説明

クリーニングフィルム、及びこれを用いたクリーニング方法

【課題】微細な凹凸を有する基材の表面の異物を除去する際、微細な凹凸にも追従して異物を除去することが出来るクリーニングフィルム及びクリーニング方法の提供。
【解決手段】支持体上に少なくとも1層の粘着剤層を有するクリーニングフィルムであって、前記粘着剤層が少なくとも1種類の膨潤性ゲルを含むことを特徴とするクリーニングフィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリント基板や導電性パターン材料等の微細な凹凸を有する基材の異物除去に使用するクリーニングフィルム及びこれを用いたクリーニング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイ、エレクトロルミネッセンスディスプレイ、プラズマディスプレイ、エレクトロクロミックディスプレイ、太陽電池、電子ペーパー等に使用されるプリント基板や導電性パターン材料などの加工時に残存したオイル、異物などの付着物は、その後の工程で重要な汚染を誘発したり、最終製品の性能劣化や耐久性の低下を招いたりする。従って、表面の汚染物の除去のために、必要に応じてフロン(登録商標)洗浄、超純水を用いた超音波洗浄、活性剤溶液洗浄、酸・アルカリ洗浄等を複数組み合わせたり、複数回繰り返して十分な洗浄が施される。
【0003】
しかし、これらのウェット洗浄は処理時間が長く、大量の水を使用する、装置のスペースが大きい等の問題があるだけでなく、近年の高精細化に伴って水残りや被洗浄物の損傷が顕在化してきている。
【0004】
これらのウェット洗浄の問題点を解決するために、種々の粘着クリーニングローラーやクリーニングシートによるドライプロセスが検討されている。例えば、物品の表面付着物が存在する部分に、付着物と粘着剤成分が一体化して硬化可能な硬化型粘着剤が支持体上に設けられてなるクリーニングシートを貼着し、付着物と粘着剤成分を一体化して硬化させ、硬化したクリーニングシートを物品から剥離することにより、シートと表面付着物とを一体に物品から除去する方法が知られている(例えば特許文献1参照。)。
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載のクリーニングシートを微細な凹凸が多く存在するプリント基板のクリーニングに使用した場合、微細な凹凸部への追従に劣り十分な洗浄性が得られていない、又剥離する際プリント基板を損傷する危険があることが判った。
【0006】
凹凸表面を持つ除塵対象物のクリーニングに、除塵対象物の凹凸表面への追従性が良好である基材上に発泡剤を含んだ粘着剤層を有する粘着除塵クリーナーを使用する方法が知られている(例えば特許文献2参照。)。薄肉状の粘着剤層と内層の軟質弾性層を厚肉層の二層構造としたクリーニングローラーで、凹凸のある電子基板など表面のゴミ、埃などの汚れを取り除く方法が知られている(例えば特許文献3参照。)。
【0007】
しかしながら、特許文献2に記載の粘着除塵クリーナー、特許文献3に記載のクリーニングローラーは、何れも更なる高精細化に対しては十分な洗浄性が得られていないことが判った。
【0008】
これらの状況から、微細な凹凸を有する基材の表面の異物を除去する際、微細な凹凸に追従し異物を除去することが出来るクリーニングフィルム及びクリーニング方法の開発が望まれている。
【特許文献1】特開平7−155704号公報
【特許文献2】特開2006−75502号公報
【特許文献3】特開2007−175473号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、微細な凹凸を有する基材の表面の異物を除去する際、微細な凹凸にも追従して異物を除去することが出来るクリーニングフィルム及びクリーニング方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本願発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討する過程において、特にプリント基板のような凹凸のある表面のクリーニングにおいて、膨潤性ゲルを含有した粘着剤層が重要であることを見出した。これは、膨潤した粘着剤層自身が微細な凹凸に追従し、異物を覆い絡めとることが出来るだけでなく、表面にわずかな水分が残り皮膜状になることで、長時間貼り付けたままにしていても、プリント基板表面上に糊残りが生じないことを見出し本発明に至った。本発明の上記目的は下記の構成により達成された。
