説明

クリップ付き車両部品構成体

【課題】長い連結穴を有する部品に安定良く抜止され得るクリップを備える車両部品構成体を提供する。
【解決手段】第一の部品13と第二の部品を連動させるワイヤー15と、ワイヤー15と第一の部品13を連結するクリップ1を有する車両部品構成体であって、ワイヤー15は、ワイヤー端部15bから屈曲して第二の部品側に延出するワイヤー本体15aを有し、第一の部品13の移動によってワイヤー本体15aの延出方向に移動する。連結穴13aは、ワイヤー本体15aの延出方向に延出する長穴である。クリップ1は、ワイヤー本体15aを保持するクリップ本体2と、ワイヤー端部15bが挿入される筒部3を有する。筒部3は、ワイヤー端部15bとともに連結穴13aに挿入される筒軸部3aと、筒軸部3aから連結穴13aの短手両方向に突出して第一の部品13から筒部3が抜けることを防止する一対の抜止爪3bを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の内装部品等に使用されるクリップを備える車両部品構成体に関する。
【背景技術】
【0002】
車両は、内装部品として、例えば天井パネルとアシストグリップを有しており、アシストグリップは、樹脂製のクリップによって天井パネルに取付けられる(特許文献1参照)。このクリップは、天井パネルに形成された連結穴に差し込まれて天井パネルに装着される装着部と、アシストグリップを保持する保持部を一体に有している。
【0003】
従来、図13に示すように連結穴23aを有する部品23にワイヤー24を連結するクリップ22も知られている。ワイヤー24は、ワイヤー本体24aとワイヤー本体24aから屈曲して延出するワイヤー端部24bを有している。クリップ22は、ワイヤー本体24aを支持するクリップ本体22aと、ワイヤー端部24bが挿入される筒部22bを有している。筒部22bは、円筒状の円筒軸部22dと、円筒軸部22dから径方向に突出する一対の抜止爪22eを有している。円筒軸部22dには、スリット22fが設けられており、筒部22bは、スリット22fを利用して一対の抜止爪22eの間が狭くなる方向に弾性変形されて連結穴23aに差し込まれる。そして筒部22bは、弾性戻りすることで一対の抜止爪22eが部品23に抜止される。
【特許文献1】特開2007−278375号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし連結穴が長穴に形成される場合がある。例えば、ワイヤーによって力を伝達する方向に連結穴が長い場合がある。ところが図13に示す従来のクリップ22は、クリップ本体22aと筒部22bの間の首部を避けてスリット22fを設け、首部にスリットを設けることでクリップの強度が低下することを避ける構成になっている。そしてスリット22fの位置が決定されることで、抜止爪22eの位置が図13に示す位置に決定される。しかし図13に示す従来のクリップ22を連結穴23bに挿入すると、抜止爪22eが連結穴23bの長手方向に配設されるため、抜止爪22eが部品23に対して係止しないか、係止が弱くなる。そこで本発明は、ワイヤー本体と同方向に長い連結穴を有する部品に安定良く抜止され得るクリップを備える車両部品構成体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するために本発明は、各請求項に記載の通りの構成を備えるクリップ付き車両部品構成体であることを特徴とする。すなわち請求項1に記載の発明によると、本体部品に移動可能に設けられる第一と第二の部品と、第一と第二の部品を連動させるワイヤーと、ワイヤーと第一の部品を連結するクリップを有するクリップ付き車両部品構成体であって、ワイヤーは、第一の部品に形成された連結穴に挿入されるワイヤー端部と、そのワイヤー端部から屈曲して第二の部品側に延出するワイヤー本体を有し、かつワイヤーは、第一の部品の移動によってワイヤー本体の延出方向に移動する。連結穴は、ワイヤー本体の延出方向に延出する長穴である。クリップは、ワイヤー本体を保持するクリップ本体と、ワイヤー端部が挿入される筒部を有している。筒部は、ワイヤー端部とともに連結穴に挿入される筒軸部と、筒軸部から連結穴の短手両方向に突出して第一の部品から筒部が抜けることを防止する一対の抜止爪を有している。
