説明

クエン酸塩およびパラベンを含むカテーテルロック溶液

【課題】カテーテル内での微生物感染作用およびカテーテルの閉塞の減少を促すとともに、ロック期間中、カテーテル内の溶液を保持するのに適した密度を有する、カテーテルロック溶液の内在カテーテルへの注入に関する組成物、方法、装置およびキットを提供する。
【解決手段】カテーテルロック溶液は、クエン酸塩およびパラベンを含み、さらに光酸化体、例えばメチレンブルーを含む。また、粘度調節のため増粘剤、例えば、デキストラン、ポリエチレングリコール、グリセリン、ソルビトール、マンニトール等を含むことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
【発明の詳細な説明】
【0002】
【発明の属する技術分野】
【0003】
本発明は、血管内カテーテルおよび他の体腔カテーテルのようなカテーテル、およびカテーテルの閉塞および感染を防ぐ方法に一般に関する。さらに詳しくは、限定されないが、本発明は、内在カテーテルを有する動物における閉塞および感染を妨げるために、ロック溶液を内在カテーテル、例えば内在血管内カテーテルに注入することに関する。
【従来の技術】
【0004】
カテーテルは、様々な医療処置を必要とする患者の治療にひんぱんに用いられる。カテーテルは患者に多くの利点をもたらす;例えば、カテーテルは、薬剤、栄養剤、電解質のような液体または化学療法で用いられる液体の注入に、あるいは断続的な血液の採取に、注射を繰り返すことなく患者の血管系に容易にアクセスする。過栄養治療では、カテーテルは大量の液体の注入に通常用いられる。化学療法では、カテーテルは、毎日から毎週の範囲の断続的な薬剤の注入に用いられる。血液透析では、二重管腔カテーテルが一般に用いられて(通常は週に3回)、処理のために患者の循環系から血液を取り出し、そして処理された血液を患者に戻す。1つの管腔から血液を取り出し、別の管腔から血液を戻すことができる。
【0005】
カテーテルはまた、他の機能の実行および静脈に加えて他の体腔を出入りする液体の運搬にも用いられる。例えば、カテーテルを動脈に入れて、血圧を測定したり、気体反射肺機能分析のために動脈血を採取する:カテーテルを腹腔(腹膜で囲まれた、腹中の器官に対して外側の空間)に入れて腹膜透析並びに液体および毒素の患者からの取り出しを行う;そして他のカテーテルは、神経系の周りの液(大脳脊髄液)に入れてこの液の取り出しまたは薬剤の投与を行い、そして皮下空間に入れて各種の薬剤または液体を投与する。そのようなカテーテルはまた、感染およびここで論じる他の問題にさらされている。
【0006】
カテーテルは、急にまたは一時的に短期間に用いられたり、あるいは長期の治療に長期間にわたって用いられる。患者の血流にアクセスして用いられるカテーテルは、末梢静脈部位から中心静脈(例えば、大静脈)へ一般に挿入される。あるいは、二重管腔長期中心静脈透析カテーテル(CVDC)が内頚静脈を通して挿入される。適切な血液透析では、1分当たり250〜400mLの血液を取り出しそして戻す必要がある。
【0007】
カテーテル、特に長期静脈カテーテルには欠点がある。一時的および長期間のいずれにも用いられるCVDCには、カテーテルの取り出し、カテーテルの交換および/または薬剤投与を必要としうる特定の複雑さが伴う。それらは血栓によって閉塞されたり、そして厳しく注意しても、カテーテルが患者の感染リスクを高めることがある。
【0008】
感染問題をまず考えると、カテーテルの交換および長期の使用にたいへんな注意を払って、アクセス部位または血管系内での患者の感染を防がなければならない。カテーテルの外表面は、細菌が成長することができ、白血球が細菌を囲んだりまたは「食(菌)作用」することができない、滑らかな表面を形成する。カテーテル、特にCVDCのような長期使用カテーテルが感染を引き起こす1つの道筋は、保護皮膚を横切るカテーテル周囲の細菌の移動によるものである。この問題に取り組むために、長期使用CVDCには通常、カテーテルに取り付けられそして皮膚の下に置かれるダクロンカフが含まれ、これは線維組織の内部成長を促し、カテーテルを適所に固定し、そしてカテーテル周囲の細菌の移動を妨げる。今日米国で使用されているたいていの長期使用CVDCには、皮膚出口部位1〜4cm下のトンネルに置かれた単一皮下ダクロン(登録商標)カフがある。Ash Split Cath(登録商標)およびBard Hickman(登録商標)カテーテルのような二重管腔カテーテルの場合、カテーテル上に1つのカフがある。Tesio(登録商標)カテーテルのような単一管腔カテーテルの場合、各カテーテルに単一ダクロンカフがある。カフ付きトンネル状CVDCは、カフなしカテーテルに対して、出口部位感染およびカテーテル関連血流感染(「CRBSI」)率が減少するが、感染は依然として生じる。皮下ダクロンカフのない現在米国で用いられている唯一の長期使用CVDCはSchon(登録商標)カテーテルであると思われる。このカテーテルでは、皮下プラスチッククリップが2つのTesioカテーテルに接続している。このクリップはカテーテルを適所に固定し、ダクロンカフと同様にカテーテル周囲の細菌移動を見たところ妨げるようである。長期使用CVDCは3種の材料(シリコーン、ポリウレタンまたはポリウレタン誘導体)のうちの1つで一般につくられる。
【0009】
長期使用CVDCの場合、カテーテル感染の最も一般的な原因はコネクターハブの汚染であり、汚染の主なルートは管腔内である。カテーテル、特に静脈カテーテルは、頻繁に注射器とアクセスされ、蓋がとられ、そしてIVラインに直接接続されて、微生物感染の可能性が比較的高い状況がつくりだされる。感染率の主な決定因子はカテーテルハブが開かれる回数であり、主な予防段階はハブの消毒およびハブの汚染予防における注意である。管腔内汚染は長期使用CVDCにおけるCRBSIの主な原因であり、感染の決定因子はカテーテルの処置および取り扱いに集中する。
【0010】
いくつかの調査は、長期使用CVDCの使用中の血流感染率が1日1,000人当たり1.1〜2.2であることを示した。ある調査は、カテーテル関連菌血症率が1日1,000人当たり2.2〜3.8と証明しており、手術によって配置されたカテーテルの場合の方が放射線によるよりも低率である。新しいトンネル状カテーテルの別の調査では、カテーテルの19%がカテーテル配置後平均62日で感染したことを報告しており、1000日当たり感染率3である。これは、各患者が血流感染を発症する機会が毎月約10%あることを意味する。CRBSI率が長期使用CVDCの使用中に増加する証明はない。事実、実際の経験および様々な調査は、CRBSI率が何ヶ月使用しても同じであることを示した。試験は、カテーテルを患者が有する各期間、CRBSIリスクが同じであることを示している。単に感染リスクの機会がより多いので、時を通じて患者が感染する機会はより多い。患者が長期使用CVDCを所持することが長くなるほど、感染症を発症する機会は多くなるが、これはリスクにさらされる続ける機会がより多いだけである。
【0011】
透析患者におけるCRBSIは穏やかな症状を通常伴い、抗生物質治療後はなくなる。しかしながら、何人かの患者では、感染の徴候はより重症であり、徴候には全身性炎症反応症候群(「SIRS」)(頻脈、頻呼吸、異常な高熱および白血球数)の全ての症状および低血圧が含まれる。これらの患者は入院させて、静脈内抗生物質投与をしなければならない。このケアにもかかわらず、感染カテーテルを取り出すまで、患者はしばしば重症のままである。調査から、血液透析患者におけるCRBSIはたいていの場合、表皮ブドウ球菌のようなブドウ球菌属が原因であることが分かった。しかしながら、血液透析患者の黄色ブドウ球菌によるCRBSIの割合は他の患者の割合よりも大きく、感染症のかなりの数はグラム陰性生物によると報告されている。
【0012】
ICU患者におけるCRBSI後の死亡率は3〜25%と報告されている。米国の約60,000〜300,000人の透析患者は長期使用CVDCを所持していると報告されている。CRBSIの平均発生率が21,000人/日のみと仮定すると、これらの患者の約120人は日々CRBSIを発症すると予想される。3%の最も低く報告された死亡率で、3〜4人のESRD患者が日々CRBSIで死亡する。25%の最も高く報告された死亡率で、30人のESRD患者が日々CRBSIで死亡する。さらに、入院患者における単一CRBSI症状のケアによるコストは$3,700〜$29,000と報告されている。長期使用CVDCの取り出しおよび交換がより高いコストであると考えれば、長期使用CVDC関連CRBSI患者の場合のコストはより高くなりうる。CRBSIの重症な結果、明らかに菌血症である患者の急性疾患、および原因と推定されるカテーテルを取り出す頻繁な決定を考えれば、カテーテル感染症と戦うための別の手段が大いに求められている。
