説明

ガードレール基礎構造

【課題】擁壁の上端面の上側スペースを有効活用して、所要の道路幅員を確保できながら、ガードレールに自動車が衝突した際の衝撃荷重を擁壁に伝達させることのないガードレール基礎構造を提供する。
【解決手段】ガードレール用の基礎ブロック5が、擁壁6で縁部が保護された路肩7に沿って、且つ、擁壁6の上端面9を覆うように連結状態に敷設される。擁壁6の上端面9と基礎ブロック5の下面10との間に間隙8が設けられる。間隙8の上下幅は、10〜30mmに設定されている。ガードレールに自動車が衝突した際の衝撃荷重で基礎ブロック5の前側部分が下向きに屈曲変形しても、その変形部が擁壁6の上端面9に接触しない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガードレール用の基礎ブロックを用いて構成されたガードレール基礎構造に関するものであり、更に詳しくは、擁壁で縁部が保護された路肩に沿ってガードレール用の基礎ブロックを連結状態に敷設する際に、該擁壁の上端面と該基礎ブロックの下面との間に間隙を設けることを基本として、ガードレールに自動車が衝突した際の衝撃荷重を該基礎ブロックの下側に存する擁壁に伝達させないように工夫されたガードレール基礎構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ガードレールを建て込むためのガードレール用の基礎ブロックaが、擁壁bで縁部が保護された路肩cに沿って連結状態に敷設されてなる従来のガードレール基礎構造dは、図25に示すように、擁壁bの上端面fに該基礎ブロックaの下面gを当接させた状態で該基礎ブロックaを敷設することによって構成されており、或いは図26に示すように、基礎ブロックaの前端hを、擁壁bの上端面fの後縁(道路側の縁)jから道路側に例えば30cm程度ずらした状態で該基礎ブロックaを連結状態に敷設することにより構成されていた。
【0003】
擁壁bの上端面fに基礎ブロックaの下面gを当接させてなる前記ガードレール基礎構造dによるときは、擁壁bの上部でのガードレールの構築が可能であるために、それだけ道路幅員を拡張できる利点はあった。しかしながら、ガードレールkに自動車が衝突した際、該基礎ブロックaのガードレール支持部分mに、その基端側nを中心として下方向への屈曲変形が生ずることから、該基礎ブロックaの下側に存する擁壁bに衝撃荷重が伝達されることになった。擁壁bに衝撃荷重が伝達されると、擁壁bが損傷される恐れがあった他、甚だしいときには、擁壁bの基礎部分における滑動や擁壁bの転倒の問題が生じたり、更には、かかる滑動等によって擁壁の後面側の道路面qに亀裂が発生する恐れもあったのである。
【0004】
そこで、かかる衝撃荷重が伝達されても擁壁bが損傷等しないように、新設の擁壁にあっては、かかる衝撃荷重を考慮して擁壁を分厚く構築する等、擁壁を剛な構造にしなければならなかった。又、既設の擁壁にあっては、擁壁を分厚く補強したり、擁壁の後面側(裏側)に裏込めコンクリートを充填したりする等、大掛かりな補強工事を必要とした。更には、擁壁を造り直さなければならない等、施工コストの大幅な上昇を招く問題があった。
【0005】
又図26に示すように、擁壁bの上端面fの上側を避けて基礎ブロックaを敷設する場合は、ガードレールkに自動車が衝突した際の衝撃荷重を擁壁bに伝達させない利点はあったものの、必要な道路幅員を確保できなくなる場合が生じた。その場合に道路幅員を所要に確保しようとすれば、擁壁を外側に出した状態で擁壁を造り直したり、道路側の崖を削り取らなければならない場合が生ずる等、用地確保の問題も生じ、ガードレールの構築施工コストの大幅な上昇を招く問題があったばかりか、用地制限がある場所ではガードレール構築が不可能となる場合もあった。
【0006】
【特許文献1】特開2002−309594号(2−3頁、図2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は前記従来の問題点に鑑みて開発されたものであり、擁壁の上端面の上側スペースを有効活用して、所要の道路幅員を確保できながら、ガードレールに自動車が衝突した際の衝撃荷重を擁壁に伝達させることのないガードレール基礎構造の提供を課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するため本発明は以下の手段を採用する。
