説明

ギアシャフト取付部構造

【課題】主に、ギアシャフトの取付を容易化し得るようにする。
【解決手段】ギアシャフト2が、シャフト取付用筒部6に対し、一端側に開口部22aを有してギアシャフト2を内部に収容保持可能な治具本体筒部22と、治具本体筒部22の他端側に設けられて治具本体筒部22の内部に収容保持されたギアシャフト2をシャフト取付用筒部6の内部へと押込可能な治具操作部23とを有する取付治具21を用いて取付けられるものとされる。そのために、ギアシャフト2が、弾接部材16と協働して治具本体筒部22の内部での位置保持が可能な治具保持部25を有する。シャフト取付用筒部6が、ギアシャフト2の押込時に、治具本体筒部22の一端側をシャフト取付用筒部6の手前側開口部に対して連接可能な治具連接部26を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ギアシャフトの取付を容易化し得るようにしたギアシャフト取付部構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車などの車両には、車室内の前部にインストルメントパネルが設置されている。このインストルメントパネルの運転席と助手席との間の部分などには、空調装置の操作パネル(空調コントロールパネル)が設けられている。この操作パネルには、ダイヤルを回転させて空調モードや風量などを設定、変更し得るようにした回転ダイヤル式のものが存在している(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
上記した操作パネルは、ベース部材に設けられたシャフト取付用筒部の内部に、ギアシャフトを挿入配置すると共に、節度感発生部によって、ギアシャフトの回転に伴い節度感が発生されるようにしている。
【0004】
この節度感発生部は、シャフト取付用筒部の内周面に対し、周方向に沿って複数設けられた軸線方向へ延びる節度感発生用溝部と、ギアシャフトから半径方向へ突設された筒状保持部材と、筒状保持部材の内部にスプリングを介して出入自在に収容保持されたボールとを備えている。そして、筒状保持部材に収容されたボールが、スプリングの付勢力によって節度感発生用溝部に弾接するよう構成されている。
【0005】
このような構成によれば、節度感発生部によって、ギアシャフトの回転に伴い節度感が発生される。
【0006】
節度感発生部では、筒状保持部材にスプリングを介して出入自在に収容保持されたボールが、節度感発生用溝部に弾接した状態で周方向に相対変位する際に、節度感発生用溝部を乗越えることにより、節度感を発生させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平10−301651号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記特許文献1に記載されたギアシャフト取付部構造では、以下のような問題があった。
【0009】
即ち、ベース部材に設けられたシャフト取付用筒部の内部に、ギアシャフトを挿入配置する際に、筒状保持部材にスプリングを介してボールを収容させた状態に保ち続けなければならず、作業がやり難いという問題があった。
【0010】
そのため、シャフト取付用筒部の先端部に、ボールを案内および保持するための傾斜したボールガイドを設けるようにしているが、このボールガイドは、ベース部材の形状が複雑であるような場合などには、うまく設けられなかったり、うまく機能しなかったりするなどの問題があると共に、組付後には邪魔になるという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明は、ベース部材に設けられたシャフト取付用筒部の内部に、ギアシャフトを挿入配置し、前記シャフト取付用筒部に対して前記ギアシャフトを、シャフト軸支部によって回転可能で且つ軸線方向へ移動不能に係止保持すると共に、節度感発生部によって、ギアシャフトの回転に伴い節度感が発生されるように構成し、前記節度感発生部が、前記シャフト取付用筒部の内周面に対し、周方向に沿って複数設けられた軸線方向へ延びる節度感発生用溝部と、前記ギアシャフトから半径方向へ突設された筒状保持部材と、該筒状保持部材の内部に弾性体を介して出入自在に収