【0011】
本発明の上記目的は下記の構成により達成された。
【0012】
1.支持体上に少なくとも1層の粘着剤層を有するクリーニングフィルムであって、前記粘着剤層が少なくとも1種類の膨潤性ゲルを含むことを特徴とするクリーニングフィルム。
【0013】
2.前記粘着剤層に膨潤性ゲルを、50質量部〜100質量部含有することを特徴とする前記1に記載のクリーニングフィルム。
【0014】
3.前記膨潤性ゲルがヒドロゲルであることを特徴とする前記1又は2に記載のクリーニングフィルム。
【0015】
4.前記粘着剤層の膨潤前の厚さが、0.05μm〜10μmであることを特徴とする前記1〜3の何れか1項に記載のクリーニングフィルム。
【0016】
5.微細な凹凸を有する基材の表面をクリーニングフィルムにより清掃するクリーニング方法であって、前記クリーニングフィルムが前記1〜4の何れか1項に記載のクリーニングフィルムを使用することを特徴とするクリーニング方法。
【0017】
6.前記クリーニングフィルムを使用する際に、該クリーニングフィルムに予め水分を含有させておくことを特徴とする前記5に記載のクリーニング方法。
【0018】
7.前記水分の量が、0.1ml/g〜10.0ml/gであることを特徴とする前記6に記載のクリーニング方法。
【0019】
8.前記基材がプリント基板であることを特徴とする前記5〜7の何れか1項に記載のクリーニング方法。
【発明の効果】
【0020】
微細な凹凸を有する基材の表面の異物を除去する際、微細な凹凸にも追従して異物を除去することが出来るクリーニングフィルム及びクリーニング方法を提供することが出来た。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明の実施の形態を図1、図2を参照しながら説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0022】
図1は本発明のクリーニングフィルムの概略断面図である。
【0023】
(a)に示されるクリーニングフィルムに付き説明する。
【0024】
図中、1aはクリーニングフィルムを示す。クリーニングフィルム1aは支持体101と、膨潤性ゲルを含有する粘着剤層102とを有する構成となっている。
【0025】
(b)に示されるクリーニングフィルムに付き説明する。
【0026】
図中、1bはクリーニングフィルムを示す。クリーニングフィルム1bは支持体101と、膨潤性ゲルを含有する粘着剤層102と、易接着層103とを有する構成となっている。
【0027】
(c)に示されるクリーニングフィルムに付き説明する。
【0028】
図中、1cはクリーニングフィルムを示す。クリーニングフィルム1cは支持体101と、膨潤性ゲルを含有する粘着剤層102と、易接着層103と、機能層104とを有する構成となっている。機能層104としては、帯電防止層、保湿剤層等が挙げられる。
【0029】
次に、(a)〜(c)に示されるクリーニングフィルムの粘着剤層に付き説明する。
【0030】
(a)〜(c)に示されるクリーニングフィルムの粘着剤層の構成例を以下に示す。
1.膨潤性ゲルが単一で構成
2.複数の膨潤性ゲルで構成
3.膨潤性ゲルと非膨潤性ゲルの混合物で構成
4.多層で構成:少なくとも2層から構成され、以下に構成例を示す。
1)上下層で異なる膨潤性ゲル単一を使用して構成する。
2)上下層で異なる膨潤性ゲルを複数使用して構成する。
3)上層が単一の膨潤性ゲルで、下層が複数の膨潤性ゲルを使用して構成する。
4)上層が複数の膨潤性ゲルで、下層が膨潤性ゲルと非膨潤性ゲルの混合物とで構成する。
5)上層が単一の膨潤性ゲルで、下層が膨潤性ゲルと非膨潤性ゲルの混合物とで構成する。
【0031】
粘着剤層は膨潤性ゲルが含まれて入れば良く、膨潤性ゲル以外に界面活性剤等やpH調整剤、ラテックス等の添加剤を必要に応じて添加しても良い。粘着剤層の膨潤前の厚さとしては、異物除去性、微細な凹凸への追随性、基材への貼り付け易さ等を考慮し、0.05μm〜10μmが好ましく、更には0.1μm〜5μmが好ましい。
【0032】
厚さは、作製したクリーニングフィルムをミクロトームで切断し、その切断面を透過型電子顕微鏡で観察し、求めた値を示す。
【0033】
粘着剤層に含まれる膨潤性ゲルは、膨潤性、粘着性、水分保持性能等を考慮し、50質量部〜100質量部が好ましく、更には70質量部〜100質量部が好ましい。
