説明

キャパシタ、構造体、及びキャパシタの製造方法

【課題】
簡易且つ安価な製造工程によって形成可能な大容量キャパシタを提供すること。
【解決手段】
第1の誘電体膜によって表面全体が覆われた複数の第1の導体粒子を含み、前記複数の第1の導体粒子が前記第1の誘電体膜によって互いに隔離された第1の絶縁層と、前記第1の絶縁層が有する第1の主面に接している第1の電極と、誘電体によって形成され、前記第1の絶縁層に接する第2の絶縁層と、前記第2の絶縁層が接する第2の電極を具備すること。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キャパシタ、構造体、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
キャパシタは、例えば、電子機器が発生する雑音を抑制するためのデカップリング・キャパシタ、電子デバイス間の直流電位の相違を解消するためのカップリング・キャパシタ、更にはフィルタの構成部品等として、電子機器に欠かせない部品である。近年の電子機器の小型化には目覚しいものがあるが、このような電子機器の小型化に合わせてキャパシタの小型化への要求も高まっている。
【0003】
小型化に適したキャパシタには、例えば、セラミックキャパシタとアルミニウム電解キャパシタがある。これらのキャパシタは、単位体積当たりの容量が大きいので、小型化しても大きな容量を維持できる。
【0004】
セラミックキャパシタでは、誘電体層がチタン酸バリウム等の強誘電体で形成され、必要な容量が確保される(例えば、特許文献1)。セラミックキャパシタを更に大容量化した積層セラミックキャパシタでは、電極と誘電体層が交互に積層されている。一方、アルミニウム電解キャパシタでは、粗面化により陽極箔の表面積が拡大されて大容量化が実現されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平5−47589号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、何れのキャパシタでも、大容量化のためには、複雑且つ精密な製造工程が要求される。このため、これらのキャパシタを大容量化しようとすると、製造コストが高くなる。
【0007】
そこで、本発明の目的は、簡易且つ安価な製造工程によって形成可能な大容量キャパシタと、このような大容量キャパシタの形成に用いられる構造体と、その製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、第1の誘電体膜によって表面全体が覆われた複数の第1の導体粒子を含み、前記複数の第1の導体粒子が前記第1の誘電体膜によって互いに隔離された第1の絶縁層と、前記第1の絶縁層が有する第1の主面に接している第1の電極と、誘電体によって形成され、前記第1の絶縁層が有する第2の主面に接する第2の絶縁層と、前記第2の絶縁層に接する第2の電極を具備するキャパシタを提供する。
【発明の効果】
【0009】
本キャパシタによれば、簡易且つ安価な製造工程によって形成可能な大容量キャパシタを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】酸化アルミニウムによって表面が覆われたAl粉末を、ガスデポジッション法によってアルミニウム箔上に固着させて堆積膜を形成し、その断面を透過電子顕微鏡によって観察した画像の特徴を表した図である。
【図2】誘電体膜で表面が覆われた、堆積前の導体粒子の断面構造を説明する模式図である。
【図3】酸化アルミニウムによって表面が覆われたAl粉末とチタン酸バリウム(BaTiO3)粒子の混合粉末を原料粉末とし、ガスデポジッション法によって形成された堆積膜の断面を透過電子顕微鏡によって観察した画像の一例を説明する図である。
【図4】図3を参照して説明した堆積膜を誘電体層とする、キャパシタの構成を説明する概念図である。
【図5】キャパシタの耐圧とリーク電流の関係を説明する図である。
【図6】図4を参照して説明したキャパシタで、ブレイクダウンが起きるメカニズムを説明する図である(その1)。
【図7】図4を参照して説明したキャパシタで、ブレイクダウンが起きる他のメカニズムを説明する図である(その2)。
【図8】耐圧を向上させるために、本発明者が最初に検討したキャパシタの構成を説明する概念図である。
【図9】実施例1のキャパシタ全体の構成を説明する断面図である。
【図10】実施例1のキャパシタ本体の断面を説明する図である。
【図11】チタン酸バリウム層及びキャピラリ膜の製造工程を説明する断面図である。
【図12】上部電極の形成工程を説明する断面図である。
【図13】実施例1〜4に関するデータ(誘電体層の構成及びキャパシタ化した場合の特性)が纏められた表(表1)である。
【図14】実施例5〜8に関するデータ(誘電体層の構成及びキャパシタ化した場合の特性)が纏められた表(表2)である。
【図15】比較例に関するデータと、各実施例のキャパシタに誘電体層を除く構成が類似した、従来のキャパシタのデータが纏められた表(表3)である。
【図16】キャピラリ膜と下部電極の間及びキャピラリ膜と上部電極の間双方に、チタン酸バリウム層が形成された、比較例2のキャパシタの等価回路である。
【図17】実施例1のキャパシタの等価回路である。
【図18】実施例1の構造体の構成を説明する断面図である。
【図19】本発明者が使用してきた、ガスデポジション装置の構成を説明する図である。
【図20】本実施例2のキャパシタの概要を説明する断面図である。
【図21】実施例3のキャパシタの概要を説明する断面図である。
【図22】実施例4のキャパシタの概要を説明する断面図である。
【図23】実施例5のキャパシタの構成を説明する断面図である。
【図24】キャパシタフィルムの構成を説明する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面にしたがって本発明の実施の形態について説明する。但し、本発明の技術的範囲はこれらの実施の形態に限定されず、特許請求の範囲に記載された事項とその均等物まで及ぶものである。尚、図面が異なっても対応する部分には同一符号を付し、その説明を省略する。
【0012】
(1)ガスデポジッション法を用いたキャパシタの形成
(i)容 量
粒子が集合した粉末をガスと共に噴射して基板に固着させる成膜方法(以下、ガスデポジッション法と呼ぶ)は、簡易且つ安価な成膜方法である。また、ガスデポジッション法は、成膜温度が1000℃を超えるセラミック膜を、室温で成膜可能とするユニークな成膜方法でもある。
【0013】
本発明者は、このガスデポジッション法を長らく研究してきた。
【0014】
その過程で、本発明者は、誘電体膜によって表面が覆われた導体粒子(例えば、表面が酸化されたAl粒子)を原料粉末として、ガスデポジッション法により金属膜を形成し、その構造及び物性を調べた。
【0015】
ガスデポジッション法では、粒子がガスによって音速以上に加速されて、基板に激しく衝突する。その時の衝撃で粒子が基板に固着し、厚膜が形成される。
【0016】
この時、基板に固着した粒子は、衝突時の衝撃によって、原形を止めないほど変形する。従って、導体粒子の表面を覆っていた誘電体膜が、衝突後も導体粒子の表面を覆っているか或いは誘電体膜を突き破って導体粒子同士が固着するかは不明であった。
【0017】
この点に関し、ガスデポジションにかかわる研究者達は、衝撃時に、活性な新生面が粒子表面を覆う酸化膜等を突き破って出現し、粒子同士が固着すると考えている。
【0018】
図1は、酸化アルミニウムによって表面が覆われたAl粉末を、ガスデポジッション法によってアルミニウム箔上に固着させて堆積膜を形成し、その断面を透過電子顕微鏡によって観察した画像の特徴を表した図面である。
【0019】