容保持されることにより、前記シャフト取付用筒部の内周面の前記節度感発生用溝部が設けられた部分に弾性体の弾性力によって弾接可能な弾接部材とを備えたギアシャフト取付部構造において、前記ギアシャフトが、前記シャフト取付用筒部に対し、一端側に開口部を有して前記ギアシャフトを内部に収容保持可能な治具本体筒部と、該治具本体筒部の他端側に設けられて治具本体筒部の内部に収容保持された前記ギアシャフトを前記シャフト取付用筒部の内部へと押込可能な治具操作部とを有する取付治具を用いて取付けられるものとされ、前記ギアシャフトが、前記弾接部材と協働して前記治具本体筒部の内部での位置保持が可能な治具保持部を有し、前記シャフト取付用筒部が、前記ギアシャフトの押込時に、前記治具本体筒部の一端側を前記シャフト取付用筒部の手前側開口部に対して連接可能な治具連接部を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、上記構成によって、以下のような作用効果を得ることができる。即ち、ギアシャフトは、シャフト取付用筒部に対し、取付治具を用いて取付けられる。取付治具は、治具本体筒部の一端側に設けられた開口部からギアシャフトを治具本体筒部の内部へ収容保持する。そして、治具本体筒部の他端側に設けられた治具操作部によって、治具本体筒部の内部に収容保持されたギアシャフトを、シャフト取付用筒部の内部へ押込むようにする。この際、ギアシャフトは、治具保持部によって、弾接部材と協働して治具本体筒部の内部での位置保持を行う。ギアシャフトの押込時には、治具本体筒部の一端側をシャフト取付用筒部の手前側開口部に設けられた治具連接部に対して連接させて、ギアシャフトの軸線方向の位置を合わせるようにようにする。この際、シャフト取付用筒部へのギアシャフトの取付けに、取付治具を用いるようにしているので、ベース部材やシャフト取付用筒部の形状が複雑であっても、ギアシャフトの取付を容易化することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施例にかかるギアシャフト取付部構造の分解斜視図である。
【図2】図1の組立後の状態を示す図である。
【図3】図1の部分拡大図である。
【図4】図1のギアシャフトの斜視図である。
【図5】取付治具の斜視図である。
【図6】図5の側面図である。
【図7】図6の断面図である。
【図8】図5を一端側からみた斜視図である。
【図9】図8の取付治具にギアシャフトをセットした状態を示す図である。
【図10】図7の部分拡大図である。
【図11】(a)(b)は、図10のA−A線に沿った断面を示すものである。
【図12】取付治具にギアシャフトを取付ける行程を示す作動図である。
【図13】図12に続く作動図である。
【図14】図13に続く作動図である。
【図15】図14に続く作動図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を具体化した実施例を、図面を用いて詳細に説明する。
【0015】
図1〜図15は、この実施例およびその変形例を示すものである。
【実施例】
【0016】
<構成>以下、構成について説明する。
【0017】
自動車などの車両には、車室内の前部にインストルメントパネルが設置されている。このインストルメントパネルの運転席と助手席との間の部分などには、空調装置の操作パネル(空調コントロールパネル)が設けられている。この操作パネルには、ダイヤルを回転させて空調モードや風量などを設定、変更し得るようにした回転ダイヤル式のものが存在している。
【0018】
上記した回転ダイヤル式の操作パネルは、図1に示すように、ベース部材1と、ギアシャフト2と、図示しない表面パネルと、図示しないダイヤルとを有している。
【0019】
上記した操作パネルでは、ベース部材1に設けられたシャフト取付用筒部6の内部に、図2に示すように、ギアシャフト2が挿入配置されるようになっている。その後、ベース部材1の表面に、上記した表面パネルが取付けられ、更に、表面パネルの表面側から上記したダイヤルがギアシャフト2の手前側端部に取付けられる。
【0020】
この際、図3(図4も併せて参照)に示すように、シャフト取付用筒部6に対してギアシャフト2を、シャフト軸支部7によって回転可能で且つ軸線方向8へ移動不能に係止保持するようにしている。また、節度感発生部9によって、ギアシャフト2の回動に伴い節度感が発生されるようにしている。
