キースイッチ装置及びキーボード
【課題】キートップを案内支持するギアリンク型リンク部材を備えたキースイッチ装置において、脱離力に抗してキートップとリンク部材との適正な相互連結を維持する。
【解決手段】キースイッチ装置は、キートップ14に取り付けられて、一対のリンク部材16を回動可能に支持するリンク支持部材34を備える。一対のリンク部材16は、それぞれの一端領域に、互いに歯車状に噛合する歯と、リンク支持部材34に回動可能に連結される一対の回動支軸46とを備える。リンク支持部材34は、一対のリンク部材16のそれぞれの回動支軸46を受容する二対の軸受穴36を備える。各軸受穴36は、周縁に切欠きを有さない貫通穴として形成される。キートップ14の内面には、リンク支持部材34に着脱可能に係合してリンク支持部材34を内面の所定位置に固定的に保持する複数の爪が設けられる。
【解決手段】キースイッチ装置は、キートップ14に取り付けられて、一対のリンク部材16を回動可能に支持するリンク支持部材34を備える。一対のリンク部材16は、それぞれの一端領域に、互いに歯車状に噛合する歯と、リンク支持部材34に回動可能に連結される一対の回動支軸46とを備える。リンク支持部材34は、一対のリンク部材16のそれぞれの回動支軸46を受容する二対の軸受穴36を備える。各軸受穴36は、周縁に切欠きを有さない貫通穴として形成される。キートップ14の内面には、リンク支持部材34に着脱可能に係合してリンク支持部材34を内面の所定位置に固定的に保持する複数の爪が設けられる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、打鍵操作されるキースイッチ装置に関し、特に、電子機器の入力装置であるキーボードに搭載されるキースイッチ装置に関する。さらに本発明は、そのようなキースイッチ装置を複数個備えたキーボードに関する。
【背景技術】
【0002】
ノート型やパームトップ型のパーソナルコンピュータ等の携帯型電子機器に装備される薄型すなわち低背型のキーボードにおいては、打鍵操作されるキースイッチ装置の低背化を促進しつつ、その操作性及び構造信頼性を向上させることが要求されている。一般に、低背型キーボードに使用できるキースイッチ装置は、基部と、基部の上方に配置されるキートップと、互いに連動してキートップを基部に対し昇降方向(すなわち実質的鉛直方向)へ案内支持する一対のリンク部材と、キートップの昇降動作に対応して開閉する接点部を有するスイッチ部材と、キートップに上昇方向への弾性付勢力(すなわち初期位置復帰力)を加える付勢部材とを備えて構成される。キートップは、一対のリンク部材が互いに連動することにより、基部に対して実質的鉛直方向へ、所定の姿勢を保持しつつ昇降動作できる。
【0003】
この種のキースイッチ装置では従来、一対のリンク部材として、側面視逆V字状に組み合わされてそれらの一端領域で互いに歯車状に噛み合わされるいわゆるギアリンク形式のもの(例えば特許文献1参照)や、側面視X字状に組み合わされてそれらの交点で互いに回動可能又は摺動可能に連結されるいわゆるパンタグラフ形式のもの(例えば特許文献2参照)等が採用されている。また、スイッチ部材としては、開閉可能な接点部を構成する一対の接点を、互いに対向させてそれぞれに担持する一対のフレキシブル回路基板を有するシート状スイッチ(本願でメンブレンスイッチシートと称する)が、広く採用されている。
【0004】
上記構成を有するキースイッチ装置では、一対のリンク部材が、互いに連動可能に組み合わされた状態で、基部及びキートップの双方に可動式に組み付けられる。例えば、上記特許文献1に開示されるキースイッチ装置では、各リンク部材は、その第1端領域に、基部に摺動可能に係合する摺動支軸を有するとともに、第1端の反対側の第2端領域に、キートップに回動可能に連結される回動支軸と、リンク部材同士で歯車状に噛合する歯とを有する。これに対応して、基部には、各リンク部材の摺動支軸を受容する案内溝を有する摺動支持部が設けられ、キートップには、各リンク部材の回動支軸を受容する軸受穴を有する回動支持部が設けられる。
【0005】
特許文献1のキースイッチ装置を組み立てる際には、一対のリンク部材を、両者の歯同士が噛合した状態で、それぞれの摺動支軸を基部の摺動支持部の案内溝に挿入して、基部上に平置き状態(つまり逆V字を成す両部材が一平面上に拡開した状態)で配置する。そして、平置き状態の両リンク部材の上からキートップを押し付けて、個々のリンク部材の回動支軸を、キートップの対応の回動支持部の軸受穴に嵌着する。このような組付手法を可能にするために、キートップの回動支持部には、その外縁から軸受穴に至る切欠きが形成される。キートップの組付時には、回動支持部の切欠きにリンク部材の回動支軸を受容することで回動支持部を弾性的に拡張し、さらにキートップを両リンク部材に押し付けることにより、回動支軸を軸受穴にスナップ式に嵌着する。
【0006】
他方、上記特許文献2に開示されるキースイッチ装置では、一対のリンク部材は、それぞれの中央領域で相対回動可能に相互連結され、第1のリンク部材が、その第1端領域に、基部に摺動可能に係合する摺動支軸を有するとともに、第1端の反対側の第2端領域に、キートップに回動可能に連結される回動支軸を有し、第2のリンク部材が、その第1端領域に、基部に回動可能に連結される回動支軸を有するとともに、第1端の反対側の第2端領域に、キートップに摺動可能に係合する摺動支軸を有する。これに対応して、基部には、第1のリンク部材の摺動支軸を受容する案内溝を有する摺動支持部と、第2のリンク部材の回動支軸を受容する軸受溝を有する回動支持部とが設けられ、キートップには、第1のリンク部材の回動支軸を受容する軸受溝を有する回動支持部が設けられる。
【0007】
さらに、特許文献2のキースイッチ装置は、キートップの内面に取り付けられるアクチュエータ部材を備える。アクチュエータ部材は、第1のリンク部材の回動支軸を補助的に受容する軸受溝を有する回動支持部と、第2のリンク部材の摺動支軸を受容する案内溝を有する摺動支持部とを備える。このような構成により、第1及び第2のリンク部材からキートップを脱離する力がキートップに加わったときに、その力が分散して、個々の回動支持部及び摺動支持部に生じ得る損傷が軽減される。
【0008】
【特許文献1】特開2003−031067号公報
【特許文献2】特開2002−334627号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
前述した特許文献1に記載されるキースイッチ装置では、一対のリンク部材に対するキートップの組付作業性を向上させるために、キートップの回動支持部には、その外縁から軸受穴に至る切欠きが形成される。この切欠きは、リンク部材の回動支軸を軸受穴に容易にスナップ式に嵌着できるようにするためのものであるが、その存在により、キートップがリンク部材から外れ易くなることが懸念される。
【0010】
特に、ギアリンク式のリンク部材を有するキースイッチ装置では、キートップの外縁に、キートップを基部から引き離すような外力が加わったときに、力点(キートップ外縁)と支点(力点から遠い側の回動支持部)との距離に対する支点と作用点(力点に近い側の回動支持部)との距離の比が比較的小さいので、作用点に生じる力(すなわち力点に近い側の回動支持部をリンク部材の回動支軸から脱離させる力)が比較的大きくなる。その結果、回動支軸が切欠きを押し拡げながら軸受穴から離脱して、キートップがリンク部材から外れてしまう懸念がある。また、そのような比較的大きな作用力に起因して、回動支持部が損傷することも危惧される。
【0011】
これに対し、前述した特許文献2に記載されるキースイッチ装置では、キートップの内面に取り付けたアクチュエータ部材の存在により、第1及び第2のリンク部材からキートップを脱離する力がキートップに加わったときに、回動支持部及び摺動支持部に生じ得る損傷が軽減されるようになっている。しかし、そもそも特許文献2のパンタグラフ型リンク部材の構成では、一対のリンク部材をそれぞれに可動支持するキートップ上の支持部(回動支持部及び摺動支持部)の間の距離が、特許文献1のギアリンク型リンク部材に関するキートップ上の支持部(一対の回動支持部)の間の距離よりもかなり大きいので、前述したような、キートップの外縁にキートップを基部から引き離すような外力が加わったときの、作用点(回動支持部又は摺動支持部)に生じる脱離力は、ギアリンク型リンク部材で想定される脱離力よりもかなり小さくなる。
【0012】
そのため、特許文献2のキースイッチ装置では、キートップに設けた回動支持部は、第1のリンク部材の回動支軸を仮保持的に受容する軸受溝を有するものであり、アクチュエータ部材の回動支持部もやはり、その直接的回動支持部の仮保持機能を補助する軸受溝を有するものとなっている。このような構成では、ギアリンク型リンク部材で想定されるような大きな脱離力が生じた場合に、やはりキートップがリンク部材から外れてしまう懸念がある。
【0013】
本発明の目的は、キートップを基部に対し昇降方向へ案内支持する一対のギアリンク型のリンク部材を備えたキースイッチ装置において、キートップをリンク部材から脱離する力がキートップに加わったときに、そのような力に抗してキートップとリンク部材との適正な相互連結形態を維持できるとともに、キートップに設けた回動支持部の損傷を防止できるキースイッチ装置を提供することにある。
本発明の他の目的は、上記したようなキースイッチ装置を複数個備えた、低背型で操作性及び構造信頼性に優れたキーボードを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、基部と、基部の上方に配置されるキートップと、互いに連動してキートップを基部に対し昇降方向へ案内支持する一対のリンク部材と、キートップの昇降動作に対応して開閉する接点部を有するスイッチ部材とを具備するキースイッチ装置において、キートップに取り付けられ、一対のリンク部材を回動可能に支持するリンク支持部材を具備し、一対のリンク部材は、それぞれの一端領域に、互いに歯車状に噛合する歯と、リンク支持部材に回動可能に連結される一対の回動支軸とを備え、リンク支持部材は、一対のリンク部材のそれぞれの回動支軸を受容する二対の軸受穴を備え、それら軸受穴の各々が、周縁に切欠きを有さない貫通穴として形成されていること、を特徴とするキースイッチ装置を提供する。
【0015】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のキースイッチ装置において、リンク支持部材は、主板部分と、主板部分の一対の縁に沿って互いに略平行に立設される一対の対向壁部分とを備え、対向壁部分の各々に、2個の軸受穴が形成され、主板部分は、一対のリンク部材の各々の一対の回動支軸を、一対の対向壁部分に設けた対応の軸受穴に受容できるようにするための弾性を有する、キースイッチ装置を提供する。
【0016】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載のキースイッチ装置において、キートップは、操作面と、操作面の反対側の内面とを有し、内面に、リンク支持部材に着脱可能に係合してリンク支持部材を内面の所定位置に固定的に保持する爪が設けられる、キースイッチ装置を提供する。
【0017】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載のキースイッチ装置において、キートップは、一対のリンク部材の各々の回動軸線に直交する方向へ互いに対向する位置に、互いに協働してリンク支持部材を固定的に保持する一組の爪を有する、キースイッチ装置を提供する。
【0018】
請求項5に記載の発明は、請求項3又は4に記載のキースイッチ装置において、キートップは、一対のリンク部材の各々の回動軸線に平行な方向へ互いに対向する位置に、互いに協働してリンク支持部材を固定的に保持する一組の爪を有する、キースイッチ装置を提供する。
【0019】
請求項6に記載の発明は、請求項1〜5のいずれか1項に記載のキースイッチ装置を複数個、配列して構成されるキーボードを提供する。
【発明の効果】
【0020】
請求項1に記載の発明によれば、キートップに設けた切欠き付きの軸受穴にリンク部材の回動支軸を連結する従来のキースイッチ装置に比べて、リンク部材の回動支軸が、切欠きを有さないリンク支持部材の軸受穴に、脱落を確実に防止しつつ一層安定して支持される。したがって、例えばキートップの外縁に、キートップを基部から引き離すような外力が加わったときにも、リンク支持部材の軸受穴からリンク部材の回動支軸が外れてしまうことを確実に防止できる。また、そのような外力が過大であった場合には、リンク支持部材がキートップから外れることで、リンク支持部材の損傷を回避できる。その結果、キースイッチ装置は、予期しないキートップの脱落を回避可能な、操作性及び構造信頼性に優れたものとなる。
【0021】
請求項2に記載の発明によれば、各リンク部材の一対の回動支軸をリンク支持部材の対応の軸受穴に、安全かつ容易に嵌入できるので、キースイッチ装置の組立作業性が向上する。
【0022】
請求項3〜5のいずれか1項に記載の発明によれば、リンク支持部材をキートップに容易に取り付けることができ、しかも、爪の位置や個数を適宜選定することにより、リンク支持部材からのキートップの脱離、或いはそれに伴う爪の損傷を、効果的に防止できる。
【0023】
請求項6に記載の発明によれば、低背型で操作性及び構造信頼性に優れたキーボードが提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態を詳細に説明する。全図面に渡り、対応する構成要素には共通の参照符号を付す。
