説明

キキョウ抽出物又はキキョウサポニン化合物を含むC型肝炎の予防又は治療用薬学的組成物

本発明は、抗ウイルス剤として有用なキキョウサポニン及び/又はこれを含むキキョウ抽出物を有効成分として含有するC型肝炎の予防又は治療用薬学的組成物に関するもので、 本発明の組成物は人体に無害であり、C型肝炎ウイルスの増殖を抑制するので、C型肝炎の予防又は治療剤として有用に用いられ得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は抗ウイルス剤として有用なキキョウサポニン、又はこれを含むキキョウ抽出物、及びこれらを有効成分として含有するC型肝炎の予防又は治療用薬学的組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
C型肝炎ウイルス(Hepatitis C virus,HCV: 以下「HCV」という)は、主に輸血及び地域特異的感染(community-acquired)により生じる。HCVに感染すると、その兆候が現われる場合、約20%は急性肝炎に進行され、約80%程度が慢性肝炎に進行され、肝硬化及び肝癌に進行される。最近の報告によると、全世界的に約2億人以上が HCVに感染されており、米国内では4百50万人以上と推定され(最大1500万人までなるものと推定される)、欧州でも5百万人以上がC型肝炎患者であるものと知られている。
【0003】
現在までC型肝炎に対する卓越したワクチンや効果的な治療剤は存在しないので、世界の多くの製薬会社と研究所でC型肝炎治療剤を開発している。C型肝炎はB型肝炎に比べ全世界的に均一な分布を見せており、肝硬化と肝癌に転移される割合がB型肝炎より遥かに高い。なお、慢性肝炎への進行割合が遥かに高いが、このような進行メカニズムに対する研究は未だ進行中である。さらに、C型肝炎は輸血を介してだけでなく、静脈注射を介した薬物の使用やタトゥーをすることによっても感染が可能であるが、主に直接的な血液接触により感染する。C型肝炎ウイルスに感染すると、殆どの患者が慢性に進行され、再び肝硬化と肝癌に進行することになる。したがって、効果的なワクチンと治療剤の開発が切実な状態である。HCVはウイルス株(strain)間にその遺伝型(genotype)が多様であり、突然変異(mutation)が生じる場合が多いが、HCVによる慢性肝炎となった場合、遺伝的変異型(genetic variants)により再感染(reinfection)、同時感染(coinfection)などが生じることもある。このため、C型肝炎の効果的なワクチン開発は成功するのが非常に難しい。
【0004】
現在、C型肝炎の治療方法としては、α-インターフェロン(α-interferon)とリバビリン(Ribavirin)を併用使用する治療法が施されているが、その治療率が低く、副作用が非常にひどい方である。インターフェロン療法の場合、全く反応を見せない場合が約25%で、一時的に反応してから再発する場合が約25%程度である。残りの約 50%の患者では治療終了後までエイエルティ(ALT)値が正常に維持され、HCV RNAが陰性になるが、その中で50%程度は治療終了後3-6ヶ月内に再発するので、結局25%程度でのみ6ヶ月以上治療効果が維持される持続的反応(sustained response)を見せるわけである。さらに、C型肝炎ウイルスには6種の亜型(subtype)が存在し、韓国で最も多い1b型は2、3型に比べインターフェロン治療に良い反応を見せない。このような理由によりリバビリンと併用療法を用いるが、この場合、治療効果が2倍程度高くなるものと現われたが、リバビリンのみを単独に用いる場合は効果が殆どなく、赤血球が破壊され貧血などの副作用が現われるので、 主にインターフェロン治療に反応がないか、再発した場合に処方するものと知られている。したがって、今まではHCVに特異的に作用して増殖を抑制することにより、C型肝炎を効果的に治療する抗ウイルス剤は開発されていない状態である。
【0005】
HCVは1989年クローニング(molecular cloning)によりRNAゲノム(genome)が分離されており、(Choo, Q-L, et al., 1989, Isolation of a cDNA clone derived from a blood-borne non-A, non-B viral hepatitis genome. Science 244:359-362)、その後にHCVに対する分子生物学的研究が進行されてきたが、効果的な細胞培養システム(cell culture system)と動物実験モデルの不足により制約があった。しかし、最近安定にHCVの複製(replication)が可能なヘパトーマ細胞株(hepatoma cell line)が開発され、このような問題を解決することができるようになった(Lohmann, V., F. Korner, J-O Koch, U. Herian, L. Theilmann, R. Bartenschlager, 1999, Replication of subgenomic hepatitis c virus RNAs in a hepatoma cell line. Science 285:110-113)。HCV RNAレプリコン(Replicon)は、全体 HCV遺伝子を含む全体長さレプリコン(full length replicon)と構造タンパク質(structural proteins)を除いたサブゲノミックレプリコン(subgenomic replicon)がある。HCV RNAレプリコンはHCV 5'末端とHCV IRES、ネオマイシン抵抗遺伝子(resistant gene, neomycin transferase gene)、EMCV(encephalomyocarditis virus)のIRESを有するバイシストロニックレプリコン(bicistronic replicon)であり、HCV 非構造タンパク質 (nonstructural proteins)は NS3から NS5B、そしてHCV 3' 末端(untranslational region)を含む序列で構成されている。現在、HCVの各遺伝子型(genotype)に対するレプリコンが開発され、多様な患者に対する研究が進行されている。
【0006】
一方、 本発明者などはキキョウから分離されたキキョウサポニン又はこれを含むキキョウ抽出物がHCVレプリコンに対し優れた阻害活性を見せているので、今後のC型肝炎の予防又は治療剤として活用され得るとの仮定下で本発明を完成した。
【0007】
