説明

キレート材再生方法及び基板処理装置

【課題】陰イオン吸着作用を有する吸着材に吸着した塩化物イオンを、アルカリ性水溶液を用いることなく効果的に除去することができるキレート材再生方法及びキレート材再生機能を備えた基板処理装置を提供する。
【解決手段】基板処理装置1は、エッチング液Lが貯留された貯留槽11、エッチング処理を行う基板処理機構12、エッチング液再生装置10などを備えており、エッチング液再生装置10は、金属成分を吸着する吸着塔32,33と、貯留槽11と吸着塔32,33との間でエッチング液Lを循環させる除去処理用循環機構34と、吸着塔32,33に溶離液、洗浄液及び置換液をそれぞれ供給する溶離液供給機構45、洗浄液供給機構55及び置換液供給機構70と、除去処理用循環機構34、溶離液供給機構45、置換液供給機構70などの作動を制御する制御装置28bを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板処理用の処理液中に含まれる金属成分を吸着したキレート材の再生方法及びキレート材再生機能を備えた基板処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
様々な分野に用いられる半導体(シリコン)ウエハ、液晶ガラス基板、フォトマスク用ガラス基板、光ディスク用基板などの各種基板を製造する工程では、これらの基板にエッチング液や現像液、洗浄液といった各種処理液を供給して当該基板を処理する処理工程があり、当該処理工程には、基板処理装置が用いられる。
【0003】
上記基板処理装置は、エッチング液を貯留する貯留槽、エッチング液によって基板にエッチング処理を行う基板処理機構、貯留槽に貯留されたエッチング液を基板処理機構に供給し、供給したエッチング液を当該基板処理機構から回収して、貯留槽と基板処理機構との間でエッチング液を循環させるエッチング液循環機構などを備えており、貯留槽から供給されたエッチング液によって、基板処理機構にて基板にエッチング処理を行い、エッチング処理に用いたエッチング液は、貯留槽に回収されるように構成されていた。
【0004】
このような基板処理装置においては、例えば、金属膜(酸化インジウムスズ膜など)が形成された基板にエッチング液によってエッチング処理を行うことにより、エッチング液には金属膜を構成する金属(インジウムやスズなど)由来の金属成分(インジウムイオンやスズイオンなど)が混入し、この金属成分が混入したエッチング液が貯留槽に回収される。このため、エッチング処理を繰り返すことにより、貯留槽に貯留されたエッチング液中の金属成分濃度は徐々に上昇する。そして、金属成分濃度が一定レベル以上となると、エッチング速度が低下する、或いは、精度の良いエッチング形状が得られなくなるといった不都合が生じていた。
【0005】
したがって、この基板処理装置では、エッチング速度の低下やエッチング形状の悪化を防止するために、金属成分濃度が一定レベルを超えたエッチング液によってエッチング処理を行わないよう貯留槽内のエッチング液を定期的に取り替えなければならず、エッチング液の取り替えなどに費用がかかり、エッチング処理にかかるコストの上昇を避けられなかった。
【0006】
そこで、上記課題を解決するための装置として、本願出願人は、例えば、特開2010−034593号公報に開示された基板処理装置(以下、「従来装置」という)を提案している。この従来装置は、上記基板処理装置の構成に加え、エッチング液を取り替えることなく、金属成分濃度を一定レベル以下に抑えることができるように、エッチング液から金属成分を除去するための除去機構を更に備え、金属成分が除去されたエッチング液を貯留槽に回収するように構成されている。そして、この従来装置は、吸着材としてキレート材が充填され、前記貯留槽から金属成分が混入したエッチング液が流通される吸着塔などからなる吸着機構、吸着材に吸着した金属成分を溶離させる溶離液を吸着塔に供給する溶離液供給機構、吸着材を洗浄する洗浄液を吸着塔内に供給する洗浄液供給機構などからなり、金属成分が混入したエッチング液を吸着塔に流通させて、吸着材に金属成分を吸着させ、金属成分が除去されたエッチング液を貯留槽に回収し、ついで、溶離液を吸着塔に流通させて吸着材に吸着された金属成分を溶離、回収し、その後、吸着材を再利用するために、洗浄液を吸着塔内に流通させて、吸着材を洗浄して再生するように構成される。
【0007】
ところで、上記従来装置においては、溶離液として硫酸水溶液を用いてキレート材に吸着した金属成分を溶離させるようにしており、キレート材の再生には、酸性成分を中和するために、アルカリ性水溶液を洗浄液として用いていた。
【0008】
しかしながら、洗浄液としてアルカリ性水溶液を用いた場合、酸性水溶液である溶離液とアルカリ性水溶液である洗浄液との混合を防止するために供給経路などを厳密に管理する、或いは、洗浄液供給機構をアルカリ性水溶液が供給できる構成とする必要などがあり、装置の複雑化が避けられず、また、アルカリ性水溶液などの原材料によって製造コストが上昇するという問題が生じる。
【0009】
そこで、アルカリ水溶液を用いずに吸着材を再生させる方法として、例えば、特開2008−013795号公報に開示された方法(以下、「従来方法」という)が提案されている。
【0010】
この従来方法は、陰イオン交換樹脂に、シュウ酸含有エッチング液、塩酸水溶液及び水を順次接触させるというものである。具体的には、まず、インジウム成分を含有するシュウ酸含有エッチング液を陰イオン交換樹脂に接触させて、インジウム成分を陰イオン交換樹脂に吸着させる。ついで、インジウム成分が吸着した陰イオン交換樹脂を塩酸水溶液に接触させ、インジウム成分を塩酸水溶液に移行し、インジウム成分を含んだ塩酸水溶液を回収する。しかる後、塩酸水溶液に接触させた陰イオン交換樹脂を水に接触させる。尚、陰イオン交換樹脂、塩酸水溶液及び水は、それぞれ、上記従来装置における吸着材、溶離液及び洗浄液に相当する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2010−034593号公報
【特許文献2】特開2008−013795号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
