説明

ガードケーブル

【課題】一定の間隔をあけて立設した支柱間に、同支柱の上下方向に間隔をあけて複数本ケーブルを架設して成るガードケーブルを提供する。
【解決手段】支柱3は、角形鋼管とされ、支柱3は側面が道路の延長方向に相対峙する配置とされ、地中へ予め埋設された鞘管5の中空部内へ抜き挿し可能に差し込まれて立設されており、支柱3の二側面の上部には、上端部を開口して略下方へ切り欠いたスリット6が上下方向に一回若しくは複数の屈曲点及び/又は変曲点を有する形状に設けられ、それぞれのスリットは一方の側面方向から見ると左右対称形状とされ、ケーブル2は、前記支柱3のスリット6を貫通させて支柱3間に架設され、支柱3内に挿入したスペーサー7により上下方向の間隔が保持されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、一定の間隔をあけて立設した支柱間に、同支柱の上下方向に間隔をあけて複数本のケーブルを架設して成るガードケーブルの技術分野に属し、更に云うと、車両衝突時に支柱を車両の進行方向へ効果的に倒して乗員の安全を確保するガードケーブルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、一定の間隔をあけて立設した支柱間に、同支柱の上下方向に間隔をあけて複数本にケーブルを架設して成る道路防護柵が、主に中央分離帯や路肩に設置されている。その目的は、進行方向を誤った車両が路外、対向車線または歩道などに逸脱するのを防ぐと共に、車両乗員へのダメージ及び車両の損傷を最小限にとどめて、車両の進行方向を正常な方向に復元させることである。
【0003】
こうした、ガードケーブルは、下記の特許文献1〜3に記載されて公知である。
特許文献1及び2は地中に植設した複数の円形型の支柱にケーブルをボルト接合により緊結して架設する技術であり、特許文献3は、やはり地中に植設した複数の角形の支柱にケーブルをボルト接合により緊結して架設する技術が記載されている。これらの支柱は何れも地中深くに植設されて、車両の衝撃に耐えて転倒する虞を最小限に止めた構成とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開昭38−13747号公報
【特許文献2】実開昭63−130518号公報
【特許文献3】実開昭37−27141号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記した特許文献1〜3の支柱は、地中へ植設されて車両の衝突荷重に耐え得る強度を期待できる。しかし、その反面、衝突荷重の殆どを車両側が吸収することになり、車両乗員に甚大な危険が及ぶだけでなく、衝突時に支柱が反対車線側へ折れ曲がって二次的な被害の要因となる虞もある。
また、ガードケーブルに衝突事故が発生するなど破損した支柱を取り替える場合、支柱は地中深くに埋め込まれており、更に支柱にケーブルが緊結されているため、その取り替え作業は非常に面倒で時間が掛かる。
特に、暫定二車線道路などにおいて、中央分離帯としてガードケーブルを設置している場合、一車線上で事故があると直ぐに渋滞を引き起こしてしまう。そのため、即座に支柱を撤去して対面交通にするなどの対応が求められるが、上記のように支柱の撤去は面倒で時間が掛かるため、交通状況に多大な悪影響を及ぼしてしまうことが指摘されている。
【0006】
上記の課題点から支柱は車両衝突時に積極的に進行方向に倒れること、また、ケーブルと支柱とが容易に抜き挿し可能な構成のガードケーブルが所望されている。とは言え、前記支柱の転倒時に複数あるケーブルが一気に抜けてしまう構成ではなく、ケーブルの一本ずつが順に抜け、更に、抜ける際にある程度の抵抗力を発揮してケーブルと支柱とで衝突荷重を効果的に吸収しながら転倒するガードケーブルが求められている。
【0007】