図面を参照すると、図1は本発明の一実施形態によるキースイッチ装置10の分解斜視図、図2はキースイッチ装置10の非操作時の組立断面図、図3及び図4はキースイッチ装置10の各種構成部品の拡大図、図5はキースイッチ装置10の打鍵操作時の組立断面図である。キースイッチ装置10は、ノート型やパームトップ型のパーソナルコンピュータ等の携帯型電子機器に装備される薄型すなわち低背型のキーボードに、好適に適用できるものである。
【0025】
図1及び図2に示すように、キースイッチ装置10は、基部12と、基部12の上方に配置されるキートップ14と、互いに連動してキートップ14を基部12に対し昇降方向(すなわち実質的鉛直方向)へ案内支持する一対のリンク部材16と、キートップ14の昇降動作に対応して開閉する電気回路の接点部18を有するスイッチ部材20と、キートップ14に上昇方向への弾性付勢力(すなわち初期位置復帰力)を加える付勢部材22とを備える。キートップ14は、一対のリンク部材16が互いに連動することにより、基部12に対して鉛直方向へ、所定の姿勢を保持しつつ昇降動作できる。
【0026】
基部12は、例えば板金材料からなる独立した金属薄板やキースイッチ装置10を組み込んだキーボードの樹脂製下部パネルのような、キースイッチ装置10の構造上の基礎となる剛性を有する平板状の第1支持板24と、第1支持板24の上に配置され、例えば樹脂材料の一体成形品からなる枠状の第2支持板26とを備える。第2支持板26は、キートップ14によって実質的に遮蔽される略矩形の開口部28を備え、開口部28を画定する一組の対向内周縁に沿って、一対の摺動支持部30が、リンク摺動方向(図2で左右方向)ヘ相互離間して設けられる。各摺動支持部30は、第2支持板26の上面26aから開口部28の上方へ庇状に延長される壁部分30aを有し、この壁部分30aの長手方向両端の内側に、上面26aに略平行に延びる案内溝32がそれぞれ形成される。各摺動支持部30に設けた一対の案内溝32は、各リンク部材16の後述する第1端(すなわち下端)領域を摺動可能に受容する。
【0027】
なお、基部12は、上記構成に代えて、第2支持板26を省略し、第1支持板24が直接的に両リンク部材16を案内支持する構成とすることもできる。この場合、第1支持板24の上面24aに、各リンク部材16の第1端(下端)領域を摺動式に案内する案内孔を有する摺動支持部(図示せず)が、上記摺動支持部30の代わりに設けられる。また、後述するように、基部12に、キートップ14に設けられる文字や符号等の記号領域をキー内側から照らすための発光構造を設けることもできる。
【0028】
キートップ14は、例えば樹脂材料の一体成形品からなる平面視で略矩形の皿状部材であり、オペレータによって打鍵操作される操作面14aを有するとともに、操作面の反対側の内面14bに、各リンク部材16の後述する第2端(すなわち上端)領域を回動可能に支持するリンク支持部材34が取り付けられる。図3に示すように、リンク支持部材34には、一対のリンク部材16のそれぞれの第2端領域に設けた支軸(後述する)を受容する二対の軸受穴(すなわち回動支持部)36が設けられる。リンク支持部材34は、それら二対の軸受穴36がリンク摺動方向(図2で左右方向)ヘ相互離間するように方向付けされて、キートップ14の内面14bに固定的に設置される。リンク支持部材34のさらなる詳細については、後述する。
【0029】
なお、キートップ14は、上記構成に代えて、リンク支持部材34を省略し、内面14bが直接的に両リンク部材16に連結される構成とすることもできる。この場合、キートップ14の内面14bに、各リンク部材16の第2端(上端)領域を回動可能に受容する回動支持部(図示せず)が、上記軸受穴36の代わりに形成される。
【0030】
一対のリンク部材16は、互いに同一の形状及び寸法を有し、それらの一端で互いに歯車状に連結されて側面視逆V字形態を呈し得るように組み合わされる。各リンク部材16は、例えば樹脂材料の一体成形品からなり、図4に示すように、互いに略平行に延びる一対の腕38、40と、それら腕38、40を互いに連結する胴42とを一体に備える。なお図示実施形態では、各リンク部材16において、胴42を含む両腕38、40の端部領域をリンク部材16の第1端(すなわち下端)領域と定義し、胴42から延長される両腕38、40の先端領域をリンク部材16の第2端(すなわち上端)領域と定義する。
【0031】
各リンク部材16の第1端領域には、両腕38、40の互いに離反する外側面から胴42とは反対側へ、一対の摺動支軸44が互いに同軸状に突設される。また、各リンク部材16の第2端領域には、両腕38、40の外側面から摺動支軸44と同一側へ、一対の回動支軸46が互いに同軸状に突設される。摺動支軸44及び回動支軸46は、いずれも円柱形状を有する。さらに、各リンク部材16の一方の腕38には、回動支軸46に近接する第2端領域の先端面に1枚の歯48が設けられ、他方の腕40には、回動支軸46に近接する第2端領域の先端面に2枚の歯50が設けられる。
【0032】
各リンク部材16は、第1端領域の一対の摺動支軸44を、基部12の第2支持板26に設けた摺動支持部30の対応の案内溝32に摺動可能に嵌入し、かつ第2端領域の一対の回動支軸46を、キートップ14のリンク支持部材34に設けた対応の軸受穴36に回動可能に嵌入して、基部12とキートップ14との間に配置される。このとき一対のリンク部材16は、それぞれの一方の腕38の1枚の歯48と、それぞれの他方の腕40の2枚の歯50とが、互いに噛み合わされて連動構造を成し、それにより、両腕38、40の回動支軸46が規定するそれぞれの回動軸線52(図1)を中心として、互いに連動して回動できるようになっている。
【0033】
したがってキートップ14は、一対のリンク部材16がそれぞれの回動軸線52(つまり回動支軸46と軸受穴36との回動係合点)を中心に同期して反対方向へ揺動するとともに、それぞれの第1端領域が基部12の対応の摺動支持部30による案内作用下(つまり摺動支軸44と案内溝32との摺動係合下)で略水平方向へ摺動することにより、基部12に対し略鉛直方向へ、操作面14aを基部12(第2支持板26)の上面26aに略平行に配置した所定の略水平姿勢を保持しつつ平行移動する。キートップ14の打鍵ストローク(すなわち昇降動作のストローク)の上限位置は、一対のリンク部材16の第1端領域同士の相互接近方向への摺動が、基部12の対応の摺動支持部30の各案内溝32の周囲壁によって係止された時点で規定される(図2参照)。そしてキートップ14がこの上限位置から下降するに従い、両リンク部材16の第1端領域は、摺動支軸44に対する案内溝32の案内作用下で、キートップ14の昇降方向に略直交する相互離反方向へ摺動する。キートップ14が打鍵ストロークの下限位置に達すると、後述するようにスイッチ部材20の接点部18が閉成される(図4参照)。
【0034】
スイッチ部材20は、キートップ14の下方位置に接点部18を担持して、基部12に隣接して配置されるメンブレンスイッチシート54を備える。メンブレンスイッチシート54は、図示省略するが、一対の接点を互いに対向させて各々に担持する一対のフレキシブル回路基板と、それら回路基板を所定間隔に支持して両接点を開放状態に保持するシート状のスペーサとを備え、両回路基板のフィルム基体の表面にパターン形成された接点が、スイッチ部材20の接点部18を構成する。メンブレンスイッチシート54は、基部12の第1支持板24と第2支持板26との間に挿入して支持され、接点部18が、第2支持板26の開口部28の略中心に位置決めされる。
【0035】
付勢部材22は、ゴム材料から一体成形されたドーム状部材であり、そのドーム頂部22aをキートップ14側に向けた姿勢で、キートップ14とメンブレンスイッチシート54との間に配置される。付勢部材22は、その下端のドーム開口端22bで、基部12の第2支持板26の開口部28内に配置されて、メンブレンスイッチシート54に固定される。付勢部材22は、無負荷時にはドーム頂部22aを、メンブレンスイッチシート54から上方へ離隔して配置する。付勢部材22のドーム頂部22aの内面には、メンブレンスイッチシート54の接点部18に位置合わせして、キートップ14が下降したときに接点部18を押圧閉成するための突起22cが形成される。
【0036】
キースイッチ装置10では、キートップ14に外力が加わらないときには、付勢部材22がドーム頂部22aでキートップ14を基部12から鉛直上方へ離れたストローク上限位置に付勢支持する(図2)。このときメンブレンスイッチシート54は、接点部18が開いた状態にある。また、打鍵操作によりキートップ14が押下げられると、付勢部材22は、キートップ14の下降動作に伴い弾性変形して、キートップ14に上方への弾性付勢力(初期位置復帰力)を加えるとともに、キートップ14がストローク下限位置に達するときに、内面の突起22cでメンブレンスイッチシート54を外側から押圧して接点部18を閉成する(図4)。キートップ14への押下げ力が解除されると、付勢部材22が弾性的に復元し、キートップ14を上限位置へ復帰させるとともに、メンブレンスイッチシート54が復元して接点部18が開放される。このように、付勢部材22は、キートップ14の昇降動作に対応してスイッチ部材20の接点部18を開閉させる作動部材としても機能する。
【0037】
キートップ14の打鍵操作時に、付勢部材22は、それ自体のドーム形状に起因して座屈状に弾性変形し、それにより、キートップ14の押下変位量に非線形対応する弾性付勢力をキートップ14に及ぼすようになっている。その結果、キースイッチ装置10では、キートップ14の押下変位量が所定値を超えたときにそれまで徐々に増加していた復帰方向への付勢力が急に減少するような、いわゆるクリック感を伴う独特の打鍵操作特性が確保される。
【0038】
キースイッチ装置10は、スイッチ内部構造(リンク部材16やスイッチ部材20等)への塵埃や液体等の異物の侵入を確実かつ安定して防止できるようにするための防護機能を、それ自体に備えている。詳述すれば、キースイッチ装置10は、一対のリンク部材16、スイッチ部材20の接点部18、及び付勢部材22を包囲する位置で、基部12とキートップ14との間に挿入配置される保護部材56を備える。保護部材56は、キートップ14の下降動作に伴い弾性変形可能なゴム製の環状要素であって、基部12とキートップ14との間で、キートップ14の昇降動作に追従して弾性変形して、一対のリンク部材16、接点部18及び付勢部材22を常に包囲する姿勢を維持する。それにより保護部材56は、キートップ14の昇降動作の間、それらリンク部材16、接点部18及び付勢部材22を異物の侵入から確実かつ安定して防護する(図2及び図4参照)。
【0039】
保護部材56は、異物に対する主たる防護機能を発揮する平面視略矩形の筒状部分58と、筒状部分58の一端(図で下端)に連結されるシート状部分60とを備える。筒状部分58には、高さ方向の中間位置に、径方向寸法が局部的に変化する段差58aが設けられる。また、シート状部分60には、筒状部分58の内部空間に連通する開口60aが形成される。なお、保護部材56の筒状部分58とシート状部分60とは、互いに一体成形することもできるし、別部材として形成して接着剤等により互いに固着することもできる(図2及び図5は、筒状部分58とシート状部分60とを一体成形してなる保護部材56を示す)。
【0040】
上記構成を有するキースイッチ装置10では、保護部材56が、同様にキートップ14の昇降動作に追従して弾性変形するゴム製要素である付勢部材22とは別の部材として、専らスイッチ内部構造への異物侵入を防止する目的で装備されるので、所要水準の異物侵入防止機能を発揮し得る最適な特性を有する保護部材56を用意することができる。したがって、低背型キーボードに好適に使用されるべく、キートップ14の案内構造として、相互連結部(図示実施形態では歯48、50)を中心として互いに開閉式に連動する一対のリンク部材16を備えたキースイッチ装置10において、内部構造への異物の侵入を確実かつ安定して防止できる一層厳格な防護機能が確保される。その結果、異物の存在によりキートップ14の打鍵操作特性が影響を受けたり接点部18の開閉動作の確度が低下したりすることを未然に防止可能な、操作性及び構造信頼性に優れたキースイッチ装置10が提供される。また、従来構造の低背型のキースイッチ装置に、保護部材56を追加するだけで、本発明に係るキースイッチ装置10を構成できるから、製造コストの上昇を抑制できる。
【0041】
保護部材56は、キートップ14に加わる付勢部材22の弾性付勢力によって与えられる打鍵操作感覚に、実質的な影響を及ぼすことなく、キートップ14の昇降動作に正確に追従して容易に変形する特性を有することが、極めて有利である。この場合、キートップ14の初期位置復帰動作は、付勢部材22が生じる弾性的な復元力に実質的に支配される。このような保護部材56の特性は、主として筒状部分58の形状、寸法、材質等の属性に依存して獲得される。この構成によれば、基部12とキートップ14との間に保護部材56を介在させているにも関わらず、キースイッチ装置10の打鍵操作特性に及ぼす影響を排除して(すなわちオペレータに操作上の違和感を与えることなく)、異物に対する高水準の防護機能を確保できる。
【0042】
保護部材56は、その筒状部分58の下端及びシート部分60が、基部12の第2支持板26に設けた一対の摺動支持部30の外側で、第2支持板26の上面26aに接触するように配置される(図2)。それにより保護部材56は、付勢部材22をスイッチ部材20の接点部18に隣接配置するための基部12の開口部28、及びリンク部材16を摺動可能に支持するための基部12の摺動支持部30(特に案内溝32)を、キートップ14の昇降動作の間、常に包囲して、異物の侵入から確実に防護する。その結果、異物の存在によってキートップ14の打鍵操作特性に影響が及ぼされたり接点部18の開閉動作の確度が低下したりすることが、未然に防止される。
