説明

キャノピ

【課題】4本の支柱を有するROPS機能を備えたチルトアップ可能なキャノピにおいて、キャノピとフロアとをそれぞれ独立して回動支持することのできるキャノピを提供する。
【解決手段】一対の後方側支柱10a、10bの各下端部は、取付座プレート11により連結固着され、同取付座プレート11はカウンターウェイト2に形成したキャノピ取付座18に固定ボルト15を介して載置固定される。一対の前方側支柱9a、9bの下端部は、下端連結部34により連結され、同下端連結部34には、一対の結合部材14が固着されている。各結合部材14は、キャノピ4及びフロア7をチルトアップさせるときの回動部材となる回動支持部材20の突起部21に取付ボルト16を介して固定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業車両におけるチルトアップ可能なROPS機能を備えたキャノピに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から建設土木工事等に用いられる作業車両としては、例えば小型掘削作業装置等を装備した車両などが用いられている。これらの作業車両においては、運転者に対する安全性向上の要求が高まり、車両が転等した際に運転者の安全を確保するためROPS(Roll−over Protective Structure)と呼ばれる運転者保護構造を備えたキャノピを装備することが求められてきている。また、ROPSとしては、ISO規格などにより規定された強度基準や材質基準を満たすことが求められている。
【0003】
ROPS機能を備えたキャノピとしては、カウンターウェイトに設けたキャノピ取付座にキャノピを取り付けた作業車両(特許文献1参照。)などがある。
【0004】
特許文献1に記載された作業車両では、図9に示すようにカウンターウェイト51の上面が、キャノピ取付座55として構成されている。車両後方に配設した2本の支柱57により屋根56を支えたキャノピ52の下端部には、取付ブラケット54が設けられている。
【0005】
取付ブラケット54をキャノピ取付座55に載置して、ボルト58の螺合結合によりキャノピ52をカウンターウェイト51に取り付け固定することができる。フロア53の前端部に固定したチルト用ヒンジ61のヒンジピン59を回動中心として、キャノピ52はフロア53と一体に固定されたままの状態でチルトアップすることができる。
【0006】
図9において、点線で示す通常の状態からフロア54とともにキャノピ52をチルトアップした状態を実線により示している。フロア53とキャノピ52とをチルトアップさせることにより、エンジン60の上方における空間を広く空けることができ、エンジンルーム内の整備・点検等の作業を効率よく行うことができる。
【特許文献1】特開2004−142730号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に示すキャノピ52では、カウンターウェイト51と一体的に鍛造によりキャノピ取付座55を成型している。このため、キャノピ52のキャノピ取付座55としては所望の強度を維持し、ISO規格などにより規定されたROPSとしての強度基準を満たすことができる。しかも、カウンターウェイト51の中央部には図示せぬ点検孔が形成されているので、カウンターウェイト51の前部に搭載した図示せぬエンジンに対する整備点検作業を容易に行えるという利点を有している。
【0008】
しかし、キャノピ52が2本の支柱57により構成されている。このため、車両重量等が増加した場合に対してもキャノピ52内での安全性をより確実に確保するためには、前後それぞれ一対ずつ配設した4本の支柱構造を持ったキャノピ構造としておくことが必要となる。
【0009】
仮にキャノピ52を4本の支柱で構成した場合には、前方側に配設した一対の支柱の下端部をフロア53の先端部に取り付けた構成となる。これは、チルトアップさせるための構成として、フロア53の先端部に固定したチルト用ヒンジ61のヒンジピン59を回動中心とした構成となるためである。
【0010】
このため、フロア53としてはROPSとしてのキャノピの強度基準を満たすのに十分な肉厚を持たせて、4本の支柱を強固に支持固定しておくことが必要となる。特に車重が比較的軽い小型の作業車両においては、フロア53の肉厚を所望の肉厚以上となるよう構成すると、フロア53としての重量が作業車両に対して重量オーバーとなってしまうことがある。
