説明

クリーム状皮膚洗浄剤組成物

【課題】
実質的に多価アルコールを含有させずに、pH4.0〜6.0の弱酸性で、柔らかくなめらかで白みの強い外観を有し、泡立ち、すすぎ性、乾燥後の肌のしっとり感、さっぱり感といった使用時の感触に優れ、かつ低温で硬くならず、通常の攪拌機を使用しても調製の容易なクリーム状皮膚洗浄剤組成物を提供することにある。
【解決手段】
N−長鎖アシルグリシンまたはその塩と、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩と、ベタイン型両性界面活性剤と、無機または有機塩と水とを特定の配合比とpHで含有させることにより上記課題が解決できることを見出した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はN−長鎖アシルグリシンおよび/またはその塩と、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩と、ベタイン型両性界面活性剤と、無機及び又はピロリドンカルボン酸塩と水とを特定の配合比とpHで含有するクリーム状皮膚洗浄剤組成物、更に脂肪酸及び/又はアルキルポリグルコシドを含有するクリーム状洗浄剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
N−長鎖アシルグリシンおよび/またはその塩は、低刺激性で泡立ち、すすぎ性に優れた洗浄剤として、皮膚洗浄料に広く使用されてきた。一方、クリーム状の皮膚洗浄剤は、チューブから適時適量を取り出して使用でき、水にたやすく溶解できる簡便さ、固形石鹸で生じる溶け崩れや液体洗浄剤の液だれによる洗面台周囲の汚れを回避できる清潔さが好まれ、洗顔用途を中心に好んで用いられてきた。そこで、N−長鎖アシルグリシンおよび/またはその塩を用いてクリーム状の組成物を作るため、種々検討がなされてきた。
【0003】
特許文献1には、N-長鎖アシルグリシンまたはその塩と、無機塩と、多価アルコールを配合することにより、泡立ちおよびすすぎ性に優れたクリーム状の剤形を得る方法が提案されている。しかし、この組成物は多価アルコールが分離しやすく、必ずしも再現性よくクリーム得られるとは言いがたかった。
【0004】
特許文献2には、N-長鎖アシル中性アミノ酸またはその塩、特にN-長鎖アシルグリシン塩と多価アルコール、高重合ポリオールを用いることにより、形態安定性に優れたクリーム状組成物を得る方法が開示されている。しかし、これらの組成物に関しては、柔らかいクリームを得るためには、全成分を加温溶解させた後、十分に撹拌しながら冷却する必要があり、その際、泡がみという現象(急激な増粘により空気が巻きこまれて組成物に残存する現象)が生じてしまい、クリームの外観、なめらかさを低下させるという問題点があった。また、5重量%以上もの大量の多価アルコールを配合することによる着臭や、低温貯蔵時にクリームが硬くなるという問題点もあった。
【0005】
特許文献3には、低温貯蔵時にクリームが硬くなるという問題点を解決するために、N-長鎖アシルグリシンアルカリ塩とベタイン系両性界面活性剤と水と有機酸とを用いる方法が提案されている。また、特許文献4には、N-長鎖アシルアミノ酸塩と、イミダゾリン型良性界面活性剤と、水膨潤性粘土鉱物と、モノアルキル脂肪酸グリセリルを用いる方法が開示されている。しかし、両文献とも依然として製造時の泡がみによる外観の悪化は解消されないうえ、pH6.0以下の弱酸性領域ではベタイン系両性界面活性剤やイミダゾリン系活性剤のカチオン型の存在比が多くなることに起因する、泡立ち低下やすすぎ性低下という新たな課題が発生しうることになった。
【0006】
特許文献5には、クリームの経時安定性を解決する別の手段として、N-長鎖アシルアミノ酸塩に無水ケイ酸と水溶性ポリアルキレングリコールを併用する方法が提案されている。しかし、N-長鎖アシルアミノ酸塩としてアシルグリシン塩を用いると、無水ケイ酸が沈降してクリームの不均一化が起きやすいという問題があった。
【0007】
特許文献6には、長鎖アシルサルコシン塩とポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩とベタイン系両性界面活性剤を特定の混合比で組み合わせることにより、高粘度の組成物を提供する方法が提案されている。しかし、このような組成物はいずれもシャンプーを想定したものであり、著しく粘度の高い液体洗浄剤として提供される。したがって、クリーム状洗浄剤として使用しようとすると、指ですくい上げたときの切れの悪さ、手のひらで水と混ぜる時のなじみの悪さという問題が生じる。
