説明

キッチンパネル及びキッチン構造

【課題】衝突音を隣戸や下階に伝播しにくい構造を備えた遮音性能の良いキッチンパネルなどを提供する。
【解決手段】本発明は、キッチン設備の下部設備と上部設備との間の戸境壁の壁面に取り付けられるキッチンパネル1において、表面パネル2と遮音板3とクッション性を有した遮音材4とを備え、遮音板3が、一方の面に形成されて遮音板の端面に延長する凹部8によって互いに区画された複数の凸部9を備え、遮音材4が凹部8を覆うように遮音板3の一方の面に設けられ、遮音板3の他方の面と表面パネル2の裏面とが互いに接合されたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遮音性能の良いキッチンパネル、及び、キッチン設備の下部設備の構造を複雑にすることなしに遮音性能の良いキッチン構造に関する。
【背景技術】
【0002】
キッチン設備の下部設備と上部設備との間の壁面に取り付けられるキッチンパネルが知られている(例えば、特許文献1参照)。このキッチンパネルは、壁面にビス止めされた上下の支持具に取り付けられる。また、キッチン設備の下部設備として、シンク下のディスポーザ設置空間を囲む部分に遮音部を設けた構成の下部設備が知られている(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開平9−37863号公報
【特許文献2】特開2001−245737号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
マンションなどの集合住宅では、キッチン設備は、キッチン設備の背面が戸境壁と向かい合うように設置されるので、上述したキッチンパネルでは、物がキッチンパネルに衝突した場合の衝突音が上下の支持具及び戸境壁を経由して隣戸や下階に伝播してしまう。
また、遮音部を備えた下部設備の場合、遮音部を設けるために下部設備の構造が複雑になる。
本発明は、上記課題に鑑みてなされたもので、衝突音を隣戸や下階に伝播しにくい構造を備えた遮音性能の良いキッチンパネル、及び、下部設備の構造を複雑にすることなく下部設備で生じた音を隣戸や下階に伝播しにくい構造を備えた遮音性能の良いキッチン構造を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明のキッチンパネルは、キッチン設備の下部設備と上部設備との間の戸境壁の壁面に取り付けられるキッチンパネルにおいて、表面パネルと遮音部とクッション性を有した遮音材とを備え、遮音部は、表面パネルと遮音材との間に点在して設けられた複数の遮音板により形成されたことを特徴とする。
本発明のキッチンパネルは、キッチン設備の下部設備と上部設備との間の戸境壁の壁面に取り付けられるキッチンパネルにおいて、表面パネルと遮音板とクッション性を有した遮音材とを備え、遮音板が、一方の面に形成されて遮音板の端面に延長する凹部によって互いに区画された複数の凸部を備え、遮音材が凹部を覆うように遮音板の一方の面に設けられ、遮音板の他方の面と表面パネルの裏面とが互いに接合されたことも特徴とする。
複数の凸部が、凹部としての格子状溝により区画されて形成されたことも特徴とする。
本発明のキッチン構造は、上記キッチンパネルが、遮音材側を戸境壁の壁面に向けて戸境壁の壁面に取り付けられたことを特徴とする。
下部設備の背面を戸境壁の壁面より離し、下部設備の背面と戸境壁の壁面とで挟まれるようにゴムパッキンが設けられたことも特徴とする。
下部設備を設置する床を備え、床が、床スラブと、床スラブに設置された防振具付きの床材支持具と、床材支持具で支持された床材とを備え、床材は、端面が戸境壁の壁面と隙間を隔てて対向するように設置されたことも特徴とする。
【発明の効果】
【0005】
本発明のキッチンパネルによれば、表面パネルと遮音材との間に点在して設けられた複数の遮音板により形成された遮音部を備えたので、衝突音を隣戸や下階に伝播しにくい構造を備えた遮音性能の良いキッチンパネルを得ることができる。
本発明のキッチンパネルによれば、一方の面に形成されて遮音板の端面に延長する凹部によって互いに区画された複数の凸部を備えた遮音板と、遮音材が凹部を覆うように遮音板の一方の面に設けられた遮音材とを備えたので、衝突音を隣戸や下階に伝播しにくい構造を備えた遮音性能の良いキッチンパネルを得ることができる。
遮音板が、格子状溝を備えたので、さらに遮音性能の良いキッチンパネルを得ることができる。
本発明のキッチン構造によれば、キッチンパネルが、遮音材側を戸境壁の壁面に向けて戸境壁の壁面に取り付けられたので、下部設備の構造を複雑にすることなく下部設備で生じた音を隣戸や下階に伝播しにくい構造を備えた遮音性能の良いキッチン構造が得られる。