【0043】
また、保護部材56は、その筒状部分58の上端58bが、キートップ14の内面14bに設置したリンク支持部材34の外側で、キートップ内面14bに接触するように配置される(図2)。それにより保護部材56は、リンク部材16を回動可能に連結するためのキートップ14のリンク支持部材34(特に軸受穴(回動支持部)36)を、キートップ14の昇降動作の間、常に包囲して、異物の侵入から確実に防護する。その結果、異物の存在によってキートップ14の打鍵操作特性に影響が及ぼされることが、未然に防止される。
【0044】
また、保護部材56は、キートップ14が前述した昇降動作の上限位置にあるときに、基部12とキートップ14とから初期圧力を受けた状態に置かれることが有利である。このような構成によれば、キースイッチ装置10の非使用時にも、保護部材56は、基部12とキートップ14との間に僅かに弾性変形した状態で安定して保持されるので、特にシート状部分60が基部12に対して浮き上がったりめくれたりすることが防止され、シート状部分60と基部12との間を通して異物が侵入する不具合が回避される。
【0045】
なお、上記した保護部材56は、図示のキースイッチ装置10に限らず、例えば、いわゆるパンタグラフ形式のリンク部材を有する従来構造のキースイッチ装置にも、好適に適用できるものである。そのような構成においても、内部構造への異物の侵入を確実かつ安定して防止できる防護機能を備えた、操作性及び構造信頼性に優れたキースイッチ装置が提供される。
【0046】
キースイッチ装置10において、キートップ14に装備されるリンク支持部材34は、平面視略矩形の平板状の主板部分62と、主板部分62の一対の縁に沿って互いに略平行に立設される一対の対向壁部分64とを備え、各対向壁部分64に、2個の軸受穴36が形成される(図3)。一対の対向壁部分64は、両者間に各リンク部材16の前述した第2端領域(回動支軸46を含む)を、実質的にがたつき無く安定して挿入可能な距離だけ互いに離れて配置される(図6(a)参照)。また、各軸受穴36は、その周縁に対向壁部分64の外縁まで連通するような切欠きを有さない貫通穴として形成され、対応のリンク部材16の円柱状の回動支軸46を、円滑に回転可能に受容する。なお、軸受穴36は、図示のような円形穴であることが望ましいが、回動支軸46の円滑な回転を妨げないことを前提として、多角形穴であっても良い。
【0047】
上記構成を有するリンク支持部材34を採用したことにより、キースイッチ装置10では、リンク部材を回動可能に連結するキートップの回動支持部に切欠き付きの貫通穴を設けた従来のキースイッチ装置に比べて、リンク部材16の回動支軸46が、リンク支持部材34の軸受穴36に、脱落を確実に防止しつつ一層安定して支持されることになる。したがって、例えばキートップ14の外縁14c(図1、図2)に、キートップ14を基部12から引き離すような外力が加わったときにも、リンク支持部材34の軸受穴36からリンク部材16の回動支軸46が外れてしまうことを確実に防止できる。また、そのような外力が過大であった場合には、リンク支持部材34がキートップ14から外れることで、リンク支持部材34の損傷を回避できる。その結果、キースイッチ装置10は、予期しないキートップ14の脱落を回避可能な、操作性及び構造信頼性に優れたものとなる。
【0048】
なお、キートップ14の外縁14cに基部12から引き離すような外力が意図せず加わることを未然に防止するために、例えば図2に示すように、前述した保護部材56のシート状部分60に、キートップ14の外縁14cから間隔を空けて配置される環状の突起66を設けることもできる。この場合も、図示のように突起66とシート状部分60とを一体成形してもよいし、別体の突起66をシート状部分60に接着剤等により固着してもよい。
【0049】
キースイッチ装置10を安全かつ容易に組み立てることができるように、リンク支持部材34は、少なくともその主板部分62に、各リンク部材16の一対の回動支軸46を、一対の対向壁部分64に設けた対応の軸受穴36に受容できるようにするための弾性を有する。以下、キースイッチ装置10の組立工程におけるリンク支持部材34へのリンク部材16の組付作業を説明する。
【0050】
リンク支持部材34は、平常時には、一対の対向壁部分64の間隔が、リンク部材16の両腕38、40の外面間の距離に、リンク部材16と対向壁部分64との円滑な摺動を妨げない範囲で、実質的に等しくなるように寸法設定される(図6(a))。そして、キースイッチ装置10の組立時には、リンク支持部材34を単体で、一対のリンク部材16の第2端領域に組み付ける。このとき、リンク支持部材34の両対向壁部分64の外縁を、各リンク部材16の一対の回動支軸46に押し付けた状態で、リンク支持部材34の主板部分62にさらに押圧力Fを加える(図6(b))。それにより、主板部分62が外側へ凹状に湾曲して、両対向壁部分64の間隔が末広がりに拡がるので、押圧力Fを加え続けることにより、個々の軸受穴36に対応の回動支軸46が嵌入される。その後、押圧力Fを解除することで、主板部分62が本来の平板形状に弾性的に復元し、両対向壁部分64が互いに平行な正規位置に復帰して、各リンク部材16の回動支軸46がリンク支持部材34の軸受穴36に安定支持される。
【0051】
上記した組付作業では、リンク部材16を1個ずつ順次にリンク支持部材34に組み付けるようにしても良いし、一対のリンク部材16を同時にまとめてリンク支持部材34に組み付けるようにしても良い。後者の場合、例えば基部12上で、歯48、50同士を互いに噛合させた一対のリンク部材16を、打鍵操作時の平置き状態(図5)に配置し、それらリンク部材16の上からリンク支持部材34を押し付けるようにして、組み付けることができる。なお、リンク支持部材34は、各リンク部材16の一対の回動支軸46を両対向壁部分64の間に円滑に挿入して対応の軸受穴36に正確に嵌入できるようにするために、図3に示すように、主板部分62に隣接する側の各対向壁部分64の内面に、案内溝68を有することが有利である。
【0052】
このようにして一対のリンク部材16にリンク支持部材34を組み付けた後に、キートップ14をリンク支持部材34に取り付ける。その目的で、キートップ14の内面14bには、リンク支持部材34を内面14bの所定位置に固定的に保持する複数の爪70が設けられる(図7参照)。それら爪70は、キートップ14の内面14bから直立状に突出し、各々の先端の鉤状部分70aで、リンク支持部材34の主板部分62の外縁領域に着脱可能に係合する。キースイッチ装置10の組立工程では、平置き状態の一対のリンク部材16に組み付けたリンク支持部材34に対し、キートップ14を上から被せて押し付けることで、リンク支持部材34の主板部分62を、僅かに弾性変形させつつ複数の爪70にスナップ式に係合させることができる。
【0053】
ここで、リンク支持部材34の主板部分62には、爪70との係合箇所を確保するために、図7に示すように、対向壁部分64を有さない他の縁から外方へ水平に延長される延長部分72を設けることができる。このような延長部分72に爪70を係合させる構成とすることで、例えばキートップ14の外縁14cに基部12から引き離すような外力が加わったときに、力点P1(外縁14c)と支点P2(力点P1から遠い側の軸受穴36)との距離に対する支点P2と作用点P3(力点P1に近い側の爪70)との距離の比が、従来のキースイッチ装置における力点(キートップ外縁)と支点(力点から遠い側の回動支持部)との距離に対する支点と作用点(力点に近い側の回動支持部)との距離の比よりも大きくなる。その結果、同じ大きさの外力に対して、キースイッチ装置10では、作用点P3に生じる力(すなわち力点P1に近い側の爪70を主板部分62から脱離させる力)が小さくなり、リンク支持部材34からのキートップ14の脱離、或いはそれに伴う爪70の損傷が、さらに効果的に防止される。
【0054】
キートップ14の内面14bに設けられる複数の爪70は、図7に示すように、各リンク部材16の回動軸線52(図1)に直交する方向へ互いに対向する位置に、互いに協働してリンク支持部材34を固定的に保持する一対の爪70が設置されるように構成できる(図では計二対の爪70が設けられている)。或いは、図8(a)に示すように、それら複数の爪70を、各リンク部材16の回動軸線52(図1)に平行な方向へ互いに対向する位置に、互いに協働してリンク支持部材34を固定的に保持する一対の爪70が設置されるように構成することもできる(図では計二対の爪70が設けられている)。さらに、図8(b)に示すように、各リンク部材16の回動軸線52(図1)に直交する方向及び平行な方向へそれぞれ互いに対向する位置に、計四対の爪70を設けることもできる。このような爪70の配置や個数は、キートップ14の寸法や、操作中に上記した力点になり易いキートップ14の外縁14c上の位置等を考慮して、最適化することができる。
【0055】
なお、上記したリンク支持部材34及びそれに関連するキートップ14の爪70の構成は、図示のキースイッチ装置10に限らず、例えば保護部材56を有さない従来構造のキースイッチ装置にも、好適に適用できるものである。そのような構成においても、予期しないキートップの脱落を回避可能な、操作性及び構造信頼性に優れたキースイッチ装置が提供される。
【0056】
図9及び図10は、本発明の関連技術に係るキースイッチ装置80を示す。キースイッチ装置80は、前述した本発明の実施形態によるキースイッチ装置10の構成要素と実質的同一の構成要素を含むものであり、そのような構成要素には共通の参照符号を付してその説明を省略する。
【0057】
キースイッチ装置80は、基部82と、基部82の上方に配置され、光透過性の記号領域84を有するキートップ86と、互いに連動してキートップ86を基部82に対し昇降方向(すなわち実質的鉛直方向)へ案内支持する一対のリンク部材16と、キートップ86の昇降動作に対応して開閉する接点部18を有するスイッチ部材20と、基部82に設けられ、キートップ86の記号領域84を透過する光Lを放射する発光部88とを備える。さらにキースイッチ装置80は、キートップ86に上昇方向への弾性付勢力(すなわち初期位置復帰力)を加えるとともに、キートップ86の昇降動作に対応してスイッチ部材20の接点部18を開閉させる付勢部材22を備える。キートップ86は、一対のリンク部材16が互いに連動することにより、基部82に対して鉛直方向へ、所定の姿勢を保持しつつ昇降動作できる。
【0058】
基部82は、前述したキースイッチ装置10における基部12の第1及び第2支持板24、26に加えて、第1支持板24の上面24aに載置される回路基板90と、回路基板90の上面90aに載置される第3支持板92と、第3支持板92の上面92aに載置される第4支持板94とを備えた積層構造を有する。回路基板90は、例えばフレキシブル回路基板の構成を有し、その所望位置(図では中央)に、発光部88の光源となるLED(発光ダイオード:図示せず)が実装される。なお、発光部88の光源として、LEDの代わりに、有機EL素子等の種々の発光素子を採用できる。
【0059】
第3支持板92は、金属又は樹脂製の薄板であって、キートップ14の下方位置に、発光部88が形成される。例えば、回路基板90に実装されるLEDが発光部88の位置に存在する場合には、発光部88は、LEDから放射される光を実質的に障害無く透過させ得る貫通穴、網状組織、透明領域等として、第3支持板92に形成される。また、回路基板90に光源として実装されるLEDが、キースイッチ装置10から離れた位置に存在する場合は、第3支持板92は、所望の導光性を有する樹脂材料からなる導光板として構成される。この場合、発光部88には、光源のLEDから導光板である第3支持板92を伝播した光の進行方向を、キートップ14に向かう方向へ転換させることが可能な、ドットパターン状の反射構造が設けられる。
【0060】
第4支持板94は、第3支持板92の上で、第2支持板26と協働して、スイッチ部材20を構成するメンブレンスイッチシート54を挟持する。第4支持板94には、第3支持板92に設けられた発光部88から放射される光の進行を妨げないように、発光部88に重畳する位置に開口部96が形成される。なお、開口部96は、メンブレンスイッチシート54に形成される接点部18に重畳する位置に配置されるので、キートップ14の打鍵操作時に接点部18を背面支持できるように、実際には複数の梁や支柱を含むことができる。また、メンブレンスイッチシート54は、少なくとも第4支持板94の開口部96に重畳する部分が、発光部88から放射される光の進行を妨げないように、透明又は半透明に形成される。
【0061】
キートップ86は、前述したキースイッチ装置10におけるキートップ14と同様に、操作面86a及び内面86bを有する。キートップ86では、前述したリンク支持部材34が使用されず、内面86bの所定位置に、各リンク部材16の第2端(上端)領域を回動可能に受容する回動支持部98が形成される。回動支持部98は、例えば切欠き付きの貫通穴からなる軸受穴(図示せず)を有する。なお、この構成に代えて、キースイッチ装置10と同様に、リンク支持部材34をキートップ86の内面86bに取り付ける構成とすることもできる。
【0062】
キートップ86は、光透過性を有する透明又は半透明の樹脂材料から好ましくは一体成形され、その表面に、所望色の下地が塗工されるとともに、さらに下地の上に、黒等の暗色の上塗りが塗工される。そして、例えばレーザを用いた文字入れ工程により、上塗りの所望箇所を局部的に除去することで、文字や符号等の所望の記号領域84が形成される。このようにして得られた記号領域84は、発光部88から放射された光Lを、キートップ86の内面86bから操作面86aへと透過させることができるものである。
