説明

ギ酸銅の製造方法、銅粒子の製造方法および配線基板の製造方法

【課題】効率よくギ酸銅を製造する方法、その方法を用いて銅粒子を製造する方法、当該銅粒子を分散させた液体材料を用いた配線基板の製造方法を提供すること。
【解決手段】ギ酸と、銅と、酸化剤とを反応させることによりギ酸銅を得るギ酸銅の製造方法。ギ酸銅を得る第1の工程と、ギ酸銅を脂肪族アミンに溶解することによりギ酸銅錯体を製造する第2の工程と、ギ酸銅錯体の2価の銅が0価の銅に還元されるとともに、ギ酸配位子が二酸化炭素に酸化されるように、ギ酸銅錯体を分解することにより銅粒子を製造する第3の工程とを有する銅粒子の製造方法、ならびに、かかる方法により得られた銅粒子を分散媒に分散させて液体材料を形成する液体材料形成工程と、液体材料を基板に塗布する塗布工程と、塗布工程の後、基板に熱処理を施し基板上に配線を形成する熱処理工程と、を有する配線基板の製造方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ギ酸銅の製造方法、銅粒子の製造方法および配線基板の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、金属ナノ粒子を含む機能性液体材料が注目されている。特に、銀ナノ粒子よりもコスト面で有利な銅ナノ粒子を用いた材料が注目されている。
一般に、銅ナノ粒子の出発材料としてはギ酸銅が使用されている。このようなギ酸銅は、例えば、炭酸第二銅や水酸化第二銅等と、ギ酸またはギ酸メチルとの酸塩基反応に基づいて製造されている(例えば、特許文献1)。
【0003】
しかしながら、このような方法では、炭酸第二銅や水酸化第二銅等にナトリウムやカリウムなどのアルカリ金属といった不純物が含まれているため、ギ酸銅の純度という点で問題がある。また、上記方法は、必ずしも簡便な方法とはいえず、コスト面においても問題がある方法である。
そのため、ワンステップで簡便に高純度のギ酸銅を製造することが求められている。
【0004】
【特許文献1】米国特許第5093510号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、効率よくギ酸銅を製造する方法、その方法を用いて銅粒子を製造する方法、当該銅粒子を分散させた液体材料を用いた配線基板の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このような目的は、下記の本発明により達成される。
本発明のギ酸銅の製造方法は、ギ酸と、銅と、酸化剤とを反応させることによりギ酸銅を得ることを特徴とする。
これにより、銅とギ酸と酸化剤とを反応させるという簡単な操作でギ酸銅を得ることができ、しかも収率良くギ酸銅を得ることができ、生産性が高い。
【0007】
本発明のギ酸銅の製造方法では、前記反応は、前記ギ酸中、前記銅が2価の銅に酸化されるように前記銅と前記酸化剤とを反応させることにより行われることが好ましい。
これにより、銅が酸化剤により2価の銅に酸化されるため、当該銅が確実にギ酸と反応し、簡便に収率よくギ酸銅を得ることができる。また、銅と酸化剤との反応による2価の銅の生成、当該2価の銅とギ酸との反応によるギ酸銅の製造が、同一の反応系内で行われるため、極めて簡便かつ短時間に生産性よくギ酸銅を得ることができる。
【0008】
本発明のギ酸銅の製造方法は、ギ酸と酸化剤とを反応させて過ギ酸を得る第1の工程と、
前記過ギ酸と銅を反応させてギ酸銅を得る第2の工程とを有することを特徴とする。
これにより、過ギ酸を製造した後、過ギ酸と銅を反応させるため、より確実かつ収率よくギ酸銅を得ることができる。また、第1工程の反応液をそのまま第2工程に使用することができるため、安価な材料からワンポットで簡便に生産性よくギ酸銅を得ることができる。さらに、第1の工程で得られた過ギ酸を蒸留精製して第2の工程に使用すれば、より不純物の少ないギ酸銅を得ることができる。
【0009】
本発明のギ酸銅の製造方法では、前記銅は、その純度が99%以上の銅であることが好ましい。
これにより、高純度のギ酸銅を得ることができる。
本発明のギ酸銅の製造方法では、前記酸化剤は、過ギ酸、過酸化水素、オゾンまたは一重項酸素であることが好ましい。
これにより、酸化力が強い酸化剤であるため、確実に銅を2価の銅に酸化することができ、確実かつ収率よくギ酸銅を得ることができる。また、ギ酸を酸化して過ギ酸を生成させることもできるため、当該過ギ酸と酸化剤でより確実に銅を2価の銅に酸化することができる。さらに、炭素、水素または酸素のみで構成される酸化剤を用いているため、環境を汚染することなく、不純物も少ないギ酸銅を得ることができる。
【0010】
本発明のギ酸銅の製造方法では、本発明のギ酸銅の製造方法により得られるギ酸銅は、銅粒子製造用のものであることが好ましい。
これにより、高純度、高品質の銅粒子を得ることができる。
本発明の銅粒子の製造方法は、本発明のギ酸銅の製造方法によりギ酸銅を得る第1の工程と、
前記ギ酸銅を脂肪族アミンに溶解することにより下記一般式(1)
【化1】

(式中、Cuは2価の銅、RおよびRはそれぞれ置換基を有していてもよい脂肪族炭化水素基を示す。)
で表されるギ酸銅錯体を製造する第2の工程と、
前記ギ酸銅錯体の前記2価の銅が0価の銅に還元されるとともに、前記ギ酸配位子が二酸化炭素に酸化されるように、前記ギ酸銅錯体を分解することにより銅粒子を製造する第3の工程とを有することを特徴とする。
これにより、各工程の生成物を単離することなく次工程に進むことができるため、極めて簡便かつ収率よく銅粒子を得ることができる。また、安価な材料を用いているため、低コストで銅粒子を得ることができる。さらに、修飾剤として脂肪族のアミンを用いているため、均一な粒径の銅粒子を得ることができる。
【0011】
本発明の銅粒子の製造方法では、前記ギ酸銅錯体の分解は、前記ギ酸銅錯体の分解温度付近までまたは当該分解温度以上に加熱することにより行われることが好ましい。
これにより、確実にギ酸銅錯体が分解されるため、確実に銅粒子を得ることができる。
本発明の銅粒子の製造方法では、前記ギ酸銅錯体の加熱温度は、70〜200℃であることが好ましい。
これにより、より確実にギ酸銅錯体が分解されるため、より確実に銅粒子を得ることができる。
【0012】
本発明の配線基板の製造方法は、本発明の銅粒子の製造方法で製造された銅粒子を分散媒に分散させて液体材料を形成する液体材料形成工程と、
前記液体材料を基板に塗布する塗布工程と、
前記塗布工程の後、前記基板に熱処理を施し前記基板上に配線を形成する熱処理工程と、を有する。
これにより、信頼性の高い配線基板が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明のギ酸銅の製造方法、銅粒子の製造方法、配線基板の製造方法の好適実施形態について詳細に説明する。
<ギ酸銅の製造方法>
本発明のギ酸銅の製造方法は、例えば、ギ酸と、銅と、酸化剤とを反応させることによりギ酸銅を得る方法である。これにより、酸化剤により銅が酸化され、酸化された銅がギ酸と反応することで簡便に収率よくギ酸銅を得ることができる。また、酸化剤によりギ酸が酸化され、酸化されたギ酸(過ギ酸)により銅が酸化される。そして、当該酸化された銅が、反応系中のギ酸および/または過ギ酸の還元によって生成したギ酸と反応することで簡便に収率よくギ酸銅を得ることができる。
【0014】
ここで、反応に用いられるギ酸は、1当molの銅に対して、2〜500mol用いることが好ましく、3〜100mol用いることがより好ましい。このような範囲のギ酸を用いることにより、酸化した銅を十分に溶解・反応するため、確実にギ酸銅を得ることができる。