【0011】
また、チルト用ヒンジ61がフロア53の先端部に溶接等により固定した構成であるため、チルト用ヒンジ61を交換する場合には、フロア53に固定されたままの状態でヒンジピン59等を取外さなければならず、取外し作業に困難性を伴うことになる。また逆に、チルト用ヒンジ61にヒンジピン59等を取り付ける場合や組み立て作業時においても取外す場合と同様な困難性を伴うことになる。また、ROPSとしてJISA8910に適合するためには、ぜい性破壊に対して規定の強度を持つ特殊材料が必要でありコスト高に繋がってしまう。
【0012】
本願発明では、4本の支柱を有するROPS機能を備えたチルトアップ可能なキャノピにおいて、キャノピとフロアとをそれぞれ独立して回動支持することのできるキャノピを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本願発明の課題は請求項1に記載された発明により達成することができる。
即ち、本願発明では請求項1に記載したように、屋根部と、作業車両の前後にそれぞれ一対ずつ立設した前記屋根部を支持する4本の支柱と、を有するROPS機能を備えたキャノピにおいて、前記後方側に配設した一対の後方側支柱の下端部が、前記作業車両の構成部材に対して着脱可能に支持固定され、独立して設けた回動支持部材が、前記キャノピのチルトアップ時の回動中心軸を中心に回転可能に前記作業車両の構成部材によって支持され、前記前方側に配設した一対の前方側支柱の下端部が直接的に、前記回動支持部材に着脱可能に支持固定されてなることを最も主要な特徴となしている。
【発明の効果】
【0014】
本願発明では、4本の支柱により構成されるキャノピを作業車両の構成部材によって直接支持した構成としている。このため、作業車両の後方側に配設した1対の後方側支柱の下端部を作業車両の構成部材に対して着脱可能に支持固定している。また、作業車両の前方側に配設した1対の前方側支柱の下端部を、作業車両の構成部材によって回動支持されている回動支持部材に直接的に、しかも着脱可能に支持固定している。
【0015】
これにより、ROPSとしての基準強度を満たした構造としてキャノピを構成することができる。しかも、回動支持部材をフロアとは別体の独立した構成に形成しているので、回動支持部材に係わる修理点検、又は交換作業、組み立て作業を容易に行うことができる。
【0016】
また、フロアをキャノピとは別構成とすることができるので、フロアの肉厚はフロアとしての機能を奏することができる肉厚にしておくことができ、フロアの重量増加を抑えることができる。更に、フロアにROPS材を用いることが不必要となりコスト安となる。
【0017】
本願発明によって、車重が比較的軽い作業車両に対しても十分な強度を有するキャノピとして使用することができ、キャノピに対するねじれ力や作業車両の転倒時にキャノピに加わる衝撃力、作業車両の重量等に対抗する剛性を確保したキャノピを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明の好適な実施の形態について、添付図面に基づいて以下において具体的に説明する。本願発明のキャノピの構成としては、以下で説明する形状、配置構成以外にも本願発明の課題を解決することができる形状、配置構成であれば、それらの形状、配置構成を採用することができるものである。このため、本発明は、以下に説明する実施例に限定されるものではなく、多様な変更が可能である。
【実施例1】
【0019】
図1は、本発明の実施形態に係わる作業車両の要部概略側面図である。運転席6の上部、前方部及び後部等を覆う形でキャノピ4が設けられている。作業車両が転倒したときには、キャノピ4によって作業者の安全を確保するよう構成されている。
【0020】
キャノピ4における屋根5は、作業車両の前後方向に配した一対の前方側支柱9a、9b及び後方側支柱10a、10bがそれぞれ前後方向に連結した形状で構成され、連結部の上部には図示せぬ屋根部材が取り付けられている。後方側における一対の後方側支柱10a、10bの各下端部は、取付座プレート11により連結固着されている。
