説明

キャリッジ駆動装置、該キャリッジ駆動装置を備えた液体噴射装置

【課題】 突き当て位置からホームポジションを検出するキャリッジ駆動制御において、キャリッジを突き当て部へ突き当てる際に大きな衝突音が発生したり記録ヘッドに大きな衝撃を与えたりすることを防止しつつ、ホームポジション検出時間を短縮する。
【解決手段】 正確なホームポジションHPにキャリッジ37を移動させるべくキャリッジ37を突き当て部2に突き当たるまで移動させる前に、ホームポジションHP近傍におけるキャリッジロック制御を実行して、キャリッジロック部材39をキャリッジ37の往復可動範囲に進出させた状態でキャリッジ37の一定量の移動を試み、キャリッジ37の実際の移動量からキャリッジ37がホームポジションHP近傍に位置しているか否かを判定し、その判定結果に応じたキャリッジ37の移動制御を実行してキャリッジ37を突き当て部2に突き当たるまで移動させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定方向へ往復動可能に配設されたキャリッジを往復可動範囲の任意の位置へ移動させるべく駆動力源の駆動力をキャリッジへ伝達する駆動力伝達手段と、キャリッジの移動量を検出するキャリッジ移動量検出手段と、往復可動範囲の一端側近傍の所定位置に設定されたホームポジションにキャリッジが停止している状態で、キャリッジの移動を任意にロック可能な構成を有するキャリッジロック手段と、キャリッジが突き当たった状態で往復可動範囲の他端側におけるキャリッジの移動限界位置を規定する突き当て部とを備えたキャリッジ駆動装置、並びに該キャリッジ駆動装置を備えた液体噴射装置に関する。
【0002】
ここで、液体噴射装置とは、液体噴射ヘッドとしての記録ヘッドから記録紙等の被記録材へインクを噴射して被記録材への記録を実行するインクジェット式記録装置、複写機及びファクシミリ等の記録装置に限らず、インクに代えて特定の用途に対応する液体を前述した記録ヘッドに相当する液体噴射ヘッドから、被記録材に相当する被噴射材に噴射して、液体を被噴射材に付着させる装置を含む意味で用いる。また、液体噴射ヘッドとしては、前述した記録ヘッド以外に、液晶ディスプレイ等のカラーフィルタ製造に用いられる色材噴射ヘッド、有機ELディスプレイや面発光ディスプレイ(FED)等の電極形成に用いられる電極材(導電ペースト)噴射ヘッド、バイオチップ製造に用いられる生体有機物噴射ヘッド、精密ピペットとしての試料を噴射する試料噴射ヘッド等が挙げられる。
【背景技術】
【0003】
液体噴射装置の一例として公知のインクジェット式記録装置は、被噴射材としての被記録材に液体としてのインクを噴射する液体噴射ヘッドとしての記録ヘッドを搭載したキャリッジが主走査方向へ往復動可能に配設されており、キャリッジを主走査方向へ往復動させながら被記録材へインクを噴射する動作と、被記録材を副走査方向へ所定の搬送量で搬送する動作とを交互に繰り返すことによって、被記録材への記録が実行されるように構成されているのが一般的である。このようなインクジェット式記録装置は、キャリッジを往復可動範囲の任意の位置へ移動させるべく駆動力源の駆動力をキャリッジへ伝達する駆動力伝達手段と、キャリッジの移動量を検出するキャリッジ移動量検出手段とを備えているのが一般的である。
【0004】
キャリッジの駆動制御の一例としては、キャリッジの往復可動範囲の一端側近傍の所定位置には、キャリッジの移動量に基づく駆動力源の駆動制御によるキャリッジの移動制御の基点となるホームポジションを設定し、ホームポジションとなる位置にキャリッジが移動したことを検出するセンサ等を設け、そのセンサでキャリッジが検出された状態のキャリッジの移動位置をホームポジションとするものが公知である。ホームポジションへキャリッジを移動させた後は、キャリッジの移動方向(モータ等の駆動力源の駆動方向)と公知のリニアエンコーダ等によるキャリッジ移動量検出手段にて検出されるキャリッジの移動量からホームポジションを基点としたキャリッジの移動位置を特定して所望のキャリッジの駆動制御を実行する(例えば、特許文献1参照)。
また、ホームポジションとなる位置にキャリッジが移動したことを検出するセンサを設けずにキャリッジの駆動制御を実行する技術も公知である。例えば、キャリッジの往復可動範囲の端部に設けられたシャーシ(記録装置本体のフレーム)の側板にキャリッジを突き当て、その突き当て位置を基点として所望のキャリッジの駆動制御を実行する(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
【特許文献1】特開2003−246111号公報
【特許文献2】特開2003−108229号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、ホームポジションにキャリッジが移動したことを検出するセンサを設けると、その分だけコストが増加するという課題が生じる。また、経年変化等によってセンサの検出精度の低下や検出位置のずれが生じると、正確なホームポジション位置を基点とした高精度なキャリッジの駆動制御ができなくなってしまう虞がある。
一方、キャリッジの往復可動範囲の端部に設けられた記録装置本体フレームの側板等にキャリッジを突き当て、その突き当て位置からホームポジションを検出する場合には、キャリッジを突き当て位置へ突き当てる際に発生する衝突音やキャリッジに搭載されている記録ヘッドへの衝撃が問題となる。突き当てる際のキャリッジの移動速度を遅くすれば、衝突音や記録ヘッドへの衝撃を低減させることができるが、それによってホームポジションを検出するための動作の時間が長くなってしまうという課題が生じる。逆にキャリッジの移動速度を速くすると、ホームポジションを検出する時間は短縮されるが、大きな衝突音が発生したり、記録ヘッドへの衝撃によってヘッド面のノズルのメニスカスが破壊されていわゆるドット抜けが生じたりする虞がある。
【0007】
そこで、例えば、キャリッジが突き当て位置へ突き当たる直前まで高速にキャリッジを移動させ、そこから突き当て位置へ突き当たるまでは低速でキャリッジを移動させれば、上記のような課題を概ね解決することは可能である。しかし、ホームポジションを検出する前の段階におけるキャリッジの位置は、紙詰まりが生じて記録が中断された場合やユーザの手によって移動させられている場合等、全く予期せぬ位置にある場合も想定され、そのような状態でキャリッジを突き当て位置近傍まで高速に移動させようとすると、高速移動中にキャリッジが突き当たって大きな衝突音が発生したり、記録ヘッドへ大きな衝撃を与えてしまったりする可能性があった。
【0008】
本発明は、このような状況に鑑み成されたものであり、その課題は、突き当て位置からホームポジションを検出するキャリッジ駆動制御において、キャリッジを突き当て部へ突き当てる際に大きな衝突音が発生したり記録ヘッドに大きな衝撃を与えたりすることを防止しつつ、突き当て位置に基づくホームポジション検出時間を短縮することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を達成するため、本発明の第1の態様は、所定方向へ往復動可能に配設されたキャリッジを往復可動範囲の任意の位置へ移動させるべく駆動力源の駆動力を前記キャリッジへ伝達する駆動力伝達手段と、前記キャリッジの移動量を検出するキャリッジ移動量検出手段と、前記往復可動範囲の一端側近傍の所定位置に設定されたホームポジション近傍に前記キャリッジが停止している状態で、前記キャリッジの移動を任意にロック可能な構成を有するキャリッジロック手段と、前記キャリッジが突き当たった状態で前記往復可動範囲の他端側における前記キャリッジの移動限界位置を規定する突き当て部と、ホームポジションを基点とした前記キャリッジの移動量に基づく前記駆動力源の駆動制御による前記キャリッジの移動制御、及びホームポジションにおける前記キャリッジの前記キャリッジロック手段によるロック/ロック解除の切換制御を実行する制御装置とを備えたキャリッジ駆動装置であって、前記制御装置は、前記キャリッジを前記突き当て部に突き当たるまで移動させ、前記キャリッジが前記突き当て部に突き当たっている状態から、前記突き当て部とホームポジションとの距離に相当する既定移動量αだけ前記キャリッジをホームポジション側へ移動させることによって、前記キャリッジをホームポジションに停止させる動作を含むホームポジション検出手段を有し、前記ホームポジション検出手段によるホームポジションの検出を実行する前に、前記キャリッジロック手段をロック状態に制御してから一定の移動速度以下で既定移動量βの前記キャリッジの移動を試み、実際の前記キャリッジの移動量が既定移動量β未満であった場合には、前記キャリッジがホームポジション近傍で前記キャリッジロック手段によってロックされている状態と判定し、前記キャリッジロック手段をロック解除状態に制御して、前記突き当て部に突き当たる直前まで高速で前記キャリッジを移動させた後、移動速度を一定の速度以下に減速してから前記突き当て部に突き当たるまでさらに前記キャリッジを移動させ、実際の前記キャリッジの移動量が既定移動量βであった場合には、前記キャリッジがホームポジション近傍以外の不特定位置にある状態と判定し、前記キャリッジロック手段をロック解除状態に制御して、移動開始から前記突き当て部に突き当たるまで一定の移動速度以下で前記キャリッジを前記突き当て部側へ移動させる、ことを特徴としたキャリッジ駆動装置である。