【0006】
したがってワイヤーは、第一の部品から第二の部品に力を伝達する際にワイヤー本体の延出方向に移動する。そして同方向に連結穴が延出している。そのため製造時における部品のバラ付き等が連結穴によって吸収され得る。クリップは、筒部を有し、筒部は、連結穴の短手方向に突出する抜止爪を有している。そのためクリップは、抜止爪によって第一の部品から抜け止めされ得る。
【0007】
請求項2に記載の発明によると、筒部は、連結穴の短手長さよりも径が小さい短手径と、抜止爪を有しかつ連結穴の短手長さよりも径が大きい長手径を有している。そして長手径が連結穴の延出方向に配設されて筒部が連結穴に挿入され、筒部が連結穴に対して回転されて抜止爪が第一の部品に抜け止めされる構成になっている。したがって筒部は、弾性変形されることなく、連結穴に挿入され得る。そのため筒部は、弾性変形させるための構成が不要であるため、強度の強い構成にし得る。あるいは軸部の弾性変形量に関わらず、抜止爪の突出量を大きくすることができるため、これにより筒部を第一の部品に対して確実に抜け止めさせることができる。
【0008】
請求項3に記載の発明によると、筒部は、径方向に弾性変形させるためのスリットを有さず、弾性変形されることなく第一の部品に組付けられる構成になっている。したがって筒部は、スリットを有していないために強度が強くなる。また筒部がスリットを有しないために、スリットの位置によって抜止爪の位置が決定されない。そのため抜止爪を所望の位置に容易に設けることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の実施の形態を図1〜12にしたがって説明する。図1に示すようにシート10は、車両に搭載される車両用シート(車両部品)である。シート10は、シートクッション11とシートバック12を有している。シートクッション11とシートバック12は、フレーム11a,12aと、フレーム11a,12aに装着される図示省略のパッドを有している。フレーム11a,12aの間には、これらを角度調整可能に連結するリクライニング装置19が設けられている。
【0010】
シートクッション11のフレーム11aは、図1に示すように左右一対のサイドフレーム11bと、サイドフレーム11bの後側上部間を連結する補強ロッド11cを有している。サイドフレーム11bは、板状であって、シートクッション11の側壁部を構成し、下端部がスライド装置17に取付けられる。サイドフレーム11bの一つは、車体中央側に配され、他の一つは、車体外側に配される。車体中央側のサイドフレーム11bには、後側下部にアンカ20が取付けられ、アンカ20にシートベルト21が装着される。
【0011】
スライド装置17は図1,4に示すようにフロアに取付けられるロアレール17aと、ロアレール17aにスライド可能に組付けられるアッパレール17bと、これらをロックするロック装置17cを有している。ロック装置17cは、ロック部材14と、ロック部材14をロック方向に付勢する図示省略のばねを有している。
【0012】
ロック部材14は、図4に示すように傾動ピン14cによってアッパレール17bに傾動可能に取付けられる。傾動ピン14cは、前後方向に延出し、ロック部材14は、左右方向に傾動する。ロック部材14の下端部には、複数のロック爪14aが形成されている。ロアレール17aとアッパレール17bには、孔17a1,17b1がスライド方向に複数並設されている。ロック部材14は、ばねの付勢力によって傾動して、ロック爪14aが孔17b1と所望の孔17a1に突入する。これによりアッパレール17bがロアレール17aに対してロックされる。ロック部材14は、上部にワイヤー15の一端部が係止される係止部14bが設けられている。
【0013】
図1,2に示すように左右のサイドフレーム11bの間には、左右のロック装置17cを同期して解除する解除機構が設けられている。解除機構は、ロッド18と一対のリンク13と一対のワイヤー15を有している。ロッド18は、左右のサイドフレーム11bの前上部間に軸回転可能に取付けられる。サイドフレーム11bを貫通したロッド18の一端部には、操作レバー16が回動不能に取付けられる。リンク13は、ロッド18の両端部に回動不能に取付けられ、サイドフレーム11bよりもシート内側に配設される。ワイヤー15は、リンク13の後端部とロック部材14の間に設けられる。
