説明

キセノンCT装置、動脈血速度定数決定方法及び血流量算出方法

【課題】被検体中の被検査部位の血流量(の絶対値)を精度よく算出することを可能とする。
【解決手段】血流量測定装置10において、コンピュータ50内のデータ処理手段130は、被検査部位キセノン濃度C(t)の経時変化(に応じたCT画像データのCT値ΔCT)から被検査部位速度定数K、動脈血速度定数Ka及びキセノン分配係数λの3つのパラメータを決定し、決定した被検査部位速度定数K及びキセノン分配係数λを用いて血流量fを求める。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、被検体中の被検査部位の血流量を精度よく算出することが可能となるキセノンCT装置と、前記被検査部位のキセノン濃度の経時変化から前記被検体の動脈中の血流のキセノン濃度の速度定数を決定する動脈血速度定数決定方法と、該動脈血速度定数決定方法を利用して前記被検査部位の血流量を算出する血流量算出方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
X線CT装置により被検体としての、例えば、患者の頭部の断層画像を得ながら、ガス吸入装置から送出されるキセノンガスと酸素ガスとの混合ガスを呼吸用マスクを通じて前記患者に一定時間吸入させた後、通常の空気を呼吸させたときの前記断層画像を解析して患者の頭部の血流を測定する方法が知られている(特許文献1参照)。
【0003】
この方法によれば、前記混合ガスが、患者の肺から肺静脈中に吸収され心臓を経由して動脈血流として頭部の組織に流れ込み、その頭部組織を経由し静脈血流を通じて心臓に戻され、該心臓を経由して肺動脈に戻される。このときの、前記頭部の組織中におけるキセノン濃度の時間的変化をX線CT装置により観察し、組織が正常である頭部のキセノン濃度の時間的変化と比較することで、前記患者の頭部診断を行うことができるようになっている。
【0004】
この方法を用いて脳の血流量を得るためには、脳の組織中におけるキセノン濃度と共に、動脈中の血流のキセノン濃度が必要となるが、上記の方法では、この動脈中の血流のキセノン濃度として、非侵襲的な方法で検出が可能な終末呼気中のキセノン濃度を代用している。
【0005】
【特許文献1】特許第3681610号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、図7に示すように、動脈中の血流のキセノン濃度(以下、動脈キセノン濃度という。)Ca(t)(t:時間であり変数)の経時変化と、終末呼気中のキセノン濃度(以下、呼気キセノン濃度という。)Ce(t)の経時変化とを比較した場合に、Ca(t)とCe(t)との間に誤差が存在するので、動脈キセノン濃度Ca(t)をそのまま呼気キセノン濃度Ce(t)に代用すると、前記誤差に起因して血流量(の絶対値)を精度よく算出することができない。
【0007】
この発明は、このような課題を考慮してなされたものであり、被検体中の被検査部位の血流量(の絶対値)を精度よく算出することが可能となるキセノンCT装置を提供することを目的とする。
【0008】
また、この発明は、被検体中の被検査部位の血流量(の絶対値)を精度よく算出するために、被検査部位のキセノン濃度の経時変化から被検体の動脈中の血流のキセノン濃度の速度定数を決定するための動脈血速度定数決定方法と、この方法を利用して前記被検査部位の血流量を算出する血流量算出方法とを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明に係るキセノンCT装置は、
被検体にキセノンガスを供給するガス供給装置と、前記被検体の被検査部位のキセノン濃度(以下、被検査部位キセノン濃度という。)C(t)を得るために前記被検査部位のCT画像データを取得するX線CT装置本体と、前記CT画像データに基づいて前記被検査部位キセノン濃度C(t)を求めると共に、該被検査部位キセノン濃度C(t)に基づいて前記被検査部位の血流量fを求めるデータ処理装置とを備えたキセノンCT装置において、
前記データ処理装置は、
前記被検査部位キセノン濃度C(t)の経時変化から前記被検体の動脈中の血流のキセノン濃度(動脈キセノン濃度)Ca(t)の速度定数(以下、動脈血速度定数という。)Kaを決定する場合に、前記被検査部位キセノン濃度C(t)の経時変化に応じた前記CT画像データの値(以下、CT値という。)ΔCTと、該CT値ΔCTの近似曲線との誤差dの自乗d2の平均(以下、自乗誤差平均という。)が最小となるときの前記被検査部位キセノン濃度C(t)の速度定数(以下、被検査部位速度定数という。)K、前記動脈血速度定数Ka及びキセノン分配係数λを求めるパラメータ決定手段と、
前記パラメータ決定手段で求めた前記被検査部位速度定数K及び前記キセノン分配係数λを用いて前記被検査部位の血流量fを求める血流量算出手段と、
を有することを特徴としている。
【0010】
また、この発明に係る動脈血速度定数決定方法は、
被検体の被検査部位のCT画像データを取得し、取得した前記CT画像データに基づいて前記被検査部位のキセノン濃度(被検査部位キセノン濃度)C(t)を求め、求めた前記被検査部位キセノン濃度C(t)の経時変化から前記被検体の動脈中の血流のキセノン濃度(動脈キセノン濃度)Ca(t)の速度定数(動脈血速度定数)Kaを決定する場合に、
前記被検査部位キセノン濃度C(t)の経時変化に応じた前記CT画像データの値(CT値)ΔCTと、該CT値ΔCTの近似曲線との誤差dの自乗d2の平均が最小となるときの前記被検査部位キセノン濃度C(t)の速度定数(被検査部位速度定数)K、前記動脈血速度定数Ka及びキセノン分配係数λを求めることにより、該動脈血速度定数Kaを決定することを特徴としている。
【0011】
さらに、この発明に係る血流量算出方法は、上記の動脈血速度定数決定方法により求めた前記被検査部位速度定数K及び前記キセノン分配係数λを用いて前記被検査部位の血流量fを求めることを特徴としている。
【0012】
これらの発明によれば、被検査部位キセノン濃度C(t)の経時変化(に応じたCT画像データのCT値ΔCT)から動脈血速度定数Kaを決定し、さらに、自乗誤差平均が最小となるときの被検査部位速度定数K、動脈血速度定数Ka及びキセノン分配係数λを求めることで、求めた前記被検査部位速度定数K及び前記キセノン分配係数λを用いて前記血流量fが求めることができる。
【0013】
従って、これらの発明では、呼気キセノン濃度Ce(t)を用いることなく前記血流量fを算出することができるので、特許文献1の技術と比較して、該血流量f(の絶対値)を精度よく算出することが可能となる。
【0014】
ここで、前記データ処理装置は、前記X線CT装置本体が撮影した前記被検体の断層画像中、前記CT画像データの前記CT値ΔCTを抽出し、抽出した前記CT値ΔCTを前記パラメータ決定手段に出力するデータ抽出手段をさらに有する。
【0015】
これにより、前記被検査部位における前記CT値ΔCTのみが抽出されて前記パラメータ決定手段に供給されるので、前記パラメータ決定手段における前記被検査部位速度定数K、前記動脈血速度定数Ka及び前記キセノン分配係数λの各パラメータの決定処理を正確に行うことができる。
【0016】
この場合、前記パラメータ決定手段は、前記CT画像データに含まれる画素毎に、前記自乗誤差平均が最小となるときの前記被検査部位速度定数K、前記動脈血速度定数Ka及び前記キセノン分配係数λを求め、前記血流量算出手段は、前記画素毎に、前記被検査部位速度定数K及び前記キセノン分配係数λを用いて前記血流量fを求める。
