20、白血病性芽細胞上のCD33、乳ガン上のHER2/neuなど)を標的とする抗体を使用する臨床研究において認められている。Trastuzumab(Herceptin、抗HER2/neu、Genentech)は、HER2/neuオンコプロテインの過剰発現を伴う一部の転移性乳ガン患者において目的の応答をもたらしている。これらの興奮させる結果は、抗体に基づく新しいガン治療戦略を開発するために既存のアプローチのさらなる精緻化のための基礎を提供している。転移性結腸ガンの処置におけるErbitux(Cetuximab、C225、抗EGFr、ImClone)、ならびに、結腸ガン、腎細胞ガンおよび他の充実性腫瘍の処置におけるBevacizumab(Avastin、抗vEGFr、Genentech)を含めた化学療法との併用または非併用でのモノクローナル抗体の最近の臨床結果は、モノクローナル抗体がガン患者のために有益であり得ることを強く実証している。現在、多数の臨床試験が、前立腺ガンの処置のためにモノクローナル抗体を用いて行われている。
【0004】
ハイブリドーマ技術、ファージディスプレーまたは他の技術(例えば、リボソームディスプレーおよび酵母ディスプレーなど)によるマウスモノクローナル抗体の作製が基礎科学および臨床科学の両方のために特に重要である。Herceptin、ErbituxおよびBevacizumabはもともと、抗原により免疫されたマウスからスクリーニングされた。
【0005】
多くの研究が、細胞全体による免疫、続いて、ガン細胞の表面分子に結合する抗体のスクリーニングによって、ガン細胞に対する抗体を見い出すために行われている。このアプローチの理論は非常に魅力的ではあるが、数年の努力の後でも、治療抗体はほとんど見出されていなかった。このアプローチは、いくつかの理由から困難であることが判明している。1つの理由は、ガン細胞は多くの共通する表面抗原を正常な細胞と共有するので、ガン細胞が免疫原として使用されたとしても、マウスにおける免疫応答が腫瘍特異的でないことである。従って、腫瘍特異的な抗体についてスクリーニングすることは非常に困難かつ/または無益であることが判明し得る。
【0006】
ガン細胞が共通の抗原を正常な細胞と共有することは一般的な現象である。従来、負の選択および正の選択が、腫瘍特異的な抗体についてスクリーニングするために使用されている。腫瘍特異的な抗体についてスクリーニングすることを容易にするために、負の選択は、正の選択を妨害する、正常な細胞およびガン細胞の両方に共通する抗原の問題に取り組むために使用される一般的な方法である。数多くの刊行物では、正常な組織細胞が、ガン細胞および正常な細胞の両方にある共通の抗原に結合する望ましくない抗体をサブトラクションするために使用されている。非特許文献1〜3を参照のこと。しかしながら、これらの刊行物のほとんどは1つのタイプの正常な組織細胞または1対の正常な細胞株をサブトラクションのために使用しているだけである。
【0007】
以前の試みはまた、サブトラクティブ免疫と呼ばれる代わりの方法によってこの問題を解決するために行われていた。集中的な研究が、過去15年間にわたってサブトラクティブ免疫を用いて行われている。サブトラクティブ免疫は細胞全体でのパンニング工程の代わりに免疫工程に焦点を合わせている。サブトラクティブ免疫では、所望の抗原に対するモノクローナル抗体の生成を高めることができる異なった免疫寛容化アプローチが利用される。サブトラクティブ免疫は、目的とする抗原に構造的または機能的に関連し得る免疫優性抗原またはそうでない場合には望ましくない抗原に対して宿主動物を寛容化することに基づいている。宿主動物の寛容化は3つの方法(ハイゾーン寛容化、新生児寛容化または薬物誘導寛容化)のうちの1つによって達成することができる。寛容化された動物には、その後、所望の抗原が接種され、その後の免疫応答によって生じた抗体が所望の反応性についてスクリーニングされる。しかしながら、最近の研究では、新生児「寛容化」は、免疫学的意味での寛容性ではなく、免疫偏向を誘導することが示唆された。新生児は免疫特権を有しないが、免疫様式に依存して、T2応答またはT1応答を生じさせる。シクロホスファミドを用いた化学的免疫抑制は最も効果的なサブトラクティブ免疫技術であった。当業者が理解するように、正常細胞による免疫、その後のシクロホスファミド処置は、正常細胞の抗原との反応性を有する増殖中の免疫細胞のすべてを殺すことになる。しかしながら、このレジメンではまた、B細胞の成熟および分化のために要求されるヘルパーT細胞のすべてが殺される。従って、このレジメンの後に、腫瘍抗原に対して特異的な抗体を誘発させるためのガン細胞免疫が続く場合、IgMイソタイプの低親和性抗体のみが生じるだけである。
【非特許文献1】Zijlstraら、Biochem Biophys Res Commun.2003(4月11日)、303(3):733〜44
【非特許文献2】Hooperら、Oncogene.2003(3月27日)、22(12):1783〜94
【非特許文献3】Foss、Semin Oncol.2002(1月)、29(3 Suppl 7):5〜11
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ガン細胞の表面分子に結合する抗体を同定するために抗体ライブラリーをスクリーニングするための改善された方法を有することは好都合である。ガン罹患個体を処置するための改善された方法もまた望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(要旨)
正常な細胞に対してではなく、ガン細胞に結合する抗体が、負の選択プロセスを使用して同定される。ガン細胞を用いた動物の免疫によって生じる抗体のライブラリーが、赤血球および/または白血球、ならびに、必要に応じて、他の正常な細胞(すなわち、非ガン性細胞)と接触させられる。これらの血球および/または正常な細胞は、そのような細胞に結合する抗体とともに除かれ、これにより、ガン細胞には結合するが、(負の選択プロセスの除去効果に起因して)正常な細胞にはほとんど結合を示さないかまたは全く結合を示さない抗体を同定するためにガン細胞に対してパンニングすることができる抗体のサブライブラリーが残る。このような抗体は治療目的および/または診断目的のために使用することができる。
【0010】
従って、1つの実施形態において、本発明の方法は、ガン細胞により免疫された被験体から抗血清を集める工程;該抗血清をヒトの血球(赤血球および/または白血球)および必要に応じて正常な組織細胞と接触させる工程;ならびに、該抗血清のうちの、該ヒト赤血球に結合しない部分を回収する工程を含む。別の実施形態において、ガン細胞により免疫された被験体からの抗血清が集められ;ヒトの血球(赤血球および/または白血球)および必要に応じて正常な組織細胞に結合する抗体が該抗血清から除かれ;そして、前記ガン細胞に結合する抗体が該抗血清から除かれる。さらに別の実施形態において、本発明の方法は、ガン細胞により免疫された被験体から抗血清を集める工程;ヒト赤血球に結合する抗体、および、少なくとも1つの他のタイプの非ガン性細胞に結合する抗体を該抗血清から除く工程;ならびに、該ガン細胞に結合する抗体を該抗血清から回収する工程を含む。
【0011】
特に有用な実施形態において、これらの方法は、ファージディスプレーされた抗体ライブラリーを、ガン細胞により免疫された被験体から集められた細胞を使用して作製する工程;ヒト赤血球に結合するライブラリーメンバーを除いてサブライブラリーを作製する工程;および、該ガン細胞に結合する抗体を呈示するメンバーを該サブライブラリーから回収する工程を含む。
【0012】
別の実施形態において、本開示は、以下のいずれかを含む、前立腺ガン細胞に結合する抗体に関連する:
【0013】
【化7−1】

【0014】
【化7−2】

他の実施形態において、本開示は、配列番号1〜16からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、前立腺ガン細胞に結合する抗体に関連する。
【0015】
前記抗体のいずれかをコードする単離された核酸、そのような単離された核酸を含有する発現ベクター、および、そのような発現ベクターによりトランスフェクションされた宿主細胞もまた意図される。