反応に用いられる銅は、金属の銅であり、その価数は0価である。かかる銅は、高純度の銅であることが好ましい。具体的には、99%以上が好ましく、99.5%以上がより好ましい。このような高純度の銅を用いることで、高純度のギ酸銅を得ることができる。また、かかるギ酸銅を用いれば、高純度の銅粒子を製造することもできる。これらの効果は、99.5%以上の純度の銅を用いることで顕著に得られる。
【0015】
また、反応に用いられる銅は、粉末状であることが好ましい。具体的には、平均粒径が0.5〜20μmであることが好ましく、1〜5μmであることがより好ましい。このような範囲の平均粒径を用いることにより、より効率的に酸化剤と反応するため、確実にギ酸銅を得ることができる。
このような銅は、2当量の酸化剤に対して、0.1〜0.9mol用いることが好ましく、0.2〜0.8mol用いることがより好ましい。このような範囲の銅を用いることにより、酸化剤と確実に反応するため、確実にギ酸銅を得ることができる。
【0016】
反応に用いられる酸化剤は、特に限定されないが、銅を酸化する場合には、酸化力が強い酸化剤であることが好ましい。これにより、確実に0価の銅を2価の銅にすることができるため、確実に収率よくギ酸銅を得ることができる。
このような酸化力が強い酸化剤は、例えば、過ギ酸、オゾンまたは一重項酸素などが挙げられる。このうち、過ギ酸が好ましい。これにより、確実に0価の銅を2価の銅にすることができる。また、過ギ酸自体がギ酸に還元されるため、銅と酸化剤である過ギ酸のみで効率的にギ酸銅を得ることもできる。さらに、ギ酸を酸化するのみで過ギ酸が得られるので、低コストかつ簡便に過ギ酸を得ることができる。
【0017】
ギ酸を酸化する場合には、前記酸化力が強い酸化剤の他、過酸化水素、オゾン、一重項酸素などが挙げられる。このうち、水素と酸素で構成される過酸化水素が好ましい。これにより、反応によって生成される生成物が水素、酸素または水であるため、環境に配慮した反応にすることができる。
このような酸化剤は、1当molの銅に対して、2.2〜20当量を用いることが好ましく、2.5〜10当量を用いることがより好ましい。このような範囲の酸化剤を用いることにより、確実に収率よく銅をまたはギ酸を酸化することができるため、確実にギ酸銅を得ることができる。
【0018】
ギ酸と、銅と、酸化剤とを反応させる時間は、0.5〜30時間が好ましく、1〜15時間がより好ましい。このような範囲の反応時間で反応を行うことにより、銅が2価の銅に酸化され、確実に収率よくギ酸銅を得ることができる。
また、ギ酸と、銅と、酸化剤とを反応させる温度は、0〜40℃が好ましく、0〜20℃がより好ましい。このような範囲の反応時間で反応を行うことにより、銅が2価の銅に酸化され、確実に収率よくギ酸銅を得ることができる。また、過ギ酸などの不安定な酸化剤が反応系中で安定に存在することができ、再現性よく銅を酸化することができる。
【0019】
また、ギ酸と、銅と、酸化剤とを反応させる雰囲気は、通常常圧下で行われるが、例えば、50〜200kPaの圧力下でも行われる。常圧よりも加圧下で反応を行えば、反応を促進することができる。また、常圧よりも減圧下で反応を行えば、反応速度を調整することができる。
なお、ギ酸と、銅と、酸化剤との反応は、ギ酸、銅、酸化剤のそれぞれを同時に反応容器に入れてもよく、任意の順番で反応容器に入れてもよい。
【0020】
このようなギ酸銅の製造方法は、ギ酸中、銅が2価の銅に酸化されるように銅と酸化剤とを反応させることが好ましい。これにより、確実に0価の銅が2価の銅に酸化され、その銅がギ酸と反応することにより、効率的にギ酸銅を得ることができる。また、銅と酸化剤との反応による2価の銅の生成、当該2価の銅とギ酸との反応によるギ酸銅の製造が、同一の反応系内で行われるため、極めて簡便かつ短時間に収率よくギ酸銅を得ることができる。
【0021】
なお、この場合の酸化剤は、前述したとおりの酸化力の強い酸化剤を用いることが好ましい。
また、本発明のギ酸銅の製造方法は、例えば、下記式に示すように、ギ酸と酸化剤とを反応させて過ギ酸を製造する第1の工程と、前記過ギ酸と銅をギ酸中で反応させてギ酸銅を製造する第2の工程とを有する方法で行うこともできる。これにより、過ギ酸を製造した後、過ギ酸と銅を反応させることから、より確実にギ酸銅を得ることができる。また、第1工程の反応液をそのまま第2工程に使用することができるため、ワンポットで簡便に収率よくギ酸銅を得ることができる。さらに、第1の工程で得られた過ギ酸を蒸留精製して第2の工程に使用すれば、より不純物の少ないギ酸銅を得ることができる。また、安価な材料を用いているため、低コストにギ酸銅を得ることができる。
【0022】
【化2】

【0023】
なお、この場合の酸化剤は、ギ酸を過ギ酸に酸化できれば、特に限定されない。例えば、前述した酸化力の強い酸化剤や酸化力の弱い酸化剤が挙げられる。
また、第1工程および第2工程の反応時間、反応温度、反応雰囲気は、それぞれ、前記説明した、ギ酸と、銅と、酸化剤とを反応させる時間、温度、雰囲気と同様である。
以上のような方法により得られるギ酸銅は、従来よりも極めて簡便に製造することができるため、ギ酸銅を含有する各種材料のコストダウンを実現することができる。
また、本発明により得られるギ酸銅は、後述する銅粒子の製造に用いられる他、プール用の防腐剤、含そう薬の活性成分、金属インクの材料などに用いることができる。
【0024】
<銅粒子>
次に、銅粒子の製造方法について説明するが、その前に本発明の銅粒子の製造方法により製造される銅粒子について説明する。
図1は、本発明の銅粒子を示す模式図である。
図1に示すように、本発明の銅粒子10は、0価の銅で構成される粒状の核11の表面に、脂肪族アミン12が結合(被覆)してなるものである。この脂肪族アミン12は、銅を核11側にして、核11の表面に結合している。これにより、銅粒子10同士が凝集するのを防止することができ、銅粒子10が安定して存在することができる。
ここで、本発明の銅粒子10は、その平均粒径(図1中、長さD)が0.5〜120nm程度、好ましくは1〜20nm程度のものを言う。平均粒径がこのような範囲の大きさであるため、銅微粒子ともいう。
【0025】
<銅粒子の製造方法>
次に、銅粒子の製造方法について詳細に説明する。
本発明の銅粒子10の製造方法は、例えば、上記ギ酸銅の製造方法によりギ酸銅を得る第1の工程と、
前記ギ酸銅を脂肪族アミンに溶解することにより下記一般式(1)
【0026】
【化3】

(式中、Cuは2価の銅、RおよびRはそれぞれ置換基を有していてもよい脂肪族炭化水素基を示す。)
で表されるギ酸銅錯体を製造する第2の工程と、
前記ギ酸銅錯体の前記2価の銅が0価の銅に還元されるとともに、前記ギ酸配位子が二酸化炭素に酸化されるように、前記ギ酸銅錯体を分解することにより銅粒子10を製造する第3の工程とを有する方法である。これにより、安価な材料から簡便に銅粒子10を得ることができる。また、各工程の生成物を単離することなく次工程に使用することができるため、極めて簡便かつ高収率に銅粒子10を得ることができる。また、修飾剤として脂肪族アミンを用いているため、均一な粒径の銅粒子10を得ることができる。
【0027】
(第1の工程)
第1の工程は、上記ギ酸銅の製造方法によりギ酸銅を得る工程である。これにより、高純度のギ酸銅を安価な材料から簡便に収率よく製造することができる。なお、本工程の詳細は、前述したとおりであるため、省略する。
(第2の工程)
第2の工程は、第1の工程で得られたギ酸銅を脂肪族アミンに溶解することにより下記一般式(1)
【0028】
【化4】