ところが、本願発明者らは、上記従来方法に準じて、陰イオン吸着作用を有するキレート材(N−メチルグルカミン基を有するキレート繊維)が充填された吸着塔に、金属成分を含んだエッチング液(シュウ酸水溶液)を流通させ、ついで、キレート材に吸着された金属成分を溶離させるための塩酸水溶液を流通させた後、この吸着塔に純水を流通させて残留する塩酸成分を洗い流してキレート材を再生し、しかる後、この再生後のキレート材を用い、金属成分を含んだエッチング液を吸着塔に流通させて当該金属成分を除去する処理を行なうと、当該エッチング液に塩化物イオンが溶離するという問題を見出した。これについて、以下、図6を参照しつつ詳細に説明する。
【0013】
図6は、塩酸水溶液流通後の上記吸着塔に、純水を流通させ(洗浄工程)、ついで、シュウ酸水溶液を流通させ(置換工程)、吸着塔内を流通した後の純水及びシュウ酸水溶液に含まれる塩化物イオンの濃度を連続して測定した結果である。尚、図6において、BV(Bed Volume(ベッドボリューム))とは吸着塔内に充填したキレート材の体積のことであり、(mL)/(mL−fiber)とは、(吸着塔に通液した純水及びシュウ酸水溶液の総量)/(吸着塔内に充填したキレート材の体積)のことである。即ち、横軸はキレート材の体積に相当する量の純水及びシュウ酸水溶液をどれぐらい吸着塔内に流通させたかを示すものである。
【0014】
この図6から分かるように、塩酸水溶液を流通させた後の吸着塔に純水を流通させると、流通初期(BV=0〜2)においては、純水に含まれる塩化物イオンの濃度が徐々に減少している。これは、吸着塔内に残留していた塩酸が、純水とともに吸着塔内から排出され、吸着塔内に残留している塩酸が徐々に減少するためである。しかしながら、それ以降、吸着塔流通後の純水中の塩化物イオン濃度は1000ppm付近で略一定となり、その後、吸着塔にシュウ酸を流通させると、出口液の塩化物イオン濃度は、BV=1前後において約5200ppmに跳ね上がった後、急降下し、BV=3前後には約10ppmに低下、以降BV=8に至るまでこのレベルに推移した。これは、陰イオン吸着作用によってキレート材に吸着された塩化物イオンは純水中に溶離し難いが、シュウ酸水溶液を流通させることによって、塩化物イオンよりもイオン選択性が高いシュウ酸イオンが、塩化物イオンと置き換わるようにキレート材に吸着され、塩化物イオンがシュウ酸水溶液中に溶離するためだと考えられる。
【0015】
このように、キレート材に吸着された金属成分を溶離させるための塩酸水溶液を吸着塔に流通させ、その後、純水を流通させて吸着塔内を洗浄し、しかる後、金属成分を除去するためにシュウ酸を含んだエッチング液をこの吸着塔に流通させると、処理中のエッチング液に塩化物イオンが混入することになる。そして、当該塩化物イオンが混入したエッチング液を用いてエッチング処理を行うと、混入した塩化物イオンがエッチング性能に影響を及ぼし、エッチング不良などが発生するという問題が生じるのである。
【0016】
本発明は、以上の実情に鑑みなされたもので、陰イオン吸着作用を有するキレート材に吸着した塩化物イオンを、アルカリ性水溶液を用いることなく効果的に除去できるキレート材再生方法及びキレート材再生機能を備えた基板処理装置の提供をその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記課題を解決するための本発明は、
陰イオン及び金属成分を吸着する作用を有するキレート材であって、吸着塔の内部に充填され、前記金属成分を含む処理液を該吸着塔に供給し流通させることで前記金属成分を吸着したキレート材を再使用可能な状態に再生する方法において、
前記吸着塔に塩酸水溶液を供給し、前記キレート材に吸着した金属成分を溶離させ、前記吸着塔内を流通した塩酸水溶液を回収する工程と、
前記吸着塔に洗浄液を供給し、吸着塔内に残留する塩酸水溶液を洗い流し、前記吸着塔内を流通した洗浄液を回収する工程と、
前記吸着塔に置換液を供給し、前記キレート材に吸着した塩化物イオンを溶離させ、前記吸着塔内に流通した置換液を回収する工程とを、順次実施するキレート材再生方法に係る。
【0018】
そして、上記のキレート材再生方法は、
貯留槽に貯留された処理液によって基板の処理を行い、基板処理に用いて金属成分が混入した前記処理液を貯留槽に回収し、該金属成分が混入した処理液を、陰イオンおよび金属成分を吸着する作用を有するキレート材が内部に充填された吸着塔に供給してキレート材に金属成分を吸着させるとともに、金属成分が吸着したキレート材を再使用可能な状態に再生するように構成された基板処理装置において、
前記キレート材に吸着された金属成分を溶離させる塩酸水溶液を前記吸着塔に供給する溶離液供給手段と、
前記吸着塔内を流通した溶離液を回収する溶離液回収手段と、
前記吸着塔に洗浄液を供給する洗浄液供給手段と、
前記吸着塔内を流通した洗浄液を回収する洗浄液回収手段と、
前記吸着塔に置換液を供給する置換液供給手段と、
前記吸着塔内を流通した置換液を回収する置換液回収手段と、
前記溶離液供給手段、溶離液回収手段、洗浄液供給手段、洗浄液回収手段、置換液供給手段及び置換液回収手段の作動を制御する制御手段とを備え、
前記制御手段は、
前記溶離液供給手段によって、前記吸着塔内に溶離液を供給し、該吸着塔内を流通した溶離液を、前記溶離液回収手段によって回収する処理と、
前記洗浄液供給手段によって、前記溶離液を流通させた吸着塔内に洗浄液を供給し、該吸着塔内を流通した洗浄液を、前記洗浄液回収手段によって回収する処理と、
前記置換液供給手段によって、前記洗浄液を流通させた吸着塔内に置換液を供給し、該吸着塔内を流通した置換液を、前記置換液回収手段によって回収する処理とを順次実行するように構成されてなる基板処理装置によって、これを好適に実施することができる。
【0019】
この基板処理装置によれば、まず、金属成分が混入した処理液をキレート材が充填された吸着塔に供給し、キレート材に金属成分を吸着させる。ついで、金属成分が吸着したキレート材が充填されている吸着塔に、溶離液供給手段によって塩酸水溶液を流通させ、キレート材に吸着した金属成分を溶離し、金属成分が混入した塩酸水溶液を溶離液回収手段によって回収する。ここで、塩酸水溶液を流通させた後の吸着塔内には塩酸水溶液が残留し、キレート材には塩化物イオンが吸着されている。
