説明

キャブサポート

フレーム(2)と、フレーム(2)に設けられたキャブ(3)と、フレーム(2)とキャブ(3)との間に設けられ、側部支持手段(12)が設けられた側の方向に向けてキャブ(3)が変位したとき、キャブ(3)からフレーム(2)への荷重を吸収するための側部支持手段(12)とを有する作業機械。キャブ(3)の横方向の変位は荷重を吸収する機能が作動する前に生じる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フレーム、このフレームに配置されたキャブ、及び前記フレームとキャブとの間で、キャブの横方向の変位が側部支持手段が設けられる側に向けて生じるとき、キャブからフレームへの荷重を吸収するための側部支持手段を備える作業機械に関する。
【0002】
この作業機械は、キャブを有するあらゆる型式の作業機械となり得る。特に、機械の型式は、典型的な掘削機械のような、フレーム上にばねを介して支持される場合を意図したものである。したがって、これを例示するために、本発明はそのような種類の掘削機械を参考にして説明される。
【0003】
本発明は、特に、キャブがフレーム上の側部に設けられ、機械が少なくとも一つの方向に転覆したとき、相当の横方向の力を直接に受ける構造部分を形成している作業機械に関する。
【背景技術】
【0004】
通常の運転の間は、掘削機械のキャブは感知できるほどの横方向の力は全く受けない。しかしながら、掘削機械が、例えば、急勾配の傾斜した地面上での掘削の場合に、横方向に転倒させるような大きな横方向の力を受ける。このような掘削機械は、通常は、実際の道具であるバケットを制御するためのフレームから延びるアームを有している。このアームは、キャブの側面に沿って設けられ、また、キャブと共に、回転可能に、又は少なくとも機械の水平面内で回転可能に設けられている。換言すると、それは常にキャブの側面にある。
【0005】
もしアームの方向に傾斜又は転倒が起きると、アームは地面との衝撃によって受ける横方向の力の大部分を吸収する。キャブはその死荷重を伴ってアームに対して、またある程度は地面に対して寄りかかる状態となるが、通常のケースでは、転覆したときその方向に受けるような特に大きな力を受けることはないであろう。
【0006】
もし、機械がキャブを横方向の力から保護するアームがない方向に転覆すると、大きな横方向の力がキャブに作用するであろう。近時のキャブの構造は、少なくとも大きな掘削機械では、遭遇すると予想されるそのような大きな力を吸収するのに十分な強度を常に持つものではない。
【0007】
上述の問題を解決する一つの方法は特許文献1に記載されている。この文献は、抄録と図面から判断すると、ダンプカーや掘削機械などの車輌上の強化構造体又は保護構造体を開示している。キャブは横方向に位置し、即ち、車輌の中央軸からずれて位置している。フレームとキャブとの間にステーが固定され、これは多分キャブとフレームとの間での横方向の力を受けるためのものと思われる。しかしながら、特許文献1に開示された構造の一つの不利な点は、ステーが明らかに一方はフレームに、他方はキャブに固く固定されていることである。特許文献1のキャブがバネに支持されているかどうかは明らかでない。もしそうであれば、示されたステー構造はキャブの取り付けと、操作の間にドライバーが感じる快適さにとって明らかに不利な影響をもたらす。フレームやシャーシにおいて通常に生じる振動や揺れがステーを介してキャブに伝達される。
【0008】
【特許文献1】特開2002−46657号公報
【発明の開示】
【0009】
本発明の目的は、転倒したときに、キャブが開放されるような構造とされる、序論で述べたような種類の作業機械を提供することにある。換言すれば、作業機械は、二方向のうちの少なくとも一方向に転覆したときにキャブが受ける横方向の力を吸収するような支持構造が設けられる。この支持構造は、さらに、通常の作動の間にはバネによる支持を許容し、このことは、それがフレーム又はシャーシからの振動や揺れをキャブに伝達しないということである。
【0010】
本発明の上記目的は序論で特定された種類の作業機械によって達成され、この機械は、側部支持手段がその荷重を吸収する機能が動作する前にキャブの横方向の移動を許容するように配置されていることを特徴としている。もし、キャブが横方向に位置していれば、即ち、作業機械の中央線からずれて配置されていれば、この側部支持手段はキャブの中央線に最も近い側に設けられることが有利である。
【0011】