【0021】
なお、シャフト軸支部7については後述する。
【0022】
そして、上記した節度感発生部9は、シャフト取付用筒部6の内周面に対し、周方向11に沿って複数設けられた節度感発生用溝部12と、ギアシャフト2から半径方向13へ突設された筒状保持部材14と、筒状保持部材14の内部に弾性体15を介して出入自在に収容保持された弾接部材16とを備えている。節度感発生用溝部12は、軸線方向8へ延びるものとされる。弾接部材16は、シャフト取付用筒部6の内周面の節度感発生用溝部12が設けられた部分に対して、弾性体15の弾性力によって弾接可能なものである。そして、この筒状保持部材14と、弾性体15と、弾接部材16とによって、ギアシャフト2側の弾接部が構成される。
【0023】
ここで、主に図4に示すように、上記したギアシャフト2は、奥側の端部に、操作用のギヤ部2aを有している。また、ギアシャフト2は、手前側の端部にダイヤルを取付けるためのダイヤル取付部2bを有している。この場合、ダイヤル取付部2bは先割形状のものとされているが、これに限るものではない(例えば小判型の断面を有するものなどとすることができる)。
【0024】
また、主に図3に示すように、シャフト取付用筒部6は、円筒状のものとされている。そして、上記したギアシャフト2は、シャフト取付用筒部6に対して、軸線を合わせた状態で挿入配置される。
【0025】
シャフト軸支部7および節度感発生部9は、シャフト取付用筒部6の内側とギアシャフト2の外側との間に設けられる。そして、シャフト軸支部7はシャフト取付用筒部6の奥側に設けられ、また、節度感発生部9はシャフト取付用筒部6の手前側に設けられている。
【0026】
複数の節度感発生用溝部12は、全体として多角状のものとされている。この多角状の節度感発生用溝部12は、各辺を、内方へ突出する円弧状や、台形状や、面取した台形状などとすることができる。
【0027】
弾性体15には、コイルスプリングが用いられている。弾接部材16には、ボールが使用されている。但し、弾接部材16は、ボールに限るものではなく、例えば、先端が丸められたピン状のものなどとすることができる。
【0028】
筒状保持部材14(この場合には、ボール保持部材)は、内部に弾性体15を収容可能な円筒状の空間を有する角筒状の外形のものとされている。但し、筒状保持部材14の外形形状は、これに限るものではない。筒状保持部材14には、必要に応じて、先端側に部分的な割れ目などを形成することができる。
【0029】
そして、以上のような基本構成に対し、この実施例のものでは、以下のような構成を備えるようにしている。
【0030】
(構成1)
上記したギアシャフト2が、シャフト取付用筒部6に対し、図5〜図11(主に図7参照。以下同様)に示すような取付治具21を用いて取付けられるものとされる。この取付治具21は、一端側に開口部22aを有してギアシャフト2を内部に収容保持可能な治具本体筒部22と、治具本体筒部22の他端側に設けられた治具操作部23とを有するものとされる。この治具操作部23は、治具本体筒部22の内部に収容保持されたギアシャフト2をシャフト取付用筒部6の内部へと押込可能なものである。
【0031】
そして、図3に示すように、ギアシャフト2が、治具保持部25を有するものとされる。この治具保持部25は、弾接部材16と協働して治具本体筒部22の内部での位置保持が可能なものとされる。
【0032】
また、シャフト取付用筒部6が、治具連接部26を有するものとされる。この治具連接部26は、ギアシャフト2の押込時に、治具本体筒部22の一端側をシャフト取付用筒部6の手前側開口部に対して連接可能なものとされる。
【0033】
ここで、図5〜図11に示すように、上記した取付治具21の治具本体筒部22は、円筒状のものとされる。
【0034】
また、治具操作部23は、図7に示すように、中空の軸部23aと、操作面部23bと、復帰バネ23cとを有するものとされる。中空の軸部23aは、ギアシャフト2の手前側の部分(ダイヤル取付部2bなど)を非接触状態で収容可能なものである。操作面部23bは、軸部23aの他端側にネジ止めなどによって固定される。復帰バネ23cは、軸部23aの外周に装着されると共に、治具本体筒部22の他端面と操作面部23bとの間に介装されて、操作面部23bを治具本体筒部22の他端面から離反する方向へ付勢するものである。