【0063】
付勢部材22は、前述したキースイッチ装置10における付勢部材22と同様に、キートップ86とメンブレンスイッチシート54との間に配置される。つまり付勢部材22は、発光部88から記号領域84に至る光Lの伝搬路の途中に配置される。したがって、付勢部材22は、光Lを透過させることができる透明又は半透明の素材から形成される。それにより、発光部88から放射される光Lが、付勢部材22を透過してキートップ86の記号領域84に確実に到達する。
【0064】
キースイッチ装置80では、前述したキースイッチ装置10と同様に、キートップ86に外力が加わらないときには、付勢部材22がドーム頂部22aでキートップ86を基部12から鉛直上方へ離れたストローク上限位置に付勢支持する(図9)。このときメンブレンスイッチシート54は、接点部18が開いた状態にある。また、打鍵操作によりキートップ86が押下げられると、付勢部材22は、キートップ86の下降動作に伴い弾性変形して、キートップ86に上方への弾性付勢力(初期位置復帰力)を加えるとともに、キートップ86がストローク下限位置に達するときに、内面の突起22cでメンブレンスイッチシート54を外側から押圧して接点部18を閉成する(図10)。キートップ86への押下げ力が解除されると、付勢部材22が弾性的に復元し、キートップ86を上限位置へ復帰させるとともに、メンブレンスイッチシート54が復元して接点部18が開放される。
【0065】
キースイッチ装置80は、キートップ86が有する文字や符号等の記号領域84をキー内側から照らす構造(いわゆるバックライト構造)において、発光部88から放射される光Lを効率良く記号領域84に到達させるための内部遮光機能を備えている。詳述すれば、キースイッチ装置80は、発光部88から記号領域84に至る光Lの伝搬を妨げない位置で基部82とキートップ86との間に挿入配置される遮光部材100を備える。遮光部材100は、キートップ86の下降動作に伴い弾性変形可能なゴム製の環状要素であって、基部82とキートップ86との間で、キートップ86の昇降動作に追従して弾性変形して、一対のリンク部材16、スイッチ部材20の接点部18、及び付勢部材22を、常に包囲する姿勢を維持する。それにより遮光部材100は、キートップ14の昇降動作の間、基部82とキートップ86との間隙を通した光Lの、スイッチ外部への漏出を確実かつ安定して防止する(図9及び図10参照)。
【0066】
遮光部材100は、前述したキースイッチ装置10における保護部材56と同様の構成を有する。すなわち遮光部材100は、光Lに対する主たる遮光機能を発揮する平面視略矩形の筒状部分102と、筒状部分102の一端(図で下端)に連結されるシート状部分104とを備える。筒状部分102には、高さ方向の中間位置に、径方向寸法が局部的に変化する段差102aが設けられる。また、シート状部分104には、筒状部分102の内部空間に連通する開口104aが形成される。さらに、遮光部材100は、光Lの漏出を確実に防止できるように、少なくとも筒状部分102が、光不透過性の色を有して形成される。
【0067】
なお、遮光部材100の筒状部分102とシート状部分104とは、互いに一体成形することもできるし、別部材として形成して接着剤等により互いに固着することもできる(図9及び図10は、別体の筒状部分102とシート状部分104とを互いに固着してなる遮光部材100を示す)。また、遮光部材100のシート状部分104には、キートップ86の外縁86cに基部82から引き離すような外力が意図せず加わることを未然に防止するための環状の突起106を、キートップ86の外縁86cから間隔を空けて設置することもできる。この場合も、図示のように、別体の突起106をシート状部分104に接着剤等により固着してもよいし、突起106とシート状部分104とを一体成形してもよい。
【0068】
上記構成を有するキースイッチ装置80では、遮光部材100が、同様にキートップ86の昇降動作に追従して弾性変形するゴム製要素である付勢部材22とは別の部材として、専らスイッチ内部からの光Lの漏出を防止する目的で装備されるので、所要水準の光漏出防止機能を発揮し得る最適な特性を有する遮光部材100を用意することができる。したがって、低背型キーボードに好適に使用されるべく、キートップ86の案内構造として、相互連結部(図示の形態では歯48、50)を中心として互いに開閉式に連動する一対のリンク部材16を備えたキースイッチ装置80において、バックライト用の光Lが基部82とキートップ86との間隙を通して外部へ漏出することを確実かつ安定して防止できる高水準の内部遮光機能が確保される。その結果、発光部88から放射される光Lを効率良く記号領域84に到達させて記号領域84の視認性を向上させることが可能な、操作性及び構造信頼性に優れたキースイッチ装置80が提供される。また、従来構造の低背型かつバックライト構造のキースイッチ装置に、遮光部材100を追加するだけで、キースイッチ装置80を構成できるから、製造コストの上昇を抑制できる。
【0069】
遮光部材100は、キートップ86に加わる付勢部材22の弾性付勢力によって与えられる打鍵操作感覚に、実質的な影響を及ぼすことなく、キートップ86の昇降動作に正確に追従して容易に変形する特性を有することが、極めて有利である。この場合、キートップ86の初期位置復帰動作は、付勢部材22が生じる弾性的な復元力に実質的に支配される。このような遮光部材100の特性は、主として筒状部分102の形状、寸法、材質等の属性に依存して獲得される。この構成によれば、基部82とキートップ86との間に遮光部材100を介在させているにも関わらず、キースイッチ装置80の打鍵操作特性に及ぼす影響を排除して(すなわちオペレータに操作上の違和感を与えることなく)、バックライト光に対する高水準の遮光機能を確保できる。
【0070】
遮光部材100は、その筒状部分102の下端及びシート部分104が、基部82の第2支持板26に設けた一対の摺動支持部30の外側で、第2支持板26の上面26aに接触するように配置される(図9)。それにより遮光部材100は、付勢部材22をスイッチ部材20に隣接配置するための基部82の第2支持板26の開口部28(図1)、及びリンク部材16を摺動可能に支持するための基部82の第2支持板26の摺動支持部30(特に案内溝32)を、キートップ14の昇降動作の間、常に包囲して、それらを通って拡散する光Lがキー外部に漏出することを確実に防止する。
【0071】
また、遮光部材100は、キートップ86が前述した昇降動作の上限位置にあるときに、基部82とキートップ86とから初期圧力を受けた状態に置かれることが有利である。このような構成によれば、キースイッチ装置80の非使用時にも、遮光部材100は、基部82とキートップ86との間に僅かに弾性変形した状態で保持されるので、特にシート状部分104が基部82に対して浮き上がったりめくれたりすることが防止され、発光部88からの光Lがシート状部分104と基部82との間を通して漏出する不具合が回避される。
【0072】
なお、上記した遮光部材100は、図示のキースイッチ装置80に限らず、例えば、いわゆるパンタグラフ形式のリンク部材を有する従来構造のキースイッチ装置にも、好適に適用できるものである。そのような構成においても、バックライト光を効率良くキートップの記号領域に到達させ得る内部遮光機能を備えた、操作性及び構造信頼性に優れたキースイッチ装置が提供される。
【0073】
図11は、前述したキースイッチ装置10又はキースイッチ装置80を、複数個、所定配置に配列して備えた本発明の一実施形態によるキーボード110の、主要構成要素を概略分解図で示す。キーボード110は、ノート型やパームトップ型のパーソナルコンピュータ等の、携帯型電子機器の入力装置として使用できる低背構造を有する。キーボード110では、前述したキースイッチ装置10、80における基部12、82及びスイッチ部材20のメンブレンスイッチシート54がそれぞれ、キーボード110に組み込まれる全てのキースイッチ装置10、80に対して共通する大判の基部12′、82′及びメンブレンスイッチシート54′として形成されている。さらに、キースイッチ装置10、80における保護部材56又は遮光部材100のシート状部分60、104が、全てのキースイッチ装置10、80に対して共通する大判のシート部材60′、104′として形成されている。また、個々のキースイッチ装置10、80において、キートップ14、86に取り付けられるリンク支持部材34が採用されている。このような構成を有するキーボード110は、低背型で、かつ操作性及び構造信頼性に優れたものとなる。
【0074】
キーボード110は、図12に示すように、個々のキースイッチ装置10、80が有する保護部材56又は遮光部材100の筒状部分58、102が、予め大判のシート部材60′、104′に一体に成形された構成を採用することができる。つまりこの場合、複数のキースイッチ装置10、80の各々の保護部材56又は遮光部材100が、それらキースイッチ装置10、80を包含する範囲に広がるシート部材60′、104′を、一体に有することになる。
【0075】
或いは図13に示すように、個々のキースイッチ装置10、80が有する保護部材56又は遮光部材100の筒状部分58、102と大判のシート部材60′、104′とを、予め別々に成形し(図13(a))、後工程で、筒状部分58、102をシート部材60′、104′に接着剤等により固着する(図13(b))構成を採用することができる。つまりこの場合、複数のキースイッチ装置10、80の各々の保護部材56又は遮光部材100が、それらキースイッチ装置10、80を包含する範囲に広がるシート部材60′、104′に、接着剤等により固着されたものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】本発明の一実施形態によるキースイッチ装置を示す分解斜視図である。
【図2】図1のキースイッチ装置を非操作時の状態で示す組立断面図である。
【図3】図1のキースイッチ装置で使用されるリンク支持部材を下方から示す拡大斜視図である。
【図4】図1のキースイッチ装置で使用される一対のリンク部材を下方から示す拡大斜視図である。
【図5】図1のキースイッチ装置を打鍵操作時の状態で示す組立断面図である。
【図6】図1のキースイッチ装置におけるリンク支持部材の作用を説明する図で、(a)リンク部材を連結する前の状態、及び(b)リンク部材を連結する途中の状態を、それぞれ模式図的に示す図である。
【図7】図1のキースイッチ装置におけるリンク支持部材の変形例を、キートップ及びリンク部材と共に下方から示す分解斜視図である。
【図8】図7のキートップの(a)第1変形例及び(b)第2変形例を、それぞれ下方から示す斜視図である。
【図9】本発明の関連技術に係るキースイッチ装置を非操作時の状態で示す組立断面図である。
【図10】図9のキースイッチ装置を打鍵操作時の状態で示す組立断面図である。
【図11】本発明の一実施形態によるキーボードの主要構成要素の一部分を示す分解斜視図である。
【図12】図11のキーボードで使用される保護部材/遮光部材の断面図である。
【図13】変形例による保護部材/遮光部材の断面図で、(a)組立前の状態及び(b)組立後の状態をそれぞれ示す。
【符号の説明】
【0077】
10、80 キースイッチ装置
12、82 基部
14、86 キートップ
16 リンク部材
18 接点部
20 スイッチ部材
22 付勢部材
30 摺動支持部
34 リンク支持部材
36 軸受穴(回動支持部)
44 摺動支軸
46 回動支軸
48、50 歯
54 メンブレンスイッチシート
56 保護部材
84 記号領域
88 発光部
100 遮光部材
110 キーボード
60′、104′ シート部材
【技術分野】
【0001】
本発明は、打鍵操作されるキースイッチ装置に関し、特に、電子機器の入力装置であるキーボードに搭載されるキースイッチ装置に関する。さらに本発明は、そのようなキースイッチ装置を複数個備えたキーボードに関する。
【背景技術】
【0002】
ノート型やパームトップ型のパーソナルコンピュータ等の携帯型電子機器に装備される薄型すなわち低背型のキーボードにおいては、打鍵操作されるキースイッチ装置の低背化を促進しつつ、その操作性及び構造信頼性を向上させることが要求されている。一般に、低背型キーボードに使用できるキースイッチ装置は、基部と、基部の上方に配置されるキートップと、互いに連動してキートップを基部に対し昇降方向(すなわち実質的鉛直方向)へ案内支持する一対のリンク部材と、キートップの昇降動作に対応して開閉する接点部を有するスイッチ部材と、キートップに上昇方向への弾性付勢力(すなわち初期位置復帰力)を加える付勢部材とを備えて構成される。キートップは、一対のリンク部材が互いに連動することにより、基部に対して実質的鉛直方向へ、所定の姿勢を保持しつつ昇降動作できる。
【0003】
この種のキースイッチ装置では従来、一対のリンク部材として、側面視逆V字状に組み合わされてそれらの一端領域で互いに歯車状に噛み合わされるいわゆるギアリンク形式のもの(例えば特許文献1参照)や、側面視X字状に組み合わされてそれらの交点で互いに回動可能又は摺動可能に連結されるいわゆるパンタグラフ形式のもの(例えば特許文献2参照)等が採用されている。また、スイッチ部材としては、開閉可能な接点部を構成する一対の接点を、互いに対向させてそれぞれに担持する一対のフレキシブル回路基板を有するシート状スイッチ(本願でメンブレンスイッチシートと称する)が、広く採用されている。
【0004】