【0017】
これにより、前記画素毎に前記各パラメータの決定処理が行われると共に、前記血流量fの算出処理が行われるので、前記画素毎に前記血流量fをより正確に求めることができる。
【0018】
また、前記動脈血速度定数Ka及び/又は前記血流量fの分布図を表示する表示装置をさらに有すると、前記被検査部位に対する診断が容易となる。
【0019】
さらに、上述したパラメータ決定手段は、より具体的な処理として、
前記画素毎に、前記動脈キセノン濃度Ca(t)が飽和状態になったときの値(以下、飽和キセノン濃度という。)Aaと、前記CT値ΔCTに基づき求めた前記被検査部位キセノン濃度C(t)とをKety−Schmidt式に代入して、前記自乗誤差平均が最小となるときの前記動脈血速度定数Kaを求め、
求めた前記画素毎の前記動脈血速度定数Kaの平均値(以下、Ka代表値という。)を算出し、
前記画素毎に、前記Ka代表値と、前記飽和キセノン濃度Aaと、前記被検査部位キセノン濃度C(t)とを前記Kety−Schmidt式に代入して、前記自乗誤差平均が最小となるときの前記被検査部位速度定数K及び前記キセノン分配係数λを求める処理を行う。
【0020】
これにより、Ka代表値が、被検体の動脈中の動脈血速度定数Ka(Ka真値)に近似した値となるので、動脈血速度定数Ka、被検査部位速度定数K及びキセノン分配係数λを一層正確に求めることができると共に、血流量fを精度よく算出することができる。
【0021】
この場合、前記パラメータ決定手段は、前記動脈血速度定数Kaを求めたときの被検査部位速度定数Kと前記動脈血速度定数Kaとの差の絶対値が0.01min-1以下、且つ、前記自乗誤差平均が1未満である画素の動脈血速度定数Kaを用いて前記Ka代表値を算出する処理を行ってもよい。
【0022】
これにより、前記絶対値が0.01min-1よりも大きくなる画素、及び/又は、前記自乗誤差平均が1以上となった画素の動脈血速度定数Kaは、前記Ka代表値の算出処理に用いられる動脈血速度定数Kaから除外されるので、前記Ka代表値を精度よく算出することができる。
【0023】
さらに、前記パラメータ決定手段は、前記絶対値が0.01min-1以下且つ前記自乗誤差平均が1未満である画素を、前記動脈血速度定数Kaの分布図の作成が可能な有効画素と判定し、前記有効画素の数が所定数を下回る場合に、該分布図の表示を禁止するための禁止情報を生成してもよい。
【0024】
この場合、前記パラメータ決定手段は、前記禁止情報を生成した際に、前記Ka代表値の算出処理と、前記自乗誤差平均が最小となるときの被検査部位速度定数K及びキセノン分配係数λを求める処理とを休止し、前記血流量算出手段は、前記禁止情報に基づいて、前記血流量fを求める処理を休止し、前記表示装置は、前記禁止情報に基づいて、前記分布図の表示を休止する。
【0025】
これにより、前記分布図の表示が行われないので、医師等のオペレータは、前記被検体の診断にとり不適切な結果が得られたことを速やかに知ることができる。
【0026】
上記の各発明において、前記被検査部位は、前記被検体内の組織のうち、肝臓以外の組織である。すなわち、前記肝臓以外の組織は、動脈血のみの供給を受けているので、前記動脈血速度定数Kaを確実に決定することができる。
【発明の効果】
【0027】
この発明によれば、被検査部位キセノン濃度C(t)の経時変化(に応じたCT画像データのCT値ΔCT)から動脈血速度定数Kaを決定し、さらに、自乗誤差平均が最小となるときの被検査部位速度定数K、動脈血速度定数Ka及びキセノン分配係数λを求めることで、求めた前記被検査部位速度定数K及び前記キセノン分配係数λを用いて前記血流量fが求めることができる。
【0028】
従って、この発明では、呼気キセノン濃度Ce(t)を用いることなく前記血流量fを算出することができるので、特許文献1の技術と比較して、該血流量f(の絶対値)を精度よく算出することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、この発明に係るキセノンCT装置について、動脈血速度定数決定方法及び血流量算出方法との関係で好適な実施形態を、図1〜図17Cを参照しながら説明する。
【0030】
図1は、この実施形態に係る血流量測定装置10の全体的構成を示し、図2は、該血流量測定装置10の概略ブロック図を示す。
【0031】
血流量測定装置10は、図1及び図2に示すように、人等の被検体12に対するキセノンCT検査を行うためのキセノンCT装置であり、基本的には、被検体12の断層映像(キセノンCT画像)を得るX線CT装置14と、被検体12にキセノン(Xe)及び酸素(O2)の混合ガスを供給する混合ガス供給装置16とから構成される。
【0032】
X線CT装置14は、X線CT装置本体18と、該X線CT装置本体18を制御すると共に混合ガス供給装置16を制御する制御装置20とから構成される。制御装置20は、X線CT装置本体18により得られた画像データ{被検体12中の組織(被検体部位)のCT画像データを含む断層画像のデータ}等を処理するデータ処理装置としても機能する。なお、制御装置20を、X線CT装置本体18を制御する制御装置と、混合ガス供給装置16を制御する制御装置とに物理的に分離して構成することもできる。
【0033】
図1に示すように、X線CT装置本体18には、被検体12を載せた状態で矢印AB方向に移動される移動テーブル22が上面に配置された被検体載せ台24と、円筒状の開口26が形成されたガントリ32とが備えられている。ガントリ32には、その円筒状の開口26の回りを、例えば、矢印a方向に旋回するように構成されたX線管28(図2参照)と、前記開口26の回りの円周上に配置された複数の検出器からなる検出器30(図2参照)とが配されている。
【0034】
一方、混合ガス供給装置16は、キセノンガスボンベ36及び酸素ガスボンベ38と、これらからのキセノンガス及び酸素ガスを内部のコンピュータ40の制御の下に混合する吸入装置本体42と、この吸入装置本体42に一端側が接続され、且つ他端側が呼吸用マスク44に接続される導管46とを有している。
【0035】
この場合、導管46は、吸気管46aと呼気管46b及び呼吸用マスク導管46cとから構成されている。そして、呼吸用マスク44にはキセノン濃度測定センサ48が取り付けられ、該キセノン濃度測定センサ48の検出信号がコンピュータ40に供給され、コンピュータ40により呼気中のキセノン濃度が計算されるようになっている。
【0036】
混合ガス供給装置16の全体動作を制御するコンピュータ40は、制御装置20と電気的に接続され、相互に通信を行うように構成されている。
【0037】
X線CT装置14の制御装置20は、図2に示すように、制御装置及び処理装置として機能するコンピュータ50を有し、このコンピュータ50によりX線CT装置本体18及び混合ガス供給装置16の動作を制御すると共に、ガントリ32内の検出器30により検出された、被検体12の被検査部位の断層画像(例えば、脳54のCT画像データ)を構成する画素データを処理し、該断層画像等を作成する。
【0038】