【0016】
さらに別の実施形態において、本開示は、ガン細胞をハプテン(例えば、ジニトロフェニルなど)と接触させる工程;ファージディスプレーされた抗体ライブラリーを、該ガン細胞により免疫された被験体から集められた細胞を使用して作製する工程;ヒト赤血球に結合するライブラリーメンバーを除いてサブライブラリーを作製する工程;および、該ガン細胞に結合する抗体を呈示するメンバーを該サブライブラリーから回収する工程を含む方法に関する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本明細書中に記載される主題のより完全な理解のために、添付されている線図を考慮して、下記の詳細な説明を参照すべきである。
【0018】
(好ましい実施形態の詳細な説明)
厳しい負の選択が、腫瘍特異的な抗体についてスクリーニングするために本開示に従って使用される。本開示による厳しい負の選択戦略には、細胞全体でのパンニング時におけるヒト血球および必要に応じて正常組織細胞による多段階のサブトラクションが含まれる。本発明の方法では、正常なヒト細胞(特に、血球)に結合する選択された抗体の数が著しく低下する。これらの方法は、細胞全体でのパンニング法による改善された抗体多様性を示し、ガンの診断剤および治療剤のための腫瘍特異的な抗体を選択するための方法を提供する。治療目的のために、本明細書中に記載される方法に従って同定された抗体は、正常な血球に対する低下した副作用を有するようである。この特徴により、ガン治療のための抗体の安全性プロフィールが改善されるはずである。
【0019】
本明細書中で使用される場合、用語「抗体」とは、選択された標的に結合することができる、完全な抗体または抗体フラグメントをいう。Fv、scFv、Fab’およびF(ab’)2、モノクローナル抗体およびポリクローナル抗体、操作された抗体(キメラ抗体、CDRグラフト化抗体およびヒト化抗体、完全なヒト抗体、ならびに、人為的に選択された抗体が挙げられる)、ならびに、ファージディスプレー技術または代わりの技術を使用して作製される合成または半合成の抗体が含まれる。小さいフラグメント(例えば、FvおよびscFvなど)は、その小さいサイズ、および、その結果としての優れた組織分布によって、診断適用および治療適用のために有利な性質を有する。
【0020】
本発明の抗体は、抗体ライブラリーをスクリーニングすることによって同定される。抗体ライブラリーを作製するための様々な技術が当業者の範囲内である。RaderおよびBarbas、Phage Display,A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、N.Y.(2000);米国特許第6,291,161号(Lernerら)ならびに同時係属中の米国特許出願公開第20040072164A1号および同第20040101886A1号を参照のこと(それらの開示は本参照によりその全体が本明細書中に援用される)。抗体は、例えば、免疫剤および所望される場合にはアジュバントの1回または複数回の注射によって被験体において惹起させることができる。免疫剤には、任意のタイプのガン細胞またはそのフラグメントが含まれ得る。代表的には、免疫剤および/またはアジュバントは複数回の皮下注射または腹腔内注射によって被験体に注射される。好適なアジュバントとしては、ガン細胞ワクチンに関連して使用されているアジュバント、例えば、非メチル化CpGモチーフおよびカルメットゲラン杆菌(BCG)などが挙げられるが、これらに限定されない。免疫プロトコルが、過度な実験を用いることなく当業者によって選択され得る。
【0021】
任意のタイプのガン細胞を、本発明の方法に従って被験体を免疫するために使用することができる。好適なタイプのガン細胞としては、造血系悪性疾患、メラノーマ、乳ガン、卵巣ガン、前立腺ガン、結腸ガン、頭頸部ガン、肺ガン、腎臓ガン、胃ガン、膵臓ガン、肝臓ガン、膀胱ガンおよび脳のガンが挙げられるが、これらに限定されない。ガン細胞は様々な供給源から得ることができる。例えば、ガン細胞の一次サンプルを外科的技法または生検によって患者から直接に得ることができる。ガン細胞はまた、National Development and Research Institutes,Inc.(「NDRI」)(New York、NY)から入手することができる。様々なタイプのガン細胞がまた、American Type Culture Collection(Manassas、VA)(「ATCC」)または他の寄託機関(例えば、National Cancer Instituteなど)に寄託されており、そのような機関から入手可能である。ガン細胞のフラグメント(例えば、細胞膜またはミトコンドリアなど)が免疫剤として使用される場合、当業者の範囲に含まれる様々な技術を、ガン細胞を破壊し、免疫における使用のための好適な成分を単離するために用いることができる。
【0022】
いくつかの実施形態において、ガン細胞上のエピトープに対する抗体応答の強化が、ハプテン(例えば、ジニトロフェニル(DNP)など)による修飾によって達成される。DNPは、ガン細胞を、免疫系によってより容易に認識されるようにする非常に免疫原性のハプテンである。DNPは、ハプテンの立体配置を有する芳香族化合物(ニトロ基で二置換されたベンゼン環)である。ハプテンは、抗体に結合することができるが、それ自身では抗体応答を誘発することができず、しかし、キャリアタンパク質に連結されたときには抗体応答を誘発する抗原性決定基である。DNP修飾された自己ガン細胞ワクチンは、遅延型過敏性、前炎症性サイトカイン(例えば、IFN−γなど)の放出、ならびに、CD4およびCD8の両方のT細胞サブセットの増幅によって特徴づけられる堅固な免疫応答を誘発することが示されている。低密度抗原のDNP修飾はB細胞を免疫原部位に優先的に引き寄せ、DNP修飾の抗原に対する応答におけるB細胞の認識および増幅を可能にする。免疫原へのB細胞移動およびその後の増幅のプロセスは炎症促進性(proinflammatroy)サイトカインの放出によってさらに助けられ得る。DNP修飾を、当業者の範囲に含まれる様々な技術を使用して、例えば、Berdら、J Clin Oncol 22:403(2004);およびSojkaら、Cancer Immunol Immunother 1:200(2002)に記載される技術などを使用して達成することができる。
【0023】
一旦免疫応答が被験体において誘発されると、抗体を選択プロセスのために集めることができる。抗体を産生または含有する組織からの細胞が、最後の免疫が行われてから約3日後〜5日後に被験体から集められる。好適な組織としては、血液、脾臓、リンパ節および骨髄が挙げられる。
【0024】
一旦細胞が集められると、RNAが、当業者に知られている技術を使用してその細胞から単離され、コンビナトリアル抗体ライブラリーが調製される。一般に、コンビナトリアル抗体ライブラリーを調製するための技術は、抗体の単離されたRNAを使用して、抗体またはその一部分(例えば、軽鎖および/または重鎖など)をコードする標的配列を増幅することを含む。従って、例えば、天然では多様である抗体mRNAのサンプルを用いて出発して、第1鎖cDNAを、テンプレートを提供するために作製することができる。その場合、従来のPCRまたは他の増幅技術を、ライブラリーを作製するために用いることができる。いくつかの実施形態では、抗体Fabフラグメント(IgG重鎖フラグメントに複合体化されたκ軽鎖またはλ軽鎖(Fd))を発現するファージライブラリーが、米国特許出願第10/251,085号(その開示は本参照によりその全体が本明細書中に組み込まれる)に記載される方法を使用してプラスミドベクターにおいて構築される。
【0025】
ファージディスプレーライブラリーは、その後、ガン細胞に対する抗体の存在についてアッセイされ得る。好ましくは、抗体の結合特異性が、インビトロ結合アッセイによって、例えば、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)および/または蛍光活性化細胞選別(FACS)などによって決定される。そのような技術およびアッセイがこの分野では知られている。抗体の結合親和性を、例えば、MunsonおよびPollard(Anal.Biochem.、107:220(1980))のスキャッチャード分析によって決定され得る。