上記構成を有するキースイッチ装置では、一対のリンク部材が、互いに連動可能に組み合わされた状態で、基部及びキートップの双方に可動式に組み付けられる。例えば、上記特許文献1に開示されるキースイッチ装置では、各リンク部材は、その第1端領域に、基部に摺動可能に係合する摺動支軸を有するとともに、第1端の反対側の第2端領域に、キートップに回動可能に連結される回動支軸と、リンク部材同士で歯車状に噛合する歯とを有する。これに対応して、基部には、各リンク部材の摺動支軸を受容する案内溝を有する摺動支持部が設けられ、キートップには、各リンク部材の回動支軸を受容する軸受穴を有する回動支持部が設けられる。
【0005】
特許文献1のキースイッチ装置を組み立てる際には、一対のリンク部材を、両者の歯同士が噛合した状態で、それぞれの摺動支軸を基部の摺動支持部の案内溝に挿入して、基部上に平置き状態(つまり逆V字を成す両部材が一平面上に拡開した状態)で配置する。そして、平置き状態の両リンク部材の上からキートップを押し付けて、個々のリンク部材の回動支軸を、キートップの対応の回動支持部の軸受穴に嵌着する。このような組付手法を可能にするために、キートップの回動支持部には、その外縁から軸受穴に至る切欠きが形成される。キートップの組付時には、回動支持部の切欠きにリンク部材の回動支軸を受容することで回動支持部を弾性的に拡張し、さらにキートップを両リンク部材に押し付けることにより、回動支軸を軸受穴にスナップ式に嵌着する。
【0006】
他方、上記特許文献2に開示されるキースイッチ装置では、一対のリンク部材は、それぞれの中央領域で相対回動可能に相互連結され、第1のリンク部材が、その第1端領域に、基部に摺動可能に係合する摺動支軸を有するとともに、第1端の反対側の第2端領域に、キートップに回動可能に連結される回動支軸を有し、第2のリンク部材が、その第1端領域に、基部に回動可能に連結される回動支軸を有するとともに、第1端の反対側の第2端領域に、キートップに摺動可能に係合する摺動支軸を有する。これに対応して、基部には、第1のリンク部材の摺動支軸を受容する案内溝を有する摺動支持部と、第2のリンク部材の回動支軸を受容する軸受溝を有する回動支持部とが設けられ、キートップには、第1のリンク部材の回動支軸を受容する軸受溝を有する回動支持部が設けられる。
【0007】
さらに、特許文献2のキースイッチ装置は、キートップの内面に取り付けられるアクチュエータ部材を備える。アクチュエータ部材は、第1のリンク部材の回動支軸を補助的に受容する軸受溝を有する回動支持部と、第2のリンク部材の摺動支軸を受容する案内溝を有する摺動支持部とを備える。このような構成により、第1及び第2のリンク部材からキートップを脱離する力がキートップに加わったときに、その力が分散して、個々の回動支持部及び摺動支持部に生じ得る損傷が軽減される。
【0008】
【特許文献1】特開2003−031067号公報
【特許文献2】特開2002−334627号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
前述した特許文献1に記載されるキースイッチ装置では、一対のリンク部材に対するキートップの組付作業性を向上させるために、キートップの回動支持部には、その外縁から軸受穴に至る切欠きが形成される。この切欠きは、リンク部材の回動支軸を軸受穴に容易にスナップ式に嵌着できるようにするためのものであるが、その存在により、キートップがリンク部材から外れ易くなることが懸念される。
【0010】
特に、ギアリンク式のリンク部材を有するキースイッチ装置では、キートップの外縁に、キートップを基部から引き離すような外力が加わったときに、力点(キートップ外縁)と支点(力点から遠い側の回動支持部)との距離に対する支点と作用点(力点に近い側の回動支持部)との距離の比が比較的小さいので、作用点に生じる力(すなわち力点に近い側の回動支持部をリンク部材の回動支軸から脱離させる力)が比較的大きくなる。その結果、回動支軸が切欠きを押し拡げながら軸受穴から離脱して、キートップがリンク部材から外れてしまう懸念がある。また、そのような比較的大きな作用力に起因して、回動支持部が損傷することも危惧される。
【0011】
これに対し、前述した特許文献2に記載されるキースイッチ装置では、キートップの内面に取り付けたアクチュエータ部材の存在により、第1及び第2のリンク部材からキートップを脱離する力がキートップに加わったときに、回動支持部及び摺動支持部に生じ得る損傷が軽減されるようになっている。しかし、そもそも特許文献2のパンタグラフ型リンク部材の構成では、一対のリンク部材をそれぞれに可動支持するキートップ上の支持部(回動支持部及び摺動支持部)の間の距離が、特許文献1のギアリンク型リンク部材に関するキートップ上の支持部(一対の回動支持部)の間の距離よりもかなり大きいので、前述したような、キートップの外縁にキートップを基部から引き離すような外力が加わったときの、作用点(回動支持部又は摺動支持部)に生じる脱離力は、ギアリンク型リンク部材で想定される脱離力よりもかなり小さくなる。
【0012】
そのため、特許文献2のキースイッチ装置では、キートップに設けた回動支持部は、第1のリンク部材の回動支軸を仮保持的に受容する軸受溝を有するものであり、アクチュエータ部材の回動支持部もやはり、その直接的回動支持部の仮保持機能を補助する軸受溝を有するものとなっている。このような構成では、ギアリンク型リンク部材で想定されるような大きな脱離力が生じた場合に、やはりキートップがリンク部材から外れてしまう懸念がある。
【0013】
本発明の目的は、キートップを基部に対し昇降方向へ案内支持する一対のギアリンク型のリンク部材を備えたキースイッチ装置において、キートップをリンク部材から脱離する力がキートップに加わったときに、そのような力に抗してキートップとリンク部材との適正な相互連結形態を維持できるとともに、キートップに設けた回動支持部の損傷を防止できるキースイッチ装置を提供することにある。
本発明の他の目的は、上記したようなキースイッチ装置を複数個備えた、低背型で操作性及び構造信頼性に優れたキーボードを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、基部と、基部の上方に配置されるキートップと、互いに連動してキートップを基部に対し昇降方向へ案内支持する一対のリンク部材と、キートップの昇降動作に対応して開閉する接点部を有するスイッチ部材とを具備するキースイッチ装置において、キートップに取り付けられ、一対のリンク部材を回動可能に支持するリンク支持部材を具備し、一対のリンク部材は、それぞれの一端領域に、互いに歯車状に噛合する歯と、リンク支持部材に回動可能に連結される一対の回動支軸とを備え、リンク支持部材は、一対のリンク部材のそれぞれの回動支軸を受容する二対の軸受穴を備え、それら軸受穴の各々が、周縁に切欠きを有さない貫通穴として形成されていること、を特徴とするキースイッチ装置を提供する。
【0015】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のキースイッチ装置において、リンク支持部材は、主板部分と、主板部分の一対の縁に沿って互いに略平行に立設される一対の対向壁部分とを備え、対向壁部分の各々に、2個の軸受穴が形成され、主板部分は、一対のリンク部材の各々の一対の回動支軸を、一対の対向壁部分に設けた対応の軸受穴に受容できるようにするための弾性を有する、キースイッチ装置を提供する。
【0016】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載のキースイッチ装置において、キートップは、操作面と、操作面の反対側の内面とを有し、内面に、リンク支持部材に着脱可能に係合してリンク支持部材を内面の所定位置に固定的に保持する爪が設けられる、キースイッチ装置を提供する。
【0017】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載のキースイッチ装置において、キートップは、一対のリンク部材の各々の回動軸線に直交する方向へ互いに対向する位置に、互いに協働してリンク支持部材を固定的に保持する一組の爪を有する、キースイッチ装置を提供する。
【0018】
請求項5に記載の発明は、請求項3又は4に記載のキースイッチ装置において、キートップは、一対のリンク部材の各々の回動軸線に平行な方向へ互いに対向する位置に、互いに協働してリンク支持部材を固定的に保持する一組の爪を有する、キースイッチ装置を提供する。
【0019】
請求項6に記載の発明は、請求項1〜5のいずれか1項に記載のキースイッチ装置を複数個、配列して構成されるキーボードを提供する。
【発明の効果】
【0020】
請求項1に記載の発明によれば、キートップに設けた切欠き付きの軸受穴にリンク部材の回動支軸を連結する従来のキースイッチ装置に比べて、リンク部材の回動支軸が、切欠きを有さないリンク支持部材の軸受穴に、脱落を確実に防止しつつ一層安定して支持される。したがって、例えばキートップの外縁に、キートップを基部から引き離すような外力が加わったときにも、リンク支持部材の軸受穴からリンク部材の回動支軸が外れてしまうことを確実に防止できる。また、そのような外力が過大であった場合には、リンク支持部材がキートップから外れることで、リンク支持部材の損傷を回避できる。その結果、キースイッチ装置は、予期しないキートップの脱落を回避可能な、操作性及び構造信頼性に優れたものとなる。
【0021】
請求項2に記載の発明によれば、各リンク部材の一対の回動支軸をリンク支持部材の対応の軸受穴に、安全かつ容易に嵌入できるので、キースイッチ装置の組立作業性が向上する。
【0022】
請求項3〜5のいずれか1項に記載の発明によれば、リンク支持部材をキートップに容易に取り付けることができ、しかも、爪の位置や個数を適宜選定することにより、リンク支持部材からのキートップの脱離、或いはそれに伴う爪の損傷を、効果的に防止できる。
【0023】
請求項6に記載の発明によれば、低背型で操作性及び構造信頼性に優れたキーボードが提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態を詳細に説明する。全図面に渡り、対応する構成要素には共通の参照符号を付す。
図面を参照すると、図1は本発明の一実施形態によるキースイッチ装置10の分解斜視図、図2はキースイッチ装置10の非操作時の組立断面図、図3及び図4はキースイッチ装置10の各種構成部品の拡大図、図5はキースイッチ装置10の打鍵操作時の組立断面図である。キースイッチ装置10は、ノート型やパームトップ型のパーソナルコンピュータ等の携帯型電子機器に装備される薄型すなわち低背型のキーボードに、好適に適用できるものである。
【0025】
図1及び図2に示すように、キースイッチ装置10は、基部12と、基部12の上方に配置されるキートップ14と、互いに連動してキートップ14を基部12に対し昇降方向(すなわち実質的鉛直方向)へ案内支持する一対のリンク部材16と、キートップ14の昇降動作に対応して開閉する電気回路の接点部18を有するスイッチ部材20と、キートップ14に上昇方向への弾性付勢力(すなわち初期位置復帰力)を加える付勢部材22とを備える。キートップ14は、一対のリンク部材16が互いに連動することにより、基部12に対して鉛直方向へ、所定の姿勢を保持しつつ昇降動作できる。
【0026】
基部12は、例えば板金材料からなる独立した金属薄板やキースイッチ装置10を組み込んだキーボードの樹脂製下部パネルのような、キースイッチ装置10の構造上の基礎となる剛性を有する平板状の第1支持板24と、第1支持板24の上に配置され、例えば樹脂材料の一体成形品からなる枠状の第2支持板26とを備える。第2支持板26は、キートップ14によって実質的に遮蔽される略矩形の開口部28を備え、開口部28を画定する一組の対向内周縁に沿って、一対の摺動支持部30が、リンク摺動方向(図2で左右方向)ヘ相互離間して設けられる。各摺動支持部30は、第2支持板26の上面26aから開口部28の上方へ庇状に延長される壁部分30aを有し、この壁部分30aの長手方向両端の内側に、上面26aに略平行に延びる案内溝32がそれぞれ形成される。各摺動支持部30に設けた一対の案内溝32は、各リンク部材16の後述する第1端(すなわち下端)領域を摺動可能に受容する。
【0027】
なお、基部12は、上記構成に代えて、第2支持板26を省略し、第1支持板24が直接的に両リンク部材16を案内支持する構成とすることもできる。この場合、第1支持板24の上面24aに、各リンク部材16の第1端(下端)領域を摺動式に案内する案内孔を有する摺動支持部(図示せず)が、上記摺動支持部30の代わりに設けられる。また、後述するように、基部12に、キートップ14に設けられる文字や符号等の記号領域をキー内側から照らすための発光構造を設けることもできる。
【0028】
キートップ14は、例えば樹脂材料の一体成形品からなる平面視で略矩形の皿状部材であり、オペレータによって打鍵操作される操作面14aを有するとともに、操作面の反対側の内面14bに、各リンク部材16の後述する第2端(すなわち上端)領域を回動可能に支持するリンク支持部材34が取り付けられる。図3に示すように、リンク支持部材34には、一対のリンク部材16のそれぞれの第2端領域に設けた支軸(後述する)を受容する二対の軸受穴(すなわち回動支持部)36が設けられる。リンク支持部材34は、それら二対の軸受穴36がリンク摺動方向(図2で左右方向)ヘ相互離間するように方向付けされて、キートップ14の内面14bに固定的に設置される。リンク支持部材34のさらなる詳細については、後述する。
【0029】