【0010】
キャリッジのホームポジションを検出するに際しては、まず、キャリッジを突き当て部に突き当たるまで移動させる。次にキャリッジが突き当て部に突き当たっている状態から、既定移動量αだけキャリッジをホームポジション側へ移動させることによって、キャリッジを正確にホームポジションに停止させる。既定移動量αは、突き当て部からホームポジションまでの距離に相当する移動量であり、キャリッジ駆動装置の突き当て部からホームポジションまでの距離に応じてあらかじめ設定される移動量である。
【0011】
このホームポジション検出手段によるホームポジションの検出を実行する必要が生じる場合としては、キャリッジ駆動装置の電源ON時等の初期化動作時と、キャリッジ駆動制御中にキャリッジの往復可動範囲に何らかの障害が発生してキャリッジ駆動制御が物理的に中断された場合等とに大別される。例えば、キャリッジ駆動装置を備えた液体噴射装置の一例としてのインクジェット式記録装置等においては、装置の電源OFF操作がされると、キャリッジをホームポジションに移動させ、キャリッジが移動時の振動等によりホームポジション近傍から動いてしまわないようにキャリッジロック手段によってロックし、かつホームポジション近傍に配置された封止手段(キャッピング装置等)によって、記録ヘッドのヘッド面が乾燥してしまうのを防止すべく記録ヘッドのヘッド面の封止状態を保持した状態で電源OFF状態へ移行するようになっているのが一般的である。
【0012】
したがって、電源ON時の初期化動作時には、キャリッジは、キャリッジロック手段によってロックされている状態で必ずホームポジション近傍に存在することになる。そのため、キャリッジの停止位置から突き当て部までの距離が略一定に定まるので、ホームポジションの検出動作の実行時間を短縮するべく高速にキャリッジを突き当て部近傍まで移動させた後、一定の移動速度以下(大きな衝突音が発生したり、キャリッジに搭載されている記録ヘッドに大きな衝撃が加わってしまったりする虞のない程度に充分な低速)に減速してからキャリッジを突き当て部に突き当てることができる。
【0013】
一方、キャリッジ駆動制御中にキャリッジの往復可動範囲に何らかの障害が発生してキャリッジ駆動制御が物理的に中断された等の場合には、キャリッジの位置が特定できない状態となる可能性が高い。このような状態では、ホームポジションの検出動作の実行時間を短縮するべく高速にキャリッジを突き当て部近傍まで移動させようとしてもキャリッジが不特定位置に停止しているため、キャリッジの高速移動中にキャリッジが突き当て部に突き当たって大きな衝突音が発生したり、キャリッジに搭載されている記録ヘッドに大きな衝撃が加わってしまったりする虞がある。
【0014】
そこで、ホームポジションの検出を実行すべくキャリッジを突き当て部に突き当たるまで移動させる前に、キャリッジがホームポジション近傍に停止しているか否かを判定するために、キャリッジロック手段をロック状態に制御してから一定の移動速度以下で(キャリッジロック手段を破損しない程度に充分な低速で)既定移動量βのキャリッジの移動を試みる。尚、既定移動量βは、キャリッジがホームポジション近傍に位置している状態でキャリッジを移動させた際に、ロック制御状態のキャリッジロック手段の係止部にキャリッジが当接するのに充分な搬送量に設定される。
【0015】
そして、実際のキャリッジの移動量が既定移動量β未満であった場合には、キャリッジがホームポジション近傍でキャリッジロック手段によってロックされている状態と判定する。つまり、キャリッジロック手段をロック状態に制御して、既定移動量βのキャリッジの移動を試み、キャリッジの実際の移動量がそれに満たない場合には、キャリッジはキャリッジロック手段によってロックされて移動できない状態であり、すなわちキャリッジがキャリッジロック手段によってロック可能なホームポジション近傍に停止していると判定することができる。この場合には、キャリッジロック手段をロック解除状態にしてから、突き当て部に突き当たる直前まで高速でキャリッジを移動させた後、移動速度を一定の速度以下一定の移動速度(大きな衝突音が発生したり、キャリッジに搭載されている記録ヘッドに大きな衝撃が加わってしまったりする虞のない程度に充分な低速)に減速してから突き当て部に突き当たるまでさらにキャリッジを移動させる。
【0016】
一方、実際のキャリッジの移動量が既定移動量βであった場合には、キャリッジがホームポジション近傍以外の不特定位置にある状態と判定する。つまり、キャリッジロック手段をロック状態に制御して既定移動量βのキャリッジの移動を試み、キャリッジの実際の移動量が既定移動量βだった場合には、キャリッジはキャリッジロック手段によってロックされておらず、突き当て部側へ移動可能な状態であり、すなわちキャリッジがホームポジション近傍以外のキャリッジロック手段によってロックすることができない不特定位置に停止していると判定することができる。この場合には、キャリッジの停止位置が特定できないので、キャリッジロック手段をロック解除状態に制御した後、移動開始から突き当て部に突き当たるまで一定の移動速度以下(大きな衝突音が発生したり、キャリッジに搭載されている記録ヘッドに大きな衝撃が加わってしまったりする虞のない程度に充分な低速)でキャリッジを移動させる。
【0017】
このように、キャリッジを突き当て部に突き当たるまで移動させる前に、キャリッジロック手段をロック状態に制御して既定移動量βのキャリッジの移動を試み、既定移動量βのキャリッジ駆動制御に対する実際のキャリッジの移動量からキャリッジがホームポジション近傍に位置しているか否かを判定する。そして、キャリッジを突き当て部に突き当たるまで移動させる際には、そのキャリッジの停止位置に応じたキャリッジ駆動制御を実行する。それによって、ホームポジションの検出動作時におけるキャリッジの停止位置がホームポジション近傍に位置しているか否かに関わらず、突き当て位置からホームポジションを検出するキャリッジ駆動制御において、キャリッジを突き当て部へ突き当てる際に大きな衝突音が発生したり記録ヘッドに大きな衝撃を与えたりすることを防止することができるという作用効果が得られる。
また、キャリッジがホームポジション近傍に停止している場合には、高速にキャリッジを突き当て部近傍まで移動させた後、充分な低速でキャリッジを突き当て部に突き当てることによって、突き当て位置に基づくホームポジション検出時間を短縮することができるという作用効果が得られる。
【0018】
本発明の第2の態様は、前述した第1の態様において、前記制御装置は、前記ホームポジション検出手段によるホームポジションの検出を実行する前に、前記キャリッジがホームポジション近傍で前記キャリッジロック手段によってロックされている状態と判定した際には、前記キャリッジロック手段をロック解除状態に制御した後、前記突き当て部に突き当たる直前まで高速で前記キャリッジを移動させる前に、一定の移動速度以下で既定移動量γの前記キャリッジの移動を試み、実際の前記キャリッジの移動量が既定移動量γ未満であった場合には、前記キャリッジロック手段により前記キャリッジがロックされたままの状態であると判定し、前記駆動力源の駆動制御を停止してエラーを出力する、ことを特徴としたキャリッジ駆動装置である。