【0026】
本明細書中に記載される方法によれば、ガン細胞に対する正の選択を行った後、ヒト血球(赤血球または白血球または両者のいずれか)、および、必要に応じて、正常な(すなわち、非ガン性の)組織細胞が、ライブラリーのスクリーニングの前に厳しいサブトラクションを行う際の吸収剤として使用される。サブトラクションプロセスにおいて使用される適切なヒト正常組織細胞としては、肝臓、肺、心臓、腎臓、腸、胃、膀胱、脾臓、膵臓、骨髄、脳、胸腺、前立腺、卵巣、精巣および皮膚などのような組織から単離された内皮細胞、上皮細胞、平滑筋細胞および他の細胞が挙げられる。適切な組織は、例えば、正常なドナーから、または、後期段階の胎児から、または、これらの組織から樹立された細胞株から得ることができる。
【0027】
サブトラクションは、抗体のライブラリーを正常な細胞と接触させ、その後、正常な細胞を、それに結合した何らかの抗体と一緒に除くことによって行うことができる。細胞の除去を、当業者の範囲に含まれる任意の技術(例えば、遠心分離など)を使用して達成することができる。未結合の抗体を含有する上清が保持される。なぜならこれは、上清が、正常な細胞に対してではなく、ガン細胞に結合する抗体のサブライブラリーを含有する部分であるからである。正常な細胞に結合する抗体のすべてを確実に除くことを助けるために、複数回のサブトラクションが行われる。複数回のサブトラクションを、同じタイプまたは異なるタイプの細胞を使用して行うことができる。特に有用な実施形態において、赤血球を使用する少なくとも3回のサブトラクションが行われる。1つの実施形態において、サブトラクションが赤血球(異なる細胞型(例えば、A型、B型など)を用いて3回)および白血球(1回)の両方により行われる。他の実施形態において、複数回のサブトラクションが、少なくとも2つのタイプの非ガン性細胞(すなわち、少なくとも1つのタイプの血球および少なくとも1つの他のタイプの正常な組織細胞)を使用して行われる。好都合なことに、正常な組織は、免疫のために使用されたガン細胞と同じタイプの組織に由来し得る。例えば、被験体が膵臓ガン細胞により免疫されたならば、正常な(すなわち、非ガン性の)膵臓組織細胞が、サブトラクションを行うために使用される。
【0028】
負の選択を行う際には、赤血球または他の吸収剤細胞に対する抗体ファージの比率が、過度な実験を伴うことなく当業者によって選択され得る。いくつかの実施形態において、赤血球1個あたり700個〜1000個のファージを使用することができる。
【0029】
十分な数のライブラリーメンバーを提供するために、サブライブラリーは、各回のサブトラクションの間において、そして/または、ガン細胞に結合する抗体についてのスクリーニングの前に増幅することができる。増幅のための技術は当業者の範囲内である。
【0030】
負の選択プロセスの後、組換えライブラリーに由来する抗体を、標的特異性に基づいて抗体を単離するために、ガン細胞またはガン細胞に由来するポリペプチドを使用して選択することができる。上記で記されたように、ガン細胞に結合する抗体を選択するための適切な技術は当業者の範囲内である。
【0031】
ハイブリドーマ法もまた、所望の特徴を有する抗体を同定するために使用することができる。そのような技術は当業者の範囲内である。ハイブリドーマ法では、マウス、ウサギ、ラット、ハムスターまたは他の適切な宿主動物が代表的には、ガン細胞に特異的に結合する抗体を産生するかまたは産生し得るリンパ球を誘発するために、(同時係属中の国際特許出願第PCT/US2005/024261号(発明の名称:「Antibodies Against Cancer Produced Using Masked Cancer Cells As Immunogen」、これはExpress Mailラベル番号EL983568278USで2005年7月8日に出願された)(その開示はその全体が本明細書中に組み込まれる)に記載されるようにマスキングされた)ガン細胞により免疫される。あるいは、リンパ球をインビトロで免疫することができる。その後、リンパ球は、好適な融合剤(例えば、ポリエチレングリコールなど)を使用して不死化細胞株と融合されて、ハイブリドーマ細胞が形成される(Goding、Monoclonal Antibodies:Principles and Practice、Academic Press(1986)、pp.59〜103;Kozbor、J.Immunol.、133:3001(1984);Brodeurら、Monoclonal Antibody Production Techniques and Applications、Marcel Dekker,Inc.、New York(1987)、pp.51〜63を参照のこと、これらの開示は本参照により本明細書中に援用される)。ハイブリドーマ細胞は、融合していない不死化細胞の増殖または生存を阻害する1つまたは複数の物質を好ましくは含有する適切な培養培地において培養される。その後、ハイブリドーマ細胞が培養されている培養培地を、当業者の範囲に含まれる技術(例えば、FACS分析など)を使用して、ガン細胞に対するモノクローナル抗体の存在についてアッセイすることができ、また、本開示の方法に従って負の選択に供してもよい。所望のハイブリドーマ細胞が同定された後、クローンを限界希釈手順によってサブクローン化し、そして標準的な方法によって増殖させ得る。あるいは、ハイブリドーマ細胞を哺乳動物において腹水としてインビボで増殖させ得る。サブクローンによって分泌されたモノクローナル抗体は、従来の免疫グロブリン精製手順によって培養培地または腹水から単離または精製される。
【0032】
ガン細胞に結合するが、正常な細胞に対する結合をほとんどまたは全く示さないモノクローナル抗体を、当業者の範囲に含まれる組換えDNA法によって作製することができる。モノクローナル抗体をコードするDNAを、従来の手順を使用して、(例えば、マウス抗体の重鎖および軽鎖をコードする遺伝子に特異的に結合することができるオリゴヌクレオチドプローブを使用することによって)容易に単離および配列決定することができる。(抗体を同定するために用いられた特定の選択方法に依存して)ハイブリドーマ細胞またはファージがそのようなDNAの好ましい供給源として役立ち得る。一旦単離されると、DNAを発現ベクターに入れることができ、その後、発現ベクターは、組換え宿主細胞におけるモノクローナル抗体の合成を得るために、宿主細胞(例えば、そうでない場合には免疫グロブリンタンパク質を産生しない、サルCOS細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、あるいは、NSO細胞または他のミエローマ細胞など)にトランスフェクションされる。DNAはまた、例えば、ヒト重鎖定常ドメインおよび軽鎖定常ドメインについてのコード配列を相同的なマウス配列の代わりに置換することによって、または、非免疫グロブリンポリペプチドについてのコード配列のすべてまたは一部を免疫グロブリンのコード配列に共有結合的に連結することによって改変することができる。
【0033】
さらなる実施形態では、ガン細胞において特有に発現するタンパク質を、本開示による抗体を用いて、当業者に周知の方法によって同定するための方法が提供される。1つの方法において、Fab抗原またはscFv抗原が免疫沈降および質量分析によって同定される。具体的には、これらの抗体についての抗原を同定するための1つのそのような方法では、scFvが、細胞表面がビオチン化されたガン細胞のミクロソーム画分から調製された溶解産物から抗原を免疫沈降させるために使用される。具体的には、ガン細胞がPBS(pH8.0)における0.5mg/mlのスルホ−NHS−LC−ビオチンの溶液により30秒間標識される。PBSにより洗浄して未反応のビオチンを除いた後、細胞を窒素キャビテーションによって破壊し、ミクロソーム画分を示差的遠心分離によって単離する。ミクロソーム画分をNP40溶解緩衝液に再懸濁し、正常なマウス血清およびプロテインAセファロースにより徹底的に予備クリアランスする。抗原を、ラット抗HAアガロースビーズに結合させたHAタグ化scFv抗体により免疫沈降させる。免疫沈降後、抗原をSDS−PAGEによって分離し、ストレプトアビジン−アルカリホスファターゼ(AP)を使用するウエスタンブロットによって、または、クーマシーG−250染色によって検出する。ガン細胞に結合しない抗体を陰性対照として使用する。抗原のバンドをクーマシー染色ゲルから切り出し、質量分析(MS)によって同定する。免疫沈降した抗原はまた、マトリックス支援レーザー脱離イオン化質量分析法(MALDI−MS)またはマイクロキャピラリー逆相HPLCナノエレクトロスプレータンデム質量分析(μLC/MS/MS)によって同定することができる。同定された抗原は、その後、当業者の範囲に含まれる技術を使用してそれに対するさらなる抗体を誘発させるための免疫原として使用され得る。