【0008】
実質的に多価アルコールを含有させずにpH4.0〜6.0の弱酸性で、柔らかくなめらかで白みの強い外観を有し、泡立ち、すすぎ性、乾燥後の肌のしっとり感、さっぱり感といった使用時の感触に優れ、かつ低温で硬くならず、通常の攪拌機を使用しても調製の容易なクリーム状皮膚洗浄剤組成物が切に求められていた。
【特許文献1】特許第3304646号公報
【特許文献2】特開2000-143497号公報
【特許文献3】特開2001-19632号公報
【特許文献4】特開2002-265352号公報
【特許文献5】特開2002-363061号公報
【特許文献6】US477424
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の課題は、実質的に多価アルコールを含有させずに、pH4.0〜6.0の弱酸性で、柔らかくなめらかで白みの強い外観を有し、泡立ち、すすぎ性、乾燥後の肌のしっとり感、さっぱり感といった使用時の感触に優れ、かつ低温で硬くならず、通常の攪拌機を使用しても調製の容易なクリーム状皮膚洗浄剤組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は上記の課題を解決すべく鋭意研究を行った結果、N−長鎖アシルグリシンまたはその塩と、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩と、ベタイン型両性界面活性剤と、無機及び又はピロリドンカルボン酸塩と水とを特定の配合比とpHで含有させることにより、上記課題が解決できることを見出し、本発明を完成した。
【0011】
即ち、本発明は以下の態様を含む。
N−長鎖アシルグリシン及び/又はその塩(成分A)、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩(成分B)、ベタイン型両性界面活性剤(成分C)、無機塩及び/又はピロリドンカルボン酸塩(成分D)、水(成分E)を含有し、[(成分A)(成分B)(成分C)の合計重量]が組成物全重量に対して12〜30重量%であり、(成分A)重量/[(成分A)(成分B)(成分C)合計重量]が3/8〜4/5であり、(成分B)重量/(成分C)重量]が9/1〜1/1であり、pHが4.0〜6.0であることを特徴とするクリーム状皮膚洗浄剤組成物。
本発明はまた、上記成分に加え、更に高級脂肪酸(成分F)及び/またはアルキルポリグルコシド(成分G)を0.01〜5.0重量%含有することを特徴とする、クリーム状皮膚洗浄剤組成物。
【発明の効果】
【0012】
実質的に多価アルコールを含有させずに、pH4.0〜6.0の弱酸性で、柔らかくなめらかで白みの強い外観を有し、泡立ち、すすぎ性、乾燥後の肌のしっとり感、さっぱり感といった使用時の感触に優れ、かつ低温で硬くならず、通常の攪拌機を使用しても調製の容易なクリーム状皮膚洗浄剤組成物を得ることが可能となった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明のクリーム状皮膚洗浄剤組成物は、N−長鎖アシルグリシン及び/又はその塩(成分A)、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩(成分B)、ベタイン型両性界面活性剤(成分C)、無機塩及び/又はピロリドンカルボン酸塩(成分D)、水(成分E)を特定の割合で配合されたものである。なお、ここに言う「クリーム状」とは、「白みが強く、柔らかくなめらかでつやのある、ハンドクリーム様の外観を有し、チューブやジャーに充填して指先で容易にすくい上げることができ、だれ落ちや著しい糸引きを生じない」形状のことである。以下、構成成分と配合割合について順次説明する。
【0014】