【0020】
その後、洗浄液供給手段によって吸着塔内に洗浄液を流通させ、吸着塔内に残留した塩酸水溶液を洗い流し、塩酸を含んだ洗浄液を洗浄液回収手段によって回収する。
【0021】
しかる後、置換液供給手段によって吸着塔内に置換液を流通させることで、キレート材に吸着された塩化物イオンを溶離させ、塩化物イオンを含んだ置換液を置換液回収手段によって回収する。
【0022】
このように、本発明においては、置換液を流通させることにより、キレート材に吸着された塩化物イオンを溶離させ、キレート材から塩化物イオンを効果的に除去した状態で当該キレート材を再生することができる。したがって、再生したキレート材を用いて処理液中の金属成分を除去する際に、処理液中に塩化物イオンが溶離するといった事態が生じるのを防ぐことができ、塩化物イオンが混入した処理液を用いてエッチング処理を行った際に生じるエッチング精度の悪化などを防止できる。また、アルカリ性水溶液による洗浄工程を行う必要もないため、アルカリ性水溶液の供給に対応した供給手段を設ける必要もなく、装置の簡略化を図ることができ、コストの削減も図ることができる。
【0023】
また、前記キレート材はN−メチルグルカミン基を有するキレート材であることが好ましい。
【0024】
N−メチルグルカミン基を有するキレート材は、インジウム成分(インジウムイオン)を吸着する能力が高いため、処理液から効率良くインジウム成分を除去することができる。
【発明の効果】
【0025】
以上のように、本発明に係るキレート材再生方法及びキレート材再生機能を備えた基板処理装置によれば、陰イオン及び金属成分を吸着する作用を有したキレート材に吸着された塩化物イオンを、アルカリ性水溶液を用いることなく効果的に除去してキレート材を再生することができる。そして、この再生されたキレート材を用いて、処理液中の金属成分を除去する際に、塩化物イオンが処理液へ混入するのを防止できる。したがって、エッチング処理を行う際のエッチング不良の発生を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の一実施形態に係る基板処理装置の概略構成を示した構成図である。
【図2】容器に通液した塩酸の量と、容器出口液に含まれるインジウムイオン濃度との関係を示したグラフである。
【図3】容器に通液した洗浄水(純水)の量と、容器出口液に含まれる塩化物イオン濃度との関係を示したグラフである。
【図4】容器に通液した置換液(シュウ酸水溶液)の量と、容器出口液に含まれる塩化物イオン濃度との関係を示したグラフである。
【図5】本発明の他の実施形態に係る基板処理装置の概略構成を示した構成図である。
【図6】塩酸によるインジウム成分溶離後の洗浄水(純水)通液と、これに続く置換液(シュウ酸水溶液)通液過程における各通液量と、容器出口液に含まれる塩化物イオン濃度との関係を連続的に示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の具体的な実施形態につき、図面に基づいて説明する。
【0028】
図1は、本発明の一実施形態に係る基板処理装置の概略構成を示した構成図である。
【0029】
図1に示すように、本例の基板処理装置1は、例えば、シュウ酸濃度が約3.4重量%のエッチング液Lを用いて、上面に酸化インジウムスズ膜(金属膜)が形成された基板Kにエッチング処理を行うものであり、エッチング液Lを貯留する貯留槽11と、エッチング液Lによって基板Kにエッチング処理を行う基板処理機構12と、貯留槽11と基板処理機構12との間でエッチング液Lを循環させるエッチング処理用循環機構20と、基板処理機構12及びエッチング処理用循環機構20の作動を制御する制御装置28aとを備えており、エッチング液再生装置10は、エッチング液Lに溶解したインジウムやスズ(金属)を除去し、回収する除去回収機構30と、当該除去回収装置30の作動を制御する制御装置28bとから構成される。
【0030】
前記基板処理機構12は、閉塞空間を備えた処理チャンバ13と、処理チャンバ13内の下部に配設され、基盤Kを水平に支持して所定方向(矢示方向)に搬送する複数の搬送ローラ14と処理チャンバ13内の上部に配設され、エッチング処理用循環機構20によって供給されたエッチング液Lが流通する流通管15と、流通管15に固設され、搬送ローラ14によって搬送される基板Kの上面に向けてエッチング液Lを吐出する複数のノズル体16などからなり、処理チャンバ13内のエッチング液Lは、当該処理チャンバ13の底面に形成された排出口13aから外部に排出されるようになっている。
【0031】
前記エッチング処理用循環機構20は、一端側が貯留槽11に接続し、他端側が流通管15に接続した供給管21と、制御装置28aによって作動が制御され、供給管21を介して流通管15内にエッチング液Lを供給する供給ポンプ22と、一端側が処理チャンバ13の排出口13aに接続し、他端側が貯留槽11に接続した回収管23などからなる。
【0032】
前記除去回収機構30は、インジウム成分やスズ成分(金属成分(金属イオンや金属イオンを含む錯体など))を吸着する金属成分吸着機構31と、貯留槽11と金属成分吸着機構31との間でエッチング液Lを循環させる除去処理用循環機構34と、金属成分吸着機構31に溶離液を供給する溶離液供給機構45と、金属成分吸着機構31に洗浄液を供給する洗浄液供給機構55と、溶離液及び洗浄液を金属成分吸着機構31から回収する金属成分回収機構60と、金属成分吸着機構31に置換液を供給する置換液供給機構70と、置換液を金属成分吸着機構31から回収する置換液回収機構75とを備える。尚、前記制御装置28b、溶離液供給機構45、洗浄液供給機構55、金属成分回収機構60、置換液供給機構70及び置換液回収機構75が、キレート材再生装置として機能する。
【0033】
前記金属成分吸着機構31は、エッチング処理によってエッチング液Lに溶解し、当該エッチング液Lに含まれるようになったインジウム成分やスズ成分(金属成分)を吸着するためのキレート材(図示せず)が内部に充填された少なくとも2つの吸着塔(第1吸着塔32及び第2吸着塔33)を備える。ここで、キレート材としては、金属成分吸着作用と陰イオン吸着作用とを兼ね備えたものが挙げられ、具体的には、N−メチルグルカミン基を有するキレート繊維が一例として挙げられるが、その形状は繊維形状に限られず、粒状などであっても良い。