本発明の目的は、上記の課題点を解決することであり、車両衝突時に支柱が進行方向に積極的に倒れ、且つ支柱を容易に抜き挿し可能な構成にでき、複数のケーブルが支柱のスリットから順に摩擦抵抗を発揮しながら容易に抜けてケーブルと支柱とで衝突荷重を効果的に吸収可能なガードケーブルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための手段として、請求項1に記載した発明に係るガードケーブルは、
一定間隔をあけて立設した支柱間に、同支柱の上下方向に間隔をあけて複数本のケーブルを架設して成るガードケーブルであって、
前記支柱は、角形鋼管とされ、同支柱は側面が道路の延長方向に相対峙する配置とされ、地中へ予め埋設された鞘管の中空部内へ抜き挿し可能に差し込まれて立設されていること、
前記支柱の二側面の上部には、上端部を開口して略下方へ切り欠いたスリットが上下方向に屈曲形状及び/又は湾曲形状にそれぞれ設けられ、それぞれのスリットは一方の側面方向から見ると左右対称形状とされていること、
前記ケーブルは、前記支柱のスリットを貫通させて支柱間に架設され、支柱内に挿入したスペーサーにより上下方向の間隔が保持されていることを特徴とする。
【0009】
請求項2記載の発明は、請求項1に記載したガードケーブルにおいて、
複数本のケーブルは、垂直方向の同軸上になるように上下に配置されて支柱間に架設されていることを特徴とする。
【0010】
請求項3記載の発明は、請求項1又は2に記載したガードケーブルにおいて、
ケーブルは、支柱の垂直方向の中心軸に交わるように支柱間に架設されていることを特徴とする。
【0011】
請求項4記載の発明は、請求項1に記載したガードケーブルにおいて、
スリットは、略下方へ同一の幅で切り欠いて形成していることを特徴とする。
【0012】
請求項5記載の発明は、請求項1に記載したガードケーブルにおいて、
支柱は、平面視が長方形の角形鋼管とされ、同支柱は平面視で長辺側となる側面が道路の延長方向に相対峙する配置とされており、
前記支柱の平面視で長辺側となる二側面の上部には、上端部を開口して略下方へ切り欠いたスリットが上下方向に屈曲形状及び/又は湾曲形状にそれぞれ設けられ、それぞれのスリットは一方の側面方向から見ると左右対称形状とされていること、
を特徴とする。
【0013】
請求項6記載の発明は、請求項1に記載したガードケーブルにおいて、
スペーサーは、樹脂製であることを特徴とする。
【0014】
請求項7記載の発明は、請求項1又は5に記載したガードケーブルにおいて、
スリットは、一つ又は複数の屈曲点を有する屈曲形状、及び、一つ又は複数の変曲点を有する湾曲形状とされていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
請求項1〜7に記載したガードケーブルは、以下の効果を奏する。
本発明のガードケーブルの支柱には平面視の縦横比が異なる長方形の角形鋼管を用いた。したがって、平面視で長辺側となる側面は、短辺側の側面に対し弱軸側となり、短辺側は強軸側となる。この支柱を、前記弱軸側を道路の延長方向に対して相対峙する配置とし、地中へ予め埋設された鞘管の中空部内へ抜き挿し可能に差し込んで立設している。
したがって、車両が前記ガードケーブルの支柱へ衝突する際、支柱の弱軸側に当たり、同支柱が道路の延長方向へ積極的に倒れる。一般的に直進走行中の車両は大型車では15°以内、小型車では20°以内の角度でガードケーブルへ衝突することが多く確認されており、支柱の弱軸側が道路の延長方向に相対峙して配置しておけば、必然的に支柱の弱軸側へ衝突することになる。そして、支柱の倒れる方向は、支柱の弱軸側が道路の延長方向に相対峙しているので、車両の衝突方向には倒れずに道路の延長方向(進行方向側)に倒れるのである。
【0016】
上記のように支柱が積極的に道路の延長方向へ倒れるので、支柱が折れ曲がって反対車線側へ飛び出し、反対車線を走行する車両に二次的被害が生じることを防止できる。のみならず、衝突時の運動エネルギーが支柱とケーブルとで効果的に吸収して、車両への損傷を最小限に止め乗員の安全を守ることができる。