本発明に用いられる(成分A)の長鎖N−アシルグリシンおよび/またはその塩の長鎖アシル基は、炭素原子数8〜22の直鎖または分岐鎖の飽和又は不飽和脂肪酸より誘導されるものを使用できる。炭素原子数が8未満のアシル基では洗浄剤としての泡立ち、汚れ落ちが不十分になる場合があり、炭素原子数が22を越える場合には洗浄剤組成物への溶解性が低く、組成物のなめらかさを損なう場合がある。ここでいう脂肪酸としては、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、パルミチン酸、オレイン酸、リノール酸、ベヘン酸、ヤシ油脂肪酸、パーム脂肪酸、硬化牛脂脂肪酸、等が挙げられる。これらは1種類または2種以上を混合して使用しても構わない。特に、泡立ち、泡質が良いという観点から、ヤシ油脂肪酸、ラウリン酸、ミリスチン酸が好ましい。脂肪酸は定法により脂肪酸クロライドに変換された後、アルカリ水溶液条件下、グリシンとショッテン・バウマン反応させる等の、公知の方法により製造することができる。
【0015】
本発明に用いられる(成分A)の塩としては、特に制限は無いが、具体的には、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属塩、マグネシウム等のアルカリ土類金属塩、アンモニウム、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等の有機アミン塩、リジン、アルギニン等の塩基性アミノ酸塩が挙げられる。他のイオン性成分との予期せざる塩交換による形態悪化を回避しうるという観点で、アルカリ金属塩が好ましく、ナトリウムまたはカリウムが特に好ましい。
【0016】
本発明に用いられる(成分B)のポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩としては、特に制限はないが、ラウリルエーテル硫酸塩が好ましく、下記一般式(1)で表され、特定の条件を満たすポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩が更に好ましく、nが2〜3モルであるものが特に好ましい。
【化1】

[式中、Rは炭素数8〜24のアルキル基;nはエチレンオキサイドの平均付加モル数で0.5≦n≦8;Mは金属、有機アミン、塩基性アミノ酸である。]
【0017】
本発明に用いられる(成分B)の塩(M)は特に制限はないが、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属塩、マグネシウム等のアルカリ土類金属塩、アンモニウム、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等の有機アミン塩、リジン、アルギニン等の塩基性アミノ酸塩等を使用できる。これらは1種または2種以上を混合して使用しても構わない。泡立ち、洗浄力が良いという観点で、アルカリ金属塩が好ましく、ナトリウム塩が特に好ましい。
【0018】
本発明に用いられる(成分C)ベタイン型両性界面活性剤としては、特に制限はないが、具体的には酢酸ベタイン型両性界面活性剤、アミドベタイン型両性界面活性剤、スルホベタイン型両性界面活性剤、ホスホベタイン型両性界面活性剤、イミダゾリニウムベタイン型両性界面活性剤を使用することができる。ベタイン型両性界面活性剤の好ましい例として、下記一般化学式(2)で表されるアミドベタイン型両性界面活性剤をあげることができる。アミドベタイン型両性界面活性剤の好ましい例としては、ラウリン酸アミドプロピルベタイン、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン、ミリスチン酸アミドプロピルベタインが挙げられる。泡立ち、および組成物の安定性の観点から、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタインが特に好ましい。
【化2】

(式中、Rは炭素原子数5〜21の直鎖または分岐鎖のアルキル又はアルケニル基を、R、R3は水素原子又は炭素原子数1〜3の直鎖又は分岐鎖のアルキル基を、nは1〜3の整数を、mは1〜4の整数を示す。)
【0019】