【0019】
このように、キャリッジロック手段をロック解除状態に制御した後、突き当て部に突き当たる直前まで高速でキャリッジを移動させる前に、再度一定の移動速度以下で(キャリッジロック手段を破損しない程度に充分な低速で)既定移動量γのキャリッジの移動を試みる。そして、実際のキャリッジの移動量が既定移動量γ未満であった場合には、キャリッジロック手段をロック解除制御したにも関わらず、何らかの要因でキャリッジロック手段にキャリッジがロックされたままとなっている可能性があると判定することができる。したがって、そのような場合には、駆動力源の駆動制御を停止してエラーを出力する。それによって、キャリッジがキャリッジロック手段にロックされたままの状態でキャリッジを高速移動させてキャリッジロック手段を破損してしまうことを防止することができる。尚、既定移動量γは、キャリッジロック手段をロック解除制御したにも関わらず、キャリッジロック手段がロック状態のままとなってしまっている状態で、キャリッジがキャリッジロック手段の係止部に当接するのに充分な移動量に設定される。
【0020】
本発明の第3の態様は、前述した第1の態様又は第2の態様において、前記制御装置は、前記ホームポジション検出手段によるホームポジションの検出を実行する前に、前記キャリッジがホームポジション近傍以外の不特定位置にある状態と判定し、前記キャリッジロック手段をロック解除状態に制御して、移動開始から前記突き当て部に突き当たるまで一定の移動速度以下で前記キャリッジを前記突き当て部側へ移動させる際には、移動開始からの前記キャリッジの移動量が、前記往復可動範囲において前記キャリッジが前記突き当て部から最も遠い位置ある状態から前記突き当て部まで移動した場合の移動量に相当する既定移動量δを超えた時点で、前記駆動力源の駆動制御を停止してエラーを出力する、ことを特徴としたキャリッジ駆動装置である。
【0021】
このように、移動開始から突き当て部に突き当たるまで一定の移動速度以下でキャリッジを移動させる際に、移動開始からのキャリッジの移動量が既定移動量δ(往復可動範囲においてキャリッジが突き当て部から最も遠い位置ある状態から突き当て部まで移動した場合の移動量に相当する移動量)を超えた場合には、例えば、キャリッジ移動量検出手段や駆動力源等に何らかの異常が発生している可能性があるので、駆動力源の駆動制御を停止してエラーを出力する。それによって、キャリッジ移動量検出手段や駆動力源等の異常を早期に検出することができる。
【0022】
本発明の第4の態様は、前述した第1の態様〜第3の態様のいずれかにおいて、前記制御装置は、前記ホームポジション検出手段によるホームポジションの検出を実行する前に、前記キャリッジがホームポジション近傍以外の不特定位置にある状態と判定し、前記キャリッジロック手段をロック解除状態に制御して、移動開始から前記突き当て部に突き当たるまで一定の移動速度以下で前記キャリッジを前記突き当て部側へ移動させた後、ホームポジション側へ既定移動量εの前記キャリッジの移動を試み、実際の前記キャリッジの移動量が既定移動量ε未満であった場合には、前記キャリッジの往復可動範囲に障害物があると判定し、前記駆動力源の駆動制御を停止してエラーを出力する、ことを特徴としたキャリッジ駆動装置である。
【0023】
このように、移動開始から突き当て部に突き当たるまで一定の移動速度以下でキャリッジを突き当て部側へ移動させた後、ホームポジション側へ既定移動量εのキャリッジの移動を試みる。そして、実際のキャリッジの移動量が既定移動量ε未満であった場合には、キャリッジの往復可動範囲に何らかの障害物があると判定し、駆動力源の駆動制御を停止してエラーを出力する。キャリッジを突き当て部に突き当たるまで移動させた状態であるからキャリッジの往復可動範囲に障害物等が存在している可能性は低いと考えられるが、念のため障害物の有無を確認する。それによって、キャリッジの往復可動範囲に障害物が存在することによるホームポジションの誤検出等を防止することができる。尚、既定移動量εは、小さくすれば、障害物の検知範囲は狭くなるが検知時間を短縮することができ、大きくすれば、障害物の検知範囲を広くすることができるが検知時間は長くなることになる。
【0024】
本発明の第5の態様は、被噴射材に液体を噴射する液体噴射ヘッドを搭載し、主走査方向に往復動可能に配設された前記キャリッジと、副走査方向へ被噴射材を副走査方向へ所定の搬送量で搬送する搬送手段と、前述した第1の態様〜第4の態様のいずれかに記載のキャリッジ駆動装置とを備えた液体噴射装置である。
【0025】
本発明の第5の態様に記載の液体噴射装置によれば、被噴射材に液体を噴射する液体噴射ヘッドを搭載し、主走査方向に往復動可能に配設されたキャリッジを備えた液体噴射装置において、前述した第1の態様〜第4の態様のいずれかに記載の発明による作用効果を得ることができる。
【0026】
本発明の第6の態様は、所定方向へ往復動可能に配設されたキャリッジを往復可動範囲の任意の位置へ移動させるべく駆動力源の駆動力を前記キャリッジへ伝達する駆動力伝達手段と、前記キャリッジの移動量を検出するキャリッジ移動量検出手段と、前記往復可動範囲の一端側近傍の所定位置に設定されたホームポジション近傍に前記キャリッジが停止している状態で、前記キャリッジの移動を任意にロック可能な構成を有するキャリッジロック手段と、前記キャリッジが突き当たった状態で前記往復可動範囲の他端側における前記キャリッジの移動限界位置を規定する突き当て部とを備えたキャリッジ駆動装置のホームポジションを基点とした前記キャリッジの移動量に基づく前記駆動力源の駆動制御による前記キャリッジの移動制御、及びホームポジションにおける前記キャリッジの前記キャリッジロック手段によるロック/ロック解除の切換制御を実行する制御をコンピュータに実行させるためのキャリッジ駆動制御プログラムであって、前記キャリッジを前記突き当て部に突き当たるまで移動させ、前記キャリッジが前記突き当て部に突き当たっている状態から、前記突き当て部とホームポジションとの距離に相当する既定移動量αだけ前記キャリッジをホームポジション側へ移動させることによって、前記キャリッジをホームポジションに停止させる動作を含むホームポジション検出手順と、前記ホームポジション検出手順によるホームポジションの検出を実行する前に、前記キャリッジロック手段をロック状態に制御してから一定の移動速度以下で既定移動量βの前記キャリッジの移動を試みる手順と、実際の前記キャリッジの移動量が既定移動量β未満であった場合には、前記キャリッジがホームポジション近傍で前記キャリッジロック手段によってロックされている状態と判定し、前記キャリッジロック手段をロック解除状態に制御して、前記突き当て部に突き当たる直前まで高速で前記キャリッジを移動させた後、移動速度を一定の速度以下に減速してから前記突き当て部に突き当たるまでさらに前記キャリッジを移動させる手順と、実際の前記キャリッジの移動量が既定移動量βであった場合には、前記キャリッジがホームポジション近傍以外の不特定位置にある状態と判定し、前記キャリッジロック手段をロック解除状態に制御して、移動開始から前記突き当て部に突き当たるまで一定の移動速度以下で前記キャリッジを前記突き当て部側へ移動させる手順とを有する、ことを特徴としたキャリッジ駆動制御プログラムである。
【0027】
本願発明の第6の態様に記載のキャリッジ駆動制御プログラムによれば、前述した第1の態様に記載の発明と同様の作用効果を得ることができるとともに、このキャリッジ駆動制御プログラムを実行することができる任意のキャリッジ駆動装置に、前述した第1の態様に記載の発明と同様の作用効果をもたらすことができる。
【0028】