【0017】
前記支柱の下端が地中へ埋設された鞘管の中空部内に抜き挿し可能に差し入れられていること、また、支柱の先端に架設されるケーブルが抜き挿し可能で上部を開口したスリット内に差し入れる構成としたので、支柱が破損した場合でも、ケーブル及び支柱を単に順に引き上げるだけで容易に引き抜け、取り替え作業の効率を飛躍的に向上できる。のみならず、走行車線一車線と対向車線一車線からなる二車線道路の中央分離帯に設置されている場合においては、事故時に専門的な技術者がいなくても、誰もが即座に支柱を撤去でき、対面交通などの交通渋滞の緩和を迅速に行える。特に、ケーブルが上記スリットから容易に抜けるので、車両が支柱へ衝突してもケーブルの高さは前後の支柱により保持される。従って、支柱が転倒しても車両の反対車線側への飛び出しを同ケーブルで確実に防止できる。
【0018】
前記スリットは屈曲形状及び/又は湾曲形状とされ、それぞれの形状は一方の側面方向から見ると左右対称となる形状で設けている。つまり、両スリットが合わさって道路延長方向から見たスリット幅に変化が生じる構成とした。すると、複数のケーブルは、一気に抜けることが無く、屈曲形状及び/又は湾曲形状によるスリットの側面の摩擦抵抗を受けながら、一本ずつ順にスリットから抜け出て、ケーブルと支柱とで衝突荷重を効果的に吸収しながら、同支柱を効果的に転倒させることができる。
前記スリットの形状には、他の効果もある。前記支柱は鞘管により抜き挿し可能に差し込まれているため鞘管との間に隙間が生じている。よって、支柱に車両が衝突すると前記隙間の分だけ強軸側へ傾いてしまう性質がある。本発明のスリットは、屈曲形状及び/又は湾曲形状として上下方向の幅に変化を設けているので、支柱の強軸側への傾きの程度ではスリット側面の摩擦抵抗により、ケーブルがスリット内から安易に抜けてしまうことはない。つまり、スリットの形状はケーブルが支柱の転倒以外は抜けない構成になっている。したがって、車両衝突により支柱が強軸側へ傾いても、ケーブルの高さをしかるべき位置に保持して、ケーブルが大きく撓むことが無く、車両が反対車線側へ飛び出すことを可及的に防止できる。
【0019】
また、それぞれのスリットの形状は、一方の側面方向から見ると左右対称となる形状で設けられているから、走行車線と対向車線のどちらの方向からの車両の衝突に対しても、同一の性能を発揮でき、複数のケーブルが一本ずつ順にスリットから抜け出て、ケーブルと支柱とで衝突荷重を効果的に吸収できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明が実施される道路の中央分離帯に設けられたガードケーブルを示した全体斜視図である。
【図2】本発明のガードケーブルの立面図である。
【図3】上記ガードケーブルの平面図である。
【図4】支柱の拡大側面図である。
【図5】図4に示した支柱のI−I矢視断面図である。
【図6】Aは二つの屈曲点を有する屈曲型のスリットの一例を示した拡大側面図である。Bは二つの変曲点を有する湾曲型のスリットの一例を示した拡大側面図である。Cは一つの屈曲点を有する屈曲型のスリットの一例を示した拡大側面図である。Dは一つの変曲点を有する湾曲型のスリットの一例を示した拡大側面図である。Eは屈曲型と湾曲型を併用させたスリットの一例を示した拡大側面図である。
【図7】支柱へケーブルを架設する手順の概要を示した拡大斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明は、一定の間隔をあけて立設した支柱3間に、同支柱3の上下方向に間隔をあけて複数本にケーブル2を架設して成るガードケーブルである。特に、高速道路などに設けられている走行車線一車線と対向車線一車線からなる二車線道路の中央分離帯として好適に使用される。