即ち本発明に係るガードレール基礎構造は、ガードレールを支持するためのガードレール用の基礎ブロックが、擁壁で縁部が保護された路肩に沿って、且つ、該擁壁の上端面を覆うように連結状態に敷設されてなるガードレール基礎構造であって、該ガードレールに自動車が衝突した際の衝撃荷重で前記基礎ブロックが下向きに屈曲変形しても、その変形部が前記基礎ブロックの下側に存する擁壁の上端面に接触しないように、前記擁壁の上端面と前記基礎ブロックの下面との間に間隙を設けたことを特徴とするものである。
【0009】
前記ガードレール基礎構造において、前記間隙の上下幅を10〜30mmに設定するのがよい。
【0010】
又前記各ガードレール基礎構造において、前記間隙の全体又は一部分に、低反発性の止水弾性体を介在させるのがよい。
【0011】
又前記各ガードレール基礎構造において、前記基礎ブロックは、底版部の前端側に立壁部が立設され該立壁部が存する側で前記ガードレールを支持可能となし、該基礎ブロック相互は、前記立壁部の端面相互が連結軸部材で連結されると共に、前記底版部相互がボルト連結されることによって連結されたものとし、該連結軸部材の両端側の部分が、前記立壁部の端面に凹設した連結凹部に密接に嵌入されたものとして構成するのがよい。
【0012】
又前記各ガードレール基礎構造において、前記基礎ブロックは、底版部の前端側に立壁部が立設され該立壁部が存する側で前記ガードレールを支持可能となし、該基礎ブロック相互は、該立壁部の端面相互が連結軸部材で連結されると共に、前記底版部相互が、プレストレスを導入してボルト連結されることによって連結されたものとし、該連結軸部材の両端側の部分が、前記立壁部の端面に凹設した連結凹部に密接に嵌入されたものとして構成するのがよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明は以下の如き優れた効果を奏する。
(1) 本発明によるときは、ガードレールに自動車が衝突した際の衝撃荷重によって基礎ブロックが下向きに屈曲変形したときにも、擁壁の上端面と基礎ブロックの下面との間に形成されている前記間隙によって、該屈曲変形した部分が擁壁の上部に接触するのを防止できる。これにより、ガードレールに自動車が衝突した際の衝撃荷重を基礎ブロック自体で吸収でき、該衝撃荷重を擁壁に伝達させないガードレール基礎構造を提供できることとなる。その結果、擁壁の上端面の上側スペースを有効に活用して所要の道路幅員を確保したガードレールの構築が可能となる。
【0014】
このように擁壁の上部でのガードレール構築が可能になることから、ガードレール構築のために道路幅員が不足するときにも、従来のような、擁壁自体を剛構造に変更したりする等の大掛かりな補強工事が不要となるので、これまではガードレールの構築が考慮されていなかった既設擁壁の上部でのガードレール構築を簡易に行うことができるばかりか、かかる大掛かりな補強工事を要さず、又、確保用地増大に伴う施工コストの上昇もないことから、大幅な施工コスト削減が可能になる。なるほど、例えば特開2002−309594号公報が開示するような基礎ブロックに比べれば、基礎ブロックの部材厚さが厚くなったりつま先版部の長さが長くなることに伴う基礎ブロック自体のコスト上昇は発生するものの、前記大掛かりな補強工事を要したり必要な用地を確保する為のコスト上昇に比べれば、大幅なコスト削減が可能になるのである。
【0015】
(2) 基礎ブロックが、底版部の前端側に立壁部を立設した構成を有する場合、該立壁部の端面相互を、位置決め機能を有し且つ所要のせん断抵抗力を有する連結軸部材で連結するときは、該連結軸部材を介して隣り合う基礎ブロック相互を正しく位置決めできるために、基礎ブロックの敷設施工を正確に然も能率よく行うことができる。加えて、自動車がガードレールに衝突した際に生ずる衝撃荷重を、前記連結軸部材のせん断抵抗力によって、道路延長方向に連結された基礎ブロック群が一体となって受けることになるため、前記屈曲変形を抑制できる利点がある。
