説明

キャップメタル形成方法

【課題】基板面内で均一な膜厚形成を実現すること
【解決手段】このキャップメタル形成方法は、二つ以上の撥水性が異なる領域を有する基板の被処理面にキャップメタルを形成する方法であって、基板をインナーチャンバ内に配設された回転可能な保持機構に水平保持する保持ステップと、インナーチャンバを覆うアウターチャンバの上面に配設されたガス供給孔を介して、インナーチャンバとアウターチャンバ間にガスを供給するガス供給ステップと、インナーチャンバとアウターチャンバ間に圧力勾配を形成する圧力勾配形成ステップと、ガス供給ステップによりインナーチャンバ内のガス圧力が所定の値となった後に、基板の被処理面の所定位置にめっき液を供給して、領域の少なくともひとつにキャップメタルを形成するめっき液供給ステップとを有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被処理体たる基板等にめっきなどの液処理によりキャップメタルを形成するキャップメタル形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの設計・製造においては、動作速度の向上と一層の高集積化が指向されている。その一方で、高速動作や配線の微細化による電流密度の増加により、エレクトロマイグレーション(EM)が発生しやすくなり、配線の断線を引き起こすことが指摘されている。このことは、信頼性の低下をもたらす原因となる。そのため、半導体デバイスの基板上に形成される配線の材料として、比抵抗の低いCu(銅)やAg(銀)などが用いられるようになってきている。特に銅の比抵抗は1.8μΩ・cmと低く、高いEM耐性が期待できるため、半導体デバイスの高速化のために有利な材料として期待されている。
【0003】
一般に、Cu配線を基板上に形成するには、層間絶縁膜に配線を埋め込むためのビアおよびトレンチをエッチングにより形成し、それらの中にCu配線を埋め込むダマシン法が用いられている。さらには、Cu配線を有する基板の表面にCoWB(コバルト・タングステン・ホウ素)やCoWP(コバルト・タングステン・リン)などを含むめっき液を供給し、キャップメタルと称される金属膜を無電解めっきによりCu配線上に被覆して、半導体デバイスのEM耐性の向上を図る試みがなされている(例えば、特許文献1)。
【0004】
キャップメタルは、Cu配線を有する基板の表面に無電解めっき液を供給することによって形成される。例えば、回転保持体に基板を固定し、回転保持体を回転させながら無電解めっき液を供給することで、基板表面上に均一な液流れを形成する。これにより、基板表面全域に均一なキャップメタルを形成することができる(例えば、特許文献2)。
【0005】
しかし、無電解めっきは、めっき液の組成、温度などの反応条件によって金属の析出レートに大きな影響を与えることが知られている。また、めっき反応による副生成物(残渣)がスラリー状に発生して基板表面に滞留することで、均一なめっき液流れが阻害され、劣化した無電解めっき液を新しい無電解めっき液に置き換えることができないという問題も指摘されている。これは、基板上での反応条件が局所的に異なるために、基板面内で均一な膜厚を有するキャップメタルを形成することを難しくする。また、キャップメタルを施す基板表面は、形成される配線の粗密や表面材質の違い等に起因する局所的な親水性領域若しくは疎水性領域が生じ、基板全体において均一に無電解めっき液を供給することができず、基板面内で均一な膜厚を有するキャップメタルを形成することができないという問題を生じている。
【特許文献1】特開2006−111938号公報
【特許文献2】特開2001−073157号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このように、従来のめっき方法では、基板全体において均一に無電解めっき液を供給することができず、基板面内で均一な膜厚形成を行うことが難しいという問題がある。
【0007】
本発明はこのような課題を解決するためになされたもので、無電解めっき液の使用量を減らすことができると共に、めっき反応で生じる反応副生成物の影響を抑制して基板の面内で均一な膜厚を有するキャップメタルを形成することができるキャップメタル形成方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記した目的を達成するために、本発明の一つの態様に係るキャップメタル形成方法は、二つ以上の撥水性が異なる領域を有する基板の被処理面にキャップメタルを形成する方法であって、基板をインナーチャンバ内に配設された回転可能な保持機構に水平保持する保持ステップと、インナーチャンバを覆うアウターチャンバの上面に配設されたガス供給孔を介して、インナーチャンバとアウターチャンバ間にガスを供給するガス供給ステップと、インナーチャンバとアウターチャンバ間に圧力勾配を形成する圧力勾配形成ステップと、ガス供給ステップによりインナーチャンバ内のガス圧力が所定の値となった後に、基板の被処理面の所定位置にめっき液を供給して、領域の少なくともひとつにキャップメタルを形成するめっき液供給ステップとを有している。
【0009】
本発明の他の態様にかかるキャップメタル形成方法は、めっき液供給ステップによりキャップメタルが形成される領域が銅パターンであることを特徴とする。圧力勾配形成ステップは、インナーチャンバ側壁に形成されたガス導入口を介してガスを導入し、インナーチャンバ内部にあって基板の被処理面の上部に配設された整流板を通して、基板の被処理面に前記ガスを均等に吹き付けてもよい。また圧力勾配形成ステップは、さらに、アウターチャンバもしくはインナーチャンバに独立に接続されたガス排気ポンプおよびバルブを操作してガス排出量を調整することによって、基板に吹き付けられたガスの円周方向に向けた流れを形成してもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、基板面内で均一な膜厚形成を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
一般的な無電解めっきプロセスは、前洗浄、めっき処理、後洗浄、裏面・端面洗浄、および乾燥の各工程を有している。ここで、前洗浄は、被処理対象たるウェハを親水化処理する工程である。めっき処理は、ウェハ上にめっき液を供給してめっき処理を行う工程である。後洗浄は、めっき析出反応により生成した残渣物等を除去する工程である。裏面・端面洗浄は、ウェハの裏面および端面におけるめっき処理に伴う残渣物を除去する工程である。乾燥は、ウェハを乾燥させる工程である。これらの各工程は、ウェハの回転、洗浄液やめっき液のウェハ上への供給などを組み合わせることで実現している。
【0012】