前記支柱3は、縦横比が異なることで弱軸側31と強軸側32が構成される平面視が長方形の角形鋼管とされ、同支柱3の弱軸側31が車両の進行方向に相対峙する配置で、地中へ予め埋設された鞘管5の中空部内へ抜き挿し可能に差し込まれて立設される。
【0022】
同支柱3の平面視で長辺側となる二側面の上部には、上端部を開口して略下方へ切り欠いたスリット6が上下方向に屈曲形状及び/又は湾曲形状にそれぞれ設けられ、それぞれのスリット6は一方の側面方向から見ると左右対称形状とされている。
前記ケーブル2は、前記支柱3のスリット6を貫通させて支柱3間に架設され、支柱3内に挿入したスペーサー7により上下方向の間隔が保持されている。
【実施例1】
【0023】
以下に、本発明を図示した実施例に基づいて説明する。
本発明のガードケーブル1は、図示例に示すように、高速道路などに設けられている暫定二車線道路の中央分離帯として好適に実施される。勿論、この限りではなく、道路の路肩などにも同様の構成で実施することができる。
【0024】
図1〜図3には、道路の中央分離帯の箇所に約2mの間隔を置いて立設した支柱3の間に、上下方向に間隔をあけて3本のケーブル2を架設して構築したガードケーブル1を示した。
前記支柱3は、縦横比が異なる平面視が長方形の角形鋼管である(図5、図7参照)。したがって、同支柱3は、平面視の長辺側が短辺側に対して弱軸側31となり、前記短辺側が長辺側に対して強軸側32を有する構成となる。前記弱軸側31と強軸側32の寸法は、例えば100×50mmであり、前記弱軸側31は衝突荷重に対して積極的に変形する性質を発揮する。
【0025】
上記構成の角管支柱3を、前記弱軸側31が車両の進行方向R、Lに相対峙する配置で、地中へ予め埋設された鞘管5の中空部内へ抜き挿し可能に差し込んで立設されている。 一般的に走行中の車両は大型車では15°以内、小型車では20°以内の角度でガードケーブル1へ衝突することが多く確認されており、上記のように支柱3の弱軸側31が道路の延長方向に対して相対峙していれば、車両は必然的に支柱3の弱軸側31へ衝突する。すると、支柱3は確実に道路の延長方向R(対向車が衝突した場合はL)へ倒れて、車線上に飛び出る虞を緩和できる。
【0026】
前記鞘管5は、特に図4及び図7に示すように、支柱3の下端部をその中空部内へ挿入可能な縦横比を有し、高さは例えば約800mmとする管スリーブ5であり、地中レベルと鞘管5の上面とが略一致するように埋設されている。
前記鞘管5の両側面(強軸側面)には、その一部が切り込まれて内方へ押し込んで形成された開口部50が設けられている。この開口部50は、支柱3を伝って鞘管5内に侵入する水滴を排出する機能を発揮するほか、支柱3の位置決めストッパとしても機能する。
【0027】
即ち、図4に示すとおり、その両側面の開口部50(位置決めストッパ50)は、形成時に鞘管5の一部を切り込んで内方へ押し込む際、アルミ缶のプルダブを空けた時の如くに内方へ傾斜を付けたハの字状に形成されている。そのため、前記押し込まれた部分50aが支柱3の下端を支持し、同支柱3の位置決めを行うのである。したがって、開口部50が設けられる深さ位置は、支柱3が軽荷重で倒れない深さ位置に設ける必要がある。本実施例の場合、支柱3の高さが800mmとすると、その深さは400mm程度である。
上記のように支柱3は、鞘管5とボルトやフックその他の機械的取付具を使用せずに容易に抜き挿し可能に位置決めされている。
前記支柱3の位置決め方法は、図示した形態に限らず通常実施されている、機械的取付具を使用しない構成で実施できる。例えば、鞘管5の中空部内の適切な深さ位置に、両側面から内方へ突出する台座を設けて支柱3の下端を支持できる。
【0028】
更に、前記支柱3の上端部の弱軸側31、31の上端部には、前記3本のケーブル2…を抜き挿し可能に上部を開口して下方へ切り欠いたスリット6が上下方向に屈曲又は湾曲する形状に形成され、ケーブル2は前記スリット6、6を貫通する様態で架設される。