【0014】
したがって操作レバー16の前部を上方に引くことで、ロッド18が軸回転し、左右のリンク13が傾動する。そしてリンク13がワイヤー15を押し、ワイヤー15がロック部材14を傾動させる。かくして左右のロック装置17cが同期してロック解除される。そして力を伝達する車両部品構成体は、サイドフレーム(本体部品)11bと、サイドフレーム11bに傾動可能に設けられたリンク(第一の部品)13と、ロック部材(第二の部品)14と、ワイヤー15を主体に構成される。
【0015】
リンク13は、図2に示すように一端部にストッパ爪13bを有している。ストッパ爪13bは、サイドフレーム11bに形成されたガイド溝11dに挿入される。したがってリンク13は、ガイド溝11dとストッパ爪13bによって傾動量が規制される。リンク13の他端部には、リンク13を厚み方向に貫通する連結穴13aが形成されている。
【0016】
連結穴13aは、図2,3に示すように長穴であって、ロッド18を中心に円弧状に延出し、かつ上下方向に延出している。連結穴13aには、クリップ1を介してワイヤー15が連結される。ワイヤー15は、金属棒から構成されており、ワイヤー本体15aとワイヤー端部15b,15cを有している。ワイヤー本体15aは、リンク13とロック部材14の間において上下に延設される。ワイヤー端部15b,15cは、ワイヤー本体15aの上下端部から屈曲して延出している。上側のワイヤー端部15bは、ワイヤー本体15aに対して略90°に屈折しており、クリップ1とともにリンク13の連結穴13aに係止される。下側のワイヤー端部15cは、ロック部材14に係止される。
【0017】
連結穴13aは、上部に逃がし部13a1を有している。逃がし部13a1は、ロック装置17cがロックした状態においてワイヤー端部15bの上方を開口する。そのため車両が衝突してサイドフレーム11bが乗員の重量等によって下方に潰れた場合、ロッド18とリンク13が下方に移動するが、ワイヤー端部15bが逃がし部13a1に移動するためワイヤー15がリンク13に連動しない。また連結穴13aは、リンク13の傾動方向に長い。そのため製造や組付けによるバラ付きが連結穴13aによって吸収され得る。
【0018】
車両中央側に配されたリンク13は、図3に示すように車両外側に配されたリンク13に比べて連結穴13aが下方に長くなっており、下部に遊び部13a2を有している。遊び部13a2は、ロック装置17cがロックした状態にてワイヤー端部15bの下方を開口して、ワイヤー端部15bが連結穴13aに対して下方に移動することを許容する。したがって車両が衝突し、シートベルト21が強く引っ張られてシート10が捩れた場合、ワイヤー端部15bが遊び部13a2側に移動し得る。その結果、ロック装置17cが不意に解除されることが防止され得る。
【0019】
クリップ1は、樹脂製であって、図5に示すようにクリップ本体2と、筒状の筒部3と、蓋4を一体に有している。筒部3は、クリップ本体2の一側面の一端部に立設されている。筒部3とクリップ本体2には、これらを貫通する貫通孔1aが形成されている。貫通孔1aには、ワイヤー15のワイヤー端部15bが挿入される。筒部3は、貫通孔1aを有する円筒状の筒軸部3aと、筒軸部3aから径方向に突出する一対の抜止爪3bを有している。
【0020】
図8〜10に示すように筒部3は、断面非円形であって短手径と長手径を有している。短手径は、リンク13の連結穴13aの短手長さよりも小さい。長手径は、抜止爪3bを有しており、連結穴13aの短手長さよりも大きい。したがって筒部3は、長手径が連結穴13aの長手方向(延出方向)に配列された状態で、弾性変形されることなく、連結穴13aに挿入される。そしてクリップ1をワイヤー15とともにリンク13に対して回転させ、一対の抜止爪3bを連結穴の短手長さ方向に配列させる。これにより抜止爪3bとクリップ本体2の間に形成された筒部3の首部3cにリンク13が入り込み、抜止爪3bがリンク13に引っ掛かり、筒部3がリンク13から抜止される。
【0021】