【0034】
前記除去処理用循環機構34は、一端側が貯留槽11に接続し、他端側が分岐して各吸着塔32,33に接続したエッチング液供給管35と、制御装置28bによって作動が制御され、エッチング液供給管35を介して各吸着塔32,33の内部にエッチング液Lを供給する供給ポンプ36と、一端側が貯留槽11に接続し、他端側が分岐して各吸着塔32,33に接続したエッチング液回収管37と、エッチング液供給管35の他端側分岐部にそれぞれ設けられた第1供給側切換弁38及び第2供給側切換弁39と、エッチング液回収管37の他端側分岐部にそれぞれ設けられた第1排出側切換弁40及び第2排出側切換弁41などからなる。
【0035】
前記各切換弁38,39,40,41は、その開閉が制御装置28bによって制御されており、第1供給側切換弁38及び第1排出側切換弁40が開いているときには、第2供給側切換弁39及び第2排出側切換弁41が閉じられ、第2供給側切換弁39及び第2排出側切換弁41が開いているときには、第1供給側切換弁38及び第1排出側切換弁40が閉じられる。
【0036】
この除去処理用循環機構34では、供給ポンプ36が駆動されると、エッチング液Lの供給される吸着塔32,33が供給側切換弁38,39により制御され、貯留槽11内のエッチング液Lがエッチング液供給管35を介して吸着塔32,33のいずれか一方に供給される。即ち、第1供給側切換弁38が開き、第2供給側切換弁39が閉じるときには、第1吸着塔32にエッチング液Lが供給され、第1供給側切換弁38が閉じ、第2供給側切換弁39が開いているときには、第2吸着塔33にエッチング液Lが供給される。
【0037】
そして、吸着塔32,33のいずれか一方に供給され、当該吸着塔32,33内を流通したエッチング液Lは、エッチング液回収管37を介して当該吸着塔32,33から貯留槽11内に回収される。
【0038】
前記溶離液供給機構45は、制御装置28bによってその作動が制御され、溶離液としての塩酸水溶液を供給する溶離液供給部46と、一端側が当該溶離液供給部46に接続し、他端側が分岐して各吸着塔32,33に接続した溶離液供給管47と、制御装置28bによって作動が制御され、溶離液供給管47の一端側に設けられた溶離液供給弁48と、溶離液供給管47の他端側分岐部にそれぞれ設けられた第1供給側切換弁49及び第2供給側切換弁50などからなり、前記各切換弁49,50は、第1供給側切換弁49が開いているときには、第2供給側切換弁50が閉じられ、第2供給側切換弁50が開いているときには、第1供給側切換弁49が閉じられる。
【0039】
この溶離液供給機構45では、溶離液供給部46が駆動されると、溶離液の供給される吸着塔32,33が供給側切換弁49,50によって制御され、溶離液供給部46から溶離液供給管47を介して吸着塔32,33のいずれか一方に溶離液が供給される。即ち、第1供給側切換弁49が開き、第2供給側切換弁50が閉じられているときには、第1吸着塔32に溶離液が供給され、第2供給側切換弁50が開き、第1供給側切換弁49が閉じられているときには、第2吸着塔33に溶離液が供給される。尚、溶離液供給弁48は、溶離液供給部46が駆動されると開くようになっている。
【0040】
また、前記洗浄液供給機構55は、純水である洗浄液を供給する洗浄液供給部56と、一端側が洗浄液供給部56に接続し、他端側が前記溶離液供給管47の分岐部と溶離液供給弁48との間に接続して、当該溶離液供給管47を介し各吸着塔32,33に接続した洗浄液供給管57と、制御装置28bによって作動が制御され、洗浄液供給管57の一端側に設けられた洗浄液供給弁58と、前記第1供給側切換弁49及び第2供給側切換弁50などからなり、前記各切換弁49,50は、上記と同様に、第1供給側切換弁49が開いているときには、第2供給側切換弁50が閉じられ、第2供給側切換弁49が開いているときには、第2供給側切換弁50が閉じられる。
【0041】
この洗浄液供給機構55では、前記溶離液供給機構45と同様に、前記第1供給側切換弁49が開き、第2供給側切換弁50が閉じられているときには、洗浄液供給部56から洗浄液供給管57及び溶離液供給管47を介して吸着塔32に洗浄液が供給され、第2供給側切換弁50が開き、第1供給側切換弁49が閉じられているときには、第2吸着塔33に洗浄液が供給される。尚、洗浄液供給弁58は、洗浄液供給部56が駆動されると開かれる。
【0042】
前記金属成分回収機構60は、溶離液及び洗浄液を回収する金属成分回収部61と、一端側が金属成分回収部61に接続し、他端側が分岐して各吸着塔32,33に接続した金属成分回収管62と、制御装置28bによって作動が制御され、金属成分回収管62の一端側に設けられた金属成分回収弁63と、金属成分回収管62の他端部分岐部にそれぞれ設けられた第1排出側切換弁64及び第2排出側切換弁65などからなり、前記各切換弁64,65は、第1排出側切換弁64が開いているときには、第2排出側切換弁65は閉じられるように、第2排出側切換弁65が開いているときには、第1排出側切換弁64が閉じられるように、前記制御装置28bによって制御される。
【0043】
この金属成分回収機構60では、吸着塔32,33内に供給され、当該吸着塔32,33内を流通した溶離液又は洗浄液を、金属成分回収管62を介して当該吸着塔32,33から金属成分回収部61内に回収する。より具体的に言えば、前記制御装置28bによる制御によって、前記第1排出側切換弁64が開かれ、第2排出側切換弁65が閉じているときは、第1吸着塔32内の溶離液又は洗浄液が回収され、第2排出側切換弁65が開かれ、第1排出側切換弁64が閉じられているときは、第2吸着塔33内の溶離液又は洗浄液が回収される。尚、第1供給側切換弁49が開かれているときは、第1排出側切換弁64は開かれ、第2供給側切換弁50が開かれているときには、第2排出側切換弁65が開かれる。
【0044】