本発明に用いられる(成分D)の無機塩またはピロリドンカルボン酸塩は、特に制限はないが、通常酸と塩基との中和反応により生成されるものを使用することができる。酸としては、硫酸、塩酸、リン酸、炭酸、等の無機酸、グルタミン酸、ピロリドンカルボン酸等の酸性アミノ酸、クエン酸、グルコン酸、等の有機酸、等が挙げられる。塩基としては、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属、マグネシウム、カルシウム等のアルカリ土類金属、リジン、アルギニン、オルニチン等の塩基性アミノ酸、アンモニア、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン等の有機アミン、等が挙げられる。塩基性アミノ酸や、ピロリドンカルボン酸はラセミ体でも光学活性体のいずれを使用しても構わない。具体的には塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化マグネシウム、塩化カルシウム、硫酸ナトリウム、硫酸水素ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸水素カリウム、硫酸マグネシウム、硫酸カルシウム、リン酸一ナトリウム、リン酸二ナトリウム、リン酸一カリウム、リン酸二カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素二ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、ピロリドンカルボン酸ナトリウム、L−ピロリドンカルボン酸ナトリウム、DL−ピロリドンカルボン酸カリウム、DL−ピロリドンカルボン酸アンモニウムなどを用いることができる。これらの塩は、単独もしくは混合して用いることができる。なめらかで白みのつよい良好な形態のクリームを得られるという観点で、塩化ナトリウム、塩化カリウム、DL−ピロリドンカルボン酸ナトリウム、L−ピロリドンカルボン酸ナトリウム、DL−ピロリドンカルボンが好ましく、塩化ナトリウム、ピロリドンカルボン酸ナトリウム塩がより好ましい。
【0020】
本発明において使用される(成分E)である水は、一般に洗浄剤や化粧料に使用される程度の純度であれば、特に限定されない。具体的には、イオン交換水、井戸水、天然水、地下水、市水、硬水、軟水等が使用できる。これらは1種類または2種以上を混合して使用しても構わない。本発明品の保存安定性や衛生面の観点からイオン交換水が好ましい。
【0021】
本発明のクリーム状皮膚洗浄剤組成物のpHは、4.0〜6.0の範囲が選ばれる。pH4.0未満では未中和のアシルグリシンが増加するため泡立ちの低下が起きてしまう場合があり、pH6.0を超えるとアシルグリシン塩の組成物への溶解度が高くなるため、クリーム状の形態が崩れる場合がある。クリーム形態を安定して取りうるという観点で、好ましくは4.5〜6.0、さらに好ましくは5.3〜5.8である。pHを調整するための酸としては、特に制限は無いが、具体的には、クエン酸、乳酸、酢酸、りんご酸、酒石酸、グリコール酸等の有機酸;アスパラギン酸、グルタミン酸、ピロリドンカルボン酸等の酸性アミノ酸;塩酸、硫酸、リン酸等の無機酸、等が挙げられる。pH緩衝能があって、他成分によりpH変動し難いという観点で、クエン酸、酒石酸、グルタミン酸、リン酸が好ましく、クエン酸、酒石酸がより好ましく、クエン酸が特に好ましい。
【0022】
本発明の[(成分A)(成分B)(成分C)の合計重量]は組成物全重量に対して12〜30重量%の範囲で使用される。12重量%未満ではクリームが不均化を起し、30重量%を超える場合には組成物が硬くなりクリームの形態を保持できなくなる。クリーム形態を安定的に保持できるという観点で、15〜28重量%が好ましく、16〜25%が更に好ましい。
【0023】
本発明の(成分A)重量/[(成分A)(成分B)(成分C)合計重量]は3/8〜4/5の範囲で使用される。3/8未満ではアシルグリシン塩が一部溶解することによって不均一な形態になりやすく、4/5を超えると組成物が硬くなりやすく、いずれの場合もクリームの形態の低下が起きる。特に優れた泡立ちが得られるという点で、2/5〜3/4が好ましく5/12〜5/7がより好ましく、5/12〜2/3が特に好ましい。
【0024】
本発明の(成分B)重量/(成分C)重量]は1/1〜9/1の範囲で選ばれる。1/1未満では曳糸性の強いハンドリング性の悪いクリームになりうるし、9/1を越えると組成物の形態が不均一になりやすくなる傾向が強い。特に好ましい形態のクリームが得られるという観点で、1/1〜9/1の範囲が好ましく、2/1〜8/1の範囲がより好ましく、3/1〜5/1の範囲が特に好ましい。
【0025】