本発明の第7の態様は、所定方向へ往復動可能に配設されたキャリッジを往復可動範囲の任意の位置へ移動させるべく駆動力源の駆動力を前記キャリッジへ伝達する駆動力伝達手段と、前記キャリッジの移動量を検出するキャリッジ移動量検出手段と、前記往復可動範囲の一端側近傍の所定位置に設定されたホームポジション近傍に前記キャリッジが停止している状態で、前記キャリッジの移動を任意にロック可能な構成を有するキャリッジロック手段と、前記キャリッジが突き当たった状態で前記往復可動範囲の他端側における前記キャリッジの移動限界位置を規定する突き当て部とを備えたキャリッジ駆動装置の制御方法であって、前記キャリッジを前記突き当て部に突き当たるまで移動させ、前記キャリッジが前記突き当て部に突き当たっている状態から、前記突き当て部とホームポジションとの距離に相当する既定移動量αだけ前記キャリッジをホームポジション側へ移動させることによって、前記キャリッジをホームポジションに停止させる工程を含むホームポジション検出工程と、前記ホームポジション検出工程によるホームポジションの検出を実行する前に、前記キャリッジロック手段をロック状態に制御してから一定の移動速度以下で既定移動量βの前記キャリッジの移動を試みる工程と、実際の前記キャリッジの移動量が既定移動量β未満であった場合には、前記キャリッジがホームポジション近傍で前記キャリッジロック手段によってロックされている状態と判定し、前記キャリッジロック手段をロック解除状態に制御して、前記突き当て部に突き当たる直前まで高速で前記キャリッジを移動させた後、移動速度を一定の速度以下に減速してから前記突き当て部に突き当たるまでさらに前記キャリッジを移動させる工程と、実際の前記キャリッジの移動量が既定移動量βであった場合には、前記キャリッジがホームポジション近傍以外の不特定位置にある状態と判定し、前記キャリッジロック手段をロック解除状態に制御して、移動開始から前記突き当て部に突き当たるまで一定の移動速度以下で前記キャリッジを前記突き当て部側へ移動させる工程とを有する、ことを特徴としたキャリッジ駆動装置の制御方法である。
【0029】
本願発明の第7の態様に記載のキャリッジ駆動装置の制御方法によれば、前述した第1の態様に記載の発明と同様の作用効果を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
まず、本発明に係る「キャリッジ駆動装置」を備えた「液体噴射装置」としてのインクジェット式記録装置1の概略構成について説明する。
【0031】
図1は、インクジェット式記録装置1を示す斜視図であり、図2は、インクジェット式記録装置1からスキャナユニットを外した装置本体の斜視図であり、図3は、同じくインクジェット式記録装置1からスキャナユニットを外した装置本体1の異なる角度の斜視図であり、図4は、インクジェット式記録装置1の要部側面図である。
【0032】
図1に示す如くインクジェット式記録装置1は、プリンタ機能に加えてスキャナ機能を備えるタイプであり、装置本体3と、装置本体3の上面側に位置するスキャナユニット5と、スキャナユニット5の後方側に設けられる給送部7とを備えている。装置本体3は、主としてインクジェット式プリンタの機能、すなわち給送部7から給送された「被噴射材」としての記録紙Pに記録を行う「液体噴射ヘッド」としての記録ヘッド38、記録ヘッド38を支持しながら主走査方向Xに往復移動可能なキャリッジ37を備えている。符号9で示す部材は記録紙Pの排出受け部9を示し、この排出受け部9は、プリンタ機能の使用時に手前側にほぼ90°回動した状態で記録後の記録紙Pを受けるようにして使用する。装置本体3の上面左側には操作パネル11が設けられており、スキャナユニット5を使用したスキャニング機能、装置本体3での記録機能及びスキャニングした画像を記録する機能などがこの操作パネル11で操作可能となっている。
【0033】
スキャナユニット5は回動軸13を中心に上方へ回動することにより開閉可能な蓋体15を備え、蓋体15の下側にはスキャニングを行う際に対象となる印刷物等を載置するガラス載置面(図示せず)が形成されている。更にガラス載置面の下側にはスキャニング装置(図示せず)が設けられている。スキャナユニット5は、それ自体が全体として回動軸17を中心に上方へ回動することで装置本体3の上部が開放し、キャリッジ37等のメンテナンスができるようになっている。図1に示す如く給送部7は、不使用時には蓋体19によって閉鎖されており、蓋体19を図1に示す如く後方側へ回動させることにより給送部7が開放状態となり、また一定角度位置で固定することで記録紙サポート23として機能するようになる。記録紙サポート23には、記録紙Pの幅寸法に合わせてスライド可能にエッジガイド25が設けられている。蓋体19が開放状態にある時、給送部7には給送口27が形成され、記録紙サポート23に積重された記録紙Pが図示しない給送機構により一枚ずつ給送口27から記録ヘッド38による記録実行領域へ給送されるようになっている。
【0034】
給送部7から給送された記録紙Pは、下側の搬送駆動ローラ21と上側の搬送従動ローラ22とに挟持された状態で、副走査方向Yへの精密な搬送動作を受けながら、記録紙Pの搬送方向(副走査方向Y)の下流側に位置する記録ヘッド38側へ搬送される。記録ヘッド38は、キャリッジ37に支持されており、キャリッジ37は記録紙Pの搬送方向(副走査方向Y)に直交する主走査方向Xへ往復運動可能に配設されている。キャリッジ37には、記録ヘッド38から噴射されるインクが充填されたインクカートリッジ(図示せず)が装着される。記録ヘッド38と対向する位置には、案内前部材26に一体に形成されたプラテン24が設けられており、プラテン24は、記録ヘッド38によって記録紙Pに記録を行う際に、記録紙Pを下側から支持する作用を担う。記録ヘッド38とプラテン24の上面との距離PGは、記録紙Pの厚さに応じて適宜調節できる。距離PGが適正に調整されている状態で、記録紙Pは、プラテン24上を滑らかに通過しながら、高品質の記録が行なわれるようになっており、記録ヘッド38で記録された記録紙Pは、排出駆動ローラ91と排出フレーム93に設けられた排出ギザローラ92とに挟持された状態で、排出駆動ローラ91の回転駆動により引き出されて排出される。また排出フレーム93の先端側(搬送方向上流側)であって、記録ヘッド38と排出ギザローラ92との間には、記録紙Pの後端の浮き上がりを規制する押さえローラ28が設けられている。
【0035】
図5は、キャリッジ37近傍を記録装置の背面側から見た斜視図であり、図6は、その拡大斜視図である。図7は、キャリッジロック部材39の斜視図である。
図3に示す如く、キャリッジ37の背面側にはキャリッジ支持部29が形成されており、キャリッジ支持部29は、スライド軸31に対して滑らかに摺動できるように支持されている。装置本体3には、キャリッジ37を往復可動範囲の任意の位置へ移動させるべく「駆動力源」としてのキャリッジ駆動用モータ32が配設されている。また、キャリッジ駆動用モータ32の駆動力をキャリッジ37へ伝達する「駆動力伝達手段」として、キャリッジ駆動用モータ32の出力軸に設けられる駆動プーリ331と、反対側に設けられる従動プーリ332との間に歯付き無端ベルト33が巻回されている。歯付き無端ベルト33は、図3に示す如くキャリッジ支持部29の上面に形成される固定部35においてキャリッジ37に接続されており、キャリッジ駆動用モータ32の正回転(CW回転)又は逆回転(CCW回転)に伴い、歯付き無端ベルト33が時計回り又は反時計回りに周回運動をすることにより、キャリッジ37が主走査方向Xに往復運動する。
【0036】
図2に示す如く、キャリッジ37の「往復可動範囲」の一端側(右側)近傍の所定位置には、キャリッジ37の移動制御位置の基点となるホームポジションHPが設定されている。ホームポジションHPの近傍には、ホームポジションHP近傍にキャリッジ37が待機停止している状態でキャリッジ37の他端側(左側)への移動を任意にロック可能な「キャリッジロック手段」を構成するキャリッジロック部材39及び記録ヘッド38のヘッド面を封止するキャッピング装置4が設けられている。キャリッジロック部材39は、記録紙Pを給送する駆動系の輪列を介して回転駆動する回動軸41に対して摩擦抵抗を有した状態で回動可能に軸支されている。また、キャリッジ37の「往復可動範囲」の他端側(左側)には、キャリッジ37が突き当たった状態で「往復可動範囲」の他端側(左側)におけるキャリッジ37の移動限界位置を規定する突き当て部2が装置本体3のフレームの一部により形成されている。
【0037】