【0034】
本開示に従って、ガン細胞には結合するが、正常な細胞に対する結合をほとんどまたは全く示さない本発明の抗体にはさらに、ヒト化抗体またはヒト抗体が含まれ得る。非ヒト(例えば、マウス)抗体のヒト化形態は、非ヒト免疫グロブリンに由来する最小限の配列を含有するキメラな免疫グロブリン、その免疫グロブリン鎖またはフラグメント(例えば、抗体のFv、Fab、Fab’、F(ab’)または他の抗原結合性部分配列など)である。ヒト化抗体には、レシピエントの相補性決定領域(CDR)に由来する残基が、所望の特異性、親和性および能力を有する非ヒト種(例えば、マウス、ラットまたはウサギなど)のCDR(ドナー抗体)に由来する残基によって置換されている、ヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)が含まれる。いくつかの場合には、ヒト免疫グロブリンのFvフレームワーク残基が、対応する非ヒト残基によって置換される。ヒト化抗体はまた、レシピエント抗体あるいは移入されたCDR配列またはフレームワーク配列のいずれにおいても見出されない残基を含む場合がある。一般に、ヒト化抗体は、少なくとも1つ(代表的には2つ)の可変ドメインの実質的にすべてを含み、ここで、CDR領域のすべてまたは実質的にすべてが1つまたは複数の非ヒト免疫グロブリンのCDR領域に対応し、そして、FR領域のすべてまたは実質的にすべてがヒト免疫グロブリンのコンセンサス配列のFR領域である。ヒト化抗体はまた、最適には、免疫グロブリンの定常領域(Fc)の少なくとも一部、代表的にはヒト免疫グロブリンの定常領域の少なくとも一部を含む(Jonesら、Nature,321:522〜525(1986);Riechmannら、Nature,332:323〜329(1988);およびPresta、Curr.Op.Struct.Biol.、2:593〜596(1992))。
【0035】
非ヒト抗体をヒト化するための方法が当該分野で周知である。一般に、ヒト化抗体は、1個または複数個のアミノ酸残基がヒト以外の供給源からヒト化抗体に導入されている。これらの非ヒトアミノ酸残基は、代表的には「ドナー」の可変ドメインから得られるので、「ドナー」残基と呼ばれることが多い。ヒト化は本質的には、齧歯類のCDRまたはCDR配列でヒト抗体の対応する配列を置換することによって、Winterおよび共同研究者(Jonesら、Nature、321:522〜525(1986);Riechmannら、Nature、332:323〜327(1988);Verhoeyenら、Science、239:1534〜1536(1988))の方法に従って実施され得る。従って、そのような「ヒト化」抗体は、実質的にインタクトではないヒト可変ドメインが非ヒト種からの対応する配列によって置換されているキメラな抗体である(米国特許第4,816,567号)。実際、ヒト化抗体は代表的には、すべてまたは一部のCDR残基、および、可能であれば、一部のFR残基が、齧歯類抗体において類似した部位に由来する残基によって置換されたヒト抗体である。
【0036】
本発明の抗体は一価の抗体であってもよい。一価の抗体を調製するための様々な方法が当該分野で周知である。例えば、1つの方法は、免疫グロブリンの軽鎖および改変された重鎖の組換え発現を含む。重鎖は、重鎖の架橋を妨げるように、一般にはFc領域内の任意のところで短縮化される。あるいは、関係したシステイン残基が、架橋を妨げるように、別のアミノ酸残基で置換されるか、または、欠失される。インビトロ方法もまた、一価の抗体を調製するために適切である。抗体のフラグメント(特に、Fabフラグメント)を作製するための抗体の消化を、当該分野で公知の慣用的な方法を使用して達成することができる。
【0037】
他の実施形態では、二重特異性抗体が意図される。二重特異性抗体は、少なくとも2つの異なる抗原に対する結合特異性を有するモノクローナル抗体(好ましくは、ヒト抗体またはヒト化抗体)である。この場合において、結合特異性の一方はガン細胞に対してであり、もう一方は任意の他の抗原に対するものであり、好ましくは、細胞表面のタンパク質または受容体または受容体サブユニットに対するものである。
【0038】
二重特異性抗体を作製するための方法が当業者の範囲内である。伝統的に、二重特異性抗体の組換え産生は、2つの重鎖が異なる特異性を有する2つの免疫グロブリン重鎖/軽鎖対の同時発現に基づいている(MilsteinおよびCuello、Nature、305:537〜539(1983))。所望の結合特異性を有する抗体可変ドメイン(抗体−抗原結合部位)を免疫グロブリンの定常ドメイン配列に融合することができる。融合は好ましくは、ヒンジ領域、CH2領域およびCH3領域の少なくとも一部を含む免疫グロブリン重鎖定常ドメインの内部である。免疫グロブリン重鎖融合体、および、所望されるならば、免疫グロブリン軽鎖をコードするDNAが別々の発現ベクターに挿入され、適切な宿主生物に同時トランスフェクションされる。二重特異性抗体を作製するための例示的な現在知られている方法のさらなる詳細については、例えば、Sureshら、Methods in Enzymology、121:210(1986);国際特許出願公開WO96/27011;Brennanら、Science、229:81(1985);Shalabyら、J.Exy.Med.、175:217〜225(1992);Kostelnyら、J.Immunol.、148(5):1547〜1553(1992);Hollingerら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、90:6444〜6448(1993);Gruberら、J.Immunol.、152:5368(1994);およびTuttら、J.Immunol.、147:60(1991)を参照のこと。
【0039】
本発明の抗体はガン患者に治療剤として投与することができる。本発明の抗体は、ヒトの血球または正常な組織細胞に対する結合をホトンドまたは全く示さないので、低下した副作用が、他の抗体治療と比較して観察され得る。
【0040】
本発明の抗体はまた、ガン性細胞をインビボで検出するために利用することができる。これは、抗体を標識し、標識された抗体を被験体に投与し、その後、被験体を画像化することによって達成される。本開示に従った診断的画像化のために有用な標識の例は、放射性標識(例えば、131I、111In、123I、99mTc、32P、125I、H、14Cおよび188Rnなど)、蛍光性標識(例えば、フルオレセインおよびローダミンなど)、核磁気共鳴活性な標識(陽電子放射断層撮影法(「PET」)走査装置によって検出可能な陽電子放射同位体)、化学発光剤(例えば、ルシフェリンなど)および酵素マーカー(例えば、ペルオキシダーゼまたはホスファターゼなど)である。短距離放射線放出剤(例えば、短距離検出器プローブ(例えば、経直腸プローブなど)によって検出可能な同位体など)もまた用いることができる。これらの同位体および経直腸検出器プローブは、組み合わせて使用されたとき、前立腺窩再発および骨盤結節性疾患を検出することにおいて特に有用である。この抗体は、当該分野で公知の技術を使用してそのような試薬により標識され得る。抗体の放射性標識化に関連する技術については、例えば、WenselおよびMeares、Radioimmunoimaging and Radioimmunotherapy、Elsevier、N.Y.(1983)を参照のこと(これは本明細書に参考として援用される)。また、D.Colcherら、「Use of Monoclonal Antibodies as Radiopharmaceuticals for the Localization of Human Carcinoma Xenografts in Athymic Mice」、Meth.Enzymol.、121:802〜816(1986)も参照のこと(これは本明細書に参考として援用される)。