キキョウ(Platycodi Radix)は東アジア地域に自生、あるいは栽培されているキキョウ科(Campanulaceae)キキョウ属(Platycodon)に属する唯一の多年生植物キキョウ(Platycodon grandiflorum A. DC.)の根を称し、生薬名は桔梗と言う。
【0008】
キキョウの含有成分には、炭水化物(糖)が90%以上を占め、タンパク質が2.4%、脂質0.1%、そして灰分が1.5%程度存在すると報告されている。その他にトリテルペノイドサポニン(triterpenoid saponin)[プラチコジン(platycodin)A、C、D、D2、ポリガラシン(polygalacin)D、D2など24種類が報告されている]が約2%程度存在しており、これらサポニン成分などはキキョウの多様な薬理効能の有効成分として注目されている。その他にもキキョウにはα-スピナステロール(α-spinasterol)、Δ7-スティグマステロール(Δ7-stigmasterol)、α-スピナステリル-β-D-グルコシド(α-spinasteryl-β-D-glucoside)などステロイド(steroid)化合物が約0.03%程度含有されている。炭水化物は葡萄糖、果糖、砂糖、ケストースなど二糖類あるいは三糖類が殆どを占め、イヌリン(inulin)、プラチコジニン(platycodinin)(果糖10分子程度の多糖類)などの多糖類が報告されている。
【0009】
さらに、現代医学的な観点で研究されたキキョウの薬理効能としては、脳神経細胞保護効果(文献 [Yoo Ki-Yeon et al., Neurosci. lett. 444(1), 97-101 (2008)]を参考)、抗肥満効果(文献 [Zhao, H. L. et al., J. Food. Sci. 73(8), H195-H200, (2008)]を参考)、肝機能保護効果(文献 [Lee, K.J. et al., Toxicol. Lett. 147, 271-282, (2004)]を参考)、免疫機能調節活性(文献 [Ahn, K.S. et al., Life Sci. 76, 2315-2328, (2005)] を参考)、及び細胞毒性(文献 [Lee, Kyung Jin et al., Food Chem. Toxicol. 46(5), 1778-1785 (2008); Zhang, Lin et al., Molecules 12(4), 832-841, (2007)]を参考)などが報告されている。
【0010】
[参考文献1]Yoo Ki-Yeon. et al., Neurosci. lett. 444(1), 97-101, (2008)
【0011】
[参考文献2]Zhao, H. L. et al., J. Food Sci. 73(8), H195-H200, (2008)
【0012】
[参考文献3]Lee, K. J. et al., Toxicol. Lett. 147, 271-282, (2004)
【0013】
[参考文献4]Ahn, K. S. et al., Life Sci. 76, 2315-2328, (2005)
【0014】
[参考文献5]Lee, K. J. et al., Food Chem. Toxicol. 46(5), 1778-1785, (2008)
【0015】
[参考文献6]Zhang, L. et al., Molecules 12(4), 832-841, (2007)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明の目的は、C型肝炎疾患を効果的に予防又は治療可能な薬学的組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記目的に従い、本発明では有効成分としてキキョウサポニン又はこれを含むキキョウ(Platycodon grandiflorum)抽出物、及び薬学的に許容される担体を含むC型肝炎の予防又は治療用薬学的組成物を提供する。
【0018】
本発明の有効成分としてキキョウサポニン又はこれを含むキキョウ抽出物、及び薬学的に許容される担体を含むC型肝炎の予防又は治療用薬学的組成物はC型肝炎の予防又は治療剤として単独で用いるか、インターフェロンとともに、又はインターフェロン及びリバビリンとともに用いることができ、さらに他の免疫調節剤(immune modulator)、信号伝逹系(cell signalling)調節剤、抗ウイルス剤、HCVポリメラーゼ(NS5B)抑制剤、HCVプロテアーゼ(NS3/4A)抑制剤、HCVヘリカーゼ(NS3 helicase)抑制剤、HCV NS4B 抑制剤、HCV NS5A 抑制剤、HCV ウイルスの細胞侵入(cell entry)抑制剤、HCVアセンブリー(assembly)抑制剤を含む全種類のC型肝炎ウイルス増殖抑制剤の中で1種類、又は2種類以上が混合された組成物とともに併用して用いることができる。
【0019】
ここで、インターフェロンは全ての形態のインターフェロンを現わし、naturalインターフェロン、アルファ(α)-インターフェロン、ベータ(β)-インターフェロン、ガンマ(γ)-インターフェロン、ペギル化された(pegylated)-インターフェロン、アルブミン-結合(albumin-linked)インターフェロンなどを全て含み、一つ以上を選択して用いることができ、これに限られるものではない。
【0020】
抗ウイルス剤はリバビリン、ラミブジン、アマンタジンなどの薬剤中から一つ以上を選択して用いることができ、これらに限定されるものではない。
【0021】
具体的に、本発明では水、有機溶媒又はこれらの混合物を溶媒として抽出したキキョウ抽出物;及び上記キキョウ抽出物から分離したサポニン系化合物でなる群から選ばれる一つ以上を有効成分として含有するC型肝炎疾患の予防又は治療用薬学的組成物を提供する。
【0022】
上記有機溶媒は10ないし100%濃度の炭素数1ないし4の低級アルコールであるのが好ましい。
【0023】
さらに、 上記キキョウ抽出物は、溶媒抽出したキキョウ抽出物を限外濾過膜で分離したキキョウ抽出物を含む。
【0024】
このとき、限外濾過膜は分子量限界100,000、5,000又は1,000であるものを用い、このように限外濾過膜で分離したキキョウ抽出物は分子量1,000以上100,000以下の抽出物又は分子量1,000以上5,000以下の抽出物である。
【0025】
さらに、上記キキョウ抽出物は、限外濾過膜で分離したキキョウ抽出物を分子量限界500以下のナノ濾過膜で分離した分子量500以上5,000以下の抽出物を含む。
【0026】
キキョウ抽出物から分離したサポニン系化合物は、下記化学式1のサポニン化合物及び化学式2の(プロ)サポゲニン化合物を含む:
【0027】
[化学式1]
【0028】
【化1】