キャリッジロック部材39は、回動軸41にはめ込まれる環状部43と、その直径方向一側に突出させたアーム45の先端に形成された係止片47と、環状部43の直径方向反対側に突出した保持部49と、その内部に設けた付勢手段としてのバネ51と、該バネ51により常時回動軸41の表面に圧接される弾性変形可能な摺接片53(図7参照)とを有している。キャリッジロック部材39は、それ自体に外力が加えられなければ、バネ51で摺接片53が回動軸41の表面に押し付けられることで、摩擦力により回動軸41と一体に回動する。また、係止片47が他の部材に触れて摺接片53と回動軸41表面との摩擦力を上回る力が作用した場合には、環状部43が回動軸41の周りで滑って、回動軸41のみが回動するようになっている。係止片47は、図示の如く略矩形の形状をしており、平坦な当接面55を有する。係止片47のうち、装置本体3の向かって左側へ向いている片には係合作用部57が形成されており、係合作用部57には、図示の如く断面が先細りとなるように係合傾斜面58が形成されている。
【0038】
一方、図5において右側(装置本体3の向かって左側)のキャリッジ支持部29の背面側(図5では手前側に見えている)には、被係止部59が形成されている。被係止部59にキャリッジロック部材39の係止片47が係合した状態で、ホームポジションHPにあるキャリッジ37を移動しないようにロックすることができる。被係止部59には、係止時に係止片47の当接面55と面接触する被当接面61と、被当接面61に隣接した被係合作用部63とが形成されている。被係合作用部63は図6に拡大して示す如く、上下方向に延びる溝部65を有しており、水平断面が鈎状に形成された形態を有する。キャリッジロック部材39の係止片47が被係止部59に係止している状態で溝部65に係合傾斜面58が楔状に嵌まり込むようになっている。すなわち、キャリッジロック部材39の係止片47が被係止部59に係止する場合、まずキャリッジロック部材39が回動軸41とともに回動して、係止片47の当接面55が被係止部59の被当接面61に面接触する。この状態でキャリッジ37が若干移動したとき、被係合作用部63の溝部65内に係合傾斜面58が楔状にしっかり掛かり合うように入り込み、係止片47が被係止部59に対して確実に固定されるようになる。
【0039】
つづいて、本発明に係る「キャリッジ駆動装置」の「制御装置」としての記録制御部100について説明する。
【0040】
図8は、インクジェット記録装置1の概略のブロック図である。
記録制御部100は、システムバスSBを備えており、システムバスSBには、ROM121、RAM122、USBインタフェース機能を実現するUSBコントローラ123、メモリカードインタフェース124、MPU(マイクロプロセッサ)126、I/O127、ヘッドドライバ128、及びスキャナユニット5を制御するスキャナ制御部129がデータ転送可能に接続されている。MPU126では各種処理の演算処理が行われる。ROM121には、MPU126の演算処理に必要なソフトウェア・プログラム及びデータがあらかじめ記憶されている。RAM122は、ソフトウェア・プログラムの一時的な記憶領域、MPU126の作業領域等として使用される。
【0041】
モータドライバ131は、キャリッジ駆動用モータ32を含むインクジェット式記録装置1の各種モータを駆動制御する駆動制御回路である。センサ132は、インクジェット記録装置1の各種状態情報を検出する各センサである。また、装置本体3には、キャリッジ37の移動量を検出する「キャリッジ移動量検出手段」として公知のリニアエンコーダ133が設けられている。I/O127は、MPU126における演算処理結果に基づいて、モータドライバ131に対して出力制御を行うとともに、センサ132が出力する状態情報及びリニアエンコーダ133が出力するキャリッジ37の移動量情報等を入力する。
【0042】
メモリカードインタフェース124は、メモリカードスロット125に挿入されたメモリカードに格納されている画像データの読み出しを実行する。メモリカードインタフェース124を介してメモリカードから読み出された画像データは、MPU126にて実行されるプログラム処理によってRGBデータからYMCデータに色変換された後、2値化処理が行われて2値化されたYMCデータに変換されて記録データが生成される。生成された記録データは、情報処理装置200から記録データを受信した場合と同様にヘッドドライバ128へ転送される。ヘッドドライバ128は、その記録データに基づいて記録ヘッド38を駆動し、記録ヘッド38のヘッド面から各色のインクが記録紙Pの記録面に噴射される。
【0043】
上述したような構成を有する記録制御部100は、センサ132から入力した各部の状態情報、記録紙Pを副走査方向Yへ搬送する搬送駆動ローラ21の回転位置情報、リニアエンコーダ133から入力したキャリッジ37の移動量情報等に基づいて、キャリッジ駆動用モータ32等の各モータを駆動制御することによって、給送部7による記録紙Pの給送、搬送駆動ローラ21の回転による記録紙Pの副走査方向Yへの搬送、ホームポジションHPを基点としたキャリッジ37の主走査方向Xへの移動制御、記録ヘッド38からのインク噴射制御、並びにホームポジションHPに停止しているキャリッジ37の「キャリッジロック手段」によるロック/ロック解除の切換制御等を実行する。
【0044】
つづいて、キャリッジ37の主走査方向Xへの移動制御に際して基点となるホームポジションHPの検出手順について説明する。
ホームポジションHPには、キャリッジ37を検出するためのセンサが設けられていないので、所定のホームポジションHP検出手順によってキャリッジ37をホームポジションHPへ移動させ、その位置を基点としたキャリッジ37の移動方向及び移動量に基づいて、キャリッジ37の移動位置を正確に特定しながらキャリッジ37の駆動制御を実行する。そのため、正常な動作状態においては、少なくともインクジェット式記録装置1の電源ON時の初期化動作時には、必ずホームポジションHPの検出手順を実行する必要がある。また、異常な動作状態としては、キャリッジ37の駆動制御中に記録紙Pの詰まり等によってキャリッジ37の往復可動範囲に何らかの障害が発生してキャリッジ37の駆動制御が物理的に中断された場合等が想定される。このような場合には、キャリッジ駆動用モータ32に対する制御量と実際のキャリッジ37の移動量とに誤差が生じて、正確なキャリッジ37の移動位置を特定できていない可能性があるので、やはり電源ON時の初期化動作時と同様にホームポジションHPの検出手順を実行する必要がある。
【0045】
図9(図9−1〜図9−3)は、ホームポジションHPの検出手順を示したフローチャートである。
まず、キャリッジロック部材39をロック方向へ回動させるキャリッジロック制御を実行する(ステップS1)。キャリッジ37がホームポジションHP近傍に停止している場合には、キャリッジ37の被係止部59にキャリッジロック部材39の係止片47が係止されてキャリッジ37はロックされ、キャリッジ37がホームポジションHP近傍以外の位置に停止している場合には、キャリッジ37はロックされない。
つづいて、キャリッジ37をCW方向へ微速で移動させる(ステップS2)。CW方向とは、キャリッジ駆動用モータ32の正回転によりキャリッジ37が移動する方向であり、キャリッジ37がホームポジションHP側から突き当て部2側へ移動する方向である。また、微速とは、キャリッジ37が突き当て部に突き当たった際に大きな衝突音が発生したり、キャリッジ37に搭載されている記録ヘッド38に大きな衝撃が加わってしまったりする虞のない程度に充分な低速であり、キャリッジロック部材39と係合した状態でキャリッジ37を移動させてもキャリッジロック部材39を破損しない程度に充分な低速であれば良く、以下同様である。そして、移動量42step(既定移動量β)以内にキャリッジ37が何かに当たって停止したか否かを判定する(ステップS3)。つまり、キャリッジ37をCW方向へ微速で移動させるべくキャリッジ駆動用モータ32をCW方向へ回転させ、42stepを超える移動量をリニアエンコーダ133で検出したか否かを判定する。尚、既定移動量βは、キャリッジ37がホームポジションHP近傍に位置している状態でキャリッジ37を突き当て部2側へ移動させた際に、ロック制御状態のキャリッジロック部材39の係止片47にキャリッジが当接するのに充分な搬送量に設定される。