【実施例1】
【0016】
図1は、本発明に係るガードレール基礎構造1を例示するものであり、図2〜3や図4〜5に示す、ガードレール2を支持するためのガードレール支持部分3を前側に具えたガードレール用の基礎ブロック5が、擁壁6で縁部が保護されてなる路肩7(図6、図9)に沿って、且つ、該擁壁6の上端面9を覆うように、連結状態に敷設されてなるものであり、前記ガードレール2に自動車が衝突した際の衝撃荷重を、下側に存する前記擁壁6に伝達させないように、該衝撃荷重の大きさの範囲を考慮して、前記擁壁6の上端面9と前記基礎ブロック5の下面10との間に10〜30mm程度の間隙8が設けられている。
【0017】
図2〜3に示す前記基礎ブロック5は、例えば図6〜7に示すように、道路11が直線状を呈する区間において路肩7に沿って敷設されるものであり、その連結方向(左右方向)に稍長い矩形板状を呈し且つ下面10が水平に形成された底版部12の前端寄り部位に立壁部13が立設されてなり、該底版部12の該立壁部13の後方側(道路11側)がつま先版部15とされると共に該立壁部13の前方側がかかと版部16とされている。そして、該かかと版部16の長さ方向の中央部において、かかと版部16の上面17と前記立壁部13の前面19に接する状態で、前記ガードレール支持部分3が設けられており、該ガードレール支持部分3には、前記ガードレール2を固定する支柱20の下端部分21(図1)を挿入させる有底円形状の支持孔22が凹設されている。
【0018】
そして前記つま先版部15の上面23の両端部分25,25の前後に位置させて、連結金具26,26が埋設状態に設けられている。該連結金具26は、上端が開放した凹部27を有し、ボルト挿通孔29が設けられた連結片部30の外面30aが、前記底版部12の端面31と面一に形成されている。
【0019】
又本実施例においては図2〜3に示すように、前記立壁部13の端面32,32に、隣り合う立壁部13,13相互を連結して所要のせん断抵抗力を発揮する連結軸部材33(図8)の両端側の部分を嵌入させるテーパ形状の連結凹部35,35が設けられている。該連結軸部材33は、図8に示すように、該連結凹部35に密接に嵌入されるテーパ軸状の嵌入連結片36,36がその大径端において背中合わせ状態に一体化された、合成樹脂製や金属製等の中実又は中空の部材として形成されている。本実施例においては、例えばポリプロピレン製の中実部材として形成されている。
【0020】
かかる構成を有する基礎ブロック5の主要部の寸法を例示すれば、各部の肉厚は、基礎ブロックの強度アップを図るために、従来のこの種の基礎ブロックに比して比較的厚めの100mm程度に設定されると共に、前記底版部12の前後長さは1500mm程度に、その左右長さは2000mm程度に設定されている。そして、前記つま先版部15の前後長さは1000mm程度に設定されると共に前記かかと版部16の前後長さは200mm程度に設定され、又、前記立壁部13の高さは400mm程度に設定されると共に、前記連結凹部35の位置は、該立壁部13の上端の下側100mm程度に設定されている。又、該基礎ブロック5の配筋は、従来の基礎ブロックに比して比較的太い鉄筋を比較的細かく配置して構成されている。
【0021】
又図4〜5に示す基礎ブロック5は、例えば図9〜10に示すように、道路11がカーブする区間において路肩7に沿って敷設されるものであり、該カーブに応じ得るように、長さ方向の両端が斜めにカットされ(傾斜角度は例えば3度)、立壁部13の両端面39,39、つま先版部15の両端面40,40、かかと版部16の両端面41,41は、平面視で傾斜辺として形成されている。その他の構成は前記基礎ブロック5におけると同様である。
【0022】
前記擁壁6は、本実施例においては、図11に示すように、上下に長い擁壁部42の下端に水平基礎部43を連設したL型擁壁ブロック45を、前記水平基礎部43を内方(道路側)に突出状態にして敷設し、その接合面44,44相互を当接状態にして順次連結することにより構築されている。そして前記擁壁部42の上端には、常法に従い笠コンクリート46が現場打ち施工によって形成され、該笠コンクリート46の上端面(擁壁の上端面)47、即ち前記擁壁6の上端面9は水平面に形成されている。該擁壁6の上部の前後幅は、本実施例では300mmに設定されている。
