説明

クラッド材製造装置及びクラッド材製造方法

【課題】クラッド材の製造工程を短縮して生産効率の向上を実現する。
【解決手段】クラッド材製造装置Aは、基材となる金属基板X2を連続鋳造法によって形成する連続鋳造装置1と、前記連続鋳造装置1にて形成された前記金属基板X2の片面或いは両面にロウ材として機能する粉末P1,P2を圧着させてクラッド材X4を形成する粉末圧延装置7とを備える。この連続鋳造装置1によって基材となる金属基板X2を当初から薄い板厚で形成することができるため、粉末圧延装置7において圧延を複数回繰り返すことなく所望の板厚のクラッド材X4を形成することができ、その結果、クラッド材X4の製造工程を短縮可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クラッド材製造装置及びクラッド材製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、アルミニウム合金板を基材とするブレージングシート(クラッド材)は、基材となるアルミニウム合金のスラブ材と皮材(ロウ材)となるアルミニウム合金を重ね合わせて圧延することにより製造していた。そのため、クラッド材を最終的な厚さに成形するには、圧延を繰り返して板厚を薄くしなくてはならず、多くの圧延工程が必要であった(下記特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−254003号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のように、従来では、クラッド材を最終的な厚さに成形するために圧延工程を複数回繰り返し実施する必要があることからクラッド材の製造工程が長くなってしまい、生産効率の向上を図ることが困難であった。
【0005】
本発明は上述した事情に鑑みてなされたものであり、クラッド材の製造工程を短縮して生産効率の向上を実現可能なクラッド材製造装置及びクラッド材製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明に係るクラッド材製造装置は、基材となる金属基板を連続鋳造法によって形成する連続鋳造装置と、前記連続鋳造装置にて形成された前記金属基板の片面或いは両面にロウ材として機能する粉末を圧着させてクラッド材を形成する粉末圧延装置と、を備えることを特徴とする。
このような特徴を有するクラッド材製造装置によれば、連続鋳造装置によって基材となる金属基板を当初から薄い板厚で形成することができるため、粉末圧延装置において圧延を複数回繰り返すことなく所望の板厚のクラッド材を形成することができ、その結果、クラッド材の製造工程を短縮可能となる。
【0007】
また、本発明に係るクラッド材製造方法は、連続鋳造法を用いて金属溶湯から基材となる金属基板を形成する連続鋳造工程と、粉末圧延法を用いて前記金属基板の片面或いは両面にロウ材として機能する粉末を圧着させてクラッド材を形成する粉末圧延工程と、を有することを特徴とする。
このような特徴を有するクラッド材製造方法によれば、連続鋳造工程によって基材となる金属基板を当初から薄い板厚で形成することができるため、粉末圧延工程において圧延を複数回繰り返すことなく所望の板厚のクラッド材を形成することができ、その結果、クラッド材の製造工程を短縮可能となる。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係るクラッド材製造装置及びクラッド材製造方法によれば、クラッド材の製造工程を短縮して生産効率の向上を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】第1実施形態に係るクラッド材製造装置の構成概略図である。
【図2】第2実施形態に係るクラッド材製造装置の構成概略図である。
【図3】第3実施形態に係るクラッド材製造装置の構成概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照しながら説明する。
〔第1実施形態〕
まず、本発明の第1実施形態について説明する。図1は、第1実施形態に係るクラッド材製造装置の構成概略図である。この図1に示すように、第1実施形態に係るクラッド材製造装置は、基材となるアルミニウム合金板の表面にロウ材をクラッドすることでアルミブレージングシート(クラッド材)を製造するものであり、製造設備A及びプロセス制御装置Bを備えている。
【0011】