【0041】
本開示による放射性標識された抗体は、インビトロ診断試験のために使用することができる。抗体、その結合性部分、プローブまたはリガンドの比活性は、放射能標識の半減期、同位体純度、および、標識が生物学的因子にどのように組み込まれるかに依存する。免疫アッセイ試験では、比活性が高いほど、一般に感度が良好である。抗体を放射性同位体で標識するための様々な手順は、当該分野で一般に公知である。
【0042】
放射性標識された抗体を患者に投与することができ、ここで、放射性標識された抗体は、その抗体が反応する抗原を有する腫瘍に局在し、そして、放射性標識された抗体が、公知の技術を使用して、例えば、ガンマカメラまたは放射断層撮影法を使用する放射性核走査などを使用してインビボで検出または「画像化」される。例えば、A.R.Bradwellら、「Developments in Antibody Imaging」、Monoclonal Antibodies for Cancer Detection and Therapy、R.W.Baldwin他(編)、pp.65〜85(Academic Press、1985)を参照のこと(これは本明細書に参考として援用される)。あるいは、陽電子放射長軸断面断層撮影走査装置(positron emission transaxial tomgraphy scanner)(例えば、Brookhaven国立研究所に設置された指定のPet VIなど)を使用することができ、この場合、放射性標識は陽電子(例えば、11C、18F、15Oおよび13N)を放射する。
【0043】
発蛍光団および発色団で標識された生物学的因子を、当該分野で公知の標準的な部分から調製することができる。抗体および他のタンパク質は、約310nmまでの波長を有する光を吸収するので、蛍光性部分は、310nmを超える波長で、好ましくは、400nmを超える波長で実質的な吸収を有するように選択されるべきである。様々な適切な蛍光体および発色団が、Stryer、Science、162:526(1968);およびBrand,L.ら、Annual Review of Biochemistry、41:843〜868(1972)によって記載される(これらは本明細書に参考として援用される)。抗体を、従来の手順によって、例えば、米国特許第3,940,475号、同第4,289,747号および同第4,376,110号(これらは本明細書に参考として援用される)に開示される手順などによって蛍光性の発色団基で標識することができる。
【0044】
本発明の抗体はまた、ガン性細胞をインビボで殺すか、または除去するために利用することができる。これは、細胞傷害性薬物に結合した抗体を、そのような処置を必要とする被験体に投与することを含む。この抗体はガン細胞を認識するので、抗体が結合するそのような細胞はどれも破壊される。厳しいサブトラクション技術が使用されるので、破壊される正常な細胞の量は最小限である。
【0045】
本開示の抗体は、治療的薬物、放射線放出化合物、植物起源、真菌起源または細菌起源の分子、生物学的タンパク質、および、それらの混合物を含めて、様々な細胞傷害性薬物を送達するために使用することができる。細胞傷害性薬物は、細胞内で作用する細胞傷害性薬物であり得、例えば、短距離高エネルギーα線放射体をはじめとする短距離放射線放射体などが可能である。酵素活性な毒素およびそのフラグメントが、例えば、ジフテリア毒素Aフラグメント、ジフテリア毒素の非結合性の活性なフラグメント、外毒素A(緑膿菌由来)、リシンA鎖、アブリンA鎖、モデクシンA鎖、α−サクリン、シナアブラギリ(Aleurites fordii)のある種のタンパク質、ディアンチン(Dianthin)のある種のタンパク質、ヨウシュウヤマゴボウ(Phytolacca americana)のタンパク質(PAP、PAPIIおよびPAP−S)、ニガウリ(Morodica charantia)の阻害剤、クルシン(curcin)、クロチン(crotin)、サボンソウ(Saponaria officinalis)の阻害剤、ゲロニン(gelonin)、ミトギリン(mitogillin)、レストリクトシン(restrictocin)、フェノマイシン(phenomycin)およびエノマイシン(enomycin)によって例示される。免疫毒素の酵素活性なポリペプチドを調製するための手順が国際特許出願公開WO84/03508および同WO85/03508に記載される(これらは本明細書に参考として援用される)。ある種の細胞傷害性部分は、例えば、アドリアマイシン、クロラムブシル、ダウノマイシン、メトトレキサート、ネオカルジノスタチンおよび白金に由来する。
【0046】
抗体を細胞傷害性薬剤と結合体化するための手順は、以前から記載されている。
【0047】
あるいは、抗体を、腫瘍部位において局在化したとき、細胞数個分の直径の殺傷をもたらす高エネルギー放射線放射体、例えば、放射性同位体(例えば、131I、γ線放射体など)などに結合することができる。例えば、S.E.Order、「Analysis,Results,and Future Prospective of the Therapeutic Use of Radiolabeled Antibody in Cancer Therapy」、Monoclonal Antibodies for Cancer Detection and Therapy、R.W.Baldwin他(編)、pp.303〜316(Academic Press、1985)を参照のこと(これは本明細書に参考として援用される)。他の好適な放射性同位体としては、α線放射体(例えば、212Bi、213Biおよび211Atなど)およびβ線放射体(例えば、186Reおよび90Yなど)が挙げられる。放射線治療は、前立腺ガンが比較的放射線感受性の腫瘍であるので、前立腺ガンに関連して特に効果的であることが期待される。
【0048】
抗体が、ガン細胞を殺すために、または除去するために単独で使用される場合、そのような殺傷または除去は、内因性の宿主免疫機能(例えば、補体媒介または抗体媒介による細胞の細胞毒性など)を開始させることによって行うことができる。
【0049】
抗体投与経路は、既知の方法に従って、例えば、静脈内経路、腹腔内経路、脳内経路、筋肉内経路、皮下経路、眼内経路、動脈内経路、クモ膜下経路、吸入経路または病巣内経路による注射または注入に従って、あるいは、持続放出システムによってである。抗体は好ましくは、注入またはボーラス注射によって連続的に投与される。抗体を局所様式または全身様式で投与することができる。
【0050】
本発明の抗体は、医薬的に許容され得るキャリアとの混合物で調製することができる。本適用の化合物を処方および投与するための技術が「Remington’s Pharmaceutical Sciences」(Mack Publishing Co.、Easton、PA、最新版)に見出され得る。このような治療用組成物は、好ましくは液体または(凍結乾燥された)粉末エアロゾルとして、静脈内に、あるいは、鼻または肺を介して投与することができる。この組成物はまた、所望に応じて非経口的または皮下に投与することができる。全身投与されるとき、この治療用組成物は、無菌で発熱物質を含有せず、かつ、pH、等張性および安定性について十分に考慮して、非経口投与に許容され得る溶液であるべきである。これらの条件は当業者に公知である。
【0051】
使用に適切な医薬組成物には、本発明の抗体の1つまたは複数が、それらの意図された目的を達成するために効果的な量で含有される組成物が含まれる。より具体的には、治療に効果的な量は、疾患の症状を防止するか、または軽減するか、または改善するために、あるいは、処置されている被験体の生存を延ばすために効果的な抗体の量を意味する。治療に効果的な量の決定は、特に、本明細書中に提供される詳細な開示に照らせば、十分に当業者の能力の範囲内である。治療に効果的な投薬量を、様々なインビトロ方法およびインビボ方法を使用することによって決定することができる。
