説明

キャパシタ構造の形成方法及びこれに用いられるシリコンエッチング液

【課題】アモルファスシリコン又は多結晶シリコンについて、凹凸を有するキャパシタ構造をなすよう周囲の構成材料を的確かつ効率よく除去し、しかもキャパシタ構造を多数形成するウエハの中央部と端部とにおいてバランスよくエッチングするシリコンエッチング液及びこれを用いたキャパシタ構造の形成方法を提供する。
【解決手段】アルカリ化合物およびヒドロキシルアミン化合物を組み合わせて含み、pHを11以上に調整したシリコンエッチング液を多結晶シリコン膜またはアモルファスシリコン膜に適用して、該多結晶シリコン膜またはアモルファスシリコン膜の一部または全てを除去することにより、キャパシタとなる凹凸形状を形成するキャパシタ構造の形成方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キャパシタ構造の形成方法及びこれに用いられるシリコンエッチング液に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、DRAMのキャパシタ構造としてコンケーブ型が採用されてきた。この構造では、シリンダ孔内に下部電極膜を形成し、その内側面のみを電極として機能させる。これによれば、確かにキャパシタの占める面積を小さくすることができるが、シリンダ孔の径も必然的に縮小する。一方でDRAMのデバイス動作に必要な容量は確保しなければならない。この両者を満たすため、シリンダ孔の深さは益々深くなり、その微細加工技術面での対応が難しくなってきている。かかる状況に対応して、シリンダ構造の下部電極の内側のみならず外側も使用し、キャパシタのアスペクト比を低減することができるクラウン型キャパシタも提案されている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
上記のようにキャパシタ構造のアスペクト比を抑える努力はされているものの、微細なシリンダ構造やその孔を精度良く加工して形成することは、それ自体容易ではない。通常、この加工はウエットエッチングによって行われている。すなわち、エッチング液により、ナノメートル〜サブマイクロメートルサイズで深さのあるシリンダ壁をもつ筒状構造をシリコン基板に残すよう、その内外の部材を除去しなければならない。特にシリンダ孔内の除去は、包囲された空間から材料をえぐり取るように除去しなければならず、ウエットエッチングにより行う加工として困難を伴う。その加工性を重視してエッチング力の高い溶剤を適用することも考えられるが、その作用により電極やその他の部位を腐食させてしまう懸念がある。また、よりアスペクト比を大きくするために、充填材の材料がSiOから多結晶シリコンまたはアモルファスシリコンに変更される傾向であり、これに対応した良好なエッチングを可能にしなければならない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−199136号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のような近時採用されているキャパシタ構造を始め、シリンダ孔からのシリコン等の良好な除去を可能とするエッチング液については、いまだ十分な研究開発が進められていない。特に本発明者らは、キャパシタ構造を多数形成するに当たり、ウエハの端部と中央部とでできるだけ均一にバランスよくエッチングすることが、素子としたときの製造品質の向上等の観点から重要であると考えた。そして、特に近年その使用が拡大されつつあるアモルファスシリコン又は多結晶シリコンのエッチング性について研究を行った。
そこで、本発明は、アモルファスシリコン又は多結晶シリコンについて、凹凸を有するキャパシタ構造をなすよう周囲の構成材料を的確かつ効率よく除去し、しかもキャパシタ構造を多数形成するウエハの中央部と端部とにおいてバランスよくエッチングするシリコンエッチング液及びこれを用いたキャパシタ構造の形成方法の提供を目的とする。さらに、保存性に優れ、キャパシタ製造の現場における適用時期の変更や延長に的確に対応し生産性の向上に貢献することができる多結晶シリコン膜またはアモルファスシリコン膜シリコンエッチング液及びこれを用いたキャパシタ構造の形成方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題は以下の手段により解決された。