【0021】
取付座プレート11には図示せぬ複数の取付孔が穿孔されている。取付座プレート11は、カウンターウェイト2に形成したキャノピ取付座18に載置され、取付ボルト15を介してキャノピ取付座18との間で強固に支持固定することができる。キャノピ取付座18はカウンターウェイト2上に形成されることに限定されるものではなく、作業車両を構成する他の構成部材に形成しておくこともできる。
【0022】
また、左右一対の後方側支柱10a、10bの下端部と取付座プレート11との連結固着部における応力集中を緩和するため、連結固着部の形状を滑らかな連結形状にしておくことも、更には取付座プレート11に図示せぬ補強用のリブ等を形成しておくこともできる。
【0023】
取付座プレート11には、フロア7の後端部を図示せぬ固定ボルト等を介して支持固定するフロア支持部材12が形成されている。フロア支持部材12はキャノピ取付座18側に形成しておくことも、作業車両の他の構成部材に形成しておくこともできる。
【0024】
図2に作業車両の要部概略正面図を示すように、前方側における一対の前方側支柱9a、9bの下端部は、それぞれ対向する内側に屈曲されて連続した下端連結部34として形成されている。下端連結部34には、一対の結合部材14が固着されている。各結合部材14は、キャノピ4及びフロア7をチルトアップさせるときの回動部材となる回動支持部材20の突起部21に取付ボルト16を介して固定される。
【0025】
前方側支柱9a、9b間には、前方側支柱9a、9b間の強度を補強するため、梁部材35が一対の前方側支柱9a、9b間に配設されている。同様の梁部材を、一対の後方側支柱10a、10b間や屋根5に配設しておくこともできる。
【0026】
一対の前方側支柱9a、9bの下端部において下端連結部34を構成する代わりに、後方側支柱10a、10bの下端部に固着した取付座プレートと同様の取付座プレートを用いた構成とすることもできる。
【0027】
図1の1点鎖線で囲んだ部分を図3に拡大して示している。図3に示すように、回動支持部材20は、回動軸28回りに回動する複数の回動支持部23と、同回動支持部23に固定したフランジ部22と、フランジ部22の表面側に突起して形成した突起部21とから構成されている。回動支持部23の構成としては、図6〜図8にその詳細を示している。図6には回動支持部材20の正面図を示し、図7には回動支持部材20の側面図、図8には回動支持部材20の平面図を示している。
【0028】
図3のV−V断面である図5、図6に示すように、フランジ部22の両端にそれぞれ形成された一対の回動支持部23間に、作業車両の構成部材31に支持された軸受30を介装し、同軸受30と回動支持部23の回動軸孔24とを貫通して回動軸28を嵌入することにより、回動支持部材20を回動軸28周りに回動自在に支持することができる。
【0029】
また図5、図7に示すように、回動軸28に固定されたフランジ部28aを、回動支持部23に形成した位置決め孔25に位置決めネジを介して取り付けることにより、回動軸28を回動部材23に対して固定させることができる。
【0030】
回動支持部材20の突起部21には、固定ボルト16を介して前方側支柱9a、9bの下端部に取り付けた結合部材14を固定することができる。結合部材14の係合孔に挿通した固定ボルト16を突起部21に形成した固定孔21aに取り付けることで、結合部材14を回動支持部材20に固定することができる。これにより、4本の前方側支柱9a、9b、後方側支柱10a、10bは作業車両の構成部材によって固定され、キャノピ4と構成部材との間でブロック状の空間部を形成することができる。キャノピ4で形成する運線席6の空間部をブロック状に形成することにより、作業車両の転倒時にキャノピ4が変形することを強固に防止することができる。
【0031】
図1において鎖線で示すように、フロア7は回動支持部材20とフロア支持部材12との間に載置して、それぞれを載置した部材間で相互に支持固定することができる。フロア7を回動支持部材20に載置固定する方法としては、回動支持部材20を作業車両の構成部材31に支持した後、フロア7を回動支持部材20のフランジ部22上に載置する。このとき、図8においてフロア7を点線で示すように、フロア7の先端部側に形成した孔7a内に回動支持部材20の突起部21が遊嵌するように載置する。