このスリット6は、下方へ同一幅で切り欠かれており、その形状について図6A〜Dに示した。図6Aは、二つの屈曲点を有する屈曲形状、図6Bには、二つの変曲点を有する湾曲形状、図6Cは一つの屈曲点を有する屈曲形状、図6Dには、一つの変曲点を有する湾曲形状とするスリット6a〜6dをそれぞれ示した。
【0029】
上記各スリット6a〜dは、一方の弱軸側31方向から見ると左右対称になる形状(両弱軸側31、31に正対する方向に見ると同一形状)として、両スリット6、6内の貫通する上下の空き幅に変化を持たせている。前記ケーブル2が保持される箇所の空き幅W1は、最大幅とされている。また、両スリット6、6の形状のそれぞれの屈曲点(変曲点)の空き幅W2は、最少幅である。前記空き幅W2は、ケーブル2が抜き差し可能な最少幅である。
したがって、車両が支柱3の弱軸側31へ衝突して同支柱3が倒れることに伴い、各ケーブル2…は、スリット6、6側面の形状と上下方向の幅の変化とにより、水平方向の摩擦抵抗を受けながら、確実に一本ずつ順に抜け、ケーブル2と支柱3とで衝突荷重を効果的に吸収することができる。
【0030】
上記スリット6の形状はこの限りではない。湾曲形状は屈曲形状に比してケーブル2が受ける摩擦抵抗が低い。上記の点を踏まえ、図6Eに示すように、上記二種類を併用したスリットeとすることもできる。例えば、スリット6eの上部を摩擦抵抗の高い屈曲型、下部を摩擦抵抗の低い湾曲型として、効果的に衝突荷重を吸収させる構成で実施することもできる。
また、空き幅W2は、支柱をよじることでケーブル2をスリット6内に抜き差し可能な程度の幅があればよく、ケーブル2の直径よりも狭くてもよい。
【0031】
ここで、図4〜図7から支柱3の前記スリット6、6内へケーブル2…を架設する手順を説明する。
先ず、スリット6、6内へ第一ケーブル2aが上方から挿入される。そのあと、支柱3の中空部内へスペーサー7aが挿入され同ケーブル2の上面に載置される。このスペーサー7は、各ケーブル2…の間隔を保持するために介在されるもので、図5の平面図に示すように、支柱3の中空形状より少しだけ小形に形成された樹脂製のブロックである。複数本のケーブル2はこのスペーサー7によりスリット6内において鉛直方向の同軸上で且つ支柱の鉛直方向の中心軸に交わるように架設される。
【0032】
次に、第二のケーブル2bをスリット6、6内へ挿入し、第二のスペーサー7bを支柱3の中空部内へ挿入する。続いて、第三のケーブル2cを挿入して、スリット6、6内へ3本のケーブル2を貫通させる。
その後、雨水の進入防止として、支柱3の上端部に樹脂製の蓋材8が被せられる。この蓋材8は支柱3の外形より大きく直ぐに取り外すことができる形状とされている。
【0033】
つまり、3本のケーブル2は、ボルトやフックなど他の機械式取付具を使用せずに支柱3と架設されている。したがって、支柱3の弱軸側31へ車両が衝突して、支柱3が車両の進行方向へ倒れるに伴い、ケーブル2cがその衝突荷重により先ず蓋材8を外し、その後、各ケーブル2c〜2aがスリット6内の屈曲形状又は湾曲形状、及び空き幅(W1、W2)の変化により摩擦抵抗を受けながら一本ずつ順番に同スリット6から抜けてゆくので、同支柱3は効果的に衝突荷重を吸収しながら倒れることが可能になる。
【0034】
次に、本発明のガードケーブルの構築方法の一例を簡潔に説明する。
先ず、図1に示すように、道路の中央分離帯に3本のケーブル2(2a〜2c)を、ケーブル2の両端に設置した端部支柱4により2tGで引張して準備する。
そして、図7に示すように、複数の支柱3を地中へ約2mの間隔を空けて埋設された鞘管5の中空部内へ、その弱軸側31が車両の進行方向に相対峙する配置で差し込んで立設する。
次に、前記準備した3本のケーブル2を順番に持ち上げて、立設された各支柱3のスリット6内へスペーサー7a、7bを介在させながら挿入して、支柱3…間へ架設する。最後に支柱3の上端部に蓋材8を被せて完成する。