本発明の好ましい実施例によれば、横方向に変位が生じたとき、直接にビームを介して荷重を受けて耐えるために、側部支持手段はキャブのビームの直前に配置される。ビームは好ましくはキャブに垂直なビームか、或いはキャブに水平なビームである。側部支持手段は、キャブの上端か或いは窓の下端に好適に位置している垂直ビーム及び水平ビームの両方の前に直接に設けられるようにすることも考えられる。好ましい実施例において、垂直ビームはフロントビームであるが、側部支持手段を後部の垂直ビームの前に直接に配置することも考えられる。しかしながら、これらのビームは、しばしば、運転者の視野に悪影響を及ぼさないように比較的強く造ることができる。したがって、通常のケースでは後部の垂直ビームはより強くされ、すなわち、それは、フロントの垂直ビームより、より大きな荷重を受け止める能力を有し、その結果、フロントビームが折れ、キャブがつぶれるのを避けるために側部支持手段によって強化されるべきものはフロントの垂直ビームとなる。通常は、側部支持手段は、前述のように、転倒した場合に最もつぶれる危険のあるキャブ又はビームの前側部分に直接に設けられる必要がある。これは通常は、存在する多くのビームのうち最も弱い。
【0012】
側部支持手段は好適にフレームに固定される。好ましい実施例によれば、作業機械はキャブの側面のフレームに設けられるアームと、このアームに固定されることが有利となる側部支持手段を有している。このアームは取り付けの調整と操作が容易な回転アームで、代表的にはバケットのようなものである。
【0013】
側部支持手段は、それとキャブとの間に自由間隙を置いて設けることが有利である。この間隙は、側部支持手段の領域において通常の運転で生じるキャブの予想される横方向の移動より大きくしておく必要がある。しかしながら、他の実施例によれば、側部支持手段は、キャブにバネにより取り付けられる。このバネの作用は、通常の運転の間にフレーム又はシャーシから振動や揺れが側部支持手段を介してキャブに伝達しないように柔らかいものとする必要がある。それとは別に、側部支持手段は、キャブに固定され、フレームに対して間隙を置いて、キャブが横方向に移動したとき、フレームで支持されるか、或いは掘削機械のアームのように、そこに部分的に固定するようにすることができる。
【0014】
側部支持手段は、キャブからフレームに荷重を伝える間に変形できるような寸法とされることが好適であり、これにより、キャブの連続する横方向の制限された変位を許容する。この変形は、単に弾性的としてもよく、また、可塑性の弾性的なものとすることができる。この変形は、転倒したときにキャブの早期のつぶれに対抗できるようにされる必要がある。この側部支持手段はキャブの変形区域を形成するということができる。
【0015】
本発明の更なる特徴と利点は、以下の説明と特許の従属クレームによって明らかになるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明は、例示するために、添付した図面を参照にして以下に説明される。
【0017】
図1は作業機械1を示し、ここでは、支持フレーム2,キャブ3及びアーム4を備える掘削機械である。キャブ3とアーム4はフレーム2の上に設けられている。これらは、それらがフレーム2の一部を形成する共通のベース5の上に設けられ、作業機械1の水平面において回転可能に設けられる限りにおいて、フレーム2の一部に対して回転可能又は旋回可能に設けられる。更に、アーム4は水平軸xに対して回転可能に取り付けられ、その端部で、この場合、バケットである道具6に連結されている。
【0018】
キャブ3は作業部を有し、ここから作業機械1が運転者により制御される。キャブ3はフレーム2の上に、この場合ゴム要素7であるバネ要素を介して取り付けられており、これらバネ要素はキャブ3の下に設けられ、ベース5に対して支持されている。キャブ3は、また、作業機械1、正確にはベース5の長手中心軸yに対して横方向位置している。キャブ3はフロント垂直ピラー又はビーム8とリア垂直ピラー又はビーム9及びフロントピラー8をリアピラー9に連結する上部水平ビーム10を有している。更に、例えば、サイドウインドウの下端部に中間水平ビームのような部材を考慮することができる。ここでは、リアピラー9はフロントピラー8より、より強く、また、より大きな荷重又は曲げ応力を受ける能力を持つ。キャブ3の側面にはガラス又はプラスチックと金属シートでできた窓11が形成される。
【0019】