なお、血流量測定装置10は、被検体12中の肝臓以外の被検査部位(組織)の断層画像の撮影(CT画像データの取得)や血流量の測定を行うことが可能であるが、以下の説明では、主として、被検査部位が脳54(脳組織)又は脾臓108(図5参照)であり、該脳54又は脾臓108の断層画像の撮影と、血流量の測定とを行う場合について説明する。また、肝臓以外の組織としたのは、該組織は、動脈血のみの供給を受けているので、動脈中の血流のキセノン濃度(動脈キセノン濃度)Ca(t)(t:時間であり変数)の速度定数(動脈血速度定数)Kaを確実に決定することができるためである。
【0039】
コンピュータ50には、さらに、マウス51(図1参照)やキーボードを有する操作コンソール52と、光磁気ディスク装置や磁気ディスク装置等の外部記憶装置55と、カラーCRT等の表示装置56とが接続されている。
【0040】
図1及び図2の血流量測定装置10において、実際上、操作コンソール52は、表示装置56の画面上に表示され、マウス51により操作されるマウスポインタにより画面上の該当表示をクリックすることにより該当表示が示す処理の実行を指示する。
【0041】
表示装置56上には、後述するように、コンピュータ50による処理を通じて、X線CT装置本体18により得られたCT画素データにより表される脳54又は脾臓108の断層画像(いわゆるCT画像)等がカラーあるいはモノクロームで表示されると共に、血流量の分布の画像(脳54の場合はCBFマップ)や該画像に対応する動脈血速度定数Kaの分布の画像(以下、Kaマップともいう。)が表示される。また、表示装置56の画面上に表示された画像は、制御装置20に内蔵されたプリンタによりプリントアウトし、カラー又はモノクロームのハードコピー57(図1参照)として出力することができるようになっている。
【0042】
次に、この実施形態に係る血流量測定装置10の動作について、図3に示すフローチャートを参照しながら説明する。なお、フローチャートの制御主体はコンピュータ50である。ここでは、脳54の断層画像を撮影する場合について説明するが、他の組織の断層画像を撮影する場合も同様である。また、ステップS1〜S11の各ステップは、特許文献1のX線CT装置の動作と略同様である。
【0043】
先ず、ステップS1において、医師等のオペレータが操作コンソール52を操作し、図4に示すように、被検体載せ台24上に被検体12を載せた状態で移動テーブル22を矢印B方向に移動させ、被検体12の脳54の断層画像が撮影できる位置で停止させる。次のステップS2では、呼吸用マスク44が被検体12の口及び鼻部を覆うように取り付けられる。
【0044】
ステップS3では、図4の測定可能状態において、操作コンソール52が操作されることで、制御装置20のコンピュータ50からの測定開始指令が混合ガス供給装置16のコンピュータ40及びX線CT装置本体18にそれぞれ送られる。これにより、ステップS4において、X線CT装置本体18による脳54の断層画像、いわゆるベースラインCT画像が撮影されて外部記憶装置55に取り込まれる。
【0045】
次に、混合ガス供給装置16のコンピュータ40による制御の下に、キセノンガスボンベ36及び酸素ガスボンベ38からそれぞれ送出されるキセノンガス及び酸素ガスが吸入装置本体42によりキセノンガス30%及び酸素70%の割合で混合され、吸気管46a、呼吸用マスク導管46c及び呼吸用マスク44を通じて被検体12の肺に供給され、且つ被検体12の肺を通じて排出される呼気ガスが呼吸用マスク44、呼吸用マスク導管46c及び呼気管46bを通じて吸入装置本体42に戻される。
【0046】
このとき、ステップS5において、被検体12に対する混合ガスの供給開始時点から、混合ガス中のキセノン濃度が所定値(この場合、30%)となるようにコンピュータ40により混合ガス供給装置16が制御されて測定が開始されることで、吸入過程、いわゆるWash−in(図7参照)が開始される。なお、呼気中のキセノン濃度の測定は、測定開始時点から、例えば、40ms毎に行われる。
【0047】
次に、ステップS6において、被検体12に対する混合ガスの吸気開始時点から、後述する飽和判断、洗い出し過程、いわゆるWash−out過程(図7参照)への切り替え等の処理を行いながら、約60s毎にガントリ32中のX線管28からX線が被検体12に対して放射され、被検体12を通過したX線が検出器30により検出されることで脳54の断層映像が約60s毎に撮像され、CT画素データとしてコンピュータ50に取り込まれる。
【0048】
次いで、ステップS7において、このCT画素データからCT値(すなわち、ハウンスフィールドユニット[HU])ΔCTが各画素毎に抽出され、さらに、このCT値ΔCTに基づき脳組織中のキセノン濃度が各画素毎に計算される。なお、この実施の形態において画素の大きさは約0.5mm角としているが、適当な大きさに変更することが可能である。
【0049】
この場合、各画素のキセノン濃度は、移動平均法を用いて計算される。具体的には、複数個(7×7個、9×9個、11×11個等であり、好ましくは、9×9個)の画素で構成された測定領域から各画素毎にキセノン濃度を求め、さらに、測定領域全体におけるこれらキセノン濃度の平均値を、測定領域の例えば中心に位置する画素のキセノン濃度として算出する。そして、測定領域を1画素単位又は複数の画素単位(例えば、測定領域単位である9画素単位)の幅で移動させながら、各画素のキセノン濃度(脳キセノン濃度)を算出する。
【0050】
次いで、ステップS8において、この脳キセノン濃度の増加の割合が、予め定めてある所定値より小さくなった場合には、飽和状態になったものと判断し、続くステップS9において、洗い出し過程が済んでいるかどうかの判断をした後、ステップS10において、混合ガスの供給を中止し、混合ガスの代わりに通常の空気を送る、いわゆる洗い出しを行う。
【0051】
さらに、ステップS6の処理を約1min(60s)毎、ステップS7の処理を40ms毎に行いながら、洗い出し過程が終了した後には(ステップS9の判断が肯定的になった後には)、ステップS11において、脳キセノン濃度が所定値以下になったことが確認されるまで、同様に約1min毎にステップS6、40ms毎にステップS7の処理を行う。そして、脳キセノン濃度が所定値以下になったとき(ステップS11:YES)、ステップS12において、以下に説明するように、CT画像のデータ(CT画像データ)に基づいて得られた、脳キセノン濃度の経時変化から、動脈(例えば、腹部大動脈)中の血流のキセノン濃度(動脈キセノン濃度)Ca(t)の速度定数(動脈血速度定数)Kaを決定し、決定した動脈血速度定数Kaに基づいて、脳血流量(血流量f)を算出する。
【0052】
そして、続くステップS13においては、算出結果等に基づき表示装置56に後述するKaマップやCBFマップ等の各種の表示を行う。
【0053】
次に、被検体12の被検査部位の血流量f(脳54の脳血流量)を算出するためのステップS12及び各種マップ{Kaマップ、血流量のマップ(CBFマップ)}を表示するためのステップS13の各処理、並びに、ステップS12、S13の処理に適用される血流量fを算出するためのアルゴリズムについて説明する。
【0054】
このアルゴリズムは、概略的に説明すれば、被検体12中の被検査部位(被検体12中、肝臓以外の組織であり、例えば、脳組織)のキセノン濃度(組織キセノン濃度、被検査部位キセノン濃度)C(t)の経時変化から動脈血速度定数Kaを決定する場合に、被検査部位キセノン濃度C(t)の経時変化に応じた断層画像のCT値(CT画像データの実測値)ΔCTと、該CT値ΔCTの近似曲線との誤差dの自乗d2の平均(自乗誤差平均)EMS(図8参照)が最小となるときの被検査部位キセノン濃度C(t)の速度定数(被検査部位速度定数)K、動脈血速度定数Ka及び組織と血液との間のキセノン分配係数λを求める(決定する)。次に、決定した被検査部位速度定数K及びキセノン分配係数λを用いて被検査部位(組織)の血流量f(脳組織であれば脳血流量)を求める。