製造設備A内の符号1は、双ロール式のアルミ連続鋳造装置(いわゆる、Hunter Super−Caster)である。このアルミ連続鋳造装置1は、水平且つ互いの外周面が一定のギャップを隔てて平行対峙するように配置された一対の鋳造ロール1a、1bを備えている。これら鋳造ロール1a、1b間のギャップに対して、下方から垂直にアルミニウム合金の金属溶湯X1が注湯されることにより、基材となる薄厚(例えば5mm〜10mm)のアルミニウム合金板(以下、アルミ基板と称す)X2が連続的に形成される。
【0012】
製造設備A内の符号2は第1搬送ロール、符号3は保温トンネルである。第1搬送ロール2は、アルミ連続鋳造装置1から垂直姿勢で連続的に送出されるアルミ基板X2を水平姿勢で下流側設備に搬送するためのロールである。保温トンネル3は、アルミ連続鋳造装置1から後述のエアブロワ6a、6bに至るアルミ基板X2の搬送経路を覆うように設けられた断熱性部材である。
【0013】
製造設備A内の符号4は第1温度計、符号5はたわみ計である。第1温度計4は、保温トンネル3の後段(後述のエアブロワ6a、6bの前段)に設置され、アルミ基板X2の温度計測結果を示す信号をプロセス制御装置Bへ出力する。たわみ計5は、保温トンネル3の後段(後述のピンチロール7a、7bの前段)に設置され、アルミ基板X2のたわみ量計測結果を示す信号をプロセス制御装置Bへ出力する。
【0014】
製造設備A内の符号6a、6bは、第1搬送ロール2から水平姿勢で搬送されるアルミ基板X2を上下から挟み込むように対峙して配置された一対のエアブロワ(空気吐出装置)であり、プロセス制御装置Bによる制御に応じてアルミ基板X2の両面に対して空気を吐出する。なお、これらエアブロワ6a、6bによる空気の吐出量はプロセス制御装置Bによって制御される。
【0015】
製造設備A内の符号7は粉末圧延装置である。この粉末圧延装置7は、ピンチロール7a、7b、スイングロール7c、7d、第2搬送ロール7e、板厚計7f、第2温度計7g、圧延ロール7h、7i、粉末ホッパ7j、7k、予備圧下ロール7m、7n、ブラシロール7p、7q、第3搬送ロール7r及び第3温度計7sを備えている。
【0016】
ピンチロール7a、7bは、第1搬送ロール2から水平姿勢で搬送されるアルミ基板X2を上下から挟んで対峙するように設置された一対の基板送りロールであり、アルミ基板X2を上下から一定圧力で押え付けながら後段のスイングロール7c、7dへ送出する。スイングロール7c、7dは、それぞれ水平面内で揺動自在な基板位置決めロールであり、スイングロール7cはアルミ基板X2の下面に当接した状態で揺動し、スイングロール7dはアルミ基板X2の上面に当接した状態で揺動する。
【0017】
第2搬送ロール7eは、スイングロール7c、7dによって位置決めされたアルミ基板X2を垂直姿勢で圧延ロール7h、7i間に搬送するためのロールである。板厚計7fは、ピンチロール7a、7bの後段に設置され、アルミ基板X2の板厚計測結果を示す信号をプロセス制御装置Bに出力する。第2温度計7gは、圧延ロール7h、7iの前段に設置され、アルミ基板X2の温度計測結果を示す信号をプロセス制御装置Bへ出力する。
【0018】
圧延ロール7h、7iは、水平且つ互いの外周面が一定のギャップを隔てて平行対峙するように配置されていると共に、互いに同一速度で同期回転するように制御される。これら圧延ロール7h、7i間のギャップには、上方から下方に向かってアルミ基板X2が挿通されると共に、後述のように圧延ロール7h、7iの回転に伴ってロウ材組成を有する粉末P1、P2が搬送される。
【0019】
これら圧延ロール7h、7iがアルミ基板X2とともに粉末P1、P2を圧延することで、アルミ基板X2の両面に粉末P1、P2が圧着されたクラッドロウ材シートX3が形成される。なお、圧延ロール7h、7i間のギャップは、不図示の直動ガイド機構によって調整自在とされており、クラッドロウ材シートX3の厚さを任意に変更できる。
【0020】
ホッパ7kは、一方の圧延ロール7iの上方に配置された粉末貯蔵用の容器である。このホッパ7kは、断面形状が下方に向かうに従って漸次縮径する中空構造体であり、上部に設けられた開口から粉末P1を受け入れ、底部に設けられた開口から圧延ロール7i上へ粉末P1を吐き出す構成となっている。
【0021】
ホッパ7jは、他方の圧延ロール7hの上方に配置された粉末貯蔵用の容器である。このホッパ7jは、断面形状が下方に向かうに従って漸次縮径する中空構造体であり、上部に設けられた開口から粉末P2を受け入れ、底部に設けられた開口から圧延ロール7h上へ粉末P2を吐き出す構成となっている。