前記置換液供給機構70は、制御装置28bによってその作動が制御されており、シュウ酸を含む置換液を供給する置換液供給部71と、一端側が置換液供給部71に接続し、他端側が前記溶離液供給管47の分岐部と溶離液供給弁48との間に接続して、当該溶離液供給管47を介し各吸着塔32,33に接続した置換液供給管72と、制御装置28bによって作動が制御され、置換液供給管72の一端側に設けられた置換液供給弁73と、前記第1供給側切換弁49及び第2供給側切換弁50などからなり、上記と同様に、第1供給側切換弁49が開いているときには、第2供給側切換弁50が閉じられ、第2供給側切換弁50が開いているときには、第2供給側切換弁49が閉じられる。
【0045】
また、前記置換液回収機構75は、置換液を回収する置換液回収部76と、一端側が置換液回収部76に接続され、他端側が前記金属成分回収管62の分岐部と金属成分回収弁63との間に接続し、当該金属成分回収管62を介し各吸着塔32,33に接続した置換液回収管77と、前記第1排出側切換弁64及び第2排出側切換弁65と、制御装置28bによって作動が制御され、置換液回収管77の他端側に設けられた置換液回収弁78などからなり、金属成分回収機構60と同様に、前記各切換弁64,65は、第1排出側切換弁64が開いているときには、第2排出側切換弁65は閉じられるように、第2排出側切換弁65が開いているときには、第1排出側切換弁64が閉じられるように、前記制御装置28bによって制御される。
【0046】
この置換液供給機構70及び置換液回収機構75では、置換液供給部71が駆動されると、置換液の供給される吸着塔32,33が供給側切換弁49,50により制御され、置換液供給部71から置換液供給管72及び溶離液供給管47を介して吸着塔32,33のいずれか一方に供給される。即ち、第1供給側切換弁49が開き、第2供給側切換弁50が閉じているときには、第1吸着塔32に置換液が供給され、第2供給側切換弁50が開き、第1供給側切換弁49が閉じているときは、第2吸着塔33に置換液が供給される。
【0047】
そして、吸着塔32,33のいずれか一方に供給され、当該吸着塔32,33内を流通した置換液は、金属成分回収管62及び置換液回収管77を介して吸着塔32,33から置換液回収部76内に回収される。尚、第1供給側切換弁49が開いているときには、第1排出側切換弁64が開いて、第2排出側切換弁65は閉じており、第2供給側切換弁50が開いているときには、第2排出側切換弁65が開いて、第1排出側切換弁64は閉じるようになっている。また、置換液供給弁73及び置換液回収弁78は、置換液供給部71が駆動されることで開かれる。
【0048】
上述したように、前記基板処理機構12及びエッチング処理用循環機構20は、前記制御装置28aによって制御されており、当該制御装置28aは、基板処理機構12における搬送ローラ14の駆動などを制御し、エッチング処理を実行し、また、エッチング処理用循環機構20の供給ポンプ22を制御して、貯留槽11と基板処理機構12との間でエッチング液Lを循環させる。尚、制御装置28aは、エッチング処理用循環機構20によるエッチング液Lの循環を開始したとき及び終了したときにその旨の信号(開始信号及び終了信号)を前記エッチング液再生装置10の制御装置28bに送信する。
【0049】
前記制御装置28bは、前記除去回収機構30を制御しており、当該制御装置28bは、前記制御装置28aから前記開始信号を受信すると、除去処理用循環機構34の作動を開始し、エッチング液Lの供給される吸着塔32,33をエッチング液Lが所定量供給されるごとに交互に切り換え、当該吸着塔32,33のいずれか一方に貯留槽11内のエッチング液Lを供給して循環させる処理を実行する。
【0050】
更に、前記制御装置28bは、溶離液供給機構45、洗浄液供給機構55、金属成分回収機構60、置換液供給機構70及び置換液回収機構75の作動を制御し、エッチング液Lの供給を停止したいずれか一方の吸着塔32,33に溶離液、洗浄液及び置換液を順次所定量供給し、前記吸着塔内を流通した各液をそれぞれ回収する処理を実行する。尚、制御装置28bは、前記基板処理装置12の制御装置28aから前記終了信号を受信すると、除去処理用循環機構34によるエッチング液Lの循環を停止する。
【0051】
以上のように構成された本例の基板処理装置1によって、金属成分除去処理及びキレート材再生処理を実行する態様について、以下詳細に説明する。
【0052】
本例の基板処理装置1においては、制御装置28aによる制御の下、エッチング処理用循環機構20の供給ポンプ22よって、貯留槽11に貯留されたエッチング液Lが供給管21及び流通管15を介して各ノズル体16に供給され、搬送ローラ14によって所定方向に搬送されている基板Kの上面に向けて、各ノズル体16からエッチング液Lが吐出され、基板Kにエッチング処理が行われる。そして、基板Kの上面に吐出されたエッチング液Lは、処理チャンバ13の排出口13aから回収管23内を流通して貯留槽11内に回収される。つまり、貯留槽11内のエッチング液Lは当該貯留槽11と基板処理機構12との間を循環する。ここで、基板Kにエッチング処理を行うことにより酸化インジウムスズ膜は、吐出されたエッチング液Lに溶解するため、当該エッチング液Lにはインジウム成分やスズ成分が混入し、このエッチング液Lが貯留槽11内に回収されることで、貯留槽11内に貯留されるエッチング液L中にもインジウム成分やスズ成分が混入する。
【0053】
そこで、上記エッチング処理と並行して、貯留槽11内に貯留されるエッチング液L中に含まれるインジウム成分やスズ成分を除去する金属成分除去処理を行う。
【0054】
まず、制御装置28bによって、除去処理用循環機構34の供給ポンプ36を駆動させるとともに、前記第1供給側切換弁38及び第1排出側切換弁40を開き、第2供給側切換弁39及び第2排出側切換弁41を閉じ、貯留槽11に貯留されたエッチング液Lを、エッチング液供給管35を介して第1吸着塔32に供給し、当該第1吸着塔32内を流通させ、エッチング液回収管37を介して貯留槽11に回収する。これにより、エッチング液L中のインジウム成分やスズ成分が、第1吸着塔32の内部に充填されたキレート材によって吸着される。
【0055】
第1吸着塔32にエッチング液Lを所定量供給した後、前記第1供給側切換弁38及び第1排出側切換弁40を閉じて、第1吸着塔32へのエッチング液Lの供給を停止する一方、第2供給側切換弁39及び第2供給側切換弁41を開いて、エッチング液Lを第2吸着塔33に供給する。これにより、第2吸着塔33内のキレート材によってインジウム成分やスズ成分が吸着され、これらがエッチング液L中から除去される。