【0055】
従って、ここでは、最初に、このアルゴリズムが妥当なものであり、且つ、特許文献1における脳血流量の算出方法と比較して、血流量f(脳血流量)の絶対値を精度よく算出することができることを説明する。次に、このアルゴリズムを実行するためのコンピュータ50(データ処理装置)の機能及び動作について説明する。最後に、このアルゴリズムを脳血流量の算出(ステップS12、S13の処理)に適用した場合について説明する。
【0056】
先ず、このアルゴリズムの妥当性について、図5〜図13を参照しながら説明する。
【0057】
図5は、任意の測定時点tにおける、被検体12の腹部の断層画像(CT画像)を示す。図5は、上述したステップS1〜S13と同様の方法により得られたものであるが、腹部の断層画像において吸入過程(Wash−in)の期間では、キセノンガス25%及び酸素75%の割合で混合ガスが構成されている点で脳54の断層撮影とは異なり、以下同様とする。なお、図5において、表示装置56の画面100上に表示される被検体12の腹部の断層画像102中、腹部大動脈104を関心領域106とする。また、断層画像102には、腹部大動脈104に近接して脾臓108が表示されている。
【0058】
図6は、図5の腹部大動脈104の動脈キセノン濃度Ca(t)の経時変化を示すグラフである。図6において、時点t=0〜w(w=4min)の期間は、吸入過程(Wash−in)の期間であり、時点t=w〜9の期間は、洗い出し過程(Wash−out)の期間である。この場合、丸印は、動脈キセノン濃度Ca(t)の実測値であり、関心領域106のCT画像データに含まれる各画素のCT値ΔCTに基づいて求められる。また、動脈キセノン濃度Ca(t)の実測値は、最小自乗法により、Wash−in期間及びWash−out期間では、例えば、次の(1)式の一次指数関数で近似することができる。
Ca(t)=Aa×[exp{−Ka×(t−τ)}
−exp(−Ka×t)] (1)
【0059】
なお、(1)式において、0≦t≦wのときτ=tであり、一方で、t>wのときτ=wであり、図6において(1)式を示す近似曲線は、実線で表示している。
【0060】
図7は、キセノン濃度測定センサ48により測定されたキセノン濃度(呼気キセノン濃度)Ce(t)の経時変化と、図6に示す動脈キセノン濃度Ca(t)の経時変化とを比較したグラフである。
【0061】
なお、図7は、w=4minにおける呼気キセノン濃度Ce(t)及び動脈キセノン濃度Ca(t){飽和状態におけるCe(t)及びCa(t)}を1として、Ce(t)及びCa(t)を規格化したものである。
【0062】
すなわち、図7中、一点鎖線のグラフは、動脈キセノン濃度Ca(t)の経時変化を示すグラフであり、破線のグラフは、呼気キセノン濃度Ce(t)の経時変化を示すグラフであり、丸印は、終末呼気の呼気キセノン濃度Ce(t)であり、実線のグラフは、終末呼気の呼気キセノン濃度Ce(t)(丸印)について、最小自乗法により一次指数関数で近似した近似曲線である。
【0063】
背景技術の項目でも説明したように、脳血流量を得るためには、脳組織中におけるキセノン濃度(脳キセノン濃度)C(t)と共に、動脈キセノン濃度Ca(t)が必要となる。特許文献1の技術では、動脈キセノン濃度Ca(t)を呼気キセノン濃度Ce(t)(の近似曲線)に代用している。
【0064】
しかしながら、図7に示すように、動脈キセノン濃度Ca(t)の経時変化と、呼気キセノン濃度Ce(t)(の近似曲線)の経時変化とを比較した場合に、Ca(t)とCe(t)との間に誤差が存在するので、動脈キセノン濃度Ca(t)をそのまま呼気キセノン濃度Ce(t)(の近似曲線)に代用すると、前記誤差に起因して血流量f(脳血流量)の絶対値を精度よく算出することができないおそれがある。
【0065】
そこで、この実施形態では、血流量f(脳組織では脳血流量)を求める際に、特許文献1の技術のように、呼気キセノン濃度Ce(t)(の近似曲線)に基づき脳血流量(血流量f)を求めるのではなく、被検体12中の肝臓以外の組織(被検査部位)における被検査部位キセノン濃度C(t)の経時変化から動脈の動脈キセノン濃度Ca(t)の速度係数(動脈血速度定数Ka)を決定し、決定した動脈血速度定数Kaに基づいて血流量f(脳血流量)を算出する新たなアルゴリズムを適用して該血流量fを求めるものである。
【0066】
具体的に、この新たなアルゴリズムにおいて、血流量fを求めるために用いられるKety−Schmidt式は、次の(2)式で表わされる。
C(t)=K×λ×∫Ca(x)×exp{−K×(t−x)}dx
(2)
【0067】
ここで、右辺の定積分の変域はx=[0、t]であり、血流量fは、f=K×λである。
【0068】
また、(1)式を(2)式に代入すると、Kety−Schmidt式は、次の(3)式のように表わされる。
C(t)=Aa×K×λ×∫[exp{−Ka×(x−τ)}
−exp(−Ka×t)]×exp{−K×(t−x)}dx
(3)
【0069】
図8は、所定画素における、CT値ΔCTの経時変化を示すグラフであり、丸印は、実測値としてのCT値ΔCTであり、実線は、最小自乗法により得られたCT値ΔCTの近似曲線であり、d1〜d9は、図8中のCT値ΔCTと前記近似曲線との誤差を示す。なお、被検査部位キセノン濃度C(t)は、CT値ΔCTに基づいて求めることができる。
【0070】
ここで、誤差dの自乗d2の平均(自乗誤差平均)EMSは、次の(4)式で表わされる。
EMS=Σdi2/n (4)
【0071】
なお、記号Σの範囲は、i=1〜nである(図8の場合、n=9)。
【0072】
ところで、上記(3)式に関し、被検査部位キセノン濃度C(t)は、次の(5)式のように、被検査部位速度定数K、動脈血速度定数Ka及びキセノン分配係数λをパラメータとし、時点tを変数とする関数Fで記述することができる。
C(t)=F(K、λ、Ka;t) (5)
【0073】
すなわち、被検査部位キセノン濃度C(t)は、任意の時点tにおいて、被検査部位速度定数K、動脈血速度定数Ka及びキセノン分配係数λの3つをパラメータとする関数である。
【0074】
そこで、先ず、各画素毎に、動脈キセノン濃度Ca(t)が飽和状態になったときの値{図6及び図7において、w=4minの飽和状態でのキセノン濃度(飽和キセノン濃度)}Aaと、被検査部位キセノン濃度C(t)とを(3)式に代入して、被検査部位速度定数K、動脈血速度定数Ka及びキセノン分配係数λの3つのパラメータを変化させながら、自乗誤差平均EMSが最小となるような動脈血速度定数Ka(1つのパラメータ)を見つける(決定する)。次に、決定した各画素毎の動脈血速度定数Kaについて、その平均値(Ka計算値、Ka代表値)を算出する。次に、算出したKa計算値と、飽和キセノン濃度Aaと、被検査部位キセノン濃度C(t)とを(3)式に代入して、各画素毎に、被検査部位速度定数K及びキセノン分配係数λを変化させながら、自乗誤差平均EMSが最小となるような2つのパラメータ(被検査部位速度定数K及びキセノン分配係数λ)を見つける(決定する)。最後に、決定した最適な被検査部位速度定数K及びキセノン分配係数λを用いて、各画素における、血流量f(f=K×λ)の絶対値を算出する。これが新たなアルゴリズムである。