【0034】
図2は微細な凹凸を有する基材の一例としてのプリント基板の模式図である。図2(a)は微細な凹凸を有する基材の一例としてのプリント基板の概略平面図である。図2(b)は図2(a)のPで示される部分の拡大模式図である。図2(c)は図2(b)のA−A′に沿った拡大概略断面図である。
【0035】
図中、2はプリント基板を示す。202aは支持体201の上に形成された横ラインを示し、202bは支持体201の上に形成された縦ラインを示す。通常、横ライン202a、縦ライン202bは複数のラインから構成されており、本図では共に10本のラインから構成されている場合を示している。
【0036】
E1は、横ライン202aを構成しているライン間の距離を示す。距離E1は1μm〜30μmが好ましい。E2は、縦ライン202bを構成しているライン間の距離を示す。距離E2は1μm〜30μmが好ましい。
【0037】
Fは縦ライン202bを構成しているラインの幅を示す。幅Fは1μm〜30μmが好ましい。横ライン202aを構成しているラインの幅も同様に1μm〜30μmが好ましい。
【0038】
Gは支持体201からのラインの厚みを示す。厚みGは所望の導電性とラインの断面積、長さから求められ、1μm〜100μmが好ましい。尚、プリント基板においては近年の微細化要望で、ライン幅、ライン間隔としては20μm以下、特に10μm以下の要望が増えており、この時必要な厚みは5μm〜15μmとなる。
【0039】
本発明において、微細な凹凸を有する基材とは、本図に示す様な凹凸構造を有する基材が挙げられる。
【0040】
本発明において、膨潤性ゲルを含有するとは、粘着剤層が膨潤性ゲルから構成されている状態、膨潤性ゲルと非膨潤性ゲルが混合している状態を含めて言う。
【0041】
本発明で使用する膨潤性ゲルはヒドロゲルが好ましい。分散質としては、ゼラチン、寒天等が挙げられる。これらの中で、ゼラチンが好ましい。ゼラチンとしては、豚皮や牛骨等から抽出したものが好ましく、酸処理ゼラチンでもアルカリ処理ゼラチンでも良く、フタル酸等で変性させたゼラチンを用いても良い。これらの分散質は単独で使用しても、複数を混ぜて使用することも可能である。又、分散質にゼラチンを使用する場合には、硬膜剤を添加しておいても良い。硬膜剤としては、ビニルスルホン型やエポキシ型、アクリルアミド型等が用いられるが、ビニルスルホンタイプがより好ましい。
【0042】
又、上記の膨潤性ゲルと吸水性樹脂とを混合して使用することも可能である。吸水性樹脂としては特に限定はなく、例えば、ポリアクリル酸ナトリウム系樹脂、上市品(例えば、住友精化(株)製 SSゲル、高吸水性樹脂アクアキープ、アドバンスト・ソフトマテリアルス(株)製 スライドリングゲルWA−GEL、トピー工業(株)製 膨潤性マイカ)等が挙げられる。
【0043】
(支持体)
支持体としては、樹脂板や樹脂フィルムなどが好適に挙げられる。樹脂には特に限定はなく、公知のものの中から適宜選択することが出来る。例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステル類、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン、環状オレフィン系樹脂などのポリオレフィン類、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデンなどのビニル系樹脂、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリサルホン(PSF)、ポリエーテルサルホン(PES)、ポリカーボネート(PC)、ポリアミド、ポリイミド、アクリル樹脂、トリアセチルセルロース(TAC)などの単層あるいは複数層からなる基板やフィルムが好適に用いられる。更にガラス基板や紙類を用いることも出来る。中でも取り扱いやすさ及びコストの点から、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンフィルム、トリアセチルセルロースフィルムであることが好ましい。
【0044】
支持体の厚みは、微細な凹凸への追随性、取り扱い易さ、コスト等を考慮し、10〜500μmが好ましく、更には30〜100μmが好ましい。
【0045】