ところで、めっき液などの処理液を基板上に供給するめっき処理工程では、処理液の供給ムラなどに起因して、めっき処理により生成される膜(めっき処理膜)の膜厚が不均一となることがある。特に、処理対象たる基板のサイズが大きい場合や、層間絶縁膜が形成された基板被処理面にCuパターンの粗密が存在する場合に、膜厚の不均一が顕著となる。本発明の実施形態に係る半導体製造装置は、かかる基板に対する無電解めっきプロセスの各工程のうち、特にめっき処理工程における膜厚ムラ・ばらつきの問題を改善するものである。
【0013】
以下、本発明の一つの実施形態を、図面を参照して詳細に説明する。図1は本発明の一つの実施形態に係る半導体製造装置の構成を示す平面図、図2はこの実施形態の半導体製造装置の無電解めっきユニットを示す断面図、図3は同じく無電解めっきユニットを示す平面図、図4は、流体供給装置の構成を示す図である。
【0014】
図1に示すように、この実施形態の半導体製造装置は、搬出部1と、処理部2と、搬送部3と、制御装置5とを備えている。
【0015】
搬出部1は、フープ(FOUP: Front Opening Unified Pod)Fを介して複数枚の基板Wを半導体製造装置内外に搬出入する機構である。図1に示すように、搬出入部1には、装置正面(図1のX方向の側面)に沿ってY方向に配列された3箇所の出入口ポート4が形成されている。出入口ポート4は、それぞれフープFを載置する載置台6を有している。出入口ポート4の背面には隔壁7が形成される。隔壁7には、フープFに対応する窓7Aが載置台6の上方にそれぞれ形成されている。窓7Aには、それぞれフープFの蓋を開閉するオープナ8が設けられており、オープナ8を介してフープFの蓋が開閉される。
【0016】
処理部2は、前述した各工程を基板Wに一枚ずつ実行する処理ユニット群である。処理部2は、搬送部3との間で基板Wの受け渡しを行う受け渡しユニット(TRS)10と、基板Wに無電解めっきおよびその前後処理を実行する無電解めっきユニット(PW)11と、めっき処理前後において基板Wを加熱する加熱ユニット(HP)12と、加熱ユニット12で加熱された基板Wを冷却する冷却ユニット(COL)13と、これらのユニット群に囲まれて処理部2の略中央に配置され各ユニット間で基板Wを移動させる第2の基板搬送機構14とを備えている。
【0017】
受け渡しユニット10は、例えば、上下二段に形成された基板受け渡し部(図示せず)を有している。上下段の基板受け渡し部は、例えば、下段を、出入口ポート4から搬入された基板Wの一時的な載置用、上段を、出入口ポート4へ搬出する基板Wの一時的な載置用のように目的別に使い分けることができる。
【0018】
加熱ユニット12は、受け渡しユニット10のY方向に隣接した位置に2台配置されている。加熱ユニット12は、例えばそれぞれ上下4段に渡って配置された加熱プレートを有している。冷却ユニット13は、第2の基板搬送機構14のY方向に隣接した位置に2台配置されている。冷却ユニット13は、例えばそれぞれ上下4段に渡って形成された冷却プレートを有している。無電解めっきユニット11は、Y方向に隣接する位置に配置された冷却ユニット13および第2の基板搬送機構14に沿って2台配置されている。
【0019】
第2の基板搬送機構14は、例えば上下に2段の搬送アーム14Aを有している。上下の搬送アーム14Aは、それぞれ上下方向に昇降可能であり、且つ水平方向に旋回可能に構成されている。これにより、第2の基板搬送機構14は、搬送アーム14Aを介して受け渡しユニット10、無電解めっきユニット11、加熱ユニット12および冷却ユニット13の間で基板Wを搬送する。
【0020】
搬送部3は、搬出入部1と処理部2との間に位置し、基板Wを一枚ずつ搬送する搬送機構である。搬送部3には、基板Wを一枚ずつ搬送する第1の基板搬送機構9が配置されている。基板搬送機構9は、例えば、Y方向に移動可能な上下二段の搬送アーム9Aを有しており、搬出入部1と処理部2との間で基板Wの受け渡しを行う。同様に、搬送アーム9Aは、上下方向に昇降可能であり、且つ水平方向に旋回可能に構成されている。これにより、第1の基板搬送機構9は、搬送アーム9Aを介して任意のフープFと処理部2との間で基板Wを搬送する。
【0021】
制御装置5は、マイクロプロセッサを有するプロセスコントローラ51、プロセスコントローラ51に接続されたユーザーインターフェース52、およびこの実施形態に係る半導体製造装置の動作を規定するコンピュータプログラムなどを格納する記憶部53を備え、処理部2や搬送部3などを制御する。制御装置5は、図示しないホストコンピュータとオンライン接続され、ホストコンピュータからの指令に基づいて半導体製造装置を制御する。ユーザーインターフェース52は、例えばキーボードやディスプレイなどを含むインタフェースであり、記憶部53は、例えばCD−ROM、ハードディスク、不揮発メモリなどを含んでいる。
【0022】
ここで、この実施形態に係る半導体製造装置1の動作を説明する。処理対象である基板Wは、あらかじめフープF内に収納されている。まず、第1の基板搬送機構9は、窓7Aを介してフープFから基板Wを取り出し、受け渡しユニット10へ搬送する。基板Wが受け渡しユニット10に搬送されると、第2の基板搬送機構14は、搬送アーム14Aを用いて、基板Wを受け渡しユニット10から加熱ユニット12のホットプレートへ搬送する。
【0023】
加熱ユニット12は、基板Wを所定の温度まで加熱(プレベーク)して基板W表面に付着した有機物を除去する。加熱処理の後、第2の基板搬送機構14は、基板Wを加熱ユニット12から冷却ユニット13へ搬送する。冷却ユニット13は、基板Wを冷却処理する。
【0024】
冷却処理が終わると、第2の基板搬送機構14は、搬送アーム14Aを用いて、基板Wを無電解めっきユニット11へ搬送する。無電解めっきユニット11は、基板Wの表面に形成された配線などに無電解めっき処理等を施す。
【0025】
無電解めっき処理等が終わると、第2の基板搬送機構14は、基板Wを無電解めっきユニット11から加熱ユニット12のホットプレートへ搬送する。加熱ユニット12は、基板Wにポストベーク処理を実行して、無電解めっきによるめっき(キャップメタル)に含有される有機物を除去するとともに、配線等とめっきとの密着性を高めさせる。ポストベーク処理が終わると、第2の基板搬送機構14は、基板Wを加熱ユニット12から冷却ユニット13へ搬送する。冷却ユニット13は、基板Wを再度冷却処理する。
【0026】
冷却処理が終わると、第2の基板搬送機構14は、基板Wを受け渡しユニット10へ搬送する。その後、第1の基板搬送機構9は、搬送アーム9Aを用いて受け渡しユニット10に載置された基板WをフープFの所定の場所へ戻す。
【0027】
以後、このような流れを複数の基板に対して行って連続処理をする。なお、初期状態としてダミーウェハを先行して処理させ、各ユニットのプロセス状態の安定状態を促す処理をしてもよい。これによりプロセス処理の再現性を高めることができる。
【0028】