図2により詳細に示されている第1実施例によると、作業機械1はキャブ3の前記中心線y又はアーム4に近い側に側部支持手段12を有している。この側部支持手段12の目的は、例えば転覆した方向との関係で、側部からずれている側に大きな力を受ける場合に、中心線y又はアーム4の方向においてキャブ3を支持する支持部材を形成することにある。側部支持手段12は、好適にはビームのようなもので、フレーム2に対して適用される第1の点又は表面、この場合はアーム4と、キャブ3に対して適用される第2の点又は表面を持つ。側部支持手段12は、キャブ3上に例外的な横方向の力が作用しない状態でバネ要素7が通常の作動の期間に許容するキャブの移動が可能となるような状態で設けられる必要がある。この目的のため、側部支持手段12は、キャブ3のみか、或いは、フレーム2/アーム4に、固定されていない部分に対して隙間を残して固定されることができ、この隙間はキャブの移動を保証するサイズとするか、又は、少なくとも振動と揺れが通常の動作の間、側部支持手段12を介して、フレーム2/アーム4からキャブ3に伝達されない程度のサイズとされる。
【0020】
これに代えて、側部支持手段12は、キャブ3とフレーム2/アーム4の両方に固定することができるが、少なくとも、一方の固定はバネ動作を伴うようにして、バネがボトム位置に到達する前に、また側部支持手段12に荷重が完全にかかる前に、キャブ3の側部支持手段12の荷重がかかる方向の最初の変位が可能となるようにされる。このバネシステムは、更に穏やかなものとされて、それを介してフレーム2/アーム4からキャブ3に伝達される振動が実質的にないようにされなければならない。このようなバネシステムの代わりとして、ダンパーのような形態のものを設けることも可能である。また、側部支持手段12を荷重のかかる方向に互いに変位可能なようにして設けられる複数の部材で構成し、相対的な変位が終わる前に、また、前記部材が相対的に互いに、また、フレーム2/アーム4及び・又はキャブ3への固定点に対してボトム位置となる前に、キャブ3の初期の変位が可能とすることも可能である。
【0021】
図2に示された第1の実施例によれば、側部支持手段12は一端がアーム4に固定され、フロント垂直ピラー8に平行に延びるビームを有している。このピラー8は、通常は垂直でないが、必ず垂直である必要はなく、ビーム12は、最長に延びて道具が地面についているようにアーム4が下方の水平位置に回動した場合、即ち、作業機械の車輪又は台車と同じレベル又は線上にある場合、ピラー8に沿って平行に延びるように設けられることは理解できるであろう。側部支持手段12はアーチ型をなし、対向する端部がアーム4に固定される。側部支持手段12はフロントピラー8に平行に延び、次いで、上部部材10の一部に沿って平行に延び、上部部材10からアーム4に下がって戻るように延びる。側部支持手段12はキャブ3から所定の距離、即ち、間隙を置いて延びている。しかしながら、上述のように、側部支持手段12を介して振動及び揺れがキャブに伝達されないことを条件として、側部支持手段12とキャブ3の間で固定或いは接触する形態とすることは可能である。
【0022】
図3は第2の実施例を示し、これによれば、側部支持手段12は作業機械のシャーシに、より正確には、ベース5に固定され、他の実施例と同様にキャブの上部部材10にまで延びている。側部支持部材12のためにアーム4とキャブ3の間に十分なスペースがある場合には、この解決方法は可能である。
【0023】
図4に示される第3の実施例によれば、側部支持手段12は、端部がアーム4に固定され、転覆したような場合に上部部材10からの荷重を受けて耐えるように、上部部材10にまで上方に延びているビームを有している。このビームは、上部部材10と平行に、好ましくはその前側に延びる更なるビームに連結され、又は補われる。
【0024】
図5は他の実施例を示し、ここでは、側部支持手段12はアーム4から実質的に平行にフロント垂直ピラー8だけにまで延びている。
【0025】
図6と7は、異なる実施例の背面図を示し、一方では、側部支持手段12が直接にベース5に固定され、他方では、アーム4に固定されている。側部支持手段12とキャブ3との間の間隔は、図6では図7より小さく示されているが、これは主として例示の目的として示されるものである。
【0026】
本発明の変形は、明細書の記載添付図面によって支持された添付の特許クレームに特定されるように、本発明の範囲を離れることなく、当業者にとって明らかであることが理解されるであろう。
【0027】
特に、側部支持手段12の広い範囲で異なる形状は本発明の範囲に含まれ、側部支持手段12は種々の方法でキャブ3及び/又はフレーム2/ベース5/アーム4に固定できることは理解できるであろう。
【0028】