クリップ本体2は、図5〜7に示すように一端部に貫通孔1aを有する板状の板部2aと、板部2aの他端部に立設された立設部2b〜2dを有している。板部2aは、強度アップのために貫通孔1aから立設部2b〜2d側に向けて除々に幅が広くなる形状であり、外周縁にリブ2hを有している。立設部2b〜2dは、並設されており、立設部2c,2dと板部2aの間には、ワイヤー本体15aが設置される溝2eが形成される。
【0022】
蓋4は、図5〜7に示すように立設部2dの先端部に折曲可能に連結される折曲部4bと、折曲部4bから延出する蓋本体4aを有している。折曲部4bの厚さは、折曲容易のために立設部2dと蓋本体4aの厚みよりも薄い。蓋本体4aは、溝2eの上方を開口する開き位置(図6の位置)と、折曲部4bを曲げることで溝2eを覆う閉じ位置(図7の位置)との間で傾動し、閉じ位置において溝2eに設置されたワイヤー本体15aを覆う。蓋4は、立設部2b,2cに跨って延出する先端部4cを有している。先端部4cとクリップ本体2の間には、蓋4を閉じ位置において保持する保持機構5が設けられている。
【0023】
保持機構5は、図5〜7に示すように蓋4側に形成された爪片5cと、クリップ本体2側に形成された一対の係止片5a,5bを有している。爪片5cは、蓋4の先端部4cから突出する爪軸部5dと、爪軸部5dの先端部に形成された一対の爪5e,5fを有している。爪片5cは、蓋4を閉じ位置にすることで、溝2eの幅方向隣接に位置する立設部2b,2c間に入り込む。
【0024】
図7に示すように爪片5cの爪5e,5fは、立設部2b,2cに向けて突出している。立設部2b,2cに形成された係止片5a,5bは、爪5e,5fに向けて突出している。爪5e,5fは、係止片5a,5bに係止した状態で係止片5a,5bに対向する爪傾斜面5e1,5f1を有している。爪傾斜面5e1,5f1は、係止片5a,5bに向けて突出しつつ閉じ位置から開き位置に向けて傾斜する傾斜角度を有している。係止片5a,5bは、対向する爪傾斜面5e1,5f1と略同じ傾斜角度を有する係止片傾斜面5a1,5b1を有している。したがって蓋4を閉じ位置から開き位置に傾動させると、爪5e,5fと係止片5a,5bが互いに食い込む(入り込む)。
【0025】
図7に示すように第一組の爪5eと係止片5aは、爪軸部5dよりも蓋4の先端側(外側)に位置している。一方、第二組の爪5fと係止片5bは、爪軸部5dよりも蓋4の基端側(内側)に位置している。第一組の爪傾斜面5e1と係止片傾斜面5a1は、第二組側の爪傾斜面5f1と係止片傾斜面5b1よりも傾斜角度が大きく、食い込む角度が大きい。また第一組の爪5eと係止片5aは、第二組の爪5fと係止片5bよりも突出長さが長い。そのため第一組が第二組よりも食い込む長さが長く、食い込み量が大きい。
【0026】
図5〜7に示すように立設部2bの先端部には、覆い部2gが形成されている。覆い部2gは、蓋4が閉じ位置に保持された状態において蓋4の先端に対向して、その先端を覆う。したがって覆い部2gによって蓋4とクリップ本体2の隙間を隠すことができる。そのためその隙間に物が挿入され、蓋4が不意に開けられることが覆い部2gによって防止され得る。
【0027】
図7,11に示すように蓋本体4aは、ワイヤー本体15aに対向する面にワイヤー本体15aに向けて突出する突部6を有している。突部6は、ワイヤー本体15aの径中心に対応する蓋本体4aの一領域で、かつ蓋本体4aのワイヤー本体15aの長さ方向全長に渡って形成されている。突部6のワイヤー15側への突出量は、ワイヤー端部15b側で大きく、ワイヤー端部15bから遠くなるほど小さい。突部6は、ワイヤー本体15aに対して斜めに対向する傾斜面6cを有している。傾斜面6cは、平面状であって溝2eの底部2e1に対して略直線的に傾斜する。
【0028】
蓋本体4aと溝2eの底部2e1の間には、図11,12に示すようにワイヤー本体15aとの間にワイヤー本体15aの傾動を許容する隙間(クリアランス)2fが形成されている。隙間2fは、突部6によって、ワイヤー端部15b側において小さく、ワイヤー端部15bから遠いほど大きい。したがってワイヤー本体15aは、突部6の近傍を中心に、溝2eの底部2e1に沿う位置と、突部6の傾斜角度に沿う位置の間で傾動できる。
【0029】