(式中、Cuは2価の銅、RおよびRはそれぞれ置換基を有していてもよい脂肪族炭化水素基を示す。)で表されるギ酸銅錯体を得る工程である。
【0029】
一般に、ギ酸銅は水に溶解するが、疎水性の有機溶媒に溶解しないことが知られている。そのため、ギ酸銅を用いて反応を行う場合、水やアルコールなどの親水性溶媒が反応溶媒として用いられている。しかしながら、本発明者らは、ギ酸銅錯体の簡易な製造方法を検討した結果、驚くべきことにギ酸銅が疎水性である脂肪族アミンに溶解することを見出した。そして、これにより、反応溶媒を用いないでギ酸銅錯体を簡易に製造する方法を完成するに至った。
【0030】
すなわち、一般式(1)で表される本発明のギ酸銅錯体は、例えば、ギ酸銅を脂肪族アミンに溶解することにより得ることができる。これにより、溶解操作のみで一般式(1)で表されるギ酸銅錯体を得ることができるので、極めて簡便に一般式(1)で表されるギ酸銅錯体を得ることができる。
ここで、本工程で用いられるギ酸銅は、前記第1の工程で得られるものであり、無水ギ酸銅、ギ酸銅の水和物を含むものである。無水ギ酸銅を用いる場合には、第1の工程で得られたギ酸銅を乾燥させることにより得ることができる。これにより、適切に脂肪族アミンとの反応が進行し、一般式(1)で表されるギ酸銅錯体を確実に得ることができる。
【0031】
反応に用いられるギ酸銅の量は、2当molの脂肪族アミンに対して、0.1〜0.9当molが好ましく、0.2〜0.5当molがより好ましい。これにより、脂肪族アミンとの反応が確実に進行するため、一般式(1)で表されるギ酸銅錯体を確実に得ることができる。
一方、本工程で用いられる脂肪族アミンは、炭素数4〜20の脂肪族アミンが好ましく、6〜20のものがより好ましい。炭素数を6〜20とすることで、炭素鎖が長くなるため、一般式(1)で表される安定なギ酸銅錯体を得ることができる。
【0032】
また、かかる脂肪族アミンは、飽和または不飽和の脂肪族アミンのいずれであってもよいが、飽和の脂肪族アミンが好ましい。これにより、脂肪族アミンが不飽和結合を有さないので、副反応などを起こすことなく、確実に一般式(1)で表されるギ酸銅錯体を得ることができる。
また、かかる脂肪族アミンは、1級アミンまたは2級アミンのいずれであってもよいが、1級アミンが好ましい。これにより、ギ酸銅が脂肪族アミンに溶解し、一般式(1)で表されるギ酸銅錯体を簡便に得ることができる。また、アミン同士の立体障害を防止または低減することができるため、一般式(1)で表される安定なギ酸銅錯体を得ることができる。さらに、一般式(1)で表されるギ酸銅錯体を分解して得られる銅粒子10も、同様に安定なものが得られ、均一な粒径のものが得られる。
【0033】
このような脂肪族アミンとしては、例えば、次のようなものが挙げられる。
1級アミンとしては、例えば、ブチルアミン、ヘキシルアミン、オクチルアミン、デシルアミン、トリデシルアミン、ヘキサデシルアミン、ノナデシルアミン、1−ドデセニルアミン、2−ドデシニルアミンなどが挙げられる。
2級アミンとしては、例えば、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、ジアミルアミン、ジヘキシルアミン、ジオクチルアミン、ジデチルアミン、ジドデシルアミン、ジテトラデシルアミン、ジヘキサデシルアミンなどが挙げられる。
【0034】
反応に用いられる脂肪族アミンの量は、1当molのギ酸銅に対して、2.2〜20当molが好ましく、4〜10当molがより好ましい。これにより、ギ酸銅との反応が確実に進行するため、一般式(1)で表されるギ酸銅錯体を確実に得ることができる。
このようなギ酸銅の脂肪族アミンへの溶解は、例えば、それらを混合することにより行われる。
具体的には、炭素数が4〜11の脂肪族アミンの場合は、室温(20℃)で液体であるため、そのままギ酸銅と混合することで一般式(1)で表されるギ酸銅錯体を極めて簡便に得ることができる。
【0035】
一方、炭素数12〜20の脂肪族アミンの場合は、室温(20℃)で固体であるため、脂肪族アミンを加熱融解または加熱・加圧融解させて、ギ酸銅と混合することで一般式(1)で表されるギ酸銅錯体を簡便に得ることができる。
かかる脂肪族アミンを加熱する温度は、脂肪族アミンの種類によって異なるが、それぞれの脂肪族アミンの融点以上の温度に加熱すればよい。具体的には、30〜80℃が好ましく、40〜60℃がより好ましい。脂肪族アミンの加熱温度をこのような範囲に設定することで、脂肪族アミンが融解し、ギ酸銅を確実に溶解させることができる。
【0036】
また、脂肪族アミンとギ酸銅を混合する時間は、0.5〜2時間が好ましく、0.5〜1時間がより好ましい。これにより、確実にギ酸銅が脂肪族アミンに溶解し、一般式(1)で表されるギ酸銅錯体を確実に得ることができる。
なお、ギ酸銅と脂肪族アミンとの混合により得られた一般式(1)で表されるギ酸銅錯体を結晶化させるために、貧溶媒を反応液に加えてもよい。このような貧溶媒は、ドデカンやデカリンなどの炭化水素系溶媒が挙げられる。これにより、きれいな針状結晶を得ることができる。
以上により、ギ酸銅が脂肪族アミンに溶解するので、簡便に収率よく一般式(1)で表されるギ酸銅錯体を得ることができる。
【0037】
次に、このような方法で得られたギ酸銅錯体について詳細に説明する。
第2の工程で得られるギ酸銅錯体は、前記一般式(1)で表される化合物である。これにより、脂肪族アミンが銅に配位結合しているため、一般式(1)で表されるギ酸銅錯体を分解することで、脂肪族アミン12で修飾された均一な銅粒子10を簡便に得ることができる。
【0038】
一般式(1)中のRおよびRは、それぞれ置換基を有していてもよい脂肪族炭化水素基である。これにより、一般式(1)で表されるギ酸銅錯体を分解して得られる銅粒子10の凝集を抑えることができ、安定で粒径が均一な銅粒子10を得ることができる。
一般式(1)中のRおよびRのそれぞれの脂肪族炭化水素基は、その炭素数が4〜20のものが好ましく、6〜20のものがより好ましい。炭素数を6〜20とすることで、一般式(1)で表されるギ酸銅錯体を分解して得られる銅粒子10の凝集をより抑えることができ、より安定で粒径がより均一な銅粒子10を得ることができる。また、当該銅粒子10をインクに含有したとき、再分散性が良好となる。
【0039】
また、一般式(1)中のRおよびRのそれぞれの脂肪族炭化水素基は、飽和の脂肪族炭化水素基または不飽和の脂肪族炭化水素基が挙げられる。
飽和の脂肪族炭化水素基としては、アルキル基が挙げられる。例えば、アルキル基として、ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、ヘキサデシル基、ノナデシル基などの直鎖アルキル基、イソブチル基、1−メチルヘキシル基、1−メチルオクチル基、1−メチルデシル基、1−メチルドデシル基、1−エチルドデシル基、1−メチルヘキサデシル基、1−メチルノナデシル基、tert−ブチル基、1,1−ジメチルヘキシル基、1,1−ジメチルオクチル基、1,1−ジメチルデシル基、1,1−ジメチルドデシル基、1,1−ジメチルヘキサデシル基、1,1−ジメチルノナデシル基などの分岐アルキル基が挙げられる。
【0040】
不飽和の脂肪族炭化水素基としては、アルケニル基またはアルキニル基が挙げられる。 例えば、アルケニル基として、1−ブテニル基、1−ヘキセニル基、1−オクテニル基、1−デセニル基、1−ドデセニル基、1−ヘキサデセニル基、1−ノナデセニル基などの直鎖アルケニル基、イソブテニル基、1−メチル−1−ヘキセニル基、1−メチル−1−オクテニル基、1−メチル−1−デセニル基、1−メチル−1−ドデセニル基、1−メチル−1−ヘキサデセニル基、sec−ブテニル基、1,1−ジメチル−2−ヘキセニル基、1,1−ジメチル−3−オクテニル基、1,1−ジメチル−4−デセニル基、1,1−ジメチル−5−ドデセニル基、1,1−ジメチル−6−ヘキサデセニル基などの分岐アルケニル基が挙げられる。