【0035】
上記した軸部23aは、治具本体筒部22の他端面に設けられた貫通孔22cから治具本体筒部22の内部へ挿入される。軸部23aの治具本体筒部22の内部へ挿入された一端側には、抜止用およびギアシャフト2を押圧するためのフランジ状の押圧部23dが設けられている。なお、取付治具21には、その各部に、軽量化のための抜孔などを適宜設けるようにしても良い。
【0036】
(構成2)
上記において、図3または図4に示すように、上記したギアシャフト2の治具保持部25が、ギアシャフト2の外周部に張出形成されて、治具本体筒部22の内部に摺接嵌合されると共に、シャフト取付用筒部6の手前側開口部の端面に当接係止可能な大径フランジ部28とされる。
【0037】
また、図3に示すように、上記したシャフト取付用筒部6の治具連接部26が、シャフト取付用筒部6の手前側開口部の端面から大径フランジ部28の外径とほぼ等しい内径を有して手前側へ突出すると共に、治具本体筒部22の内部に摺接嵌合可能な筒状突出壁部29とされる。
【0038】
更に、上記した大径フランジ部28と筒状突出壁部29とが、治具本体筒部22に設けられた位置規定部31(図7など参照)を介して、周方向11の位置決めが可能な取付位置決定部32,33をそれぞれ有している。
【0039】
ここで、治具保持部25となる大径フランジ部28の取付位置決定部32は、大径フランジ部28を切欠いてなる切欠部32aとされる。この切欠部32aは、上記した筒状保持部材14と周方向11に合致する位置に設けられる。
【0040】
また、治具連接部26となる筒状突出壁部29の取付位置決定部33は、筒状突出壁部29に切込を入れてなる切込部33aとされる。切欠部32aと切込部33aとは、治具本体筒部22の位置規定部31を介して周方向11の位置を合わせることにより、同時に位置決めされる。
【0041】
そして、取付治具21の治具本体筒部22は、大径フランジ部28の外周とほぼ径が等しいか若干径の大きい内周面を有すると共に、一端側の開口部22aの内周面に、筒状突出壁部29の端面および外周面に当接可能な短い段差形状の拡径部22dを有している。
【0042】
治具本体筒部22の位置規定部31は、拡径部22dおよびその周辺の部分に設けられた突状嵌合部31aを有している。この突状嵌合部31aは、大径フランジ部28の切欠部32aと、筒状突出壁部29の切込部33aとに対して嵌合可能な大きさおよび形状のものとされる。
【0043】
(構成3)
そして、上記したシャフト取付用筒部6とギアシャフト2との間のシャフト軸支部7が、図3に示すように、シャフト取付用筒部6の奥部に対し軸線方向8に複数段設けられた爪部35,36と、図4に示すように、ギアシャフト2の外周部に張出形成されて複数段の爪部35,36のそれぞれに対し回転可能で且つ軸線方向8へ移動不能に係止可能な複数段の小径フランジ部37,38とを備えている。
【0044】
そして、治具本体筒部22の一端側の開口部22aをシャフト取付用筒部6の手前側開口部に対して連接した時に、最も手前側の爪部36と最も奥側の小径フランジ部37とが係止されて、ギアシャフト2が軸線方向8および半径方向に仮保持されるよう構成されている。
【0045】
また、最も手前側の爪部36には、上記仮保持の際に、ギアシャフト2の概略の芯出しを行わせる傾斜面部36aが設けられている。
【0046】
この場合、爪部35,36と、小径フランジ部37,38とはそれぞれ二段に設けられている。
【0047】
そして、二段の爪部35,36は、係止方向が軸線方向8に対してそれぞれ逆向きとされている。即ち、手前側の爪部36は、手前側の小径フランジ部38の手前側の面に係止することにより、ギアシャフト2の引抜きを防止可能なものとされている。また、奥側の爪部35は、奥側の小径フランジ部37の奥側の面に係止することにより、ギアシャフト2のそれ以上の押込みを防止可能なものとされている。
【0048】