また、垂直ピラー又はビーム8,9は、必ずしも完全に垂直であることを意味するものでなく、本発明の範囲内で、完全に垂直からかなりずれることも可能である。同じことが「水平」上部部材10の用語についても言える。上部部材10の範囲は決して完全に水平である必要はない。本質的な態様は、それは、フロント及びリアピラー8,9の間で上部のステーを形成することである。キャブ3のアーチ状ピラー構造も、また、完全に可能であり、ここでは、垂直部材と水平部材の間の明確な境界が存在するものではなく、これらが互いに徐々に湾曲して交わり、また、ひとつの同じビームが曲げられることにより、又は他の適した方法でアーチ形状が付与されることにより形成されることさえ可能である。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明による側部支持手段を設けた作業機械の斜視図である。
【図2】第1実施例による作業機械の一側部分から見た図である。
【図3】第2実施例の側面図である。
【図4】第3実施例の側面図である。
【図5】第4実施例の側面図である。
【図6】第1、第3又は第4実施例のいずれかの背面図である。
【図7】第2実施例の背面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フレーム(2)と、
フレーム(2)上に配置されるキャブ(3)と、
フレーム(2)とキャブ(3)との間に設けられ、キャブ(3)の横方向の変位が側部支持手段(12)が設けられた側の方向に向けて生じたとき、キャブ(3)からフレーム(2)への荷重を吸収するための側部支持手段(12)と、を有する作業機械であって、
前記側部支持手段(12)は、その荷重を吸収する機能が作動する前に、最初にキャブ(3)の横方向の変位が可能とされていることを特徴とする、
作業機械。
【請求項2】
前記側部支持手段(12)は、側部支持手段が横方向に変位したとき、直接にビームを介して荷重を受けて吸収するように、キャブ(3)のビーム(8,10)の前面に直接に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の作業機械。
【請求項3】
前記ビームはキャブ(3)の垂直ビーム(8)であることを特徴とする請求項2に記載の作業機械。
【請求項4】
前記ビームはキャブ(3)の水平ビーム(10)であることを特徴とする請求項2又は3に記載の作業機械。
【請求項5】
側部支持手段(12)はフレーム(2)に固定されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
キャブ(3)の側部においてフレーム(2)に設けられるアーム(4)を有し、且つ側部支持手段(12)はアーム(4)に固定されていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の作業機械。
【請求項7】
側部支持手段(12)は、キャブ(3)との間に自由空間を置いて配置されていることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の作業機械。
【請求項8】
側部支持手段(12)は、キャブ(3)に対してバネにより固定されていることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の作業機械。
【請求項9】
側部支持手段(12)は、キャブ(3)が初期に変位できるように、荷重を受ける方向に相互に所定の範囲だけ変位が可能な複数の部材を有することを特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載の作業機械。
【請求項10】
側部支持手段(12)はキャブ(3)からフレーム(2)に荷重を吸収する間、変形可能なようなサイズとされ、これによりキャブ(3)が連続した横方向の変位が許容されるようにしたことを特徴とする請求項1乃至9のいずれかに記載の作業機械。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2007−510590(P2007−510590A)
【公表日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−539433(P2006−539433)
【出願日】平成16年11月9日(2004.11.9)
【国際出願番号】PCT/SE2004/001630
【国際公開番号】WO2005/044642
【国際公開日】平成17年5月19日(2005.5.19)
【出願人】(502032378)ボルボ コンストラクション イクイップメント アーベー (156)
【Fターム(参考)】