フィルム支持体は塗布液の濡れ性や接着性を確保するために、表面処理や易接着層を設けることが好ましい。表面処理や易接着層については従来公知の技術を使用出来る。易接着層は単層でも良いが、接着性を向上させるために2層以上の構成にしても良い。
【0046】
又、易接着層の上に帯電防止層、クッション層、保湿層等を積層することも可能である。
【0047】
表面処理の方法としては、例えば大気圧プラズマ処理、コロナ放電処理、エッチング処理等が挙げられる。
【0048】
易接着層としては、例えばラテックス系のアンカーコート剤を塗布し形成することが可能である。
【0049】
帯電防止層は、帯電防止剤や導電性微粒子等を含有した層であれば良く、帯電防止剤としては、例えば4級アンモニウム塩やイミダゾリン、スルホニウム塩等のカチオン性帯電防止剤やアルキルサルフェート、アルキルホスフェート等のアニオン系帯電防止剤、ソルビタン、アミン、アミド等の非イオン系帯電防止剤、スルホベタイン、アミンオキシド、ホスフェート等のの両性系帯電防止剤を用いることが出来、導電性微粒子としては、例えば酸化錫等の金属微粒子を使用することが可能である。
【0050】
保湿層としては、水分を保持出来れば良く、例えば上記の吸水性樹脂を含有したり、グリセリンやエチレングリコールを使用しても良い。
【0051】
(クリーニングフィルムの作製方法)
本発明のクリーニングフィルムは、膨潤性ゲルを含有する粘着剤層形成用塗布液(以下、塗布液と言う)を、塗布面を表面処理した支持体上に塗布、又は易接着層を設けた支持体の易接着層上に塗布、又は易接着層/機能層を設けた支持体の機能層の上に塗布した後、乾燥することで作製することが可能である。
【0052】
塗布液を支持体上に塗布する方法としては特に限定はないが、例えば、ロールコート法、バーコート法、ディップコーティング法、スピンコーティング法、キャスティング法、ダイコート法、ブレードコート法、バーコート法、グラビアコート法、カーテンコート法、スプレーコート法、ドクターコート法などの塗布法や、凸版(活版)印刷法、孔版(スクリーン)印刷法、平版(オフセット)印刷法、凹版(グラビア)印刷法、スプレー印刷法、インクジェット印刷法などの印刷法が挙げられる。
【0053】
塗布性を向上させるために、塗布液中に界面活性剤を添加することが好ましい。界面活性剤としては、一般に知られているアニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、両イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤などを挙げることが可能で、これらを必要に応じて用いることが可能である。尚、本発明では基材に貼り合わせたクリーニングフィルムを剥離した後、基材上に活性剤等の添加剤が転写することを防止するために、クリーニングフィルム作製後、又は、基材に貼り合わせ使用する前に、予め超純水等で洗浄することが好ましい。
【0054】
〔クリーニング方法〕
本発明のクリーニング方法としては、基材に本発明のクリーニングフィルムを貼り付ける前に予め膨潤性ゲルを含有する粘着剤層に水分を含有させることが好ましい。
【0055】
水分の量としては、凹凸部への追従性、基材からの剥離性、基材の汚染防止等を考慮し、膨潤性ゲル1gあたり、0.1ml/g〜10ml/gが好ましく、更には0.3ml/g〜3ml/gが好ましい。
【0056】
予め水分を含有させる方法としては、粘着剤層を有するクリーニングフィルムを水の中に漬けたり、刷毛やバーコーターで塗布したり、スプレーや蒸気等を吹付けたりすれば良いが、湿らす程度に水分を与える方法としては、スプレーや蒸気を吹付ける方法がより好ましい。
【0057】
含有させる水分としては超純水を用いることが好ましい。又、フィルム基板貼り付け時の密着性を向上させるために、ある程度の温水を用いることも好ましい。用いられる温水の温度は、粘着剤層の溶解性、膨潤性等を考慮し、25℃〜50℃が好ましい。
【0058】
更に、予め添加する水分には、ゼラチン等の硬膜剤やpH調整剤、界面活性剤等を含有しても良い。
【0059】
水分を含有させ粘着層を膨潤させ、使用時の粘着層の粘着力は、異物の除去性と糊残り防止の両立等を考慮し、0.01N/25mm〜5.0N/25mmが好ましく、更に0.03N/25mm〜2.0N/25mmが好ましいい。尚、粘着力はJISZ1528に準じて測定した値を示す。
【0060】
クリーニングフィルムを基材の表面に貼合する時は、密着性を向上させるために、圧着ロールや熱ラミネート装置等を用いることが好ましい。