〔1〕アルカリ化合物およびヒドロキシルアミン化合物を組み合わせて含み、pHを11以上に調整したシリコンエッチング液を多結晶シリコン膜またはアモルファスシリコン膜に適用して、該多結晶シリコン膜またはアモルファスシリコン膜の一部またはすべてを除去することにより、キャパシタとなる凹凸形状を形成するキャパシタ構造の形成方法。
〔2〕前記凹凸形状部が前記シリコンエッチング液により除去されてなるシリンダ孔を有してなる〔1〕に記載の形成方法。
〔3〕前記シリコンエッチング液を適用する前に、前記シリコン膜の酸化膜を除去する工程を含む〔1〕又は〔2〕に記載の形成方法。
〔4〕前記キャパシタ構造を構成する凹凸形状部がTiNを含んでなり、かつ前記シリンダ孔がアスペクト比15以上である〔2〕または〔3〕に記載の形成方法。
〔5〕前記アルカリ化合物の濃度が3〜25質量%である〔1〕〜〔4〕のいずれか1項に記載の形成方法。
〔6〕前記ヒドロキシルアミン化合物の濃度が0.1〜15質量%である〔1〕〜〔5〕のいずれか1項に記載の形成方法。
〔7〕前記シリコンエッチング液がさらにアルコール化合物、スルホキシド化合物、またはエーテル化合物を含有する〔1〕〜〔6〕のいずれか1項に記載の形成方法。
〔8〕多結晶シリコン膜またはアモルファスシリコン膜の一部または全てを除去することにより、キャパシタとなる凹凸形状をなしキャパシタ構造を形成するためのエッチング液であって、アルカリ化合物およびヒドロキシルアミン化合物を組み合わせて含み、pHが11以上に調整されたことを特徴とするシリコンエッチング液。
〔9〕適用対象が多結晶シリコン膜である〔8〕に記載のシリコンエッチング液。
〔10〕適用対象がアモルファスシリコン膜である〔8〕に記載のシリコンエッチング液。
〔11〕前記キャパシタ構造を構成する凹凸形状部がTiNを含んでなり、かつ前記ンエッチング液により除去されてなるシリンダ孔をもつ〔8〕〜〔10〕のいずれか1項に記載のシリコンエッチング液。
〔12〕前記シリンダ孔がアスペクト比15以上である〔11〕に記載のシリコンエッチング液。
〔13〕前記アルカリ化合物の濃度が3〜25質量%である〔8〕〜〔12〕のいずれか1項に記載のシリコンエッチング液。
〔14〕前記ヒドロキシルアミン化合物の濃度が0.1〜15質量%である〔8〕〜〔13〕のいずれか1項に記載のシリコンエッチング液。
〔15〕前記アルカリ化合物が4級アンモニウム水酸化物、アンモニア、及び水酸化カリウムより選ばれる一つ以上の化合物である〔8〕〜〔14〕のいずれか1項に記載のシリコンエッチング液。
〔16〕前記アルカリ化合物が4級アンモニウム水酸化物である〔8〕〜〔15〕のいずれか1項に記載のシリコンエッチング液。
〔17〕前記アルカリ化合物がテトラメチルアンモニウム水酸化物である〔8〕〜〔16〕のいずれか1項に記載のシリコンエッチング液。
〔18〕前記シリコン膜表面の酸化膜の除去処理の直後に使用することを特徴とする〔8〕〜〔17〕のいずれか1項に記載のシリコンエッチング液。
〔19〕さらにアルコール化合物、スルホキシド化合物、またはエーテル化合物を含有させた〔8〕〜〔18〕のいずれか1項に記載のシリコンエッチング液。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、アモルファスシリコン又は多結晶シリコンについて、凹凸を有するキャパシタ構造をなすよう周囲のシリコン等の構成材料を的確かつ効率よく除去し、しかもキャパシタ構造を多数形成するウエハの中央部と端部とにおいてバランスよくエッチングすることができる。さらに、必要により、シリンダ構造をもつ電極で構成されたキャパシタ構造にも対応することができ、シリンダ孔内部の多結晶シリコン膜またはアモルファスシリコン膜を選択的に除去することができるという優れた作用効果を奏する。また、本発明のシリコンエッチング液は保存性に優れ、キャパシタ製造の現場における適用時期の変更や延長に的確に対応し生産性の向上に貢献することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明に適用されるキャパシタ構造の作製工程例を模式的に示す断面図である。
【図2】本発明に適用されるキャパシタ構造の作製工程例を模式的に示す断面図である(図1のつづき)。
【図3】本発明に適用されるキャパシタ構造の作製工程例を模式的に示す断面図である(図2のつづき)。
【図4】本発明に適用されるキャパシタ構造の作製工程例を模式的に示す断面図である(図3のつづき)。