本発明の(成分D)重量/全組成物重量は、0.1〜5重量%の範囲で使用される。0.1重量%未満では高温保存時にクリームが白みを失って透明になることがあり、5重量%を超えると高温保存時に組成物が分離を起こすことがある。安定した白み効果をもたらすという観点で、0.2〜3重量%が好ましく、0.3〜2.5重量%がより好ましく、0.5〜2.0重量%が特に好ましい。
【0026】
本発明の(成分A)〜(成分E)からなり特定の配合比とpHを有するクリーム状皮膚洗浄剤組成物には、更に脂肪酸(成分F)やアルキルポリグルコシド(成分G)を配合することにより、それぞれの特性を付与することができる。(成分F)と(成分G)とは組み合わせて使用しても構わない。
【0027】
本発明の(成分A)〜(成分E)からなり特定の配合比とpHを有するクリーム状皮膚洗浄剤組成物には、更に脂肪酸(成分F)を添加することにより、クリームの白みが強くなり、低温保存時の柔らかさを一層向上させることができる。脂肪酸塩としては、炭素原子数8〜22の直鎖または分岐鎖の飽和又は不飽和脂肪酸を使用できる。具体的には、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、パルミチン酸、オレイン酸、リノール酸、ベヘン酸、ヤシ油脂肪酸、パーム脂肪酸、硬化牛脂脂肪酸、等が挙げられる。これらは1種類または2種以上を混合して使用しても構わない。特に、泡立ち、泡質が良いという観点から、ヤシ油脂肪酸、ラウリン酸、ミリスチン酸が好ましい。
【0028】
本発明の(成分F)の配合量としては、特に制限はないが、(成分A)〜(成分E)の組成物重量に対して、0.01〜5重量%で使用されることが好ましい。0.01重量%未満では、クリームの白み効果が発揮できない場合があり、5重量%を越えるとクリームの粘度や泡立ちが低下する場合がある。クリームの白み増強と低温保存時の柔らかさの一層向上を効果的に発揮しうるという観点で、0.1〜3重量%が好ましく、0.2〜2重量%が好ましい。
【0029】
本発明の(成分A)〜(成分E)からなり特定の配合比とpHを有するクリーム状皮膚洗浄剤組成物には、更に(成分G)としてアルキルポリグルコシドを添加することにより、高温保存時の安定性を一層向上させることができる。アルキルポリグルコシドとしては、特に制限はないが、下記一般化学式(3)で表されるものがより好ましい。
【化3】

[式中、Rは炭素数8〜24のアルキル基;nはグルコースの平均重合モル数で1≦n≦3である。]
具体的には、カプリリルグルコシド、デシルグルコシド、ラウリルグルコシド、ミリスチルグルコシド、ウンデシルグルコシド、ヤシ油アルキルグルコシド、セテアリルグルコシド、イソステアリルグルコシド等が挙げられる。これらは1種類または2種以上を混合して使用しても構わない。特に、高温保存安定性の改善効果に優れるという観点から、ラウリルグルコシド、ヤシヤシ油アルキルグルコシドが好ましい。
【0030】
本発明の(成分G)の配合量としては、特に制限はないが、(成分A)〜(成分E)の組成物重量に対して、0.01〜5重量%で使用されることが好ましい。0.01重量%未満では、高温安定性の向上効果が十分でない場合があり、5重量%を越えるとクリームの泡立ちが低下する場合がある。効果を明確に発揮しうるという観点で、0.1〜3重量%が好ましく、0.2〜2重量%が好ましい。
【0031】
本発明のクリーム状洗浄剤組成物には、上記の成分に加えて、本発明の効果を阻害しない範囲で通常化粧品に使用される各種添加剤を添加することができる。添加剤は所望の特性に応じて当業者が適宜選択することが可能であり、その種類は特に限定されないが、例えば、化粧料用油性原料、シリコーン化合物、有機塩、加水分解たんぱく、アルコール類、抽出物、アミノ酸、ビタミン、酵素、抗炎症剤、殺菌剤、防腐剤、抗酸化剤、紫外線吸収剤、キレート剤、制汗剤、顔料、色素、酸化染料、パール化剤、湿潤剤、保湿剤、界面活性剤、無機粉体、有機粉体、水溶性高分子等が挙げられる。
【0032】
本発明のクリーム状洗浄剤組成物は、各種洗浄剤及び化粧料として使用することができる。具体的には、化粧石鹸、洗顔料(クリーム・ぺースト状、液・ジェル状、エアゾール使用など)、シャンプーなどの清浄用化粧料、ひげ剃り用クリーム(アフターシェービングクリーム、シェービングクリームなど)、歯磨きなどの口腔化粧料などが挙げられる。使用感が優れているという観点で、洗顔料、ひげそり用クリーム、口腔化粧料が好ましい。
