説明

キャッシュメモリ制御システム、その制御方法及び制御プログラム

【課題】処理性能を向上させることができるキャッシュメモリ制御システム、その制御方法及び制御プログラムを提供すること。
【解決手段】キャッシュメモリ制御システム1は、複数のプロセッサ11から出力される所定情報を、キャッシュメモリ12の各レベルに夫々記憶させる制御を行う。また、所定情報は、出力先のプロセッサ11を示すソース情報を含んでいる。さらに、キャッシュメモリ制御システム1は、ソース情報毎に、キャッシュメモリ12の各レベルに記憶されているソース情報の数をカウントしカウント値として算出するカウント手段と、算出されたソース情報毎のカウント値に基づいて、キャッシュメモリ12の各レベルのうち、スワップ処理の対象となるレベルの優先順位を決定する優先順位決定手段と、決定された優先順位に基づいて、キャッシュメモリ12の各レベルうち、スワップ処理を行うレベルを決定するレベル決定手段と、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のプロセッサから出力される所定情報をキャッシュメモリに夫々記憶させる制御を行うキャッシュメモリ制御システム、その制御方法及び制御プログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、ハードウェアの進歩と共にソフトウェアも複雑化しており、複数のプロセスを同時に処理する必要が生じている。このように、複数のプロセスを同時に処理する場合、全プロセスの完了を待って別のプロセスが開始するようなケースが生じ、この同時処理の過程で、一方のプロセスが他のプロセスを処理するために、例えば、キャッシュメモリのスワップ処理などが行われている。これにより、処理時間の遅延が生じ、システム全体の性能低下が懸念されている。このような問題を解決すべく様々のマルチプロセッサシステムが開発されている。
【0003】
上記スワップ処理において、マルチプロセッサシステムは、例えば、キャッシュやディレクトリ方式のディレクトリ、スヌープ方式のタグで新規の所定情報をキャッシュメモリのレベルに登録する場合、各エントリのレベルがフル状態のときには、何れかのレベルの情報を吐き出してその空いたレベルに新規情報を登録することとなる。
【0004】
ここで、従来のスワップ処理におけるレベル選択の方法は、ラウンドロビンやLRU(古い情報から選択)、ランダムなどによる選択、優先度の高いプロセッサが使用するレベルを残す方式、又はそれぞれを組み合わせた方式が採用されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−145780号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、マルチプロセッサシステムに対して、従来のレベル選択方法を用いた場合、キャッシュメモリの各レベルに登録されている情報に関して、夫々どのソース(例えばプロセッサなど)からの情報なのか全体として管理されていない。このため、処理中のプロセスが登録した情報をスワップ処理してしまったり、又は、ある特定のプロセスが登録する情報のみが常にスワップ処理されてしまったりすることがある。
【0007】
ここで、あるプロセスが別のプロセスの完了を待ち合わせている場合、待ち合わせ対象のプロセスのスワップ処理が頻発しその完了までの時間が遅延したとき、次プロセスの開始ができずに待ち時間が発生するため、システム全体の処理性能が低下してしまうという問題が生じている。
【0008】
本発明は、このような問題点を解決するためになされたものであり、処理性能を向上させることができるキャッシュメモリ制御システム、その制御方法及び制御プログラムを提供することを主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するための本発明の一態様は、複数のプロセッサから出力される所定情報を、キャッシュメモリの各レベルに夫々記憶させる制御を行うと共に、前記所定情報は、前記出力先のプロセッサを示すソース情報を含む、キャッシュメモリ制御システムであって、前記ソース情報毎に、前記キャッシュメモリの各レベルに記憶されている前記ソース情報の数をカウントしカウント値として算出するカウント手段と、前記カウント手段により算出された前記ソース情報毎のカウント値に基づいて、前記キャッシュメモリの各レベルのうちスワップ処理の対象となるレベルの優先順位を決定する優先順位決定手段と、 前記優先順位決定手段により決定された前記優先順位に基づいて、前記キャッシュメモリの各レベルうち、スワップ処理を行う前記レベルを決定するレベル決定手段と、を備える、ことを特徴とするキャッシュメモリ制御システムである。