続いて、図2ないし図4を参照して、この実施形態の半導体製造装置における無電解めっきユニット11について詳細に説明する。図2に示すように、無電解めっきユニット11(以下「めっきユニット11」と称することがある。)は、アウターチャンバ110、インナーチャンバ120、スピンチャック130、第1・第2の流体供給部140・150、ガス供給部160、バックプレート165を備えている。
【0029】
アウターチャンバ110は、ハウジング100の中に配設され、めっき処理を実行する処理容器である。アウターチャンバ110は、基板Wの収納位置を囲むような筒状に形成され、ハウジング100の底面に固定されている。アウターチャンバ110の側面には、基板Wを搬出入する窓115が設けられ、シャッター機構116により開閉可能とされている(図2では閉じられている)。また、アウターチャンバ110について、窓115が形成された側と対向する側面には、第1・第2の流体供給部140・150の動作のためのシャッター機構119が開閉可能に形成されている(図2では閉じられている)。アウターチャンバ110の上面には、ガス供給部160(ガス供給管160a)が設けられている。アウターチャンバ110の下部には、ガスや処理液等を逃がすドレン抜き118が備えられている。
【0030】
インナーチャンバ120は、基板Wから飛散する処理液を受けるとともに、ガス供給部160から供給されるガスを整流して気流を形成する容器である。インナーチャンバ120は、アウターチャンバ110より小さい略同形状(筒状の形状)を有しており、アウターチャンバ110の中に配設されている。インナーチャンバ120は、アウターチャンバ110と基板Wの収納位置の間に位置し、排気、排液用のドレン抜き124を備えている。
【0031】
インナーチャンバ120の側壁160bには、ガス導入口160cが形成されている。ガス供給管160aは、インナーチャンバ120の上面に対向するアウターチャンバ110の上部に設けられているから、ガス供給管160aから供給されるガスは、インナーチャンバ120の上面から側壁160bを経てガス導入口160cに導かれる。すなわち、ガス供給管160aからインナーチャンバ120の上面を経て、ガス供給管160aと対向しない壁面160bに形成したガス導入口160cに至るガスの流路は、ガスのコンダクタンスとして作用し、インナーチャンバ120の内部と外部との間にガスの圧力勾配を形成する。
【0032】
インナーチャンバ120の側壁160b内には、整流板160dが配設されている。整流板160dは、ガス導入口160cよりも基板Wに近い側の側壁160bに、基板Wと平行に配設される。整流板160dは、所定の厚さを有しており、その厚さ方向に複数の整流孔160eが形成されている。整流板160dに形成された整流孔160eは、ガス導入口160cから導入されたガスを整流して基板Wに向けて送る作用をする。なお、整流板160dは、ガス導入口160cと協働して、基板Wが保持される領域とインナーチャンバ外部との間にガスの圧力勾配を形成する機能をも有している。
【0033】
なお、ガスシリンダなどの図示しない昇降機構を用いてアウターチャンバ110の内側でインナーチャンバ120を昇降可能としてもよい。この場合、端部122が基板Wの収納位置よりもやや高い位置(処理位置)と、当該処理位置よりも下方の位置(退避位置)との間で昇降する。ここで処理位置とは、基板Wに無電解めっきを施す時の位置であり、退避位置とは、基板Wの搬出入時や基板Wの洗浄等を行う時の位置である。
【0034】
スピンチャック130は、基板Wを実質的に水平に保持する基板固定機構である。スピンチャック130は、回転筒体131、回転筒体131の上端部から水平に広がる環状の回転プレート132、回転プレート132の外周端に周方向に等間隔を空けて設けられた基板Wの外周部を支持する支持ピン134a、同じく基板Wの外周面を押圧する複数の押圧ピン134bを有している。図3に示すように、支持ピン134aと押圧ピン134bは、互いに周方向にずらされ、例えば3つずつ配置されている。支持ピン134aは、基板Wを保持して所定の収容位置に固定する固定具であり、押圧ピン134bは、基板Wを下方に押圧する押圧機構である。回転筒体131の側方には、モータ135が設けられており、モータ135の駆動軸と回転筒体131との間には無端状ベルト136が掛け回されている。すなわち、モータ135によって回転筒体131が回転するように構成される。支持ピン134aおよび押圧ピン134bは水平方向(基板Wの面方向)に回転し、これらにより保持される基板Wも水平方向に回転する。
【0035】
ガス供給部160は、アウターチャンバ110の中に窒素ガスなどの不活性ガス(以下単に「ガス」と呼ぶことがある)を基板Wに向けて供給する。前述したガス導入口160c、整流孔160eを有する整流板160dを経て導入された窒素ガスやクリーンエアは、アウターチャンバ110の下端に設けられたドレン抜き118または124を介して回収される。
【0036】
バックプレート165は、スピンチャック130が保持した基板Wの下面に対向し、スピンチャック130による基板Wの保持位置と回転プレート132との間に配設されている。バックプレート165は、ヒータを内蔵しており、回転筒体131の軸心を貫通するシャフト170と連結されている。バックプレート165の中には、その表面の複数個所で開口する流路166が形成されており、この流路166とシャフト170の軸心を貫通する流体供給路171とが連通している。流体供給路171には熱交換器175が配置されている。熱交換器175は、純水や乾燥ガス等の処理流体を所定の温度に調整する。すなわち、バックプレート165は、温度調整された処理流体を基板Wの下面に向けて供給する作用をする。シャフト170の下端部には連結部材180を介して、エアシリンダ等の昇降機構185が連結されている。すなわち、バックプレート165は、昇降機構185およびシャフト170により、スピンチャック130で保持された基板Wと回転プレート132との間を昇降するように構成されている。
【0037】
図3に示すように、第1・第2の流体供給部140・150は、スピンチャック130により保持された基板Wの上面に処理液を供給する。第1・第2の流体供給部140・150は、処理液などの流体を貯留する流体供給装置200と、供給用ノズルを駆動するノズル駆動装置205とを備えている。第1・第2の流体供給部140・150は、ハウジング100の中でアウターチャンバ110を挟むようにしてそれぞれ配置されている。
【0038】
第1の流体供給部140は、流体供給装置200と接続された第1の配管141と、第1の配管141を支持する第1のアーム142と、第1のアーム142の基部に備えられステッピングモータなどを用いて当該基部を軸に第1のアーム142を旋回させる第1の旋回駆動機構143とを備えている。第1の流体供給部140は、無電解めっき処理液などの処理流体を供給する機能を有する。第1の配管141は、三種の流体を個別に供給する配管141a・141b・141cを含み、それぞれ第1のアーム142の先端部においてノズル144a・144b・144cと接続されている。このうち、前述の前洗浄工程では処理液および純水がノズル144aから供給され、後洗浄工程では処理液および純水がノズル144bから供給され、めっき処理工程ではめっき液がノズル144cから供給される。