堆積膜の形成に用いたAl粉末は、厚さ10〜100nmの酸化アルミニウムによって表面が覆われた平均粒径3μm±1μm(±の後の数字は標準偏差を表す)のAl粒子が集合したものである。ここで、成膜条件の詳細は、後述する実施例1の第1の絶縁層56と同じである。また、Al粒子の平均粒径は、遠心分離沈降法によって測定したものである(以下の説明でも、同様である。)。
【0020】
図2は、堆積前の粒子の断面構造を説明する模式図である。図2に示すように、原料粉末を形成する粒子2は、導体粒子4(ここでは、Al粒子)の表面全体が誘電体膜6(ここでは、酸化アルミニウム)によって覆われている。ここで、粒子2の形状は、概ね球形である。
【0021】
しかし、粒子2が基板に衝突して形成された堆積膜中では、図1に示すようにAl粒子8は大きく変形している。一方、個々のAl粒子8は分離しており、粒子間には酸化アルミニウム層10が介在している。すなわち、堆積膜中でも、Al粒子8(導体粒子)の表面全体は、酸化アルミニウム(誘電体)によって覆われている。
【0022】
ところで、図1に示すように、酸化アルミニウム10は、毛細血管のように堆積膜中に張り巡らされ、Al粒子8を離隔している(但し、酸化アルミニウム10は、毛細管ではなく、導体粒子10の間に介在する誘電体膜の連続体である。)。そこで、このように導体粒子を離隔する誘電体膜を、以後、キャピラリと呼ぶこととする。
【0023】
また、図1に示すような、導体粒子(例えば、Al粒子8)とキャピラリ(例えば、酸化アルミニウム10)によって形成された複合体を、以後、キャピラリ膜と呼ぶこととする。
【0024】
図1及び図2を参照して説明した成膜法は、研究者達が考えてきたような、強い衝撃によって新生面が露出し、粒子同士が強固に密着するという成膜メカニズムに基づくものではない。この成膜方法は、粒子コア部の導体(金属等)の塑性を利用して、個々の粒子が、その表面に形成されている誘電体被膜が破壊しない程度に塑性変形することで、個々の粒子が一体化・固着するというメカニズムに基づく成膜方法である。すなわち、本成膜方法は、粒子を原料とし、導体の塑性変形を利用する成膜方法といえる。
【0025】
次に、本発明者は、このような堆積膜の電気的特性を調べた。個々のAl粒子8が絶縁性の酸化アルミニウム膜10によって分離されている構造から予測されるように、堆積膜は、抵抗値が極めて高く、絶縁性であった。
【0026】
この様な結果に基づいて、本発明者は、上記堆積膜の活用法の一つとして、上記堆積膜がキャパシタの誘電体層(キャパシタの電極間に配置される絶縁層)として使用可能か検討することとした。
【0027】
そこで、本発明者は、まず、上記堆積膜の上面に金属電極を形成し、当該金属電極を上部電極とし、アルミニウム箔製の基板を下部電極とする試料を作製して、単位面積当たりの容量(容量密度)を測定した。尚、堆積膜の厚さは、250μmである。
【0028】
測定の結果得られた容量密度は、従来のキャパシタの容量密度を超える、30μF/cm2という極めて高い値であった。例えば、高誘電率を有するチタン酸バリウムを誘電体層し、誘電体層の厚さを1μmと薄くしたセラミックキャパシタでさえ、その容量密度は2.5μF/cmでしかない。
【0029】
このように容量密度が高くなった理由は、隣接するAl粒子8同士が、極薄い酸化アルミニウム10を介して、容量的に結合しているためと考えられる。
【0030】
更に、ガスデポジッション法は、簡易且つ安価な厚膜の製造方法である。従って、ガスデポジッション法によって形成した堆積膜を誘電体層としてキャパシタを作製すれば、大容量キャパシタを簡易且つ安価に製造することが可能になる。
【0031】
このような知見に基づき、本発明者は、ガスデポジッション法で形成した堆積膜を、誘電体層とするキャパシタの検討を更に進めることとした。
【0032】
そこで、本発明者は、ガスデポジッション法で形成した堆積膜の容量密度を更に高くする成膜条件を種々検討した。その結果、導体粒子4の表面を覆う誘電体膜6が薄くなると、容量密度が高くなることが明らかになった。また、誘電率の高い誘電体粒子(例えば、チタン酸バリウム(BaTiO3)粒子)を原料粉末に混合すると、堆積膜の容量密度が高なることも明らかなった。
【0033】
図3は、酸化アルミニウムによって表面が覆われたAl粒子とチタン酸バリウム(BaTiO3)粒子の混合粉末を原料粉末とし、ガスデポジッション法によって形成された堆積膜の断面を透過電子顕微鏡によって観察した断層像の一例である。ここで、酸化アルミニウムの厚さは10〜100nmであり、Al粉末の粒径は3μm±1μmである。また、チタン酸バリウム粒子の粒径は100nmである。そして、上記混合粉末に於けるチタン酸バリウムの割合は、体積比率で5%である(以下、5vol%のように表す)。尚、成膜条件の詳細は、後述する実施例1の第2の絶縁層58と同じである。
【0034】
測定の結果、この堆積膜の容量密度は、100μF/cmと非常に高いことが明らかになった。尚、この時の堆積膜の厚さは、10μmである。
【0035】
図3に示すように、原料粉末に混合されたチタン酸バリウム粒子12は、Al粒子8の表面を覆う酸化アルミニウム10の連続体中に分散された状態で堆積膜に取り込まれる。この例では、酸化アルミニウム10とチタン酸バリウム粒子12によって形成される誘電体膜(キャピラリ)14が、Al粒子8を離隔している。
【0036】
図3に示した例では、チタン酸バリウム粒子12は粒子の形を留めている。しかし、チタン酸バリウム粒子12が、原形を留めず変形して、連続した膜(以下、連続膜と呼ぶ)を形成することもある。特に、チタン酸バリウムの割合が高くなると、チタン酸バリウム粒子12は、連続膜を形成しやすい。このような堆積膜を詳細に観察すると、酸化アルミニウム被膜によって覆われたAl粒子8の間に、チタン酸バリウム製の連続膜(以下、チタン酸バリウム連続膜)が存在している。この場合、酸化アルミニウム被膜とチタン酸バリウム連続膜によって形成される誘電体膜(キャピラリ)によって、Al粒子8が離隔されている。
【0037】
チタン酸バリウムは、比誘電率が3000にも及ぶ高誘電率材料である。このような誘電体が、導体粒子(Al粒子8)の間に介在すると、誘電体膜(キャピラリ膜)14の平均的な誘電率が増加する。このため、キャパシタの容量密度が、大きくなると考えられる。
【0038】
(ii)耐 圧
図4は、図3を参照して説明した堆積膜を誘電体層16とするキャパシタ18の構成を説明する概念図(断面図)である。図4に示すように、キャパシタ18は、ガスデポジション法で形成した誘電体層16と、この誘電体層16を上下から挟む、上部電極20と下部電極22を有している。
【0039】
尚、図4には、酸化アルミニウム被膜24によって覆われたAl粒子8がチタン酸バリウム連続膜26によって離隔された堆積膜を誘電体層16とする、キャパシタが図示されている。しかし、以下の説明は、Al粒子8を隔離する誘電体膜(キャピラリ)14が酸化アルミニウムだけで形成された堆積膜(図1参照)を、誘電体層とするキャパシタにも共通する。
【0040】
また、以下の説明は、Al粒子8を隔離する誘電体膜(キャピラリ)14が酸化アルミニウムだけで形成されている堆積膜図1参照)を、誘電体層とするキャパシタにも共通する。また、以下の説明は、Al粒子8の表面を覆う酸化アルミニウム10の連続体膜中にチタン酸バリウム粒子12が分散した膜(図3参照)を、誘電体層とするキャパシタにも共通する。
【0041】
図4に示すように、誘電体層16の大半は、導体粒子であるAl粒子8によって占められている。このため、キャパシタ18に電圧が印加されると、電界はAl粒子8の間に介在する誘電体膜(キャピラリ)14に印加される。従って、キャパシタ18の耐圧は、この誘電体膜(キャピラリ)14の耐性によって決まる。
【0042】
尚、誘電体層16を形成する導体粒子の数は大量で、且つ形は不定形である。このような導体粒子を図示するのは、困難である。従って、図4では、導体粒子は、模式的に表されている。以下の図面でも、同様に、導体粒子は模式的に表されている。
【0043】