上記した爪部35,36は、シャフト取付用筒部6の奥部に同心状に設けられた内筒41に設けられている。この内筒41は、リブ状の内筒支持部42によってシャフト取付用筒部6に一体に形成されている。この場合、二段の爪部35,36は、各段でそれぞれ周方向11の位相を180度ズラせて2個ずつ設けられると共に、全体として周方向11の位相を90度ズラせて十文字状に配置されている。
【0049】
また、手前側の爪部36の傾斜面部36aは、奥側へ進むに従い内方へ近づくものとされる。
【0050】
(構成4)
上記において、ギアシャフト2の大径フランジ部28が、その治具操作部23側の面に、シャフト位置設定部44を有している。このシャフト位置設定部44は、治具操作部23に対して当接することにより、ギアシャフト2の仮保持位置を設定すると共に、治具操作部23とギアシャフト2の他の部分との接触を防止可能なものである。
【0051】
ここで、上記したシャフト位置設定部44は、ギアシャフト2と同心の厚肉状の環状部44aとされる。シャフト位置設定部44の環状部44aは、軸線方向の上記した仮保持位置を設定可能な厚さとされる。シャフト位置設定部44は、治具操作部23のフランジ状の押圧部23dとほぼ同じかそれよりも若干径の大きいものとされて、押圧部23dに対して当接される。
【0052】
ギアシャフト2の他の部分とは、主に、ギアシャフト2の大径フランジ部28よりも手前側の軸部分や、その端部に設けられたダイヤル取付部2bなどを指している。これにより、取付時におけるダイヤル取付部2bの損傷防止が図られる。
【0053】
(構成5)
上記において、ボールなどの弾接部材16が、治具本体筒部22の内部で、図7に示すように、他端側(操作面部23bの側)へ進むに従い中心へ向かう短い導入用斜面部46と、導入用斜面部46の他端側に位置して、他端側へ向かって緩やかに半径方向13外方へ向かう案内面部47とを有する弾接部材案内保持部48によって軸線方向8に案内および保持されるようになされている。
【0054】
ここで、弾接部材案内保持部48の導入用斜面部46および案内面部47は、位置規定部31の部分に対して設けられている。
【0055】
(構成6)
上記において、ボールなどの弾接部材16が、導入用斜面部46と案内面部47との間に設けられた角取部51によって滑らかに案内面部47へと移行され、案内面部47の他端寄りの位置に設けられた案内面部47とは逆勾配の緩い停止用傾斜面部52によって自然停止されるように構成されている。
【0056】
この場合、案内面部47と停止用傾斜面部52との間にも、緩いアール部53を設けるようにしても良い。
【0057】
(構成7)
上記において、図11に示すように、ボールなどの弾接部材16が、案内面部47に設けられた軸線方向8へ延びる溝部55によって軸線方向8に案内されると共に、周方向11の位置が安定されるようになされている。
【0058】
ここで、溝部55は、図11(a)に示すような角溝55aとしても、図11(b)に示すような丸溝55bとしても良い。また、溝部55は、導入用斜面部46に対しても設けるようにしても良い。
【0059】
(構成8)
上記において、ボールなどの弾接部材16が、治具本体筒部22の外周面に設けられた軸線方向8へ延びる装着補助溝部57を利用して筒状保持部材14に装着されるようになされている。
【0060】
ここで、上記した装着補助溝部57は、弾接部材16の筒状保持部材14への装着作業性や、治具本体筒部22に対する指掛かり性などを考慮して、筒状保持部材14の幅寸法とほぼ等しい幅寸法を有するものとされる。
【0061】
<作用>以下、この実施例の作用について説明する。
【0062】
ベース部材1に設けられたシャフト取付用筒部6の内部に、ギアシャフト2を挿入配置する。
【0063】
そして、シャフト軸支部7によって、ギアシャフト2を、シャフト取付用筒部6に対し、回転可能で且つ軸線方向8へ移動不能に係止保持させる。
【0064】
また、節度感発生部9によって、ギアシャフト2の回転に伴い節度感が発生されるようにする。
【0065】
節度感発生部9では、筒状保持部材14に弾性体15を介して出入自在に収容保持された弾接部材16が、節度感発生用溝部12に弾接した状態で周方向11に相対変位する際に、節度感発生用溝部12を乗越えることにより、節度感が発生されることになる。
【0066】
<効果>この実施例によれば、以下のような効果を得ることができる。