【0041】
例えば、アルキニル基として、2−ブチニル基、2−ヘキシニル基、2−オクチニル基、2−デシニル基、2−ドデシニル基、2−ヘキサデシニル基、2−ノナデシニル基などの直鎖アルキニル基、イソブチニル基、1−メチル−2−ヘキシニル基、1−メチル−2−オクチニル基、1−メチル−2−デシニル基、1−メチル−2−ドデシニル基、1−メチル−2−ヘキサデシニル基、1,1−ジメチル−2−ヘキシニル基、1,1−ジメチル−3−オクチニル基、1,1−ジメチル−4−デシニル基、1,1−ジメチル−5−ドデシニル基、1,1−ジメチル−6−ヘキサデシニル基などの分岐アルキニル基などが挙げられる。
【0042】
これらのうち、飽和脂肪族炭化水素基であるアルキル基が好ましく、直鎖アルキル基がより好ましい。アルキル基であることにより、不飽和結合を有さないことから、副反応などを起こすことがなく、一般式(1)で表される安定なギ酸銅錯体を得ることができる。 また、直鎖アルキル基であることにより、アルキル基同士の立体障害を防止または低減することができるため、より一層安定なギ酸銅錯体を得ることができる。さらに、一般式(1)で表されるギ酸銅錯体を分解して得られる銅粒子10も、同様に安定なものが得られ、粒径が均一なものが得られる。
【0043】
なお、一般式(1)中のRおよびRの脂肪族炭化水素基には、一般式(1)で表されるギ酸銅錯体および/または銅粒子10が安定に存在する限りにおいて、置換基を有していてもよい。そのような置換基としては、フッ素や塩素のようなハロゲン原子、アミノ基、シアノ基などが挙げられる。
また、一般式(1)中の−NHおよび-NHは、それぞれ1級アミン配位子または2級アミン配位子のいずれであってもよい。
【0044】
具体的なアミン配位子としては、前記脂肪族アミンで具体的に説明したものと同様のアミンが挙げられる。
これらのアミン配位子のうち、特に、1級アミン配位子が好ましい。これにより、原料であるギ酸銅が脂肪族1級アミンに溶解し、簡便に一般式(1)で表されるギ酸銅錯体を得ることができる。また、アミン配位子同士の立体障害を防止または低減することができるため、一般式(1)で表される安定なギ酸銅錯体を得ることができる。さらに、一般式(1)で表されるギ酸銅錯体を分解して得られる銅粒子10も、同様に安定なものが得られ、均一な粒径のものが得られる。
以上のように、本工程によれば、ギ酸銅が脂肪族アミンに溶解するので、簡便に一般式(1)で表されるギ酸銅錯体を得ることができる。したがって、銅粒子10の生産効率を向上させることができる。
【0045】
(第3の工程)
第3の工程は、第2の工程で得られたギ酸銅錯体の、2価の銅が0価の銅に還元されるとともに、ギ酸配位子が二酸化炭素に酸化されるように、前記ギ酸銅錯体を分解することにより銅粒子10を製造する工程である。これにより、ギ酸銅が分解され、簡便かつ高収率に銅粒子10を得ることができる。
【0046】
具体的には、下記式に示すように、一般式(1)で表されるギ酸銅錯体を有機溶媒に溶解したギ酸銅錯体溶液を、当該ギ酸銅錯体の2価の銅が0価の銅に還元されるとともに、ギ酸配位子が二酸化炭素に酸化されるように分解することにより行われる。これにより、一般式(1)で表されるギ酸銅錯体のアミン配位子が修飾剤として機能する銅粒子10を簡便に得ることができる。そのため、均一な粒径の銅粒子10を得ることができる。
【0047】
【化5】

【0048】
ここで、本工程に使用されるギ酸銅錯体の使用量は、溶液全量に対して、0.1〜50重量%が好ましく、1〜20重量%がより好ましい。このような範囲のギ酸銅を用いることにより、分解反応が確実に進行するため、銅粒子10を確実に得ることができる。
ギ酸銅錯体を溶解する有機溶媒は、ギ酸銅錯体を溶解することができれば特に限定されない。具体的には、前記アミン配位子で説明した脂肪族アミン、メタノール、エタノール、プロパノールまたはブタノールなどのアルコール系溶媒、プロピレンカーボネート、γ−ブチロラクトン、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、シクロヘキサノンなどの極性溶媒などが挙げられる。これらのうち、脂肪族アミンが好ましい。これにより、一般式(1)で表されるギ酸銅錯体の配位子と溶媒が同種類のものとなるため、溶媒の脂肪族アミン12が銅に結合することにより、銅粒子10に1種類の修飾剤を結合させることができる。また、溶媒の脂肪族アミン12が修飾剤として銅に結合するため、より効率的にかつより凝集しない銅粒子10を確実に得ることができる。
【0049】
また、一般式(1)で表されるギ酸銅錯体の分解は、当該ギ酸銅錯体の銅が0価に還元され、ギ酸配位子が二酸化炭素に酸化されれば特に限定されないが、当該ギ酸銅錯体の分解温度付近までまたは分解温度以上に加熱することが好ましい。これにより、確実に一般式(1)で表されるギ酸銅錯体の銅が0価に還元され、ギ酸配位子が二酸化炭素に酸化される。したがって、簡便に収率よく銅粒子10を得ることができる。
【0050】
一般式(1)で表されるギ酸銅錯体の加熱温度としては、70〜250℃であることが好ましく、70〜200℃であることがより好ましい。これにより、より確実に、一般式(1)で表されるギ酸銅錯体中の銅が0価に還元され、ギ酸配位子が二酸化炭素に酸化される。したがって、確実に収率のよい銅粒子10を得ることができる。
一般式(1)で表されるギ酸銅錯体の加熱時間は、当該ギ酸銅錯体の加熱温度によって異なる。例えば、一般式(1)で表されるギ酸銅錯体の加熱温度が高い場合には、当該ギ酸銅錯体の加熱時間は短く設定すればよい。また、一般式(1)で表されるギ酸銅錯体の加熱温度が低い場合には、当該ギ酸銅錯体の加熱時間は長く設定すればよい。具体的な時間としては、0.1〜10時間が好ましく、0.5〜4時間がより好ましい。これにより、確実に、一般式(1)で表されるギ酸銅錯体中の銅が0価に還元され、ギ酸配位子が二酸化炭素に酸化される。したがって、確実に収率よく銅粒子10を得ることができる。
【0051】
また、一般式(1)で表されるギ酸銅錯体を加熱する際の雰囲気は、例えば、アルゴンガス、窒素ガスなどの不活性ガス雰囲気であるのが好ましい。これにより、形成される核11(銅)が酸化するのを確実に防止することができる。その結果、例えば、銅粒子10を用いて後述するような配線基板を形成した場合、その配線基板の抵抗率が上昇するのを防止することができる。
【0052】
なお、一般式(1)で表されるギ酸銅錯体の分解は、上記加熱以外にも酸化剤や還元剤などを用いることにより、当該ギ酸銅錯体の銅を0価に還元し、ギ酸配位子を二酸化炭素に酸化することで分解することもできる。
以上のように、本工程によれば、一般式(1)で表されるギ酸銅錯体を分解するのみで銅粒子10を収率よく製造することができるため、銅粒子10の生産効率を向上させることができる。
【0053】
以上、第1工程から第3工程を有する本発明の銅粒子10の製造方法は、各工程を連続して行ってもよく、各工程毎に生成物を単離して次工程に進んでもよい。
各工程を連続して行うことにより、反応溶液をそのまま次の工程に使用することができるため(同一系内で反応を行えるため)、ワンポットで極めて簡便に収率よく銅粒子10を得ることができる。
【0054】
また、各工程毎に生成物を単離した後、次工程に進むことにより、各生成物が精製されているため、高純度な銅粒子10を得ることができる。