なお、キートップ14は、上記構成に代えて、リンク支持部材34を省略し、内面14bが直接的に両リンク部材16に連結される構成とすることもできる。この場合、キートップ14の内面14bに、各リンク部材16の第2端(上端)領域を回動可能に受容する回動支持部(図示せず)が、上記軸受穴36の代わりに形成される。
【0030】
一対のリンク部材16は、互いに同一の形状及び寸法を有し、それらの一端で互いに歯車状に連結されて側面視逆V字形態を呈し得るように組み合わされる。各リンク部材16は、例えば樹脂材料の一体成形品からなり、図4に示すように、互いに略平行に延びる一対の腕38、40と、それら腕38、40を互いに連結する胴42とを一体に備える。なお図示実施形態では、各リンク部材16において、胴42を含む両腕38、40の端部領域をリンク部材16の第1端(すなわち下端)領域と定義し、胴42から延長される両腕38、40の先端領域をリンク部材16の第2端(すなわち上端)領域と定義する。
【0031】
各リンク部材16の第1端領域には、両腕38、40の互いに離反する外側面から胴42とは反対側へ、一対の摺動支軸44が互いに同軸状に突設される。また、各リンク部材16の第2端領域には、両腕38、40の外側面から摺動支軸44と同一側へ、一対の回動支軸46が互いに同軸状に突設される。摺動支軸44及び回動支軸46は、いずれも円柱形状を有する。さらに、各リンク部材16の一方の腕38には、回動支軸46に近接する第2端領域の先端面に1枚の歯48が設けられ、他方の腕40には、回動支軸46に近接する第2端領域の先端面に2枚の歯50が設けられる。
【0032】
各リンク部材16は、第1端領域の一対の摺動支軸44を、基部12の第2支持板26に設けた摺動支持部30の対応の案内溝32に摺動可能に嵌入し、かつ第2端領域の一対の回動支軸46を、キートップ14のリンク支持部材34に設けた対応の軸受穴36に回動可能に嵌入して、基部12とキートップ14との間に配置される。このとき一対のリンク部材16は、それぞれの一方の腕38の1枚の歯48と、それぞれの他方の腕40の2枚の歯50とが、互いに噛み合わされて連動構造を成し、それにより、両腕38、40の回動支軸46が規定するそれぞれの回動軸線52(図1)を中心として、互いに連動して回動できるようになっている。
【0033】
したがってキートップ14は、一対のリンク部材16がそれぞれの回動軸線52(つまり回動支軸46と軸受穴36との回動係合点)を中心に同期して反対方向へ揺動するとともに、それぞれの第1端領域が基部12の対応の摺動支持部30による案内作用下(つまり摺動支軸44と案内溝32との摺動係合下)で略水平方向へ摺動することにより、基部12に対し略鉛直方向へ、操作面14aを基部12(第2支持板26)の上面26aに略平行に配置した所定の略水平姿勢を保持しつつ平行移動する。キートップ14の打鍵ストローク(すなわち昇降動作のストローク)の上限位置は、一対のリンク部材16の第1端領域同士の相互接近方向への摺動が、基部12の対応の摺動支持部30の各案内溝32の周囲壁によって係止された時点で規定される(図2参照)。そしてキートップ14がこの上限位置から下降するに従い、両リンク部材16の第1端領域は、摺動支軸44に対する案内溝32の案内作用下で、キートップ14の昇降方向に略直交する相互離反方向へ摺動する。キートップ14が打鍵ストロークの下限位置に達すると、後述するようにスイッチ部材20の接点部18が閉成される(図4参照)。
【0034】
スイッチ部材20は、キートップ14の下方位置に接点部18を担持して、基部12に隣接して配置されるメンブレンスイッチシート54を備える。メンブレンスイッチシート54は、図示省略するが、一対の接点を互いに対向させて各々に担持する一対のフレキシブル回路基板と、それら回路基板を所定間隔に支持して両接点を開放状態に保持するシート状のスペーサとを備え、両回路基板のフィルム基体の表面にパターン形成された接点が、スイッチ部材20の接点部18を構成する。メンブレンスイッチシート54は、基部12の第1支持板24と第2支持板26との間に挿入して支持され、接点部18が、第2支持板26の開口部28の略中心に位置決めされる。
【0035】
付勢部材22は、ゴム材料から一体成形されたドーム状部材であり、そのドーム頂部22aをキートップ14側に向けた姿勢で、キートップ14とメンブレンスイッチシート54との間に配置される。付勢部材22は、その下端のドーム開口端22bで、基部12の第2支持板26の開口部28内に配置されて、メンブレンスイッチシート54に固定される。付勢部材22は、無負荷時にはドーム頂部22aを、メンブレンスイッチシート54から上方へ離隔して配置する。付勢部材22のドーム頂部22aの内面には、メンブレンスイッチシート54の接点部18に位置合わせして、キートップ14が下降したときに接点部18を押圧閉成するための突起22cが形成される。
【0036】
キースイッチ装置10では、キートップ14に外力が加わらないときには、付勢部材22がドーム頂部22aでキートップ14を基部12から鉛直上方へ離れたストローク上限位置に付勢支持する(図2)。このときメンブレンスイッチシート54は、接点部18が開いた状態にある。また、打鍵操作によりキートップ14が押下げられると、付勢部材22は、キートップ14の下降動作に伴い弾性変形して、キートップ14に上方への弾性付勢力(初期位置復帰力)を加えるとともに、キートップ14がストローク下限位置に達するときに、内面の突起22cでメンブレンスイッチシート54を外側から押圧して接点部18を閉成する(図4)。キートップ14への押下げ力が解除されると、付勢部材22が弾性的に復元し、キートップ14を上限位置へ復帰させるとともに、メンブレンスイッチシート54が復元して接点部18が開放される。このように、付勢部材22は、キートップ14の昇降動作に対応してスイッチ部材20の接点部18を開閉させる作動部材としても機能する。
【0037】
キートップ14の打鍵操作時に、付勢部材22は、それ自体のドーム形状に起因して座屈状に弾性変形し、それにより、キートップ14の押下変位量に非線形対応する弾性付勢力をキートップ14に及ぼすようになっている。その結果、キースイッチ装置10では、キートップ14の押下変位量が所定値を超えたときにそれまで徐々に増加していた復帰方向への付勢力が急に減少するような、いわゆるクリック感を伴う独特の打鍵操作特性が確保される。
【0038】
キースイッチ装置10は、スイッチ内部構造(リンク部材16やスイッチ部材20等)への塵埃や液体等の異物の侵入を確実かつ安定して防止できるようにするための防護機能を、それ自体に備えている。詳述すれば、キースイッチ装置10は、一対のリンク部材16、スイッチ部材20の接点部18、及び付勢部材22を包囲する位置で、基部12とキートップ14との間に挿入配置される保護部材56を備える。保護部材56は、キートップ14の下降動作に伴い弾性変形可能なゴム製の環状要素であって、基部12とキートップ14との間で、キートップ14の昇降動作に追従して弾性変形して、一対のリンク部材16、接点部18及び付勢部材22を常に包囲する姿勢を維持する。それにより保護部材56は、キートップ14の昇降動作の間、それらリンク部材16、接点部18及び付勢部材22を異物の侵入から確実かつ安定して防護する(図2及び図4参照)。
【0039】
保護部材56は、異物に対する主たる防護機能を発揮する平面視略矩形の筒状部分58と、筒状部分58の一端(図で下端)に連結されるシート状部分60とを備える。筒状部分58には、高さ方向の中間位置に、径方向寸法が局部的に変化する段差58aが設けられる。また、シート状部分60には、筒状部分58の内部空間に連通する開口60aが形成される。なお、保護部材56の筒状部分58とシート状部分60とは、互いに一体成形することもできるし、別部材として形成して接着剤等により互いに固着することもできる(図2及び図5は、筒状部分58とシート状部分60とを一体成形してなる保護部材56を示す)。
【0040】
上記構成を有するキースイッチ装置10では、保護部材56が、同様にキートップ14の昇降動作に追従して弾性変形するゴム製要素である付勢部材22とは別の部材として、専らスイッチ内部構造への異物侵入を防止する目的で装備されるので、所要水準の異物侵入防止機能を発揮し得る最適な特性を有する保護部材56を用意することができる。したがって、低背型キーボードに好適に使用されるべく、キートップ14の案内構造として、相互連結部(図示実施形態では歯48、50)を中心として互いに開閉式に連動する一対のリンク部材16を備えたキースイッチ装置10において、内部構造への異物の侵入を確実かつ安定して防止できる一層厳格な防護機能が確保される。その結果、異物の存在によりキートップ14の打鍵操作特性が影響を受けたり接点部18の開閉動作の確度が低下したりすることを未然に防止可能な、操作性及び構造信頼性に優れたキースイッチ装置10が提供される。また、従来構造の低背型のキースイッチ装置に、保護部材56を追加するだけで、本発明に係るキースイッチ装置10を構成できるから、製造コストの上昇を抑制できる。
【0041】
保護部材56は、キートップ14に加わる付勢部材22の弾性付勢力によって与えられる打鍵操作感覚に、実質的な影響を及ぼすことなく、キートップ14の昇降動作に正確に追従して容易に変形する特性を有することが、極めて有利である。この場合、キートップ14の初期位置復帰動作は、付勢部材22が生じる弾性的な復元力に実質的に支配される。このような保護部材56の特性は、主として筒状部分58の形状、寸法、材質等の属性に依存して獲得される。この構成によれば、基部12とキートップ14との間に保護部材56を介在させているにも関わらず、キースイッチ装置10の打鍵操作特性に及ぼす影響を排除して(すなわちオペレータに操作上の違和感を与えることなく)、異物に対する高水準の防護機能を確保できる。
【0042】
保護部材56は、その筒状部分58の下端及びシート部分60が、基部12の第2支持板26に設けた一対の摺動支持部30の外側で、第2支持板26の上面26aに接触するように配置される(図2)。それにより保護部材56は、付勢部材22をスイッチ部材20の接点部18に隣接配置するための基部12の開口部28、及びリンク部材16を摺動可能に支持するための基部12の摺動支持部30(特に案内溝32)を、キートップ14の昇降動作の間、常に包囲して、異物の侵入から確実に防護する。その結果、異物の存在によってキートップ14の打鍵操作特性に影響が及ぼされたり接点部18の開閉動作の確度が低下したりすることが、未然に防止される。
【0043】
また、保護部材56は、その筒状部分58の上端58bが、キートップ14の内面14bに設置したリンク支持部材34の外側で、キートップ内面14bに接触するように配置される(図2)。それにより保護部材56は、リンク部材16を回動可能に連結するためのキートップ14のリンク支持部材34(特に軸受穴(回動支持部)36)を、キートップ14の昇降動作の間、常に包囲して、異物の侵入から確実に防護する。その結果、異物の存在によってキートップ14の打鍵操作特性に影響が及ぼされることが、未然に防止される。
【0044】
また、保護部材56は、キートップ14が前述した昇降動作の上限位置にあるときに、基部12とキートップ14とから初期圧力を受けた状態に置かれることが有利である。このような構成によれば、キースイッチ装置10の非使用時にも、保護部材56は、基部12とキートップ14との間に僅かに弾性変形した状態で安定して保持されるので、特にシート状部分60が基部12に対して浮き上がったりめくれたりすることが防止され、シート状部分60と基部12との間を通して異物が侵入する不具合が回避される。
【0045】
なお、上記した保護部材56は、図示のキースイッチ装置10に限らず、例えば、いわゆるパンタグラフ形式のリンク部材を有する従来構造のキースイッチ装置にも、好適に適用できるものである。そのような構成においても、内部構造への異物の侵入を確実かつ安定して防止できる防護機能を備えた、操作性及び構造信頼性に優れたキースイッチ装置が提供される。
【0046】
キースイッチ装置10において、キートップ14に装備されるリンク支持部材34は、平面視略矩形の平板状の主板部分62と、主板部分62の一対の縁に沿って互いに略平行に立設される一対の対向壁部分64とを備え、各対向壁部分64に、2個の軸受穴36が形成される(図3)。一対の対向壁部分64は、両者間に各リンク部材16の前述した第2端領域(回動支軸46を含む)を、実質的にがたつき無く安定して挿入可能な距離だけ互いに離れて配置される(図6(a)参照)。また、各軸受穴36は、その周縁に対向壁部分64の外縁まで連通するような切欠きを有さない貫通穴として形成され、対応のリンク部材16の円柱状の回動支軸46を、円滑に回転可能に受容する。なお、軸受穴36は、図示のような円形穴であることが望ましいが、回動支軸46の円滑な回転を妨げないことを前提として、多角形穴であっても良い。
【0047】
上記構成を有するリンク支持部材34を採用したことにより、キースイッチ装置10では、リンク部材を回動可能に連結するキートップの回動支持部に切欠き付きの貫通穴を設けた従来のキースイッチ装置に比べて、リンク部材16の回動支軸46が、リンク支持部材34の軸受穴36に、脱落を確実に防止しつつ一層安定して支持されることになる。したがって、例えばキートップ14の外縁14c(図1、図2)に、キートップ14を基部12から引き離すような外力が加わったときにも、リンク支持部材34の軸受穴36からリンク部材16の回動支軸46が外れてしまうことを確実に防止できる。また、そのような外力が過大であった場合には、リンク支持部材34がキートップ14から外れることで、リンク支持部材34の損傷を回避できる。その結果、キースイッチ装置10は、予期しないキートップ14の脱落を回避可能な、操作性及び構造信頼性に優れたものとなる。