また、下部設備の背面と戸境壁の壁面とで挟まれるようにゴムパッキンが設けられたので、下部設備の構造を複雑にすることなく下部設備で生じた音を隣戸や下階に伝播しにくい構造を備えた遮音性能の良いキッチン構造が得られる。
さらに、下部設備を床材支持具で支持したので、下部設備の構造を複雑にすることなく下部設備で生じた音を隣戸や下階に伝播しにくい構造を備えた遮音性能の良いキッチン構造が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
最良の形態1
図1乃至図5は最良の形態1を示し、図1は戸境壁に取り付けられたキッチンパネルの断面を示し、図2はキッチン設備を示す正面図、図3(a)はキッチンパネルを示し、図3(b)はキッチンパネルを分解して示し、図4はキッチンパネルを用いたキッチン構造の断面を示し、図5はキッチン構造の遮音性能計測結果を示す。
【0007】
図2に示すように、キッチン設備50は、下部設備51と、上部設備52と、キッチンパネル1とを備える。下部設備51は、流し台53、ガス台54、調理台55、収納部(地袋)56を備える。上部設備52は、フード57、収納部(天袋)58を備える。
【0008】
図1に示すように、キッチンパネル1は、表面パネル2と、遮音板3と、遮音材4とにより形成される。表面パネル2は、基板5と表面板6とにより形成される。基板5はケイ酸カルシウム板やスレート板により形成される。表面板6はメラミン化粧板のような化粧板により形成される。表面パネル2は、基板5の表面と表面板6の裏面とが接着剤により接合されて形成される。遮音板3は、厚さ10mm程度の中密度圧縮合板(MDFと呼ばれる。)により形成された矩形状平面板の一方の面3aに、一方の面3aから他方の面3bに向けて延長するとともに遮音板3の端面7(図3参照)に延長する凹部としての溝8によって互いに区画された複数の凸部9を備えた構成である。図3(b)に示すように、例えば、遮音板3の一方の面3aに、面3aの縦方向に延長する溝8が面3aの横方向に沿って等間隔に複数並べられて形成されるともに、面3aの横方向に延長する溝8が面3aの縦方向に沿って等間隔に複数並べられて形成される。即ち、遮音板3は、一方の面3aに格子状に形成された格子状溝8Aを備え、格子状溝8Aにより互いに区画された複数の凸部9を備えた構成である。例えば、格子状溝8Aの溝幅aを1mm、格子状溝8Aの横方向に延長する溝8同士の間隔bを15mm、格子状溝8Aの縦方向に延長する溝8同士の間隔cを30mmとした。遮音材4は、スポンジやウレタンあるいは不織布などにより形成された厚さ2mm程度のクッション材10とクッション材10の一方の面11に熱融着などで取り付けられた膜材12とにより形成される。
【0009】
キッチンパネル1は、表面パネル2の基板5の裏面13と遮音板3の他方の面3bとが接着剤により互いに接合され、遮音板3の一方の面3aと遮音材4のクッション材10の他方の面11aとが接着剤により互いに接合されて形成される。
【0010】
クッション材10の一方の面11に設けられた膜材12と戸境壁17の壁面18とが接着剤19により互いに接合されたことによって、キッチンパネル1が、遮音材4側を戸境壁17の壁面18に向けて、上部設備52と下部設備53との間の戸境壁17の壁面18に取り付けられる。この場合、遮音材4が膜材12を備えたので、接着剤のクッション材10への含浸を防ぐことができ、接着剤によってキッチンパネル1の遮音材4側を壁面18に確実に取付けることができる。
【0011】
図4を参照し、キッチン構造を説明する。下部設備51が設置される床40は、床スラブ41と、床スラブ41に設置される防振具付きの床材支持具42と、床材支持具42により支持された床材43とにより形成される。
【0012】
床支持具42は、床材43が取付けられる台座23と台座23の上下面間に延長して設けられたナット部24とナット部24が螺着されてナット部24を上下に移動可能とする支柱25と支柱25の下部がはめ込まれて支柱25に伝わる振動を吸収するゴム等で形成された防振具としてのクッション部材26とを具備して構成される。尚、部屋の壁際の床を支持する床支持具42としては、台座23の代わりに根太23Aを備えたものを用いる。
【0013】
床材43の構成は特に限定されないが、例えば、レベル調整用のパーティクルボード44とパーティクルボード44の上に設けられた合板45と合板45の上に設けられたフローリング材46とで構成される。
【0014】