【実施例】
【0033】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、これらの実施例により本発明は限定されるものではない。
【0034】
[評価方法]
以下、順次評価方法について説明する。
(形態)
組成物を、室温において、目視、および指で触れた感触により、以下のカテゴリーに分類した。判定は、カテゴリーのPを○、SまたはVを△、L(液体)またはSP(分離)を×とした。
P 白く、流動性がほとんどないが、指で押さえると容易に流れる
S 白く、流動性が全くない塊を呈し、指で押さえると形が崩れる
V チューブに充填可能な程度以上の粘度を有する、透明または白濁した液体
L(液体) チューブに充填可能な程度の粘度がない、透明または白濁した液体
SP(分離)液体部分と固体部分に分かれる、または状態の明らかに異なる2つ以上の相が存在する
【0035】
(白み)
組成物の白みについては、以下の判定基準に基づき、目視で判別した。
◎ 全体に白みが強く、ムラがなく、つやがある
○ 全体に白みがある
△ 白みが弱く透け感がある、またはわずかな着色がある
× 白みがない、透明、色ムラがある、強い着色がある のいずれか1つ以上に相当
【0036】
(柔らかさ)
手のひらに組成物を載せ、もう一方の指で伸ばし広げたとき、
4:非常に柔らかい
3:柔らかい
2:ふつう
1:やや柔らかくない
0:柔らかくない
という、5名のパネラーによる官能評価を行い、平均点が3.1以上の場合を◎、2.5〜3.0を○、2.0〜2.4を△、1.9以下を×とした。
【0037】
(柔らかさ(0℃))
組成物を0℃保存庫に7日間放置し、保存庫から取り出した直後の組成物を、手のひらに載せ、もう一方の指で伸ばし広げたとき、
4:非常に柔らかい
3:柔らかい
2:ふつう
1:やや柔らかくない
0:柔らかくない
という、5名のパネラーによる官能評価を行い、平均点が3.1以上の場合を◎、2.5〜3.0を○、2.0〜2.4を△、1.9以下を×とした。
【0038】
(なめらかさ)
手のひらに組成物を載せ、もう一方の指で伸ばし広げたとき、
4:非常になめらか
3:なめらか
2:ふつう
1:ややなめらかさが不足
0:なめらかさが不足 または 均一でない または ツブがある
という、5名のパネラーによる官能評価を行い、平均点が3.1以上の場合を◎、2.5〜3.0を○、2.0〜2.4を△、1.9以下を×とした。
【0039】
(きれ)
手のひらに組成物を載せ、もう一方の指でその一部を掬い上げたとき、
4:非常にきれがよい
3:きれがよい
2:ふつう
1:ややきれが悪く好ましくない
0:きれが悪く好ましくない、または、だれ落ちる
という、5名のパネラーによる官能評価を行い、平均点が3.1以上の場合を◎、2.5〜3.0を○、2.0〜2.4を△、1.9以下を×とした。
【0040】
(泡立ち)
手のひらに組成物0.5gを載せ、少量の水を加えてもう一方の手で混ぜながら30秒間泡立てたとき、泡立ちが
4:非常によい
3:よい
2:普通
1:やや不足
0:不足
という、5名のパネラーによる官能評価を行い、平均点が3.1以上の場合を◎、2.5〜3.0を○、2.0〜2.4を△、1.9以下を×とした。
【0041】
(すすぎ性)
両手で組成物0.5gを泡立て、35℃〜40℃の流水下ですすいだとき、すすぎが
4:非常に速い
3:速い
2:普通
1:やや遅い
0:遅い
という、5名のパネラーによる官能評価を行い、平均点が3.1以上の場合を◎、2.5〜3.0を○、2.0〜2.4を△、1.9以下を×とした。
【0042】
(臭い)
4:まったくない
3:ほとんどない
2:わずかな不快臭を感じる
1:はっきりした不快臭を感じる
0:強い不快臭を感じる
という、5名のパネラーによる官能評価を行い、平均点が3.1以上の場合を◎、2.5〜3.0を○、2.0〜2.4を△、1.9以下を×とした。
【0043】
(水とのなじみ)
手のひらに組成物を載せ、少量の水を加えてもう一方の手で混ぜたとき、組成物の形状がなくなるまでの時間を
4:非常に速い
3:やや速い
2:ふつう
1:時間がかかり、やや好ましくない
0:非常に時間がかかり、好ましくない