【0039】
同様に、第2の流体供給部150は、流体供給装置200と接続された第2の配管151と、第2の配管151を支持する第2のアーム152と、第2のアーム152の基部に備えられ第2のアーム152を旋回させる第2の旋回駆動機構153とを備えている。第2の配管151は、第2のアーム152の先端部においてノズル154と接続されている。第2の流体供給部150は、基板Wの外周部(周縁部)の処理を行う処理流体を供給する機能を有する。第1および第2のアーム142および152は、アウターチャンバ110に設けられたシャッター機構119を介して、スピンチャック130に保持された基板Wの上方を旋回する。
【0040】
ここで、図4を参照して流体供給装置200について詳細に説明する。流体供給装置200は、第1・第2の流体供給部140・150に処理流体を供給する。図4に示すように、流体供給装置200は、第1のタンク210、第2のタンク220、第3のタンク230、および、第4のタンク240を有している。
【0041】
第1のタンク210は、基板Wの無電解めっき処理の前処理に使用される前洗浄処理液L1を貯留する。また、第2のタンク220は、基板Wの無電解めっき処理の後処理に使用される後洗浄処理液L2を貯留する。第1および第2のタンク210および220は、それぞれ処理液L1・L2を所定の温度に調整する温度調節機構(図示せず)を備えており、第1の配管141aと接続された配管211および第2の配管141bと接続された配管221が接続されている。配管211および221には、それぞれポンプ212および222と、バルブ213および223とが備えられており、所定温度に調節された処理液L1・L2が、それぞれ第1の配管141a・第2の配管141bに供給されるように構成されている。すなわち、ポンプ212および222とバルブ213および223とをそれぞれ動作させることで、処理液L1およびL2が第1の配管141aおよび第2の配管141bを通じてノズル144aおよびノズル144bに送り出される。
【0042】
第3のタンク230は、基板Wを処理するめっき液L3を貯留する。第3のタンク230は、第1の配管141cと接続された配管231が接続されている。配管231には、ポンプ232、バルブ233、および、めっき液L3を加熱する加熱器(例えば、熱交換器)234が設けられている。すなわち、めっき液L3は、加熱器234により温度調節され、ポンプ232およびバルブ233の協働した動作により第1の配管141cを通じてノズル144cに送り出される。
【0043】
第4のタンク240は、基板Wの外周部の処理に用いる外周部処理液L4を貯留する。第4のタンク240は、第2の配管151と接続された配管241が接続されている。配管241には、ポンプ242およびバルブ243が設けられている。すなわち、外周部処理液L4は、ポンプ242およびバルブ243の協働した動作により第2の配管151を通じてノズル154に送り出される。
【0044】
なお、第4のタンク240には、例えばフッ酸を供給する配管、過酸化水素水を供給する配管、および、純水L0を供給する配管も接続されている。すなわち、第4のタンク240は、これらの液を予め設定された所定の比率で混合し調整する作用をもすることになる。
【0045】
なお、第1の配管141aおよび第2の配管141bには、それぞれ純水L0を供給する配管265aおよび265bが接続され、配管265aにはバルブ260aが設けられ、配管265bにはバルブ260bが設けられている。すなわち、ノズル144aおよび144bは、純粋L0をも供給することができる。
【0046】
ここで、図5を参照して、整流板160dについて詳細に説明する。図5は、図2に示すめっきユニット11の上面側からみた整流板160dの構成を示す断面図である。図5に示すように、インナーチャンバ120内には、インナーチャンバ120の水平方向の断面形状にあわせた整流板160dが形成されている。整流板160dには、貫通した整流孔160eが複数形成されている。整流孔160eは、整流板160dの下方に保持される基板Wにむけてガス流を形成する作用をする。整流孔160eの大きさや向きは、基板W上のめっき処理が均一に行われるように設定される。
【0047】
インナーチャンバ120の側壁160bには、複数のガス導入口160cが形成されている。ガス導入口160cは、例えば等間隔で四方向に形成され、ガス供給部160から供給されるガスを均等に導入する。すなわち、ガス導入口160cは、整流板160dの平面方向に偏りが生じないような位置に形成される。
【0048】
続いて、図6を参照してガス供給部160について詳細に説明する。図6は、図2に示すめっきユニット11のうち、ガス供給部160に関係する構成のみを示した図である。図6に示すように、この実施形態に係るめっきユニット11は、Nなどのガスを生成し併せて当該ガスの温度を調整するガス供給装置270と、ガス供給装置270が生成したガスのアウターチャンバ110内への供給量を制御するバルブ271と、アウターチャンバ110とインナーチャンバ120との間を流れるガスの排出およびその量を調整するバルブ272・ポンプ273と、インナーチャンバ120内を流れるガスの排出およびその量を調整するバルブ274・ポンプ275を備えている。
【0049】
ガス供給装置270は、所定の温度のガスを生成する。ガス供給装置270が生成するガスは、基板Wに熱量を与える熱媒体として作用すると共に、基板Wの表面近傍から酸素などの酸化ガスを排除する作用をする。したがって、ガス供給装置270が生成するガスは酸化抑制ガスであることが望ましく、例えばNなどの不活性ガスなどを用いることができる。ガス供給装置270が生成するガスの温度は、基板Wのめっき処理温度程度とすることが望ましく、例えば50℃〜80℃程度である。以下の説明において、ガス供給装置270はNを生成するものとして説明する。ガス供給装置270には、供給管160aの一端が接続されており、生成したガスを供給管160aに送り出す。
【0050】
供給管160aは、バルブ271を備えている。バルブ271は、プロセスコントローラ51からの指示に基づき、ガス供給装置270が生成したガスの供給および供給量を制御する。ガスの供給量は、後述する排気用のバルブ272・274やポンプ273・275によるガス排気量やアウターチャンバ110内のガス圧などにより決定される。供給管160aの他端は、アウターチャンバ110の上面と接続されており、供給管160aを通じて供給されるガスは、アウターチャンバ110内に導入される。
【0051】