したがってワイヤー15は、力伝達の際にクリップ1によって邪魔され難く、力のロスが少ない。すなわちワイヤー15は、ロック装置17cがロック状態の時、クリップ1の溝2eに沿う位置になる。そしてロック装置17cをロック解除する際、ワイヤー15は、リンク13に押されてワイヤー本体15aの延出方向(上下方向)に移動する。そしてワイヤー15の下端部がロック部材14とともに左右方向(図11の矢印X方向)に移動する。その結果、ワイヤー15がワイヤー端部15bの近傍を中心に傾動し、クリップ1の溝2eに沿う位置になる。
【0030】
これに対してクリップ1は、ワイヤー本体15aとの間に隙間2fを有している。そのためクリップ1は、力伝達の際に三次元的に動くワイヤー本体15aの動きを邪魔しない。またクリップ1は、突部6を有している。そのためワイヤー15は、突部6によってワイヤー端部15b側がX方向(左右方向)に移動することが規制される。これによりワイヤー端部15bがクリップ1の筒部3から抜けることが防止される。
【0031】
溝2eの幅は、図7に示すようにワイヤー本体15aの径よりも大きい。したがってワイヤー本体15aを溝2eに設置しても立設部2dが倒れない。そのため立設部2dが図7の下方側に倒れることで、蓋4が下方に引っ張られ、第一組の爪5eと係止片5aが外れることが防止され得る。
【0032】
以上のように、連結穴13aは、図9に示すようにワイヤー本体15aの延出方向に延出する長穴である。クリップ1は、ワイヤー本体15aを保持するクリップ本体2と、ワイヤー端部15bが挿入される筒部3を有している。筒部3は、ワイヤー端部15bとともに連結穴13aに挿入される筒軸部3aと、筒軸部3aから連結穴13aの短手両方向に突出してリンク(第一の部品)13から筒部3が抜けることを防止する一対の抜止爪3bを有している。
【0033】
したがってワイヤー15は、リンク(第一の部品)13からロック部材(第二の部品)14に力を伝達する際にワイヤー本体15aの延出方向に移動する。そして同方向に連結穴13aが延出している。そのため製造時における部品のバラ付き等が連結穴13aによって吸収され得る。クリップ1は、筒部3を有し、筒部3は、連結穴13aの短手方向に突出する抜止爪3bを有している。そのためクリップ1は、抜止爪3bによってリンク13から抜け止めされ得る。
【0034】
また筒部3は、図8,9に示すように連結穴13aの短手長さよりも径が小さい短手径と、抜止爪3bを有しかつ連結穴13aの短手長さよりも径が大きい長手径を有している。そして長手径が連結穴13aの延出方向に配設されて筒部3が連結穴13aに挿入され、筒部3が連結穴13aに対して回転されて抜止爪3bがリンク13に抜け止めされる構成になっている。したがって筒部3は、弾性変形されることなく、連結穴13aに挿入され得る。そのため筒部3は、弾性変形させるための構成が不要であるため、強度の強い構成にし得る。あるいは軸部3の弾性変形量に関わらず、抜止爪3bの突出量を大きくすることができるため、これにより筒部3をリンク13に対して確実に抜け止めさせることができる。
【0035】
また筒部3は、図5,9に示すように径方向に弾性変形させるためのスリットを有さず、弾性変形されることなくリンク13に組付けられる構成になっている。したがって筒部3は、スリットを有していないために強度が強くなる。また筒部3がスリットを有しないために、スリットの位置によって抜止爪3bの位置が決定されない。そのため抜止爪3bを所望の位置に容易に設けることができる。
【0036】
(他の実施の形態)
本発明は、上記実施の形態に限定されず、以下の形態等であっても良い。
(1)上記実施の形態のクリップ本体2は、蓋4と協働してワイヤー本体15aを保持する形態である。しかし蓋4に代えて片持ち梁状に延出する保持爪を有し、保持爪の弾性変形を利用してワイヤー本体をクリップ本体に保持する形態でも良い。
(2)上記実施の形態の筒部3は、径方向に弾性変形させるためのスリットを有していない。しかし筒部にスリットを設け、筒部がスリットを利用して径方向に弾性変形されて連結穴に挿入される形態であっても良い。
(3)上記実施の形態のリンク13とロック部材14は、サイドフレーム11bに傾動可能に設けられている。しかしリンクとロック部材の少なくとも一つがサイドフレーム11bに平行移動可能に設けられる形態であっても良い。
(4)上記実施の形態のワイヤー端部15bは、ワイヤー本体15aに対して略90°に屈折している。しかしワイヤー端部がワイヤー本体に対して他の角度で屈折、あるいはU字状など円弧状に曲がって延出する形態であっても良い。