【0052】
さらなる実施形態において、本明細書中前記に記載されるガン結合性抗体の重鎖可変ドメインおよび/または軽鎖可変ドメインをコードするインサートを含む組換えDNAが作製される。用語DNAには、コードする一本鎖DNA、前記コードDNAおよびそれに対する相補的DNAからなる二本鎖DNA、または、これらの相補的な(一本鎖)DNAそのものが含まれる。
【0053】
さらに、本明細書中に開示されるガン結合性抗体の重鎖可変ドメインおよび/または軽鎖可変ドメインをコードするDNAは、重鎖可変ドメインおよび/または軽鎖可変ドメインをコードする真のDNA配列あるいはその変異体を有する酵素的または化学的に合成されたDNAであり得る。真のDNAの変異体は、1つまたは複数のアミノ酸が欠失されたか、あるいは、1つまたは複数の他のアミノ酸と交換された、上記抗体の重鎖可変ドメインおよび/または軽鎖可変ドメインをコードするDNAである。好ましくは、前記改変は、ヒト化および発現最適化の適用においては抗体の重鎖可変ドメインおよび/または軽鎖可変ドメインのCDRの外側である。変異体DNAという用語はまた、1つまたは複数のヌクレオチドが他のヌクレオチドによって置換され、その新しいコドンが同じアミノ酸をコードするサイレントな変異体を包含する。変異体配列という用語にはまた、縮重配列が含まれる。縮重配列は、限定されない数のヌクレオチドが、最初にコードされたアミノ酸配列の変化を生じさせることなく他のヌクレオチドによって置換されているという点で、遺伝暗号の意味の範囲内で縮重している。そのような縮重配列は、その異なる制限部位、あるいは、重鎖のマウス可変ドメインおよび/または軽鎖のマウス可変ドメインの最適な発現を得るために特定の宿主(特に、大腸菌)によって好まれる特定のコドンの頻度、あるいはそのような制限部位と頻度の両者に起因して有用であり得る。
【0054】
変異(体)の用語は、当該分野で公知の方法に従って真のDNAのインビトロ変異誘発によって得られるDNA変異体を含むことが意図される。
【0055】
完全な四量体免疫グロブリン分子の組み立ておよびキメラ抗体の発現のために、重鎖可変ドメインおよび軽鎖可変ドメインをコードする組換えDNAインサートが、重鎖定常ドメインおよび軽鎖定常ドメインをコードする対応するDNAと融合され、その後、例えば、ハイブリッドベクターへの組み込みの後、適切な宿主細胞に移される。
【0056】
ヒトIGg重鎖定常ドメイン(例えば、γ1、γ2、γ3またはγ4、好ましくはγ1またはγ4)に融合された、本明細書中に開示される細胞株に対する抗体の重鎖マウス可変ドメインをコードするインサートを含む組換えDNAもまた提供される。ヒト定常ドメインのκまたはλ(好ましくはκ)に融合された、本明細書中に開示される細胞株に対する抗体の軽鎖マウス可変ドメインをコードするインサートを含む組換えDNAもまた提供される。
【0057】
別の実施形態は、重鎖可変ドメインおよび軽鎖可変ドメインがスペーサー基によって連結される組換えポリペプチドをコードする組換えDNAに関連し、この組換えDNAは、必要に応じて、宿主細胞における抗体のプロセシングを容易にするシグナル配列、あるいは、抗体の精製を容易にするペプチドおよび/または切断部位および/またはペプチドスペーサーおよび/またはエフェクター分子をコードするDNAを含むか、あるいはそのようなシグナル配列とDNAの両者を含む。
【0058】
エフェクター分子をコードするDNAは、診断適用または治療適用において有用なエフェクター分子をコードするDNAであることが意図される。従って、毒素または酵素(特に、プロドラッグの活性化を触媒することができる酵素)であるエフェクター分子が特に示される。そのようなエフェクター分子をコードするDNAは、天然に存在する酵素または毒素をコードするDNAまたはその変異体の配列を有し、当該分野で周知の方法によって調製され得る。
【実施例】
【0059】
当業者が、本明細書中に記載される組成物および方法をより良好に実施することができるように、下記の実施例が例示目的のために示される。
【0060】
(実施例1)
様々なガン細胞株により免疫されたマウスからの抗血清は、ヒト赤血球(RBC)と交差反応することが示された。7つの異なるガン細胞株を使用して、31匹のBalb/cマウスを免疫した(表1を参照のこと)。これらのマウスの免疫応答を4回の免疫後、元のガン細胞株に対して試験した。免疫前の事前採血血清および免疫後の事後採血血清を蛍光活性化細胞選別(FACS)によって元のガン細胞株に対して試験した。表1に示されるように、すべてのマウスが、注射されたガン細胞に対する非常に強い免疫応答を生じることが見出された。同じ抗ガン血清をヒトRBCに対して試験した場合、サンプルのすべてがヒトRBCと交差反応することが見出された。本研究では、ガン細胞およびヒト血球は細胞表面に共通の抗原をともに有するという事実に起因して、マウスは、ガン細胞免疫の後でヒトRBCに対する著しい量の抗体を生じることが見出された。従って、ガン細胞およびRBC細胞の両方における共通の抗原を標的とする抗体は、細胞全体でのパンニングによるガン治療抗体のスクリーニングを妨害し得る。
【0061】
【表1】

ガン細胞により免疫されたマウスからの抗血清を合計で3回にわたってRBCサブトラクションに供した。このサブトラクションの後での残留抗体は、RBCに対する結合活性を劇的に失っていたが、ガン細胞に対する結合活性は変化していなかった(図1を参照のこと)。このことは、ガン治療抗体のスクリーニングを妨害し得る、RBC細胞およびガン細胞の両方での共通の抗原に対する抗体の大きな集団が存在していたことを示している。従って、腫瘍非特異的な抗体をサブトラクションによって除くことができ、これは、細胞全体でのパンニング中に正常な細胞に結合する抗体のために生じた任意の環境である。(RBCに結合しなかった)サブトラクション後に残った抗体の大きな集団の細胞全体でのパンニングにより、腫瘍特異的な抗体の選択が可能となる。
【0062】
Balb/cマウスを腎細胞ガン(「RCC」)細胞株Caki−1により免疫した。Caki−1(ATCC、HTB−46)は明細胞腎臓ガン細胞株である。第1回目のRBCサブトラクションを行うために、各マウスから得られた500μlのそれぞれの事後採血血清(1:10希釈)を、穏やかに撹拌しながら、5×10個の正常なヒト赤血球A型と(100μlの1×PBS−1%BSAにおいて)4℃で1時間インキュベーションした。赤血球を微量遠心分離器において1800rpmで1分間遠心分離した。上清をFACS分析および次回のサブトラクションのために保存した。2回目および3回目のサブトラクションをこれと同じ様式で行った。FACS分析を、赤血球およびCaki−1腫瘍細胞を用いたそれぞれのサブトラクションからの血清に対して行った。比較のために、FACS分析を、サブトラクションを行わない事前採血血清および事後採血血清に対して行った。
【0063】
負の選択プロセスの後で残留するポリクローナル抗体は、ガン患者を処置する際の治療剤として使用することができる。
【0064】
(実施例2)
(厳しいRBCサブトラクションを用いたPC3細胞パンニング、および、用いないPC3細胞パンニング)
正常細胞(特に、ヒト血球)と交差反応する抗体の百分率を減少させるために、細胞全体でのパンニングを、厳しいRBC/正常細胞サブトラクションを用いて行った。細胞全体でのパンニングにおいて使用された正常細胞は前立腺上皮細胞のPrEC(Clonetics(San Diego、CA)から入手可能)であった。RBCサブトラクションを用いたパンニングから得られた最終的な抗体を、RBCサブトラクションを用いない類似したパンニングから得られた抗体と比較した。
【0065】
マウスを、PC3細胞(ATCC、CRL−1435)として知られている前立腺ガン細胞により免疫した。PC3細胞株を使用することにはいくつかの利点がある。第1に、PC3細胞株は腺ガン株であり、腺ガン(前立腺ガンの95%)をインビボで模倣するために使用することができる。第2に、この細胞株はホルモン非依存的であり、ホルモン不応性の前立腺ガン(「HRPC」)を有する疾患集団を模倣するために使用することができる。第3の利点は、PC3細胞が非常に攻撃的な腫瘍増殖表現型を有することである。この細胞株は齧歯類動物モデルにおいて転移性である。加えて、PC3細胞はまた、インビトロで非常に迅速に増殖し、細胞パンニング環境において操作が容易である。