【図5】本発明に適用されるキャパシタ構造の別の例を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[キャパシタ構造の形成]
まず、本発明に係るエッチング液について説明する前に、本発明において好適に採用することができるキャパシタ構造の製造例について図1〜5に基づき説明する。
【0010】
(工程a)
本実施形態の製造例においては、シリコンウエハ3の上に第1の絶縁膜1と第2の絶縁膜2が形成されている。第1の絶縁膜1はシリンダ孔の開孔時のエッチングストッパー膜であり、第2の絶縁膜2と異方性ドライエッチングプロセスでエッチングレート比を有する膜である。第1の絶縁膜1としては、例えばLP−CVDプロセスで形成した窒化膜等が挙げられる。一方、第2の絶縁膜2には多結晶シリコンもしくはアモルファスシリコンの膜が挙げられる。さらに図示していないが保護膜を設けてもよい。
なお、シリコンウエハ3は大幅に簡略化して単層のものとして示しているが、通常はここに所定の回路構造が形成されている。たとえば、分離絶縁膜、ゲート酸化膜、ゲート電極、拡散層領域、ポリシリコンプラグ、酸化シリコン膜、窒化シリコン膜、ビット線、金属プラグ、窒化膜、プラズマ酸化膜、BPSG膜などを用いたものが挙げられる(例えば前記特許文献1参照)。また、図1〜5においては、特にハッチングを付して示していないが、各部材の断面を示している(図3(f)の下図は平面図である)。キャパシタ構造10ないし下部電極50は絶縁膜1を介して浮いた構造で図示されているが、この点についても必要により適宜導通を確保した基板構造とすればよい。
【0011】
(工程b)
次に、フォトリソグラフィー工程を用いてフォトレジスト4をパターンニングした後、異方性ドライエッチングにて開孔する(開口部Ka)。このときのフォトレジスト4及びドライエッチングの手法については、この種の製品に適用される通常の物あるいは方法を適用すればよい。
【0012】
(工程c)(工程d)
さらに、開孔後に開口部Kaの壁面に沿って電極保護膜(図示せず)を形成する。電極保護膜はキャパシタ構造形成時のシリコン材料の除去に用いるウエットエッチング液に対して充分なエッチングレート比を持つ絶縁膜であることが望ましい。更にシリンダ孔Kaの全体に均一に成膜できることが望ましい。例えば、ALD(Atomic Layer Deposition)法を用いた窒化膜や五酸化タンタル(Ta)膜等が挙げられる。電極保護膜の成長後、等方性エッチングにより電極保護膜を除去する。次いで、導電膜5及び導電膜5を保護するための埋設膜6(例えば多結晶シリコンもしくはアモルファスシリコンの膜)を順次成膜する。
【0013】
(工程e)
埋設膜6の成膜後はCMPにてウエハ表面の埋設膜6及び導電膜5(図2,3)の一部を除去し、エッチバックラインEまで露出させる。ここで、第2の絶縁膜2及び埋設膜6をウエットエッチングにより除去する。本発明においてはこの工程が重要であり、後述する本発明に係るエッチング液が高い効果を発揮する。この工程を経て、シリンダ孔Kcを有するキャパシタの下部電極(シリンダ壁)50(図3)が形成される。
【0014】
(工程f)
上記のようにして形成したキャパシタの下部電極50形成後に、容量絶縁膜9を形成し、次いでプレート電極(上部電極)(図示せず)の形成を順じ行うことでキャパシタ構造10が形成できる。なお、本明細書においてキャパシタ構造とは、キャパシタそのものであっても、キャパシタの一部を構成する構造部であってもよく、図4に示した例では、下部電極50と容量絶縁膜9とから構成されるものとしてキャパシタ構造10を示している。
【0015】
図5は上記実施形態のキャパシタ構造の変形例を示している。この例では下部電極(シリンダ構造)の底部81と主要部82とは別の材料で構成されている。例えば、底部81をSiで構成し、主要部82をTiNで構成する例が挙げられる。
【0016】
[シリコンエッチング液]
次に、上記工程eにおいて説明したウエットエッチングに極めて効果的に用いることができる本願発明のシリコンエッチング液の好ましい実施形態について説明する。本実施形態のエッチング液においては、特定のアルカリ化合物および特定のヒドロキシルアミン化合物を組み合わせて適用することにより、電極等の部材を傷めずに、上述のような凹凸形状のあるキャパシタ構造の形成に係る多結晶シリコン膜またはアモルファスシリコン膜の除去を的確に行うことを可能にした。その詳細な理由は未解明の点を含むが、以下のように推定される。