図5は、キャパシタの耐圧とリーク電流の関係を説明する図である。横軸は、キャパシタに印加される電圧である。縦軸は、キャパシタに流れる電流である。キャパシタに電圧を印加すると、微量のリーク電流28流れる。しかし、電圧が増加していくと、あるところでブレイクダウンが起きて急激に電流が増加する。このように電流が急激に増加する電圧が、耐圧30である。
【0044】
図6は、図4を参照して説明したキャパシタで、ブレイクダウンが起きるメカニズムを説明する図である。
【0045】
上述したようにキャパシタ18に印加された電圧は、略すべてAl粒子8間の薄い誘電体膜(キャピラリ)14に印加される。キャパシタ18に印加する電圧を上げて行くと、誘電体膜(キャピラリ)14が薄くなっている箇所でブレイクダウンが生じ、電流パス32(電流が流れ易くなっている経路)が形成される。このため、キャパシタ18のブレイクダウン電圧は、低くなる。
【0046】
図7は、図4を参照して説明したキャパシタで、ブレイクダウンが起きる他のメカニズムを説明する図である。
【0047】
上述したように、堆積膜中のAl粒子8の表面は、酸化アルミニウム被膜24によって覆われている。しかし、成膜時の衝撃によって、一部のAl粒子同士が結合する場合も想定できる。このような結合が連続して発生すると、電流パス32が形成されると考えられる。このような場合にも、キャパシタ18のブレイクダウン電圧は、低くなる。
【0048】
本発明者が、上記キャパシタ18の電気的特性を評価したところ、耐圧は3V程度であった。
【0049】
この値は、電解キャパシタの耐圧5Vに近い。
【0050】
しかし、セラミックキャパシタの耐圧50Vには及ばない。従って、ガスデポジッション法で形成された堆積膜を誘電体層とするキャパシタを実用化のためには、耐圧の更なる向上が望まれる。
【0051】
(2)耐圧の向上
図8は、耐圧を向上させるために、本発明者が最初に検討したキャパシタの構成を説明する概念図である。
【0052】
上記キャパシタ18の耐圧は、導体粒子(Al粒子8)間に介在する誘電体膜(キャピラリ)14を厚くすれば、改善することができる。しかし、誘電体膜(キャピラリ)14が厚くなると、キャパシタ18の容量は減少してしまう。
【0053】
そこで、本発明者は、図8に示すように、チタン酸バリウムによって形成された絶縁層34を、上記堆積膜(キャピラリ膜)36と電極20の間及び上記堆積膜(キャピラリ膜)36と電極22の間に形成したキャパシタ38を検討した。
【0054】
尚、堆積膜(キャピラリ膜)36の構成は、図4を参照して説明したキャパシタ18の誘電体層16の構成と同じである。また、絶縁層34は、チタン酸バリウム粒子を用いてガスデポジッション法によって形成されたものである。
【0055】
上述したように、図4を参照して説明したキャパシタ18の耐圧は3V程度である。これに対して、キャパシタ38の耐圧は、20Vに達する。このように、堆積膜(キャピラリ膜)36と電極20,22の間に絶縁層34を形成することは、耐圧の向上に有効である。
【0056】
しかし、下記実施例1で説明するように、下部電極22と堆積膜(キャピラリ膜)36の間又は上部電極20と堆積膜(キャピラリ膜)36の間の何れか一方に、絶縁層34を形成するだけでも、耐圧の改善は可能である。更に、このような構成によれば、容量密度も改善される。
【0057】
また、下記実施例2で説明するように、誘電体で形成された絶縁層を堆積膜36に挿入することによって、耐圧を更に向上させることが可能になる。
【0058】
以下、実施例に従って、これらの点について説明する。
【実施例1】
【0059】
(1)構 成
図9は、本実施例のキャパシタ全体の構成を説明する断面図である。
【0060】
図9に示すように、本キャパシタ40は、第1の電極(上部電極20)と、誘電体層42と、第2の電極(下部電極22)を含むキャパシタ本体44を有している。
【0061】
また、本キャパシタ40は、上部電極20に接続された第1のリード電極46と、下部電極22に接続された第2のリード電極48を有している。
【0062】
また、本キャパシタ40は、キャパシタ本体44を格納するケース50(例えば、セラミックパケージ)を有している。
【0063】
図10は、本キャパシタ本体44の断面を説明する図である。
【0064】
図10に示すように、本キャパシタ40(キャパシタ本体44)は、誘電体膜(キャピラリ)14によって表面全体が覆われた複数の導体粒子54を含み、複数の導体粒子54が誘電体膜(キャピラリ)14によって互いに隔離された第1の絶縁層(キャピラリ膜)56を有している。
【0065】
尚、導体粒子54は、例えば、Al粒子8である。また、誘電体膜(キャピラリ)14は、例えば、このAl粒子8の表面を覆う酸化アルミニウム被膜24と、酸化アルミニウム被膜24の間を満たすチタン酸バリウム連続膜26によって形成されている。
【0066】
また、本キャパシタ40(キャパシタ本体44)は、第1の絶縁層56が有する第1の主面62に接している第1の電極(上部電極20)を有している。
【0067】
また、本キャパシタ40(キャパシタ本体44)は、誘電体によって形成され、第1の絶縁層56が有する第2の主面60に接する第3の主面63を有する第2の絶縁層58を有している。
【0068】
ここで、上記誘電体は、チタン酸バリウムである。すなわち、第2の絶縁層58はチタン酸張りウム層である。ここで、チタン酸バリウム(BaTiO3)は、良く知れているように絶縁体である。尚、第2の絶縁層58は、誘電体のみによって形成されることが好ましい。
【0069】
また、本キャパシタ40(キャパシタ本体44)は、第2の絶縁層58が有する第4の主面64に接している第2の電極(下部電極22)を有している。
【0070】
ここで、この第1の絶縁層56(キャピラリ膜)の厚さは、53μmである。一方、第2の絶縁層58(チタン酸バリウム層68)の厚さは、2μmである。
【0071】
(2)製造方法
次に、製造工程に従って、本キャパシタ44の構成を詳しく説明する。
【0072】
図11は、チタン酸バリウム層68及びキャピラリ膜70の製造工程を説明する断面図である。
【0073】
(i)チタン酸バリウム層の形成工程(図11参照)
まず、厚さ50μmのアルミニウム箔66の上に、ガスデポジション法によって、厚さ5μmのチタン酸バリウム層68(第2の絶縁層58)を堆積する。尚、アルミニウム箔66は、最終的には、下部電極22になる。
【0074】
このチタン酸バリウム層68の堆積は、下記「(5)ガスデポジッション法」で説明する方法に従って行われる。原料粉末は、平均粒子径50nmのチタン酸バリウム粒子が集合した粉末である。特に断らないが、以後の説明においても、ガスデポジション法による成膜は、下記「(5)ガスデポジッション法」で説明する方法に従って行われる。
【0075】
尚、原料粉末は、誘電体粒子のみによって形成されていることが好ましい。
【0076】
(ii)キャパシタ膜の形成工程(図11参照)
次に、このチタン酸バリウム層68(第2の絶縁層58)の上に、ガスデポジション法によって、厚さ約50μmのキャピラリ膜70(第1の絶縁層56)を堆積する。
【0077】
原料粉末は、表面酸化処理の施されたアルミニウム粒子に、チタン酸バリウム粒子を5vol%(体積比)添加した混合粉末である。ここで、アルミニウム粒子の平均粒子径は、3μm±1μmである。チタン酸バリウム粒子の平均粒子径は50nmである。
【0078】
ここで、表面酸化処理とは、大気中でアルミニウム粒子を550℃で5時間、加熱する処理のことである(以下の実施例でも、同じである。)。この表面酸化処理によって、アルミニウム粒子の表面全体に、自然酸化膜より厚い約5nmの酸化アルミニウムが形成される。すなわち、アルミニウム粒子(導体粒子4)の表面は、酸化アルミニウム(誘電体膜6)で覆われている(図2参照)。
【0079】
尚、原料粉末中の導体粒子(Al粒子)は基板に固着して、キャピラリ膜を形成する導体粒子となる。従って、原料粉末中の導体粒子の表面を覆う誘電体膜(酸化アルミニウム膜)とチタン酸バリウム粒子が、キャピラリを形成する。