【0013】
カテーテル閉塞問題に立ち返ると、血栓はカテーテルの先端のすぐ外側に形成されるので、管腔内血栓形成はカテーテルの流れを著しく低下させる。流れの修復は、カテーテルの取り出しまたはこれらの血栓症をなくすtPAのような薬剤の投与につながる。CVDCの使用と使用の間での、血管中のカテーテルにクロットが形成されるのを防ぐために、カテーテルは普通用いられる抗凝血薬、ヘパリンの濃縮溶液を含むロック溶液(通例は、カテーテル管腔当たりヘパリン10,000単位以下)で一般に満たされている。ヘパリンロック溶液は各使用直後に各管腔へ注入され、そしてカテーテルが再びアクセスされるまで一般にそのままにしておく。この量のヘパリンを患者の血流に注入することは過度の出血のリスクがあるので、ヘパリンロック溶液は次の使用前にカテーテルから取り出される。カテーテルのロック処置の間、溶液の注入体積はカテーテルの内容積とぴったり同じであるのが好ましい。しかしながら、この体積を正確に注入したときでも、約1/3の注入抗凝血薬体積はカテーテルの端から一般に出てしまい、透析処置後数時間のうちに患者にいくらかの全身性抗凝固が生じる。
【0014】
ヘパリンロック溶液を使用しても、カテーテルは、カテーテル中の血液の凝固で、カテーテルは使用と使用の間に閉塞することがある。例えば、不適切な体積のヘパリンがカテーテル管腔内に初めに注入され、ヘパリンが管腔から拡散または対流したり、あるいは残留血液がカテーテルロックの間に管腔に残るので、血液がカテーテル中に見出されるかもしれない。これは、管腔を通る流れがなくなると同時に血栓を形成することになる。塞がれたカテーテルは頻繁に除去および/または交換しなければならない。
【0015】
さらに、カテーテル上の血栓およびフィブリン付着物が、血管内装置での微生物集落形成のための病巣として働くこと、および従ってカテーテル血栓症が、長期使用カテーテルの感染に伴う1つの要因でありうることが報告されている。従って、抗凝血薬または血栓崩壊薬の使用はカテーテル関連血流感染の予防の役割を果たすかもしれない。しかしながら、最近の試験管内試験では、カテーテル上での凝固酵素陰性ブドウ球菌の成長がヘパリンの存在で高められることも示唆されている。さらに、カテーテルの開在性を維持するためのヘパリンの日常的な使用は、250〜500単位/日の低容量でも、抗ヘパリン抗体を有する何人かの患者にヘパリン誘導血小板減少症(HIT症候群)を引き起こした。この重大な症候群は突然の重症血栓閉塞性および出血性合併症を結果として生じる。
【0016】
ヘパリン溶液にカテーテルハブ汚染後の感染症を防ぐ固有の防腐性があることは証明されていない。5000U/mLヘパリンロック溶液に防腐性がないことは、BECラボラトリーズ社が標準USP抗微生物効果試験実施要綱の下で行った試験で立証された。ここで用いる「防腐性」とは、ステッドマン医学辞典で定義されているように、「感染性病原物質の成長を抑制することにより感染を防ぐことに関すること」を意味する。ヘパリンは、事実、カテーテル表面上のたんぱく質の「生物膜」層内における細菌成長促進の助けをするのかもしれない(プロタミンは反対の作用を有する)。カテーテル表面上の「生物膜」たんぱく質は抗生物質および白血球から細菌を保護することができる。また、ヘパリンは血小板の減少を誘導し、逆説的に何人かの患者において凝固を引き起こす(「白血球クロット」症候群)。
【0017】
凝血および細菌感染に抵抗力を有するカテーテルロック溶液を得るために、ヘパリンロック溶液に抗生物質を含めることまたはCVDCを所持する患者に抗生物質を予防的に全身投与することが提案されてきた。しかしながら、血流の処置および血管アクセス感染症の治療を行う頻繁な入院および抗生物質の処方のため、血液透析患者は薬剤耐性菌感染の高いリスクを有する。米国におけるバンコマイシン耐性腸球菌(VRE)の急速な増加は抗微生物薬、特に経験的に処方されたバンコマイシンの使用に起因すると考えられている。バンコマイシンは1週間に1回投与すればよく、そして2つの一般的な病原体である凝固酵素陰性ブドウ球菌および黄色ブドウ球菌に対して効果的であるので、血流感染の症状の経験的な治療のために、透析患者に一般に用いられる。しかしながら、バンコマイシンの使用が多くなるほど、バンコマイシン耐性ブドウ球菌を誘導するリスクは大きくなり、これが敗血症の原因となると、これらの患者を治療する効果的な薬剤はない。従って、カテーテル感染を防ぐバンコマイシンおよび他の抗生物質の予防的使用はやめ、カテーテル感染と戦う別の手段が大いに求められている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
上記の欠点をもたないカテーテルロックのためのヘパリンに代わるものおよび抗生物質を含まない抗微生物性を有するカテーテル製剤について、多くの方策が現在研究されている。例えば、本発明者は抗微生物濃度のクエン酸塩を含む前記カテーテルロック溶液について前に説明した。クエン酸塩はカテーテルロック溶液に用いると効果的な抗凝血性をもたらし、そして高濃度(すなわち、約47重量%)でクエン酸塩は効果的な抗微生物性ももたらす。そのような溶液によって提供される1つの挑戦は、濃縮クエン酸塩溶液の高い比重が時間を経て溶液をカテーテルから「流出させる」傾向にすることである。さらに、高度に濃縮されたクエン酸塩は患者の血流に注入されると、重大な副作用をもたらす可能性がある。これらの問題は溶液中のクエン酸塩の濃度を下げることによって減じることができる。低濃度のクエン酸塩でもカテーテル開存を維持する点でヘパリンと少なくとも同等であることが示された;しかしながら、クエン酸塩濃度を下げることは抗微生物作用を低下させることになる。
【0019】
上記の問題を考慮して、カテーテルロック溶液分野の進歩が絶えず求められている。本発明はこの求めに取り組むものであり、様々な恩恵および利益を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0020】
1つの形において、本発明は、分散または溶解されたクエン酸塩およびパラベンを含む水性カテーテルロック溶液を提供する。クエン酸塩およびパラベンは、感染をなくし、そして予想されるその後の感染症を減じるのに有効な濃度であるのが好ましい。本発明の別の形は、パラベンが、メチルパラベン、プロピルパラベン、メチルパラベンとプロピルパラベンの組み合わせ、あるいはメチルパラベン、エチルパラベン、プロピルパラベンおよびブチルパラベンのいずれかまたはそれらの混合物である。「ブチル」という用語をここで用いるとき、ブタンから誘導される1価の基Cで表される4種の異性体のいずれかを指す。クエン酸塩は、クエン酸三ナトリウム二水和物または他のクエン酸塩の形で提供されるのが有利である。溶液の相対密度は、特定の態様では、患者の血液の相対密度と似ているように、そしてそれによって溶液がカテーテルに留まる時間の長さが最適化されるように選択される。他の態様における溶液は増粘剤および/または追加の薬学的に許容される物質も含む。ある特に好ましい態様では、クエン酸塩、パラベンおよび抗微生物作用を有する光酸化体を含むカテーテルロック溶液が提供される。本発明者が示す、すぐれた抗微生物性を有する1つの光酸化体はメチレンブルーである。
【0021】
別の形では、本発明は、内在血管内カテーテルを保持する患者の処置方法を提供する。1つの態様では、その方法は、貫通する管腔を定める内在カテーテルを保持する患者を選択すること、そして水性カテーテルロック溶液を管腔に注入することを含み、溶液は分散または溶解されたクエン酸塩およびパラベンを含む。本発明は特に、感染症の患者またはカテーテルの存在に関連する感染の著しいリスクを有する患者の処置に特に有用である。
【0022】
本発明のさらに別の形では、ロック溶液をカテーテルの管腔に注入するための注入装置を提供する。装置には、注射器、および注射器に入った薬学的に許容されるロック溶液が含まれる。ロック溶液は、分散または溶解されたクエン酸塩およびパラベンを含む。好ましい態様では、ロック溶液の入った注射器は滅菌される。