【0061】
(基材)
対象となる基材としては特に限定はなく、例えば液晶ディスプレイ、エレクトロルミネッセンスディスプレイ、プラズマディスプレイ、エレクトロクロミックディスプレイ、太陽電池、電子ペーパー等に使用されるプリント基板、ダイオード、トランジスタ、磁気ヘッド、セラミック応用素子等の電子部品等の表面に微細な凹凸を有する基材、フィルム、プラスチック成型品、金属板等が挙げられる。
【0062】
本発明のクリーニングフィルムは、基材の表面保護用としても使用することが可能である。例えばプリント基板の表面に本発明のクリーニングフィルムを貼合させた後、貼合させた状態で次工程に移送した後、クリーニングフィルムを剥離することでプリント基板の清掃と、移送時の異物の付着や表面に傷が付くことを防止することが可能となる。
【0063】
貼合させた状態で次工程に移送した後、剥離するまでの期間は、粘着剤層の基材への転写付着による故障防止を考慮し、概ね数時間から1ヶ月程度で基材の種類により適宜選択することが好ましい。クリーニングフィルムを剥離するまでの保管条件も任意で良いが、粘着剤の基材への転写を防止する目的の他に、基板そのものの性能を維持するためにも、ある程度低温低湿状態で保存することが好ましい。
【0064】
特に、貼合した後、剥離するまで一定期間保管する様な方法で使用する場合、粘着剤層の転写を防止するために、硬膜剤を添加しておくことが好ましい。硬膜剤としては、ビニルスルホン型やエポキシ型、アクリルアミド型等が用いられるが、ビニルスルホンタイプがより好ましい。
【実施例】
【0065】
以下、実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。尚、実施例において「%」の表示を用いるが、特に断りがない限り「質量%」を表す。
【0066】
実施例1
(支持体の準備)
10W/(m・min)でコロナ放電処理した厚さ50μm、幅180mmのポリエステルフィルムを準備した。
【0067】
(易接着層の形成)
準備した支持体の上に、下記の下引き塗布液を乾燥膜厚0.4μmになるようにダイコート法で塗布し、乾燥し易接着層を形成した。
【0068】
(下引き塗布液)
ブチルアクリレート30質量%、t−ブチルアクリレート20質量%、スチレン25質量%、2−ヒドロキシエチルアクリレート25質量%の共重合体ラテックス液
(固形分30%) 50g
ヘキサメチレン−1,6−ビス(エチレン尿素) 0.05g
水で1000mlに仕上げる。
【0069】
粘着剤層形成用塗布液の調製
表1に示す様に分散質を変えた粘着剤層形成用塗布液を調製しNo.1−1〜No.1−5とした。
【0070】
【表1】

【0071】
粘着剤層形成用塗布液No.1−1の調製
アルカリ処理牛骨ゼラチン(新田ゼラチン(株)製) 2質量部
界面活性剤(S−1)4%水溶液 1.0質量部
硬膜剤(H−1)0.5%水溶液 2.5質量部
超純水 94.5質量部
粘着剤層形成用塗布液No.1−2の調製
酸処理豚皮ゼラチン(新田ゼラチン(株)製) 3.0質量部
界面活性剤(S−1)4%水溶液 1.0質量部
硬膜剤(H−1)0.5%水溶液 4.0質量部
超純水 92.0質量部
粘着剤層形成用塗布液No.1−3の調製
寒天 2.5質量部
界面活性剤(S−1)4%水溶液 1.0質量部
超純水 96.5質量部
粘着剤層形成用塗布液No.1−4の調製
酸処理豚皮ゼラチン(新田ゼラチン(株)製) 2.0質量部
寒天 1.0質量部
界面活性剤(S−1)4%水溶液 1.0質量部
硬膜剤(H−1)0.5%水溶液 2.5質量部
超純水 93.5質量部
粘着剤層形成用塗布液No.1−5の調製
酸処理豚皮ゼラチン(新田ゼラチン(株)製) 2.0質量部
高吸水性樹脂アクアキープ(住友精化(株)製) 0.5質量部
界面活性剤(S−1)4%水溶液 1.0質量部
硬膜剤(H−1)0.5%水溶液 2.5質量部
超純水 94.0質量部
【0072】
【化1】

【0073】
(クリーニングフィルムの作製)
準備した易接着層を形成した支持体の易接着層の上に、準備した粘着剤層形成用塗布液No.1−1〜1−5をダイコート法で塗布し、乾燥した後、25℃の超純水の流水中で15分間洗浄した後、乾燥して、厚さ0.2μmの粘着剤層を有するクリーニングフィルムを作製しNo.101〜105とした。厚さは、クリーニングフィルムをミクロトームで切断し、その切断面を透過型電子顕微鏡で観察し求めた値を示す。
【0074】