【0029】
上記化学式1で、
【0030】
R1は、グルコピラノシル-(1→6)-グルコピラノシル-(1→6)-グルコピラノシル(

)、ゲンチオビオシル(

)、グルコシル (

)又はラミナリビオシル (

)であり、
【0031】
R2は、CH2OH、CH3、COOH 又は COOCH3 であり、
【0032】
R3は 、H 又はアセチルであり、
【0033】
R4は 、H 又はアピオシル(

)である。
【0034】
[化学式2]
【0035】
【化2】

【0036】
上記化学式 2で、
【0037】
R5は H、グルコシル又はラミナリビオシルであり、
【0038】
R6は CH2OH 又は CH3であり、
【0039】
R7は Hであり、
【0040】
さらに、上記R6及び R7は互いに繋がった -CO-であり、
【0041】
R8は H 又は CH3 である。
【0042】
上記化学式1のサポニン化合物は、デアピオプラチコシドE(deapioplatycoside E)、プラチコシド E(platycoside E)、プラチコジンD3(platycodin D3)、ポリガラシンD2(polygalacin D2)、ポリガラシンD(polygalacin D)、プラチコン酸A(platyconic acid A)、デアピオプラチコジン D2(deapioplatycodin D2)、プラチコジンD2(platycodin D2)、デアピオプラチコジン D(deapioplatycodin D)、 プラチコジン D(platycodin D)、2"-O-アセチル-デアピオポリガラシンD2 (2"-O-acetyl-deapiopolygalacin D2)、2"-O-アセチル-ポリガラシンD2(2"-O-acetyl-polygalacin D2)又はプラチコン酸 A メチルエステル(platyconic acid A methyl ester)を含む。
【0043】
さらに、上記化学式 2 の(プロ)サポゲニン化合物はプラチコジゲニン(platycodigenin)、ポリガラシン酸(polygalacic acid)、プラチコゲニン酸 A ラクトン(platycogenic acid A lactone)、プラチコゲニン酸 A ラクトン 3-O-グルコピラノシド(platycogenic acid A lactone 3-O-glucopyranoside)、プラチコジゲニン 3-O-グルコピラノシド 28-メチルエステル (platycodigenin 3-O-glucopyranoside 28-methyl ester) 又はプラチコジゲニン 3-O-ラミナリビオシド 28-メチルエステル(platycodigenin 3-O-laminaribioside 28-methyl ester)の中から選ばれることを含む。
【0044】
一方、キキョウ抽出物から分離したサポニン系化合物は、キキョウ溶媒抽出物を逆相ゲルを用いて分離し、これをエタノール又はメタノールに溶解した後、エチルアセテートで結晶化したキキョウ粗サポニンを含み、上記化学式 2の(プロ)サポゲニン化合物はキキョウ粗サポニンを加水分解して製造され得る。
【0045】
一方、前述したように、本発明のC型肝炎疾患の予防又は治療用薬学的組成物は、1種類以上のC型肝炎ウイルス増殖抑制剤をさらに含むことができる。
【0046】
上記 C型肝炎ウイルス増殖抑制剤は、免疫調節剤、信号伝逹系調節剤、抗ウイルス剤、HCV ポリメラーゼ(NS5B)抑制剤、HCV プロテアーゼ(NS3/4A)抑制剤、HCV ヘリカーゼ(NS3 helicase)抑制剤、HCV NS4B 抑制剤、HCV NS5A 抑制剤、HCV ウイルスの細胞侵入(cell entry)抑制剤及びHCV アセンブリー抑制剤でなる群から選択され得る。
【0047】
さらに、本発明のC型肝炎疾患の予防又は治療用薬学的組成物は、免疫調節剤であるインターフェロン;及びリバビリンをさらに含むことが可能である。
【0048】
さらに、上記免疫調節剤はnaturalインターフェロン、α-インターフェロン、β-インターフェロン、γ-インターフェロン、ペギル化されたインターフェロン、アルブミン-結合インターフェロン及びサイトカインでなる群から選択され得る。
【0049】
さらに、本発明ではキキョウ抽出物を含むC型肝炎疾患の予防又は治療用薬学的組成物と、前述したC型肝炎ウイルス増殖抑制剤を併用投与する方法を提供する。
【0050】
特に、キキョウ抽出物を含むC型肝炎疾患の予防又は治療用薬学的組成物とともに免疫調節剤とリバビリンを同時に選択して併用投与するのが好ましい。
【0051】
本発明ではさらに、水、有機溶媒又はこれらの混合物を溶媒として抽出したキキョウ抽出物;及び上記キキョウ抽出物から分離したサポニン系化合物でなる群から選ばれる一つ以上を有効成分として含有するC型肝炎疾患の予防、又は改善用健康機能食品を提供する。
【発明の効果】
【0052】
本発明に係わるキキョウサポニン又はこれを含むキキョウ抽出物及びこれらを有効成分として含む組成物は人体に無害であり、C型肝炎ウイルスの増殖を効果的に抑制するので、C型肝炎の予防又は治療剤として有用に用いられ得る。
【発明を実施するための形態】
【0053】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0054】
本発明のキキョウ抽出物はキキョウを水、有機溶媒又はこれらの混合溶媒で抽出して得ることができ、有機溶媒としてはメタノール又はエタノールのようなC1-4 アルコール、エチルアセテート、ヘキサン、ジクロロメタンなどを例示することができる。好ましくは 0 ないし 100%濃度のC1-4 アルコール水溶液、さらに好ましくは 0 ないし 100% 濃度のエチルアルコール(酒精)水溶液を用いることができる。
【0055】
本発明のキキョウ抽出物は生キキョウ、干しキキョウ又はこれの乾燥物を粉碎した粉末を溶媒抽出することにより製造することができる。
【0056】