【0080】
(iii)上部電極の形成工程(図12参照)
次に、上部電極20(第1の電極)を形成する。
【0081】
図12は、上部電極20の形成工程を説明する断面図である。
【0082】
まず、キャピラリ膜70(第1の絶縁層56)の上面(第1の絶縁層の主面62)にシード電極となるAu膜(図示せず)を、蒸着法によって堆積する。その後、このシード電極の上に、上部電極20の形成予定位置で開口部するフォトレジスト膜を形成する。
【0083】
次に、この開口部に電解メッキによって、Auメッキ層を形成する。
【0084】
その後、上記フォトレジストを除去し、露出したAu膜(蒸着膜)をミリングもしくは化学エッチングによって除去する。
【0085】
本工程によって、上部電極20(第1の電極)が完成する。
【0086】
(iv)リード線形成及びケース格納工程(図9参照)
まず、上部電極20及び下部電極22に、夫々、第1のリード電極46及び第2のリード電極48を接続する。
【0087】
次に、第1のリード電極46及び第2のリード電極48が設けられたキャパシタ本体44を、絶縁性のケース50(例えば、セラミックパッケージ)に、第1のリード電極46及び第2のリード電極48の先が外部に露出するように収納する。
【0088】
本工程によって、キャパシタ40が完成する。
【0089】
(3)特 性
図13には、本実施例と後述する実施例2〜4に関するデータ(誘電体層の構成及び特性)を纏めた表(表1)が記載されている。
【0090】
図14には、後述する実施例5〜8に関するデータ(誘電体層の構成及び特性)を纏めた表(表2)が記載されている。
【0091】
図15には、後述する比較例に関するデータと、上記各実施例のキャパシタに誘電体層を除く構成が類似した、従来のキャパシタのデータとを纏めた表(表3)が記載されている。例えば、本実施例のキャパシタ40の構成は、誘電体層がキャピラリ膜で形成されている点を除き、誘電体層が一層の従来のセラミックキャパシタに類似している。そこで、表3の第4行目には、単層セラミックキャパシタのデータが記載されている。
【0092】
表1乃至3の第1列目には、各行に記載されたデータが何れの各実施例等のキャパシタに関するものであるかが記載されている。
【0093】
第2列目には、各キャパシタの基本構造と基材が記載されている。
【0094】
第3列目には、各キャパシタを形成する誘電体層の構成が記載されている。各キャパシタの構成は、夫々の誘電体層を形成する絶縁層の種類とその厚さによって表されている。
【0095】
尚、第3列目の各行に記載された「キャピラリ膜」とは、表面酸化処理の施されたアルミニウム粒子にチタン酸バリウム粒子を添加した混合粉末を原料粉末として、ガスデポジッション法で形成した絶縁層のことである。
【0096】
また、「BaTiO3層」とは、チタン酸バリウム粒子が集合した粉末を原料粉末として、ガスデポジッション法で形成したチタン酸バリウム層のことである。
【0097】
第4列目には、各キャパシタの誘電体層の厚さが記載されている。
【0098】
第5列目には、各キャパシタの容量密度が記載されている。但し、実施例5乃至8の多層キャパシタの容量密度は、誘電体層一層当たりに換算されている。容量密度の測定周波数は、150kHzである。
【0099】
第6列目には、各キャパシタの耐圧が記載されている。
【0100】
表1の第2行目に示すように、本実施例のキャパシタ40の容量密度は、300μF/cmである。この値は、従来のセラミックキャパシタの容量密度2.5より格段に高い(表3の第4行目参照)。すなわち、本キャパシタ40によれば、簡易且つ安価なガスデポジッション法によって、大容量キャパシタを形成することができる。
【0101】
ところで、表3の第2行目には、下記比較例1に関するデータが記載されている。比較例1のキャパシタは、ガスデポジッション法で形成したキャピラリ膜の上面及び下面の双方に直接、電極を形成したキャパシタである。このキャパシタの耐圧は、3Vと低い。
【0102】
これに対して、本キャパシタ40の耐圧は、20Vである(表1の第2行目参照)。このような高い耐圧が得られた理由は、下部電極22とキャピラリ膜70(第1の絶縁層56)の間に形成されたチタン酸バリウム層68(第2の絶縁層58)が、電流パスの形成を妨げるからである。
【0103】
ところで、表3の第3行目には、下記比較例2のキャパシタに関するデータが記載されている。比較例2のキャパシタは、キャピラリ膜70と下部電極22の間だけでなく、キャピラリ膜70と上部電極20の間にもチタン酸バリウム層が形成されたキャパシタである。
【0104】
比較例2のキャパシタの耐圧は、20Vである。この値は、本キャパシタの耐圧20Vに等しい。
【0105】
この結果は、誘電体で形成された絶縁層(例えば、チタン酸バリウム層68)を、キャピラリ膜70と下部電極22の間に設けるだけで、電流パスの形成を抑制できることを示している。一方、後述する実施例2の結果は、誘電体で形成された絶縁層を、キャピラリ膜70と上部電極20の間に設けるだけも、電流パスの形成を抑制できることを示している。
【0106】
これらの結果は、誘電体で形成された絶縁層を、キャピラリ膜70と上部電極20の間及びキャピラリ膜70と下部電極22の間の何れか一方に設けるだけで、電流パスの形成を抑制できることを示している。
【0107】
ところで、比較例2のキャパシタの容量密度は、200μF/cmである。この値は、本キャパシタの容量密度300μF/cmより低い。
【0108】
この結果は、絶縁層(例えば、チタン酸バリウム層68)が設けられる箇所を一箇所にすることによって、容量密度を高くできることを示している。
【0109】
このように容量密度が高くなる理由は、以下のように説明することがでる。
【0110】
図16は、キャピラリ膜70と下部電極22の間及びキャピラリ膜70と上部電極20の間双方に、チタン酸バリウム層が形成された、比較例2のキャパシタの等価回路である。図17は、本キャパシタの等価回路である。
【0111】
図16に示されるように、比較例2のキャパシタの等価回路は、下部電極22に接するチタン酸バリウム層に対応する等価回路74と、キャピラリ膜に対応する等価回路76と、上部電極20に接するチタン酸バリウム層に対応する等価回路78とによって形成されている。
【0112】
ここで、キャピラリ膜の等価回路76では、導体粒子54(Al粒子8)が形成する微小抵抗80と、隣接する導体粒子54(Al粒子8)と誘電体膜(キャピラリ)14が形成する微小キャパシタ82が網の目状に接続されている。
【0113】
ここで、導体粒子54は、導電性の物質によって形成されている。従って、微小抵抗80の抵抗値は小さい。一方、導体粒子54の間隔は、10nm〜数百nmと極めて狭い。従って、微小キャパシタ82の容量は大きい。
【0114】
すなわち、キャピラリ膜では、大容量の微小キャパシタ82と低抵抗の微小抵抗80が網の目状に接続されている。このため、キャピラリ膜を誘電体層として形成したキャパシタの容量は、大きくなる。
【0115】
一方、チタン酸バリウム層に対応する等価回路74では、複数のキャパシタ84が、キャピラリ膜を形成する微小キャパシタ82に直列に接続されている。
【0116】
ここで、チタン酸バリウム層の厚さは数μmである。チタン酸バリウム層がこのように厚いので、キャパシタ84の容量は小さくなる。
【0117】
図16に示すように、比較例2のキャパシタでは、このような低容量キャパシタ84が、キャピラリ膜(キャピラリ膜の等価回路76)の上下に直列に接続されている。このため、比較例2のキャパシタの容量は小さくなる。
【0118】
一方、本実施例のキャパシタ40の等価回路では、チタン酸バリウム層68に由来する低容量キャパシタ84は、キャピラリ膜(キャピラリ膜の等価回路76)の下側にしか接続されていない(図17参照)。一方、キャパシタ膜の等価回路76を形成する微小キャパシタ82は、直接、上部電極20に接続されている。このため、本キャパシタ40の容量は、大きくなる。