【0048】
なお、キートップ14の外縁14cに基部12から引き離すような外力が意図せず加わることを未然に防止するために、例えば図2に示すように、前述した保護部材56のシート状部分60に、キートップ14の外縁14cから間隔を空けて配置される環状の突起66を設けることもできる。この場合も、図示のように突起66とシート状部分60とを一体成形してもよいし、別体の突起66をシート状部分60に接着剤等により固着してもよい。
【0049】
キースイッチ装置10を安全かつ容易に組み立てることができるように、リンク支持部材34は、少なくともその主板部分62に、各リンク部材16の一対の回動支軸46を、一対の対向壁部分64に設けた対応の軸受穴36に受容できるようにするための弾性を有する。以下、キースイッチ装置10の組立工程におけるリンク支持部材34へのリンク部材16の組付作業を説明する。
【0050】
リンク支持部材34は、平常時には、一対の対向壁部分64の間隔が、リンク部材16の両腕38、40の外面間の距離に、リンク部材16と対向壁部分64との円滑な摺動を妨げない範囲で、実質的に等しくなるように寸法設定される(図6(a))。そして、キースイッチ装置10の組立時には、リンク支持部材34を単体で、一対のリンク部材16の第2端領域に組み付ける。このとき、リンク支持部材34の両対向壁部分64の外縁を、各リンク部材16の一対の回動支軸46に押し付けた状態で、リンク支持部材34の主板部分62にさらに押圧力Fを加える(図6(b))。それにより、主板部分62が外側へ凹状に湾曲して、両対向壁部分64の間隔が末広がりに拡がるので、押圧力Fを加え続けることにより、個々の軸受穴36に対応の回動支軸46が嵌入される。その後、押圧力Fを解除することで、主板部分62が本来の平板形状に弾性的に復元し、両対向壁部分64が互いに平行な正規位置に復帰して、各リンク部材16の回動支軸46がリンク支持部材34の軸受穴36に安定支持される。
【0051】
上記した組付作業では、リンク部材16を1個ずつ順次にリンク支持部材34に組み付けるようにしても良いし、一対のリンク部材16を同時にまとめてリンク支持部材34に組み付けるようにしても良い。後者の場合、例えば基部12上で、歯48、50同士を互いに噛合させた一対のリンク部材16を、打鍵操作時の平置き状態(図5)に配置し、それらリンク部材16の上からリンク支持部材34を押し付けるようにして、組み付けることができる。なお、リンク支持部材34は、各リンク部材16の一対の回動支軸46を両対向壁部分64の間に円滑に挿入して対応の軸受穴36に正確に嵌入できるようにするために、図3に示すように、主板部分62に隣接する側の各対向壁部分64の内面に、案内溝68を有することが有利である。
【0052】
このようにして一対のリンク部材16にリンク支持部材34を組み付けた後に、キートップ14をリンク支持部材34に取り付ける。その目的で、キートップ14の内面14bには、リンク支持部材34を内面14bの所定位置に固定的に保持する複数の爪70が設けられる(図7参照)。それら爪70は、キートップ14の内面14bから直立状に突出し、各々の先端の鉤状部分70aで、リンク支持部材34の主板部分62の外縁領域に着脱可能に係合する。キースイッチ装置10の組立工程では、平置き状態の一対のリンク部材16に組み付けたリンク支持部材34に対し、キートップ14を上から被せて押し付けることで、リンク支持部材34の主板部分62を、僅かに弾性変形させつつ複数の爪70にスナップ式に係合させることができる。
【0053】
ここで、リンク支持部材34の主板部分62には、爪70との係合箇所を確保するために、図7に示すように、対向壁部分64を有さない他の縁から外方へ水平に延長される延長部分72を設けることができる。このような延長部分72に爪70を係合させる構成とすることで、例えばキートップ14の外縁14cに基部12から引き離すような外力が加わったときに、力点P1(外縁14c)と支点P2(力点P1から遠い側の軸受穴36)との距離に対する支点P2と作用点P3(力点P1に近い側の爪70)との距離の比が、従来のキースイッチ装置における力点(キートップ外縁)と支点(力点から遠い側の回動支持部)との距離に対する支点と作用点(力点に近い側の回動支持部)との距離の比よりも大きくなる。その結果、同じ大きさの外力に対して、キースイッチ装置10では、作用点P3に生じる力(すなわち力点P1に近い側の爪70を主板部分62から脱離させる力)が小さくなり、リンク支持部材34からのキートップ14の脱離、或いはそれに伴う爪70の損傷が、さらに効果的に防止される。
【0054】
キートップ14の内面14bに設けられる複数の爪70は、図7に示すように、各リンク部材16の回動軸線52(図1)に直交する方向へ互いに対向する位置に、互いに協働してリンク支持部材34を固定的に保持する一対の爪70が設置されるように構成できる(図では計二対の爪70が設けられている)。或いは、図8(a)に示すように、それら複数の爪70を、各リンク部材16の回動軸線52(図1)に平行な方向へ互いに対向する位置に、互いに協働してリンク支持部材34を固定的に保持する一対の爪70が設置されるように構成することもできる(図では計二対の爪70が設けられている)。さらに、図8(b)に示すように、各リンク部材16の回動軸線52(図1)に直交する方向及び平行な方向へそれぞれ互いに対向する位置に、計四対の爪70を設けることもできる。このような爪70の配置や個数は、キートップ14の寸法や、操作中に上記した力点になり易いキートップ14の外縁14c上の位置等を考慮して、最適化することができる。
【0055】
なお、上記したリンク支持部材34及びそれに関連するキートップ14の爪70の構成は、図示のキースイッチ装置10に限らず、例えば保護部材56を有さない従来構造のキースイッチ装置にも、好適に適用できるものである。そのような構成においても、予期しないキートップの脱落を回避可能な、操作性及び構造信頼性に優れたキースイッチ装置が提供される。
【0056】
図9及び図10は、本発明の関連技術に係るキースイッチ装置80を示す。キースイッチ装置80は、前述した本発明の実施形態によるキースイッチ装置10の構成要素と実質的同一の構成要素を含むものであり、そのような構成要素には共通の参照符号を付してその説明を省略する。
【0057】
キースイッチ装置80は、基部82と、基部82の上方に配置され、光透過性の記号領域84を有するキートップ86と、互いに連動してキートップ86を基部82に対し昇降方向(すなわち実質的鉛直方向)へ案内支持する一対のリンク部材16と、キートップ86の昇降動作に対応して開閉する接点部18を有するスイッチ部材20と、基部82に設けられ、キートップ86の記号領域84を透過する光Lを放射する発光部88とを備える。さらにキースイッチ装置80は、キートップ86に上昇方向への弾性付勢力(すなわち初期位置復帰力)を加えるとともに、キートップ86の昇降動作に対応してスイッチ部材20の接点部18を開閉させる付勢部材22を備える。キートップ86は、一対のリンク部材16が互いに連動することにより、基部82に対して鉛直方向へ、所定の姿勢を保持しつつ昇降動作できる。
【0058】
基部82は、前述したキースイッチ装置10における基部12の第1及び第2支持板24、26に加えて、第1支持板24の上面24aに載置される回路基板90と、回路基板90の上面90aに載置される第3支持板92と、第3支持板92の上面92aに載置される第4支持板94とを備えた積層構造を有する。回路基板90は、例えばフレキシブル回路基板の構成を有し、その所望位置(図では中央)に、発光部88の光源となるLED(発光ダイオード:図示せず)が実装される。なお、発光部88の光源として、LEDの代わりに、有機EL素子等の種々の発光素子を採用できる。
【0059】
第3支持板92は、金属又は樹脂製の薄板であって、キートップ14の下方位置に、発光部88が形成される。例えば、回路基板90に実装されるLEDが発光部88の位置に存在する場合には、発光部88は、LEDから放射される光を実質的に障害無く透過させ得る貫通穴、網状組織、透明領域等として、第3支持板92に形成される。また、回路基板90に光源として実装されるLEDが、キースイッチ装置10から離れた位置に存在する場合は、第3支持板92は、所望の導光性を有する樹脂材料からなる導光板として構成される。この場合、発光部88には、光源のLEDから導光板である第3支持板92を伝播した光の進行方向を、キートップ14に向かう方向へ転換させることが可能な、ドットパターン状の反射構造が設けられる。
【0060】
第4支持板94は、第3支持板92の上で、第2支持板26と協働して、スイッチ部材20を構成するメンブレンスイッチシート54を挟持する。第4支持板94には、第3支持板92に設けられた発光部88から放射される光の進行を妨げないように、発光部88に重畳する位置に開口部96が形成される。なお、開口部96は、メンブレンスイッチシート54に形成される接点部18に重畳する位置に配置されるので、キートップ14の打鍵操作時に接点部18を背面支持できるように、実際には複数の梁や支柱を含むことができる。また、メンブレンスイッチシート54は、少なくとも第4支持板94の開口部96に重畳する部分が、発光部88から放射される光の進行を妨げないように、透明又は半透明に形成される。
【0061】
キートップ86は、前述したキースイッチ装置10におけるキートップ14と同様に、操作面86a及び内面86bを有する。キートップ86では、前述したリンク支持部材34が使用されず、内面86bの所定位置に、各リンク部材16の第2端(上端)領域を回動可能に受容する回動支持部98が形成される。回動支持部98は、例えば切欠き付きの貫通穴からなる軸受穴(図示せず)を有する。なお、この構成に代えて、キースイッチ装置10と同様に、リンク支持部材34をキートップ86の内面86bに取り付ける構成とすることもできる。
【0062】
キートップ86は、光透過性を有する透明又は半透明の樹脂材料から好ましくは一体成形され、その表面に、所望色の下地が塗工されるとともに、さらに下地の上に、黒等の暗色の上塗りが塗工される。そして、例えばレーザを用いた文字入れ工程により、上塗りの所望箇所を局部的に除去することで、文字や符号等の所望の記号領域84が形成される。このようにして得られた記号領域84は、発光部88から放射された光Lを、キートップ86の内面86bから操作面86aへと透過させることができるものである。
【0063】
付勢部材22は、前述したキースイッチ装置10における付勢部材22と同様に、キートップ86とメンブレンスイッチシート54との間に配置される。つまり付勢部材22は、発光部88から記号領域84に至る光Lの伝搬路の途中に配置される。したがって、付勢部材22は、光Lを透過させることができる透明又は半透明の素材から形成される。それにより、発光部88から放射される光Lが、付勢部材22を透過してキートップ86の記号領域84に確実に到達する。
【0064】
キースイッチ装置80では、前述したキースイッチ装置10と同様に、キートップ86に外力が加わらないときには、付勢部材22がドーム頂部22aでキートップ86を基部12から鉛直上方へ離れたストローク上限位置に付勢支持する(図9)。このときメンブレンスイッチシート54は、接点部18が開いた状態にある。また、打鍵操作によりキートップ86が押下げられると、付勢部材22は、キートップ86の下降動作に伴い弾性変形して、キートップ86に上方への弾性付勢力(初期位置復帰力)を加えるとともに、キートップ86がストローク下限位置に達するときに、内面の突起22cでメンブレンスイッチシート54を外側から押圧して接点部18を閉成する(図10)。キートップ86への押下げ力が解除されると、付勢部材22が弾性的に復元し、キートップ86を上限位置へ復帰させるとともに、メンブレンスイッチシート54が復元して接点部18が開放される。
【0065】
キースイッチ装置80は、キートップ86が有する文字や符号等の記号領域84をキー内側から照らす構造(いわゆるバックライト構造)において、発光部88から放射される光Lを効率良く記号領域84に到達させるための内部遮光機能を備えている。詳述すれば、キースイッチ装置80は、発光部88から記号領域84に至る光Lの伝搬を妨げない位置で基部82とキートップ86との間に挿入配置される遮光部材100を備える。遮光部材100は、キートップ86の下降動作に伴い弾性変形可能なゴム製の環状要素であって、基部82とキートップ86との間で、キートップ86の昇降動作に追従して弾性変形して、一対のリンク部材16、スイッチ部材20の接点部18、及び付勢部材22を、常に包囲する姿勢を維持する。それにより遮光部材100は、キートップ14の昇降動作の間、基部82とキートップ86との間隙を通した光Lの、スイッチ外部への漏出を確実かつ安定して防止する(図9及び図10参照)。
【0066】
遮光部材100は、前述したキースイッチ装置10における保護部材56と同様の構成を有する。すなわち遮光部材100は、光Lに対する主たる遮光機能を発揮する平面視略矩形の筒状部分102と、筒状部分102の一端(図で下端)に連結されるシート状部分104とを備える。筒状部分102には、高さ方向の中間位置に、径方向寸法が局部的に変化する段差102aが設けられる。また、シート状部分104には、筒状部分102の内部空間に連通する開口104aが形成される。さらに、遮光部材100は、光Lの漏出を確実に防止できるように、少なくとも筒状部分102が、光不透過性の色を有して形成される。
【0067】