【0023】
本発明また、手術で埋め込まれたカテーテルを所持する動物の処置法を提供する。その方法は、カテーテルに、クエン酸塩およびパラベンから本質的になる殺菌成分を含む薬学的に許容されるロック溶液を注入することが含まれる。好ましい態様では、殺菌成分は抗生物質を含まない。
【0024】
さらに別の形では、本発明は、使用前カテーテルまたは他の医療インプラントの予備処理に関係する装置、方法および組成物を提供する。1つの態様では、カテーテルは、パラベンを含む溶液にある時間浸し、そしてそれによってパラベンを含浸して感染に抵抗力のある特徴をもつカテーテルを提供する。そのような浸漬溶液はパラベンを高濃度で含むのが好ましい。パラベンの水への溶解度限界のため、高濃度のパラベンは、パラベンをアルコールまたは水/アルコール混合物に溶解することによって都合よく得ることができる。
【0025】
別の形では、本発明は、患者のカテーテルをロックするためのキットを提供する。キットには、分散または溶解したクエン酸塩およびパラベンを含むカテーテルロック溶液の入った容器;および溶液を内在カテーテルの管腔に注入するための媒体に記録された使用説明書が含まれる。
【0026】
さらなる目的、特徴、側面、形態、利点および恩恵はここに記載の説明および図面から明らかになるであろう。
ここに含まれる本発明の実際の特徴は請求の範囲でのみ決定されるが、ここに記載の好ましい態様の特徴である特定の形態および特性を次に簡単に説明する。
【発明の実施の形態】
【0027】
本発明の原理の理解を促すために、ここに記載の態様を参照し、特定の用語を同じ説明に用いるが、それによって本発明の範囲が制限されないことは無論のことである。本発明が関係する技術分野における当業者にとって明らかなように、ここに記載の液体、方法、装置またはキット、および本発明の原理のさらなる適用を変形および変更することは可能である。
【0028】
本発明では、カテーテルロック溶液を使用と使用の間にカテーテル中に存在させたまま、カテーテルロック溶液を、埋め込まれたカテーテルに抗凝血および抗菌性を提供するのに用いる。ここで用いるように、「ロック溶液」という用語は、個々の管腔が再び、一般的にはさらなる処置、すなわち、液体の注入または取り出しのためにアクセスが望ましくまたは必要になるまで、少なくともロック溶液の一部を管腔に留めることを可能にする目的で、カテーテルの管腔に注射または注入される溶液を指す。少なくとも一部のロック溶液が約1時間〜3または4日以上続く望ましい時間、管腔に留まるのが望ましい。しかしながら、内在カテーテルの規則的なケアおよび滅菌維持の間、しばしばロック溶液は日々変化する。本発明によるロック溶液の使用は、カテーテル関連感染症の抑制によりおよびカテーテル閉塞を妨げることにより、カテーテルを保持する患者に特有な利点を提供する。
【0029】
本発明に関連して用いられるカテーテルは一般に、動物に手術で埋め込まれた急性(一時的)または常習的(長期)カテーテルのいずれかである。カテーテルは静脈または動脈に通常挿入される。カテーテルは様々な間隔で液体、栄養および薬剤を体に投与するの一般に用いられる。カテーテルはまた、血液透析処置の血液のような体液の取り出しにも用いることができる。使用されていないとき、カテーテルはその後の処置が行われるまで、その適所、一般には血管内の適所に留まる。
【0030】
本発明で用いられるカテーテルには、公知のおよび一般的に用いられるカテーテルが含まれ、各社から容易に入手しうる。カテーテルは形状および大きさが異なってもよい。本発明で一般に用いられるタイプのカテーテルは、カテーテルを固定する組織の成長のためにカフを含むトンネル状カテーテルである。用いうるカテーテルの例は、限定されないが、アッシュ・アクセス・テクノロジー社(インディアナ州ラファイエット)およびメドコンプ社(ペンシルベニア州ハーレイスビル)のASH SPLIT CATHおよびDUOSPLIT;メドコンプ社のTesioカテーテル;クイントン・インスツルメント社(ワシントン州シアトル)のPERM CATH;並びにバード社(ユタ州ソルトレークシティ)のHICKMANおよびVAS CATHである。皮下開口部に全体的に含まれるカテーテルも本発明において有用である;例えば、バスカ社(メーン州トップスフィールド)のLIFESITE;およびバイオリンク社(マサチューセッツ州ボストン)のDIALOCKが含まれる。カテーテルは数ヶ月働くように製造される。例えば、TESIOカテーテルは適当な関与で4年までもちこたえる。しかしながら、本発明以前の実際問題として、閉塞および/または感染が原因でカテーテルの寿命は限られていた。カテーテルは閉塞および/または感染が生じるとしばしば取り除いたりおよび/または交換しなければならない。
【0031】
図1は、本発明で用いるためのカテーテル10の一例である。カテーテル10は二重管腔カテーテルであり、カフ38を有する外側のさや12並びに第1および第2管腔14および16が含まれる。管腔14および16は、末端の先端部18からさや12を通り抜けて延び、そして接続部36でさや12から出る。管腔14および16のそれぞれは、解除可能なクランプ20および22をそれぞれ含む。管腔14および16のそれぞれはねじ込み末端24および26で終わり、これらは保護末端キャップ28および30にそれぞれねじ込んで取り付けることができる。ロック溶液を含む液体は、注射器34とカテーテル10の末端24および26との間をルーエル(Luer)接続することによって、各管腔14および16から注入または取り出すことができる。あるいは液体は、保護末端キャップ28および30を、例えばベタジンおよびアルコールで連続洗浄することによって滅菌した後、保護末端キャップ28および30を通して針(図示されていない)を挿入することによって各管腔から注入または取り出すことができる。さらに別の方法として、一方または両方の保護末端キャップ28および30を取り外し、ねじ込み末端24および26をコネクター(図示されていない)により液体注入または取り出しライン(図示されていない)へねじ込んで取り付けてもよい。望ましい処置期間が完了したら、管腔を通常の生理食塩水でフラッシュし、その後、ロック溶液を各管腔に注入し、新たな滅菌保護末端キャップをカテーテルの末端24および25にはめる。全ての処置は、本技術分野における当業者に周知の標準滅菌技術を用いて行われる。本発明で用いるためのカテーテルは様々な材料、例えば珪素、ポリウレタン、ポリビニル、シリコーン、またはシラスチックエラストマーから製造することができる。
【0032】
1つの形では、本発明は、分散または溶解されたクエン酸塩およびパラベンを含む水性カテーテルロック溶液を提供する。本技術分野における当業者であれば、「パラベン」という用語がp−ヒドロキシ安息香酸のアルキルエステルを指すのに用いられることは容易に理解されるであろう。1つの態様では、パラベンは、メチルパラベン、エチルパラベン、プロピルパラベン、ブチルパラベンおよびそれらパラベンの2種以上の混合物よりなる群から選択される。別の態様では、パラベンは、メチルパラベン、プロピルパラベンまたはそれらの混合物である。1つの好ましい態様におけるクエン酸塩はクエン酸三ナトリウム二水和物のようなクエン酸塩の形で提供される。
【0033】
1つの態様では、ロック溶液はクエン酸塩およびメチルパラベンを含む。溶液中のメチルパラベンの量は、水性クエン酸塩溶液中のメチルパラベンの溶解度限度によってのみ制限される。代表的なクエン酸塩/メチルパラベンカテーテルロック溶液では、メチルパラベンの濃度は約0.005〜約0.5%である。別の態様では、メチルパラベンの濃度は約0.01〜約0.5%である。ここで用いるように、「%」は最終溶液の100mL当たりのgで測定される濃度を指す。
【0034】
別の態様では、ロック溶液はクエン酸塩およびプロピルパラベンを含む。溶液中のプロピルパラベンの量は、水性クエン酸塩溶液中のプロピルパラベンの溶解度限度によってのみ制限される。代表的なクエン酸塩/プロピルパラベンカテーテルロック溶液では、プロピルパラベンの濃度は約0.005〜約0.5%である。別の態様では、プロピルパラベンの濃度は約0.01〜約0.2%である。
【0035】