【0119】
以上説明したように、本キャパシタ40の耐圧では、チタン酸バリウム層68を電極20,22との間に一層設けただけにも拘わらず、耐圧が十分高くなる。しかも、本キャパシタ40の容量は、キャピラリ膜70と上下の電極20,22の間夫々に、チタン酸バリウム層を設けたキャパシタより大きくなる。
【0120】
(4)構造体
以上の例では、基板として用いられたアルミニウム箔66が、下部電極22になる。
【0121】
しかし、アルミニウム箔66から、チタン酸バリウム層68とキャピラリ膜70によって形成された構造体を、ウェットエッチング等によって剥離してもよい。
【0122】
このような構造体は、キャパシタ製造用の部材として用いることができる。すなわち、このような構造体の上面及び下面の夫々に電極を形成すれば、所望のキャパシタを製造することができる。
【0123】
図18は、このような構造体120の構成を説明する断面図である。
【0124】
このような構造体120は、第1の誘電体膜(キャピラリ)14によって表面全体が覆われた複数の第1の導体粒子54を含み、複数の第1の導体粒子54が第1の誘電体膜(キャピラリ)14によって互いに隔離された第1の絶縁層56を具備している。第1の絶縁層56は、露出した第1の主面62を有している。
【0125】
また、構造体120は、誘電体によって形成され、第1の絶縁層56が有する第2の主面60に接する第3の主面63を有し、且つ露出した第4の主面64を有する第2の絶縁層58を具備している。尚、第2の絶縁層58は、誘電体のみによって形成されることが好ましい。
【0126】
これらの露出面に、夫々、上部電極20及び下部電極22を形成することによって、所望のキャパシタを製造することができる。
【0127】
(5)ガスデポジション法
図19は、本発明者が使用してきた、ガスデポジション装置86の構成を説明する図である。
【0128】
図19を参照して、キャピラリ膜等の形成に用いられるガスデポジション法を説明する。
【0129】
ガスデポジション装置86は、成膜室88と、排気装置90と、浮遊粒子発生装置101と、ガス供給装置108を具備している。ここで、浮遊粒子発生装置101は、浮遊粒子発生容器100と振動器116を具備している。また、排気装置90は、ブースターポンプ92と真空ポンプ94を具備している。
【0130】
ガスデポジションは、このようなガスデポジション装置86を用いて、以下の手順に従って実施される。
【0131】
まず、基板96を基板ホルダ98に固定する。
【0132】
次に、成膜室88の内部を排気装置90によって排気する。
【0133】
次に、原料粉末を、図示されていない真空装置で約80度に加熱しながら、30分間真空脱気する。この前処理によって、粉末表面に吸着した水分を除去する。 次に、浮遊粒子発生装置101の浮遊粒子発生容器100に、上記前処理を施した原料粉末102を充填する。
【0134】
次に、浮遊粒子発生装置101を排気する。排気は、浮遊粒子発生装置101と排気装置90を接続する、配管104に設けられた第1のバルブ106を開いて行う。
【0135】
この時、ガス供給装置108を浮遊粒子発生装置101に接続する、配管109に設けられた第2のバルブ110は、閉じられている。また、浮遊粒子発生装置101を成膜室88に接続する配管112に設けられた第3のバルブ114も、閉じられている。浮遊粒子発生装置101の排気終了後、第1のバルブ106は、閉じられる。
【0136】
次に、振動器116によって、浮遊粒子発生容器100全体に振動を印加する。振動が加えられた浮遊粒子発生容器100は、原料粉末102全体を振動させ攪拌する。
【0137】
次に、原料粉末102の攪拌を継続したまま、第2のバルブ110を開いて、ガス供給装置108から浮遊粒子発生容器100に圧縮ガス(例えば、Heガス)を導入する。すると、原料粉末102を形成する微粒子が圧縮ガスと混合され、圧縮ガス中を浮遊し始める。このようにして、原料粉末102が、浮遊粒子化される。
【0138】
次に、配管112に設けたバルブ114を開いて、この浮遊粒子117を、スリット状のノズル118から成膜室88に配置した基板96に向かって噴射する。
【0139】
成膜室は、排気装置90によって減圧されている。このため、浮遊粒子117は、音速程度の高速で基板96に向かって噴出する。ノズル118から噴出した浮遊粒子117は、基板96に衝突し、基板表面に固着する。
【0140】
以上説明したように、ガスデポジション法では、まず、原料粉末102をガスと共に噴射する加速工程が実施される。次に、ガスデポジション法では、噴射された原料粉末に含まれる粒子(浮遊粒子117)を下地(基板96)に衝突させ、上記粒子を下地に固着させる固着工程が実施される。
【0141】
尚、例えば、チタン酸バリウム層とキャピラリ膜のように異なる構造を有する、複数の堆積膜を積層する場合には、まず、排気された成膜室88に成膜中の基板を保持したまま、原料粉末を交換する。次に、既に堆積した堆積膜(例えば、チタン酸バリウム層)の上に、次の堆積膜(例えば、キャピラリ膜)を形成する。
【実施例2】
【0142】
(1)構 成
図20は、本実施例のキャパシタ122の概要を説明する断面図である。
【0143】
図20に示すように、本キャパシタ122では、下部電極22の上に、第1の絶縁層(キャピラリ膜)56が形成されている。更に、第1の絶縁層56の上に、第2の絶縁層(チタン酸バリウム層)58が形成されている。そして、第2の絶縁層(チタン酸バリウム層)58の上に、上部電極20が形成されている。
【0144】
尚、第1の絶縁層56及び第2の絶縁層58の構造は、夫々、実施例1で説明した、第1の絶縁層及び第2の絶縁層の構造と同じである。
【0145】
(2)製造方法
本キャパシタ122の製造方法は、実施例1のキャパシタ40の製造方法と略同じである。但し、アルミニウム箔の上に、第1の絶縁層(キャピラリ膜)56を形成し、その後、第2の絶縁層(チタン酸バリウム層)58を形成する点で、本キャパシタ本体122の製造方法は、実施例1のキャパシタ40の製造方法で異なる。
【0146】
本実施例のキャパシタ122も、実施例1のキャパシタと同様、下部電極22及び上部電極20に設けられたリード電極と、キャパシタの本体部分を格納するケース(例えば、セラミックパケージ)を具備している。
【0147】
(3)特 性
本実施例のキャパシタの特性は、表1の第3行目に記載されている(図13参照)。表1に示すように、本キャパシタの特性は、実施例1のキャパシタの特性と同じである。
【0148】
すなわち、上部電極側に、第2の絶縁層58(チタン酸バリウム層)を形成しても、容量及び耐圧が共に高いキャパシタを形成することができる。
【実施例3】
【0149】
(1)構 成
図21は、本実施例のキャパシタ124の概要を説明する断面図である。
【0150】
本キャパシタ124の構成は、実施例1のキャパシタ40と略同じである。但し、本キャパシタ124は、第1の絶縁層125(キャピラリ膜)の中に挿入された第3の絶縁層126(以下、チタン酸バリウム薄層と呼ぶ)を具備している。ここで、第3の絶縁層126は、誘電体(例えば、チタン酸バリウム)によって形成され、第2の絶縁層58(チタン酸バリウム層68)より薄い。
【0151】
図21に示すように、本実施例では、第3の絶縁層126(チタン酸バリウム薄層)は2層設けられている。
【0152】
従って、第1の絶縁層125では、第1のキャピラリ膜128と、第1のチタン酸バリウム薄層130と、第2のキャピラリ膜132と、第2のチタン酸バリウム薄層134と、第3のキャピラリ膜136が、順次積層されている。
【0153】
ここで、各チタン酸バリウム薄層130,134の厚さは、夫々0.5μmである。一方、各キャピラリ膜128,132,136の厚さは、夫々10μmである。従って、第1の絶縁層125の厚さは、44μmである。