ヒドロキシルアミンはシリコンと錯体を作ることが一般的に知られている(Wannagat,U., and Pump,J.,Monatsh. Chem.94,141(1963))。また、アルカリ化合物はシリコンをシラノール化しながら、溶解することが知られている。本発明のシリコンエッチング液においてはアルカリ化合物とヒドロキシルアミン化合物とを併用し、上記どちらかの反応が優先的に起こるのではなく、これら2つの反応を同時に進行させることで、エッチング速度を大きくすることができると考えられる。なお、このような作用機構は単結晶シリコンにおいて当てはまるかは分からず、多結晶シリコンまたはアモルファスシリコンにおいて効果的に発現されたものと解される。
なお、本明細書において、特定の剤を組み合わせた液とは、当該剤を含有する液組成物を意味するほか、使用前にそれぞれの剤ないしそれを含有する液を混合して用いるキットとしての意味を包含するものである。また、シリコン基板とは、シリコンウエハのみではなくそこに回路構造が施された基板構造体全体を含む意味で用いる。シリコン基板部材とは、上記で定義されるシリコン基板を構成する部材を指し1つの材料からなっていても複数の材料からなっていてもよい。
【0017】
(ヒドロキシルアミン化合物)
本実施形態のエッチング液はヒドロキシルアミン化合物を含有する。ここでヒドロキシルアミン化合物とは、当該化合物そのものに加え、その塩、そのイオン等を含む意味に用いる。典型的には、当該化合物及び/又はその塩を意味する。したがって、上記ヒドロキシルアミン化合物というときには、ヒドロキシルアンモニウムイオン、ヒドロキシルアミン、及び/又はその塩を含む意味であり、典型的には、ヒドロキシルアミン及び/又はその塩を意味する。
【0018】
本実施形態のエッチング液を形成するのに使われるヒドロキシルアミンの塩としては、ヒドロキシルアミン硝酸塩(HANとも称される)、ヒドロキシルアミン硫酸塩(HASとも称される)、ヒドロキシルアミンリン酸塩、ヒドロキシルアミン塩酸塩などが例示できる。エッチング液に、ヒドロキシルアミンの有機酸塩も使用することができ、ヒドロキシルアミンクエン酸塩、ヒドロキシルアミンシュウ酸塩などが例示できる。これらヒドロキシルアミンの塩のうち、ヒドロキシルアミン硝酸塩、ヒドロキシルアミン硫酸塩、ヒドロキシルアミンリン酸塩、ヒドロキシルアミン塩酸塩などの無機酸塩が、アルミニウムや銅、チタンなどの金属に対して不活性なので好ましい。特に、ヒドロキシルアミン硝酸塩、ヒドロキシルアミン硫酸塩が好ましい。これらヒドロキシルアミン化合物は、1種単独で又は2種以上を混合して使用することができる。
【0019】
ヒドロキシルアミン化合物は、本実施形態のエッチング液の全重量に対して、0.1〜15質量%の範囲内で含有させることが好ましく、6〜15質量%含有させることがより好ましく、3〜8質量%含有させることがさらに好ましい。上記上限値以下とすることで、高いエッチング速度を保持することができるため好ましい。上記下限値以上とすることが、面内均一性と長期使用の観点で好ましい。
【0020】
(アルカリ化合物)
本実施形態のエッチング液は、アルカリ化合物を含み、有機アルカリ化合物を含むことが好ましい。本発明において、「アルカリ化合物」とは、上記ヒドロキシルアミン化合物を含まない意味であり、当該「アルカリ化合物」としてヒドロキシルアミン化合物が採用されることはない。アルカリ化合物は、塩基性有機化合物であることが好ましい。その構成元素として炭素及び窒素を有することが好ましく、アミノ基を有することがより好ましい。具体的には、塩基性有機化合物は、有機アミン及び第4級アンモニウム水酸化物よりなる群から選ばれた少なくとも1つの化合物であることが好ましい。なお、有機アミンとは、構成元素として炭素を含むアミンを意味する。
【0021】
アルカリ化合物の炭素数は、4〜30であることが好ましく、沸点もしくは水への溶解度の観点から6〜16であることがより好ましい。