【0046】
移動量42step以内にキャリッジ37が何かに当たって停止しなかった場合には(ステップS3でNo)、つまり、42stepを超える移動量をリニアエンコーダ133で検出した場合には、キャリッジロック部材39によるキャリッジ37のロックがされていない状態であり、キャリッジ37がホームポジションHP近傍以外の不特定位置に停止している状態であると判定する。一方、移動量42step以内にキャリッジ37が何かに当たって停止した場合には(ステップS3でYes)、つまり、リニアエンコーダ133が出力するキャリッジ37の移動量情報が42stepを超える前に変化しなくなった場合には、キャリッジ37の被係止部59にキャリッジロック部材39の係止片47が係止されてキャリッジ37がロックされている状態であると判定する。
【0047】
このように、「キャリッジロック手段」をロック制御した状態でキャリッジ37を微速で移動させると、キャリッジ37の実際の移動量からキャリッジ37がホームポジションHP近傍に停止しているか否かを検出することができる。そして、キャリッジ37がホームポジションHP近傍に停止している状態と、キャリッジ37がホームポジションHP近傍以外の位置に停止している状態と、それぞれの状態に応じた手順を実行する。
【0048】
まず、ステップS3において、キャリッジ37がホームポジションHP近傍以外の位置に停止している状態であると判定した後の手順について説明する。この場合には、キャリッジ37の停止位置を特定することができないため、キャリッジ37を突き当て部2に突き当たるまで微速で移動させることになる。
移動量42step以内にキャリッジ37が何かに当たって停止しなかった場合には(ステップS3でNo)、つづいて、キャリッジ37を停止させ(ステップS4)、CCW方向へキャリッジを30stepだけ微速で移動させた後(ステップS5)、キャリッジロック部材39をロック解除方向へ回動させるキャリッジロック解除制御を実行する(ステップS6)。CCW方向とは、キャリッジ駆動用モータ32の逆回転によりキャリッジ37が移動する方向であり、キャリッジ37が突き当て部2側からホームポジションHP側へ移動する方向である。つづいて、キャリッジ37を再びCW方向へ微速で移動させ(ステップS7)、移動量2600step(既定移動量δ)以内にキャリッジ37が何かに当たって停止したか否かを判定する(ステップS8)。既定移動量δは、キャリッジ37の往復可動範囲においてキャリッジ37が突き当て部2から最も遠い位置ある状態から突き当て部2まで移動した場合の移動量に相当する移動量である。したがって、移動量2600step以内にキャリッジ37が何かに当たって停止しなかった場合には(ステップS8でNo)、リニアエンコーダ133やキャリッジ駆動用モータ32等に何らかの異常が発生している可能性があるので、キャリッジ駆動用モータ32の駆動制御を停止してフェイタルエラーを出力する。
【0049】
一方、移動量2600step以内にキャリッジ37が何かに当たって停止した場合には(ステップS8でYes)、キャリッジ37が突き当て部2に突き当たって停止したと判定し、つづいて、キャリッジ37を再びCCW方向へ微速で移動させ(ステップS9)、移動量60step(既定移動量ε)以内にキャリッジ37が何かに当たって停止したか否かを判定する(ステップS10)。移動量60step以内にキャリッジ37が何かに当たって停止した場合には(ステップS10でYes)、キャリッジ37の往復可動範囲に何らかの障害物があると判定し、キャリッジ駆動用モータ32の駆動制御を停止してフェイタルエラーを出力する。尚、既定移動量εは、小さくすれば、障害物の検知範囲は狭くなるが検知時間を短縮することができ、大きくすれば、障害物の検知範囲を広くすることができるが検知時間は長くなることになる。
そして、移動量60step以内にキャリッジ37が何かに当たって停止しなかった場合には(ステップS10でNo)、キャリッジ37を停止させた後(ステップS11)、ホームポジション決定の本シーケンス(後述)へ移行する(ステップS27)。
【0050】
次に、ステップS3において、キャリッジ37がホームポジションHP近傍に停止している状態であると判定した後の手順について説明する。この場合には、キャリッジ37の略正確な停止位置を特定することができている状態なので、その位置(ホームポジションHP近傍)からキャリッジ37を突き当て部2に突き当たる直前まで高速で移動させた後、そこから微速で突き当て部2に突き当てる。
移動量42step以内にキャリッジ37が何かに当たって停止した場合には(ステップS3でYes)、キャリッジ37の駆動制御を停止した後(ステップS12)、ステップS3におけるキャリッジ37の移動開始から何かに当たって停止するまでの移動量Mが14step以上だったか否かを判定する(ステップS13)。移動量Mが14step以上だった場合には(ステップS13でYes)、キャリッジ37をCCW方向へ微速で移動させ(ステップS14)、移動量Mstep以内にキャリッジ37が何かに当たって停止したか否かを判定する(ステップS15)。移動量Mstep以内にキャリッジ37が何かに当たって停止した場合には(ステップS15でYes)、キャリッジ37の往復可動範囲に何らかの障害物があると判定し、キャリッジ駆動用モータ32の駆動制御を停止してフェイタルエラーを出力する。移動量Mstep以内にキャリッジ37が何かに当たって停止しなかった場合には(ステップS15でNo)、キャリッジ37を停止させ(ステップS18)、キャリッジロック部材39をロック解除方向へ回動させるキャリッジロック解除制御を実行する(ステップS19)。
【0051】
一方、移動量Mが14step未満だった場合には(ステップS13でNo)、キャリッジ37をCCW方向へ微速で移動させ(ステップS16)、移動量20step以内にキャリッジ37が何かに当たって停止したか否かを判定する(ステップS17)。移動量20step以内にキャリッジ37が何かに当たって停止した場合には(ステップS17でYes)、同様にキャリッジ37の往復可動範囲に何らかの障害物があると判定し、キャリッジ駆動用モータ32の駆動制御を停止してフェイタルエラーを出力する。移動量20step以内にキャリッジ37が何かに当たって停止しなかった場合には(ステップS17でNo)、キャリッジ37を停止させ(ステップS18)、キャリッジロック部材39をロック解除方向へ回動させるキャリッジロック解除制御を実行する(ステップS19)。
【0052】
キャリッジロック解除制御を実行した後(ステップS19)、つづいて、キャリッジ37を突き当て部2近傍まで高速で移動させる前に、再びキャリッジ37をCW方向へ微速で移動させ(ステップS20)、124step(既定移動量γ)以内にキャリッジ37が何かに当たって停止したか否かを判定する(ステップS21)。124step以内にキャリッジ37が何かに当たって停止した場合には(ステップS21でYes)、何らかの要因によって、キャリッジロック解除制御を実行したにも関わらず、キャリッジロック部材39をロック解除方向へ回動していない、或いはキャリッジ37が何らかの障害物等に当たっていると判定し、ステップS7へ移行する。
【0053】
尚、既定移動量γは、キャリッジロック部材39の回動位置がロック状態のままとなってしまっている状態で、キャリッジ37の被係止部59にキャリッジロック部材39の係止片47が係合するのに充分な移動量に設定される。また、当該実施例においては、124step以内にキャリッジ37が何かに当たって停止した場合には(ステップS21でYes)ステップS7へ移行しているが、そのままフェイタルエラーとしても良い。それによって、キャリッジ37の被係止部59にキャリッジロック部材39の係止片47が係合したままの状態でキャリッジ37を高速移動させてキャリッジロック部材39を破損してしまうことを防止することができる。或いは、当該実施例のようにステップS7へ移行することによって再度キャリッジ37がキャリッジロック部材39、或いは障害物等に当たっているか否かの判定動作が行われることになり、場合によっては、再度の判定動作によってそれらの要因が解消する可能性もある。