(5)上記実施の形態のワイヤー15は、第一の部品(リンク13)から力を受けて第二の部品(ロック部材14)を押すプッシュワイヤーである。しかし第一の部品から力を受けて第二の部品を引っ張るプルワイヤーであっても良い。
(6)上記実施の形態のクリップ1は、車両部品構成体であるリンク13とワイヤー15の間に設けられている。しかしクリップが他の車両部品とワイヤーの間に設けられる形態であっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】車両用シートのフレーム構造の斜視図である。
【図2】図1の一部拡大図である。
【図3】ワイヤーの一部とリンクの斜視図である。
【図4】図2のIV―IV線断面矢視図である。
【図5】ワイヤーの一部とクリップの斜視図である。
【図6】蓋が開き位置にある場合のクリップの上面図である。
【図7】蓋が閉じ位置にある場合のクリップの上面図である。
【図8】クリップをリンクに取付ける様子を示すクリップの一部断面とリンクの左面図である。
【図9】クリップをリンクに取付けた状態を示すクリップの一部断面とリンクの左面図である。
【図10】図9のX―X線断面矢視図である。
【図11】図9のXI―XI線断面矢視図である。
【図12】蓋が開き位置における図11に相当する図である。
【図13】従来のクリップの斜視図である。
【符号の説明】
【0038】
1…クリップ
2…クリップ本体
2a…板部
2b,2c,2d…立設部
2e…溝
2f…隙間
2g…覆い部
3…筒部
3a…筒軸部
3b…抜止爪
4…蓋
4a…蓋本体
4b…折曲部
4c…先端部
5…保持機構
5a,5b…係止片
5c…爪片
5e,5f…爪
6…突部
6c…傾斜面
10…シート
11b…サイドフレーム(本体部品)
13…リンク(第一の部品)
13a…連結穴
14…ロック部材(第二の部品)
15…ワイヤー
15a…ワイヤー本体
15b,15c…ワイヤー端部



【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体部品に移動可能に設けられる第一と第二の部品と、前記第一と第二の部品を連動させるワイヤーと、前記ワイヤーと前記第一の部品を連結するクリップを有するクリップ付き車両部品構成体であって、
前記ワイヤーは、前記第一の部品に形成された連結穴に挿入されるワイヤー端部と、そのワイヤー端部から屈曲して第二の部品側に延出するワイヤー本体を有し、かつ前記ワイヤーは、前記第一の部品の移動によって前記ワイヤー本体の延出方向に移動し、
前記連結穴は、前記ワイヤー本体の延出方向に延出する長穴であって、
前記クリップは、前記ワイヤー本体を保持するクリップ本体と、前記ワイヤー端部が挿入される筒部を有し、
前記筒部は、前記ワイヤー端部とともに前記連結穴に挿入される筒軸部と、前記筒軸部から前記連結穴の短手両方向に突出して前記第一の部品から前記筒部が抜けることを防止する一対の抜止爪を有することを特徴とするクリップ付き車両部品構成体。
【請求項2】
請求項1に記載のクリップ付き車両部品構成体であって、
筒部は、連結穴の短手長さよりも径が小さい短手径と、抜止爪を有しかつ前記連結穴の短手長さよりも径が大きい長手径を有し、
前記長手径が前記連結穴の延出方向に配設されて前記筒部が前記連結穴に挿入され、前記筒部が前記連結穴に対して回転されて前記抜止爪が第一の部品に抜け止めされる構成になっていることを特徴とするクリップ付き車両部品構成体。
【請求項3】
請求項2に記載のクリップ付き車両部品構成体であって、
筒部は、径方向に弾性変形させるためのスリットを有さず、弾性変形されることなく第一の部品に組付けられる構成になっていることを特徴とするクリップ付き車両部品構成体。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2010−60093(P2010−60093A)
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−228200(P2008−228200)
【出願日】平成20年9月5日(2008.9.5)
【出願人】(000241500)トヨタ紡織株式会社 (2,945)
【Fターム(参考)】