【0075】
図9及び図10は、一例として、被検査部位速度定数K及び動脈血速度定数Kaを変化させた際の、自乗誤差平均EMSが最小となるときの被検査部位速度定数K及び動脈血速度定数Kaの決定処理を説明するための図である。
【0076】
図9及び図10中、丸印の横の数値は、被検査部位速度定数Kを示す。
【0077】
図9では、Ka=K=1min-1の場合に自乗誤差平均EMSが最小となり、従って、Ka=K=1min-1が最適な被検査部位速度定数K及び動脈血速度定数Kaであることが容易に理解できる。
【0078】
これに対して、図10では、Ka=1min-1及びK=0.13min-1の場合と、Ka=0.1min-1及びK=1.00min-1の場合とで、それぞれ自乗誤差平均EMSが最小となっている。この場合、最適な被検査部位速度定数K及び動脈血速度定数Kaの解の候補が2つとなる。従って、図10の場合には、最適な被検査部位速度定数K及び動脈血速度定数Kaを1つの解に特定することができない。
【0079】
ところで、前述したように、X線CT装置本体18によりCT画素データが得られ、得られたCT画素データからCT値ΔCTが各画素毎に抽出されるので、上述した新しいアルゴリズムは、各画素毎の血流量fの算出に適用される。
【0080】
従って、前記アルゴリズムでは、任意の時点tで、各画素毎に、自乗誤差平均EMSが最小となるような3つのパラメータ(被検査部位速度定数K、動脈血速度定数Ka及びキセノン分配係数λ)を決定し、次に、決定した被検査部位速度定数K及びキセノン分配係数λを用いて各画素の血流量fを算出することになる。
【0081】
次に、上述したアルゴリズムが妥当であるか否かについて検証を行ったので、その検証方法と検証結果とについて、以下に説明する。
【0082】
この検証方法では、図5の腹部大動脈104(関心領域106)中の各画素毎に、動脈キセノン濃度Ca(t)を(1)式に代入して動脈血速度定数Kaを求め、求めた各画素の動脈血速度定数Kaの平均値をKaの真値(以下、Ka真値ともいう。)とみなし、一方で、上記の新しいアルゴリズムを適用して、脾臓108中の各画素毎に、被検査部位キセノン濃度C(t)から(3)式を用いて動脈血速度定数Kaを算出し、算出した各画素の動脈血速度定数Kaの平均値(Ka計算値)と前記Ka計算値とが互いに近似していれば、前記アルゴリズムが妥当なものであると判断した。
【0083】
なお、この検証方法では、17名の被検体12(17例)に対して腹部の断層画像(CT画像)の撮影を行い、その撮影結果に基づいて、前記アルゴリズムが妥当なものであるか否かを判断した。
【0084】
次に、検証結果について、図11A〜図13を参照しながら説明する。
【0085】
図11A〜図12Cは、代表的に、任意の測定時点tにおける、2名の被検体12(2例)の腹部の断層画像110、120(図11A及び図12A参照)と、腹部大動脈112、122のCT画像データ(のCT値ΔCT)より得られた動脈血速度定数Kaの分布を示す画像(Kaマップ)116、126(図11B及び図12B参照)と、脾臓114、124のCT画像データ{のCT値ΔCTに基づく被検査部位キセノン濃度C(t)}より得られたKaマップ118、128(図11C及び図12C参照)とを、それぞれ示す。
【0086】
従って、図11B及び図12BのKaマップ116、126について、その動脈血速度定数Kaの平均値は、それぞれKa真値であり、一方で、図11C及び図12CのKaマップ118、128について、その動脈血速度定数Kaの平均値は、それぞれKa計算値である。
【0087】
なお、図11B、図11C、図12B及び図12C中、モノクロームで表示されたKaマップ116、118、126、128近傍の各棒グラフにおける0.1〜2.0の表示は、動脈血速度定数Kaの値(0.1min-1〜2.0min-1)を示し、以下同様とする。
【0088】
ここで、図11BのKaマップ116についてKa真値は1.49min-1であり、一方で、図11CのKaマップ118についてKa計算値は1.44min-1である。また、図12BのKaマップ126についてKa真値は0.74min-1であり、一方で、図12CのKaマップ128についてKa計算値は0.83min-1である。従って、これらの2例について言えば、Ka真値とKa計算値とは互いに近似している。
【0089】
図13は、上記17例について、Ka真値(Ka測定値)とKa計算値との関係を表わしたグラフである。図13に示すように、前記17例について、Ka真値とKa計算値との間では明らかな相関関係があり、且つ、Ka真値とKa計算値とが互いに近似していることが容易に理解できる。
【0090】
また、上記17例について、Ka計算値の平均値及び偏差は、1.20±0.30min-1であり、一方で、Ka真値の平均値及び偏差は、1.19±0.31min-1であった。さらに、これらの平均値及び偏差について有意差Pを調べたところ、P=0.569であった。これに対して、前記17例の終末呼気速度定数Keの平均値及び偏差は、2.46±0.54min-1であり、該終末呼気速度定数KeとKa真値との有意差P´は、P´<0.0001であった。このことから、Ka計算値とKa真値とは、終末呼気速度定数Ke及びKa真値の関係と比較して、有意差があり、従って、Ka真値を、該Ka真値に近いKa計算値に代用可能とみなすことができる。
【0091】
このように、被検査部位(組織)のKaマップを生成し、その平均値(Ka計算値)を求めることにより、該Ka計算値がKa真値に近い値となることが証明されたので、新しいアルゴリズムは、血流量fの算出にとって妥当なアルゴリズムであると言える。
【0092】
次に、コンピュータ40におけるステップS12、S13の処理について、前記アルゴリズムを実行するための機能及び動作について、図14及び図15を参照しながら説明する。
【0093】
図14は、コンピュータ40内のデータ処理手段130の概略的な構成を示す機能ブロック図であり、図15は、図14のパラメータ決定手段134における上記3つのパラメータ(被検査部位速度定数K、動脈血速度定数Ka、キセノン分配係数λ)の決定処理を説明するためのフローチャートである。
【0094】
データ処理手段130は、ROIデータ抽出手段132、パラメータ決定手段134、パラメータ記憶手段136、血流量算出手段138及び出力処理手段140を有する。
【0095】
ROIデータ抽出手段132は、オペレータが、表示装置56の画面100上に表示された断層画像から、特定の領域(前述した脾臓108や脳54)を円等の閉曲線で囲む操作によって、関心領域ROI(Kaマップ及び血流量fのマップを生成したい組織)の設定作業を行うと、前記関心領域に含まれる画素を特定し、次に、X線CT装置本体18の検出器30(図2参照)で所定の時間間隔(約60s)の測定時点t毎に検出され、且つ、外部記憶装置55に記憶されているCT値ΔCTから、関心領域ROIに含まれる画素に対応するCT値ΔCTを抽出し(読み出し)、抽出した各画素のCT値ΔCTをパラメータ決定手段134に出力する。従って、データ処理手段130は、ステップS12、S13の処理を実行することにより、測定時点tにおける3つのパラメータを決定すると共に、測定時点tでの血流量fを算出して、Kaマップ及び血流量fのマップを生成することが可能である。すなわち、データ処理手段130は、測定時点t毎のKaマップ及び血流量fのマップを生成可能である。
【0096】