【0054】
そして、124step以内にキャリッジ37が何かに当たって停止しなかった場合には(ステップS21でNo)、キャリッジ37をいったん停止させた後(ステップS22)、移動量を2041stepとしてキャリッジ37を突き当て部2近傍まで高速で移動させる。その際、キャリッジ37をCW方向へ高速で移動させ(ステップS23)、2041step以内にキャリッジ37が何かに当たって停止したか否かを判定する(ステップS24)。この2041ステップは、キャリッジ37をCW方向(突き当て部2側)へ高速で移動させる際の移動開始位置から突き当て部2にキャリッジ37が突き当たる直前の位置までの移動量に相当する。2041step以内にキャリッジ37が何かに当たって停止しなかった場合には(ステップS24でNo)、つまり、キャリッジ37が突き当て部2に突き当たる直前の位置まで移動した時点で、その位置でキャリッジ37を停止させ(ステップS26)、HP(ホームポジション)決定の本シーケンスへ移行する(ステップS27)。
【0055】
HP(ホームポジション)決定の本シーケンスは、基本的には、キャリッジ37を微速でCW方向へ移動させて突き当て部2に突き当て、突き当て部2からホームポジションHPまでの距離に相当する移動量(既定移動量α)だけ、キャリッジ37をCCW方向(ホームポジションHP側)へ高速で移動させることによって、正確なホームポジションHPにキャリッジ37を停止させる手順を含むシーケンスである。
【0056】
尚、本来は、2041step以内にキャリッジ37が突き当て部2に突き当たることはない。しかし、当該実施例においては、突き当て部2に突き当たる直前のギリギリの位置までキャリッジ37を高速移動させるため、極めて確立は低いものの機構的な精度やキャリッジ37の移動開始位置のわずかな誤差等によって、2041step以内にキャリッジ37が突き当て部2に突き当たってしまう可能性がある。そのため、もし2041step以内に突き当て部2にキャリッジ37が高速で突き当たってしまった場合には(ステップS24でYes)、キャリッジ37の位置及び状態が不安定になっている可能性があるので、キャリッジ37を60stepだけCCW方向へ微速で戻して(ステップS25)、キャリッジ37を突き当て部2に突き当たる直前の位置へ戻してからキャリッジ37を停止させ(ステップS26)、HP(ホームポジション)決定の本シーケンスへ移行する(ステップS27)。
【0057】
このように、正確なホームポジションHPにキャリッジ37を移動させるべくキャリッジ37を突き当て部2に突き当たるまで移動させる前に、ホームポジションHP近傍におけるキャリッジロック制御を実行して、キャリッジロック部材39をキャリッジ37の往復可動範囲に進出させる。その状態でキャリッジ37の一定量(既定移動量β)の移動を試み、実際のキャリッジ37の移動量からキャリッジ37がホームポジションHP近傍に位置しているか否かを判定する。そして、上述したように、その判定結果に応じたキャリッジ37の移動制御を実行してキャリッジ37を突き当て部2に突き当たるまで移動させる。それによって、キャリッジ37が突き当て部2に高速で衝突してしまうことを防止しつつ、キャリッジ37を突き当て部2に突き当たるまで移動する際の移動時間を短縮することができる。
【0058】
このようにして、ホームポジションHPを検出する基準となる突き当て部2から正確なホームポジションHPを検出するキャリッジ駆動制御において、キャリッジ37を突き当て部2へ突き当てる際に大きな衝突音が発生したり記録ヘッド38に大きな衝撃を与えたりすることを防止しつつ、突き当て部2に基づくホームポジション検出時間を短縮することができる。
【0059】
尚、本発明は上記実施例に限定されることなく、特許請求の範囲に記載した発明の範囲内で、種々の変形が可能であり、それらも本発明の範囲内に含まれるものであることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明に係るインクジェット式記録装置の斜視図である。
【図2】スキャナユニットを外したインクジェット式記録装置の斜視図である。
【図3】スキャナユニットを外したインクジェット式記録装置の斜視図である。
【図4】インクジェット式記録装置の要部側面図である。
【図5】キャリッジ及びキャリッジロック部材を背面側から見た斜視図である。
【図6】キャリッジロック機構の被係止部と係止片の周辺の拡大斜視図である。
【図7】キャリッジロック部材の斜視図である。
【図8】インクジェット記録装置の概略のブロック図である。
【図9−1】ホームポジションHPの検出手順を示したフローチャートである。
【図9−2】ホームポジションHPの検出手順を示したフローチャートである。
【図9−3】ホームポジションHPの検出手順を示したフローチャートである。
【符号の説明】
【0061】
1 スキャナ付き記録装置、3 装置本体、5 スキャナユニット、7 給送部、9 排出受け部、21 搬送駆動ローラ、22 搬送従動ローラ、23 記録紙サポート、24 プラテン、25 エッジガイド、26 プラテンユニット、27 給送口、28 押さえローラ、29 キャリッジ支持部、31 スライド軸、32 キャリッジ駆動用モータ、33 歯付き無端ベルト、37 キャリッジ、38 記録ヘッド、39 キャリッジロック部材、41 回動軸、43 環状部、45 アーム、47 係止片、49 保持部、51 バネ、53 摺接片、55 当接面、57 係合作用部、58 係合傾斜面、59 被係止部、61 被当接面、63 被係合作用部、65 溝部、91排出駆動ローラ、92 排出従動ローラ、93 排出フレーム、121 ROM、122 RAM、123 USBコントローラ、124 メモリカードインタフェース、125 メモリカードスロット、126 MPU、127 I/O、128 ヘッドドライバ、129 スキャナ制御部、HP ホームポジション、P 記録紙、SB システムバス、X 主走査方向、Y 副走査方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定方向へ往復動可能に配設されたキャリッジを往復可動範囲の任意の位置へ移動させるべく駆動力源の駆動力を前記キャリッジへ伝達する駆動力伝達手段と、前記キャリッジの移動量を検出するキャリッジ移動量検出手段と、前記往復可動範囲の一端側近傍の所定位置に設定されたホームポジション近傍に前記キャリッジが停止している状態で、前記キャリッジの移動を任意にロック可能な構成を有するキャリッジロック手段と、前記キャリッジが突き当たった状態で前記往復可動範囲の他端側における前記キャリッジの移動限界位置を規定する突き当て部と、ホームポジションを基点とした前記キャリッジの移動量に基づく前記駆動力源の駆動制御による前記キャリッジの移動制御、及びホームポジションにおける前記キャリッジの前記キャリッジロック手段によるロック/ロック解除の切換制御を実行する制御装置とを備えたキャリッジ駆動装置であって、
前記制御装置は、前記キャリッジを前記突き当て部に突き当たるまで移動させ、前記キャリッジが前記突き当て部に突き当たっている状態から、前記突き当て部とホームポジションとの距離に相当する既定移動量αだけ前記キャリッジをホームポジション側へ移動させることによって、前記キャリッジをホームポジションに停止させる動作を含むホームポジション検出手段を有し、
前記ホームポジション検出手段によるホームポジションの検出を実行する前に、前記キャリッジロック手段をロック状態に制御してから一定の移動速度以下で既定移動量βの前記キャリッジの移動を試み、
実際の前記キャリッジの移動量が既定移動量β未満であった場合には、前記キャリッジがホームポジション近傍で前記キャリッジロック手段によってロックされている状態と判定し、前記キャリッジロック手段をロック解除状態に制御して、前記突き当て部に突き当たる直前まで高速で前記キャリッジを移動させた後、移動速度を一定の速度以下に減速してから前記突き当て部に突き当たるまでさらに前記キャリッジを移動させ、