【0067】
(効果1)
ギアシャフト2は、シャフト取付用筒部6に対し、取付治具21を用いて取付けられる。
【0068】
即ち、図12〜図14に順に示すように、取付治具21は、治具本体筒部22の一端側に設けられた開口部22aからギアシャフト2を治具本体筒部22の内部へ収容保持させるようにする。そして、図15に示すように、治具本体筒部22の他端側に設けられた治具操作部23によって、治具本体筒部22の内部に収容保持されたギアシャフト2を、シャフト取付用筒部6の内部へ押込むようにする。
【0069】
この際、ギアシャフト2は、治具保持部25によって、弾接部材16と協働して治具本体筒部22の内部での位置保持がなされる。
【0070】
ギアシャフト2の押込時には、治具本体筒部22の一端側をシャフト取付用筒部6の手前側開口部に設けられた治具連接部26に対して連接させて、ギアシャフト2の軸線方向8の位置を合わせるようにする。
【0071】
そして、シャフト取付用筒部6へギアシャフト2を取付けるのに、上記したような専用の取付治具21を用いるようにしているので、ベース部材1やシャフト取付用筒部6の形状が複雑であっても、ギアシャフト2の取付を容易化することが可能となる。
【0072】
(効果2)
そして、治具保持部25としての大径フランジ部28は、治具本体筒部22の内部に摺接嵌合されると共に、シャフト取付用筒部6の手前側開口部の端面に当接係止されることになる。
【0073】
また、治具連接部26としての筒状突出壁部29は、治具本体筒部22の内部に摺接嵌合されることになる。
【0074】
そして、大径フランジ部28と筒状突出壁部29とは、取付位置決定部32,33と、治具本体筒部22に設けられた位置規定部31とによって、周方向11の位置決めが行われる。
【0075】
(効果3)
ベース部材1のシャフト軸支部7では、ギアシャフト2の外周部に張出形成された複数段の小径フランジ部37,38が、シャフト取付用筒部6の奥部に対し軸線方向8に複数段設けられた爪部35,36のそれぞれに対し回転可能で且つ軸線方向8へ移動不能に係止されることにより、ギアシャフト2が保持される。
【0076】
そして、治具本体筒部22の一端側をシャフト取付用筒部6の手前側開口部に対して連接した時に、最も手前側の爪部36と最も奥側の小径フランジ部37とが係止されて、ギアシャフト2が仮保持されることになる。
【0077】
また、最も手前側の爪部36に設けた傾斜面部36aによって、仮保持の際に、ギアシャフト2の概略の芯出しが行われる。
【0078】
(効果4)
ギアシャフト2の大径フランジ部28における、取付治具21の治具操作部23側の面に設けられたシャフト位置設定部44が、治具操作部23に対して当接することにより、ギアシャフト2の仮保持位置が設定されると共に、治具操作部23とギアシャフト2の他の部分との接触による損傷が防止される。
【0079】
(効果5)
弾接部材16を筒状保持部材14へ装着しつつギアシャフト2を取付治具21へセットする際に、弾接部材16は、治具本体筒部22の内部で、弾接部材案内保持部48における、他端側へ進むに従い中心へ向かう短い導入用斜面部46によって弾接力を急激に強められた後、導入用斜面部46の他端側に位置して、他端側へ向かって緩やかに半径方向13外方へ向かう案内面部47によって弾接力が緩やかに弱められる。これにより、弾接部材16は、導入用斜面部46を乗越えて外れ難い状態になった後に、導入用斜面部46に沿って他端側(奥側)へ入込むように自然付勢される。そして、この導入用斜面部46による外れ止め作用と、案内面部47の弾接力解放による追込作用により、ギアシャフト2は、治具本体筒部22の内部で、軸線方向8の所望の位置に安定して案内および保持されることになる。
【0080】
このように、治具本体筒部22の側に弾接部材案内保持部48を設けることにより、ベース部材1やシャフト取付用筒部6の形状が複雑であっても、弾接部材案内保持部48をうまく機能させることが可能となると共に、弾接部材案内保持部48が組付後に邪魔になるのを防止することができる。
【0081】
(効果6)