(比較のクリーニングフィルムの準備)
日東電工製高機能除塵用粘着ロールクリーナーSDR10の粘着シートを切り出し、比較のクリーニングフィルムNo.106とした。
【0075】
サンエー化研製のサニテクトPAC−3−50THKを比較のクリーニングフィルムNo.107とした。
【0076】
(クリーニング用基材の準備)
厚さ50μmのポリエチレンテレフタレート上にITO(Indium Tin Oxide)をスパッタリングにより作製し、図2に示す様な深さ、ライン幅、ライン間隔共に10μmの10本の線を1つの塊りとし、3mm間隔の格子状にエッチング加工したプリント基板を作製しクリーニング用基板とした。
【0077】
評価
準備した各クリーニングフィルムNo.101〜107の異物除去性、粘着剤残り性を以下に示す方法で試験し、以下に示す評価ランクに従って評価した結果を表2に示す。
【0078】
異物除去性の試験方法
クリーニングフィルムの粘着剤層に超純水を膨潤性ゲル1gあたり0.5ml付与し、膨潤させた後、準備したクリーニング用基板に貼合し、フジプラ(株)製ラミネーターLPD3216を100℃設定で2回通して貼合し、室温で4時間放置、1週間放置した後にクリーニングフィルムを剥離した。この後、クリーニング用基材を超純水500mlを入れたガラスビーカーに浸し、超音波洗浄器で10分間洗浄を行い、この液をリオン(株)製パーティクルカウンター(KS−42)で0.2μm粒子の個数を測定することで洗浄性の評価を行った。尚、クリーニングフィルム貼り付け前のクリーニング用プリント基板で同様の評価を行ったところ、粒子数は概ね1500個だった。
【0079】
異物除去性の評価ランク
◎:粒子数100個未満
○:粒子数300個未満、100個以下
△:粒子数500個未満、300個以下
×:粒子数500個以上
粘着剤残り試験方法
クリーニングフィルムを剥離した後のクリーニング用プリント基板の表面を走査型電子顕微鏡(日立製作所製 S−5000H)を用い、倍率2000倍で任意の5箇所の撮影を行い、粘着剤残りの状態を調べた。
【0080】
粘着剤残り評価ランク
◎:観察した5箇所中、粘着剤の残りがない
○:観察した5箇所中、1箇所でわずかに粘着剤が残っている
△:観察した5箇所中、2箇所〜4箇所で粘着剤が残っている
×:観察した5箇所中、5箇所で粘着剤が転写している
【0081】
【表2】

【0082】
本発明のクリーニングフィルムNo.101〜105を用いることで、微細な凹凸を有する基材に対して粘着剤の残りもなく、優れた異物除去性を示した。又、1週間放置した後でも基材への粘着剤の残りもないことから、基材への保護フィルムとしても使用できることを確認した。比較としたクリーニングフィルムNo.106は異物除去性は優れているが、粘着剤の残りが多い結果となった。比較としたクリーニングフィルムNo.107は粘着剤の残りはないが、異物除去性が劣る結果となった。本発明の有効性が確認された。
【0083】
実施例2
(支持体の準備)
実施例1と同じ支持体を準備した。
【0084】
(易接着層の形成)
準備した支持体の上に、実施例1と同じ易接着層を形成した。
【0085】
(クリーニングフィルムの作製)
実施例1のクリーニングフィルムNo.1−1を実施例1と同じ方法で作製した。
【0086】
(クリーニング用プリント基板の準備)
実施例1と同じクリーニング用プリント基板を実施例1と同じ方法で準備した。
【0087】
評価
表3に示す用に準備したクリーニングフィルムの粘着剤層への水の付与量を変化した試験を試験No.201〜209として、準備したクリーニング用基材の異物除去性、粘着剤残り性を実施例1と同じ方法で試験し、実施例1と同じ評価ランクに従って評価した結果を表3に示す。
【0088】
【表3】

【0089】
本発明のクリーニングフィルムを用い、粘着剤層への水の付与量を0.1ml/g〜10ml/gの範囲であれば、微細な凹凸を有する基材に対して粘着剤の残りもなく、優れた異物除去性を示した。又、1週間放置した後でも基材への粘着剤の残りも少ないことから、基材への保護フィルムとしても使用出来ることを確認した。本発明の有効性が確認された。
【0090】
実施例3
(支持体の準備)
実施例1と同じ支持体を準備した。
【0091】
(クリーニングフィルムの作製)
表4に示す様に粘着剤層の厚さを変えた他は全て同じ方法で実施例1で作製したクリーニングフィルムNo.1−1と同じクリーニングフィルムを作製しNo.301〜309とした。