具体的に、陰地で乾燥して細かく粉碎したキキョウにキキョウ体積の2ないし200倍、好ましくは10ないし30倍の水又は有機溶媒を添加し、10ないし100℃の温度で抽出する。上記抽出方法には浸漬抽出、超音波抽出、還流抽出などの方法を用いることができ、必要に応じて2回以上繰り返して実施することができる。さらに、上記で収得された抽出物を濾過又は遠心分離して固形分を除去し濃縮した後、凍結乾燥などの方法で乾燥させ、水気が完全に除去されたキキョウ溶媒抽出物を得ることができる。
【0057】
キキョウ溶媒抽出物からキキョウ粗サポニンの分離精製は、キキョウ抽出物に水を重量比で5-50倍を加えて完全に溶解させた後、逆相ゲル(RP-18、Diaion HP-20、 MCI-gelなど)又はイオン交換(Ion exchange)ゲルがキキョウ抽出物重量の5-100倍に充填された管を用いて分離する。これらゲルが充填された管にキキョウ抽出物水溶液を投入してキキョウ粗サポニンが充分に吸着された後、水50-1000倍量で吸着されない糖成分、アミノ酸成分などを除去し、残りを10-100倍量のアルコール水溶液で洗い出す。洗い出した溶液を濃縮させた後、これを再びアルコール溶液(10-50倍)に溶解し、その後に生成された固形分を除去し濃縮させてキキョウ粗サポニンを得る。
【0058】
キキョウ溶媒抽出物又はキキョウ粗サポニンからサポニンの分離精製は、キキョウ粗サポニンを重量比5-20倍の水に溶解した後、逆相ゲル(RP-18、MCI-gelなど)で充填されたカラムが装着された MPLC、HPLCを用いて分離精製した。
【0059】
本発明の薬学的組成物は、キキョウサポニン又はキキョウ抽出物を組成物の総重量の0.1ないし90重量%、 好ましくは10ないし70 重量%の量で含むことができる。
【0060】
本発明のキキョウサポニン又はこれを含むキキョウ抽出物を含有する薬学的組成物は、C型肝炎ウイルスの増殖を著しく抑制し、優れたC型肝炎の予防及び治療効果を奏する。
【0061】
本発明のキキョウサポニン又はこれを含むキキョウ抽出物を含有する薬学的組成物は、薬学的組成物の製造に通常用いる適宜な担体、賦形剤及び希釈剤をさらに含むことができ、それぞれ通常の方法に従い散剤、顆粒剤、錠剤、丸剤、カプセル剤、溶液剤、油剤、懸濁剤、エマルジョン、シロップ剤などの経口用剤形物に用いられ得る。抽出物を含む組成物に含まれ得る担体、賦形剤及び希釈剤としてはラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、エリスリトール、 マルチトール、澱粉、アカシアゴム、アルギネート、ゼラチン、カルシウムホスフェート、カルシウムシリケート、セルロース、メチルセルロース、非晶質セルロース、 ポリビニルピロリドン、水、メチルヒドロキシベンゾエート、プロピルヒドロキシベンゾエート、タルク、マグネシウムステアレート及び鉱物油を挙げることができる。 経口投与のための固形製剤には錠剤、丸剤、散剤、顆粒剤、カプセル剤などが含まれ、このような固形製剤は上記抽出物に一つ以上の賦形剤、例えば、澱粉、カルシウムカーボネート、スクロース、ラクトース、ゼラチンなどを組み合わせて製造することができる。さらに、マグネシウムステアレート、タルクのような潤滑剤を用いることができる。経口のための液状製剤としては懸濁剤、溶液剤、油剤、シロップ剤などが該当し、通常用いられる水、リキッドパラフィン、又は多様な賦形剤、例えば、湿潤剤、甘味剤、芳香剤、保存剤などが含まれ得る。
【0062】
さらに、本発明の組成物には本発明のキキョウサポニン又はこれを含むキキョウ抽出物を含む薬学的組成物だけでなく、C型肝炎の予防又は治療剤に用いられるインターフェロンなどの免疫調節剤、信号伝逹系調節剤、リバビリンなどの抗ウイルス剤、HCV ポリメラーゼ(NS5B)抑制剤、HCV プロテアーゼ(NS3/4A)抑制剤、HCV ヘリカーゼ(NS3 helicase)抑制剤、HCV NS4B 抑制剤、HCV NS5A 抑制剤、HCVの細胞侵入抑制剤、HCV アセンブリー抑制剤を含む全種類のC型肝炎ウイルス増殖抑制剤、又はこれらの混合物などが共に含まれ得る。
【0063】
本発明に係わる薬学的組成物は経口、経皮、皮下、筋肉、又は静脈を含む多様な経路を介して投与され得、好ましい投与量は患者の年齢、性別及び体重、健康状態及び疾患の重症度などの多様な関連因子に照らし、当業者により適宜決定され得る。具体的に人の場合、1日投与量は0.02ないし1000 mg/kg体重、好ましくは1ないし 200 mg/kg体重の範囲であり得、1回又は数回分けて投与することもできる。上記投与量は如何なる面においても本発明の範囲を限定するものではない。
【実施例】
【0064】
以下、本発明を好ましい実施例に基づいてより具体的に説明する。
【0065】
但し、 以下の実施例は本発明を例示するためのものであるだけで、本発明の範囲がこれをもって限定されるものではない。
【0066】
実施例 1 : キキョウ抽出物の製造
【0067】
キキョウ粉末1,000g に蒸溜水5,000 mlを加え、90℃から6時間のあいだ2回還流抽出した後、冷却させて30分間常温で遠心分離(10,000 x g)して固形分を除去した。遠心分離された溶液を凍結乾燥させ、粉末状のキキョウ抽出物 368g(DrJ-1)を得た。
【0068】
キキョウ粉末 1,000gに酒精エタノール 5,000 mlを加え、水浴上で 6時間のあいだ 2回還流抽出した後、冷却させ30分間常温で遠心分離(10,000 x g)して固形分を除去した。遠心分離された溶液を減圧乾燥して、粉末状のキキョウ抽出物136 g(DrJ-2)を得た。
【0069】
キキョウ粉末1,000gにメタノール5,000mlを加え、水浴上で6時間のあいだ2回還流抽出した後、冷却させ30分間常温で遠心分離(10,000 x g)して固形分を除去した。遠心分離された溶液を減圧乾燥して粉末状のキキョウ抽出物 205 g(DrJ-3)を得た。
【0070】
キキョウ粉末1,000 gに酒精エタノールと水を混合し、表1の割合でそれぞれ 5,000mlになるように加え、水浴上で6時間のあいだ 2回還流抽出した後、冷却させ30分間常温で遠心分離(回転速度 10,000 x g)して固形分を除去した。遠心分離された溶液を減圧乾燥して粉末状のキキョウ抽出物を次のように得た。
【0071】
【表1】