という、5名のパネラーによる官能評価を行い、採点表から換算される平均点が3.1以上の場合を◎、2.5〜3.0を○、2.0〜2.4を△、1.9以下を×とした。
【0044】
(泡がみ高さ)
真空乳化機(特殊機化工業製、T.K.アヂホモミクサー2M−03)の乳化釜に組成物150gを入れ、循環水温度85℃、組成物の温度65℃程度で加熱して完全に溶解させた。
パドル(撹拌羽根)の回転速度20rpm、カキトリの回転速度30rpmで撹拌しながら、10℃/10分の速度で循環水の温度を下げて冷却を開始した。組成物が白濁し始めたときから30分後に撹拌を停止し、乳化釜中の組成物の表面を平らにならした。釜の底面から組成物の表面までの高さを定規で測定し、泡がみ高さとした。
水150gを乳化釜に入れたときの高さ3.5cmを基準として、組成物高さ3.4cm以下を◎、3.5cm以上5.2cmを○、組成物高さ5.3cm以上6.9cmを△、組成物高さ7.0cm以上を×とした。
【0045】
(硬さ)
内径3.5cm、高さ5.3cmのガラス瓶に溶解させた組成物50gを入れ、25℃の部屋に一昼夜置いた。レオメーター(不動工業製、NRM-2010J-CW)で、直径1.5cmのステンレス柱を6cm/分の速度で30秒間進入させたとき、計測された最も大きな力を硬さとした。硬さ50g未満を◎、50g〜100gを○、100〜500gを△、500g以上を×とした。
【0046】
(高温安定性)
高温安定性については、これらの組成物を口径5mmのチューブ容器に充填して45℃保存庫に7日間放置し、保存庫から取り出した直後の組成物について、以下の判定基準に基づき、目視で判別した。
◎ チューブの口を下にしても組成物が流れ落ちず、手のひらの上では流動性がほとんどない
○ チューブの口を下にしても組成物が流れ落ちないが、手のひらの上ではごくゆっくり流れる
△ チューブの口を下にしても組成物が流れ落ちないが、手のひらの上では流れる
× チューブの口を下にすると組成物が流れ落ちる
【0047】
[実施例1〜27、比較例1〜54]
下表1に示す組成の洗浄剤組成物(実施例1〜27、比較例1〜54)を調製し、以下の手順で試験を行った。なお、表記載の各配合成分の量(表中の数値)は、組成物全体を100としたときの重量分率(%)である。また、クエン酸一水和物は、組成物のpHを調整するための必要量をそれぞれ用いた。
【0048】
〔手順〕
1.一次評価〜組成物の形態の評価
(形態)を評価した。
2.二次評価〜組成物のクリームとしての品質の評価
一次評価における判定が○または△となった組成物について、(白み)、(柔らかさ)、(なめらかさ)、(きれ)、(柔らかさ(0℃))を評価した。
3.三次評価
二次評価で×が2つ以上の組成物を除き、(泡立ち)、(すすぎ性)を評価した。
【0049】
【表1−1】

【表1−2】

【表1−3】

【表1−4】

表1からわかるように、実施例の洗浄剤組成物はクリーム状の形態を有し、しかもそのクリームは白みが強く、柔らかくなめらかできれがよく、低温でも硬くなることがなく、泡立ちおよびすすぎ性に優れるものである。
【0050】
[実施例28〜29、比較例55〜64]
下表2に示す組成の洗浄剤組成物(実施例28、29、比較例55〜64)を調製し、以下の手順で試験を行った。なお、表記載の各配合成分の量(表中の数値)は、組成物全体を100としたときの重量分率(%)である。
【0051】
〔手順〕
1.一次評価〜組成物の形態の評価
(形態)を評価した。
2.二次評価〜組成物のクリームとしての品質の評価
一次評価における判定が○または△となった組成物について(臭い)、(白み)、(なめらかさ)、(きれ)、(水とのなじみ)を評価した。
3.三次評価
二次評価で×が2つ以上の組成物を除き、(泡立ち)、(すすぎ性)を評価した。
4.四次評価〜組成物の調製の容易さと柔らかさ
一次評価でP評価のもののみ、(泡がみ高さ)、(硬さ)、(柔らかさ(0℃))を評価した。
【0052】
【表2】