【0056】
このようにして、第1吸着塔32と第2吸着塔33に対し、交番的にエッチング液Lを供給して、当該エッチング液Lからインジウム成分及びスズ成分を除去する。
【0057】
他方、エッチング液Lを所定量供給し、キレート材にインジウム成分やスズ成分が吸着した前記第1吸着塔32,第2吸着塔33については、エッチング液Lの供給が停止されている間に、吸着されたインジウム成分やスズ成分を溶離,回収して、当該キレート材を再生するキレート材再生処理を行う。
【0058】
即ち、例えば、第1吸着塔32内のキレート材を再生する場合、まず、前記制御装置28bによって、前記溶離液供給部46を駆動させるとともに、溶離液供給弁48、第1供給側切換弁49、第1排出側切換弁64及び金属成分回収弁63を開き、第2供給側切換弁50及び第2排出側切換弁65を閉じ、第1吸着塔32に溶離液供給部46から溶離液供給管47を介して溶離液(塩酸水溶液)を供給し、当該溶離液を第1吸着塔32内に流通させ、金属成分回収管62を介して金属成分回収部61に回収する。これにより、当該第1吸着塔32に充填されているキレート材に吸着されたインジウム成分やスズ成分がこの溶離液によって溶離し、溶離したインジウム成分やスズ成分を含む溶離液が金属成分回収部61内に回収され、キレート材には塩化物イオンが吸着する。そして、前記第1吸着塔32に溶離液を所定量供給した後、溶離液供給部46を停止させ、第1吸着塔32への溶離液の供給を停止する。尚、インジウム成分とスズ成分とを吸着したキレート材に溶離液を供給する場合、スズ成分の方がインジウム成分よりも遅く溶離してくるため、第1吸着塔32に供給する溶離液の量は、スズ成分を十分に溶離させる量であれば良い。
【0059】
ついで、前記制御装置28bによって、洗浄液供給部56を駆動させるとともに、洗浄液供給弁58を開き、第1吸着塔32に洗浄液供給部56から洗浄液供給管57及び溶離液供給管47を介して洗浄液(純水)を供給し、当該洗浄液を第1吸着塔32内に流通させ、金属成分回収管62を介して金属成分回収部61に回収する。これにより、当該第1吸着塔32内に残留する溶離液は洗い流される。そして、洗浄液を所定量供給した後、洗浄液供給部56を停止させ、洗浄液の供給を停止するとともに、前記金属成分回収弁63を閉じる。
【0060】
しかる後、前記制御装置28bによって、置換液供給部71を駆動させるとともに、置換液供給弁73及び置換液回収弁78を開き、置換液供給部71から置換液供給管72及び溶離液供給管47を介して置換液(シュウ酸水溶液)を第1吸着塔32に供給し、当該第1吸着塔32内を流通させ、金属成分回収管62及び置換液回収管77を介して置換液回収部76に回収する。これにより、溶離液に含まれる塩酸に由来し、第1吸着塔32内のキレート材に吸着された塩化物イオンは、置換液に含まれるシュウ酸由来のシュウ酸イオンに置換されて当該置換液中に溶離し、当該置換液とともに回収され、第1吸着塔32内から除去される。
【0061】
このようにして、エッチング液Lの供給が停止された第1吸着塔32に溶離液、洗浄液及び置換液を順次供給して、当該第1吸着塔32内のキレート材を再生する。
【0062】
一方、前記第2吸着塔33内のキレート材を再生する場合、上記と同様に以下のごとくしてこれを行なう。即ち、前記制御装置28bによって、前記溶離液供給部46を駆動させるとともに、溶離液供給弁48、第2供給側切換弁50、第2排出側切換弁65及び金属成分回収弁63を開き、第1供給側切換弁49及び第1排出側切換弁64を閉じ、第2吸着塔33に溶離液供給部46から溶離液供給管47を介して溶離液(塩酸水溶液)を所定量供給し、当該溶離液を第2吸着塔33内に流通させ、金属成分回収管62を介して金属成分回収部61に回収する。
【0063】
ついで、前記制御装置28bによって、洗浄液供給部56を駆動させるとともに、洗浄液供給弁58を開き、第2吸着塔33に洗浄液供給部56から洗浄液供給管57及び溶離液供給管47を介して洗浄液(純水)を所定量供給し、当該洗浄液を第2吸着塔33内に流通させ、金属成分回収管62を介して金属成分回収部61に回収する。
【0064】
この後、前記制御装置28bによって、置換液供給部71を駆動させるとともに、置換液供給弁73及び置換液回収弁78を開き、置換液供給部71から置換液供給管72及び溶離液供給管47を介して置換液(シュウ酸水溶液)を第2吸着塔33に所定量供給し、当該第2吸着塔33内を流通させ、金属成分回収管62及び置換液回収管77を介して置換液回収部76に回収する。
【0065】
このようにして、第2吸着塔33に溶離液、洗浄液及び置換液を順次供給して、当該第2吸着塔33内のキレート材を再生する。
【0066】
斯くして、本例の基板処理装置1及びエッチング液再生装置10は、基板処理機構12で基板Kをエッチングしている間、除去処理用循環機構34により貯留槽11内のエッチング液Lを、エッチング液Lを供給する吸着塔32,33を交互に切り換えながら吸着塔32,33のいずれか一方との間で常に循環させ、エッチング液L中のインジウム成分やスズ成分を当該吸着塔32,33内に充填されたキレート材に吸着させる。また、これとともに、エッチング液Lを供給する吸着塔32,33を切り換えた後、溶離液供給機構45により、エッチング液Lの供給が停止された吸着塔32,33に溶離液を供給して、キレート材に吸着されたインジウム成分やスズ成分を溶離させ、当該キレート材から金属成分を除去する処理と、洗浄液供給機構55により、溶離液流通後の吸着塔32,33に洗浄液を供給して、吸着塔32,33内に残留する塩酸を洗い流す処理と、置換液供給機構70により、洗浄液流通後の吸着塔32,33に置換液を供給し、吸着塔32,33内に充填されたキレート材に吸着している塩化物イオンを、シュウ酸イオンに置換して、残存する塩化物イオンを除去する処理とを実行する。
【0067】
このように、本例の基板処理装置1及びエッチング液再生装置10によれば、エッチング処理中、常に、エッチング液L中のインジウム成分及びスズ成分を除去するようにしているので、エッチング液L中のインジウム成分及びスズ成分の濃度を一定レベル以下に抑えることができる。