【0023】
前記構成の基礎ブロック5を用いて前記ガードレール基礎構造1を構成するに際しては、図1、図11に示すように、路肩7に沿って設定されたガードレール構築箇所を、前記擁壁6の上端の後面側で掘削し、該掘削部に砕石を充填して基礎砕石層49を形成すると共に該基礎砕石層49の上部に、前記つま先版部15を載置するための基礎コンクリート50を形成する。本実施例においては、該基礎コンクリート50の厚さを、例えば100mm程度に設定すると共に、その上面48を前記擁壁6の上端面9と面一に形成している。前記基礎砕石層49は、該基礎コンクリート50が擁壁背面の土に荷重を伝達できるようにするために設けられており、又、擁壁上部の後面51と、前記基礎砕石層49及び基礎コンクリート50の前面52,53との間には、不測荷重によっても擁壁に影響を与えない緩衝作用を発揮する緩衝材55が配設されている。該緩衝材55としては、30〜100mm厚さ(例えば50mm厚さ)の発泡スチロール等の合成樹脂発泡体を用いることができる。
【0024】
その後、前記基礎コンクリート50の上面48に例えば20mm厚さの敷モルタル56を形成し、該敷モルタル56上に前記基礎コンクリート50の前記つま先版部15を載置する。その際、図1に示すように、前記底版部12の前端54を前記擁壁6の上端面9の前縁58に合致させる。そして、図12に示すように、前記立壁部13の端面32に設けられている前記テーパ形状の連結凹部35に前記連結軸部材33のテーパ軸状の嵌入連結片36を密接に嵌入させる。これにより、該端面32に、他方の嵌入連結片36が突出状態になる。このようにすれば、敷設された基礎ブロック5aに連ねて他の基礎ブロック5bを敷設する際、図13に示すように、該基礎ブロック5aの端面32aと向き合う端面32bに設けられている連結凹部35に、前記端面32aで突出している前記嵌入連結片36を嵌入させることにより、隣り合う基礎ブロック5a,5bの立壁部の上面59,59が、面一状態を呈するように基礎ブロック5bが正しく位置決めされる。
【0025】
この状態で、図1に示すように、基礎ブロック5の前側部分をなす前記ガードレール支持部分3が、前記擁壁6の上端面9を覆った状態となる。そして、前記のように底版部12の下面10が水平面に形成されていることから、擁壁6の上端面9と前記基礎ブロック5の前側部分(前後幅が300mm程度である前記ガードレール支持部分)3の下面10aとの間に上下幅が20mm程度の間隙8が形成される。
【0026】
その後、前記つま先版部15上に埋め戻し施工が施されることによって、図6〜7、図9〜10に示すように、前記立壁部13の上面59に連なる道路面61が形成される。このようにして各基礎ブロック5が、路肩7に沿って、且つ図13に示すように、隣り合う立壁部13,13の端面32,32相互を当接状態にしてすると共に前記連結軸部材33によって連結して敷設されるのである。
【0027】
そして、隣り合う基礎ブロック5,5の、端面31,31で当接状態にある前記底版部12,12相互は、図14に示すように、前記連結金具26に設けられた連結片部30,30が、そのボルト挿通孔29,29が連通した当接状態となるため、両ボルト挿通孔29,29にボルト62を挿通しトルクレンチを用いてナット63を締め付けることにより、底版部12,12相互がボルト連結されることになる。該ボルト62としては、例えば5トンのプレストレスを導入できる高張力ボルトを用い、前記底版部12,12相互を、ワッシャ65を介して、プレストレスを導入して緊結する。なお、該ボルト62による緊結は、図15に示すように、ボルト頭を有さない1本のネジ軸66の両端にナット67,69を螺合し締め付けて行うものであってもよい。
【0028】
このようにして基礎ブロック5,5相互を連結して後、前記つま先版部15上に、図1に示すように前記立壁部13の上面59の高さにまで埋め戻す。この埋め戻し部70による上載荷重によって基礎ブロック5の転倒が防止される。そして、該埋め戻し部70の上部にはアスファルトが敷設されて前記道路面61とされる。この埋め戻しにより前記つま先版部15が埋設状態となり、且つ、前記基礎ブロック5の前記前側のガードレール支持部分3の下面10aと前記擁壁6の上端面9との間に、上下幅が20mm程度の前記間隙8が形成されてなるガードレール基礎構造1が、図6〜7、図9〜10に示すように、路肩7に沿って連続状態で構成されることになる。