パラメータ決定手段134は、図15のフローチャートに従って、前記関心領域ROIの各画素毎に、測定時点tにおける、CT値ΔCTの自乗誤差平均EMSが最小となるような3つのパラメータ(被検査部位速度定数K、動脈血速度定数Ka及びキセノン分配係数λ)を見つける(決定する)。
【0097】
すなわち、ステップS20において、パラメータ決定手段134は、各画素毎に、外部記憶装置55から読み出した飽和キセノン濃度Aaと、CT値ΔCTに基づいて求めた被検査部位キセノン濃度C(t)とを(3)式に代入して、被検査部位速度定数K、動脈血速度定数Ka及びキセノン分配係数λの3つのパラメータを変化させながら、自乗誤差平均EMSが最小となるような1つのパラメータとしての動脈血速度定数Kaを求める(決定する)。
【0098】
次に、ステップS21において、パラメータ決定手段134は、ステップS20で動脈血速度定数Kaを求めたときの被検査部位速度定数Kと、該動脈血速度定数Kaとの差の絶対値が0.01min-1以下(|K−Ka|≦0.01min-1)であるか否かを判断する。|K−Ka|≦0.01min-1であれば、ステップS22において、自乗誤差平均EMSが1未満(EMS<1)か否かを判定する。自乗誤差平均EMSが1未満(EMS<1)であれば、次のステップS23において、関心領域ROI中の全ての画素に対して上記の動脈血速度定数Kaについての決定処理を行ったか否かを判定する。全ての画素に対する動脈血速度定数Kaの決定処理が完了していなければ、ステップS20の処理に戻って、関心領域ROI中の他の画素に対して前記決定処理を実行する。
【0099】
一方、ステップS23において、全ての画素に対する動脈血速度定数Kaの決定処理が完了していれば、次のステップS24において、|K−Ka|≦0.01min-1且つ前記自乗誤差平均EMSが1未満である画素(有効画素)が所定数以上であるか否かを判定する。有効画素の数(有効画素数)が所定数以上であれば、関心領域についてのKaマップの生成が可能と判断する(ステップS24:YES)。
【0100】
なお、ステップS21において、|K−Ka|>0.01min-1であって、自乗誤差平均EMSが最小となる解が2つ以上存在する場合(ステップS21:NO)、あるいは、ステップS22において、自乗誤差平均EMSが1以上(EMS≧1)である場合(ステップS22:NO)に、パラメータ決定手段134は、このような結果が得られる画素において正確な動脈血速度定数Kaが得られなかったと判断し、該画素の動脈血速度定数Kaを、後述するステップS27でのKa計算値の算出処理に用いられる動脈血速度定数Kaから除外し(ステップS25)、ステップS20に戻って、関心領域ROI中の他の画素に対する前記決定処理を実行する。
【0101】
ステップS24において、有効画素数が所定数未満であり、ステップS25の処理によって除外された画素が多い場合に(ステップS24:NO)、パラメータ決定手段134は、関心領域ROI中の有効画素が少ないために、Kaマップを生成することができないと判断し、Kaマップの生成を禁止するためのKaマップ作成禁止情報を生成する(ステップS26)。
【0102】
ステップS24で有効画素数が所定数以上であると判断した場合に(ステップS24:YES)、パラメータ決定手段134は、ステップS27において、各有効画素の動脈血速度定数Kaの平均値(Ka計算値)を算出する。
【0103】
次のステップS28において、パラメータ決定手段134は、関心領域ROI中の全ての画素について、各画素毎に、Ka計算値と、飽和キセノン濃度Aaと、被検査部位キセノン濃度C(t)とを(3)式に代入して、被検査部位速度定数K及びキセノン分配係数λを変化させながら、自乗誤差平均EMSが最小となるような2つのパラメータ(被検査部位速度定数K及びキセノン分配係数λ)を求める(決定する)。
【0104】
次のステップS29において、パラメータ決定手段134は、関心領域ROI中の全ての画素に対して上記の被検査部位速度定数K及びキセノン分配係数λについての決定処理を行ったか否かを判定する。全ての画素に対する被検査部位速度定数K及びキセノン分配係数λの決定処理が完了していなければ、ステップS28の処理に戻って、関心領域ROI中の他の画素に対して該決定処理を実行する。
【0105】
そして、パラメータ決定手段134は、図15のフローチャートに示す処理が完了した後に、各画素毎に決定処理を行って求めた3つのパラメータ(被検査部位速度定数K、動脈血速度定数Ka及びキセノン分配係数λ)や、各画素毎の自乗誤差平均EMSをパラメータ記憶手段136に記憶する。
【0106】
また、パラメータ決定手段134は、Kaマップ作成禁止情報を生成した場合には、該Kaマップ作成禁止情報のみパラメータ記憶手段136に記憶する。すなわち、パラメータ決定手段134は、Kaマップ作成禁止情報を生成した場合には、図15のステップS27〜S29の処理を行わず、パラメータ記憶手段136に対する前記3つのパラメータ及び自乗誤差平均EMSの出力を停止するためである。
【0107】
血流量算出手段138は、パラメータ記憶手段136に記憶された被検査部位速度定数K及びキセノン分配係数λを読み出し、各画素毎に、被検査部位速度定数K及びキセノン分配係数λを用いて血流量fを算出し、算出した血流量fを出力処理手段140に出力する。また、血流量算出手段138は、Kaマップ作成禁止情報を読み出した場合には、血流量fの算出処理を休止する。
【0108】
出力処理手段140は、血流量算出手段138からの血流量fに基づいて、表示装置56に表示させるための、又は、プリンタ58からハードコピー57として出力させるための血流量fのマップを作成すると共に、パラメータ記憶手段136に記憶された動脈血速度定数Kaを読み出して、Kaマップを作成する。また、出力処理手段140は、Kaマップ作成禁止情報を読み出した場合には、これらのマップの作成処理を休止する。前述したように、被検査部位速度定数K及びキセノン分配係数λを用いる(乗算する)ことにより血流量fが算出されるので、血流量fのマップは、被検査部位速度定数Kとキセノン分配係数λとを反映したマップであるとも言える。
【0109】
なお、パラメータ記憶手段136には、被検査部位速度定数K、動脈血速度定数Ka、キセノン分配係数λ及び自乗誤差平均EMSが記憶されているので、出力処理手段140は、Kaマップ及び血流量fのマップ以外にも、被検査部位速度定数K、キセノン分配係数λ及び/又は自乗誤差平均EMSのマップ(分布図)を表示装置56に表示させ、あるいは、プリンタ58からハードコピー57として出力させることも可能である。
【0110】
次に、データ処理手段130によるステップS12、S13の処理(アルゴリズムの実行)により得られた脳組織のKaマップ及び血流量fのマップ(ここではCBFマップ)について、図16A〜図17Cを参照しながら説明する。
【0111】
図16A〜図17Cは、表示装置56の画面100を示している。
【0112】
すなわち、図16A〜図17Cは、任意の測定時点tにおける、1名の被検体12について、異なる年齢(図16A〜図16Cでは28歳、図17A〜図17Cでは32歳)での、脳54の断層画像150、156(図16A及び図17A参照)と、断層画像150、156のCT画像データ(のCT値ΔCT)より得られた動脈血速度定数Kaの分布を示す画像(Kaマップ)152、158(図16B及び図17B参照)と、脳血流量の分布を示す画像(CBFマップ)154、160(図16C及び図17C参照)とを、それぞれ示す。