バルブ272およびポンプ273は、ドレン抜き118に配設されている。バルブ272およびポンプ273は、プロセスコントローラ51からの指示に基づき、アウターチャンバ110内のガスを排気する。前述のとおり、アウターチャンバ110からの排気量は、バルブ272およびポンプ273によるガス排気量およびガス圧によって決定され、プロセスコントローラ51により制御される。なお、この実施形態ではバルブ272とガスを排気するポンプ273とが協働してアウターチャンバ110内を所定の雰囲気に維持しているが、バルブ272およびポンプ273のうちいずれか一方のみを配置することとしてもよい。
【0052】
バルブ274およびポンプ275は、ドレン抜き124に配設されている。バルブ274およびポンプ275は、プロセスコントローラ51からの指示に基づき、インナーチャンバ120内のガスを排気する。前述のとおり、インナーチャンバ120からの排気量は、バルブ274およびポンプ275によるガス排気量およびガス圧によって決定され、プロセスコントローラ51により制御される。なお、この実施形態ではバルブ274とガスを排気するポンプ275とが協働してインナーチャンバ120内を所定の雰囲気に維持しているが、バルブ274およびポンプ275のうちいずれか一方のみを配置することとしてもよい。
【0053】
図6に示すように、ガス供給装置270が生成したガスは、バルブ271、バルブ272・ポンプ273、およびバルブ274・ポンプ275の作用により、供給管160aからインナーチャンバ120の上面および側壁160bを経て、その一部がガス導入口160cに流入する。ガス供給管160aからガス導入口160cまでの流路は前述の通りコンダクタンスを構成している。ガス導入口160cから流入したガスは、整流板160dに形成された整流孔160eに流れ込み、整流されて基板Wに均等に吹き付けられる。基板Wに吹き付けられたガスは、基板Wの表面を円周方向に向けて流れ、ドレン抜き124からバルブ274・ポンプ275を経て排気される。一方、ガス導入口160cに取り込まれなかったガスは、そのままアウターチャンバ110とインナーチャンバ120との間を流れ、ドレン抜き118からバルブ272・ポンプ273を経て排気される。整流板160dの整流孔160eを通過したガスは、基板Wの表面を円周方向に向けて流れる気流となる。このガスの気流は、基板W表面近傍から酸化剤となりうる酸素などの活性ガスを排除すると共に、基板Wに熱量を与えて基板W表面でのめっき処理温度の維持を補助する作用をする。
【0054】
次に、図1ないし図8を参照して、この実施形態に係る無電解めっきユニット11の動作を説明する。図7は、この実施形態に係る無電解めっきユニット11の動作、特に、めっき処理動作について説明するフローチャート、図8は、この実施形態に係る無電解めっきユニット11の全体プロセスを示す図である。図7に示すように、この実施形態のめっきユニット11は、前洗浄工程(図中「A」)、めっき処理工程(同「B」)、後洗浄工程(同「C」)、裏面・端面洗浄工程(同「D」)、および乾燥工程(同「E」)の5つの工程を実現する。また、図7に示すように、この実施形態のめっきユニット11は、基板裏面に加温された純水を供給する裏面純水供給a、基板端面を洗浄する端面洗浄b、基板裏面を洗浄する裏面洗浄c、めっき処理に続いて基板を洗浄する後洗浄d、めっき処理e、めっき処理に先立って基板を洗浄する前洗浄f、および基板の親水度を調整する純水供給gの7つの処理液供給プロセスを実行する。
【0055】
第1の基板搬送機構9は、搬出入部1のフープFから基板Wを一枚ずつ搬出し、処理部2の受け渡しユニット10に基板Wを搬入する。基板Wが搬入されると、第2の基板搬送機構14は、基板Wを加熱ユニット12および冷却ユニット13に搬送し、基板Wは所定の熱処理が行われる。熱処理が終了すると、第2の基板搬送機構14は、無電解めっきユニット11内へ基板Wを搬入する。
【0056】
ます、プロセスコントローラ51は、前洗浄工程Aを実行する。前洗浄工程Aは、親水化処理、前洗浄処理、純水処理を含んでいる。
【0057】
プロセスコントローラ51は、モータ135を駆動してスピンチャック130に保持された基板Wを回転させる。スピンチャック130が回転すると、プロセスコントローラ51は、ガス供給装置270に所定温度の不活性ガス(例えばNガス)の生成を指示するとともに、ノズル駆動装置205に第1の流体供給部140の駆動を指示する。ガス供給装置270が所定温度のガスを生成すると、プロセスコントローラ51は、バルブ271およびバルブ272・ポンプ273を動作させてアウターチャンバ110内に所定の気圧のガス雰囲気を形成する。次いで、プロセスコントローラ51は、バルブ274・ポンプ275を動作させ、導入口160cからインナーチャンバ120内の整流板160dへ、整流板160dから基板Wの表面へ、さらには基板表面から基板Wの周縁部(端部)へ向けたガスの流れを形成して、それぞれの間に圧力勾配を形成する。
【0058】
ノズル駆動装置205は、第1の旋回駆動機構143を動作させて第1のアーム142を基板Wの上の所定位置(例えばノズル144aが基板Wの中心部となる位置)に移動させる。併せて、ノズル駆動装置205は、第2の旋回駆動機構153を動作させて第2のアーム152を基板Wの上の周縁部に移動させる。それぞれ所定位置に達すると、プロセスコントローラ51は、流体供給装置200に親水化処理を指示する(S301)。流体供給装置200は、バルブ260aを開いて所定量の純水L0をノズル144aに送る(図8中供給プロセスg)。このとき、ノズル144aは、例えば基板Wの上方0.1〜20mm程度の位置としておく。同様に、流体供給装置200は、バルブ243を開いて処理液L4をノズル154に送る。この処理での処理液L4は、純水L0との関係で異なる親水化効果が得られるものを用いる。この親水化処理は、続く前洗浄液が基板W表面ではじかれることを防ぐとともに、めっき液が基板W表面から落ちにくくする作用をする。
【0059】
続いて、プロセスコントローラ51は、流体供給装置200に前洗浄処理(図8中供給プロセスf)および裏面温純水供給(同a)を指示する。流体供給装置200は、バルブ260aを閉じて純水L0の供給を止めるとともにバルブ243を閉じて処理液L4の供給を止め、ポンプ212およびバルブ213を駆動させて前洗浄処理液L1をノズル144aに供給する(S303)。ここで、ノズル144aは基板Wの略中央部に移動した状態であるから、ノズル144aは、基板Wの略中央部に前洗浄処理液L1を供給することになる。前洗浄処理液は有機酸などを用いるから、ガルバニックコロージョンを発生させることなく、銅配線上から酸化銅を除去し、めっき処理の際の核形成密度を上昇させることができる。
【0060】
次いで、流体供給装置200は、流体供給路171に純水を供給する。熱交換器175は、流体供給路171に送られる純水を温度調節し、バックプレート165に設けられた流路166を介して温度調節された純水を基板Wの下面に供給する。これにより、基板Wの温度がめっき処理に適した温度に維持される。なお、流体供給路171への純水の供給は、前述のステップ303(S303)と同時に開始しても同様の効果を得ることができる。