【0035】
上記のように、本発明のガードケーブルは、支柱3の立設とケーブル2の架設は機械的取付具を必要としない手法で行えて、非常に簡易な方法で構築することができるだけでなく、支柱3の取り外しは単にこの反対の作業を行うのみで行えるため、誰でも容易に迅速に取り外し作業を行える。これは、暫定二車線道路の中央分離帯などに設置されている場合には、事故時に即座に支柱3を撤去して、対面交通など交通渋滞の緩和に寄与できるのである。但し、ケーブル2の引張手段やその端部構成については、この限りではない。
【0036】
以上に本発明を図示した実施例に基づいて説明したが、本発明は、上記実施例の構成に限定されない。その目的と要旨を逸脱しない範囲において、当業者が必要に応じて行う設計変更、応用のバリエーションの範囲を含むことを念のため言及する。
【符号の説明】
【0037】
1 ガードケーブル
2 ケーブル(2a〜2c)
3 支柱
31 弱軸側
32 強軸側
4 端部支柱
5 鞘管
50 開口部
50a 押し込まれた部分
6 スリット6a〜6e
7 スペーサー(7a、7b)
8 蓋材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一定間隔をあけて立設した支柱間に、同支柱の上下方向に間隔をあけて複数本のケーブルを架設して成るガードケーブルであって、
前記支柱は、角形鋼管とされ、同支柱は側面が道路の延長方向に相対峙する配置とされ、地中へ予め埋設された鞘管の中空部内へ抜き挿し可能に差し込まれて立設されていること、
前記支柱の二側面の上部には、上端部を開口して略下方へ切り欠いたスリットが上下方向に屈曲形状及び/又は湾曲形状にそれぞれ設けられ、それぞれのスリットは一方の側面方向から見ると左右対称形状とされていること、
前記ケーブルは、前記支柱のスリットを貫通させて支柱間に架設され、支柱内に挿入したスペーサーにより上下方向の間隔が保持されていることを特徴とする、ガードケーブル。
【請求項2】
複数本のケーブルは、垂直方向の同軸上になるように上下に配置されて支柱間に架設されていることを特徴とする、請求項1に記載したガードケーブル。
【請求項3】
ケーブルは、支柱の垂直方向の中心軸に交わるように支柱間に架設されていることを特徴とする、請求項1又は2に記載したガードケーブル。
【請求項4】
スリットは、略下方へ同一の幅で切り欠いて形成していることを特徴とする、請求項1に記載したガードケーブル。
【請求項5】
支柱は、平面視が長方形の角形鋼管とされ、同支柱は平面視で長辺側となる側面が道路の延長方向に相対峙する配置とされており、
前記支柱の平面視で長辺側となる二側面の上部には、上端部を開口して略下方へ切り欠いたスリットが上下方向に屈曲形状及び/又は湾曲形状にそれぞれ設けられ、それぞれのスリットは一方の側面方向から見ると左右対称形状とされていること、
を特徴とする、請求項1に記載したガードケーブル。
【請求項6】
スペーサーは、樹脂製であることを特徴とする、請求項1に記載したガードケーブル。
【請求項7】
スリットは、一つ若しくは複数の屈曲点を有する屈曲形状、又は、一つ若しくは複数の変曲点を有する湾曲形状とされていることを特徴とする、請求項1又は5に記載したガードケーブル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−184879(P2011−184879A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−48791(P2010−48791)
【出願日】平成22年3月5日(2010.3.5)
【出願人】(000231110)JFE建材株式会社 (150)
【出願人】(000192615)神鋼建材工業株式会社 (61)
【出願人】(000006839)日鐵住金建材株式会社 (371)
【Fターム(参考)】