本実施形態のエッチング液の有機アルカリ化合物として使用される有機アミンには、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジエチレングリコールアミン、N−ヒドロキシルエチルピペラジンなどのアルカノールアミン、及び/又はエチルアミン、ベンジルアミン、ジエチルアミン、n−ブチルアミン、3−メトキシプロピルアミン、tert−ブチルアミン、n−ヘキシルアミン、シクロヘキシルアミン、n−オクチルアミン、2−エチルヘキシルアミン、o−キシレンジアミン、m−キシリレンジアミン、1−メチルブチルアミン、エチレンジアミン(EDA)、1,3−プロパンジアミン、2−アミノベンジルアミン、N−ベンジルエチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミンなどの水酸基を有しない有機アミンが含まれる。金属の腐食防止の観点から、アルカノールアミンよりも、水酸基を有しない有機アミンの方が好ましい。さらにエチレンジアミン、1,3−プロパンジアミン、o−キシレンジアミン、m−キシリレンジアミンが金属と配位することができるので特に好ましい。なお、本明細書における化合物・基(原子団)の表記において、置換及び無置換を記していない表記は置換基を有さないものと共に置換基を有するものをも包含するものである。例えば「アルキル基」とは、置換基を有さないアルキル基(無置換アルキル基)のみならず、置換基を有するアルキル基(置換アルキル基)をも包含するものである。
【0022】
アルカリ化合物として使われる第4級アンモニウム水酸化物としては、テトラアルキルアンモニウム水酸化物が好ましく、低級(炭素数1〜4)アルキル基で置換されたテトラアルキルアンモニウム水酸化物がより好ましく、具体的には、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド(TEAH)、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド(TPAH)、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド(TBAH)などが挙げられる。さらに第4級アンモニウム水酸化物としてトリメチルヒドロキシエチルアンモニウムヒドロキシド(コリン)、メチルトリ(ヒドロキシエチル)アンモニウムヒドロキシド、テトラ(ヒドロキシエチル)アンモニウムヒドロキシド、ベンジルトリメチルアンモニウムヒドロキシド(BTMAH)なども挙げられる。それに加え、アンモニウム水酸化物と1つあるいはそれ以上の第4級アンモニウム水酸化物の組み合せも使用することができる。これらの中でも、TMAH、TEAH、TPAH、TBAH、コリンがより好ましく、TMAH、TBAHが特に好ましい。
これら有機アミン及び第4級アンモニウム水酸化物は、1種単独で又は2種以上を混合して使用することができる。
【0023】
アルカリ化合物の含有量は、本実施形態のエッチング液の全重量に対して、3〜25質量%の範囲内で含有させることが好ましく、5〜15質量%含有させることがより好ましい。上記上限値以下及び下限値以上とすることで、高いエッチング速度を保持することができるため好ましい。なお、性能が飽和するため、その観点からも上記上限以下で対応すればよい。
【0024】
(シリコン基板表面処理)
本実施形態においては、さらにシリコン基板表面に自然に形成される酸化膜除去処理を組み合わせて適用することが好ましく、前記アルカリ化合物ないしヒドロキシルアミン化合物を適用する前に適用しておくことが好ましい。表面処理の方法は、形成される酸化膜が除去できる限り限定されないが、例えばフッ素原子を含有する酸性水溶液で処理することが挙げられる。フッ素原子を含有する酸性水溶液として、好ましくはフッ化水素酸であり、フッ化水素酸の含有量は、本実施形態の液の全重量に対して、約0.1〜約5質量%であることが好ましく、0.5〜1.5質量%であることがより好ましい。上記上限値以下とすることで、部材へのダメージを十分に抑制することができ好ましい。上記下限値以上とすることで、酸化膜の除去性を十分に発揮させることができるため好ましい。なお、上記フッ化水素酸は塩の形で存在していてもよい。
【0025】
(pH)
本発明のシリコンエッチング液はアルカリ性であり、pH11以上に調整されている。この調整は上記アルカリ化合物とヒドロキシルアミン化合物の添加量を調整することで行うことができる。ただし、本発明の効果を損なわない限りにおいて、他のpH調整剤を用いて上記範囲のpHとしてもよい。シリコンエッチング液のpHは、さらに12以上であることがより好ましい。このpHが上記下限値以上であることで、十分なエッチング速度を得るとすることができる。上記pHに特に上限はないが、14以下であることが実際的である。本発明においてpHは後記実施例で示した条件で測定した値を言う。
【0026】
(その他の成分)
・有機溶剤の添加