【0072】
実施例 2:キキョウ抽出物から粗サポニンの分離
【0073】
製造例 1:キキョウ水抽出物から粗サポニンの分離
【0074】
実施例 1で製造したキキョウ水抽出物から下記のような方法で粗サポニンを分離された。
【0075】
キキョウ水抽出物100gを水1,000 mlに溶解し、500 mlの逆相ゲル(HP-20、RP-18、 又はMCIゲル)で充填されたカラム(50 × 250 mm)に注入して粗サポニンを吸着させる。吸着されない糖成分など(グルコース、ソルビトール、フルクトース、スクロース、及びフラクトオリゴ糖などイヌリン)を除去するため、1,000 mlの水及び3-5%のアセトニトリル水溶液500 mlを引き続き流し、アセトニトリルを無くすために再び水 500 mlを流す。糖成分などが完全に除去されれば、30-90%エタノール水溶液(500 ml)を充分に流し、吸着された成分を脱着させて得たエタノール水溶液を減圧蒸溜すれば7gの固形分を得る。得られた固形物をエタノール50 mlを加えてエタノールに溶解しない部分を濾過し出し、得られた濾液にエチルアセテート100 mlを加えて生成された固体を濾過し、良く乾燥させて6.5g の粗サポニン(DrJ-9)を得た。
【0076】
製造例 2:キキョウ酒精エタノール抽出物から粗サポニンの分離
【0077】
実施例1で製造したキキョウ酒精エタノール抽出物100 gを、実施例2の製造例1と同一の方法で粗サポニンを分離精製して 8gの粗サポニン(DrJ-10)を得た。
【0078】
製造例 3:キキョウメタノール抽出物から粗サポニンの分離
【0079】
実施例 1で製造したキキョウメタノール抽出物100gを、実施例 2の製造例1と同一の方法で粗サポニンを分離精製して9.8gの粗サポニン(DrJ-11)を得た。
【0080】
実施例3. 限外濾過膜濾過を用いた分子量別キキョウ組成物の製造
【0081】
製造例1. キキョウ水抽出物などから限外濾過膜濾過を用いたキキョウサポニン含有組成物の製造
【0082】
限外濾過膜(ultra-filtration membrane)はペリコン(Pellicon)2 TFF システム (Millipore USA、製品番号(PART# xi42 pm001))を用いた。実施例1で得たキキョウ水抽出物(DrJ-1)100 gを蒸溜水18,000 mlに溶解して残留物が100 mlになるまで限外濾過膜(Pellicon 2, 100 KDa)を通過させた。残った残留物に1,000 mlの水を追加して残留物の用量が100 ml 以下になるまで引き続き限外濾過膜(Pellicon 2, 100 KDa)を通過させた。限外濾過膜を通過した濾過物を集めて減圧濃縮し、分子量 100,000 以下のキキョウ組成物(DrJ-12)80 gを得た。DrJ-12(分子量 100,000 以下のキキョウ組成物)70 gを水16,000 mlに溶解して限外濾過膜(Pellicon 2, 5 KDa)を用いて上記のように処理し、分子量 5,000 以下のキキョウ組成物(DrJ-13)24 g を得た。DrJ-13(分子量 5,000 以下のキキョウ組成物)14 gを水6,000 mlに溶解して残留物が100 mlになるまで限外濾過膜(Pellicon 2, 1 KDa)を通過させた。残った残留物に1,000 mlの水を追加して残留物の用量が100 ml 以下になるまで引き続き限外濾過膜(Pellicon 2, 1 KDa)を通過させ、残った残留物100 mlを減圧濃縮させて分子量 1,000 以上 5,000 以下のキキョウ組成物(DrJ-14)10.4 gを得た。
【0083】
一方、実施例 1 で製造したキキョウ水抽出物(DrJ-1)100 gを上記のような方法で限外濾過膜(Pellicon 2, 100 KDa)を通過させた後、濾液を限外濾過膜(Pellicon 2, 1 KDa)で濾過して分子量1,000 以上100,000 以下のキキョウ組成物(DrJ-15)15.6 gを得た。
【0084】
製造例2. キキョウ酒精エタノール抽出物などから限外濾過膜を用いたキキョウサポニン含有組成物の製造
【0085】
実施例1で製造したキキョウ酒精エタノール抽出物DrJ-2を実施例3の製造例1で記述した方法で処理し、分子量100,000 以下のキキョウ組成物(DrJ-16)30 g、分子量 5,000 以下のキキョウ組成物(DrJ-17)19.5 g、分子量1,000 以上5,000 以下のキキョウ組成物(DrJ-18)11.8 g及び分子量 1,000 以上 100,000以下のキキョウ組成物(DrJ-19)10.7 gを得た。
【0086】
製造例 3. キキョウメタノール抽出物から限外濾過膜を用いたキキョウ組成物の製造
【0087】
実施例 1で製造したキキョウメタノール抽出物DrJ-3を実施例3の製造例1で記述した方法で処理し、分子量 100,000 以下のキキョウ組成物(DrJ-20)90 g、分子量 5,000 以下のキキョウ組成物(DrJ-21)70 g、分子量1,000以上5,000 以下のキキョウ組成物(DrJ-22)12.8 g 及び分子量1,000 以上100,000 以下のキキョウ組成物 (DrJ-23)11.5 g を得た。
【0088】
実施例 4. キキョウ水抽出物などからナノ濾過膜を用いたキキョウサポニン含有組成物の製造
【0089】
水抽出物から得られたDrJ-13、8 gを蒸溜水10,000 mlに溶解した後、残留物が100 ml以下になるまでナノ濾過膜(分子量限界500:nano Filtration Process Scale、 Low)を通過させ、残留物に水1,000 mlを添加した後、残留物が100ml 以下になるまで繰り返してナノ濾過膜(分子量限界500:nano Filtration Process Scale, Low)を通過させる。残留物を減圧濃縮して分子量 500 以上 5,000 以下のキキョウ組成物(DrJ-24)5 gを得た。
【0090】
分子量限界 5,000以下の DrJ-17(エタノール抽出物)とDrJ-21(メタノール抽出物)を上記のような方法で行い、分子量500 以上 5,000 以下のキキョウ組成物 DrJ-25と DrJ-26をそれぞれ得た。
【0091】
実施例 5 :キキョウサポニンの分離精製
【0092】
文献に発表された方法に従い、キキョウサポニンデアピオプラチコシドE (deapioplatycoside E)、プラチコシド E(platycoside E)、プラチコジン D3 (platycodin D3)、ポリガラシン D2(polygalacin D2)、ポリガラシン D (polygalacin D)、 プラチコン酸 A (platyconic acid A)、デアピオプラチコジン D2(deapioplatycodin D2)、プラチコジン D2、デアピオプラチコジン D、プラチコジン D、2"-O-アセチル-デアピオポリガラシン D2、2"-O-アセチル-ポリガラシン D2 などを分離精製した(文献 [Kim, Y. S. et al., Planta Med. 71, 566-568,(2005);Choi, Y. H. et al., Molecules 13(11), 2871-2879,(2008)] 参考)。
【0093】
すなわち、実施例 1で得られたメタノール抽出物 220 gを蒸溜水2.2 Lに懸濁させた後、ダイヤイオンエイチピー-20(Diaion HP-20)カラム(Φ = 5.0 * 100 cm)に吸着させた後、10 L蒸溜水で洗浄して同量の20 %メタノール、同量の 85 %メタノール、同量のメタノールの順に溶出させ、計3つの分画(第1分画ないし第3分画)に分けた。このうち第 2 分画(85% メタノール溶出分)をRP-18カラムが装着されたフューテックス(Futecs)NS-3000i システム HPLCを用いて、20mM KH2PO4、26% アセトニトリルを溶出溶媒として次のように12個のサポニンを分離し、分光学的データを用いて1番化合物のデアピオプラチコシド E(Rt 25.18 min)、2番化合物のプラチコシド E (Rt 26.38 min)、3番化合物のプラチコジン D3 (Rt 35.41 min)、4番化合物のポリガラシン D2(Rt 41.28 min)、5番化合物のポリガラシン D(Rt 44.06 min)、6番化合物のプラチコン酸 A(Rt 49.29 min)、7番化合物のデアピオプラチコジン D2(Rt 57.49 min)、8番化合物のプラチコジン D2(Rt 62.86 min)、9番化合物のデアピオプラチコジン D(Rt 62.08 min)、10番化合物のプラチコジン D(Rt 25.18 min)、 11番化合物の 2"-O-アセチル-デアピオポリガラシン D2(Rt 81.13 min)、12番化合物の 2"-O-アセチル-ポリガラシン D2(Rt 83.13 min)であることを確認した。 一方、プラチコン酸 Aを下記の参考文献 8の方法に従いジアゾメタンでメチル化し、13番化合物のプラチコン酸 Aメチルエステルを得た。
【0094】
[参考文献7]Kim、 Y. S. et al., Planta Med. 71, 566-568,(2005)
【0095】
[参考文献8]Choi, Y. H. et al., Molecules 13(11), 2871-2879,(2008)
【0096】
上記のようにキキョウ抽出物から分離精製されたサポニン(1-13番化合物)の構造を下記化学式 1 及び表 2に示した。
【0097】
[化学式 1]
【0098】
【化1】