床材43は、端面47が、鉄筋コンクリート製の戸境壁17の壁面18から数mm程度(例えば、3〜5mm程度)離れるように設置される。つまり、床材43の端面47と戸境壁17の壁面18とが数mm程度の隙間Sを隔てて対向するように床材43が設置される。
【0015】
下部設備53の背面61あるいは下部設備の背面61と対向する戸境壁17にゴムパッキン62が取り付けられ、背面61に取り付けられたゴムパッキン62を戸境壁17に突き当てるか、戸境壁17に取り付けられたゴムパッキン62に背面61を突き当てることにより、背面61が戸境壁17と向かい合うように下部設備53を設置する。即ち、下部設備53の背面61を戸境壁17の壁面18より離し、下部設備53の背面61と戸境壁17の壁面18とで挟まれるようにゴムパッキン62が設けられる。
【0016】
ゴムパッキン62の厚さは、キッチンパネル1の厚さより厚い寸法のものを用いる。このため、下部設備53が設置された場合、下部設備53の背立ち上がり部63の背面64とキッチンパネル1との間には隙間が生じるので、この隙間をシール材やテープのような封止材65で塞ぐ。
【0017】
最良の形態1によれば、キッチンパネル1により、鍋やお玉やまな板のような調理器具、その他の物がキッチンパネル1の表面に衝突した場合の衝突音が遮音板3及び遮音材4によって遮音されるので、衝突音が隣戸や下階へ伝播するのを抑えることができ、遮音性能の良いキッチン構造が得られる。特に、遮音板3が、遮音板3の端面7に延長する格子状溝8Aを備えたので、表面パネル2から伝播した音(固体音)が格子状溝8Aによって周囲の凸部への横方向に伝播する(固体音レベルが小さくなる)ので、遮音板3全体での固体音レベルの通過エネルギーが減少する。よって、隣戸や下階への音の伝播量を抑えることができ、遮音性が向上する。また、遮音板3を安価なMDFで形成したので、板として扱えるために取り扱いも容易となり、安価で遮音性能の良いキッチンパネル1が得られる。
【0018】
最良の形態1によれば、床材43は、端面47が、戸境壁17の壁面18から数mm程度離れるように設置され、床材43と戸境壁17との縁を切ったので、下部設備53で生じた音が戸境壁17及び床スラブ41に伝播されにくくなるので、遮音性能の良いキッチン構造が得られる。
最良の形態1によれば、下部設備53の背面61と戸境壁17の壁面18とで挟まれるようにゴムパッキン62を設置したので、下部設備53で生じた音がゴムパッキン62により吸収されて音が戸境壁17及び床スラブ41に伝播されにくくなるので、遮音性能の良いキッチン構造が得られる。
最良の形態1によれば、下部設備53を床材支持具42で支持したので、下部設備53で生じた音が床材支持具42のクッション部材26により吸収されて床スラブ41及び戸境壁17に伝播されにくくなるので、遮音性能の良いキッチン構造が得られる。
従って、下部設備53の構造を複雑にすることなく下部設備53で生じた音が隣戸や下階に伝播しにくい構造を備えた遮音性能の良いキッチン構造が得られる。
【0019】
図5に、最良の形態1のキッチンパネルを備えたキッチン構造の遮音性能測定結果を示す。図5では、表面パネル2のみにより形成されたキッチンパネルの裏面を壁面18に取り付けたキッチン構造の遮音性能(対策無しのグラフで示す。)、表面パネル2と遮音板としての石膏ボードと石膏ボードの裏面の4隅に設けられた遮音材としての防振ゴムとにより形成されたキッチンパネルの防振ゴムを壁面18に取り付けたキッチン構造(石膏ボード+防振ゴムのグラフで示す。)、表面パネル2と遮音板としてのフェルト材とにより形成されたキッチンパネルのフェルト材を壁面18に取り付けたキッチン構造(フェルト材のグラフで示す。)、最良の形態のキッチンパネル1を壁面18に取り付けたキッチン構造(MDFスリット材のグラフで示す。)の遮音性能測定結果を示した。図5(a)は上述した各キッチン構造のキッチンパネルの表面を打撃した場合に隣戸に伝播した音圧レベルを測定した結果である。図5(b)は上述した各キッチン構造のキッチンパネルの表面を打撃した場合に下階に伝播した音圧レベルを測定した結果である。図5(a)からわかるように、最良の形態のキッチン構造は、隣戸に伝播する音圧レベルが低く、遮音性能に優れる。図5(b)からわかるように、最良の形態のキッチン構造は、下階に伝播する音圧レベルが特に500Hz帯域以上で小さく、遮音性能に優れる。
【0020】
最良の形態2
図6乃至図7は最良の形態2を示し、図6は戸境壁に取り付けられたキッチンパネルの断面を示し、図7はキッチンパネルを分解して示す。