【0029】
そして前記支持孔22には、図1、図6、図9に示すように、前記支柱20の下端部分21が埋設状態に挿入されて該支柱20が立設状態とされると共に、該支柱20にガードレール2がボルト固定される。
【0030】
かかる構成を有するガードレール基礎構造1によるときは、ガードレール2に自動車が衝突した際に生ずる衝撃荷重の大きさによっては、強度的に弱い部分であるつま先版部15と立壁部13との接合部分(前記ガードレール支持部分3の基端部分)71(図1)を支点として、該接合部分71よりも前側をなすガードレール支持部分3に、下方向への回転作用が生ずる。このような回転作用が生じて、例えば図16に示すように、該ガードレール支持部分3が下方向に屈曲変形しても、前記間隙8の上下幅が、前記した基礎ブロック5の肉厚や配筋状態、前記擁壁6の上端面9の前後幅、つま先版部15の前後長さ等の各要素を考慮して前記のように10〜30mm程度に設定されているため、該屈曲変形したガードレール支持部分3が千切れる恐れなく、該ガードレール支持部分3が擁壁6の上端面9に接触するのを防止できることとなる。かかることから、前記衝撃荷重を前記基礎ブロック5自体で吸収でき、該衝撃荷重が、基礎ブロック5の下側に存する擁壁6に伝達されないので、擁壁6に対する衝撃荷重の影響を回避できることとなる。
【0031】
特に本実施例においては、隣り合う基礎ブロック5,5の立壁部13,13の端面32,32相互を、図6、図9に示すように、所要のせん断抵抗力を有する前記連結軸部材33で連結することとしているため、自動車がガードレール2に衝突した際に生ずる衝撃荷重を、道路延長方向に並設された基礎ブロック群が一体となって前記連結軸部材33のせん断抵抗力で受けることになり、前記基礎ブロックの屈曲変形を抑制できることになる。特に本実施例においては前記のように、底版部12,12相互のボルト連結が、プレストレスを導入して行われているため、前記基礎ブロック群の一体化が一層強固なものとなり、前記屈曲変形をより効果的に抑制できるのである。
【0032】
かかることから本発明によるときは、前記擁壁6の上端面9の上側に位置させて、支柱20を介してガードレール2を設けることができるので、剛に構築されていない一般の擁壁に対しても、該擁壁の損傷や滑動等を生じさせる危険を回避して、擁壁の上端面9の上側スペースを有効活用してガードレールを構築できることとなる。
【0033】
図17は、前記のように構成されたガードレール基礎構造1において、前記間隙8に、低反発性の止水弾性体72を密着状態に介在させた状態を示すものである。かかる低反発性の止水弾性体72としては、発泡倍率が3〜5倍程度の独立気泡型のスポンジ状の止水弾性体を用いることができる。前記間隙8を通して擁壁6の後面側(背面側)に雨水が浸入すると、水圧によって前記擁壁に悪影響を及ぼす恐れがあるため、このような雨水浸入の恐れのある場合は、前記間隙8に該止水弾性体72を充填するのが好ましいのである。該止水弾性体72は低反発性であるために、圧縮状態になったときにも前記衝撃荷重を擁壁6に伝達させない。
【0034】
かかる止水弾性体72は、図17に示すように、前記間隙60の全体を埋めるように配設されることの他、該間隙60の前端側60aや、中間部分60b、後端側60c、前端側60aと後端側60cとの間のみに介在させることもある。又該止水弾性体72は、例えば、擁壁6の上端面9に予め接着した状態で前記基礎ブロック5を敷設することによって介在状態とすることができる。
【実施例2】
【0035】
本発明は、前記実施例で示したものに限定されるものでは決してなく、「特許請求の範囲」の記載内で種々の設計変更が可能であることはいうまでもない。その一例を挙げれば次のようである。
【0036】