このように、本発明の銅粒子10の製造方法は、ギ酸銅という安価な原料から出発してを銅粒子10を得ることができるため、低コストで銅粒子10の生産効率をより向上させることができる。
【0055】
以上のような製造方法により得られた銅粒子10は、例えば、インクに含有させて半導体系のデバイス分野で応用される。具体的には、TFT(thin film transistor)、LCD(liquid crystal display)及びAMBP(active matrix back plane)が挙げられる。有機系のPCB(printed circuit board)には、金属インクの応用がある。また、配線や電極等の導電性パターンの形成、抗菌剤、消臭剤等の各種の用途に応用される。
【0056】
<配線基板の製造方法>
次に、本発明の配線基板の製造方法について、図を参照に説明する。
図2は、本発明の配線基板の製造方法の製造工程を説明する図、図3は、本発明の配線基板の製造方法に用いられる配線形成装置の概略斜視図である。なお、以下の説明では、図2および図3中の上側を「上」、下側を「下」という。
まず、図1(S1)に示すように、配線を形成すべき基板101を用意する。
このような基板101としては、シリコン、石英ガラス、ガラス、プラスチックフィルム、金属などの各種基板を用いることができる。また、基板表面に半導体膜、金属膜、誘電体膜、有機膜などが下地層として形成されていてもよい。
【0057】
(液体材料形成工程)
本実施形態では、銅粒子10を分散媒に分散させた分散液である液体材料21を用いる。
銅粒子10を分散させるために、銅粒子10表面に有機物などをコーティングして使うこともできる。また、基板101に塗布するにあたり、分散媒への分散しやすさとインクジェット法の適用の観点から、銅粒子10の粒径は1〜20nmであることが好ましい。
【0058】
次に、上記の銅粒子10を分散媒に分散させた液体材料21を調製する。ここで使用する分散媒は室温での蒸気圧が0.001〜200mmHgであるものが好ましい。蒸気圧が200mmHgより高い場合には、塗布膜を形成するときに分散媒が先に蒸発してしまい、良好な塗布膜を形成することが困難となるためである。一方、室温での蒸気圧が0.001mmHgより低い分散媒の場合、乾燥が遅くなり塗布膜中に分散媒の成分が残留しやすくなり、後工程の熱および/または光処理後に良質の導電膜が得られにくい。また、液体材料21の塗布を後述のインクジェット装置によって行う場合には、分散媒の蒸気圧は0.001〜50mmHgであることが好ましい。蒸気圧が50mmHgより高い場合には、インクジェット装置から液滴を吐出する際に乾燥によるノズル詰まりが起こり易く、安定な吐出が困難となるためである。一方、蒸気圧が0.001mmHgより低い場合には吐出したインクの乾燥が遅くなり導電膜中に分散媒の成分が残留し易くなり、後工程の熱処理後にも良質の導電膜が得られ難い。
【0059】
使用する分散媒としては、上記の銅粒子10を分散できるもので、凝集を起こさないものであれば特に限定されないが、前述した有機溶媒の他、水、n−ヘプタン、n−オクタン、デカン、トルエン、キシレン、シメン、デュレン、インデン、ジペンテン、テトラヒドロナフタレン、デカヒドロナフタレン、シクロヘキシルベンゼン、デカリンなどの炭化水素系溶媒、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、1,2−ジメトキシエタン、ビス(2−メトキシエチル)エーテル、p−ジオキサンなどのエーテル系溶媒などを挙げることができる。これらのうち、銅粒子10の分散性と分散液の安定性、またインクジェット法への適用のし易さの点で、水、アルコール類、炭化水素系溶媒、エーテル系溶媒が好ましく、更に好ましい分散媒としては水、炭化水素系溶媒を挙げることができる。これらの分散媒は、単独でも、あるいは2種以上の混合物としても使用できる。
【0060】
上記銅粒子10を分散媒に分散する場合の分散質(銅粒子10)の分散密度は、液体材料21を基板101に塗布する方法によって適宜選択される。当該分散質の分散密度は、特に限定されないが、1〜80重量%であることが好ましい。これにより、所望の機能性膜22の膜厚に応じて調整することができる。
特に、後述するインクジェット法の場合は、インクの流動性と速乾性が要求されるため、分散質の分散密度は10〜80重量%が好ましく、30〜70重量%がより好ましい。分散質の分散密度が前記上限値を超えると銅粒子10が凝集し易く、また、液体材料21の流動性が低下する。一方、分散質の分散密度が前記下限値よりも低い場合には、速乾性が低下する。
【0061】
上記銅粒子10が分散した液体材料21は、目的の機能を損なわない範囲で必要に応じてフッ素系、シリコーン系、ノニオン系などの表面張力調節剤を微量添加することができる。ノニオン系表面張力調節剤は、液体材料21の塗布対象物への濡れ性を良好化し、塗布した膜のレベリング性を改良し、塗膜のぶつぶつの発生、ゆず肌の発生などの防止に役立つものである。
【0062】
かくして調製した銅粒子10が分散した液体材料21の粘度は1〜50mPa・sであることが好ましい。これにより、所望の機能性膜22を得ることができる。
特に、後述するインクジェット法の場合は、インクの流動性と速乾性が要求されるため、液体材料21の粘度は2〜40mPa・sが好ましく、5〜20mPa・sがより好ましい。液体材料21の粘度が前記上限値を超えると銅粒子10が凝集し易く、液体材料21の流動性が低下する。また、ノズル孔での目詰まり頻度が高くなり円滑な液滴の吐出が困難となる。一方、液体材料21の粘度が前記下限値よりも低い場合には、速乾性が低下する。また、ノズル周辺部がインクの流出により汚染されやすい。
【0063】
さらに、かくして調製した銅粒子10が分散された液体材料21の表面張力は20〜70dyn/cmの範囲に入ることが好ましい。後述のインクジェット装置にて液体材料21を塗布する場合、表面張力が20dyn/cm未満であると、インク組成物のノズル面に対する濡れ性が増大するため飛行曲りが生じ易くなり、70dyn/cmを超えるとノズル先端でのメニスカスの形状が安定しないためインク組成物の吐出量、吐出タイミングの制御が困難になるためである。
【0064】
(塗布工程)
次に、図1(S2)に示すように、本発明の銅粒子10を含有する液体材料21を基板101上に好ましくはインクジェット方式で塗布する。これにより、他の塗布方法に必要なマスクの形成工程、マスクの除去工程を有することなく、一度にパターン形成をすることができる。また、複雑な形状、微細な形状のパターンを容易に形成することができる。
【0065】
ただし、本発明における塗布方法は、かかるインクジェット方式に限られず、例えば、スピンコート法、キャスティング法、マイクログラビアコート法、グラビアコート法、バーコート法、ロールコート法、ワイヤーバーコート法、ディップコート法、スプレーコート法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法等の各種塗布方法を用いることもできる。
【0066】
基板101上に付与されるインク滴の間隔は、吐出周波数及びインクジェットヘッド及び基板101の相対速度を制御することによって制御する。特に、同一配線内で互いに隣り合うインク滴が、基板101上に付与された際の液体材料21の直径の1〜10%の重なりを生じるように付与されることが好ましい。すなわち、インク滴の間隔は、基板101上に付与された際の液体材料21の直径の90〜99%の長さであることが好ましい。これよりインク滴の間隔が狭く重なりが大きいとバルジが発生し、良好なラインが形成できない。一方これよりインク滴の間隔が広く重なりが小さいと、吐出位置精度誤差により液体材料21の重なりが生じなくなり、切れた配線22が形成されてしまう可能性がある。なお、配線22を形成する装置100は、後述する。