【0061】
前洗浄処理が終了すると、プロセスコントローラ51は、流体供給装置200に純水処理(図8中供給プロセスg)を指示する(S305)。流体供給装置200は、ポンプ212およびバルブ213を動作させて前洗浄処理液L1の供給を止めるとともに、バルブ260を開いて所定量の純水L0をノズル144aに送る。ノズル144aからの純水L0の供給により、前洗浄処理液を純水に置換することになる。これは、酸性である前洗浄処理液L1とアルカリ性のめっき処理液とが混合してプロセス不良が発生することを防ぐものである。
【0062】
前洗浄工程Aに続いて、プロセスコントローラ51は、めっき処理工程Bを実行する。めっき処理工程Bは、めっき液置換処理、めっき液盛り付け処理、めっき液処理、純水処理を含んでいる。
【0063】
プロセスコントローラ51は、アウターチャンバ110内に供給しているガスの生成指示後、アウターチャンバ110内(またはアウターチャンバ110内およびインナーチャンバ120内)のガスの圧力を監視している。所定の圧力に達した場合、プロセスコントローラ51は、流体供給装置200およびノズル駆動装置205にめっき液置換処理を指示する(図8中供給プロセスe)。流体供給装置200は、バルブ260aを閉じて純水L0の供給を止めるとともに、ポンプ232とバルブ233を動作させてめっき液L3をノズル144cに供給する。一方、ノズル駆動装置205は、第1の旋回駆動機構143を動作させて、ノズル144cが基板Wの中央部〜周縁部〜中央部と移動(スキャン)するように第1のアーム142を旋回させる(S312)。めっき液置換処理では、めっき液供給ノズルが中央部〜周縁部〜中央部を移動し、基板Wが比較的高い回転数で回転する。この動作により、めっき液L3が基板W上を拡散して、基板Wの表面上の純水を迅速にめっき液に置換することができる。
【0064】
めっき液置換処理が終わると、プロセスコントローラ51は、スピンチャック130に保持された基板Wの回転速度を減速させ、流体供給装置200およびノズル駆動装置205にめっき液盛り付け処理を指示する。流体供給装置200は、継続してめっき液L3を供給し、ノズル駆動装置205は、第1の旋回駆動機構143を動作させて、ノズル144cが基板Wの中央部から周縁部に向けて徐々に移動させる(S314)。めっき液置換処理された基板Wの表面は、十分な量のめっき液L3が盛り付けられる。さらに、ノズル144cが基板Wの周縁部近傍に近づいた段階で、プロセスコントローラ51は、基板Wの回転速度をさらに減速させる。
【0065】
続いて、プロセスコントローラ51は、流体供給装置200およびノズル駆動装置205にめっき処理を指示する。ノズル駆動装置205は、第1の旋回駆動機構143を動作させて、ノズル144cが基板Wの中央部と周縁部の略中間位置に位置するように第1のアーム142を旋回させる。
【0066】
次いで、流体供給装置200は、ポンプ232とバルブ233を動作させてめっき液L3をノズル144cに断続的・間欠的に供給する(S317)。すなわち図7に示すように、ノズルが所定位置に配置されてめっき液が断続的・間欠的に供給される。基板Wは回転しているから、めっきL3を断続的(間欠的)に供給しても基板Wの全域にまんべんなくめっき液L3を行き渡らせることができる。なお、上記ステップ311・314・317の処理は、繰り返して行ってもよい。めっき液L3を供給して所定時間経過後、流体供給装置200は、めっき液L3の供給を停止し、プロセスコントローラ51は、基板Wの裏面への温純水の供給を停止する。併せて、プロセスコントローラ51は、バルブ271およびバルブ272・ポンプ273・バルブ274・ポンプ275の動作を停止させて、ガスの流れを止める。このとき、プロセスコントローラ51は、ガス供給装置270の動作をも停止させてもよい。
【0067】
ガス供給装置270によるアウターチャンバ内の加圧を解除した後、プロセスコントローラ51は、流体供給装置200およびノズル駆動装置205に純水処理を指示する(図8中供給プロセスg)。プロセスコントローラ51は、スピンチャック130に保持された基板Wの回転速度を増速させ、ノズル駆動装置205は、第1の旋回駆動機構143を動作させてノズル144cが基板Wの中央部に位置するように第1のアーム142を旋回させる。その後、流体供給装置200は、バルブ260aを開いて純水L0を供給する(S321)。これにより、基板W表面に残っためっき液を除去して後処理液とめっき液とが混ざることを防ぐことができる。
【0068】
めっき処理工程Bに続いて、プロセスコントローラ51は、後洗浄工程Cを実行する。後洗浄工程Cは、後薬液処理および純水処理を含んでいる。
【0069】
プロセスコントローラ51は、流体供給装置200に後薬液処理を指示する(図8中供給プロセスd)。流体供給装置200は、バルブ260aを閉じて純水L0の供給を停止させるとともに、ポンプ222およびバルブ223を動作させて後洗浄処理液L2をノズル144bに供給する(S330)。後洗浄処理液L2は、基板Wの表面の残渣物や異常析出しためっき膜を除去する作用をする。
【0070】
後薬液処理に続いて、プロセスコントローラ51は、流体供給装置200に純水処理を指示する(図8中供給プロセスg)。流体供給装置200は、ポンプ222およびバルブ223を動作させて後洗浄処理液L2の供給を停止させるとともに、バルブ260bを開いて純水L0を供給する(S331)。
【0071】
後洗浄工程Cに続いて、プロセスコントローラ51は、裏面・端面洗浄工程Dを実行する。裏面・端面洗浄工程Dは、液除去処理、裏面洗浄処理、端面洗浄処理を含んでいる。
【0072】
プロセスコントローラ51は、流体供給装置200に液除去処理を指示する。流体供給装置200は、バルブ260bを閉じて純水L0の供給を停止し、プロセスコントローラ51は、スピンチャック130に保持された基板Wの回転速度を増速する。この処理は、基板Wの表面を乾燥させて基板Wの表面の液除去を目的としている。
【0073】
液除去処理が終わると、プロセスコントローラ51は、流体供給装置200に裏面洗浄処理を指示する。まず、プロセスコントローラ51は、まずスピンチャック130に保持された基板Wの回転速度を減速させる。続いて、流体供給装置200は、流体供給路171に純水を供給する(図8中供給プロセスa)。熱交換器175は、流体供給路171に送られる純水を温度調節し、バックプレート165に設けられた流路を介して温度調節された純水を基板Wの裏面に供給する(S342)。純水は、基板Wの裏面側を親水化する作用をする。次いで、流体供給装置200は、流体供給路171への純水供給を停止させ、代わりに裏面洗浄液を流体供給路171へ供給する(S343)。裏面洗浄液は、めっき処理における基板Wの裏面側の残渣物を洗浄除去する作用をする(図8中供給プロセスc)。
【0074】