最良の形態2のキッチンパネル1は、表面パネル2と遮音材4との間に遮音部70を設ける。つまり、表面パネル2と遮音材4との間に点在して設けられた複数の遮音板3Aにより形成された遮音部70を備えたキッチンパネル1とした。この遮音部70は、例えば、表面パネル2と遮音材4との間に格子状溝8Aが形成されるように表面パネル2と遮音材4との間に溝8を隔てて複数の遮音板3Aを個別に並べて設置することにより形成される。最良の形態2のキッチンパネル1によっても、最良の形態1と同様の効果が得られる。
【産業上の利用可能性】
【0021】
最良の形態1における格子状溝8Aが形成された一方の面3aと表面パネル2の基板5の裏面13とを互いに接合した構成のキッチンパネル1でもよい。
遮音板3の構造を一体に備えた表面パネルを用いたキッチンパネル1でもよい。
遮音板3としては、一方の面に形成されて端面7に延長する凹部によって互いに区画された複数の凸部9を備えた構造の板を用いればよい。
また、本発明のキッチンパネルやキッチン構造は、戸境壁17に配置される洗面台の上方の戸境壁17の壁面に取り付けるパネルや洗面台周りの構造にも適用できる。
溝8は格子溝8Aを形成する溝でなくともよく、少なくとも、キッチンパネルの内側からキッチンパネルの端面に延長した溝であればよい。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】キッチンパネルの断面図(最良の形態1)。
【図2】キッチン設備を示す正面図(最良の形態1)。
【図3】(a)はキッチンパネルの斜視図、(b)はキッチンパネルの分解斜視図(最良の形態1)。
【図4】キッチン構造の断面図(最良の形態1)。
【図5】キッチン構造の遮音性能計測結果を示す図(最良の形態1)。
【図6】キッチンパネルの断面図(最良の形態2)。
【図7】キッチンパネルの分解斜視図(最良の形態2)。
【符号の説明】
【0023】
1 キッチンパネル、2 表面パネル、3;3A 遮音板、3a 一方の面、
4 遮音材、7 遮音板の端面、8 凹部、8A 格子状溝、9 凸部、
17 戸境壁、18 壁面、40 床、41 床スラブ、42 床材支持具、
43 床材、50 キッチン設備、52 上部設備、53 下部設備、
70 遮音部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
キッチン設備の下部設備と上部設備との間の戸境壁の壁面に取り付けられるキッチンパネルにおいて、表面パネルと遮音部とクッション性を有した遮音材とを備え、遮音部は、表面パネルと遮音材との間に点在して設けられた複数の遮音板により形成されたことを特徴とするキッチンパネル。
【請求項2】
キッチン設備の下部設備と上部設備との間の戸境壁の壁面に取り付けられるキッチンパネルにおいて、表面パネルと遮音板とクッション性を有した遮音材とを備え、遮音板が、一方の面に形成されて遮音板の端面に延長する凹部によって互いに区画された複数の凸部を備え、遮音材が凹部を覆うように遮音板の一方の面に設けられ、遮音板の他方の面と表面パネルの裏面とが互いに接合されたことを特徴とするキッチンパネル。
【請求項3】
複数の凸部が、凹部としての格子状溝により区画されて形成されたことを特徴とする請求項2に記載のキッチンパネル。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれかのキッチンパネルが、遮音材側を戸境壁の壁面に向けて戸境壁の壁面に取り付けられたことを特徴とするキッチン構造。
【請求項5】
下部設備の背面を戸境壁の壁面より離し、下部設備の背面と戸境壁の壁面とで挟まれるようにゴムパッキンが設けられたことを特徴とする請求項4に記載のキッチン構造。
【請求項6】
下部設備を設置する床を備え、床が、床スラブと、床スラブに設置された防振具付きの床材支持具と、床材支持具で支持された床材とを備え、床材は、端面が戸境壁の壁面と隙間を隔てて対向するように設置されたことを特徴とする請求項4又は請求項5に記載のキッチン構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−303675(P2008−303675A)
【公開日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−153883(P2007−153883)
【出願日】平成19年6月11日(2007.6.11)
【出願人】(000001317)株式会社熊谷組 (551)
【出願人】(595015258)野原産業株式会社 (18)
【出願人】(000002222)サンウエーブ工業株式会社 (196)
【Fターム(参考)】