なお、粉末P1、P2は、ロウ材として機能する粉末であって、例えば、アルミを主成分とするアルミとシリコンの合金粉末である。
【0022】
予備圧下ロール7nは、圧延ロール7iの回転速度に対して一定比率の速度で回転駆動される、圧延ロール7iよりも小径のロールであり、圧延ロール7iに対して互いの外周面が一定のギャップを隔てて平行対峙するように配置されている。この予備圧下ロール7nは、圧延ロール7iとの間で粉末P1を予備圧下して一定厚さの粉末層を形成するものである。つまり、予備圧下ロール7nによって粉末P1の圧延ロール7iの周面上の膜厚制御が為される。
【0023】
予備圧下ロール7mは、圧延ロール7hの回転速度に対して一定比率の速度で回転駆動される、圧延ロール7hよりも小径のロールであり、圧延ロール7hに対して互いの外周面が一定のギャップを隔てて平行対峙するように配置されている。この予備圧下ロール7mは、圧延ロール7hとの間で粉末P2を予備圧下して一定厚さの粉末層を形成するものである。つまり、予備圧下ロール7mによって粉末P2の圧延ロール7iの周面上の膜厚制御が為される。
【0024】
ブラシロール7pは、圧延ロール7hの表面を清掃するためのロールである。ブラシロール7qは、圧延ロール7iの表面を清掃するためのロールである。第3搬送ロール7rは、圧延ロール7h、7iから垂直姿勢で連続的に送出されるクラッドロウ材シートX3を水平姿勢で下流側設備に搬送するためのロールである。第3温度計7sは、第3搬送ロール7rの後段に設置され、クラッドロウ材シートX3の温度計測結果を示す信号をプロセス制御装置Bへ出力する。
【0025】
製造設備A内の符号8a、8bはクラッドロール、符号9、11は、例えばアルミ箔コイル、符号10はアルミ箔搬送ロール、符号12、13はブラシロール、符号14は第4温度計、符号15は巻取り機に巻き取られたクラッド材コイルである。これらは、粉末圧延装置7にて形成されたクラッドロウ材シートX3の両面に金属板(例えばアルミ箔)を圧着させて最終的なクラッド材(アルミブレージングシートX4)を形成する金属板圧着装置に相当する。
【0026】
クラッドロール8a、8bは、垂直且つ互いの外周面が一定のギャップを隔てて平行対峙するように配置されていると共に、互いに同一速度で同期回転するように制御される。これらクラッドロール8a、8b間のギャップには、粉末圧延装置7にて形成されたクラッドロウ材シートX3が水平姿勢で連続的に挿通されると共に、アルミ箔コイル9からアルミ箔搬送ロール10を経由して搬送されるアルミ箔Y1と、アルミ箔コイル11から搬送されるアルミ箔Y2とが連続的に挿通される。
【0027】
これらクラッドロール8a、8b間でクラッドロウ材シートX3とともにアルミ箔Y1、Y2が圧延されることで、クラッドロウ材シートX3の両面にアルミ箔Y1、Y2を圧着してなるアルミブレージングシートX4が形成される。なお、クラッドロール8a、8b間のギャップは、不図示の直動ガイド機構によって調整自在とされており、アルミブレージングシートX4の厚さを任意に変更できる。
【0028】
ブラシロール12は、クラッドロール8aの表面を清掃するためのロールである。ブラシロール13は、クラッドロール8bの表面を清掃するためのロールである。第4温度計14は、クラッドロール8a、8bの後段に設置され、アルミブレージングシートX4の温度計測結果を示す信号をプロセス制御装置Bへ出力する。巻取りロール15は、クラッドロール8a、8bから送出されるアルミブレージングシートX4を一定の張力でコイル状に巻き取るためのロールである。
【0029】
プロセス制御装置Bは、第1温度計4、たわみ計5、板厚計7f、第2温度計7g、第3温度計7s及び第4温度計14から入力される計測信号に基づいてプロセス制御を行うコントローラである。このプロセス制御装置Bは、エアブロワ6a、6bによる空気の吐出量を制御する空気吐出量制御装置としての機能と、ピンチロール7a、7b、圧延ロール7h、7i及び予備圧下ロール7m、7nを制御するロール制御装置としての機能を備えている。
【0030】
具体的には、プロセス制御装置Bは、エアブロワ6a、6bの前段に設置された第1温度計4、或いは粉末圧延装置7内の圧延ロール7h、7iの前段に設置された第2温度計7gによるアルミ基板X2の温度計測結果に基づいて、アルミ基板X2の温度が粉末P1、P2の圧着に適切な温度となるように、エアブロワ6a、6bによる空気の吐出量を制御する。また、プロセス制御装置Bは、粉末圧延装置7による圧延前後のアルミ基板X2の伸び量を検出し、アルミ基板X2の伸び量が一定範囲内に収まるように、エアブロワ6a、6bによる空気の吐出量と圧延ロール7h、7iにかかる圧延荷重を制御する。