その後、プロセスコントローラ51は、流体供給装置200およびノズル駆動装置205に端面洗浄処理を指示する。流体供給装置200は、基板Wの裏面へ裏面洗浄液の供給を停止し、替わりに熱交換器175により温度調節された純水を流体供給路171へ供給する(S344)(図8中供給プロセスa)。
【0075】
続いて、ノズル駆動装置205は、第2の旋回駆動機構153を動作させてノズル154が基板Wの端部に位置するように第2のアーム152を旋回させ、プロセスコントローラ51は、基板Wの回転数を150〜300rpm程度に増速させる。同様に、ノズル駆動装置205は、第1の旋回駆動機構143を動作させてノズル144bが基板Wの中央部に位置するように第1のアーム142を旋回させる。流体供給装置200は、ノズル260bを開いて純水L0をノズル144bに供給するとともに、ポンプ242およびノズル243を動作させて外周部処理液L4をノズル154に供給する(図8中供給プロセスa・g)。すなわち、この状態では、基板Wの中央部に純粋L0、同じく端部に外周部処理液L4が供給され、基板Wの裏面に温度調節された純水が供給されていることになる(S346)。
【0076】
裏面・端面洗浄工程Dに続いて、プロセスコントローラ51は、乾燥工程Eを実行する。乾燥工程Eは、乾燥処理を含んでいる。
【0077】
プロセスコントローラ51は、流体供給装置200およびノズル駆動装置205に乾燥処理を指示する。流体供給装置200は、全ての処理液供給を停止させ、ノズル駆動装置205は、第1のアーム142および第2のアーム152を基板Wの上方から退避させる。また、プロセスコントローラ51は、基板Wの回転速度を800〜1000rpm程度まで増速して基板Wを乾燥させる(S351)。乾燥処理が終わると、プロセスコントローラ51は、基板Wの回転を停止させる。
【0078】
めっき処理工程が終了すると、第2の基板搬送機構14の搬送アーム14Aは、窓115を介して基板Wをスピンチャック130から取り出す。
【0079】
ここで、図9を参照して、ガス供給装置270によるガス供給およびインナーチャンバ120内のガス雰囲気形成の作用について説明する。図9は、基板上を流れるめっき液が酸素を取り込む様子を示す模式図である。
【0080】
前述のとおり、基板Wのめっき処理においては、基板Wを回転させた状態で基板W上にめっき処理液を塗布する。そして、めっき処理液L3がノズル144cから基板Wの処理面に到達するまでの間は、めっき処理液L3はアウターチャンバ110内の雰囲気にさらされる。このとき、アウターチャンバ110内の雰囲気が通常の大気であると、めっき処理液L3は基板Wの処理面に到達するまでに空気中の酸素を取り込んでしまうおそれがある。
【0081】
また、めっき処理液L3が基板Wの表面に到達すると、めっき処理液L3は、基板Wの回転によって円周方向に流れて基板W全面に行き渡る。このとき、基板Wの表面の材質が、例えば層間絶縁膜などの場合、膜自体の撥水性がCuパターン等と比較して高いため、めっき処理液L3が基板Wの表面を流れていく過程において空間中のガスを取り込みやすくなることが知られている。このことは、層間絶縁膜上に形成したCuパターンの粗密が、めっき処理液L3が取り込む酸素の量(めっき処理液L3の溶存酸素の量)に影響を与えることを意味している(図9)。これらのようにして発生しためっき処理液中の溶存酸素は、めっきの成長を悪化させてしまう。
【0082】
この実施形態のめっきユニット11では、不活性ガスを基板W表面に吹き付けてアウターチャンバ110内を不活性ガス雰囲気に調整するので、めっき処理液L3が基板Wの処理面に到達するまでの間に酸素を取り込んでしまう現象を抑えることができる。同様に、基板Wの表面を円周方向に流れるめっき処理液L3が、当該表面の撥水性(特に層間絶縁膜が形成された基板被処理面上のCuパターンの粗密)に起因して雰囲気中の酸素を取り込んでしまう現象をも抑えることができる。結果として、めっき処理液L3の容存酸素の量を抑えて、均質なめっき処理を実現することができる。
【0083】
均質なめっき処理を妨げる他の要因として、基板Wおよびめっき処理液L3の温度低下が挙げられる。めっき処理によるめっき成長レートは、めっき処理液や基板Wの温度変化の影響を受けやすい。この実施形態においても、めっき処理液L3は加熱器234により温度調節されているが、ノズル144cから吐出されためっき処理液L3は、基板Wに到達するまでに温度が低下してしまう。例えば、めっき処理を50〜80℃程度とした場合、アウターチャンバ110内を通常の室温大気の雰囲気(25℃前後)とすると、めっき処理液L3がノズル144cから離れた直後から温度低下がスタートしてしまう。この実施形態のめっき処理では、基板Wを回転させてめっき処理液L3を基板Wの全面に行き渡らせているから、特に基板Wのエッジ領域において温度低下が顕著となる。この現象を抑制するため、基板W自体を加温する等の方法が採られるが、基板Wの処理面側を直接加温することは一般に困難であるし、めっき処理液L3そのものの温度低下を防ぐことにはならない。
【0084】
そこでこの実施形態のめっきユニット11では、基板Wの処理面に対向させた吹出し部160bから温度調節された不活性ガスを基板Wに対して吹き付けている。ガス供給装置270が生成する不活性ガスの温度を所定のめっき処理温度(あるいはそれよりも若干高め)としておけば、基板Wの処理面側の温度低下を防ぐと共に基板Wに塗布されるめっき処理液L3の温度低下自体をも防ぐことが可能となる。
【0085】
すなわち、この実施形態のめっきユニット11では、めっき処理中(あるいは基板Wがアウターチャンバ110に搬入されてからめっき処理が終了するまでの間)にアウターチャンバ110内を陽圧かつめっき処理温度に調整された不活性ガス雰囲気とするので、めっき処理液L3に酸素等が溶け込むのを防ぐと共にめっき処理液L3および基板Wの温度低下を抑えることができる。その結果、均質なめっき処理を実現することができる。なお、この実施形態ではガスの供給によりめっき処理液の溶存酸素抑制と温度調節を合わせて実現しているが、どちらか一方でも一定の効果を得ることが可能である。例えば、ガス供給装置270が不活性ガスに代えて所定温度に調節した大気を供給するものとした場合、めっき処理液L3の溶存酸素抑制効果は薄れるものの、めっき処理液L3および基板Wの温度低下防止効果は期待できる。
【0086】
ここで、表1を参照して、アウターチャンバ110内の雰囲気を大気とした場合と不活性ガス(Nガス)とした場合の実験例について説明する。表1は、大気雰囲気と窒素ガス雰囲気それぞれについて、めっき率の変化を実測した例を示す表である。
【0087】
通常の大気雰囲気(酸素濃度約20%)とNガス雰囲気(酸素濃度2%未満)の2つの雰囲気において、2つのCu配線パターンにめっき処理を施し、それぞれのめっき率を計測した。ここでめっき率とは、全パターンに占めるめっき処理が成功したパターンの割合である。Cu配線パターンの幅を100nmとし、Cu配線パターンの間隔を100nm間隔と300nm間隔の2つについて、それぞれウェハ中央およびウエハエッジにおけるめっき処理の様子について調べた。