表2からわかるように、A成分に無水ケイ酸を配合する組成物では、無水ケイ酸が沈降することによる固液分離が生じてしまい(比較例61、62(引用文献5相当))、A成分類似のアシルサルコシンにB成分、C成分、D成分、E成分を配合した組成物は、粘性が強すぎて、白み、きれ、水とのなじみのいずれもが不十分であった(比較例63,64(引用文献6相当))。また、A成分にD成分(無機塩)を配合する組成物ではたとえ粘性組成物ができても、白み、水とのなじみは不十分であり(比較例55、56(引用文献1相当))、A成分に多価アルコールを配合する組成物では泡がみが高い上、著しく硬くなってしまった(比較例57(引用文献2相当)、比較例58(引用文献3相当))。A成分にC成分(ベタイン系両性界面活性剤)を配合する組成物では泡がみが高い上、なめらかさが不十分となった(比較例59(引用文献3相当)、比較例60(引用文献4相当))。このように、いずれの引用文献をトレースしてもクリーム状とするには程遠いものであり、一方、本発明の組成物は白みが強く、柔らかく、なめらかで、きれがよく、低温でも硬くなることがないクリーム状を呈し、製造時に泡がみしにくく、しかも泡立ちおよびすすぎ性に優れるものであることが分かった(実施例28,29)。
【0053】
[実施例30〜32、比較例65〜76]
下表3に示す組成の洗浄剤組成物(実施例30〜32、比較例65〜76)を調製し、以下の手順で試験を行った。なお、表記載の各配合成分の量(表中の数値)は、組成物全体を100としたときの重量分率(%)である。た、クエン酸一水和物は、組成物のpHを調整するための必要量をそれぞれ用いた。
【0054】
〔手順〕
1.一次評価〜組成物の形態の評価
(形態)を評価した。
2.二次評価〜組成物のクリームとしての品質の評価
一次評価における判定が○または△となった組成物について、(白み)、(柔らかさ)、(なめらかさ)、(きれ)、(水とのなじみ)を評価した。
【0055】
【表3】

表3からわかるように、実施例の洗浄剤組成物は白みが強く、水とのなじみがよいクリーム状を呈するものである。
【0056】
[実施例33〜35]
下表4に示す組成の洗浄剤組成物(実施例33〜36)を調製し、(白み)、(柔らかさ)、(なめらかさ)、(高温安定性)の評価を行った。なお、表記載の各配合成分の量(表中の数値)は、組成物全体を100としたときの重量分率(%)である。また、クエン酸一水和物は、組成物のpHを調整するための必要量をそれぞれ用いた。
【0057】
【表4】

表4からわかるように、実施例33の洗浄剤組成物にさらに脂肪酸を組み合わせると、白みとなめらかさが増し(実施例34)、アルキルポリグルコシドを加えることにより、高温安定性の驚くべき改良がなされ(実施例35)、両者を組み合わせるクリームの柔らかさなめらかさなどに悪影響することなく高温安定性の驚くべき改良がなされることがわかった(実施例36)。
【産業上の利用可能性】
【0058】
実質的に多価アルコールを含有させずに、pH4.0〜6.0の弱酸性で、柔らかくなめらかで白みの強い外観を有し、泡立ち、すすぎ性、乾燥後の肌のしっとり感、さっぱり感といった使用時の感触に優れ、かつ低温で硬くならず、通常の攪拌機を使用しても調製の容易なクリーム状皮膚洗浄剤組成物、各種洗浄剤及び化粧料を提供できるようになったことは極めて有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
N−長鎖アシルグリシン及び/又はその塩(成分A)、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩(成分B)、ベタイン型両性界面活性剤(成分C)、無機塩及び/又はピロリドンカルボン酸塩(成分D)、水(成分E)を含有し、[(成分A)(成分B)(成分C)の合計重量]が組成物全重量に対して12〜30重量%であり、(成分A)重量/[(成分A)(成分B)(成分C)合計重量]が3/8〜4/5であり、(成分B)重量/(成分C)重量]が9/1〜1/1であり、pHが4.0〜6.0であることを特徴とするクリーム状皮膚洗浄剤組成物。
【請求項2】
更に高級脂肪酸(成分F)及び/またはアルキルポリグルコシド(成分G)を0.01〜5.0重量%含有することを特徴とする、請求項1に記載のクリーム状皮膚洗浄剤組成物。

【公開番号】特開2007−269662(P2007−269662A)
【公開日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−95878(P2006−95878)
【出願日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【出願人】(000000066)味の素株式会社 (887)
【Fターム(参考)】