【0031】
また、プロセス制御装置Bは、ピンチロール7a、7bの後段に設置された板厚計7fによるアルミ基板X2の板厚計測結果に基づいて、予備圧下ロール7m、7nの回転速度を制御することにより、圧延ロール7h、7iによって形成されるクラッドロウ材シートX3が目標厚さとなるようにアルミ基板X2に付着する粉末量を制御する。
【0032】
また、プロセス制御装置Bは、ピンチロール7a、7bの前段に設置されたたわみ計5によるアルミ基板X2のたわみ量計測結果に基づいて、アルミ基板X2のたわみ量が一定範囲内に収まるように圧延ロール7h、7iの回転速度を制御する。さらに、プロセス制御装置Bは、ピンチロール7a、7bの後段側のアルミ基板X2の張力が一定となるようにピンチロール7a、7bの回転速度を制御する。
【0033】
次に、上記のように構成されたクラッド材製造装置を用いて実現されるアルミブレージングシートX4(クラッド材)の製造方法について説明する。
まず、アルミ連続鋳造装置1において、鋳造ロール1a、1b間のギャップに対して下方から垂直にアルミニウム合金の金属溶湯X1が注湯されると、鋳造ロール1a、1bの回転に伴って基材となる薄厚(例えば5mm〜10mm)のアルミ基板X2が連続的に形成される(連続鋳造工程)。
【0034】
アルミ連続鋳造装置1によって形成されたアルミ基板X2は、保温トンネル3内を通って比較的高温状態を維持したまま、水平姿勢で連続的に粉末圧延装置7に搬送される。粉末圧延装置7に搬送されたアルミ基板X2は、ピンチロール7a、7b、スイングロール7c、7d及び第2搬送ロール7eを経て、圧延ロール7h、7i間にギャップに垂直姿勢で挿通される。
【0035】
一方、粉末ホッパ7kによって圧延ロール7iの外周面に連続的に供給された粉末P1は、圧延ロール7iの回転に伴って予備圧下ロール7nの直前まで搬送されて滞留する。ここで、予備圧下ロール7nの直前で滞留している粉末P1は、予備圧下ロール7nの回転によって予備圧下ロール7nと圧延ロール7i間のギャップに連続的に送り込まれ、予備圧下ロール7nと圧延ロール7iとの間で加圧(予備圧下)される。
【0036】
このように粉末P1が予備圧下ロール7nによって加圧されると、粉末粒子は相互に圧着され、一定の厚さを有する粉体層が形成される。この粉末P1の粉体層は、圧延ロール7iの回転に伴って圧延ロール7h、7i間のギャップに向かって搬送される。
【0037】
同様に、粉末ホッパ7jによって圧延ロール7hの外周面に連続的に供給された粉末P2は、予備圧下ロール7mと圧延ロール7h間のギャップに連続的に送り込まれ、予備圧下ロール7mと圧延ロール7hとの間で加圧され、一定の厚さを有する粉体層が形成される。この粉末P2の粉体層は、圧延ロール7hの回転に伴って圧延ロール7h、7i間のギャップに向かって搬送される。
【0038】
上記のように、粉末P1、P2の粉体層が圧延ロール7h、7i間のギャップに搬送されると、圧延ロール7h、7i間のギャップに対して上方から下方に向かって連続的に挿通されているアルミ基板X2とともに圧延ロール7h、7i間で連続的に圧延される。これにより、アルミ基板X2の表面にロウ材として機能する粉体層(粉末P1、P2)を圧着してなるクラッドロウ材シートX3が連続的に形成される(粉末圧延工程)。
【0039】
ここで、圧延ロール7h、7i間に搬送されるアルミ基板X2は、室温よりも高温であるため材料硬度が低下しており、室温の粉末P1、P2が高温のアルミ基板X2に食い込み、粉末P1、P2とアルミ基板X2との密着性が向上する。なお、アルミ基板X2の温度があまりにも高い場合には、プロセス制御装置Bによって、アルミ基板X2の温度が粉末P1、P2の圧着に適切な温度となるように、エアブロワ6a、6bによる空気の吐出量が制御されるため、粉末P1、P2とアルミ基板X2との密着性を良好に維持することができる。
【0040】