このように、銅粒子10を含んだ液体材料21を用いることにより、均一で優れた特性を有する配線22を塗布することができる。
【0067】
(熱処理工程)
図1(S3)に示すように、銅粒子10が分散された液体材料21が所定パターンに塗布された基板101は、分散媒を除去し、銅粒子10間の電気的接触をよくするために、熱処理に供される。熱処理は通常大気中で行なわれるが、必要に応じて、窒素、アルゴン、ヘリウムなどの不活性ガス雰囲気中で行なうこともできる。上記の熱処理の処理温度は分散媒の沸点(蒸気圧)、圧力および銅粒子10の熱的挙動により適宜定めればよく、特に限定されるものではないが室温〜300℃以下で行なうことが好ましい。プラスチックなどの基板101を使用する場合には、室温〜100℃で行なうことが好ましい。
【0068】
また、熱処理は2回以上行ってもよい。その場合、例えば、1回目は分散媒を除去できる低温で行い(乾燥)、2回目は高温で行う(焼成)。低温で熱処理を行うことにより、分散媒を除去することができる。そして引き続き、高温で熱処理を行うことにより、銅粒子10が熟成され電気的接触に優れた配線基板を得ることができる。
熱処理を行う時間(複数回行う場合は合計時間)は、特に限定されるものではないが、5分〜5時間であることが好ましい。これにより、分散媒が除去され、電気的接触に優れた配線基板を得ることができる。
【0069】
熱処理は通常のホットプレート、電気炉などによる処理の他、ランプアニールによって行なうこともできる。ランプアニールに使用する光の光源としては、特に限定されないが、赤外線ランプ、キセノンランプ、YAGレーザー、アルゴンレーザー、炭酸ガスレーザー、XeF、XeCl、XeBr、KrF、KrCl、ArF、ArClなどのエキシマレーザーなどを光源として使用することができる。これらの光源は一般には、出力10〜5000Wの範囲のものが用いられるが、本実施形態では100〜1000Wの範囲で十分である。
【0070】
以上の工程により機能性膜(配線)22が形成される。
なお、1回の塗布工程、熱処理工程で所望の膜厚が得られない場合には、塗布工程、熱処理工程を複数回行って、膜を積層してもよい。例えば、液体材料21の基板101への塗布、熱処理(乾燥)、塗布、熱処理(焼成)の順で配線基板を製造することもできる。これにより、所望の厚さの配線基板を得ることができる。
【0071】
配線22の膜厚は、0.1〜10μmが好ましく、1〜5μmがより好ましい。膜厚が前記上限値より厚いと配線基板の製造が煩雑で、配線22の均一性が低下する。一方、膜厚が前記下限値より薄いと抵抗値が増大する傾向を示す。
このように、熱処理をすることにより、細線、厚膜の配線基板を、バルジを発生させることなく形成することができる。
【0072】
(配線形成装置)
次に、前記塗布工程において用いられる配線形成装置について説明する。
図2は、本発明の配線基板の製造方法に用いられる配線形成装置の概略斜視図である。 配線形成装置100は、インクジェット式の液体塗布装置を備えており、インクジェットヘッド群1、X方向駆動軸4、Y方向ガイド軸5、制御装置6、載置台7、クリーニング機構部8、基台9およびヒータ15を備えている。
【0073】
インクジェットヘッド群1は、所定の液体をノズル(吐出口)から吐出して所定間隔で基板101に付与するインクジェット塗布手段としてのヘッドを備えている。
載置台7は、この塗布装置によって液体材料21を付与される基板101を載置させるもので、この基板101を基準位置に固定する機構を備える。
X方向駆動軸4には、X方向駆動モータ2が接続されている。X方向駆動モータ2は、ステッピングモータ等であり、制御装置6からX軸方向の駆動信号が供給されると、X方向駆動軸4を回転させる。X方向駆動軸4が回転させられると、インクジェットヘッド群1がX軸方向に移動する。
【0074】
Y方向ガイド軸5は、基台9に対して動かないように固定されている。載置台7は、Y方向駆動モータ3を備えている。Y方向駆動モータ3は、ステッピングモータ等であり、制御装置6からY軸方向の駆動信号が供給されると、載置台7をY軸方向に移動させる。
制御装置6は、インクジェットヘッド群1の各ヘッドに液滴の吐出制御用の電圧を供給する。また、X方向駆動モータ2にインクジェットヘッド群1のX軸方向の移動を制御する駆動パルス信号を、Y方向駆動モータ3に載置台7のY軸方向の移動を制御する駆動パルス信号を供給する。
【0075】
クリーニング機構部8は、インクジェットヘッド群1をクリーニングする機構を備えている。クリーニング機構部8には、図示しないY方向の駆動モータが備えられる。このY方向の駆動モータの駆動により、クリーニング機構8は、Y方向ガイド軸5に沿って移動する。クリーニング機構8の移動も、制御装置6によって制御される。
ヒータ15は、ここではランプアニールにより基板101を熱処理する手段であり、基板101上に塗布された液体材料21の蒸発・乾燥を行うとともに機能性材料の膜に変換させる。このヒータの電源の投入及び遮断も制御装置6によって制御される。
本実施形態の膜パターン形成装置100によれば、細線、厚膜の膜パターンを、バルジを発生させることなく形成することができる。
【0076】
<配線基板>
以上のような方法により製造した配線基板について説明する。
図4は、液晶装置の第1基板上の信号電極等(配線基板)の平面レイアウトを示すものである。かかる液晶装置は、この第1基板と、走査電極等が設けられた第2基板(図示せず)と、第1基板と第2基板との間に封入された液晶(図示せず)とから概略構成されている。
【0077】
図4に示すように、第1基板300上の画素領域303には、複数の信号電極310が多重マトリクス状に設けられている。特に各信号電極310は、各画素に対応して設けられた複数の画素電極部分310aとこれらを多重マトリクス状に接続する信号配線部分310bとから構成されており、Y方向に伸延している。
また、符号350は1チップ構造の液晶駆動回路で、この液晶駆動回路350と信号配線部分310bの一端側(図中下側)とが第1引き回し配線331を介して接続されている。
【0078】
また、符号340は上下導通端子で、この上下導通端子340と、図示しない第2基板上に設けられた端子とが上下導通材341によって接続されている。また、上下導通端子340と液晶駆動回路350とが第2引き回し配線332を介して接続されている。
本実施形態では、上記第1基板300上に設けられた信号配線部分310b、第1引き回し配線331、第2引き回し配線332が、各々上記配線形成装置100を用いて、上記配線基板の製造方法によって形成されている。本液晶装置によれば、上記各配線類の断線や短絡等の不良が生じにくく、しかも、小型化、薄型化が可能な液晶装置とすることができる。
【0079】
以上、本発明のギ酸銅の製造方法、銅粒子の製造方法、配線基板の製造方法を好適実施形態に基づいて説明したが、本発明は、これらに限定されるものではない。
例えば、本発明のギ酸銅の製造方法では、任意の目的の工程が1または2以上追加されてもよい。
また、本発明の銅粒子の製造方法では、任意の目的の工程が1または2以上追加されてもよい。
また、本発明の配線基板の製造方法では、任意の目的の工程が1または2以上追加されてもよい。
【実施例】
【0080】
次に、本発明の具体的実施例について説明する。
I.ギ酸銅の製造
(実施例1)