【0010】
また、上記目的を達成するための本発明の一態様は、複数のプロセッサから出力される所定情報を、キャッシュメモリの各レベルに夫々記憶させる制御を行うと共に、前記所定情報は、前記出力先のプロセッサを示すソース情報を含む、キャッシュメモリ制御システムの制御方法であって、前記ソース情報毎に、前記キャッシュメモリの各レベルに記憶されている前記ソース情報の数をカウントしカウント値として算出し、前記算出されたソース情報毎のカウント値に基づいて、前記キャッシュメモリの各レベルのうちスワップ処理の対象となるレベルの優先順位を決定し、前記決定された優先順位に基づいて、前記キャッシュメモリの各レベルうち、スワップ処理を行う前記レベルを決定する、ことを特徴とするキャッシュメモリ制御システムの制御方法であってもよい。
【0011】
さらに、上記目的を達成するための本発明の一態様は、複数のプロセッサから出力される所定情報を、キャッシュメモリの各レベルに夫々記憶させる制御を行うと共に、前記所定情報は、前記出力先のプロセッサを示すソース情報を含む、キャッシュメモリ制御システムの制御プログラムであって、前記ソース情報毎に、前記キャッシュメモリの各レベルに記憶されている前記ソース情報の数をカウントしカウント値として算出する処理と、
前記算出されたソース情報毎のカウント値に基づいて、前記キャッシュメモリの各レベルのうちスワップ処理の対象となるレベルの優先順位を決定する処理と、前記決定された優先順位に基づいて、前記キャッシュメモリの各レベルうち、スワップ処理を行う前記レベルを決定する処理と、をコンピュータに実行させることを特徴とするキャッシュメモリ制御システムの制御プログラムであってもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、処理性能を向上させることができるキャッシュメモリ制御システム、その制御方法及び制御プログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施形態に係るキャッシュメモリ制御システムの機能ブロック図である。
【図2】本発明の一実施形態に係るキャッシュメモリ制御システムの概略的な構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の一実施形態に係るキャッシュメモリ制御システムの制御処理フローの一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。図1は、本発明の一実施形態に係るキャッシュメモリ制御システムの機能ブロック図である。本実施形態に係るキャッシュメモリ制御システム1は、複数のプロセッサ11から出力される所定情報を、キャッシュメモリ12の各レベルに夫々記憶させる制御を行うものである。ここで、所定情報は、出力先のプロセッサ11を示すソース情報を含んでいる。
【0015】
また、キャッシュメモリ制御システム1は、ソース情報毎に、キャッシュメモリ12の各レベルに記憶されているソース情報の数を、カウント値として算出するカウント手段2と、カウント手段2により算出されたソース情報毎のカウント値に基づいて、キャッシュメモリ12の各レベルのうちスワップ処理の対象となるレベルの優先順位を決定する優先順位決定手段3と、優先順位決定手段3により決定された優先順位に基づいて、キャッシュメモリ12の各レベルうち、スワップ処理を行うレベルを決定するレベル決定手段4と、を備えている。
【0016】
これにより、ソース情報毎にキャッシュメモリ12の使用率を均等化することができ、極端に性能低下するソースを排除することで、当該システム1全体の処理性能を向上させることができる。