【0099】
上記化学式1で、キキョウ抽出物から分離精製されたサポニン(1-13番化合物)の R1〜R4は下記表 2の通りである。
【0100】
【表2】

【0101】
さらに、表3 及び表4にキキョウ抽出物から分離精製されたサポニン(1-13番化合物)の13C-NMR 化学的移動値(δ)を示した(溶媒: DMSO-d6)。
【0102】
【表3】

【0103】
【表4】

【0104】
実施例 6. キキョウ粗サポニンの加水分解
【0105】
製造例 1:粗サポニンの酸加水分解
【0106】
上記実施例 1で得られた粗サポニン5 gに5%硫酸(H2SO4)水溶液20 mlを加えて 2時間のあいだ還流させた後、常温で冷却させ1N NaHCO3 水溶液で中和した後、エチルアセテート50 mlで3回抽出した。抽出したエチルアセテート溶液を減圧濃縮し、これをRP-18カラムクロマトグラフィー(溶離剤:60-80%メタノール水溶液)で分離精製し、化合物14(250 mg)、15(120mg)、16(375mg)及び17(164mg)をそれぞれ得ており、分光学的資料を介して化学構造を糾明した。
【0107】
製造例 2 :粗サポニンのアルカリ加水分解
【0108】
上記実施例1で得られた粗サポニン5 gを 2N NaOH水溶液10 mlと50%メタノール水溶液10 mlに溶解した後、5時間のあいだ還流させて常温で冷却させ、1N HCl水溶液で中和させた後、エチルアセテート50 mlで3回抽出した。抽出したエチルアセテート溶液を減圧濃縮し、これを RP-18カラムクロマトグラフィー(溶離剤:60-80%メタノール水溶液)で分離精製し、化合物18(120 mg)及び19(164 mg)をそれぞれ得ており、スペクトラムデータを介して化学構造を糾明した。
【0109】
上記で得た化合物 14〜19の構造を下記化学式 2 及び表 5に示した。
【0110】
[化学式 2]
【0111】
【化2】

【0112】
上記化学式 2で、 化合物 14〜19の R5〜R8は下記表 5の通りである。
【0113】
【表5】

【0114】
さらに、表 6に上記化合物 14〜19の13C-NMR 化学的移動値(δ)を示した(溶媒: DMSO-d6)。
【0115】
【表6】

【0116】
<実験例1> HCVレプリコン(subgenomic RNA replicon)細胞株でHCV RNA 複製阻害活性調査
【0117】
本発明のキキョウサポニンとキキョウ抽出物及びキキョウサポニン含有組成物、そしてサポゲニン及びプロサポゲニン等のHCVレプリコンに対する阻害活性を調査するため次のような実験を実施した。
【0118】
HCV レプリコン細胞株の培養
【0119】
HCV複製を阻害する化合物の探索は、HCVレプリコンを有している細胞株に各化合物を加えた後培養し、このとき発現されたHCV RNAの発現程度を定量的に測定してその阻害活性を計算した。本発明に用いられたHCV レプリコンはHCV-1b型C型肝炎ウイルス遺伝子を用いており、HCV IRES、ネオマイシン抵抗遺伝子、EMCV(encephalomyocarditis virus)のIRESを有するバイシストロニックレプリコンであり、HCV 非構造タンパク質はNS3から NS5B、そしてHCV 3'末端を含む序列に構成されている。このようなHCVレプリコンを含む発現ベクターを試験管内転写(in vitro transcription)して得られたHCVレプリコンを、肝癌細胞株 Huh-7内にエレクトロポレーション(electroporation)方法で形質転換(transfection)しており、Huh-7 細胞株の中で HCVレプリコンを有する細胞株のみを選別するため、抗生剤 G418(500 μg/ml)が添加された培地で培養した。選別された細胞株は 10% FBSと非必須アミノ酸(nonessential amino acids)、500 μg/ml G418が添加された DMEM(Dulbecco's modified Eagles's media)培地で培養した。
【0120】
HCV レプリコンに対する化合物の阻害活性測定
【0121】
HCVサブゲノミック RNAレプリコンを含む肝癌細胞株 Huh-7を6ウェルプレートに約3×105細胞の濃度で5% CO2 培養器(incubator)で37℃に24時間のあいだ培養してプレートの底に細胞を固定した。それぞれのウェルを2% FBSと非必須アミノ酸、500 μg/ml G418が添加されたDMEM 培地に交換した後、DMSOで溶解した実験化合物を定められた濃度に従い各ウェルに添加し、5% CO2 培養器で37℃に72時間のあいだ培養しており、同時に対照群として同一濃度のDMSO(negative control)とインターフェロン-α (positive control)を添加して比較した。培養が終わると各ウェルの培地を除去し、1 mlのPBSで洗浄した後、250 μLのトリプシン/EDTAを添加してプレートから細胞を分離し、再びPBSで洗浄して培地成分を除去した細胞を回収した。ここで得られた細胞からSV total RNA isolation system(Promega corporation)を用いて総RNAを分離しており、GeneQuant pro(Amersham bioscience)を用いてRNAを定量した。各化合物などのHCVレプリコンに対するEC50はRT-PCR方法を用いて対照群との比較を介して測定した。HCV 1bのNS5B部分をターゲットとするプライマーを用いており、AccessQuickTM RT-PCR システム(Promega corporation)を用いたRT-PCR 方法で測定した。RT-PCRと共により正確でかつ定量的なEC50の計算のために定量的リアルタイム(quantitative real-time)PCR方法を用いた。分離されたRNAから逆転写システム(Reverse transcription system, Promega corporation)を用いてcDNAを得た後、iQ SYBR Green Supermix(Bio-rad)を用いて定量的リアルタイムPCR 反応を実施した。同時に Taqman probeを用いた一段階リアルタイム(one-step real time)RT-PCR反応を実施して各化合物の阻害活性を定めた。HCV 5'-UTR 部分をターゲットとするプライマーを用いており、対照遺伝子(reference gene)としてはGAPDH(Glyceraldehyde-3-phosphate dehydrogenase)遺伝子を用いて補正した。リアルタイム RT-PCR 反応及び測定はiCycler iQ5 システム(Bio-rad)を用いており、iCycler iQ5 光学システムソフトウェア(Bio-rad)プログラムを用いて EC50 値を計算して阻害活性を定めた。本発明のキキョウサポニンとキキョウ抽出物及びキキョウサポニン含有組成物、そしてサポゲニン及びプロサポゲニン等のHCV レプリコンに対する阻害活性は下記表 7 及び表8に示した。
【0122】
【表7】