実際の前記キャリッジの移動量が既定移動量βであった場合には、前記キャリッジがホームポジション近傍以外の不特定位置にある状態と判定し、前記キャリッジロック手段をロック解除状態に制御して、移動開始から前記突き当て部に突き当たるまで一定の移動速度以下で前記キャリッジを前記突き当て部側へ移動させる、ことを特徴としたキャリッジ駆動装置。
【請求項2】
請求項1において、前記制御装置は、前記ホームポジション検出手段によるホームポジションの検出を実行する前に、前記キャリッジがホームポジション近傍で前記キャリッジロック手段によってロックされている状態と判定した際には、前記キャリッジロック手段をロック解除状態に制御した後、前記突き当て部に突き当たる直前まで高速で前記キャリッジを移動させる前に、一定の移動速度以下で既定移動量γの前記キャリッジの移動を試み、実際の前記キャリッジの移動量が既定移動量γ未満であった場合には、前記キャリッジロック手段により前記キャリッジがロックされたままの状態であると判定し、前記駆動力源の駆動制御を停止してエラーを出力する、ことを特徴としたキャリッジ駆動装置。
【請求項3】
請求項1又は2において、前記制御装置は、前記ホームポジション検出手段によるホームポジションの検出を実行する前に、前記キャリッジがホームポジション近傍以外の不特定位置にある状態と判定し、前記キャリッジロック手段をロック解除状態に制御して、移動開始から前記突き当て部に突き当たるまで一定の移動速度以下で前記キャリッジを前記突き当て部側へ移動させる際には、移動開始からの前記キャリッジの移動量が、前記往復可動範囲において前記キャリッジが前記突き当て部から最も遠い位置ある状態から前記突き当て部まで移動した場合の移動量に相当する既定移動量δを超えた時点で、前記駆動力源の駆動制御を停止してエラーを出力する、ことを特徴としたキャリッジ駆動装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項において、前記制御装置は、前記ホームポジション検出手段によるホームポジションの検出を実行する前に、前記キャリッジがホームポジション近傍以外の不特定位置にある状態と判定し、前記キャリッジロック手段をロック解除状態に制御して、移動開始から前記突き当て部に突き当たるまで一定の移動速度以下で前記キャリッジを前記突き当て部側へ移動させた後、ホームポジション側へ既定移動量εの前記キャリッジの移動を試み、実際の前記キャリッジの移動量が既定移動量ε未満であった場合には、前記キャリッジの往復可動範囲に障害物があると判定し、前記駆動力源の駆動制御を停止してエラーを出力する、ことを特徴としたキャリッジ駆動装置。
【請求項5】
被噴射材に液体を噴射する液体噴射ヘッドを搭載し、主走査方向に往復動可能に配設された前記キャリッジと、副走査方向へ被噴射材を副走査方向へ所定の搬送量で搬送する搬送手段と、請求項1〜4のいずれか1項に記載のキャリッジ駆動装置とを備えた液体噴射装置。
【請求項6】
所定方向へ往復動可能に配設されたキャリッジを往復可動範囲の任意の位置へ移動させるべく駆動力源の駆動力を前記キャリッジへ伝達する駆動力伝達手段と、前記キャリッジの移動量を検出するキャリッジ移動量検出手段と、前記往復可動範囲の一端側近傍の所定位置に設定されたホームポジション近傍に前記キャリッジが停止している状態で、前記キャリッジの移動を任意にロック可能な構成を有するキャリッジロック手段と、前記キャリッジが突き当たった状態で前記往復可動範囲の他端側における前記キャリッジの移動限界位置を規定する突き当て部とを備えたキャリッジ駆動装置のホームポジションを基点とした前記キャリッジの移動量に基づく前記駆動力源の駆動制御による前記キャリッジの移動制御、及びホームポジションにおける前記キャリッジの前記キャリッジロック手段によるロック/ロック解除の切換制御を実行する制御をコンピュータに実行させるためのキャリッジ駆動制御プログラムであって、
前記キャリッジを前記突き当て部に突き当たるまで移動させ、前記キャリッジが前記突き当て部に突き当たっている状態から、前記突き当て部とホームポジションとの距離に相当する既定移動量αだけ前記キャリッジをホームポジション側へ移動させることによって、前記キャリッジをホームポジションに停止させる動作を含むホームポジション検出手順と、
前記ホームポジション検出手順によるホームポジションの検出を実行する前に、前記キャリッジロック手段をロック状態に制御してから一定の移動速度以下で既定移動量βの前記キャリッジの移動を試みる手順と、
実際の前記キャリッジの移動量が既定移動量β未満であった場合には、前記キャリッジがホームポジション近傍で前記キャリッジロック手段によってロックされている状態と判定し、前記キャリッジロック手段をロック解除状態に制御して、前記突き当て部に突き当たる直前まで高速で前記キャリッジを移動させた後、移動速度を一定の速度以下に減速してから前記突き当て部に突き当たるまでさらに前記キャリッジを移動させる手順と、
実際の前記キャリッジの移動量が既定移動量βであった場合には、前記キャリッジがホームポジション近傍以外の不特定位置にある状態と判定し、前記キャリッジロック手段をロック解除状態に制御して、移動開始から前記突き当て部に突き当たるまで一定の移動速度以下で前記キャリッジを前記突き当て部側へ移動させる手順とを有する、ことを特徴としたキャリッジ駆動制御プログラム。
【請求項7】
所定方向へ往復動可能に配設されたキャリッジを往復可動範囲の任意の位置へ移動させるべく駆動力源の駆動力を前記キャリッジへ伝達する駆動力伝達手段と、前記キャリッジの移動量を検出するキャリッジ移動量検出手段と、前記往復可動範囲の一端側近傍の所定位置に設定されたホームポジション近傍に前記キャリッジが停止している状態で、前記キャリッジの移動を任意にロック可能な構成を有するキャリッジロック手段と、前記キャリッジが突き当たった状態で前記往復可動範囲の他端側における前記キャリッジの移動限界位置を規定する突き当て部とを備えたキャリッジ駆動装置の制御方法であって、
前記キャリッジを前記突き当て部に突き当たるまで移動させ、前記キャリッジが前記突き当て部に突き当たっている状態から、前記突き当て部とホームポジションとの距離に相当する既定移動量αだけ前記キャリッジをホームポジション側へ移動させることによって、前記キャリッジをホームポジションに停止させる工程を含むホームポジション検出工程と、
前記ホームポジション検出工程によるホームポジションの検出を実行する前に、前記キャリッジロック手段をロック状態に制御してから一定の移動速度以下で既定移動量βの前記キャリッジの移動を試みる工程と、
実際の前記キャリッジの移動量が既定移動量β未満であった場合には、前記キャリッジがホームポジション近傍で前記キャリッジロック手段によってロックされている状態と判定し、前記キャリッジロック手段をロック解除状態に制御して、前記突き当て部に突き当たる直前まで高速で前記キャリッジを移動させた後、移動速度を一定の速度以下に減速してから前記突き当て部に突き当たるまでさらに前記キャリッジを移動させる工程と、
実際の前記キャリッジの移動量が既定移動量βであった場合には、前記キャリッジがホームポジション近傍以外の不特定位置にある状態と判定し、前記キャリッジロック手段をロック解除状態に制御して、移動開始から前記突き当て部に突き当たるまで一定の移動速度以下で前記キャリッジを前記突き当て部側へ移動させる工程とを有する、ことを特徴としたキャリッジ駆動装置の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9−1】
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【図9−2】
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【図9−3】
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【公開番号】特開2006−15562(P2006−15562A)
【公開日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−194405(P2004−194405)
【出願日】平成16年6月30日(2004.6.30)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】