本発明のシリコンエッチング液においては、さらに水溶性有機溶剤を添加してもよい。これにより、ウエハの面内における均一なエッチング性を更に向上しうる点で有効である。水溶性有機溶剤は、アルコール化合物(例えば、エチレングリコール、グリセリン、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、プロピレングリコール、フルフリルアルコール、2−メチルー2,4−ペンタンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ジプロピレングリコールメチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピレングリコール)、スルホキシド化合物(ジメチルスルホキシド等)、エーテル化合物(例えば、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル)が好ましい。なお、ヒドロキシル基(−OH)、エーテル基(−O−)、およびスルホキシド基(−SO−)を組み合わせて分子内に有する化合物であってもよく、その場合、上記アルコール化合物、スルホキシド化合物、エーテル化合物のいずれに分類されていてもよい。添加量はエッチング液全量に対して0.1〜20質量%であることが好ましく、1〜15質量%であることがより好ましい。この量が上記下限値以上であることで、上記のエッチングの均一性の向上を効果的に実現することができる。一方、上記上限値以下であることで、多結晶シリコン膜またはアモルファスシリコン膜、その他金属膜に対しての濡れ性を確保するとすることができる。
【0027】
・界面活性剤の添加
本発明のシリコンエッチング液には、さらに界面活性剤を含有させてもよい。界面活性剤としては、ノニオン性、アニオン性、カチオン性界面活性剤、及び、両性界面活性剤を用いることができる。酸化防止液中の界面活性剤の含有量は、酸化防止液の全質量に対して、好ましくは0.0001〜5質量%であり、より好ましくは0.0001〜1質量%である。界面活性剤を酸化防止液に添加することでその粘度を調整し、エッチングの面内均一性の更なる向上を改良することができるため好ましい。このような界面活性剤は一般に商業的に入手可能である。これらの界面活性剤は、単独又は複数組み合わせて用いてもよい。
【0028】
ノニオン性界面活性剤としては、例えば、ポリアルキレンオキサイドアルキルフェニルエーテル系界面活性剤、ポリアルキレンオキサイドアルキルエーテル系界面活性剤、ポリエチレンオキサイドとポリプロピレンオキサイドからなるブロックポリマー系界面活性剤、ポリオキシアルキレンジスチレン化フェニルエーテル系界面活性剤、ポリアルキレントリベンジルフェニルエーテル系界面活性剤、アセチレンポリアルキレンオキサイド系界面活性剤が挙げられる。
アニオン性界面活性剤としては、アルキル硫酸エステル、アルキルスルホン酸、アルキルベンゼンスルホン酸、アルキルナフタレンスルホン酸、アルキルジフェニルエーテルスルホン酸、ポリオキシエチレンアルキルエーテルカルボン酸、ポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸、ポリオキシエチレンアルキルエーテルプロピオン酸、およびそれらの塩が挙げられる。
カチオン性界面活性剤としては、第4級アンモニウム塩系界面活性剤、またはアルキルピリジウム系界面活性剤が挙げられる。
両性界面活性剤としては、ベタイン型界面活性剤、アミノ酸型界面活性剤、イミダゾリン型界面活性剤、アミンオキサイド型界面活性剤が挙げられる。
【0029】
(被加工物)
本実施形態のエッチング液を適用することによりエッチングされる材料はどのようなものでもよいが、一般的なキャパシタの製造に用いられる基板材料として多結晶シリコン又はアモルファスシリコンが挙げられる。一方、キャパシタ構造の中核をなす電極材料は窒化チタン(TiN)が挙げられる。すなわち、本実施形態のエッチング液は、上記基板材料のエッチングレート(ERs)と電極材料のエッチングレート(ERe)との比率(ERs/ERe)が大きいことが好ましい。具体的な比率の値は材料の種類や構造にもよるので特に限定されないが、ERs/EReが100以上であることが好ましく、200以上であることが好ましい。なお、本明細書においては、シリコン基板をエッチングするようエッチング液を用いることを「適用」と称するが、その実施態様は特に限定されない。例えば、バッチ式のもので浸漬してエッチングしても、枚葉式のもので吐出によりエッチングしてもよい。