【0123】
【表8】

【0124】
<実験例 2> インターフェロンとキキョウ抽出物及びキキョウサポニン類の併用療法 (Combination therapies)での HCV RNA 複製阻害活性調査
【0125】
本発明のキキョウサポニンとキキョウ抽出物及びキキョウサポニン含有組成物などとインターフェロンを共に用いた時のHCV複製阻害に対する相互作用を調べるために次のような実験を実施した。
【0126】
実験例 1と同一の HCVサブゲノミックレプリコン細胞株を用いており、インターフェロンはヒトインターフェロン α-A(PBL Biomedical Laboratories)を用いた。先ず、実験に用いられたキキョウ抽出物とインターフェロンに対するEC50 値を求めるために多様な濃度でHCV レプリコン細胞に単独投与した後、実験例 1の方法に従いそれぞれのEC50 値を計算した。併用療法に伴う相互作用を確認するため、キキョウ抽出物とインターフェロンをHCVレプリコン細胞に定められた濃度で単独処理あるいは併用処理し、5% CO2 培養器で37℃に3日乃至3週間培養した後、HCV複製阻害活性を測定した。併用処理に伴う相互作用の程度は、定められた濃度範囲での単独処理時の阻害活性に対する併用処理時の阻害活性の増加を比べてChouの方法(参考文献:Chou, T. C.,2006, Theoretical basis, experimental design, and simulation of synergism and antagonism in drug combination studies. Pharmacological Reviews. 58:621-681)に従い定めており、相互作用の程度に従い相乗作用(synergic effect)、相加的効果(additive effect)、拮抗作用(antagonism)などに表記した。本発明のキキョウサポニンとキキョウ抽出物及びキキョウサポニン含有組成物とインターフェロンとのHCV複製阻害に対する相互作用の結果は、下記表9、10と11に示した。 Biosoft社のCalcuSynプログラムを用いて相互作用の組合指数(CI値、 combination index)を計算しており、CI値が1より低い場合は相乗作用を現し、CI値が約1の場合は相加的効果を、1より大きい場合は拮抗作用を現わす。キキョウ抽出物 DrJ-14と DrJ-24、そしてキキョウ粗サポニン DrJ-9を0.94μg/ml、1.88μg/ml、3.75μg/ml、7.50μg/ml、15μg/ml、30μg/mlの濃度で処理し、インターフェロンを0.47U/ml、0.94U/ml、1.88U/ml、3.75U/ml、7.5U/ml、15U/mlの濃度で併用処理して実験した。キキョウ抽出物 DrJ-14とDrJ-24、キキョウ粗サポニン DrJ-9を用いたインターフェロンとの併用療法実験で全て1より低い CI値を見せ、併用処理時の相乗作用の効果があるものと現われた。
【0127】
【表9】

【0128】
【表10】

【0129】
【表11】

【0130】
<実験例 3> 細胞毒性実験
【0131】
本発明のキキョウサポニンとキキョウ抽出物及びキキョウサポニン含有組成物、そしてサポニン類似体等の細胞毒性(Cytotoxicity)を確認するため、HepG2細胞を用いて一般に広く知られたMTT分析方法で試験管内(in vitro)実験を実施した結果、実験に用いられたキキョウサポニンとキキョウ抽出物及びキキョウサポニン含有組成物、 そしてサポニン類似体等は全てCC50値が100 μg/ml 以上で、細胞に対する毒性が非常に少ない物質であるものと確認された。
【0132】
本発明の目的を達成するために、上記本実施形態を基礎として他の実施形態を採用することができる。また、本発明の範囲内で様々な実施形態を採用することもできる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水、有機溶媒又はこれらの混合物を溶媒として抽出したキキョウ抽出物;及び前記キキョウ抽出物から分離したサポニン系化合物でなる群から選ばれる一つ以上を有効成分として含有するC型肝炎疾患の予防又は治療用薬学的組成物。
【請求項2】
前記有機溶媒は、10ないし100%濃度の炭素数1ないし4の低級アルコールであることを特徴とする請求項1に記載のC型肝炎疾患の予防又は治療用薬学的組成物。
【請求項3】
前記キキョウ抽出物は、溶媒抽出したキキョウ抽出物を限外濾過膜で分離したキキョウ抽出物を含むことを特徴とする請求項1に記載のC型肝炎疾患の予防又は治療用薬学的組成物。
【請求項4】
前記限外濾過膜は、分子量限界100,000、5,000又は1,000であるものを用いることを特徴とする請求項3に記載のC型肝炎疾患の予防又は治療用薬学的組成物。
【請求項5】
前記限外濾過膜で分離した前記キキョウ抽出物は、分子量1,000以上100,000以下の抽出物又は分子量1,000以上5,000以下の抽出物であることを特徴とする請求項3に記載のC型肝炎疾患の予防又は治療用薬学的組成物。
【請求項6】
前記キキョウ抽出物は、前記限外濾過膜で分離した前記キキョウ抽出物を分子量限界500以下のナノ濾過膜で分離した分子量500以上5,000以下の抽出物を含むことを特徴とする請求項3に記載のC型肝炎疾患の予防又は治療用薬学的組成物。
【請求項7】
前記キキョウ抽出物から分離した前記サポニン系化合物は、下記化学式1のサポニン化合物及び化学式2の(プロ)サポゲニン化合物を含むことを特徴とする請求項1に記載のC型肝炎疾患の予防又は治療用薬学的組成物:
[化学式1]
【化1】