【0068】
更に、エッチング液Lに含まれるインジウム成分やスズ成分を吸着したキレート材から当該インジウム成分やスズ成分を溶離させる際に、キレート材に吸着した塩化物イオンを、エッチング液Lと同成分の置換液を用いて効果的に除去して、キレート材を再生するようにしており、再生後のキレート材にはシュウ酸イオンが吸着され、吸着塔32,33内がシュウ酸水溶液環境となっているため、吸着塔32,33と貯留槽11との間を循環するエッチング液Lへと塩化物イオンが混入してしまうといった事態の発生を防ぐことができ、ひいては、基板Kのエッチング不良の発生を防止できる。
【0069】
因みに、キレート材として、キレスト株式会社製の「キレストファイバーGRY−L(商品名)」を用いて行った試験結果を以下に説明する。
【0070】
まず、内径が30cmの円筒容器を用意し、この円筒容器の内部に、高さ70.8cm、体積50Lとなるように前記キレート材15kgを充填した後、キレート材にインジウム成分を飽和状態に達するまで吸着させた。
【0071】
ついで、前記容器に流速3.3L/minにて6BVの3.6重量%塩酸水溶液を流通し、容器から排出された溶液に含まれるインジウムの濃度を測定した。測定結果は図2に示す。尚、図2における(mL)/(mL−fiber)とは、(容器内に通液した塩酸水溶液の量)/(容器内に充填したキレート材の体積)である。
【0072】
この図2から、キレート材に吸着されたインジウムが塩酸によって溶離し、また、3.6重量%塩酸水溶液の通液量が所定量(キレート材の体積量の約2.2倍に相当する量)に達すると、キレート材に吸着されたインジウムが完全に溶離していることが分かる。
【0073】
ついで、インジウムを溶離させたキレート材を内包する容器に流速4.2L/minにて5BVの洗浄水(純水)を流通し、容器から排出された溶液の塩化物イオン濃度を測定して、キレート材に残留する塩化物イオンの洗浄水(純水)による溶離性について検討した。塩化物イオン濃度の測定結果を図3に示す。
【0074】
この図3から、1BVの洗浄水(純水)を流通させた時点では、前段階で用いた塩酸水溶液が容器内に残存しており、容器から排出された溶液中の塩化物イオン濃度は約13000ppmと高い値を示しているが、2BV流通させた時点では、1000ppmに低下していることが分かる。しかしながら、これ以降、洗浄水(純水)の流通量が5BVに至るまで塩化物イオン濃度の低下は見られず、1000ppm付近を略横ばいで推移した。即ち、洗浄水(純水)通液においては、キレート材に残留する塩化物イオンが無視できない程度に長時間に渡り放出され、キレート材の再生に時間を要する。尚、図3における(mL)/(mL−fiber)とは、(容器内に通液した洗浄水(純水)の量)/(容器内に充填したキレート材の体積)である。
【0075】
また、再生されたキレート材はシュウ酸エッチング液環境下におかれて再使用されることになる。シュウ酸液環境に置換する際に、キレート材に残留している塩化物イオンが離脱し液側に移行する可能性もある。
【0076】
そこで、上記洗浄水(純水)を流通させた容器内にシュウ酸濃度がエッチング液と同濃度であるシュウ酸水溶液を流速1.5L/minにて流通させ、容器から排出された溶液中の塩化物イオン濃度を測定した。その測定結果を図4に示す。尚、図4における(mL)/(mL−fiber)とは、(容器内に通液したシュウ酸水溶液の量)/(容器内に充填したキレート材の体積)である。
【0077】
この図4から、容器内に1BVのシュウ酸水溶液を流通させた時点で、容器から排出される溶液中の塩化物イオン濃度が約5200ppmに跳ね上がった後、2BV流通させた時点で約1000ppmまで低下し、3BV流通させた時点では約10ppmと十分に低い濃度まで低下した。これ以降、シュウ酸水溶液を8BVまで通液しても10ppm付近を略横ばいで推移した。
【0078】
したがって、シュウ酸液環境に置き換える過程で3〜4BVのシュウ酸水溶液を容器内に流通させることにより、キレート材に残存していた塩化物イオンを効果的に追い出すことができ、キレート材の再生を完結させることができる。尚、容器から排出されるシュウ酸水溶液中の塩化物イオン濃度が、100ppm以下であればプロセスに影響が及ばないとされている。
【0079】
このことより、インジウム成分を吸着したN−メチルグルカミン基を有するキレート材は、塩酸による溶離の後、洗浄水(純水)による洗浄を経て、シュウ酸通液によるキレート材に残留する塩化物イオンの追い出しが可能となり、従来適用していたアルカリ薬液を使用せずに次の要領、即ち、
(1)3.6重量%塩酸水溶液2.5〜6BVによる金属成分の溶離
(2)洗浄水(純水)2〜5BVによる洗浄
(3)3.4%シュウ酸水溶液3〜5BVによる残留塩化物イオンの追出
によってキレート材の再生を行うことが可能となった。
【0080】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明の採り得る具体的な態様は、何らこれに限定されるものではない。
【0081】
例えば、上例においては、溶液(エッチング液、溶離液、洗浄液及び置換液)の供給量を基に、吸着塔内に供給する溶液の種類を切り換える構成としているが、例えば、所定時間ごとに溶液の種類を切り換えるよう構成しても良く、また、吸着塔内を流通した液体中の対象物(インジウムイオンや塩化物イオンなど)濃度を検出する濃度センサなどを設け、当該濃度センサなどの検出結果を基に吸着塔内に供給する溶液の種類を切り換える構成としても良い。
【0082】
具体的に言えば、濃度センサなどの検出結果を基に吸着塔内に供給する溶液を切り換える場合、例えば、溶離液が吸着塔内に供給されているならば、濃度センサによって溶離液に含まれる金属成分(インジウム成分やスズ成分)の濃度を検出し、当該検出結果を基に吸着塔内に供給する溶液を溶離液から洗浄液へと切り換える。
【0083】
また、上例では、置換液供給部71を設け、当該置換液供給部71からシュウ酸を含んだ置換液を吸着塔32,33に供給するよう構成しているが、例えば、図5に示すように、置換液供給部71を設けず、貯留槽11に貯留されたエッチング液Lを置換液として用いるようにしても良い。
【0084】