弾接部材16を筒状保持部材14へ装着しつつギアシャフト2を取付治具21へセットする際に、弾接部材16は、導入用斜面部46と案内面部47との間に設けられた角取部51によって滑らかに案内面部47へと移行される。また、案内面部47の他端寄りの位置に設けられた案内面部47とは逆勾配の緩い停止用傾斜面部52によって、案内面部47と停止用傾斜面部52との境界部分で軸線方向8の位置が自然停止される。これにより、ギアシャフト2を、治具本体筒部22の内部の所望の位置にスムーズにセットすることが可能となる。
【0082】
(効果7)
弾接部材16を筒状保持部材14へ装着しつつギアシャフト2を取付治具21へセットする際に、弾接部材16は、案内面部47に設けられた軸線方向8へ延びる溝部55によって軸線方向8に案内されると共に、周方向11の位置が安定される。よって、ギアシャフト2は、治具本体筒部22の内部で、軸線方向8および周方向11に対しフラ付くことなく安定保持されることになる。
【0083】
(効果8)
弾接部材16を筒状保持部材14へ装着しつつギアシャフト2を取付治具21へセットする際に、治具本体筒部22の外周面に設けられた軸線方向8へ延びる装着補助溝部57が利用される。この装着補助溝部57は、弾接部材16の案内と、指掛かりとの両方に使用することができる。
【0084】
即ち、この装着補助溝部57に沿って弾接部材16を案内することによって、弾接部材16の筒状保持部材14の外への落下を防止し、弾接部材16を筒状保持部材14へ容易且つ確実に挿入させることができるようになる。これにより、弾接部材16の取扱いを容易化することができる。
【0085】
また、装着補助溝部57は、弾性体15の弾性力に抗して弾接部材16を筒状保持部材14へ挿入する際や、弾性体15の弾性力に抗して弾接部材16を押し込みつつギアシャフト2を治具本体筒部22に挿入する際の有効な指掛かりとなるため、これらに対する作業性を向上することができる。
【0086】
以上、この発明の実施例を図面により詳述してきたが、実施例はこの発明の例示にしか過ぎないものであるため、この発明は実施例の構成にのみ限定されるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があってもこの発明に含まれることは勿論である。また、例えば、各実施例に複数の構成が含まれている場合には、特に記載がなくとも、これらの構成の可能な組合せが含まれることは勿論である。また、複数の実施例や変形例が示されている場合には、特に記載がなくとも、これらに跨がった構成の組合せのうちの可能なものが含まれることは勿論である。また、図面に描かれている構成については、特に記載がなくとも、含まれることは勿論である。更に、「等」の用語がある場合には、同等のものを含むという意味で用いられている。また、「ほぼ」「約」「程度」などの用語がある場合には、常識的に認められる範囲や精度のものを含むという意味で用いられている。
【符号の説明】
【0087】
1 ベース部材
2 ギアシャフト
6 シャフト取付用筒部
7 シャフト軸支部
8 軸線方向
9 節度感発生部
11 周方向
12 節度感発生用溝部
13 半径方向
14 筒状保持部材
15 弾性体
16 弾接部材
21 取付治具
22 治具本体筒部
22a 開口部
23 治具操作部
25 治具保持部
26 治具連接部
28 大径フランジ部
29 筒状突出壁部
31 位置規定部
32,33 取付位置決定部
35,36 爪部
36a 傾斜面部
37,38 小径フランジ部
44 シャフト位置設定部
46 導入用斜面部
47 案内面部
48 弾接部材案内保持部
51 角取部
52 停止用傾斜面部
55 溝部
57 装着補助溝部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベース部材に設けられたシャフト取付用筒部の内部に、ギアシャフトを挿入配置し、
前記シャフト取付用筒部に対して前記ギアシャフトを、シャフト軸支部によって回転可能で且つ軸線方向へ移動不能に係止保持すると共に、節度感発生部によって、ギアシャフトの回転に伴い節度感が発生されるように構成し、
前記節度感発生部が、前記シャフト取付用筒部の内周面に対し、周方向に沿って複数設けられた軸線方向へ延びる節度感発生用溝部と、前記ギアシャフトから半径方向へ突設された筒状保持部材と、該筒状保持部材の内部に弾性体を介して出入自在に収容保持されることにより、前記シャフト取付用筒部の内周面の前記節度感発生用溝部が設けられた部分に弾性体の弾性力によって弾接可能な弾接部材とを備えたギアシャフト取付部構造において、