別の好ましい態様では、ロック溶液はクエン酸塩およびメチルパラベンとプロピルパラベンとの混合物を含む。代表的なクエン酸塩/メチルパラベン/プロピルパラベンカテーテルロック溶液では、パラベンの全体濃度は約0.05〜約0.6%である。別の態様では、パラベンの全体濃度は約0.1〜約0.3%である。さらに別の態様では、メチルパラベンの濃度は約0.05〜約0.5%であり、プロピルパラベンの濃度は約0.005〜約0.5%である。さらにまた別の態様では、メチルパラベンの濃度は約0.05〜約0.3%であり、プロピルパラベンの濃度は約0.005〜約0.3%である。すぐれた性質を有することが分かった具体的な態様では、液体中のメチルパラベンの濃度は約0.18%であり、プロピルパラベンの濃度は約0.02%である。
【0036】
本発明を有利な結果が得られるいずれかの理論に結びつけるつもりはないが、クエン酸塩は近くの血液中のカルシウムをキレート化することによって凝血を妨げると考えられる。クエン酸塩濃度を減少させると、血液クロットを形成する非常に多くの反応を触媒するカルシウムの作用を減少させる。抗凝血性カテーテルロックとしてのクエン酸塩は、ロック溶液がカテーテルの先端で血液によって薄められるときでも、少なくとも血液中のイオン化カルシウム濃度を著しく減じるのに必要な高さの濃度で存在するのが好ましい。1つの好ましい態様では、クエン酸ナトリウムはロック溶液中に約1.5〜約47%の濃度で存在する。別の態様では、クエン酸塩は約1.5〜約23%の濃度で存在する。さらに別の態様では、クエン酸塩は約1.5〜約15%の濃度で存在する。別の態様では、クエン酸塩は約20%以下の濃度で存在する。
【0037】
上記の濃度は、水中の主としてクエン酸三ナトリウムの「%」として表している。例えば特定のpHにするために、クエン酸塩の様々な組み合わせ、例えばクエン酸三ナトリウムとクエン酸とを組み合わせたとき、クエン酸塩濃度をモル濃度として表すとより正確で役だち、特定の割合の塩はナトリウム、水素または他の陽イオンである。従って、1つの態様では、クエン酸塩は少なくとも約0.004モル、より好ましくは約0.01〜約1.0モルの濃度で存在する。別の態様では、約0.1〜約0.5モルの濃度のクエン酸塩が含まれる。さらに別の態様では、約0.24モルの濃度のクエン酸塩が含まれる。
【0038】
7重量%のクエン酸塩濃度では、クエン酸塩はカテーテルロック溶液中で強力な抗凝血作用を有する。しかしながら、この濃度では、クエン酸塩単独は有意な抗微生物性をもたらさないと考える。本発明は、クエン酸塩、メチルパラベンおよびプロピルパラベンの混合物が、本発明に従ってカテーテルロック溶液として用いるとき、予想外に効果的な抗菌活性を有することを実験的に確証した発見に関する。多数の微生物を用いた一連の試験で、分散または溶解されたクエン酸塩メチルパラベンおよびプロピルパラベンを含む溶液が全ての種類の細菌を1日以内(ほとんどは1時間以内)に効果的に殺し、一方、ヘパリンおよびパラベンを含む溶液、生理食塩水およびパラベンを含む溶液、7%クエン酸塩のみを含む溶液、および薄めていない生理食塩水は、微生物にほとんどまたは全く作用しない。
【0039】
さらに、クエン酸塩/パラベン混合物によって示されるすぐれた抗微生物作用は、溶液のpHに影響されないことが以外にも分かった。これに関しては(そして以下の実施例で示すように)、7重量%のクエン酸塩、0.18重量%のメチルパラベンおよび0.02重量%のプロピルパラベンを含む溶液がpH約4.5およびpH約6.2で広範囲の細菌に実質的に同等の抗微生物作用を有することが示された。これらの溶液が関係する実験についてのさらなる情報は以下の実施例に示す。本発明の好ましい態様では、本発明のカテーテルロック溶液のpHは約4〜約8である。
【0040】
1つの好ましい態様では、本発明のカテーテルロック溶液は、約7%の濃度のクエン酸塩(例えばクエン酸三ナトリウム二水和物の形で提供される)および約0.2%の濃度のパラベン成分を含む。1つの好ましい態様では、約90%のパラベン成分はメチルパラベン、そして約10%のパラベン成分はプロピルパラベンである。
【0041】
どのようなカテーテルロック溶液も取り組まねばならない問題は、溶液がカテーテル内に永久的に留まっていないことである。カテーテルロック溶液のいくらかは、カテーテルの管腔容積に等しい体積をカテーテルに注入したとき、注入の間にカテーテルの末端から出てしまう(しばしば注入体積の約1/3)。さらに、カテーテルの末端に残留する部分は一般に、カテーテルの側穴(あるならば)を通る血流によって徐々に洗い除かれる。他のロック溶液は、透析処置の間に経過する時間の間、カテーテルの末端を通ってカテーテルの本体から徐々に拡散する。
【0042】
例えば、濃縮クエン酸塩の場合、重量作用も役割を果たす。もちろん、クエン酸塩溶液の密度がクエン酸塩濃度と共に増加することは無論のことである。例えば、23%クエン酸塩の相対密度は1.120であり、これは血液の相対密度よりもかなり高い。従って、患者が立っているとき、大静脈中のカテーテル内側部分のセグメントは垂直である。重力は、この濃度のクエン酸塩がカテーテルをゆっくり出る原因となる。実験室では、垂直に置いたある種のカテーテル(例えば、二重D形Ash Split Cathカテーテル)において、23%クエン酸塩ロックが3〜5日にわたってカテーテルの末端部から血液または血液に代わるもの(同じ相対密度を有する)へ徐々に出ることが分かった。他のカテーテル(例えば、円筒形のTesioカテーテル)では、23%クエン酸塩ロックはずっと出ない。
【0043】
試験管内試験から、ロック溶液がカテーテル内に留まる時間の長さを決定するのにロック溶液の密度が重要であることが分かった。ヘマトクリット32%の血液の相対密度は約1.040である。これより高い相対密度のカテーテルロック溶液を垂直に置いたカテーテルに入れると、ロック溶液はゆっくりした速度でカテーテルから出る。PEGのような高分子物質で粘度を高めると遅くなるが、ロック溶液の退出を防がない。従って、本発明の特定の態様では、ロック溶液のクエン酸塩濃度は、ロック溶液の密度を患者の血液の密度に十分に近づけて、溶液がロック期間中に許容されない程度にカテーテルから出ないするように選択される。
【0044】
7%クエン酸ナトリウム(0.24モルクエン酸塩)単独が、1.040の血液相対密度につり合う濃度であると考えられる。クエン酸塩のこの濃度は中性または酸性pHで有意な抗菌作用をもたない;しかしながら、0.24モルクエン酸塩の抗血栓作用は、カテーテルからの拡散がいくらかあっても非常に高いままである。この溶液の比重は血液のそれまたはそれに近く、従って、カテーテルの末端から溶液が「流出」するのを最小限にしたりあるいはなくすばかりでなく、低濃度のパラベンと組み合わせると予想外に高い抗菌作用を示すことも分かった。
【0045】
従って、本発明の1つの側面では、密度が約1.000〜約1.300g/mlのクエン酸塩およびパラベンを含むカテーテルロック溶液を提供する。別の態様では、密度が約1.000〜約1.080g/mlのクエン酸塩およびパラベンを含むカテーテルロック溶液を提供する。また別の態様では、密度が約1.030〜約1.050g/mlのクエン酸塩およびパラベンを含むカテーテルロック溶液を提供する。さらに別の態様では、密度が約1.035〜約1.045g/mlのクエン酸塩およびパラベンを含む本発明のカテーテルロック溶液を提供する。ある患者の血液密度が別の患者の血液密度と異なるかもしれないことは無論のことである。従って、本発明はまた、カテーテルロック溶液の相対密度をある患者の全体血液相対密度の所定許容度内(例えば、患者の血液相対密度の0.040g/ml内)につり合わせることも意図する。そのような密度のつり合わせは、本発明の説明を考慮すると本技術分野における当業者にとって容易なことである。密度をぴったり合わせることは、処置と処置の間、カテーテル内のカテーテルロック溶液を維持するのに有利な効果をもつ。相対密度が比較的近いと、患者がまっすぐ立っているとき、重力がカテーテルロック溶液のカテーテルからの退出を促す傾向はない。同様に、患者が立っているときにカテーテルが大腿静脈におけるように上方に向いているとき、(ヘパリンのような低密度カテーテルロックで起こりうるように)血液がカテーテルに入ることはない。
【0046】
本発明の別の側面では、カテーテルロック溶液にはまた、国際特許公開WO00/10385(参照することによってここに記載されたものとする)に記載のような粘度調節剤を含めてもよい。増粘剤の存在は、例えば、あるカテーテルロック溶液の相対密度が患者の血液の密度と同じではないときに特に有用である。
【0047】