また、プロセス制御装置Bによって、圧延前後のアルミ基板X2の伸び量が一定範囲内に収まるようにエアブロワ6a、6bによる空気の吐出量が制御され、また圧延ロール7h、7iにかかる圧延荷重が制御され、クラッドロウ材シートX3が目標厚さとなるようにアルミ基板X2に付着する粉末量が制御され(予備圧下ロール7m、7nの回転速度が制御され)、アルミ基板X2のたわみ量が一定範囲内に収まるように圧延ロール7h、7iの回転速度が制御され、さらに、アルミ基板X2の張力が一定となるようにピンチロール7a、7bの回転速度が制御されるため、良好な品質のクラッドロウ材シートX3を得ることができる。
【0041】
上記のように粉末圧延装置7によって形成されたクラッドロウ材シートX3は、クラッドロール8a、8b間のギャップに水平姿勢で連続的に挿通される。これらクラッドロール8a、8b間でクラッドロウ材シートX3とともにアルミ箔Y1、Y2が圧延されることで、クラッドロウ材シートX3の両面にアルミ箔Y1、Y2を圧着してなるアルミブレージングシートX4が形成される。
このように、粉末P1、P2が露出しているクラッドロウ材シートX3の表面をアルミ箔Y1、Y2によって被覆することにより、ハンドリング性の良好なアルミブレージングシートX4を得ることができる。
【0042】
以上のように、本実施形態によれば、アルミ連続鋳造装置1によって基材となるアルミ基板X2を当初から薄い板厚で形成することができるため、粉末圧延装置7において圧延操作を複数回繰り返すことなく所望の板厚のクラッドロウ材シートX3を形成することができ、その結果、クラッド材の製造工程を短縮することができる。つまり、本実施形態によれば、クラッド材の製造工程を短縮して生産効率の向上を実現することができる。
【0043】
〔第2実施形態〕
次に、本発明の第2実施形態について説明する。図2は、第2実施形態に係るクラッド材製造装置の構成概略図である。この図2に示すように、第2実施形態に係るクラッド材製造装置は、第1実施形態で説明した横置き型のアルミ連続鋳造装置1に替えて、縦置き型のアルミ連続鋳造装置1’が設けられた製造設備A1を備えている点で第1実施形態と異なっている。
【0044】
つまり、第2実施形態のアルミ連続鋳造装置1’は、垂直且つ互いの外周面が一定のギャップを隔てて平行対峙するように配置された一対の鋳造ロール1a’、1b’を備えている。また、アルミ連続鋳造装置1’の後段には、アルミ連続鋳造装置1’から水平姿勢で送出されるアルミ基板X2を垂直姿勢で第1搬送ロール2へ搬送する搬送ロール2’が設けられている。
【0045】
〔第3実施形態〕
次に、本発明の第3実施形態について説明する。図3は、第3実施形態に係るクラッド材製造装置の構成概略図である。この図3に示すように、第3実施形態に係るクラッド材製造装置は、第1実施形態で説明したエアブロワ6a、6bが削除され、保温トンネル3に替えて、アルミ連続鋳造装置1と粉末圧延装置7との間のアルミ基板X2の搬送径路を覆うように設けられた加熱ヒータ6’が設けられた製造設備A2を備えている点で第1実施形態と異なっている。
【0046】
このような第3実施形態によれば、粉末圧延装置7に送り込まれるアルミ基板X2の温度が下がり過ぎた場合でも、加熱ヒータ6’によってアルミ基板X2の温度を粉末P1、P2の圧着に適切な温度とすることができる。
【0047】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において実施形態を変更しても良いことは勿論である。
例えば、上記実施形態では、アルミ基板X2の両面に粉末P1、P2を圧着させる場合を例示したが、アルミ基板X2の片面のみに粉末を圧着させても良い。
また、上記実施形態では、粉末圧延によって形成したクラッドロウ材シートX3の両面にアルミ箔Y1、Y2を圧着してアルミブレージングシートX4を形成したが、これらアルミ箔Y1、Y2は必ずしも圧着させる必要はなく、クラッドロウ材シートX3を熱処理することで良好なハンドリング性を付与しても良い。
【0048】
アルミ連続鋳造装置としては、アルミ基板X2を下方から上方に向けて垂直姿勢で送出する第1及び第3実施形態に係るアルミ連続鋳造装置1や、アルミ基板X2を水平姿勢で送出する第2実施形態に係るアルミ連続鋳造装置1’の他に、アルミ基板X2を上方から下方に向けて垂直姿勢で送出するものでも良い。さらに、これら実施形態では、双ロール式の連続鋳造装置を示したが、ベルト式やブロック式の連続鋳造装置でも良い。
【符号の説明】
【0049】
A、A1、A2…製造設備、B…プロセス制御装置、1…アルミ連続鋳造装置、7…粉末圧延装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材となる金属基板を連続鋳造法によって形成する連続鋳造装置と、