(1) 図18は、本発明に係るガードレール基礎構造1の他の態様を示すものであり、擁壁6の後面側で、上面48が擁壁6の上端面9よりも10mm程度低くなるように基礎コンクリート50が形成されると共に、該基礎コンクリート50の上面48に例えば20mm厚さの敷モルタル56が形成され、その上に、前記基礎ブロック5のつま先版部15が載置され、前記上端面9の前縁58と前記底版部12の前端54とが合致されている。そして、ガードレール支持部分3の下面10aと擁壁の上端面9との間には10mm程度の間隙8が形成されている。
【0037】
(2) 図19〜20は、本発明に係るガードレール基礎構造1の他の実施例を示すものであり、図19は、道路幅員をより大きく確保するために、ガードレール支持部分3が前記擁壁6の上端面9の前縁58よりも前方に突出状態になる如く基礎ブロック5を敷設した場合を示すものである。該基礎ブロック5の下面10と擁壁6の上端面9との間には例えば20mm程度の間隙8が形成されている。このようなガードレール基礎構造1を構成できるためには、前記ガードレール支持部分3が突出状態になっても基礎ブロック5の設置とその後の埋め戻し施工を安定的に行うことができ、且つ、埋め戻し部70の上載荷重で基礎ブロック5の転倒を防止できることが要求される。本実施例においては、例えば、前記前縁58からの突出量を350mm程度に設定し、底版部12の前後長さを2000mmに設定している。
又図20は、これとは逆に、前記底版部12の前端54が、前記擁壁6の上端面9の前縁58から稍内方に退いた状態となるように基礎ブロック5を敷設した場合を示すものである。該基礎ブロック5の下面10と擁壁6の上端面9との間には例えば20mm程度の間隙8が形成されている。
【0038】
(3) 図21は、本発明で用いる基礎ブロック5の他の態様を示すものであり、前記ガードレール支持部分3の下面10aが、段差72を介して浮き上がっている。その浮き上がり量は、例えば10〜30mmに、例えば20mm程度に設定されている。図22は、かかる基礎ブロック5を用いて構成されたガードレール基礎構造1を示すものである。かかる基礎ブロック5を用いる場合は、該基礎ブロック5を敷設する際の施工誤差を吸収しやすい利点がある。
【0039】
(4) 図23は、本発明で用いる基礎ブロック5の他の態様を示すものであり、ガードレール支持部分3の両側に位置させて、前記支柱20を支持する支持孔22,22が設けられている。
【0040】
(5) 本発明において、前記連結軸部材33は省略されることもある。
【0041】
(6) 本発明に係るガードレール基礎構造1は、前記したL型擁壁ブロックを用いて構築されるものの他、図24に示すブロック積み擁壁6や、補強土擁壁、軽量盛土の擁壁等、各種の擁壁に対して応用され得る。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明に係るガードレール基礎構造を説明する断面図である。
【図2】道路が直線状を呈する区間に敷設される基礎ブロックを後側から見た斜視図である。
【図3】その前側から見た斜視図である。
【図4】道路がカーブする区間に敷設される基礎ブロックを後側から見た斜視図である。
【図5】その前側から見た斜視図である。
【図6】道路が直線状を呈する区間に構築されたガードレールの構築状態を示す一部断面斜視図である。
【図7】その平面図である。
【図8】連結軸部材を、その嵌入連結片が圧入される立壁部の連結凹部と共に示す斜視図である。
【図9】道路がカーブする区間におけるガードレールの構築状態を示す一部断面斜視図である。
【図10】その平面図である。
【図11】擁壁を説明する斜視図である。
【図12】連結軸部材相互の連結に際して、一方の基礎ブロックの立壁部に該連結軸部材の一方の嵌入連結片を圧入した状態を示す断面図である。
【図13】連結軸部材を介して立壁部相互を連結した状態を示す断面図である。
【図14】隣り合う基礎ブロックの底版部相互をボルトで緊結した状態を示す平面図である。
【図15】その緊結の他の態様を示す平面図である。
【図16】ガードレールに自動車が衝突した際に生ずる衝撃荷重によってガードレール支持部分がその基端部分で下方に屈曲した状態を示す断面図である。
【図17】擁壁の上端面と基礎ブロックの下面との間の間隙に低反発性の止水弾性体を介在させた状態を示す断面図である。