なお、遮光部材100の筒状部分102とシート状部分104とは、互いに一体成形することもできるし、別部材として形成して接着剤等により互いに固着することもできる(図9及び図10は、別体の筒状部分102とシート状部分104とを互いに固着してなる遮光部材100を示す)。また、遮光部材100のシート状部分104には、キートップ86の外縁86cに基部82から引き離すような外力が意図せず加わることを未然に防止するための環状の突起106を、キートップ86の外縁86cから間隔を空けて設置することもできる。この場合も、図示のように、別体の突起106をシート状部分104に接着剤等により固着してもよいし、突起106とシート状部分104とを一体成形してもよい。
【0068】
上記構成を有するキースイッチ装置80では、遮光部材100が、同様にキートップ86の昇降動作に追従して弾性変形するゴム製要素である付勢部材22とは別の部材として、専らスイッチ内部からの光Lの漏出を防止する目的で装備されるので、所要水準の光漏出防止機能を発揮し得る最適な特性を有する遮光部材100を用意することができる。したがって、低背型キーボードに好適に使用されるべく、キートップ86の案内構造として、相互連結部(図示の形態では歯48、50)を中心として互いに開閉式に連動する一対のリンク部材16を備えたキースイッチ装置80において、バックライト用の光Lが基部82とキートップ86との間隙を通して外部へ漏出することを確実かつ安定して防止できる高水準の内部遮光機能が確保される。その結果、発光部88から放射される光Lを効率良く記号領域84に到達させて記号領域84の視認性を向上させることが可能な、操作性及び構造信頼性に優れたキースイッチ装置80が提供される。また、従来構造の低背型かつバックライト構造のキースイッチ装置に、遮光部材100を追加するだけで、キースイッチ装置80を構成できるから、製造コストの上昇を抑制できる。
【0069】
遮光部材100は、キートップ86に加わる付勢部材22の弾性付勢力によって与えられる打鍵操作感覚に、実質的な影響を及ぼすことなく、キートップ86の昇降動作に正確に追従して容易に変形する特性を有することが、極めて有利である。この場合、キートップ86の初期位置復帰動作は、付勢部材22が生じる弾性的な復元力に実質的に支配される。このような遮光部材100の特性は、主として筒状部分102の形状、寸法、材質等の属性に依存して獲得される。この構成によれば、基部82とキートップ86との間に遮光部材100を介在させているにも関わらず、キースイッチ装置80の打鍵操作特性に及ぼす影響を排除して(すなわちオペレータに操作上の違和感を与えることなく)、バックライト光に対する高水準の遮光機能を確保できる。
【0070】
遮光部材100は、その筒状部分102の下端及びシート部分104が、基部82の第2支持板26に設けた一対の摺動支持部30の外側で、第2支持板26の上面26aに接触するように配置される(図9)。それにより遮光部材100は、付勢部材22をスイッチ部材20に隣接配置するための基部82の第2支持板26の開口部28(図1)、及びリンク部材16を摺動可能に支持するための基部82の第2支持板26の摺動支持部30(特に案内溝32)を、キートップ14の昇降動作の間、常に包囲して、それらを通って拡散する光Lがキー外部に漏出することを確実に防止する。
【0071】
また、遮光部材100は、キートップ86が前述した昇降動作の上限位置にあるときに、基部82とキートップ86とから初期圧力を受けた状態に置かれることが有利である。このような構成によれば、キースイッチ装置80の非使用時にも、遮光部材100は、基部82とキートップ86との間に僅かに弾性変形した状態で保持されるので、特にシート状部分104が基部82に対して浮き上がったりめくれたりすることが防止され、発光部88からの光Lがシート状部分104と基部82との間を通して漏出する不具合が回避される。
【0072】
なお、上記した遮光部材100は、図示のキースイッチ装置80に限らず、例えば、いわゆるパンタグラフ形式のリンク部材を有する従来構造のキースイッチ装置にも、好適に適用できるものである。そのような構成においても、バックライト光を効率良くキートップの記号領域に到達させ得る内部遮光機能を備えた、操作性及び構造信頼性に優れたキースイッチ装置が提供される。
【0073】
図11は、前述したキースイッチ装置10又はキースイッチ装置80を、複数個、所定配置に配列して備えた本発明の一実施形態によるキーボード110の、主要構成要素を概略分解図で示す。キーボード110は、ノート型やパームトップ型のパーソナルコンピュータ等の、携帯型電子機器の入力装置として使用できる低背構造を有する。キーボード110では、前述したキースイッチ装置10、80における基部12、82及びスイッチ部材20のメンブレンスイッチシート54がそれぞれ、キーボード110に組み込まれる全てのキースイッチ装置10、80に対して共通する大判の基部12′、82′及びメンブレンスイッチシート54′として形成されている。さらに、キースイッチ装置10、80における保護部材56又は遮光部材100のシート状部分60、104が、全てのキースイッチ装置10、80に対して共通する大判のシート部材60′、104′として形成されている。また、個々のキースイッチ装置10、80において、キートップ14、86に取り付けられるリンク支持部材34が採用されている。このような構成を有するキーボード110は、低背型で、かつ操作性及び構造信頼性に優れたものとなる。
【0074】
キーボード110は、図12に示すように、個々のキースイッチ装置10、80が有する保護部材56又は遮光部材100の筒状部分58、102が、予め大判のシート部材60′、104′に一体に成形された構成を採用することができる。つまりこの場合、複数のキースイッチ装置10、80の各々の保護部材56又は遮光部材100が、それらキースイッチ装置10、80を包含する範囲に広がるシート部材60′、104′を、一体に有することになる。
【0075】
或いは図13に示すように、個々のキースイッチ装置10、80が有する保護部材56又は遮光部材100の筒状部分58、102と大判のシート部材60′、104′とを、予め別々に成形し(図13(a))、後工程で、筒状部分58、102をシート部材60′、104′に接着剤等により固着する(図13(b))構成を採用することができる。つまりこの場合、複数のキースイッチ装置10、80の各々の保護部材56又は遮光部材100が、それらキースイッチ装置10、80を包含する範囲に広がるシート部材60′、104′に、接着剤等により固着されたものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】本発明の一実施形態によるキースイッチ装置を示す分解斜視図である。
【図2】図1のキースイッチ装置を非操作時の状態で示す組立断面図である。
【図3】図1のキースイッチ装置で使用されるリンク支持部材を下方から示す拡大斜視図である。
【図4】図1のキースイッチ装置で使用される一対のリンク部材を下方から示す拡大斜視図である。
【図5】図1のキースイッチ装置を打鍵操作時の状態で示す組立断面図である。
【図6】図1のキースイッチ装置におけるリンク支持部材の作用を説明する図で、(a)リンク部材を連結する前の状態、及び(b)リンク部材を連結する途中の状態を、それぞれ模式図的に示す図である。
【図7】図1のキースイッチ装置におけるリンク支持部材の変形例を、キートップ及びリンク部材と共に下方から示す分解斜視図である。
【図8】図7のキートップの(a)第1変形例及び(b)第2変形例を、それぞれ下方から示す斜視図である。
【図9】本発明の関連技術に係るキースイッチ装置を非操作時の状態で示す組立断面図である。
【図10】図9のキースイッチ装置を打鍵操作時の状態で示す組立断面図である。
【図11】本発明の一実施形態によるキーボードの主要構成要素の一部分を示す分解斜視図である。
【図12】図11のキーボードで使用される保護部材/遮光部材の断面図である。
【図13】変形例による保護部材/遮光部材の断面図で、(a)組立前の状態及び(b)組立後の状態をそれぞれ示す。
【符号の説明】
【0077】
10、80 キースイッチ装置
12、82 基部
14、86 キートップ
16 リンク部材
18 接点部
20 スイッチ部材
22 付勢部材
30 摺動支持部
34 リンク支持部材
36 軸受穴(回動支持部)
44 摺動支軸
46 回動支軸
48、50 歯
54 メンブレンスイッチシート
56 保護部材
84 記号領域
88 発光部
100 遮光部材
110 キーボード
60′、104′ シート部材
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基部と、該基部の上方に配置されるキートップと、互いに連動して該キートップを該基部に対し昇降方向へ案内支持する一対のリンク部材と、該キートップの昇降動作に対応して開閉する接点部を有するスイッチ部材とを具備するキースイッチ装置において、
前記キートップに取り付けられ、前記一対のリンク部材を回動可能に支持するリンク支持部材を具備し、
前記一対のリンク部材は、それぞれの一端領域に、互いに歯車状に噛合する歯と、前記リンク支持部材に回動可能に連結される一対の回動支軸とを備え、
前記リンク支持部材は、前記一対のリンク部材のそれぞれの前記回動支軸を受容する二対の軸受穴を備え、それら軸受穴の各々が、周縁に切欠きを有さない貫通穴として形成されていること、
を特徴とするキースイッチ装置。
【請求項2】
前記リンク支持部材は、主板部分と、該主板部分の一対の縁に沿って互いに略平行に立設される一対の対向壁部分とを備え、該対向壁部分の各々に、2個の前記軸受穴が形成され、該主板部分は、前記一対のリンク部材の各々の前記一対の回動支軸を、該一対の対向壁部分に設けた対応の前記軸受穴に受容できるようにするための弾性を有する、請求項1に記載のキースイッチ装置。
【請求項3】
前記キートップは、操作面と、該操作面の反対側の内面とを有し、該内面に、前記リンク支持部材に着脱可能に係合して該リンク支持部材を該内面の所定位置に固定的に保持する爪が設けられる、請求項1又は2に記載のキースイッチ装置。
【請求項4】
前記キートップは、前記一対のリンク部材の各々の回動軸線に直交する方向へ互いに対向する位置に、互いに協働して前記リンク支持部材を固定的に保持する一組の前記爪を有する、請求項3に記載のキースイッチ装置。
【請求項5】
前記キートップは、前記一対のリンク部材の各々の回動軸線に平行な方向へ互いに対向する位置に、互いに協働して前記リンク支持部材を固定的に保持する一組の前記爪を有する、請求項3又は4に記載のキースイッチ装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載のキースイッチ装置を複数個、配列して構成されるキーボード。
【請求項1】
基部と、該基部の上方に配置されるキートップと、互いに連動して該キートップを該基部に対し昇降方向へ案内支持する一対のリンク部材と、該キートップの昇降動作に対応して開閉する接点部を有するスイッチ部材とを具備するキースイッチ装置において、
前記キートップに取り付けられ、前記一対のリンク部材を回動可能に支持するリンク支持部材を具備し、
前記一対のリンク部材は、それぞれの一端領域に、互いに歯車状に噛合する歯と、前記リンク支持部材に回動可能に連結される一対の回動支軸とを備え、
前記リンク支持部材は、前記一対のリンク部材のそれぞれの前記回動支軸を受容する二対の軸受穴を備え、それら軸受穴の各々が、周縁に切欠きを有さない貫通穴として形成されていること、
を特徴とするキースイッチ装置。
【請求項2】
前記リンク支持部材は、主板部分と、該主板部分の一対の縁に沿って互いに略平行に立設される一対の対向壁部分とを備え、該対向壁部分の各々に、2個の前記軸受穴が形成され、該主板部分は、前記一対のリンク部材の各々の前記一対の回動支軸を、該一対の対向壁部分に設けた対応の前記軸受穴に受容できるようにするための弾性を有する、請求項1に記載のキースイッチ装置。
【請求項3】
前記キートップは、操作面と、該操作面の反対側の内面とを有し、該内面に、前記リンク支持部材に着脱可能に係合して該リンク支持部材を該内面の所定位置に固定的に保持する爪が設けられる、請求項1又は2に記載のキースイッチ装置。
【請求項4】
前記キートップは、前記一対のリンク部材の各々の回動軸線に直交する方向へ互いに対向する位置に、互いに協働して前記リンク支持部材を固定的に保持する一組の前記爪を有する、請求項3に記載のキースイッチ装置。
【請求項5】
前記キートップは、前記一対のリンク部材の各々の回動軸線に平行な方向へ互いに対向する位置に、互いに協働して前記リンク支持部材を固定的に保持する一組の前記爪を有する、請求項3又は4に記載のキースイッチ装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載のキースイッチ装置を複数個、配列して構成されるキーボード。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2008−21423(P2008−21423A)
【公開日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−189726(P2006−189726)
【出願日】平成18年7月10日(2006.7.10)
【出願人】(501398606)富士通コンポーネント株式会社 (848)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年7月10日(2006.7.10)
【出願人】(501398606)富士通コンポーネント株式会社 (848)
【Fターム(参考)】
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