【0113】
なお、図16BのKaマップ152においてKa計算値は1.07min-1であり、一方で、図17BのKaマップ158においてKa計算値は0.85min-1である。また、図16CのCBFマップ154において脳血流量の平均値(各画素での脳血流量の平均)は47.3ml/100g/minであり、一方で、図17CのCBFマップ160において脳血流量fの平均値は49.7ml/100g/minであった。さらに、図16C及び図17C中、モノクロームで表示されたCBFマップ154、160近傍の各棒グラフにおける0.1〜80の表示は、脳血流量fの値(0.1ml/100g/min〜80ml/100g/min)を示す。
【0114】
これらの結果より、同じ被検体12について、28歳のときのKa計算値(1.07min-1)と32歳のときのKa計算値(0.85min-1)とが近似し、且つ、28歳のときの脳血流量の平均値(47.3ml/100g/min)と32歳のときの脳血流量の平均値(49.7ml/100g/min)とが近似しているので、28歳のときの被検体12の脳54に異常が発生していなかった場合には、それから4年経過した32歳のときにおいても、該被検体12の脳54に何らの異常が発生していないことが容易に判断できる。
【0115】
以上説明したように、この実施形態によれば、被検査部位キセノン濃度C(t)の経時変化(に応じたCT画像データのCT値ΔCT)から動脈血速度定数Kaを決定し、さらに、自乗誤差平均EMSが最小となるときの被検査部位速度定数K、動脈血速度定数Ka及びキセノン分配係数λを求めることで、求めた被検査部位速度定数K及びキセノン分配係数λを用いて血流量fが求めることができる。
【0116】
従って、この実施形態によれば、呼気キセノン濃度Ce(t)を用いることなく血流量fを算出することができるので、特許文献1の技術と比較して、該血流量f(の絶対値)を精度よく算出することが可能となる。
【0117】
また、ROIデータ抽出手段132では、被検査部位(組織)におけるCT値ΔCTのみ抽出してパラメータ決定手段134に供給するので、パラメータ決定手段134における被検査部位速度定数K、動脈血速度定数Ka及びキセノン分配係数λの各パラメータの決定処理を正確に行うことができる。
【0118】
さらに、パラメータ決定手段134は、CT画像データに含まれる画素毎に、自乗誤差平均EMSが最小となるときの被検査部位速度定数K、動脈血速度定数Ka及びキセノン分配係数λを求め、血流量算出手段138は、画素毎に、被検査部位速度定数K及びキセノン分配係数λを用いて血流量fを求めるので、画素毎に血流量fをより正確に求めることができる。
【0119】
また、表示装置56により動脈血速度定数Ka及び/又は血流量fの分布図{Kaマップ、血流量fのマップ(CBFマップ)}を表示し、あるいは、プリンタ58によりKaマップ及び/又は血流量fのマップをプリントアウトするので、被検査部位に対する診断が容易となる。
【0120】
さらに、パラメータ決定手段134は、各画素毎に、飽和キセノン濃度Aaと被検査部位キセノン濃度C(t)とをKety−Schmidt式{(3)式}に代入して、自乗誤差平均EMSが最小となるときの動脈血速度定数Kaを求め、次に、求めた各画素毎の動脈血速度定数Kaの平均値(Ka計算値)を算出する。その後、各画素毎に、Ka計算値、飽和キセノン濃度Aa及び被検査部位キセノン濃度C(t)を(3)式に代入して、自乗誤差平均EMSが最小となるときの被検査部位速度定数K及びキセノン分配係数λを求める。
【0121】
これにより、Ka計算値が、被検体12の動脈中の動脈血速度定数Ka(Ka真値)に近似した値となるので、動脈血速度定数Ka、被検査部位速度定数K及びキセノン分配係数λを一層正確に求めることができると共に、血流量fを精度よく算出することができる。
【0122】
この場合、パラメータ決定手段134は、動脈血速度定数Kaを求めたときの被検査部位速度定数Kと動脈血速度定数Kaとの差の絶対値が0.01min-1以下(|K−Ka|≦0.01min-1)、且つ、自乗誤差平均EMSが1未満(EMS<1)である画素の動脈血速度定数Kaを用いてKa計算値を算出する処理を行ってもよい。
【0123】
これにより、|K−Ka|>0.01min-1及び/又は自乗誤差平均EMSが1以上となった画素の動脈血速度定数Kaは、Ka計算値の算出処理に用いられる動脈血速度定数Kaから除外されるので、Ka計算値を精度よく算出することができる。
【0124】
また、パラメータ決定手段134は、|K−Ka|≦0.01min-1且つ自乗誤差平均EMSが1未満である画素を、Kaマップの作成が可能な有効画素と判定し、有効画素の数が所定数を下回る場合に、Kaマップ作成禁止情報を生成する。
【0125】
この場合、パラメータ決定手段134は、Kaマップ作成禁止情報を生成した際に、Ka計算値の算出処理(ステップS27)と、自乗誤差平均EMSが最小となるときの被検査部位速度定数K及びキセノン分配係数λを求める処理(ステップS28、S29)とを休止し、血流量算出手段138は、Kaマップ作成禁止情報に基づいて、血流量fを求める処理を休止し、出力処理手段140は、Kaマップ作成禁止情報に基づいて、各マップの作成を休止する。
【0126】
これにより、表示装置56及びプリンタ58における各マップの出力が行われないので、医師等のオペレータは、被検体12の診断にとり不適切な結果が得られたことを速やかに知ることができる。
【0127】
また、肝臓以外の組織は、動脈血のみの供給を受けているので、被検体12内の組織のうち、肝臓以外の組織を被検査部位とすれば、動脈血速度定数Kaを確実に決定することができる。
【0128】
なお、この発明は、上述の実施形態に限らず、この発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を採り得ることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0129】
【図1】この実施形態に係る血流量測定装置の全体的構成を示す斜視図である。
【図2】図1の血流量測定装置の概略ブロック図である。
【図3】この実施形態の動作説明に供されるフローチャートである。
【図4】キセノンガスが供給されている被検体である患者の脳をX線CT装置により撮影している状態を示す側面視的模式図である。
【図5】被検体の腹部の断層画像を示す図である。
【図6】図5の腹部大動脈の動脈キセノン濃度の経時変化を示すグラフである。
【図7】呼気キセノン濃度の経時変化と、図6の動脈キセノン濃度の経時変化とを比較したグラフである。
【図8】図8は、CT値の経時変化を示すグラフである。
【図9】自乗誤差平均が最小となるときの被検査部位速度定数及び動脈血速度定数の決定処理を説明するための図である。
【図10】自乗誤差平均が最小となるときの被検査部位速度定数及び動脈血速度定数の決定処理を説明するための図である。
【図11】図11Aは、被検体の腹部の断層画像の図であり、図11Bは、腹部大動脈のKaマップの図であり、図11Cは、脾臓のKaマップの図である。
【図12】図12Aは、被検体の腹部の断層画像の図であり、図12Bは、腹部大動脈のKaマップの図であり、図12Cは、脾臓のKaマップの図である。
【図13】Ka真値(Ka測定値)とKa計算値との関係を表わしたグラフである。
【図14】データ処理手段の概略的な構成を示す機能ブロック図である。