【0017】
図2は、本発明の一実施形態に係るキャッシュメモリ制御システムの概略的な構成を示すブロック図である。本実施形態に係るキャッシュメモリ制御システム1は、複数のプロセッサ11から出力される所定情報を、キャッシュメモリ12に夫々記憶させる制御を行う。
【0018】
ここで、所定情報は、例えば、各プロセッサ11の処理内容を示し、キャッシュメモリ12に登録されるトランザクション情報100などの情報であり、出力先のプロセッサ11を示すソース情報を含んでいる。また、各ソース情報は、単一のプロセッサ11を示すものであってよく、任意に組み合わせた複数のプロセッサ11を示すものであってもよい。
【0019】
本実施形態に係るキャッシュメモリ制御システム1は、キャッシュメモリ12と、索引回路13と、第1レジスタ回路14と、カウント回路15と、優先順位決定回路16と、割合算出回路17と、レベル決定回路18と、レベル選択回路19と、第2レジスタ回路20と、マージ回路21と、を備えている。
【0020】
キャッシュメモリ12は、例えば、複数のプロセッサ(マルチプロセッサ)11から夫々出力されるトランザクション情報100と、そのトランザクション情報100に含まれるソース情報とを、レベル毎にセットアソシアティブ方式などを用いて記憶する。
【0021】
索引回路13は、索引手段の一具体例であり、キャッシュメモリ12に登録されるトランザクション情報100を受信すると、キャッシュメモリ12に記憶されている各レベルの情報の索引を実行する。そして、索引回路13は、その索引結果であるキャッシュメモリ12の各レベルの情報を、キャッシュメモリ12を介して第1レジスタ回路14に出力する。さらに、第1レジスタ回路14は、索引回路13から出力されたキャッシュメモリ12の各レベルの情報を格納する。
【0022】
カウント回路15は、カウント手段2の一具体例であり、例えば、アップ/ダウンカウンタとして構成されている。また、カウント回路15は、トランザクション情報100のソース情報をカウントし、ソース情報毎に、キャッシュメモリ12の各レベルに記憶されているソース情報の数をカウントし、カウント値として算出する。
【0023】
具体的には、カウント回路15は、ソース情報(ソース情報X1、ソース情報X2、ソース情報X3、・・・、ソース情報Xn)毎に対応する個別カウンタ(個別カウンタY1、個別カウンタY2、個別カウンタY3・・・、個別カウンタYn)を有している。
【0024】
また、各個別カウンタYnは、対応するソース情報Xnのトランザクション情報がキャッシュメモリ12に新たに記憶されるとカウントアップ(+1)を行い、一方、対応するソース情報Xnのトランザクション情報100がスワップ処理(リプレース処理)されるとカウントダウン(−1)を行う。このように、カウント回路15の各個別カウンタY1〜Ynは、上記アップ/ダウンカウントしソース情報毎に集計したカウント値Z1〜Znを夫々、優先順位決定回路16及び割合算出回路17に出力する。
【0025】
優先順位決定回路16は、優先順位決定手段3の一具体例であり、カウント回路15により算出されたソース情報毎のカウント値Znに基づいて、キャッシュメモリ12の各レベルのうち、スワップ処理の対象となるレベルの優先順位を決定する。
【0026】
優先順位決定回路16は、例えば、カウント回路15により算出されたソース情報毎のカウント値Znが増加するに従って、そのソース情報Xnのトランザクション情報100に対するスワップ処理の優先順位を高く設定し、逆に、ソース情報毎のカウント値Znが減少するに従って、そのソース情報Xnのトランザクション情報100に対するスワップ処理の優先順位を低く設定する。優先順位決定回路16は、決定したスワップ処理の優先順位をレベル決定回路18に対して出力する。
【0027】
割合算出回路17は、割合算出手段の一具体例であり、カウント回路15により算出されたソース情報毎のカウント値Z1〜Znの総合計値(ΣZn)を算出し、キャッシュメモリ12の全容量数に対する総合計値の割合を算出する。
【0028】