【図18】ガードレール基礎構造の他の態様を示す断面図である。
【図19】ガードレール基礎構造のその他の態様を示す断面図である。
【図20】ガードレール基礎構造のその他の態様を示す断面図である。
【図21】基礎ブロックの他の態様を示す斜視図である。
【図22】ガードレール支持部分の下面が段差を介して浮き上がっている基礎ブロックを用いて構成されたガードレール基礎構造を示す断面図である。
【図23】支柱を支持する支持孔を、ガードレール支持部分の両側に設けた基礎ブロックを示す斜視図である。
【図24】ブロック積み擁壁に応用されたガードレール基礎構造を示す断面図である。
【図25】従来のガードレール基礎構造の一例を示す断面図である。
【図26】従来のガードレール基礎構造の他の例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0043】
1 ガードレール基礎構造
2 ガードレール
3 ガードレール支持部分
5 基礎ブロック
6 擁壁
7 路肩
8 間隙
9 擁壁の上端面
10 基礎ブロックの下面
10a ガードレール支持部分の下面
11 道路
12 底版部
13 立壁部
15 つま先版部
16 かかと版部
20 支柱
22 支持孔
26 連結金具
29 ボルト挿通孔
30 連結片部
33 連結軸部材
35 連結凹部
36 嵌入連結片
49 基礎砕石層
50 基礎コンクリート
55 緩衝材
62 ボルト
63 ナット
72 止水弾性体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガードレールを支持するためのガードレール用の基礎ブロックが、擁壁で縁部が保護された路肩に沿って、且つ、該擁壁の上端面を覆うように連結状態に敷設されてなるガードレール基礎構造であって、該ガードレールに自動車が衝突した際の衝撃荷重で前記基礎ブロックが下向きに屈曲変形しても、その屈曲変形した部分が前記基礎ブロックの下側に存する擁壁の上端面に接触しないように、前記擁壁の上端面と前記基礎ブロックの下面との間に間隙を設けたことを特徴とするガードレール基礎構造。
【請求項2】
前記間隙の上下幅を10〜30mmに設定したことを特徴とする請求項1記載のガードレール基礎構造。
【請求項3】
前記間隙の全体又は一部分に、低反発性の止水弾性体を介在させたことを特徴とする請求項1又は2記載のガードレール基礎構造。
【請求項4】
前記基礎ブロックは、底版部の前端側に立壁部が立設され該立壁部が存する側で前記ガードレールを支持可能とされており、該基礎ブロック相互は、前記立壁部の端面相互が連結軸部材で連結されると共に、前記底版部相互がボルト連結されることによって連結されており、該連結軸部材の両端側の部分が、前記立壁部の端面に凹設した連結凹部に密接に嵌入されていることを特徴とする請求項1、2又は3記載のガードレール基礎構造。
【請求項5】
前記基礎ブロックは、底版部の前端側に立壁部が立設され該立壁部が存する側で前記ガードレールを支持可能とされており、該基礎ブロック相互は、該立壁部の端面相互が連結軸部材で連結されると共に、前記底版部相互が、プレストレスを導入してボルト連結されることによって連結されており、該連結軸部材の両端側の部分が、前記立壁部の端面に凹設した連結凹部に密接に嵌入されていることを特徴とする請求項1、2又は3記載のガードレール基礎構造。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate

【図22】
image rotate

【図23】
image rotate

【図24】
image rotate

【図25】
image rotate

【図26】
image rotate


【公開番号】特開2007−113315(P2007−113315A)
【公開日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−307252(P2005−307252)
【出願日】平成17年10月21日(2005.10.21)
【出願人】(000137074)株式会社ホクコン (40)
【Fターム(参考)】