【0066】
(ライブラリーDNAの作製)
総RNAをマウス脾臓サンプルから単離し、メッセンジャーRNAを、Oligotex RNA精製キット(QIAGEN Inc.、Valencia、CA)を使用して精製した。第1鎖cDNAを、SuperScript II RTase第1鎖cDNA合成キット(Invitrogen Corp.、Carlsbad、CA)を使用して合成した。第2鎖cDNA合成、ならびに、IgG1およびIgG2aの重鎖フラグメントおよびκ軽鎖フラグメントの増幅を、米国特許出願第10/251,085号(その開示は本参照によりその全体が本明細書中に組み込まれる)に記載される方法に従って行った。増幅フラグメントを精製し、適切な制限エンドヌクレアーゼにより消化し、IgG1κライブラリーについてはFab発現ベクターのPAX243mG1Kに挿入し、IgG2aκライブラリーについてはPAX243mG2aKに挿入した。
【0067】
(形質転換のために使用された大腸菌株)
ライブラリー構築を、TOP10F’細胞および/またはXL−1 blue細胞をエレクトロポレーションすることによって行った。ライブラリーDNAを、Hi−Speed maxi調製キット(QIAGEN Inc.)を使用して大腸菌細胞の一晩培養物から精製した。
【0068】
(ファージ増幅のIPTG誘導)
パンニングのために、ライブラリーDNAをER2738細胞にエレクトロポレーションし、ファージ産生をVCSM13ヘルパーファージおよび1mMのIPTGの添加により30℃で一晩誘導した。
【0069】
細胞全体でのパンニングを、所望の特徴を有する抗体を選択するために使用する。パンニングプロセスが図2に概略的にまとめられている。発現ELISAを行って、Fab発現クローンを同定する。一旦Fab発現クローンが同定されたら、細胞ELISAを行って、PC3細胞と結合するクローンを同定する。
【0070】
正の選択のためのPC3細胞でのパンニングの後、異なる負の選択プロセスを使用する2つの実験を行った。最初に、サブトラクションパンニングを、前立腺上皮細胞だけを用いて行った。このパンニングから得られたクローンのすべてが赤血球陽性クローンであった。2回目のパンニングおよび3回目のパンニングから得られた産生クローンを、抗体発現ELISA、RBC−FACS、PC3細胞ELISAおよびPrEC細胞ELISAを用いてスクリーニングした。PC3(+)/PrEC(−)の表現型を有する前立腺上皮細胞パンニング由来のクローンをDNA配列決定のために選んだ。
【0071】
第2の実験では、前立腺上皮細胞および赤血球の両方を用いたサブトラクションパンニングを行った。赤血球サブトラクションパンニングを3工程で行った。最初に、1回目の結果から得られた合計で3.8×1012個のファージを、細胞1個あたり700個のファージの比率で、5.4×10個のAB型赤血球と混合し、4℃で2時間インキュベーションした。その後、非結合のファージを5.4×10個のA型赤血球と4℃で2時間インキュベーションした。最後に、非結合のファージを5.4×10個のB型赤血球と4℃でさらに2時間インキュベーションした。この厳しい赤血球サブトラクションにより、ガン細胞および赤血球の両方に共通する抗原に結合する抗体の大部分が除かれる。2回目のパンニングおよび3回目のパンニングから得られた産生クローンを、抗体発現ELISA、RBC−FACS、PC3細胞ELISAおよびPrEC細胞ELISAを用いてスクリーニングした。細胞全体での組合せパンニング(すなわち、PC3細胞での正のパンニング、ならびに、前立腺上皮細胞および赤血球での負のパンニング)から得られ、PC3(+)/RBC(−)/PrEC(−)の表現型を有するクローンをDNA配列決定のために選んだ。PC3細胞ELISAデータはまた、PC3細胞FACSを使用して妥当であることが確認される。
【0072】
(インビトロでの抗体の確認)
細菌溶解産物由来の精製されたマウスFabを、抗Fabカラムを使用して得る。免疫組織化学(IHC)もまた行う。前立腺腫瘍アレイを使用して、腫瘍細胞に対するそれぞれのFabの結合パターンを評価する。正常組織アレイを使用して、正常な細胞に対するそれぞれのFabの結合を評価する。
【0073】
抗原シグナチャーのウエスタンブロット分析を下記のように行う:9個の細胞株からなるパネルに由来する総細胞溶解産物を非還元SDS−PAGEで泳動する。ローディングの順序および用いられた具体的な細胞株を下記の表2に示す。その後、それぞれのFabを、それぞれの細胞株において同定された抗原の分子量を決定するための一次抗体として使用する。線状エピトープを認識するそれぞれの特有のFabは、どの細胞株においても、異なった抗原結合パターンを呈示し、「抗原シグナチャー」をもたらす(図3を参照のこと)。線状エピトープを認識しないFabは抗原シグナチャーを呈示せず、しかし、依然として抗原を免疫沈降することができる。それぞれのパンニングに由来する抗原の数が抗原シグナチャーによって比較される。免疫沈降および質量分析での分析を抗原同定のために使用する。具体的には、それぞれのFabを、その抗原をPC3細胞膜調製物から免疫沈降させるために使用する。抗原のバンドを、ペプチド消化/マッピングによる抗原の質量分析での分析および同定のためにSDS−PAGEゲル(還元型)から切り出し、Harvard Microchemistry施設(Cambridge、MA)に送付する。
【0074】
【表2】

赤血球サブトラクションを用いない場合、3回の細胞全体でのパンニングの後の合計で1536個の産生クローンから、PC3ガン細胞に結合する21個のクローンが得られた。21個のクローンのすべてが赤血球と結合することが見出された。21個のクローンの配列は、L52−2群、E23群、11F9群およびE27群の4つの大きな群にまとめられた(図4Aおよび図4B)。11F9は、分子量が20Kdのタンパク質に結合する。各群におけるクローンの配列は1対のアミノ酸の違いを有するだけである。Fab L52−2およびFab E23は、PrEC細胞上ではなく、赤血球およびPC3細胞上で非常に発現するCD55に結合する。Fab E27は未知の抗原に結合する。これらの結果は、PC3細胞が、正の選択を妨害する、赤血球に対する著しい量の共通する抗原を発現することを示唆していた。
【0075】
赤血球サブトラクションを使用した場合、3回の細胞全体でのパンニング(R3)の後の合計で4416個の産生クローンから、PC3ガン細胞に結合する146個のクローンが得られた。146個のクローンのうち、24個は赤血球と結合しないことが見出された。これら24個のクローンを配列決定した。2回目のパンニングからの2つのクローンの添加により、合計で10個のクローンが得られ、これらは異なるFab配列を有していた(図4Aおよび図4B)。これらの最終的な10個のクローンはPC3ガン細胞に結合するが、ヒト赤血球には結合しない。これら10個のクローンのうち、5個はPrECに結合しない。赤血球サブトラクションを伴わない細胞全体でのパンニングからの抗体との比較において、厳しいサブトラクションは実際に、抗体の多様性を増大させ、かつ、PC3(+)/PrEC(−/+)/RBC(−)である望ましいプロフィールをもたらした。
【0076】
【表3】

様々な改変が、本明細書中に開示された実施形態に対して行われ得ることが理解される。例えば、当業者は理解するように、本明細書中に記載される具体的な配列は、抗体または抗体フラグメントの機能性に必ずしも悪影響を及ぼすことなくわずかに変化させることができる。例えば、抗体の配列における1個だけまたは複数個のアミノ酸の置換を、抗体またはフラグメントの機能性を破壊することなく頻繁に行うことができる。従って、本明細書中に記載される具体的な抗体に対する同一性の程度が70%よりも高い抗体は本開示の範囲内であることが理解されるべきである。特に有用な実施形態では、本明細書中に記載される具体的な抗体に対する同一性が約80%よりも高い抗体が意図される。他の有用な実施形態においては、本明細書中に記載される具体的な抗体に対する同一性が約90%よりも高い抗体が意図される。従って、上記の記載は、限定として解釈すべきではなく、単に好ましい実施形態の例示として解釈しなければならない。当業者は、本開示の範囲および精神に含まれる他の改変を想定する。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】図1は、ヒト赤血球によりサブトラクションされた抗ガン血清のFACS分析の結果を示す。