具体的には、割合算出回路17は、カウンタ回路15の各個別カウンタY1〜Ynから出力される各カウント値Z1〜Znの総合計値を算出し、算出した総合計値をキャッシュメモリ12の全容量数(キャッシュメモリ12に記憶可能なトランザクション情報100の数)で除算することで、上記総合計値の割合を算出する。割合算出回路17は、算出した総合計値の割合を、レベル決定回路18に対して出力する。
【0029】
レベル決定回路18は、レベル決定手段の一具体例であり、第1レジスタ回路14に格納されたキャッシュメモリ12の各レベルの情報とトランザクション情報100のキーアドレス101との比較結果、優先順位決定回路16により決定された優先順位、および、割合算出回路17により算出された総合計値の割合、に基づいて、スワップ処理を行うレベルを決定する。また、レベル決定回路18は、ヒットレベル決定部181と、ミスレベル決定部182と、スワップレベル決定部183と、レベル決定部184と、を有している。
【0030】
ヒットレベル決定部181は、第1レジスタ回路14に格納されたキャッシュメモリ12の各レベルの情報のうち、キーアドレス101と一致したレベル(ヒットレベル)を抽出し、レベル決定部184に対して出力する。また、ミスレベル決定部182は、第1レジスタ回路14に格納されたキャッシュメモリ12の各レベルの情報のうち、キーアドレス101と一致するレベルがないとき、キャッシュメモリ12内で空いているレベル(ミスレベル)を抽出し、レベル決定部184に対して出力する。
【0031】
さらに、スワップレベル決定部183は、キーアドレス101と一致したレベルがなく、かつキャッシュメモリ12内で空いているレベルがないときに、すなわち、上記キャッシュメモリ12のヒット及びミスに関係なく、優先順位決定回路16により決定された優先順位と、割合算出回路17により算出された総合計値の割合と、に基づいて、スワップ処理を行うレベル(スワップレベル)を決定し、レベル決定部184に対して出力する。
【0032】
例えば、スワップレベル決定部183は、優先順位決定回路16により決定された優先順位が最も高いレベルを、スワップ処理を行うレベルとして決定してもよい。また、スワップレベル決定部183は、割合算出回路17により算出された総合計値の割合が低い場合、ラウンドロビンやLRUなどの周知の方法でスワップ処理を行うレベルを決定し、総合計値の割合が所定割合以上となると、上述のように優先順位決定回路16により決定された優先順位に従って、スワップ処理を行うレベルを決定するのが好ましい。
【0033】
また、レベル決定部184は、スワップレベル決定部183から出力されるレベルを、スワップ処理を行うレベルとして決定する。
【0034】
さらに、レベル決定部184は、キーアドレス101と一致した場合、ヒットレベル決定部181からのヒットレベルをレベル選択回路19に出力し、キーアドレス101と一致せず空きレベルがある場合、ミスレベル決定部182からのミスレベルをレベル選択回路19に出力し、キーアドレス101と一致せずかつ空きレベルもない場合、スワップレベル決定部183からのスワップレベルをレベル選択回路19に出力する。
【0035】
レベル選択回路19は、レベル選択手段の一具体例であり、第1レジスタ回路14に格納されたキャッシュメモリ12の各レベルの情報のうち、レベル決定部184から出力されたレベルの情報を選択し、選択したレベルの情報を第2レジスタ回路20に格納する。
【0036】
第2レジスタ回路20に格納されたレベルの情報は、以降の処理に使用されるため、第2レジスタ回路20から出力され、また、キャッシュメモリ12の更新のためマージ回路21に入力される。そして、マージ回路21は、マージ処理したマージ情報をキャッシュメモリ12及びカウント回路15の各個別カウンタYnに出力する。
【0037】
ここで、キャッシュメモリ12には、上記マージ情報が新規のトランザクション情報100として入力される。また、上述のようにキャッシュメモリ12の全レベルが記憶済みであるためスワップ処理が実行された場合、スワップ処理されるトランザクション情報100のソース情報Xnに応じて、対応する個別カウンタYnは、カウント値Znをカウントダウンする。
【0038】