フラスコに98%のギ酸50g(1.1mol)を入れて、氷含有ウォーターバス中、0℃付近に冷却した。その後、フラスコを氷含有ウォーターバス中、ギ酸液を攪拌しながら、20%過酸化水素水10.5gを滴下した。滴下後、冷却しながら、1時間攪拌を続けた。これにより、過ギ酸を生成させた。
【0081】
次に、99.99%の銅粉末3g(0.05mol、平均粒径:約3μm)を過ギ酸溶液に添加した。フラスコを氷含有ウォーターバスから取り出して、そのまま8時間攪拌を続けた。その間、青色の溶液ができ、ほとんどの銅粉末が溶解した。
僅かな不溶物を除去するため、テフロン製(「テフロン」は登録商標、以下同じ)のメンブレン(3μm)を用い、減圧濾過を行った。得られたろ液を、ウォーターバスで70℃に加熱しながらロータリーエバポレーターで溶媒(ギ酸・水)を除去し、青色のギ酸銅粉末を得た。得られた粉末を、55℃での真空恒温槽中で、8時間で真空乾燥を行った。収率は、93%だった。
【0082】
(実施例2)
フラスコに98%のギ酸50g(1.1mol)、99.99%の銅粉末3g(0.05mol、平均粒径:約3μm)を入れて、氷含有ウォーターバス中、0℃付近に冷却した。その後、反応液を攪拌しながら、20%過酸化水素水10.5gを滴下した。滴下後、冷却しながら、1時間攪拌を続けた。
【0083】
1時間攪拌後、フラスコを氷含有ウォーターバスから取り出して、そのまま8時間攪拌を続けた。その間、青色の溶液ができ、ほとんどの銅粉末が溶解した。これにより、反応系中でギ酸と過酸化水素が反応して過ギ酸が生成し、その過ギ酸が銅と反応することでギ酸銅が得られた。
次に、テフロン製のメンブレン(3μm)を用いて減圧濾過を行い、得られたろ液を、ウォーターバスで70℃に加熱しながらロータリーエバポレーターで溶媒(ギ酸・水)を除去した。得られた青色粉末を、55℃での真空恒温槽中で、8時間で真空乾燥した。収率は、90%だった。
【0084】
(実施例3)
フラスコに98%のギ酸50g(1.1mol)、99.99%の銅粉末3g(0.05mol、平均粒径:約3μm)を入れて、氷含有ウォーターバス中、0℃付近に冷却した。その後、反応液を攪拌しながら、オゾン発生装置により発生したオゾンを1時間バブリングした。
【0085】
1時間後、オゾンのバブリングを止め、フラスコを氷含有ウォーターバスから取り出して、そのまま8時間攪拌を続けた。その間、青色の溶液ができ、ほとんどの銅粉末が溶解した。これにより、反応系中で銅とオゾンが反応して2価の銅になり、その銅がギ酸と反応することでギ酸銅が得られた。
次に、テフロン製のメンブレン(3μm)を用いて減圧濾過を行い、得られたろ液を、ウォーターバスで70℃に加熱しながらロータリーエバポレーターで溶媒(ギ酸・水)を除去した。得られた青色粉末を、55℃での真空恒温槽中で、8時間で真空乾燥した。収率は91%だった。
(比較例1)
フラスコに、98%のギ酸50g(1.1mol)と、99.99%の銅粉末3g(0.05mol、平均粒径:約3μm)を入れて攪拌した。しかし、ギ酸と銅は反応せず、ギ酸銅は得られなかった。
【0086】
II.ギ酸銅の評価
実施例1で得られたギ酸銅をアルミナ製パン上にロードし、熱分析装置(TAインスツルメンツ社製Q500型)を用いて分析を行った。
なお、熱分析(TGA)の測定条件は、窒素流量40ml/min、昇温条件20℃/minである。
【0087】
熱分析の結果を図5に示す。図5に示すように、ギ酸銅は、市販のギ酸銅(シグマ・アルドリッチ・ジャパン社製、#4040942)と同等の熱分解挙動が得られた。すなわち、約90℃での水和物の蒸発、約220℃でのギ酸銅の分解(ギ酸銅 → 銅、二酸化炭素、一酸化炭素、水素、水)が確認された。また、約220℃の重量変化は58.27%であり、無水ギ酸銅の理論値=58.62%とほぼ同程度であった。
以上のことから、ギ酸銅が製造されたことが確認された。
なお、実施例2、3で得られたギ酸銅も同様に評価を行い、ギ酸銅が製造されたことを確認した。
【0088】
III.銅粒子の製造
(実施例4)
<1> ギ酸銅錯体の製造
実施例1で得られたギ酸銅50g(0.46mol)を、55℃の真空恒温槽に入れ、重量変化がなくなるまで乾燥した。これにより、無水ギ酸銅を得た。一方、ドデシルアミン(20g、0.1mol)をサンプル瓶に入れ、50℃の恒温槽で溶かした。
次に、得られた無水ギ酸銅(50mg)を、溶解したドデシルアミンに添加し、サンプル瓶に蓋して、50℃の恒温槽に入れた。約2時間を後、透明な青色の溶液ができた。
【0089】
次に、アセトニトリル(30g)を添加して、結晶性の固体物を析出させた。再び蓋をして、再度50℃の恒温槽にサンプル瓶を入れた。約1時間後、再び青色の透明溶液ができた。サンプル瓶を恒温槽から取り出して、常温(20℃)までの自然冷却を行った結果、針状結晶が得られた。この針状結晶を濾過で採取し、アセトニトリルで洗浄した後、真空乾燥を行った。これにより、ギ酸銅・ドデシルアミンの錯体を収率94%で得た。
<2> 銅粒子の製造
<1>で得られたギ酸銅・ドデシルアミン錯体の1g(1.9mmol)を、ドデシルアミン20gに溶かし、120℃に加熱した。これにより、収率95%で銅粒子を得た。
【0090】
(実施例5)
実施例2で得られたギ酸銅を用い、実施例4と同様の方法により行い、収率95%で銅粒子を得た。
(実施例6)
実施例3で得られたギ酸銅を用い、実施例4と同様の方法により行い、収率95%で銅粒子を得た。
【0091】
(実施例7)
実施例4において、ドデシルアミンをヘキシルアミンに替えた以外は実施例4と同様に行い、収率89%で銅粒子を得た。なお、ヘキシルアミンは、室温(20℃)で液体であるため、50℃の恒温槽には入れず、そのまま使用した。
(実施例8)
実施例4において、ドデシルアミンをオクチルアミンに替えた以外は実施例4と同様に行い、収率91%で銅粒子を得た。なお、オクチルアミンは、室温(20℃)で液体であるため、50℃の恒温槽には入れず、そのまま使用した。
【0092】
(実施例9)
実施例4において、ドデシルアミンをデシルアミンに替えた以外は実施例4と同様に行い、収率90%で銅粒子を得た。なお、デシルアミンは、室温(20℃)で液体であるため、50℃の恒温槽には入れず、そのまま使用した。
(実施例10)
実施例4において、ドデシルアミンをヘキサデシルアミンに替えた以外は実施例4と同様に行い、収率91%で銅粒子を得た。
【0093】
(実施例11)
実施例5において、ドデシルアミンをヘキシルアミンに替えた以外は実施例7と同様に行い、同様の収率で銅粒子を得た。
(実施例12)
実施例5において、ドデシルアミンをオクチルアミンに替えた以外は実施例8と同様に行い、同様の収率で銅粒子を得た。
【0094】
(実施例13)
実施例5において、ドデシルアミンをデシルアミンに替えた以外は実施例9と同様に行い、同様の収率で銅粒子を得た。
(実施例14)
実施例5において、ドデシルアミンをヘキサデシルアミンに替えた以外は実施例10と同様に行い、同様の収率で銅粒子を得た。
【0095】
(実施例15)
実施例6において、ドデシルアミンをヘキシルアミンに替えた以外は実施例7と同様に行い、同様の収率で銅粒子を得た。
(実施例16)
実施例6において、ドデシルアミンをオクチルアミンに替えた以外は実施例8と同様に行い、同様の収率で銅粒子を得た。
【0096】
(実施例17)
実施例6において、ドデシルアミンをデシルアミンに替えた以外は実施例9と同様に行い、同様の収率で銅粒子を得た。
(実施例18)
実施例6において、ドデシルアミンをヘキサデシルアミンに替えた以外は実施例10と同様に行い、同様の収率で銅粒子を得た。
【0097】