【0154】
尚、チタン酸バリウム薄層(第3の絶縁層126)の層数は、2層に限られない。例えば、チタン酸バリウム薄層(第3の絶縁層126)の層数は、1層であってもよい。或いは、チタン酸バリウム薄層(第3の絶縁層126)の層数は、3層以上であってもよい。
【0155】
(2)製造方法
本キャパシタ124の製造方法は、実施例1のキャパシタ40の製造方法と略同じである。
【0156】
但し、本キャパシタの製造方法では、第1の絶縁膜(キャピラリ膜)56を形成する工程において、キャピラリ膜の堆積を2度中断して、その間に、第3の絶縁層126(チタン酸バリウム薄層130,134)を、ガスデポジション法によって形成する。尚、原料粉末は、チタン酸バリウム粒子が集合した粉末である。
【0157】
尚、チタン酸バリウム薄層130,134の形成に用いる原料粉末は、粒径0.5μmのチタン酸バリウム粒子が集合した粉末である。また、原料粉末は、誘電体粒子のみによって形成されていることが好ましい。
【0158】
(3)特 性
本キャパシタ124の特性は、表1の第4行目に記載されている(図13参照)。
【0159】
本キャパシタ124の容量密度は、実施例1のキャパシタ40と略同じ280μm/cmである。一方、本キャパシタ124の耐圧は、実施例1のキャパシタ40の耐圧20Vより高い、30Vである。
【0160】
すなわち、第1の絶縁層125(キャパシタ膜)に誘電体の薄層(第3の絶縁層126)を挿入すると、容量密度を殆ど減少させずに、キャパシタの耐圧を向上させることができる。
【0161】
(4)構造体
本実施例のキャパシタ124も、実施例1キャパシタ40と同様、アルミニウム箔を基板として形成されている。
【0162】
従って、実施例1と同じように、第1の絶縁層125と第2の絶縁層58を、このアルミニウム箔から剥離して、キャパシタ製造用の構造体としてもよい。
【実施例4】
【0163】
(1)構 成
図22は、本実施例のキャパシタ138の概要を説明する断面図である。
【0164】
本キャパシタ138の構成は、実施例2のキャパシタ122と略同じである(図20参照)。但し、本キャパシタ138は、第1の絶縁層125(キャピラリ膜)の中に挿入された第3の絶縁層(チタン酸バリウム薄層)126を具備している。ここで、第3の絶縁層126は、誘電体(例えば、チタン酸バリウム)によって形成され、第2の絶縁層58(チタン酸バリウム層68)より薄い。
【0165】
尚、本キャパシタ138の構成は、第2の絶縁層58が下部電極22と第1の絶縁層125の間ではなく、上部電極20と第1の絶縁層125の間に配置されている点を除けば、実施例3のキャパシタ124と同じである(図21参照)。
【0166】
(2)製造方法
本キャパシタ138の製造方法は、実施例2のキャパシタ122の製造方法と略同じである。
【0167】
但し、本キャパシタの製造方法では、第1の絶縁膜125(キャピラリ膜)を形成する工程において、キャピラリ膜の堆積を2度中断して、その間に、第3の絶縁層126(チタン酸バリウム薄層130,134)をガスデポジション法によって形成する。
【0168】
尚、チタン酸バリウム薄層130,134の形成に用いる原料粉末は、粒径0.5μmのチタン酸バリウム粒子が集合した粉末である。また、原料粉末は、誘電体粒子のみによって形成されていることが好ましい。
【0169】
(3)特 性
本キャパシタ138の特性は、表1の第5行目に記載されている(図13参照)。
【0170】
本キャパシタ138の容量密度は、実施例2のキャパシタ122と略同じ280μm/cmである。一方、本キャパシタ138の耐圧は、実施例2のキャパシタ122の耐圧20Vより高い、30Vである。
【0171】
尚、本キャパシタ138の特性は、実施例3のキャパシタ124と特性と同じである。
【0172】
本実施例も、実施例3と同様、第1の絶縁層125(キャパシタ膜)に誘電体の薄層を挿入することによって、容量密度を殆ど減少させずに、耐圧を向上させることが可能になることを示している。
【実施例5】
【0173】
(1)構 成
図23は、本実施例のキャパシタ140の構成を説明する断面図である。
【0174】
本キャパシタ140は、複数のキャパシタフィルム142,144,146を有している。これらのキャパシタフィルム142,144,146は積層され、両脇が、夫々、金属箔148によって固定されている。
【0175】
更に、複数のキャパシタフィルム142,144,146は、金属箔148によって両脇が固定された状態で、基板150の上に固定されている。基板150の上には、キャパシタフィルム142,144,146を覆うように、外装ケース152が固定されている。
【0176】
ここで、金属箔148は、各キャパシタフィルム142,144,146の基板を形成するアルミニウム箔154の側面に電気的に接続されている。そして、金属箔148は、基板150を貫通するビアホールに設けられた配線158によって、基板150の下面に設けられた第1の端子160に電気的に接続されている。
【0177】
また、後述するように、キャパシタフィルム142,144,146の上面及び下面にはカーボン膜が設けられ、このカーボン膜の上には銀ペーストが塗布されている。更に、最下層のキャパシタフィルム142の下面に設けられたカーボン膜が、基板150の上面に設けられたパッド162に、銀ペースによって接着されている。
【0178】
更に、パッド162は、基板150を貫通するビアホールに設けられた配線164によって、基板150の下面に設けられた第2の端子166に電気的に接続されている。
【0179】
図24は、キャパシタフィルム142,144,146の構成を説明する断面図である。
【0180】
図24に示すように、キャパシタフィルム142,144,146は、アルミニウム箔154を基板として形成されている。
【0181】
アルミニウム箔154の両面には、ガスデポジッション法によって誘電体層42が形成されている。この誘電体層42の上には、ペースト状の導電性高分子168が塗布されている。更に、その上にペースト状のカーボン(カーボン膜170)と銀ペース172が、順次塗布されている。尚、銀ペース172は、上下のキャパシタフィルム142,144,146を、機械的に接着すると同時に、電気的に接続する部材である。また、銀ペース172は、積層された上下のキャパシタフィルムの双方に属する部材である。
【0182】
ここで、アルミニウム箔154は、キャパシタフィルム142,144,146の下部電極176となる。
【0183】
一方、誘電体層42の上に形成された、導電性高分子168、カーボン膜170、及び銀ペース172は上部電極174を形成し、リード線(図示せず)により接続されて電気的に一体化されている。
【0184】
ここで、上下に隣接するキャパシタフィルムのカーボン膜170は、銀ペースト172によって電気的に接続されている。従って、各キャパシタフィルム142,144,146の上部電極174は、全て電気的に接続されて一体化している。
【0185】
また、キャパシタフィルム142,144,146の下部電極176も、全て金属箔148によって、電気的に接続されて一体化している。
【0186】
そして、図23を参照して説明した構造から明らかなように、電気的に一体化した、キャパシタフィルム142,144,146下部電極176は、第1の端子160に電気的に接続されている。更に、電気的に一体化した、キャパシタフィルム142,144,146の上部電極174は、第2の端子166に電気的に接続されている。
【0187】
ここで、誘電体層42の構成は、図10を参照して説明した、実施例1の誘電体層42の構成と同じである。従って、誘電体層42の構成及び製造方法の説明は、省略する。
【0188】
(2)特 性
本キャパシタ140の特性は、表2の第2行目に、記載されている(図13参照)。尚、容量密度は、誘電体層一層当たりに換算されている。
【0189】