【表1】

【0088】
前述の通り、一般に基板の層間絶縁膜などはCu表面よりも撥水性が高い。したがって、パターン間隔が相対的に広いほど、めっき率が低くなる傾向がみられる。これは、図9に示すように、めっき処理液が基板W上を流れていく過程において、撥水性の高い基板表面の区間が長いほど、めっき処理液の基板表面との界面近傍で雰囲気中の酸素をより多く取り込んでしまうためと考えられる。したがって、パターン間隔が広い方がめっきの成膜条件としては悪いことになる。表1に示すように、大気雰囲気中では、300nm間隔のパターンではほとんどめっきが成長せず、100nm間隔のパターンでも基板エッジ部において全体の50%程度しか良好なめっきの成長が得られなかった。一方、N雰囲気中では、パターン間隔によらず9割以上の割合で良好なめっき膜を得ることができた。すなわち、N雰囲気中では、パターン間隔が広く条件の厳しい場合でも良好なめっき膜を得ることができた。
【0089】
図1ないし図4に示す実施形態の無電解めっきユニットによれば、めっき処理工程(およびその前段行程)においてアウターチャンバ内を温度調整されたガス雰囲気としたので、めっき処理液および基板Wの温度低下を防ぐことができる。また、この実施形態の無電解めっきユニットによれば、アウターチャンバ内を不活性ガス雰囲気としたので、めっき処理液L3に大気中の酸素(あるいは酸化剤として作用する気体)が溶け込むことを防ぐことができる。結果として、均質なめっき処理を実現することができる。
【0090】
次に、この実施形態に係るめっきユニットの変形例について説明する。図10は、図2および図6に示すめっきユニット11の変形例を示す図である。図10に示す変形例は、図6に示す実施形態のめっきユニットのうち、インナーチャンバ120および整流板160dの形状のみを変更したものであるから、共通する要素については同一の符号を付して示し、重複する説明を省略する。
【0091】
この変形例では、インナーチャンバが、図6に示すインナーチャンバ120のように閉空間を形成してガスの流路を形成せず、基板Wから飛散する処理液を受ける作用のみを奏する。すなわち、ガス供給管160aは、整流孔160gを複数備えたシャワーヘッド160fと直接接続されている。シャワーヘッド160fは、保持された基板Wと対向する位置に配設される。図9に示す変形例では、シャワーヘッド160fが、ガスの流れにコンダクタンスを与えるとともに、基板Wへのガスの流れを整流する作用をする。この変形例では、簡単な構成で基板Wに向けて所定のガスの流れを形成することができる。
【0092】
なお、本発明は上記実施形態およびその変形例のみに限定されるものではない。本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0093】
本発明は、半導体製造業に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0094】
【図1】本発明に係る一つの実施形態の半導体製造装置の構成を示す平面図である。
【図2】この実施形態の半導体製造装置における無電解めっきユニットを示す断面図である。
【図3】この実施形態の半導体製造装置における無電解めっきユニットを示す平面図である。
【図4】この実施形態の半導体装置における流体供給装置の構成を示す図である。
【図5】図2に示す無電解めっきユニットのうち、整流板の構成を示す断面図である。
【図6】図2に示すめっきユニット11のうち、ガス供給部に関係する構成のみを示した図である。
【図7】この実施形態に係る無電解めっきユニットの動作を示すフローチャートである。
【図8】この実施形態に係る無電解めっきユニットの全体プロセスを示す図である。
【図9】基板上を流れるめっき液が酸素を取り込む様子を示す模式図である。
【図10】図6に示すめっきユニット11の変形例を示す図である。
【符号の説明】
【0095】
1…搬出部、2…処理部、3…搬送部、5…制御装置、11…無電解めっきユニット、51…プロセスコントローラ、110…アウターチャンバ、120…インナーチャンバ、130…スピンチャック、132…回転プレート、134a…支持ピン、134b…押圧ピン、140…第1の流体供給部、142…第1のアーム、143…第1の旋回駆動機構、144a・144b・144c…ノズル、150…第2の流体供給部、152…第2のアーム、153…第2の旋回駆動機構、154…ノズル、160…ガス供給部、165…バックプレート、166…流路、170…シャフト、171…流体供給路、175…熱交換器、200…流体供給装置、205…ノズル駆動装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
二つ以上の撥水性が異なる領域を有する基板の被処理面にキャップメタルを形成する方法であって、
前記基板をインナーチャンバ内に配設された回転可能な保持機構に水平保持する保持ステップと、
前記インナーチャンバを覆うアウターチャンバの上面に配設されたガス供給孔を介して、前記インナーチャンバと前記アウターチャンバ間にガスを供給するガス供給ステップと、
前記インナーチャンバとアウターチャンバ間に圧力勾配を形成する圧力勾配形成ステップと、
前記ガス供給ステップによりインナーチャンバ内の前記ガス圧力が所定の値となった後に、前記基板の前記被処理面の所定位置にめっき液を供給して、前記領域の少なくともひとつにキャップメタルを形成するめっき液供給ステップと
を有するキャップメタル形成方法。
【請求項2】
前記めっき液供給ステップによりキャップメタルが形成される領域が銅パターンであることを特徴とする請求項1記載のキャップメタル形成方法。
【請求項3】
前記圧力勾配形成ステップは、前記インナーチャンバ側壁に形成されたガス導入口を介して前記ガスを導入し、前記インナーチャンバ内部にあって前記基板の被処理面の上部に配設された整流板を通して、前記基板の被処理面に前記ガスを均等に吹き付けることを特徴とする請求項1または2記載のキャップメタル形成方法。
【請求項4】
前記圧力勾配形成ステップは、さらに、アウターチャンバもしくはインナーチャンバに独立に接続されたガス排気ポンプおよびバルブを操作してガス排出量を調整することによって、基板に吹き付けられたガスの円周方向に向けた流れを形成することを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載のキャップメタル形成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−67837(P2010−67837A)
【公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−233528(P2008−233528)
【出願日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】