これにより、ソース情報毎に、キャッシュメモリ12に記憶されているソース情報Xnの数を管理することができ、各個別カウンタYnのカウント値Znの総合計が、キャッシュメモリ12に記憶されているトランザクション情報(ソース情報)の総合計と一致することになる。
【0039】
なお、このトランザクション情報100の総合計が小さい(総合計値の割合が低い)場合は、上述のように、キャッシュメモリ12の容量にまだ余裕があるため、プロセス毎に管理する必要もなく従来の方法によりスワップレベルの決定を行えばよい。スワップレベルを各ソース情報Xnの数が均等になるように決定する本発明の方法と、従来の方法とを切り替えるのは、総合計値の割合で判断しているが、初期設定時に切替え点を設定できるようになっているため、システム全体の性能を見極めて設定値を変更することで、最適な性能を引き出すことができる。
【0040】
次に、本実施の形態に係るキャッシュメモリ制御システム1の制御方法について、詳細に説明する。図3は、本実施形態に係るキャッシュメモリ制御システムの制御処理フローの一例を示すフローチャートである。
【0041】
各プロセッサ11からキャッシュメモリ12に登録されるトランザクション情報100が出力され(ステップS101)、カウント回路15及び索引回路13に夫々入力される。
【0042】
カウント回路15の対応する個別カウンタYnは、トランザクション情報100のソース情報Xnに基づいて、カウント値Znをカウントアップし(ステップS102)、優先順位決定回路16は、カウント回路15の各個別カウンタYnによりカウントされたソース情報毎のカウント値Znに基づいて、キャッシュメモリ12の各レベルのうち、スワップ処理の対象となるレベルの優先順位を決定する(ステップS103)。
【0043】
また、割合算出回路17は、カウント回路15により算出されたソース情報毎のカウント値Z1〜Znの総合計値を算出し、キャッシュメモリ12の全容量数に対する算出した総合計値の割合を算出する(ステップS104)。
【0044】
一方、索引回路13は、キャッシュメモリ12に記憶されている各レベルの情報の索引を実行する(ステップS105)。
【0045】
次に、レベル決定回路18のヒットレベル決定部181は、第1レジスタ回路14に格納されたキャッシュメモリ12の各レベルの情報のうち、キーアドレスと一致したヒットレベルを抽出したとき(ステップS106のYES)、抽出したヒットレベルをレベル決定部184に対して出力し、必要に応じてヒットレベルの更新が行われ(ステップS107)、本処理を終了する。
【0046】
また、ミスレベル決定部182は、第1レジスタ回路14に格納されたキャッシュメモリ12の各レベルの情報のうち、キーアドレスと一致するレベルがなく(ステップS106のNO)、キャッシュメモリ12内で空いているミスレベルを抽出したとき(ステップS108のYES)、抽出したミスレベルをレベル決定部184に対して出力し、ミスレベルへのトランザクション情報の登録が行われ(ステップS109)、本処理を終了する。
【0047】
さらに、スワップレベル決定部184が、キーアドレスと一致したレベルがなく、かつキャッシュメモリ12内で空いているレベルがないとき(ステップS108のNO)、スワップレベル決定部183は、割合算出回路17により算出された総合計値の割合が所定割合以上であるか否かを判断する(ステップS110)。
【0048】
スワップレベル決定部183は、割合算出回路17により算出された総合計値の割合が所定割合以上であると判断すると(ステップS110のYES)、優先順位決定回路16により決定された優先順位に従って、スワップ処理を行うレベルを決定し(ステップS111)、その決定されたレベルに対してスワップ処理が行われると共に、新規のトランザクション情報が登録される。
【0049】
一方、スワップレベル決定部183は、割合算出回路17により算出された総合計値の割合が所定割合以上でないと判断すると(ステップS110のNO)、従来の方法でスワップ処理を行うレベルを決定し(ステップ112)、その決定されたレベルに対してスワップ処理が行われると共に、新規のトランザクション情報が登録される。
【0050】