【0030】
加工されるキャパシタ構造の形状や寸法は特に限定されないが、上述したようなシリンダ構造を有するものとしていうと、そのシリンダ孔のアスペクト比(深さ/幅)が5以上である場合に特に本実施形態のエッチング液の高い効果が活かされ好ましい。同様の観点でアスペクト比が15以上であることが好ましく、20以上であることがより好ましい。シリンダ孔の開口径dは特に限定されないが、本実施形態において効果が発揮され、近時のキャパシタ構造の微細化を考慮すると、20〜80nmであるものが好ましい。
さらにここで強調しておくべきことは、本発明によれば、ウエハの端部と中央部とでキャパシタ構造の均一なエッチング性が実現されることである。これをエッチング速度でいうと、端部のエッチング速度Reと中央部のエッチング速度Rcとの比率(Rc/Re)が、0.7〜1.5であることが好ましく、0.85〜1.15であることがより好ましい。これにより近時要求されるキャパシタ製造の高い製造品質と高い製造効率との両立の実現に資するため好ましい。
【実施例】
【0031】
<実施例1、比較例1>
以下の表1に示す成分及び下記処方に示した組成(質量%)で含有させてエッチング液を調液した。
【0032】
<エッチング試験>
試験ウエハ:単結晶<100>シリコン上に製膜された500nmの膜厚の多結晶シリコンもしくは500nmの膜厚のアモルファスシリコンのウエハを準備した。これに対して、枚葉式装置(SPS−Europe B.V.社製、POLOS(商品名)))にて下記の条件でエッチングを行い、評価試験を実施した。なお、ウエハには直径300mmのものを用い、その中央部の直径10mmにおけるエッチング速度(中央部エッチング速度Rc)と、端部から30mmにおけるエッチング速度(Re)とを対比して評価した。
・薬液温度:80℃
・吐出量:1L/min.
・ウエハ回転数500rpm
【0033】
なお、上記の結果は、下記のように区分して表中に示した。
[アモルファスシリコンのエッチング速度]
B: 300nm/min 未満
A: 300nm/min 以上、500nm/min 未満
AA: 500nm/min 以上
[多結晶シリコンのエッチング速度]
B: 700nm/min 未満
A: 700nm/min 以上、1000nm/min 未満
AA:1000nm/min 以上
【0034】
表中のpHは室温(20℃)においてHORIBA社製、F−51(商品名)で測定した値である。
【0035】
【表1】

(注)2時間後のエッチング速度:エッチング液を調液し、2時間静置した後に、上記エッチング処理を行った結果を示している。

【0036】
上表に示したとおり、本発明のシリコンエッチング液によれば、特にアモルファスシリコン及び多結晶シリコンに対応して、十分なエッチング速度を実現し、しかもウエハの端部と中央部とでむらのないエッチング処理が可能であることが分かる。また、エンチング液の保存性にも優れ、キャパシタ製造における生産性と製造品質とを両立して実現しうることが分かる。さらに、本発明のシリコンエッチング液は、素子の電極材料であるTiN,SiN、SiO等の各膜へのダメージが非常に小さいことを確認した。
なお、比較例のものでは、ウエハの中央部と端部とでエッチング速度のバランスをとることが難しく、特に端部の速度が大幅に低下してしまう傾向があった。具体的に、中央部の端部に対する速度の比でいうと、比較例2が1.8倍、比較例5が1.35倍、比較例6が1.5倍であった。これに対し、本願発明によれば、比較例のものより大幅に改良されたエッチング性を、中央部及び端部の双方において引き上げた形で実現することができる。
【0037】
<実施例2・比較例2>
TMAH 10質量%、ヒドロキシルアミン 5質量%に加え、下記表2に記載の各溶剤10質量%を添加した薬液を準備した(薬液はすべてpH12以上であった。)。得られたエッチング液を用い、実施例1同様のエッチング試験(中央から10mmの速度測定)を実施した。また、シリコンとTiNの接触角測定を室温にて行った。この結果を下記表2に示した。
【0038】
【表2】

上記の結果から分かるとおり、溶剤添加したものは添加していないものに比べて、接触角が低下しており、濡れ性の向上が確認できた。すなわち、濡れ性の向上が認められたため、キャパシタ内のシリコン残渣が生じにくいと考えられる。なお、このようなシリコン残渣の除去性の良化は相乗効果をもたらし、実施例1で確認したウエハにおける均一なエッチング性とエッチング速度の向上との両立に寄与しうるものである。