図23に示すように、本キャパシタ140では、複数のキャパシタフィルム142,144,146が並列に接続されている。ここで、キャパシタフィルムは、アルミニウム箔の両面に誘電体層が形成された構造体を有している。このような構造は、誘電体層が両面に形成されたアルミニウム箔を巻回した電解キャパシタに類似している。そこで、このような構造を、電解キャパシタ仕様と呼ぶこととする。
【0190】
本キャパシタ140の特性は、実施例1のキャパシタの特性と同じである(表1参照)。
【0191】
上述したように、本キャパシタ140の誘電体層と実施例1のキャパシタの誘電体層は、同じ構成を有している。このため、両キャパシタの特性が、同じになる。
【実施例6】
【0192】
本実施例のキャパシタの構成は、実施例5のキャパシタと略同じである。
【0193】
但し、本キャパシタの誘電体層の構成は、図20を参照して説明した実施例2の誘電体層の構成と同じである。すなわち、チタン酸バリウム層(第2の絶縁層58)が、上部電極20とキャパシタ膜(第1の絶縁層56)の間に設けられている。
【0194】
従って、本キャパシタの特性は、実施例2のキャパシタの特性と同じである(表2の第3行目参照)。
【実施例7】
【0195】
本実施例のキャパシタの構成は、実施例5のキャパシタと略同じである。
【0196】
但し、本キャパシタの誘電体層の構成は、図21を参照して説明した実施例3の誘電体層の構成と同じである。すなわち、チタン酸バリウム層68(第2の絶縁層58)が、下部電極22とキャパシタ膜(第1の絶縁層125)の間に設けられている。更に、チタン酸バリウム薄層(第3の絶縁層126)が、キャパシタ膜(第1の絶縁層125)の中に挿入されている。
【0197】
本キャパシタの特性は、表2の第4行目に記載されている。一方、化成酸化アルミニウム膜を誘電体層とする電解キャパシタの特性が、表3の第5行目に記載されている。
【0198】
両キャパシタの特性を比較すれば明らかなように、本キャパシタの耐圧(30V)は、電解キャパシタの耐圧(5V)より格段に高い。また、本キャパシタの容量密度(280μF/cm)も、電解キャパシタの容量密度(200μF/cm)より高くなっている。
【0199】
なお、本キャパシタの特性は、同じ構成の誘電体層を備えた、実施例3のキャパシタの特性と同じである(表1の第4行目参照)。
【実施例8】
【0200】
本実施例のキャパシタの構成は、実施例5のキャパシタと略同じである。
【0201】
但し、本キャパシタの誘電体層の構成は、図22を参照して説明した実施例3の誘電体層の構成と同じである。すなわち、チタン酸バリウム層68(第2の絶縁層58)が、上部電極20とキャパシタ膜(第1の絶縁層125)の間に設けられている。更に、チタン酸バリウム薄層(第3の絶縁層126)が、キャパシタ膜(第1の絶縁層125)の中に挿入されている。
【0202】
本キャパシタの特性は、表2の第5行目に記載されている。一方、化成酸化アルミニウム膜を誘電体層とする電解キャパシタの特性が、表3の第5行目に記載されている。
【0203】
両キャパシタの特性を比較すれば明らかなように、本キャパシタの耐圧(30V)は、電解キャパシタの耐圧(5V)より格段に高い。また、本キャパシタの容量密度(280μF/cm)も、電解キャパシタの容量密度(200μF/cm)より高くなっている。
【0204】
なお、本キャパシタの特性は、同じ構成の誘電体層を備えた、実施例5のキャパシタの特性と同じである(表1の第5行目参照)。
【0205】
(比較例1)
本比較例のキャパシタの構成は、図10を参照して説明した実施例1のキャパシタと略同じである。但し、本キャパシタの誘電体層は、第2の絶縁層58(チタン酸バリウム層68)を具備していない。
【0206】
すなわち、本比較例の誘電体層は、表面酸化処理の施されたアルミニウム粒子にチタン酸バリウム粒子を5vol%(体積比)添加した混合粉末を原料粉末として、ガスデポジッション法で形成された絶縁層(キャピラリ膜)だけで形成されている。
【0207】
本キャパシタの特性は、表3の第2行目に記載されている。
【0208】
表3に表すように、本キャパシタの耐圧は、3Vである。この耐圧は、第2の絶縁層58(チタン酸バリウム層68)を有する上記各実施例のキャパシタの耐圧より、著しく低い。
【0209】
(比較例2)
本比較例のキャパシタの構成は、図10を参照して説明した実施例1のキャパシタと略同じである。但し、本キャパシタの誘電体層は、第1の絶縁層125(キャピラリ膜)と上部電極20の間及び第1の絶縁層56(キャピラリ膜)と下部電極22の間の双方に、チタン酸バリウム層68が形成されている。
【0210】
本キャパシタの特性は、表3の第3行目に記載されている。
【0211】
表3に表すように、本キャパシタの容量密度は、200μF/cmである。この耐圧は、チタン酸バリウム層(第2の絶縁層58)を一層だけ有する上記各実施例のキャパシタの容量密度より低い。
【0212】
(変形例)
以上の例では、誘電体層は、アルミニウム箔の上に成膜されている。しかし、銅箔が貼付されたプリント基板の上や樹脂ビルドアップ基板内部に、ガスデポジッション法によって誘電体層を成膜して、キャパシタを形成してもよい。
【0213】
また、以上の例では、成膜後の誘電体層には、特段の処理は施されない。しかし、成膜後の誘電体層にレーザ照射(例えば、出力10WのCOレーザもしくはYVO4レーザの照射)を施してもよい。このようなレーザ照射を施すと誘電体層が緻密化し、容量が更に向上する。
【0214】
また、成膜後の誘電体層に、アジピン酸アンモン水溶液中で直流電圧を印加して、15分間の化成処理を施してもよい。このようにすると、誘電体層の表面全体に化成膜が形成されるので、耐圧が更に向上する。尚、化成処理に用いられる電圧及び処理時間は、例えば、15V及び15分である。
【0215】
また、上記各実施例では、キャピラリ膜の表面に直接、上部電極又は下部電極が形成されている。しかし、キャピラリ膜の表面を研磨してから、上部電極又は下部電極を形成してもよい。このようにすると、キャパシタの容量が大きくなる。
【0216】
また、以上の例では、原料粉末に含まれる導電性粒子は、アルミニウム粒子である。しかし、導電性粒子としては、チタン、タンタル、ジルコニウム、シリコン、及びマグネシウム等の弁金属の粒子であってもよい。更に、原料粉末に含まれる導電性粒子は、これらの弁金属をその成分とする合金製の粒子であってもよい。
【0217】
更に、これら導電体粒子を覆う誘電体としては、酸化タンタル、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化ハフニウム、二酸化珪素、窒化シリコン、窒化アルミニウム、窒化タンタル、酸化マグネシウム等の種々の誘電体を、用いてもよい。また、 弁金属をベースとした誘電体層でなく、 チタン酸バリウム、 チタン酸ストロンチウムなどのチタン酸系複合酸化物やジルコン酸酸化物または、 それらの固溶体など、 各種ペロブスカイト構造酸化物やビスマス層状構造酸化物、 タングステンブロンズ構造酸化物などの高誘電率材料の皮膜を用いてもよい。導体粒子の表面が自然酸化膜で覆われている場合には、自然酸化膜とこれら誘電体によって形成される2層構造の誘電体膜で、導電体粒子が覆われる。
【0218】
また、誘電体で覆われた導電体粒子と混合されて原料粉末となる誘電体粒子としても、酸化ジルコニウム、酸化ハフニウム、二酸化珪素、窒化シリコン、窒化アルミニウム、窒化タンタル、酸化マグネシウム等の種々の誘電体を、用いてもよい。また、 弁金属をベースとした誘電体層でなく、 チタン酸バリウム、 チタン酸ストロンチウムなどのチタン酸系複合酸化物やジルコン酸酸化物または、 それらの固溶体など、 各種ペロブスカイト構造酸化物やビスマス層状構造酸化物、 タングステンブロンズ構造酸化物などの高誘電率材料の皮膜を用いてもよい。
【0219】