従って、特定の好ましい態様では、クエン酸塩、パラベン、およびカテーテル内のロックを望ましい時間維持するのに役立つ1種以上の粘度調節剤を含むロック溶液を提供する。カテーテルが様々な形態および管腔直径を有するように製造されることは周知のことである。例えば、カテーテルは単一または二重管腔を含むことができる。二重管腔は互いに隣接させて融合したりあるいは同心状にすることができる。管腔は、実質的に円形から実質的に卵形までの様々な横断面積および形を有することができる。上記のように、たいていのロック溶液に共通の現象は、管腔末端の溶液の一部が患者の血流に拡散し、カテーテル内で血液に入れ代わることである。ロック溶液の管腔からの拡散速度は、ロック溶液の密度ばかりでなく、個々の管腔断面の形および面積、並びにロック溶液の粘度に影響される。本発明のロック溶液は、好ましくは、ロック溶液のかなりの部分が通常の状況下で数日以内にカテーテルから拡散または流出しないような粘度および密度を有するように製造される。
【0048】
本発明で用いるために有利に選択しうる増粘剤には、人を含めた動物の治療に公知のまたは一般に用いられる薬学的に許容される薬剤が含まれる。例えば、限定されないが、デキストラン、ポリエチレングリコール、グリセリン、ポリゲリン、および非代謝性糖、例えばソルビトールおよびマンニトール、並びにこれら化合物の混合物である。ロック溶液の粘度を上げる増粘剤は、より高い濃度のクエン酸塩を、ロック溶液の高い密度によるカテーテルからのロック溶液の退出を許容されない程度にすることなく用いることを可能にする。
【0049】
任意の粘度および密度が個々の管腔の形および大きさによることは無論のことであるが、本技術分野における当業者はここにおける説明を考慮して、過度の実験を行うことなく個々のカテーテルに望ましい密度および粘度を容易に決定することができる。もちろん、比較的低い濃度のクエン酸塩および血液に類似した密度のロック溶液では、増粘剤の必要性が少なかったり、あるいは必要ない。クエン酸塩濃度の低下によって減少するクエン酸塩の防腐作用は、クエン酸塩およびパラベンが一緒になって防腐作用を示す量のパラベンまたはパラベン混合物を含めることによって得られる。
【0050】
本発明のロック溶液は様々な他の薬学的に許容される薬剤を含めて製造することができる。例えば、ロック溶液には塩、例えば塩化ナトリウムまたは他のナトリウム塩を含めてもよい。ロック溶液にはまた、様々な他の抗菌、抗微生物および抗凝血薬を含有させてもよい。そのような抗菌および抗微生物薬は本技術分野における当業者によく知られており、限定されないが、ゲンタマイシン、バンコマイシンおよびこれらの薬剤の混合物が含まれる。本発明のカテーテルロック溶液に含めることができるさらなる抗凝血薬は、例えばヘパリン、ウロキナーゼ、組織プラスミノゲン活性(tPA)およびこれらの薬剤の混合物である。抗凝血薬がヘパリンを含むとき、ヘパリンは約100〜約10,000単位/mlの濃度で存在するのが好ましい。
【0051】
「薬学的に許容される」とは、ロック溶液並びに含まれる塩および他の添加剤が、適切な医学的判断の範囲内で、不適切な毒性、刺激、アレルギー反応等なしで人およびそれ以下の動物の組織と接触させて用いるのに適しており、そして妥当な利益/リスク比とつり合っていることを意味する。組成物を滅菌して感染リスクを少なくすることも一般に必要である。例えば、薬学的に許容される塩は本技術分野でよく知られており、それらの例はS.M. Berge, J. Pharmaceutical Science, 66:1-19, 1977に記載されている。
【0052】
本発明により製造されたまたは選択されたロック溶液に含めることができる薬学的に許容される薬剤の別の例は、光酸化体、例えばメチレンブルーである。ここで用いるように、「光酸化体」という用語は、本発明の溶液に適当な濃度で存在するとき、抗微生物性を有する光酸化体を意味すると定義される。メチレンブルーおよび他の光酸化体のカテーテルロック溶液における使用は、米国特許出願公開第US2004/0092890号(その全てを参照することによってここに記載されたものとする)で論じられている。本発明は、クエン酸塩およびパラベンと共に、光酸化体をカテーテルロック溶液に含めると、抗微生物性が高まることを発見した。それ故、本発明の別のすぐれた側面では、溶液に溶解したクエン酸塩、パラベンおよび光酸化体を含むカテーテルロック溶液を提供する。1つの好ましい態様では、光酸化体はメチレンブルーである。本発明に従って用いるために選択しうる別の光酸化体は、限定されないが、ローズベンガル、ヒペリシン、メチレンバイオレット、プロフラビン、リボフラビン、リバノール、アクリフラビン、トルイドブルー、トリパンブルー、ニュートラルレッド、およびこれらの混合物が含まれる。
【0053】
本発明の1つの態様では、溶液中の光酸化体の濃度は約1500mg/100ml以下である。別の態様では、液体中の光酸化体の濃度は約1から約1500mg/100mlである。さらに別の態様では、液体中の光酸化体の濃度は約1から約1000mg/100mlである。さらにまた別の態様では、液体中の光酸化体の濃度は約1から約100mg/100mlである。さらなる態様では、液体中の光酸化体の濃度は約1から約50mg/100mlである。別の態様では、液体中の光酸化体の濃度は約1から約10mg/100mlである。
【0054】
光酸化体はカテーテルロック溶液の抗微生物性を高める他に、溶液に色をつけるという点で好都合である。本出願はまた、本発明で製造されるまたは使用されるカテーテルロック溶液に他の着色剤を用いることも意図する。着色剤は、例えば、カテーテルがカテーテルロック溶液を含むことを観察者に示す安全機能を提供するのに用いることができる。例えば、10mg/100mlの濃度のメチレンブルーは注射器中で暗青色、そしてカテーテルの透明な外側セグメント内で顕著な青色を有する。時を経て、メチレンブルー溶液はポリウレタンまたはシリコーンでできたカテーテルの内側を少し汚すが、注入されたロック溶液は依然としてセグメントを顕著により黒っぽくする。従って、ロック溶液の存在は認めることができる。さらに、例えば、様々なクエン酸塩濃度、様々なパラベン濃度または混合物、あるいはおそらく抗凝血薬または抗生物質のような他の添加剤を含むロック溶液の識別に各種着色剤が用いられる色彩調整システムを用いることは可能である。
【0055】
上記のような本発明のカテーテルロック溶液に加えて、本発明はまた、内在血管内カテーテルを有する動物における感染症を阻止する方法も提供する。従って、1つの側面では、本発明は、貫通する管腔を定める内在カテーテルを有する患者を選択すること、および水性カテーテルロック溶液を管腔に注入することを含み、該溶液がそこに分散または溶解されたクエン酸塩およびパラベンを含む方法を提供する。本発明を実施する好ましい方法では、方法は、ロックされるカテーテルの内容積の約80〜約120%であるロック溶液の量を注入することを含む。
【0056】
本発明に従ってロック溶液がカテーテルの管腔に注入されたら、その個々のカテーテルまたは管腔が再びアクセスされる時まで、ロック溶液は留まることができるのが好ましい。特に、カテーテルロック溶液にヘパリンが含まれるならば、透析処置を始める前にまたは液体注入のためにカテーテルを使用する前に、カテーテルロック溶液を除去するのが望ましい。
【0057】
本発明の他の側面では、クエン酸塩およびパラベンを含有するカテーテルロック溶液は、静脈または動脈に加えて他の体腔へアクセスするためにに用いられるカテーテルへ注入しうる。例えば、腹膜透析に用いられるカテーテルは腹腔(腹膜によって限定されるおよび腹部中の器官と離れている空間)へアクセスする。これらのカテーテルは細菌および真菌汚染のリスクも有する。腹膜透析溶液のドレーンおよび注入後、クエン酸塩およびパラベンを含有するロック溶液をカテーテルに注入する。感染リスクのある他のカテーテルには、膀胱、脳脊髄液(中枢神経系付近)および皮下腔(皮膚の下)におけるカテーテルが含まれる。
【0058】