(比較例2)
実施例1で得られたギ酸銅50gを、55℃の真空恒温槽に入れ、重量変化がなくなるまで乾燥した。これにより、無水ギ酸銅を得た。
得られた無水ギ酸銅(50mg)をヘテロ芳香族化合物である2、6ジメチルピリジン(10g)に添加し、サンプル瓶に蓋して、50℃の恒温槽に入れた。しかし、無水ギ酸銅は、2、6ジメチルピリジンに溶解せず、銅粒子は得られなかった。
【0098】
IV.銅粒子の評価
実施例4で得られたギ酸銅・ドデシルアミン錯体をアルミナ製パンにロードし、熱分析装置(TAインスツルメンツ社製Q500型)を用いて分析を行った。
なお、熱分析(TGA)の測定条件は、窒素流量40ml/min、昇温条件20℃/minである。
【0099】
熱分析の結果を図6に示す。図6に示すように、ギ酸銅・ドデシルアミンの錯体は、約120℃でその重量が急激に減少し、370℃付近までで90.8%(計算値87.9%)の重量が減少した。また、約138℃〜160℃で2つのピークが得られた。
以上のことから、ギ酸銅・ドデシルアミン錯体の加熱により、ギ酸銅・ドデシルアミン錯体のギ酸配位子が二酸化炭素に酸化され、銅が0価に還元され、銅粒子が製造されたことが確認された。
また、透過型電子顕微鏡(JEOL社製JEM 2000EX)を用いて、実施例4で得られた銅粒子の平均粒径を測定した。その結果、平均粒径は8nmであった。
なお、実施例5〜18の銅粒子も同様に行い、同様の平均粒径で銅粒子が製造されたことを確認した。
【0100】
V.配線基板の製造
(実施例19)
前記実施例4で製造された銅粒子を、デカリンに60wt%となるように分散させた。これに、さらにドデシルベンゼンを添加することにより、インクジェット用のインク(液体材料)を調製した。なお、調製されたインクの粘度は、12mPa・sであった。そして、アルゴンガスの雰囲気下でのグローブボックス中、インクジェット装置を用いて、このインクをガラス基板上に、ライン状のパターンで吐出した後、100℃で加熱乾燥することにより成膜した。さらに、この膜上に同様に膜を形成する(積層)操作を繰り返して行い、膜厚を1.2μmとした。次に、アルゴンガスの雰囲気下でのグローブボックス中、得られた膜を300℃で30分間焼成を行うことにより、核同士を焼結させた。
以上の工程により、基板に線幅:50μm×厚さ:1μmの配線を形成した。
【0101】
(実施例20)
実施例19において、実施例7で得られた銅粒子を用いた以外は、実施例19と同様に行い、配線基板を得た。
(実施例21)
実施例19において、実施例8で得られた銅粒子を用いた以外は、実施例19と同様に行い、配線基板を得た。
【0102】
(実施例22)
実施例19において、実施例9で得られた銅粒子を用いた以外は、実施例19と同様に行い、配線基板を得た。
(実施例23)
実施例19において、実施例10で得られた銅粒子を用いた以外は、実施例19と同様に行い、配線基板を得た。
【0103】
VI.配線基板の評価
実施例19で得られた配線基板を検品したところ、クラックやピンホールのような欠損(欠陥)、断線や短絡等のない、良好な品質の配線が得られた。また、配線の寸法精度も高かった。
なお、実施例20〜23の配線基板も同様に検品を行い、同様の品質であることを確認した。
【図面の簡単な説明】
【0104】
【図1】本発明の銅粒子を示す模式図である。
【図2】本発明の配線基板の製造方法を説明するための図である。
【図3】本発明の配線基板の製造方法に用いられる配線形成装置の概略斜視図である。
【図4】本発明の配線基板の製造方法により製造された配線基板を示す平面図である。
【図5】実施例1で得られたギ酸銅の熱分析結果を示す図である。図左縦軸はギ酸銅の重量変化(%)、図右縦軸は分解物の重量変化対温度の微分(%/℃)、横軸は温度(℃)を示す。
【図6】実施例4で得られた銅粒子の熱分析結果を示す図である。図左縦軸はギ酸銅錯体の重量変化(%)、図右縦軸は銅粒子の重量変化対温度の微分(%/℃)、横軸は温度(℃)を示す。
【符号の説明】
【0105】
1‥‥インクジェットヘッド群 2‥‥X方向駆動モータ 3‥‥Y方向駆動モータ 4‥‥X方向駆動軸 5‥‥Y方向ガイド軸 6‥‥制御装置 7‥‥載置台 8‥‥クリーニング機構部 9‥‥基台 10……銅粒子 11……核 12……脂肪族アミン 15‥‥ヒータ 21‥‥液体材料 22‥‥機能性膜(配線) 100‥‥配線形成装置 101‥‥基板 300‥‥第1基板 303‥‥画素領域 310‥‥信号電極 310a‥‥画素電極部分 310b‥‥信号配線部分 331‥‥第1引き回し配線 332‥‥第2引き回し配線 340‥‥上下導通端子 341‥‥上下導通材 350‥‥液晶駆動回路 D‥‥平均粒径

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ギ酸と、銅と、酸化剤とを反応させることによりギ酸銅を得ることを特徴とするギ酸銅の製造方法。
【請求項2】
前記反応は、前記ギ酸中、前記銅が2価の銅に酸化されるように前記銅と前記酸化剤とを反応させることにより行われる請求項1に記載のギ酸銅の製造方法。
【請求項3】
ギ酸と酸化剤とを反応させて過ギ酸を得る第1の工程と、
前記過ギ酸と銅を反応させてギ酸銅を得る第2の工程とを有することを特徴とするギ酸銅の製造方法。
【請求項4】
前記銅は、その純度が99%以上の銅である請求項1ないし3のいずれかに記載のギ酸銅の製造方法。
【請求項5】
前記酸化剤は、過ギ酸、過酸化水素、オゾンまたは一重項酸素である請求項1ないし4のいずれかに記載のギ酸銅の製造方法。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれかに記載のギ酸銅の製造方法により得られるギ酸銅は、銅粒子製造用のものである請求項1ないし5のいずれかに記載のギ酸銅の製造方法。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれかに記載のギ酸銅の製造方法によりギ酸銅を得る第1の工程と、
前記ギ酸銅を脂肪族アミンに溶解することにより下記一般式(1)
【化1】

(式中、Cuは2価の銅、RおよびRはそれぞれ置換基を有していてもよい脂肪族炭化水素基を示す。)
で表されるギ酸銅錯体を製造する第2の工程と、
前記ギ酸銅錯体の前記2価の銅が0価の銅に還元されるとともに、前記ギ酸配位子が二酸化炭素に酸化されるように、前記ギ酸銅錯体を分解することにより銅粒子を製造する第3の工程とを有することを特徴とする銅粒子の製造方法。
【請求項8】
前記ギ酸銅錯体の分解は、前記ギ酸銅錯体の分解温度付近までまたは当該分解温度以上に加熱することにより行われる請求項7に記載の銅粒子の製造方法。
【請求項9】
前記ギ酸銅錯体の加熱温度は、70〜200℃である請求項8に記載の銅粒子の製造方法。
【請求項10】
請求項7ないし9のいずれかに記載の銅粒子の製造方法で製造された銅粒子を分散媒に分散させて液体材料を形成する液体材料形成工程と、
前記液体材料を基板に塗布する塗布工程と、
前記塗布工程の後、前記基板に熱処理を施し前記基板上に配線を形成する熱処理工程と、を有する配線基板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−31104(P2008−31104A)
【公開日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−206960(P2006−206960)
【出願日】平成18年7月28日(2006.7.28)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】