以上、本実施形態に係るキャッシュメモリ制御システム1によれば、ソース情報毎にキャッシュメモリ12の使用率を均等化することができ、極端に性能低下するソース(プロセッサ11)を排除することで、当該システム1全体の処理性能を向上させることができる。なお、簡易な構成で、しかもスワップ処理時のレベル選択制御を僅かに変更するだけで、上記処理性能を向上させることができるためコスト低減に繋がる。また、初期設定を変更するだけで、当該システム1の最適な性能を引き出すことができるため、システムの柔軟性も確保できる。
【0051】
なお、本発明は上記実施形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。
【0052】
例えば、上記一実施形態において、キャッシュメモリ12の一貫性を保つためのキャッシュコヒーレンシを管理するスヌープ方式やディレクトリ方式を適用することも可能である。この場合、キャッシュメモリ制御システム1は、スヌープ方式ではタグを、ディレクトリ方式ではディレクトリを有し、キャッシュメモリ12に登録している情報を予め決められたアルゴリズムで管理する。タグ及びディレクトリにおいて、キャッシュメモリ12の基本的な構造は同一で、スワップ処理が必要であるため、上記実施形態と同様の効果が期待できる。
【0053】
また、本発明は、任意の処理を、CPU(Central Processing Unit)にコンピュータプログラムを実行させることにより実現することも可能である。この場合、コンピュータプログラムは、記録媒体に記録して提供することも可能であり、また、インターネットその他の通信媒体を介して伝送することにより提供することも可能である。また、記憶媒体には、例えば、フレキシブルディスク、ハードディスク、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD−ROM、DVD、ROMカートリッジ、バッテリバックアップ付きRAMメモリカートリッジ、フラッシュメモリカートリッジ、不揮発性RAMカートリッジ等が含まれる。また、通信媒体には、電話回線等の有線通信媒体、マイクロ波回線等の無線通信媒体等が含まれる。
【符号の説明】
【0054】
1 キャッシュメモリ制御システム
2 カウント手段
3 優先順位決定手段
4 レベル決定手段
11 プロセッサ
12 キャッシュメモリ
13 索引回路
14 第1レジスタ回路
15 カウント回路
16 優先順位決定回路
17 割合算出回路
18 レベル決定回路
19 レベル選択回路
20 第2レジスタ回路
21 マージ回路
181 ヒットレベル決定部
182 ミスレベル決定部
183 スワップレベル決定部
184 レベル決定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のプロセッサから出力される所定情報を、キャッシュメモリの各レベルに夫々記憶させる制御を行うと共に、
前記所定情報は、前記出力先のプロセッサを示すソース情報を含む、キャッシュメモリ制御システムであって、
前記ソース情報毎に、前記キャッシュメモリの各レベルに記憶されている前記ソース情報の数をカウントしカウント値として算出するカウント手段と、
前記カウント手段により算出された前記ソース情報毎のカウント値に基づいて、前記キャッシュメモリの各レベルのうち、スワップ処理の対象となるレベルの優先順位を決定する優先順位決定手段と、
前記優先順位決定手段により決定された前記優先順位に基づいて、前記キャッシュメモリの各レベルうち、スワップ処理を行う前記レベルを決定するレベル決定手段と、
を備える、ことを特徴とするキャッシュメモリ制御システム。
【請求項2】
請求項1記載のキャッシュメモリ制御システムであって、
前記優先順位決定手段は、前記カウント手段により算出された前記ソース情報毎のカウント値が増加するに従って、該ソース情報に対する前記スワップ処理の優先順位を高く設定する、ことを特徴とするキャッシュメモリ制御システム。
【請求項3】
請求項1又は2記載のキャッシュメモリ制御システムであって、
前記カウント手段により算出された前記ソース情報毎のカウント値の総合計値を算出し、前記キャッシュメモリの全容量数に対する前記算出した総合計値の割合を算出する割合算出手段を更に備え、