前記連続鋳造装置にて形成された前記金属基板の片面或いは両面にロウ材として機能する粉末を圧着させてクラッド材を形成する粉末圧延装置と、
を備えることを特徴とするクラッド材製造装置。
【請求項2】
前記連続鋳造装置と前記粉末圧延装置との間に設置され、前記粉末圧延装置に送り込まれる前記金属基板に対して空気を吐出する空気吐出装置と、
前記空気吐出装置による前記空気の吐出量を制御する空気吐出量制御装置と、
を備えることを特徴とする請求項1に記載のクラッド材製造装置。
【請求項3】
前記空気吐出量制御装置は、前記粉末圧延装置による圧延前後の前記金属基板の伸び量を検出し、前記金属基板の伸び量が一定範囲内に収まるように、前記空気吐出装置による前記空気の吐出量または前記粉末圧延装置内の圧延ロール間にかかる圧延荷重を制御することを特徴とする請求項2又は3に記載のクラッド材製造装置。
【請求項4】
前記空気吐出量制御装置は、前記粉末圧延装置による圧延前後の前記金属基板の伸び量を検出し、前記金属基板の伸び量が一定範囲内に収まるように、前記空気吐出装置による前記空気の吐出量を制御することを特徴とする請求項2に記載のクラッド材製造装置。
【請求項5】
前記連続鋳造装置と前記粉末圧延装置との間の前記金属基板の搬送径路を覆うように設けられた加熱ヒータを備えることを特徴とする請求項1に記載のクラッド材製造装置。
【請求項6】
前記粉末圧延装置は、
前記連続鋳造装置から送り込まれる前記金属基板を挟んで対峙するように設置された一対のピンチロールと、
前記ピンチロールから送り込まれる前記金属基板を挟んで対峙するように設置された一対の圧延ロールと、
少なくとも一方の圧延ロールの外周面に前記粉末を供給する粉末供給手段と、
前記少なくとも一方の圧延ロールとの間で前記粉末を予備圧下する予備圧下ロールと、から構成されており、
前記ピンチロール、前記圧延ロール及び前記予備圧下ロールの回転速度を制御するロール制御装置を備えることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載のクラッド材製造装置。
【請求項7】
前記ロール制御装置は、前記ピンチロールの後段に設置された板厚計による前記金属基板の板厚計測結果に基づいて前記予備圧下ロールの回転速度を制御することにより、前記圧延ロールによって形成されるクラッド材が目標厚さとなるように前記金属基板に付着する粉末量を制御することを特徴とする請求項6に記載のクラッド材製造装置。
【請求項8】
前記ロール制御装置は、前記ピンチロールの前段に設置されたたわみ計による前記金属基板のたわみ量計測結果に基づいて、前記金属基板のたわみ量が一定範囲内に収まるように前記圧延ロールの回転速度を制御することを特徴とする請求項6又は7に記載のクラッド材製造装置。
【請求項9】
前記ロール制御装置は、前記ピンチロールの後段側の前記金属基板の張力が一定となるように前記ピンチロールの回転速度を制御することを特徴とする請求項6〜8のいずれか一項に記載のクラッド材製造装置。
【請求項10】
前記粉末圧延装置にて形成される前記クラッド材の片面或いは両面に金属板を圧着させて最終的なクラッド材を形成する金属板圧着装置を備えることを特徴とする請求項1〜9のいずれか一項に記載のクラッド材製造装置。
【請求項11】
連続鋳造法を用いて金属溶湯から基材となる金属基板を形成する連続鋳造工程と、
粉末圧延法を用いて前記金属基板の片面或いは両面にロウ材として機能する粉末を圧着させてクラッド材を形成する粉末圧延工程と、
を有することを特徴とするクラッド材製造方法。
【請求項12】
前記クラッド材の片面或いは両面に金属板を圧着させて最終的なクラッド材を形成する金属板圧着工程を有することを特徴とする、請求項11に記載のクラッド材製造方法。
【請求項13】
前記クラッド材の表面に露出している前記粉末を加熱する熱処理工程を有することを特徴とする、請求項11に記載のクラッド材製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−207292(P2012−207292A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−75761(P2011−75761)
【出願日】平成23年3月30日(2011.3.30)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【出願人】(506395264)IHIメタルテック株式会社 (25)
【Fターム(参考)】