上記化学式 1で、
R1はグルコピラノシル‐(1→6)-グルコピラノシル-(1→6)-グルコピラノシル (

)、 ゲンチオビオシル (

)、 グルコシル (

) 又はラミナリビオシル (

)であり、
R2は CH2OH、 CH3、 COOH 又は COOCH3 であり、
R3は H 又はアセチルであり、
R4は H 又はアピオシル (

)である。
[化学式 2]
【化2】

上記化学式2で、
R5はH、グルコシル又はラミナリビオシルであり、
R6はCH2OH又はCH3であり、
R7はHであり、
さらに、前記R6及びR7は互いに繋がった-CO-であり得、
R8はH又はCH3である。
【請求項8】
前記キキョウ抽出物から分離した前記サポニン系化合物は、キキョウ溶媒抽出物を逆相ゲルを用いて分離し、これをエタノール又はメタノールに溶解した後、エチルアセテートで結晶化したキキョウ粗サポニンを含むことを特徴とする請求項1に記載のC型肝炎疾患の予防又は治療用薬学的組成物。
【請求項9】
前記化学式1の前記サポニン化合物は、デアピオプラチコシドE(deapioplatycoside E)、プラチコシドE(platycoside E)、プラチコジンD3(platycodin D3)、ポリガラシンD2(polygalacin D2)、ポリガラシンD(polygalacin D)、プラチコン酸A(platyconic acid A)、デアピオプラチコジンD2(deapioplatycodin D2)、プラチコジンD2(platycodin D2)、デアピオプラチコジンD(deapioplatycodin D)、プラチコジンD(platycodin D)、2"-O-アセチル-デアピオポリガラシンD2(2"-O-acetyl-deapiopolygalacin D2)、2"-O-アセチル-ポリガラシンD2(2"-O-acetyl-polygalacin D2)及びプラチコン酸Aメチルエステル(platyconic acid A methyl ester)の中から選ばれることを特徴とする請求項7に記載のC型肝炎疾患の予防又は治療用薬学的組成物。
【請求項10】
前記化学式2の前記(プロ)サポゲニン化合物は、プラチコジゲニン(platycodigenin)、ポリガラシン酸(polygalacic acid)、プラチコゲニン酸Aラクトン(platycogenic acid A lactone)、プラチコゲニン酸Aラクトン3-O-グルコピラノシド(platycogenic acid A lactone 3-O-glucopyranoside)、プラチコジゲニン3-O-グルコピラノシド28-メチルエステル(platycodigenin 3-O-glucopyranoside 28-methyl ester)、及びプラチコジゲニン3-O-ラミナリビオシド28-メチルエステル(platycodigenin 3-O-laminaribioside 28-methyl ester)の中から選ばれることを特徴とする請求項7に記載のC型肝炎疾患の予防又は治療用薬学的組成物。
【請求項11】
前記(プロ)サポゲニン化合物は、キキョウ粗サポニンを加水分解して製造されることを特徴とする請求項8又10に記載のC型肝炎疾患の予防又は治療用薬学的組成物。
【請求項12】
1種類以上のC型肝炎ウイルス増殖抑制剤をさらに含む請求項1ないし10の何れか一項に記載のC型肝炎疾患の予防又は治療用薬学的組成物。
【請求項13】
前記C型肝炎ウイルス増殖抑制剤は、免疫調節剤、信号伝逹系調節剤、抗ウイルス剤、HCVポリメラーゼ(NS5B)抑制剤、HCVプロテアーゼ(NS3/4A)抑制剤、HCVヘリカーゼ(NS3 helicase)抑制剤、HCV NS4B抑制剤、HCV NS5A抑制剤、HCVウイルスの細胞侵入(cell entry)抑制剤、及びHCVアセンブリー抑制剤でなる群から選ばれることを特徴とする請求項12に記載のC型肝炎疾患の予防又は治療用薬学的組成物。
【請求項14】
免疫調節剤であるインターフェロン;及びリバビリンをさらに含む請求項1ないし10の何れか一項に記載のC型肝炎疾患の予防又は治療用薬学的組成物。
【請求項15】
前記免疫調節剤はnaturalインターフェロン、α-インターフェロン、β-インターフェロン、γ-インターフェロン、ペギル化された(pegylated)-インターフェロン、アルブミン-結合(albumin-linked)インターフェロン、及びサイトカインでなる群から選ばれる請求項13に記載のC型肝炎疾患の予防又は治療用薬学的組成物。
【請求項16】
水、有機溶媒又はこれらの混合物を溶媒として抽出したキキョウ抽出物;及び前記キキョウ抽出物から分離したサポニン系化合物でなる群から選ばれる一つ以上を有効成分として含有するC型肝炎疾患の予防又は改善用健康機能食品。

【公表番号】特表2012−515773(P2012−515773A)
【公表日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−547776(P2011−547776)
【出願日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際出願番号】PCT/KR2010/000376
【国際公開番号】WO2010/085091
【国際公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【出願人】(511167168)ビー アンド シー バイオファーマ シーオー.,エルティーディ (1)
【氏名又は名称原語表記】B&C BIOPHARM CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】2F,D−1 Bldg.,Advanced Institutes of Convergence Technology,906−5 Iuidong,Yeongtong−gu,Suwon−si, Gyeonggi−do 443−270 Republic of korea
【Fターム(参考)】