前記レベル決定手段は、前記割合算出手段により算出された前記割合が所定割合以上となるとき、前記優先順位決定手段により決定された前記優先順位に従って、前記スワップ処理を行うレベルを決定する、ことを特徴とするキャッシュメモリ制御システム。
【請求項4】
請求項1乃至3のうちいずれか1項記載のキャッシュメモリ制御システムであって、
前記キャッシュメモリに記憶されている各レベルの情報の索引を行う索引手段と、
前記索引手段により索引された索引結果である前記キャッシュメモリの各レベルの情報を格納する第1レジスタ手段と、を更に備え、
前記レベル決定手段は、前記第1レジスタ手段に格納された前記キャッシュメモリの各レベルの情報と前記所定情報のキーアドレスとの比較結果、および、前記優先順位決定手段により決定された前記優先順位に基づいて、前記スワップ処理を行うレベルを決定する、ことを特徴とするキャッシュメモリ制御システム。
【請求項5】
請求項4記載のキャッシュメモリ制御システムであって、
前記レベル決定手段は、
前記各レベルの情報のうち、前記キーアドレスと一致した前記レベルを抽出し、出力するヒットレベル決定部と、
前記各レベルの情報のうち、前記キーアドレスと一致する前記レベルがないとき、前記キャッシュメモリ内で空いているレベルを抽出し、出力するミスレベル決定部と、
前記キーアドレスと一致するレベルがなく、かつ前記キャッシュメモリ内で空いているレベルがないときに、前記優先順位決定手段により決定された前記優先順位に基づいて、前記スワップ処理を行うレベルを決定するスワップレベル決定部と、
前記ヒットレベル決定部、前記ミスレベル決定部、又は前記スワップレベル決定部から出力される前記レベルを決定するレベル決定部と、
を有する、ことを特徴とするキャッシュメモリ制御システム。
【請求項6】
請求項4又は5記載のキャッシュメモリ制御システムであって、
前記第1レジスタ手段に格納された前記キャッシュメモリの各レベルの情報のうち、前記レベル決定手段により決定された前記レベルの情報を選択するレベル選択手段と、
前記レベル選択手段により選択された前記レベルの情報を格納する第2レジスタ手段と、を更に備える、ことを特徴とするキャッシュメモリ制御システム。
【請求項7】
複数のプロセッサから出力される所定情報を、キャッシュメモリの各レベルに夫々記憶させる制御を行うと共に、前記所定情報は、前記出力先のプロセッサを示すソース情報を含む、キャッシュメモリ制御システムの制御方法であって、
前記ソース情報毎に、前記キャッシュメモリの各レベルに記憶されている前記ソース情報の数をカウントしカウント値として算出し、
前記算出されたソース情報毎のカウント値に基づいて、前記キャッシュメモリの各レベルのうち、スワップ処理の対象となるレベルの優先順位を決定し、
前記決定された優先順位に基づいて、前記キャッシュメモリの各レベルうち、スワップ処理を行う前記レベルを決定する、
ことを特徴とするキャッシュメモリ制御システムの制御方法。
【請求項8】
複数のプロセッサから出力される所定情報を、キャッシュメモリの各レベルに夫々記憶させる制御を行うと共に、前記所定情報は、前記出力先のプロセッサを示すソース情報を含む、キャッシュメモリ制御システムの制御プログラムであって、
前記ソース情報毎に、前記キャッシュメモリの各レベルに記憶されている前記ソース情報の数をカウントしカウント値として算出する処理と、
前記算出されたソース情報毎のカウント値に基づいて、前記キャッシュメモリの各レベルのうち、スワップ処理の対象となるレベルの優先順位を決定する処理と、
前記決定された優先順位に基づいて、前記キャッシュメモリの各レベルうち、スワップ処理を行う前記レベルを決定する処理と、
をコンピュータに実行させることを特徴とするキャッシュメモリ制御システムの制御プログラム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2011−186617(P2011−186617A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−49310(P2010−49310)
【出願日】平成22年3月5日(2010.3.5)
【出願人】(000168285)エヌイーシーコンピュータテクノ株式会社 (572)
【Fターム(参考)】