本発明はまた、感染に対して抵抗力のあるカテーテルを提供するカテーテルの予備処理に関する。従って、本発明の有利な側面では、患者への、例えば患者の血管部位への埋め込み用に選択されたカテーテルは、パラベンを含む溶液で予備処理して、カテーテル表面をパラベンで被覆および含浸し、それによってカテーテルを感染に対して抵抗力のあるものにすることができる。一般に、非吸収性物質を除去するには、カテーテルを過剰量の水性パラベン溶液に浸し、その後、水、または生理学的使用状態に似せた溶液中で洗浄することで十分である。しかしながら、好ましい態様では、カテーテルをパラベンの水中の溶解限度を越える高濃度のパラベンに浸すのが望ましい。1つの好ましい態様では、パラベンをアルコールまたは水/アルコール混合物に溶解し、カテーテルをそれに浸す。この方法で予備処理されたカテーテルは、特にクエン酸塩を含む溶液またはクエン酸塩およびパラベンを含む溶液をカテーテルに入れたとき、感染に対する抵抗力が増加する。
【0059】
広範囲の他の高分子医療装置を上記のように処理しうることも考えられる。例えば、パラベン溶液で被覆および含浸しやすい医療装置には、熱可塑性または高分子材料のような非金属材料が含まれる。そのような材料の例は、ゴム、プラスチック、ポリエチレン、ポリウレタン、シリコーン、ゴアテックス(ポリテトラフルオロエチレン)、ダクロン(ポリエチレンテトラフタレート)、テフロン(登録商標)(ポリテトラフルオロエチレン)、ラテックス、エラストマー、およびゼラチン、コラーゲンまたはアルブミンでシールされたダクロンである。本発明の抗微生物性を組み合わせた応用に特に適した装置の例は、末梢に挿入可能な中心静脈カテーテル、透析カテーテル、長期トンネル状中心静脈カテーテル、末梢静脈カテーテル、短期中心静脈カテーテル、動脈カテーテル、肺動脈スワン−ガンツカテーテル、膀胱カテーテル、長期膀胱装置、組織結合膀胱装置、血管移植片、血管カテーテル口、外傷ドレーン管、水頭症シャント、腹膜カテーテル、ペースメーカーカプセル、小さいまたは一時的関節代替物、膀胱拡張器、心臓弁等である。
【0060】
従って、本発明の1つの態様は、細菌および真菌生物の成長を妨げるのに有効な濃度のパラベンの水溶液を形成する工程;およびパラベンが医療移植片の材料に浸透する条件下で溶液を医療移植片の少なくとも一部へ施す工程を含む、非金属医療移植片をパラベンで含浸する方法である。パラベン溶液は、カテーテルまたは他の装置にしみ込むのが望ましいパラベンの量により、広い範囲の濃度にすることができる。さらに、カテーテルまたは他の装置を溶液に浸す時間を変えて、含浸の程度を変えることができる。一般に、カテーテルは少なくとも約1時間浸すのが望ましく、それよりかなり長いことも多い。
【0061】
含浸された移植変を溶液から取り出し、そして任意に乾燥した後、移植片を液体ですすいで過剰のパラベンを表面から除去するのが好ましい。本発明はもちろん、カテーテルまたは他の装置の一部を予備処理する特定の態様に用いることができる。例えば、血管内カテーテルの場合、カテーテルの管腔のみを予備処理するのが望ましい。これは、カテーテル全体を浸すのではなく、単に、予備処理溶液をカテーテルの管腔に入れることによって行うことができる。あるいは、患者の動脈もしくは静脈内に存在するカテーテルの一部だけを予備処理する、あるいは経皮的にある部分だけを予備処理することも可能である。
【0062】
別の側面では、本発明は、ロック溶液をカテーテルの管腔に注入するための注入装置に関する。注入装置は、注射器、および注射器に含まれる薬学的に許容されるロック溶液を含み、ロック溶液はそこに分散または溶解されたクエン酸塩およびパラベンを含有する。好ましい態様では、ロック溶液を含む注射器は滅菌される。注射器は、針を注射器に取り付けそして針を注入口に圧入することによって付けた注入口を有するカテーテルに、カテーテルロック溶液を注入するのに有利に用いることができる。あるいは、注射器は、カテーテルの蓋を取り、そして注射器をカテーテルに直接取り付けることによって用いることができる。
【0063】
本発明の別の側面では、カテーテルロックキットを提供する。1つの好ましい態様では、キットは、カテーテルロック溶液を含む容器、分散または溶解されたクエン酸塩およびパラベンを含むカテーテルロック溶液、および溶液を内在カテーテルの管腔に注入するための媒体に記録された取り扱い説明書を含む。
【0064】
本技術分野における当業者には明らかなように、本発明の1つの形において、分散または溶解されたクエン酸塩およびパラベンを含む水性カテーテルロック溶液を説明してきた。クエン酸塩およびパラベンは、感染をなくしそしてその後の感染症の可能性を減じるのに有効な濃度であるのが好ましい。溶液は、例えば、限定されないが、メチルパラベン、エチルパラベン、プロピルパラベン、ブチルパラベンおよびそれらの2種以上の混合物よりなる群から選択される成分を含むことができる。
【0065】
本発明の1つの態様では、溶液はメチルパラベンを含む。ここに記載の好ましい態様では、溶液中のメチルパラベンの濃度は約0.005〜約0.5%である。別の態様では、溶液はプロピルパラベンを含む。好ましい態様では、溶液中のプロピルパラベンの濃度は約0.005〜約0.5%である。さらに別の態様では、溶液はメチルパラベンとプロピルパラベンとの混合物を含む。好ましい態様では、溶液中のメチルパラベンの濃度は約0.05〜約0.5%であり、溶液中のプロピルパラベンの濃度は約0.005〜約0.5%である。ここに記載の別の好ましい態様では、溶液中のメチルパラベンの濃度は約0.18重量%であり、溶液中のプロピルパラベンの濃度は約0.02重量%である。
【0066】
溶液中のクエン酸塩の濃度は、患者の血液中のカルシウム濃度と少なくとも同じであるのが好ましい。1つの態様では、溶液中のクエン酸塩の濃度は約1.5〜約47重量%である。別の好ましい態様では、溶液中のクエン酸塩の濃度は約1.5〜約23重量%である。さらに別の好ましい態様では、溶液中のクエン酸塩の濃度は約1.5〜約15重量%である。さらに別の好ましい態様では、溶液中のクエン酸塩の濃度は約7重量%である。
【0067】
ここに記載の1つのカテーテルロック溶液では、クエン酸塩の濃度は約1.5〜約15%であり、パラベンの濃度は約0.005〜約0.6%である。別のカテーテルロック溶液では、溶液中のクエン酸塩の濃度は約1.5〜約15%であり、溶液中のパラベンの濃度は約0.05〜約0.3%である。さらに別のカテーテルロック溶液では、溶液中のクエン酸塩の濃度は約7重量%であり、溶液中のパラベンの濃度は約0.2重量%である。
【0068】
特定の好ましい態様では、クエン酸塩は溶液中でクエン酸塩の形で提供される。1つの好ましい態様では、クエン酸塩は溶液中でクエン酸三ナトリウム二水和物の形で提供される。
【0069】
ここに記載の特定の好ましい態様では、カテーテルロック溶液のpHは約4〜約8である。他の好ましい態様では、溶液の相対密度は約1.000〜約1.300g/mlである。別の態様では、溶液の相対密度は約1.000〜約1.080g/mlである。
【0070】
他の好ましい態様では、増粘剤をさらに含むカテーテルロック溶液が記載されている。増粘剤は、例えば、デキストラン、ポリエチレングリコール、グリセリン、ポリゲリン、非代謝性の糖、例えばソルビトールおよびマンニトール、並びにこれらの混合物よりなる群から選択される成分である。
【0071】
本発明のさらに別の形では、溶液に分散または溶解されたクエン酸塩およびパラベンを含み、そしてまた溶液に溶解された光酸化体をさらに含むカテーテルロック溶液が記載されている。光酸化体は、例えば、限定されないが、メチレンブルー、ローズベンガル、ヒペリシン、メチレンバイオレット、プロフラビン、リボフラビン、リバノール、アクリフラビン、トルイドブルー、トリパンブルー、ニュートラルレッド、およびこれらの混合物よりなる群から選択される成分である。本発明の好ましい態様では、光酸化体はメチレンブルーを含む。
【0072】
ここに記載の1つの態様では、溶液中のメチレンブルーまたは他の光酸化体濃度は、約1500mg/100ml以下である。別の態様では、液体中のメチレンブルーまたは他の光酸化体濃度は、約1〜約1500mg/100mlである。さらに別の態様では、液体中のメチレンブルーまたは他の光酸化体濃度は、約1〜約1000mg/100mlである。さらにまた別の態様では、液体中のメチレンブルーまたは他の光酸化体濃度は、約1〜約100mg/100mlである。さらなる態様では、液体中のメチレンブルーまたは他の光酸化体濃度は、約1〜約50mg/100mlである。別の態様では、液体中のメチレンブルーまたは他の光酸化体濃度は、10mg/100mlである。
【0073】