【図15】図14のパラメータ決定手段におけるパラメータの決定処理を説明するためのフローチャートである。
【図16】図16Aは、被検体の脳の断層画像の図であり、図16Bは、Kaマップの図であり、図16Cは、CBFマップの図である。
【図17】図17Aは、被検体の脳の断層画像の図であり、図17Bは、Kaマップの図であり、図17Cは、CBFマップの図である。
【符号の説明】
【0130】
10…血流量測定装置 12…被検体
14…X線CT装置 16…混合ガス供給装置
18…X線CT装置本体 20…制御装置
28…X線管 30…検出器
48…キセノン濃度測定センサ 50…コンピュータ
52…操作コンソール 54…脳
56…表示装置 130…データ処理手段
132…ROIデータ抽出手段 134パラメータ決定手段
136…パラメータ記憶手段 138…血流量算出手段
140…出力処理手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体にキセノンガスを供給するガス供給装置と、
前記被検体の被検査部位のキセノン濃度(以下、被検査部位キセノン濃度という。)C(t)(t:時間であり変数)を得るために前記被検査部位のCT画像データを取得するX線CT装置本体と、
前記CT画像データに基づいて前記被検査部位キセノン濃度C(t)を求めると共に、該被検査部位キセノン濃度C(t)に基づいて前記被検査部位の血流量fを求めるデータ処理装置と、
を備えたキセノンCT装置において、
前記データ処理装置は、
前記被検査部位キセノン濃度C(t)の経時変化から前記被検体の動脈中の血流のキセノン濃度(以下、動脈キセノン濃度という。)Ca(t)の速度定数(以下、動脈血速度定数という。)Kaを決定する場合に、前記被検査部位キセノン濃度C(t)の経時変化に応じた前記CT画像データの値(以下、CT値という。)ΔCTと、該CT値ΔCTの近似曲線との誤差dの自乗d2の平均(以下、自乗誤差平均という。)が最小となるときの前記被検査部位キセノン濃度C(t)の速度定数(以下、被検査部位速度定数という。)K、前記動脈血速度定数Ka及びキセノン分配係数λを求めるパラメータ決定手段と、
前記パラメータ決定手段で求めた前記被検査部位速度定数K及び前記キセノン分配係数λを用いて前記被検査部位の血流量fを求める血流量算出手段と、
を有する
ことを特徴とするキセノンCT装置。
【請求項2】
請求項1記載の装置において、
前記データ処理装置は、前記X線CT装置本体が撮影した前記被検体の断層画像中、前記CT画像データの前記CT値ΔCTを抽出し、抽出した前記CT値ΔCTを前記パラメータ決定手段に出力するデータ抽出手段をさらに有する
ことを特徴とするキセノンCT装置。
【請求項3】
請求項2記載の装置において、
前記パラメータ決定手段は、前記CT画像データに含まれる画素毎に、前記自乗誤差平均が最小となるときの前記被検査部位速度定数K、前記動脈血速度定数Ka及び前記キセノン分配係数λを求め、
前記血流量算出手段は、前記画素毎に、前記被検査部位速度定数K及び前記キセノン分配係数λを用いて前記血流量fを求める
ことを特徴とするキセノンCT装置。
【請求項4】
請求項3記載の装置において、
前記動脈血速度定数Ka及び/又は前記血流量fの分布図を表示する表示装置をさらに有する
ことを特徴とするキセノンCT装置。
【請求項5】
請求項4記載の装置において、
前記パラメータ決定手段は、
前記画素毎に、前記動脈キセノン濃度Ca(t)が飽和状態になったときの値(以下、飽和キセノン濃度という。)Aaと、前記CT値ΔCTに基づき求めた前記被検査部位キセノン濃度C(t)とをKety−Schmidt式に代入して、前記自乗誤差平均が最小となるときの前記動脈血速度定数Kaを求め、
求めた前記画素毎の前記動脈血速度定数Kaの平均値(以下、Ka代表値という。)を算出し、
前記画素毎に、前記Ka代表値と、前記飽和キセノン濃度Aaと、前記被検査部位キセノン濃度C(t)とを前記Kety−Schmidt式に代入して、前記自乗誤差平均が最小となるときの前記被検査部位速度定数K及び前記キセノン分配係数λを求める
ことを特徴とするキセノンCT装置。
【請求項6】
請求項5記載の装置において、
前記パラメータ決定手段は、前記動脈血速度定数Kaを求めたときの被検査部位速度定数Kと前記動脈血速度定数Kaとの差の絶対値が0.01min-1以下、且つ、前記自乗誤差平均が1未満である画素の動脈血速度定数Kaを用いて前記Ka代表値を算出する
ことを特徴とするキセノンCT装置。
【請求項7】
請求項6記載の装置において、
前記パラメータ決定手段は、前記絶対値が0.01min-1以下且つ前記自乗誤差平均が1未満である画素を、前記動脈血速度定数Kaの分布図の作成が可能な有効画素と判定し、前記有効画素の数が所定数を下回る場合に、該分布図の表示を禁止するための禁止情報を生成する
ことを特徴とするキセノンCT装置。
【請求項8】
請求項7記載の装置において、
前記パラメータ決定手段は、前記禁止情報を生成した際に、前記Ka代表値の算出処理と、前記自乗誤差平均が最小となるときの被検査部位速度定数K及びキセノン分配係数λを求める処理とを休止し、
前記血流量算出手段は、前記禁止情報に基づいて、前記血流量fを求める処理を休止し、
前記表示装置は、前記禁止情報に基づいて、前記分布図の表示を休止する
ことを特徴とするキセノンCT装置。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の装置において、
前記被検査部位は、前記被検体内の組織のうち、肝臓以外の組織である
ことを特徴とするキセノンCT装置。
【請求項10】
被検体の被検査部位のCT画像データを取得し、取得した前記CT画像データに基づいて前記被検査部位のキセノン濃度(以下、被検査部位キセノン濃度という。)C(t)(t:時間であり変数)を求め、求めた前記被検査部位キセノン濃度C(t)の経時変化から前記被検体の動脈中の血流のキセノン濃度(以下、動脈キセノン濃度という。)Ca(t)の速度定数(以下、動脈血速度定数という。)Kaを決定する場合に、
前記被検査部位キセノン濃度C(t)の経時変化に応じた前記CT画像データの値(以下、CT値という。)ΔCTと、該CT値ΔCTの近似曲線との誤差dの自乗d2の平均が最小となるときの前記被検査部位キセノン濃度C(t)の速度定数(以下、被検査部位速度定数という。)K、前記動脈血速度定数Ka及びキセノン分配係数λを求めることにより、該動脈血速度定数Kaを決定する
ことを特徴とする動脈血速度定数決定方法。
【請求項11】
請求項10記載の方法により求めた前記被検査部位速度定数K及び前記キセノン分配係数λを用いて前記被検査部位の血流量fを求める
ことを特徴とする血流量算出方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2010−115419(P2010−115419A)
【公開日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−292190(P2008−292190)
【出願日】平成20年11月14日(2008.11.14)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成20年5月15日 米国物理学協会発行の「「Medical Physics」June 2008,Vol.35,No.6」に発表
【出願人】(591001765)安西メディカル株式会社 (4)
【Fターム(参考)】