前記ギアシャフトが、前記シャフト取付用筒部に対し、
一端側に開口部を有して前記ギアシャフトを内部に収容保持可能な治具本体筒部と、該治具本体筒部の他端側に設けられて治具本体筒部の内部に収容保持された前記ギアシャフトを前記シャフト取付用筒部の内部へと押込可能な治具操作部とを有する取付治具を用いて取付けられるものとされ、
前記ギアシャフトが、前記弾接部材と協働して前記治具本体筒部の内部での位置保持が可能な治具保持部を有し、
前記シャフト取付用筒部が、前記ギアシャフトの押込時に、前記治具本体筒部の一端側を前記シャフト取付用筒部の手前側開口部に対して連接可能な治具連接部を有することを特徴とするギアシャフト取付部構造。
【請求項2】
前記治具保持部が、前記ギアシャフトの外周部に張出形成されて、前記治具本体筒部の内部に摺接嵌合されると共に、前記シャフト取付用筒部の手前側開口部の端面に当接係止可能な大径フランジ部とされ、
前記治具連接部が、前記シャフト取付用筒部の手前側開口部の端面から前記大径フランジ部の外周に沿って手前側に突出すると共に、治具本体筒部の内部に摺接嵌合可能な筒状突出壁部とされ、
更に、前記大径フランジ部と前記筒状突出壁部とが、前記治具本体筒部に設けられた位置規定部を介して、周方向の位置決めが可能な取付位置決定部をそれぞれ有することを特徴とする請求項1記載のギアシャフト取付部構造。
【請求項3】
前記シャフト軸支部が、
前記シャフト取付用筒部の奥部に対し軸線方向に複数段設けられた爪部と、
前記ギアシャフトの外周部に張出形成されて前記複数段の爪部のそれぞれに対し回転可能で且つ軸線方向へ移動不能に係止可能な複数段の小径フランジ部とを備え、
前記治具本体筒部の一端側を前記シャフト取付用筒部の手前側開口部に対して連接した時に、最も手前側の爪部と最も奥側の小径フランジ部とが係止されて、前記ギアシャフトが仮保持されるよう構成され、
前記最も手前側の爪部に、上記仮保持の際に、前記ギアシャフトの概略の芯出しを行わせる傾斜面部を有することを特徴とする請求項1または請求項2記載のギアシャフト取付部構造。
【請求項4】
前記大径フランジ部が、その治具操作部側の面に、治具操作部に対して当接することにより、前記ギアシャフトの仮保持位置を設定すると共に、治具操作部とギアシャフトの他の部分との接触を防止可能なシャフト位置設定部を有することを特徴とする請求項3記載のギアシャフト取付部構造。
【請求項5】
前記弾接部材が、前記治具本体筒部の内部で、他端側へ進むに従い中心へ向かう短い導入用斜面部と、該導入用斜面部の他端側に位置して、他端側へ向かって緩やかに半径方向外方へ向かう案内面部とを有する弾接部材案内保持部によって軸線方向に案内および保持されることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載のギアシャフト取付部構造。
【請求項6】
前記弾接部材が、導入用斜面部と案内面部との間に設けられた角取部によって滑らかに案内面部へと移行され、該案内面部の他端寄りの位置に設けられた案内面部とは逆勾配の緩い停止用傾斜面部によって自然停止されることを特徴とする請求項5記載のギアシャフト取付部構造。
【請求項7】
前記弾接部材が、案内面部に設けられた軸線方向へ延びる溝部によって軸線方向に案内されると共に、周方向の位置が安定されることを特徴とする請求項5記載のギアシャフト取付部構造。
【請求項8】
前記弾接部材が、前記治具本体筒部の外周面に設けられた軸線方向へ延びる装着補助溝部を利用して筒状保持部材に装着されることを特徴とする請求項1ないし請求項7のいずれか1項に記載のギアシャフト取付部構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2013−16101(P2013−16101A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−149797(P2011−149797)
【出願日】平成23年7月6日(2011.7.6)
【出願人】(000004765)カルソニックカンセイ株式会社 (3,404)
【Fターム(参考)】