【0032】
フロア7を回動支持部材20のフランジ部22上に載置した後に、フランジ部22に形成した固定孔22aを介して図示せぬ固定ボルト等により固定する。フロア7を回動支持部材20に載置固定した後から、キャノピ4の前方側支柱9a、9bの下端連結部34に設けた結合部材14と回動支持部材20の突起部21とを固定ボルト16により固定することができる。
【0033】
固定ボルト16による固定方法としては、従来から用いられている固定方法を用いることができ、突起部21bに形成した固定孔21aに螺合させる固定方法、固定孔21bの裏側にナットを配した固定方法等を用いることができる。また、本願発明に係わる実施例における他の固定ボルト等による固定も、公知の固定方法を用いて固定されている。
【0034】
図4に示すように、固定ボルト15を外して取付座プレート11とキャノピ取付座18との固着状態を解除した後、チルトアップ動作を禁止するロック部材33(図1、図3参照、図4ではロック部材は省略している。)を解除することによって、回動軸28を中心としてキャノピ4を前方側に回動させることができる。これにより、エンジンルーム内の修理点検を行い易くすることができる。
【0035】
フロア7の回動は、回動支持部材20のフランジ部22にフロア7の先端部を固定した構成として例示しているが、フロア7を回動支持する部材を、回動支持部材20とは別部材により構成しておくこともできる。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本願発明は、本願発明の技術思想を適用することができる装置等に対しては、本願発明の技術思想を適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】作業車両の要部概略側面図である。(実施例)
【図2】作業車両の要部概略正面図である。(実施例)
【図3】図1の要部拡大図である。(実施例)
【図4】キャノピをチルトアップさせた状態を示す要部概略側面図である。(実施例)
【図5】図3のV−V断面図である。(実施例)
【図6】回動支持部材の正面図である。(実施例)
【図7】回動支持部材の側面図である。(実施例)
【図8】回動支持部材の平面図である。(実施例)
【図9】作業車両の要部概略側面図である。(従来例)
【符号の説明】
【0038】
1 作業車両
2 カウンターウェイト
4 キャノピ
7 フロア
9a、b 前方側支柱
10a、b 後方側支柱
11 取付座プレート
12 フロア支持部材
14 結合部材
18 キャノピ取付座
20 回動支持部材
21 突起部
22 フランジ部
23 回動支持部
24 回動軸孔
25 位置決め孔
28 回動軸
28a フランジ部
31 構成部材
33 ロック部材
34 下端連結部
51 カウンターウェイト
52 キャノピ
53 フロア
54 取付ブラケット
55 キャノピ取付座
57 支柱
59 ヒンジピン
60 エンジン
61 チルト用ヒンジ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
屋根部と、作業車両の前後にそれぞれ一対ずつ立設した前記屋根部を支持する4本の支柱と、を有するROPS機能を備えたキャノピにおいて、
前記後方側に配設した一対の後方側支柱の下端部が、前記作業車両の構成部材に対して着脱可能に支持固定され、
独立して設けた回動支持部材が、前記キャノピのチルトアップ時の回動中心軸を中心に回転可能に前記作業車両の構成部材によって支持され、
前記前方側に配設した一対の前方側支柱の下端部が直接的に、前記回動支持部材に着脱可能に支持固定されてなることを特徴とするキャノピ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−151109(P2006−151109A)
【公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−342542(P2004−342542)
【出願日】平成16年11月26日(2004.11.26)
【出願人】(000001236)株式会社小松製作所 (1,686)
【出願人】(000184632)小松ゼノア株式会社 (60)
【Fターム(参考)】