本発明の別の側面では、(1)貫通する管腔を定める内在カテーテルを有する患者を選択すること;および(2)本発明に従って製造されたまたは選択された水性カテーテルロック溶液を管腔に注入することを含む、患者の処置方法が記載されている。本発明のこの方法を実施する1つの方法では、カテーテルは血管内カテーテルおよび体腔カテーテルよりなる群から選択される。好ましい態様では、カテーテルの管腔は内容積を有し、注入が、内容積の約80〜約120%である量のロック溶液を注入することを含む。
【0074】
さらに別の側面では、本発明は、ロック溶液をカテーテルの管腔へ注入するための注入装置を提供する。装置には、注射器;および注射器に含まれる薬学的に許容されるロック溶液が含まれる。ロック溶液は、その様々な側面および態様の全てにおいて、本発明により提供される広範囲なロック溶液のいずれか1種である。1つの好ましい態様では、ロック溶液を含む注射器は滅菌されている。
【0075】
本発明のさらに別の態様では、患者のカテーテルをロックするためのキットが記載されている。キットは、(1)カテーテルロック溶液を含む容器;および(2)溶液を内在カテーテルの管腔に注入するための、媒体に記録された使用説明書を含む。ロック溶液は、その様々な側面および態様の全てにおいて、本発明により提供される広範囲なロック溶液のいずれか1種である。1つの好ましい態様では、カテーテルは血管内カテーテルおよび体腔カテーテルよりなる群から選択される。別の好ましい態様では、カテーテルの管腔は内容積を有し、使用説明書は、内容積の約80〜約120%である量のロック溶液を注入する指示を含む。
【0076】
本発明の別の側面では、本発明は、手術でカテーテルが埋め込まれた動物の処置方法を提供する。この方法は、カテーテルに、殺菌成分を含む薬学的に許容されるロック溶液を注入することを含み、ここで、殺菌成分はクエン酸塩およびパラベンから本質的になる。1つの態様では、殺菌成分はクエン酸塩、パラベンおよび光酸化体から本質的になる。別の態様では、殺菌成分は抗生物質を含まない。
【0077】
次の具体的な実施例を参照して本発明をさらに説明する。もちろん、これらの実施例は本発明を説明するためのものであり、決して制限するものではない。
【実施例】
【0078】
実施例1
7重量%濃度でクエン酸塩(クエン酸三ナトリウムとして)、0.18重量%濃度でメチルパラベン、および0.02重量%濃度でプロピルパラベンを含有するカテーテルロック溶液を本発明に従って製造した。カテーテルロック溶液の目標pHは4.5であり、試験中の溶液の実際pHは4.58であった。製造したこの溶液に細菌胞子を注入することによって、溶液を多種の細菌のコロニーと接触させ、細菌を定期的に(60分、24時間、48時間および72時間)評価して、1ミリリットル当たりのコロニー形成単位(CFU)数を測定した。データは以下の表Iに示す。
表I
【0079】
【表1】

【0080】
実施例2
7重量%濃度でクエン酸塩(クエン酸三ナトリウムとして)、0.18重量%濃度でメチルパラベン、および0.02重量%濃度でプロピルパラベンを含有するカテーテルロック溶液を本発明に従って製造した。カテーテルロック溶液の目標pHは6.2であり、試験中の溶液の実際pHは6.26であった。製造したこの溶液に細菌胞子を注入することによって、溶液を多種の細菌のコロニーと接触させ、細菌を定期的に(60分、24時間、48時間および72時間)評価して、1ミリリットル当たりのコロニー形成単位(CFU)数を測定した。データは以下の表IIに示す。
表II
【0081】
【表2】

【0082】
実施例3
比較実施例
防腐薬と共にヘパリンを2,500単位/mlの濃度で含有するカテーテルロック溶液を製造した。このロック溶液は、1mlの5,000単位/mlヘパリン、1.5mg/mlメチルパラベンおよび0.15mg/mlプロピルパラベンを1mlの0.9%滅菌生理食塩水と組み合わせることによって製造した。製造したこの溶液に細菌胞子を注入することによって、溶液を多種の細菌のコロニーと接触させ、細菌を定期的に(60分、24時間、48時間および72時間)評価して、1ミリリットル当たりのコロニー形成単位(CFU)数を測定した。データは以下の表IIIに示す。
表III
【0083】
【表3】

【0084】
実施例4
比較実施例
生理食塩水のみ(0.85%)のカテーテルロック溶液を製造した。製造したこの溶液に細菌胞子を注入することによって、生理食塩水溶液を多種の細菌のコロニーと接触させ、細菌を定期的に(60分、24時間、48時間および72時間)評価して、1ミリリットル当たりのコロニー形成単位(CFU)数を測定した。データは以下の表IVに示す。
表IV
【0085】
【表4】

【0086】
実施例5
比較実施例
0.09重量%濃度でメチルパラベン、および0.01重量%濃度でプロピルパラベンを含有するカテーテルロック溶液(生理食塩水中、クエン酸塩は含まない)を製造した。製造したこの溶液に細菌胞子を注入することによって、溶液を多種の細菌のコロニーと接触させ、細菌を定期的に(60分、24時間、48時間および72時間)評価して、1ミリリットル当たりのコロニー形成単位(CFU)数を測定した。72時間にわたる試料の定期的な目視検査に基づき、パラベンのみのカテーテルロック溶液は黄色ブドウ球菌(ATCC33591);大腸菌(ATCC35218);大腸菌(ATCC25922);P.アエルギノーサ(ATCC27853);C.アリビカンス(ATCC10231);およびE.ファエカリス(ATCC376)のコロニーの成長において有意な抗菌作用は観察されなかった。パラベンのみの溶液は表皮ブドウ球菌(ATCC12228)に抗菌作用を有し、最初の24時間以内は有意な抗菌作用を有していた。
実施例6
本発明に従って2種類のカテーテルロック溶液を製造した。第1の溶液には、7重量%濃度でクエン酸塩(クエン酸三ナトリウムとして)、0.18重量%濃度でメチルパラベン、および0.02重量%濃度でプロピルパラベンを含有させた。第2の溶液には、7重量%濃度で同じクエン酸塩(クエン酸三ナトリウムとして)、0.18重量%濃度でメチルパラベン、および0.02重量%濃度でプロピルパラベン、そして0.01重量%濃度でメチレンブルーを含有させた。カテーテルロック溶液の目標pHは6.2であり、試験中の溶液の実際pHは6.2であった。製造したこの溶液に細菌胞子を注入することによって、溶液をE.ファエカリス細菌のコロニーと接触させ、細菌を定期的に(0分、10分、20分、40分および60分)評価して、1ミリリットル当たりのコロニー形成単位(CFU)数を測定した。データは以下の表Vに示す。
表V
【0087】
【表5】

【0088】
実施例7
本発明に従って2種類のカテーテルロック溶液を製造した。第1の溶液には、7重量%濃度でクエン酸塩(クエン酸三ナトリウムとして)、0.045重量%濃度でメチルパラベン、および0.005重量%濃度でプロピルパラベンを含有させた。第2の溶液には、7重量%濃度で同じクエン酸塩(クエン酸三ナトリウムとして)、0.045重量%濃度でメチルパラベン、および0.005重量%濃度でプロピルパラベン、そして0.015重量%濃度でメチレンブルーを含有させた。カテーテルロック溶液の目標pHは6.2であり、試験中の溶液の実際pHは6.2であった。製造したこの溶液に細菌胞子を注入することによって、溶液をE.ファエカリス細菌のコロニーと接触させ、細菌を定期的に(0分、1時間、24時間、48時間および72時間)評価して、1ミリリットル当たりのコロニー形成単位(CFU)数を測定した。データは以下の表VIに示す。
表VI
【0089】
【表6】

【0090】
実施例8
代表的なカテーテルロック溶液の製造
方法
カテーテルロック溶液を次の濃度でUSPグレード薬品の滅菌混合物として配合する:7重量%のクエン酸塩溶液、0.18重量%のメチルパラベン、および0.02重量%のプロピルパラベン。溶液は相対密度1.035〜1.045、pH約6.2となるようにする。クエン酸塩溶液は、428mlの0.24Mクエン酸三ナトリウム二水和物溶液(70.58g/L)および72mlの0.24M無水クエン酸溶液(46.10g/L)を混合することによって、望ましいpH(6.2)で製造する。最終溶液は、実際のバッチサイズでクエン酸塩溶液100ml当たり、0.18gのメチルパラベンおよび0.02gのプロピルパラベンを加えることによって得る。溶液は室温で貯蔵する。
【0091】