これらの被覆は、 各種酸化物のゾルゲル液、 アルコキシド液を混合し、 粉末表面に噴霧法などのアトマイズ法もしくは下方からガスを供給し、 対流を起こす方法などを用いて粉末表面に液をコーティング・乾燥し、 その後、 熱処理を行い、 固化して形成するような液を用いてコーティングする方法、 スパッタやレーザアブレーションなどによる気相法などを用いることができる。
【0220】
尚、これら誘電体粒子の比誘電率は、上記導体粒子の酸化物の比誘電率より高いことが好ましい。例えば、上記誘電体粒子は、比誘電率が8以上の誘電体で形成されていることが好ましい。
【0221】
また、上記誘電体粒子の平均粒径は、上記導体粒子の平均粒径よりも小さいことが好ましい。例えば、上記誘電体粒子の平均粒径は1μm以下であることが好ましい。
【0222】
また、 キャピラリー膜の上下層いずれか、 もしくは両方に形成するチタン酸バリウム層についても、 チタン酸バリウムだけではなく、 チタン酸バリウム、 チタン酸ストロンチウムなどのチタン酸系複合酸化物やジルコン酸酸化物または、 それらの固溶体など、 各種ペロブスカイト構造酸化物やビスマス層状構造酸化物、 タングステンブロンズ構造酸化物などの高誘電率材料の皮膜を用いてもよい。
【0223】
また、 キャピラリー膜上下の膜形成製法は、 ガスデポジションに限定することはなく、 スパッタ、 レーザアブレーション、 蒸着、 スクリーン印刷、 ゾルゲル液コート、 アルコキシド液コート、 溶射など絶縁性膜を形成する手法を適用することができる。
【0224】
また、 構造に関しては、 基板上に誘電体膜(キャピラリー層+誘電体層)/金属膜を交互に形成するセラミック多層コンデンサと同じ構造の形成も可能である。なお、 形成する金属膜は、 スパッタ法、 蒸着法、 スクリーン印刷法、 ガスデポジション法などで形成する。
【符号の説明】
【0225】
2・・・粒子 4・・・導体粒子 6・・・誘電体
8・・・Al粒子 10・・・酸化アルミニウム
12・・・チタン酸バリウム粒子
14・・・誘電体膜(キャピラリ) 16・・・(キャパシタの)誘電体層
18・・・キャパシタ 20・・・上部電極
22・・・下部電極 24・・・酸化アルミニウム被膜
26・・・チタン酸バリウム連続膜
28・・・リーク電流 30・・・耐圧
32・・・電流パス 34・・・絶縁層
36・・・堆積膜(キャピラリ膜)
38・・・(本発明者が検討した)キャパシタ
40・・・実施例1のキャパシタ
42・・・誘電体層 44・・・実施例1のキャパシタ本体
46・・・第1のリード電極 48・・・第2のリード電極
50・・・ケース
54・・・導体粒子 56・・・第1の絶縁層
58・・・第2の絶縁層 60,62・・・第1の絶縁層の主面
63,64・・・第2の絶縁層の主面 66・・・アルミニウム箔
68・・・チタン酸バリウム層 70・・・キャピラリ膜
74,78・・・チタン酸バリウム層に対応する等価回路
76・・・キャピラリ膜に対応する等価回路
80・・・微小抵抗 82・・・微小キャパシタ
84・・・(チタン酸バリウム層の等価回路を形成する)キャパシタ
86・・・ガスデポジション装置 88・・・成膜室
90・・・排気装置 92・・・ブースターポンプ
94・・・真空ポンプ 96・・・基板
98・・・基板ホルダ 100・・・浮遊粒子発生容器
101・・・浮遊粒子発生装置
102・・・原料粉末 104・・・配管
106・・・第1のバルブ 108・・・ガス供給装置
109・・・配管
110・・・第2のバルブ 112・・・配管
114・・・第3のバルブ 116・・・振動器
117・・・浮遊粒子
118・・・ノズル 120・・・構造体
122・・・本実施例2のキャパシタ
124・・・本実施例3のキャパシタ
125・・・第1の絶縁層
126・・・第3の絶縁層 128・・・第1のキャピラリ膜
130・・・第1のチタン酸バリウム薄層
132・・・第2のキャピラリ膜 134・・・第2のチタン酸バリウム薄層
136・・・第3のキャピラリ膜 138・・・実施例4のキャパシタ
140・・・実施例5のキャパシタ
142,144,146・・・キャパシタフィルム
148・・・金属箔 150・・・基板 152・・・外装ケース
154・・・アルミニウム箔 158・・・配線
160・・・第1の端子 162・・・パッド
164・・・配線 166・・・第2の端子
168・・・導電性高分子 170・・・カーボン
172・・・銀ペースト 174・・・上部電極
176・・・下部電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の誘電体膜によって表面全体が覆われた複数の第1の導体粒子を含み、前記複数の第1の導体粒子が前記第1の誘電体膜によって互いに隔離された第1の絶縁層と、
前記第1の絶縁層が有する第1の主面に接している第1の電極と、
誘電体によって形成され、前記第1の絶縁層が有する第2の主面に接する第2の絶縁層と、
前記第2の絶縁層に接する第2の電極を具備する、
キャパシタ。
【請求項2】
請求項1に記載のキャパシタにおいて、
誘電体によって形成され、前記第2の絶縁層より薄く、且つ前記第1の絶縁層の中に挿入された第3の絶縁層を具備することを、
特徴とするキャパシタ。
【請求項3】
第1の誘電体膜によって表面全体が覆われた複数の第1の導体粒子を含み、前記複数の第1の導体粒子が前記第1の誘電体膜によって互いに隔離され、且つ露出した第1の主面を有する第1の絶縁層と、
誘電体によって形成され、前記第1の絶縁層が有する第2の主面に接する第3の主面を有し、且つ露出した第4の主面を有する第2の絶縁層を具備する、
構造体。
【請求項4】
請求項3に記載の構造体において、
誘電体によって形成され、前記第2の絶縁層より薄く、且つ前記第1の絶縁層に挿入された第3の絶縁層を具備することを、
特徴とする構造体。
【請求項5】
第1の誘電体膜によって表面全体が覆われた複数の第1の導体粒子を含み、前記複数の第1の導体粒子が前記第1の誘電体膜によって互いに隔離された第1の絶縁層と、
前記第1の絶縁層が有する第1の主面に接している第1の電極と、
誘電体によって形成され、前記第1の絶縁層が有する第2の主面に接する第2の絶縁層と、
前記第2の絶縁層に接する第2の電極を具備するキャパシタの製造方法であって、
原料粉末をガスと共に噴射する加速工程と、噴射された前記原料粉末に含まれる粒子を下地に衝突させる固着工程とを具備する成膜方法を用い、第2の誘電体膜によって表面が覆われた第2の導体粒子を前記粒子とする前記原料粉末によって、前記第1の絶縁層を形成し、
前記成膜方法を用い、第1の誘電体粒子を前記粒子とする前記原料粉末によって、前記第2の絶縁層を形成する、
キャパシタの製造方法。
【請求項6】
請求項5に記載のキャパシタにおいて、
前記キャパシタが、誘電体によって形成され、前記第2の絶縁層より薄く、且つ前記第1の絶縁層の中に挿入された第3の絶縁層を具備し、
前記第3の絶縁層を、前記成膜方法を用い、第2の誘電体粒子を前記粒子とする前記原料粉末によって、前記第3の絶縁層を形成することを、
特徴とするキャパシタの製造方法。
【請求項7】
請求項5に記載のキャパシタの製造方法において、
前記第1の絶縁層の形成に用いられる前記原料粉末が、第3の誘電体粒子を含むことを、
特徴とするキャパシタの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【公開番号】特開2010−219479(P2010−219479A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−67649(P2009−67649)
【出願日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成19年度、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構、「ナノテク・先端部材実用化研究開発/ナノキャピラリー構造を有する高容量電解コンデンサの研究開発」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】