【0092】
(クリーニング用基材の準備)
実施例1と同じクリーニング用基材を準備した。
【0093】
評価
準備した各クリーニングフィルムNo.301〜309の異物除去性、粘着剤残り性を実施例1と同じ方法で試験し、実施例1と同じ評価ランクに従って評価した結果を表4に示す。
【0094】
【表4】

【0095】
本発明のクリーニングフィルムを用い、粘着剤層の厚さが0.05μm〜10.0μmの範囲であれば、微細な凹凸を有する基材に対して粘着剤の残りもなく、優れた異物除去性を示した。又、1週間放置した後でも基材への粘着剤の残りもないことから、基材への保護フィルムとしても使用出来ることを確認した。本発明の有効性が確認された。
【0096】
実施例4
(支持体の準備)
実施例1と同じ支持体を準備した。
【0097】
(粘着剤層形成用塗布液の調製)
表5に示す様に、高吸水性樹脂アクアキープ(住友精化(株)製)と酸処理豚皮ゼラチン(新田ゼラチン(株)製)との比率を変えた、粘着剤層形成用塗布液No.4−1〜4−3を使用した以外は実施例1で作製したクリーニングフィルムNo.1−5と全て同じ方法でクリーニングフィルムを作製しNo.401〜403とした。
【0098】
【表5】

【0099】
評価
準備した各クリーニングフィルムNo.401〜403の異物除去性、粘着剤残り性を実施例1と同じ方法で試験し、実施例1と同じ評価ランクに従って評価した結果を表6に示す。
【0100】
【表6】

【0101】
実施例1の試料No.101(ゼラチン含有比率100%)、105(ゼラチン含有比率80%)及び表6に示す結果より、本発明のクリーニングフィルムを用い、粘着剤層のヒドロゲルの分散質の含有量が、50質量部〜100質量部の範囲であれば、微細な凹凸を有する基材に対して粘着剤の残りもなく、優れた異物除去性を示した。又、1週間放置した後でも基材への粘着剤の残りもないことから、基材への保護フィルムとしても使用出来ることを確認した。本発明の有効性が確認された。
【図面の簡単な説明】
【0102】
【図1】本発明のクリーニングフィルムの概略断面図である。
【図2】微細な凹凸を有する基材の一例としてのプリント基板の模式図である。
【符号の説明】
【0103】
1a〜1c クリーニングフィルム
101 支持体
102 粘着剤層
103 易接着層
104 機能層
2 プリント基板
201 支持体
202a 横ライン
202b 縦ライン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体上に少なくとも1層の粘着剤層を有するクリーニングフィルムであって、前記粘着剤層が少なくとも1種類の膨潤性ゲルを含むことを特徴とするクリーニングフィルム。
【請求項2】
前記粘着剤層に膨潤性ゲルを、50質量部〜100質量部含有することを特徴とする請求項1に記載のクリーニングフィルム。
【請求項3】
前記膨潤性ゲルがヒドロゲルであることを特徴とする請求項1又は2に記載のクリーニングフィルム。
【請求項4】
前記粘着剤層の膨潤前の厚さが、0.05μm〜10μmであることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載のクリーニングフィルム。
【請求項5】
微細な凹凸を有する基材の表面をクリーニングフィルムにより清掃するクリーニング方法であって、前記クリーニングフィルムが請求項1〜4の何れか1項に記載のクリーニングフィルムを使用することを特徴とするクリーニング方法。
【請求項6】
前記クリーニングフィルムを使用する際に、該クリーニングフィルムに予め水分を含有させておくことを特徴とする請求項5に記載のクリーニング方法。
【請求項7】
前記水分の量が、0.1ml/g〜10.0ml/gであることを特徴とする請求項6に記載のクリーニング方法。
【請求項8】
前記基材がプリント基板であることを特徴とする請求項5〜7の何れか1項に記載のクリーニング方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−58040(P2010−58040A)
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−225952(P2008−225952)
【出願日】平成20年9月3日(2008.9.3)
【出願人】(000001270)コニカミノルタホールディングス株式会社 (4,463)
【Fターム(参考)】