次に、バルク溶液を無菌充填領域に送り込み、第2、次いで第1の0.2μ滅菌フィルターに通し、その後、滅菌されたサージ型または加圧型容器に流し入れる。滅菌容器中の滅菌された溶液は注入器に流れ、そこに、耐光性タイプ1ガラスバイアル(5mL、キンブル社、タイプ1珪硼酸ガラスアンバーバイアル、13mmフィニッシュ、未処理)が運ばれ、所定の充填体積で充填される。充填されたバイアルは栓をする位置に運ばれ、そこで、バイアルに栓(ウエスト社、13mm、4432/50ラバーストッパー)がされる。次に、バイアルはキャッピングマシーンに運ばれ、フリップオフキャップの付いたアルミニウムクリンプシール(ウエスト社、13mmアルミニウムシール、フリップ−オフボタン)が各バイアルに施される。オーバーシール(クリンプされたふた)が無菌処理領域の外のキャッピング領域で施される。
【0092】
次に、充填され、栓がされ、そしてふたがされたバイアルは目に見える粒状物質および他の欠陥について検査される。
この態様の溶液を製造するための出発物質は商業的に容易に入手しうる。
実施例9
本発明のカテーテルロック溶液の使用
患者の血液透析処置の終わりで、カテーテルの各管腔を、カテーテル管腔の充填容積に等しい量のロック溶液を満たす。各管腔は先端に、クイックボウラス法を用いて、まず注入体積の最初の2/3を満たし、そして注入体積の最後の1/3をゆっくり(10秒以上)注入する。
【0093】
カテーテルロック溶液は、各カテーテル管腔に注射器を取り付け、そしてカテーテル管腔容積より1mL多く(合計約3mL)取り出し、注射器をはずし、そしてカテーテルを5mLの滅菌標準生理食塩水でフラッシュすることによって各透析処置の前に取り出す。
【0094】
本発明を図面および明細書で詳しく説明してきたが、説明のためであり、特徴を制限するものではない。好ましい態様を示したにすぎないこと、および本発明の精神にかかわるあらゆる変更が保護されることが望ましいことは無論のことである。
【図面の簡単な説明】
【0095】
【図1】本発明で用いるられるカテーテルおよびロック溶液をカテーテルに注入する注射器の1つの態様を示す透視図である。
【符号の説明】
【0096】
10 カテーテル
14 第1管腔
16 第2管腔
28、30 保護末端キャップ
34 注射器
38 カフ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
分散または溶解されたクエン酸塩およびパラベンを含む水性カテーテルロック溶液。
【請求項2】
溶液が、メチルパラベン、エチルパラベン、プロピルパラベン、ブチルパラベンおよびそれらの2種以上の混合物よりなる群から選択される成分を含む、請求項1に記載の溶液。
【請求項3】
溶液がメチルパラベンを含む、請求項1に記載の溶液。
【請求項4】
溶液中のメチルパラベンの濃度が約0.005〜約0.5%である、請求項3に記載の溶液。
【請求項5】
溶液がプロピルパラベンを含む、請求項1に記載の溶液。
【請求項6】
溶液中のプロピルパラベンの濃度が約0.005〜約0.5%である、請求項5に記載の溶液。
【請求項7】
溶液がメチルパラベンとプロピルパラベンとの混合物を含む、請求項1に記載の溶液。
【請求項8】
溶液中のメチルパラベンの濃度が約0.05〜約0.5%であり、溶液中のプロピルパラベンの濃度が約0.005〜約0.5%である、請求項7に記載の溶液。
【請求項9】
溶液中のクエン酸塩の濃度が、患者の血液中のカルシウム濃度と少なくとも同じである、請求項1に記載の溶液。
【請求項10】
溶液中のクエン酸塩の濃度が約1.5〜約47重量%である、請求項1に記載の溶液。
【請求項11】
溶液中のクエン酸塩の濃度が約1.5〜約23重量%である、請求項1に記載の溶液。
【請求項12】
クエン酸塩の濃度が約1.5〜約15%であり、パラベンの濃度が約0.005〜約0.6%である、請求項1に記載の溶液。
【請求項13】
クエン酸塩がクエン酸三ナトリウム二水和物の形で溶液にもたらされる、請求項1に記載の溶液。
【請求項14】
溶液のpHが約4〜約8である、請求項1に記載の溶液。
【請求項15】
溶液の相対密度が約1.000〜約1.300g/mlである、請求項1に記載の溶液。
【請求項16】
増粘剤をさらに含む、請求項1に記載の溶液。
【請求項17】
増粘剤が、デキストラン、ポリエチレングリコール、グリセリン、ポリゲリン、非代謝性の糖、例えばソルビトールおよびマンニトール、並びにこれらの混合物よりなる群から選択される成分を含む、請求項16に記載の溶液。
【請求項18】
溶液に溶解された光酸化体をさらに含む、請求項1に記載の溶液。
【請求項19】
光酸化体が、メチレンブルー、ローズベンガル、ヒペリシン、メチレンバイオレット、プロフラビン、リボフラビン、リバノール、アクリフラビン、トルイドブルー、トリパンブルー、ニュートラルレッド、およびこれらの混合物よりなる群から選択される殺菌成分を含む、請求項18に記載の溶液。
【請求項20】
光酸化体がメチレンブルーを含む、請求項18に記載の溶液。
【請求項21】
溶液中のメチレンブルーの濃度が約1500mg/100ml以下である、請求項20に記載の溶液。
【請求項22】
患者の処置方法であって、
貫通する管腔を定める内在カテーテルを有する患者を選択すること;および分散または溶解されたクエン酸塩およびパラベンを含む水性カテーテルロック溶液を管腔に注入すること、
を含む方法。
【請求項23】
カテーテルが、血管内カテーテルおよび体腔カテーテルよりなる群から選択される、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
カテーテルの管腔が内容積を有し、注入が、内容積の約80〜約120%である量のロック溶液を注入することを含む、請求項22に記載の方法。
【請求項25】
溶液が、溶液に溶解された光酸化体をさらに含む、請求項26に記載の方法。
【請求項26】
光酸化体がメチレンブルーを含む、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
ロック溶液をカテーテルの管腔に注入するための注入装置であって、
注射器;および
注射器に含まれる薬学的に許容されるロック溶液、ここで、ロック溶液は分散または溶解されたクエン酸塩およびパラベンを含む
を含む装置。
【請求項28】
ロック溶液を含む注射器が滅菌されている、請求項27に記載の装置。
【請求項29】
溶液が、溶液に溶解された光酸化体を含む、請求項27に記載の装置。
【請求項30】
光酸化体がメチレンブルーを含む、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
患者のカテーテルをロックするためのキットであって、
カテーテルロック溶液を含む容器、ここで、カテーテルロック溶液はそこに分散または溶解されたクエン酸塩およびパラベンを含む;および
溶液を内在カテーテルの管腔に注入するための、媒体に記録された使用説明書
を含むキット。
【請求項32】
カテーテルが、血管内カテーテルおよび体腔カテーテルよりなる群から選択される、請求項31に記載のキット。
【請求項33】
カテーテルの管腔が内容積を有し、使用説明書が、内容積の約80〜約120%である量のロック溶液を注入する指示を含む、請求項31に記載のキット。
【請求項34】
溶液が、溶液に溶解された光酸化体をさらに含む、請求項31に記載のキット。
【請求項35】
光酸化体がメチレンブルーを含む、請求項34に記載のキット。
【請求項36】
手術でカテーテルが埋め込まれた動物の処置方法であって、カテーテルに、殺菌成分を含む薬学的に許容されるロック溶液を注入することを含み、ここで、殺菌成分はクエン酸塩およびパラベンから本質的になる、上記の方法。
【請求項37】
殺菌成分が抗生物質を含まない、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
溶液が、溶液に溶解された光酸化体をさらに含む、請求項36に記載のキット。
【請求項39】
光酸化体がメチレンブルーを含む、請求項38に記載のキット。

【図1】
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【公開番号】特開2006−232829(P2006−232829A)
【公開日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2006−29232(P2006−29232)
【出願日】平成18年2月7日(2006.2.7)
【出願人】(501078018)アッシュ・アクセス・テクノロジー・インコーポレーテッド (4)
【Fターム(参考)】