【図2】図2は、抗体ライブラリーのパンニング、正常な細胞に結合する抗体のサブトラクション、および、ガン性細胞に結合する抗体についてのスクリーニングに関与する工程を概略的に示す。
【図3】図3は、線状エピトープを用いたPC3抗体についての抗原シグナチャーを示す。
【図4A】図4Aは、図2のプロセスを使用して同定された抗体軽鎖のアミノ酸配列(配列番号1〜配列番号16)を示す。
【図4B】図4Bは、図2のプロセスを使用して同定された抗体重鎖のアミノ酸配列(配列番号17〜配列番号32)を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガン細胞により免疫された被験体から抗血清を集める工程;
該抗血清をヒト赤血球と接触させる工程;および
該抗血清の、該ヒト赤血球に結合しない部分を回収する工程
を包含する、方法。
【請求項2】
前記抗血清を、ヒト白血球に結合する抗体と接触させる工程;および、該抗血清の、該ヒト白血球に結合しない部分を回収する工程をさらに包含する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記抗血清を、ヒト非ガン性細胞に結合する抗体と接触させる工程;および、該抗血清の、該ヒト非ガン性細胞に結合しない部分を回収する工程をさらに包含する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
ガン細胞により免疫された被験体から抗血清を集める工程;
ヒト赤血球に結合する抗体を該抗血清から除く工程;および、
該ガン細胞に結合する抗体を該抗血清から回収する工程
を包含する、方法。
【請求項5】
ヒト白血球に結合する抗体を前記抗血清から除く工程をさらに包含する、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
ヒト非ガン性細胞に結合する抗体を前記抗血清から除く工程をさらに包含する、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
a)ガン細胞により免疫された被験体から抗血清を集める工程;
b)該抗血清から、
i)ヒト赤血球に結合する抗体、および
ii)内皮細胞、上皮細胞、平滑筋細胞、肝臓細胞、肺細胞、心臓細胞、腎臓細胞、腸細胞、胃細胞、膀胱細胞、脾臓細胞、膵臓細胞、骨髄細胞、脳細胞、胸腺細胞、前立腺細胞、卵巣細胞、精巣細胞および皮膚細胞からなる群から選択される少なくとも1つの他のタイプの非ガン性細胞に結合する抗体
を除く工程;ならびに
c)その後、該ガン細胞に結合する抗体を該抗血清から回収する工程
を包含する、方法。
【請求項8】
ヒト白血球に結合する抗体を前記抗血清から除く工程をさらに包含する、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
a)ガン細胞により免疫された被験体から抗血清を集める工程;
b)ヒト赤血球を該抗血清と混合する工程;
c)該ヒト赤血球およびそれに結合した抗体を混合物から除き、該抗血清の第1の部分を回収する工程;
d)ヒト赤血球を該抗血清の該第1の部分と混合する工程;
e)該ヒト赤血球およびそれに結合した抗体を混合物から除き、該抗血清の第2の部分を回収する工程;
f)ヒト赤血球を該抗血清の該第2の部分と混合する工程;
g)該ヒト赤血球およびそれに結合した抗体を混合物から除き、該抗血清の第3の部分を回収する工程;ならびに
h)該ガン細胞に結合する抗体を該抗血清の該第3の部分から回収する工程
を包含する、方法。
【請求項10】
i)ヒト白血球を前記抗血清の前記第3の部分と混合する工程;
j)該ヒト白血球およびそれに結合した抗体を混合物から除き、前記抗血清の第4の部分を回収する工程;ならびに
k)前記ガン細胞に結合する抗体を該抗血清の該第4の部分から回収する工程
をさらに包含する、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
a)ファージディスプレーされた抗体ライブラリーを、ガン細胞により免疫された被験体から集められた細胞を使用して作製する工程;
b)ヒト赤血球に結合するライブラリーメンバーを除いて、サブライブラリーを作製する工程;および
c)該ガン細胞に結合する抗体を呈示するメンバーを該サブライブラリーから回収する工程
を包含する、方法。
【請求項12】
ヒト白血球に結合するライブラリーメンバーを除く工程をさらに包含する、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
正常な組織細胞に結合するライブラリーメンバーを除く工程をさらに包含する、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
【化1】

からなる群から選択される軽鎖CDR1を含む、前立腺ガン細胞に結合する抗体。
【請求項15】
【化2】

からなる群から選択される軽鎖CDR2を含む、前立腺ガン細胞に結合する抗体。
【請求項16】
【化3】

からなる群から選択される軽鎖CDR3を含む、前立腺ガン細胞に結合する抗体。
【請求項17】
【化4】

からなる群から選択される重鎖CDR1を含む、前立腺ガン細胞に結合する抗体。
【請求項18】
【化5】

からなる群から選択される重鎖CDR2を含む、前立腺ガン細胞に結合する抗体。
【請求項19】
【化6】

からなる群から選択される重鎖CDR3を含む、前立腺ガン細胞に結合する抗体。
【請求項20】
配列番号1〜16からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、前立腺ガン細胞に結合する抗体。
【請求項21】
請求項14〜20のいずれかに記載される抗体をコードする、単離された核酸。
【請求項22】
請求項21に記載される単離された核酸を含む、発現ベクター。
【請求項23】
請求項22に記載される発現ベクターによりトランスフェクションされた宿主細胞。
【請求項24】
a)ガン細胞をハプテンと接触させる工程;
b)ファージディスプレーされた抗体ライブラリーを、該ガン細胞により免疫された被験体から集められた細胞を使用して作製する工程;
c)ヒト赤血球に結合するライブラリーメンバーを除いてサブライブラリーを作製する工程;および
d)該ガン細胞に結合する抗体を呈示するメンバーを該サブライブラリーから回収する工程
を包含する、方法。
【請求項25】
前記ハプテンがジニトロフェニルである、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
ヒト白血球に結合するライブラリーメンバーを除く工程をさらに包含する、請求項24に記載の方法。
【請求項27】
正常な組織細胞に結合するライブラリーメンバーを除く工程をさらに包含する、請求項24に記載の方法。
【請求項28】
配列番号4、配列番号20、配列番号33、配列番号44、配列番号57、配列番号71、配列番号83および配列番号96からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、Cdcp1に結合する抗体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【公表番号】特表2008−505645(P2008−505645A)
【公表日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−520533(P2007−520533)
【出願日】平成17年7月8日(2005.7.8)
【国際出願番号】PCT/US2005/024260
【国際公開番号】WO2006/017173
【国際公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【出願人】(503102674)アレクシオン ファーマシューティカルズ, インコーポレイテッド (51)
【Fターム(参考)】