【0039】
また、溶剤添加したものでは、添加剤なしのものに比べて、シリコン残渣が少なく、キャパシタ構造のウエハ試験において、高い得率を得ることができた。
【符号の説明】
【0040】
1 第1の絶縁膜
2 第2の絶縁膜
3 シリコンウエハ
4 フォトレジスト
5 導電膜
6 埋設膜
9 容量絶縁膜
10 キャパシタ構造
50 下部電極(シリンダ壁)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルカリ化合物およびヒドロキシルアミン化合物を組み合わせて含み、pHを11以上に調整したシリコンエッチング液を多結晶シリコン膜またはアモルファスシリコン膜に適用して、該多結晶シリコン膜またはアモルファスシリコン膜の一部またはすべてを除去することにより、キャパシタとなる凹凸形状を形成するキャパシタ構造の形成方法。
【請求項2】
前記凹凸形状部が前記シリコンエッチング液により除去されてなるシリンダ孔を有してなる請求項1に記載の形成方法。
【請求項3】
前記シリコンエッチング液を適用する前に、前記シリコン膜の酸化膜を除去する工程を含む請求項1又は2に記載の形成方法。
【請求項4】
前記キャパシタ構造を構成する凹凸形状部がTiNを含んでなり、かつ前記シリンダ孔がアスペクト比15以上である請求項2または3に記載の形成方法。
【請求項5】
前記アルカリ化合物の濃度が3〜25質量%である請求項1〜4のいずれか1項に記載の形成方法。
【請求項6】
前記ヒドロキシルアミン化合物の濃度が0.1〜15質量%である請求項1〜5のいずれか1項に記載の形成方法。
【請求項7】
前記シリコンエッチング液がさらにアルコール化合物、スルホキシド化合物、またはエーテル化合物を含有する請求項1〜6のいずれか1項に記載の形成方法。
【請求項8】
多結晶シリコン膜またはアモルファスシリコン膜の一部または全てを除去することにより、キャパシタとなる凹凸形状をなしキャパシタ構造を形成するためのエッチング液であって、アルカリ化合物およびヒドロキシルアミン化合物を組み合わせて含み、pHが11以上に調整されたことを特徴とするシリコンエッチング液。
【請求項9】
適用対象が多結晶シリコン膜である請求項8に記載のシリコンエッチング液。
【請求項10】
適用対象がアモルファスシリコン膜である請求項8に記載のシリコンエッチング液。
【請求項11】
前記キャパシタ構造を構成する凹凸形状部がTiNを含んでなり、かつ前記ンエッチング液により除去されてなるシリンダ孔をもつ請求項8〜10のいずれか1項に記載のシリコンエッチング液。
【請求項12】
前記シリンダ孔がアスペクト比15以上である請求項11に記載のシリコンエッチング液。
【請求項13】
前記アルカリ化合物の濃度が3〜25質量%である請求項8〜12のいずれか1項に記載のシリコンエッチング液。
【請求項14】
前記ヒドロキシルアミン化合物の濃度が0.1〜15質量%である請求項8〜13のいずれか1項に記載のシリコンエッチング液。
【請求項15】
前記アルカリ化合物が4級アンモニウム水酸化物、アンモニア、及び水酸化カリウムより選ばれる一つ以上の化合物である請求項8〜14のいずれか1項に記載のシリコンエッチング液。
【請求項16】
前記アルカリ化合物が4級アンモニウム水酸化物である請求項8〜15のいずれか1項に記載のシリコンエッチング液。
【請求項17】
前記アルカリ化合物がテトラメチルアンモニウム水酸化物である請求項8〜16のいずれか1項に記載のシリコンエッチング液。
【請求項18】
前記シリコン膜表面の酸化膜の除去処理の直後に使用することを特徴とする請求項8〜17のいずれか1項に記載のシリコンエッチング液。
【請求項19】
さらにアルコール化合物、スルホキシド化合物、またはエーテル化合物を含有させた請求項8〜18のいずれか1項に記載のシリコンエッチング液。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2012−199521(P2012−199521A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−40234(P2012−40234)
【出願日】平成24年2月27日(2012.2.27)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】