この場合、例えば、前記第1吸着塔32によって、前記金属成分除去処理が実行されており、第2吸着塔33内に充填されたキレート材を再生する際に、洗浄液が流通された後、供給ポンプ36を駆動させるとともに、第2供給側切換弁39及び第2排出側切換弁65を開き、第2吸着塔33にエッチング液Lを流通させ、当該第2吸着塔33内を流通したエッチング液Lを前記置換液回収部76に回収する。これにより、置換液を流通させた場合と同様に、前記キレート材に吸着した塩化物イオンを効果的に溶離させることができる。
【0085】
更に、上例では、洗浄液供給機構55によって吸着塔32,33内に供給された洗浄液を、金属成分回収機構60によって回収するように構成しているが、洗浄液を回収するための洗浄液回収機構を設け、当該洗浄液回収機構によって吸着塔32,33内を流通した洗浄液を回収するようにしても良い。
【0086】
このようにすれば、金属成分回収機構60の金属成分回収部61内のインジウム成分やスズ成分の濃度の低下を抑えることができ、インジウム成分やスズ成分からインジウムやスズを再生する処理を効率良く行うことができる。
【0087】
また、本例においては、エッチング液L(シュウ酸水溶液)を通液することでインジウム成分を吸着したキレート材が充填された吸着塔32,33内に、洗浄液を通液し、吸着塔32,33内を流通した洗浄液を置換液回収部76に回収し、その後、溶離液を通液するするようにしても良い。このようすれば、吸着塔32,33内に残留する有機化合物であるシュウ酸が置換液回収部76に回収されるため、その後に通液する溶離液にシュウ酸が含有するのを防止でき、有機性排水と無機系排水とを厳格に区別して回収することができる。
【0088】
尚、本例においては、塩酸水溶液の濃度を3.6重量%としているが、塩酸水溶液の濃度はこれに限られるものではなく、適宜設定すればよい。また、シュウ酸水溶液の濃度を3.4重量%としているが、シュウ酸水溶液の濃度はこれに限られるものではなく、エッチング工程などを考慮して、適切な濃度に設定すれば良い。
【符号の説明】
【0089】
1 基板処理装置
11 貯留槽
12 基板処理機構
20 エッチング処理用循環機構
24 濃度センサ
25 濃度調整機構
28 制御装置
28a 制御装置
28b 制御装置
30 除去回収機構
31 金属成分吸着機構
32 第1吸着塔
33 第2吸着塔
34 除去処理用循環機構
35 エッチング液供給管
36 供給ポンプ
37 エッチング液回収管
38,39 供給側切換弁
40,41 排出側切換弁
45 溶離液供給機構
46 溶離液供給部
47 溶離液供給管
48 溶離液供給弁
49,50 供給側切換弁
55 洗浄液供給機構
56 洗浄液供給部
57 洗浄液供給管
58 洗浄液供給弁
60 金属成分回収機構
61 金属成分回収部
62 金属成分回収管
63 金属成分回収弁
64,65 排出側切換弁
70 置換液供給機構
71 置換液供給部
72 置換液供給管
73 置換液供給弁
75 置換液回収機構
76 置換液回収部
77 置換液回収管
78 置換液回収弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
陰イオン及び金属成分を吸着する作用を有するキレート材であって、吸着塔の内部に充填され、前記金属成分を含む処理液を該吸着塔に供給し、流通させることで金属成分の吸着された前記キレート材を再使用可能な状態に再生する方法において、
前記吸着塔に塩酸水溶液を供給し、前記キレート材に吸着した金属成分を溶離させ、前記吸着塔内を流通した塩酸水溶液を回収する工程と、
前記吸着塔に洗浄液を供給し、吸着塔内に残留する塩酸水溶液を洗い流し、前記吸着塔内を流通した洗浄液を回収する工程と、
前記吸着塔に置換液を供給し、前記キレート材に吸着した塩化物イオンを溶離させ、前記吸着塔内に流通した置換液を回収する工程とを、順次実施することを特徴とするキレート材再生方法。
【請求項2】
前記キレート材がN−メチルグルカミン基を有するキレート材であることを特徴とする請求項1記載のキレート材再生方法。
【請求項3】
貯留槽に貯留された処理液によって基板の処理を行い、基板処理に用いて金属成分が混入した前記処理液を貯留槽に回収し、該金属成分が混入した処理液を、陰イオンおよび金属成分を吸着する作用を有するキレート材が内部に充填された吸着塔に供給してキレート材に金属成分を吸着させるとともに、金属成分が吸着したキレート材を再使用可能な状態に再生するように構成された基板処理装置において、
前記キレート材に吸着された金属成分を溶離させる塩酸水溶液を前記吸着塔に供給する溶離液供給手段と、
前記吸着塔内を流通した溶離液を回収する溶離液回収手段と、
前記吸着塔に洗浄液を供給する洗浄液供給手段と、
前記吸着塔内を流通した洗浄液を回収する洗浄液回収手段と、
前記吸着塔に置換液を供給する置換液供給手段と、
前記吸着塔内を流通した置換液を回収する置換液回収手段と、
前記溶離液供給手段、溶離液回収手段、洗浄液供給手段、洗浄液回収手段、置換液供給手段及び置換液回収手段の作動を制御する制御手段とを備え、
前記制御手段は、
前記溶離液供給手段によって、前記吸着塔内に溶離液を供給し、該吸着塔内を流通した溶離液を、前記溶離液回収手段によって回収する処理と、
前記洗浄液供給手段によって、前記溶離液を流通させた吸着塔内に洗浄液を供給し、該吸着塔内を流通した洗浄液を、前記洗浄液回収手段によって回収する処理と、
前記置換液供給手段によって、前記洗浄液を流通させた吸着塔内に置換液を供給し、該吸着塔内を流通した置換液を、前記置換液回収手段によって回収する処理とを順次実行するように構成されてなることを特徴とする基板処理装置。
【請求項4】
前記キレート材がN−メチルグルカミン基を有するキレート材であることを特徴とする請求項3記載の基板処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−51305(P2013−51305A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−188296(P2011−188296)
【出願日】平成23年8月31日(2011.8.31)
【出願人】(000183369)住友精密工業株式会社 (336)
【Fターム(参考)】