説明

クレーン誤操作防止装置

【課題】 指示した動作内容を動作が始まる前に確認でき、誤操作に対し早期に対応し、事故の発生を抑制し得るクレーンを提供する。
【解決手段】 動作を行う本体3、トロリ5およびフックブロック7と、これらの作動を制御する制御盤37と、それぞれ別個の動作を指示する複数の押釦を有し、該押釦を作動して制御盤37へ動作指示信号DSを送信するペンダントスイッチ43と、を備えるクレーン1であって、制御盤37およびペンダントスイッチ43の間に誤操作防止制御盤39が介装され、誤操作防止制御盤39は、動作指示信号DSの動作内容を継続時間Tkの間、音声による音声通報を行い、該音声通報の終了後に動作指示信号DSを制御盤37へ伝送するように構成されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クレーン誤操作防止装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
クレーンの操作において、たとえば、巻上用ワイヤロープを巻き過ぎるとフックブロックがトロリ、シーブ、ジブ等に衝突し、これらの破損、ワイヤロープの切断等を招く恐れがある。また、これによる吊り荷(製品)の落下に伴って、製品が毀損されるだけでなく、人的被害が発生する恐れがある。
このため、クレーンでは、種々の動作限界を設け、たとえば、リミットスイッチ等でその動作限界を超える場合に、警報を発し、あるいは、運転を停止させる安全装置が用いられている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
また、このような状況に至らないようにするためには、作業員が正確な操作を行うことも重要である。
このため、作業員は指差確認を確実に行うことが求められているが、定例作業化し指差確認が確実に実施されていると言えないのが実状である。
作業員が誤操作すると、たとえば、前方に移動させる指示を行ったつもりで製品の後方に立っていると、実際は後方に移動させる指示を行っていた場合、製品が後方に移動して怪我をする恐れがある。
操作すなわち動作指示の間違いを防止する試みとしては、たとえば、指示を行うボタンの色を変えることが行われている。
【0004】
【特許文献1】特許第3338653号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、従来のものでは、誤操作を行うと、その指示によって動作が開始されるので、間違いを修正する等の対応が遅れ、事故が発生する恐れが残るという問題があった。
特に、ペンダント式クレーンを使用する場合は、一人作業が多く、しかも、吊り荷、ワイヤロープ等に手を添えてのクレーン操作が多いので、ペンダントスイッチの確認が疎かになる。このため、誤操作し易くなるので、クレーンの誤動作によるヒヤリ災害や、吊り荷の毀損が発生し易いという問題があった。
【0006】
本発明は、上記の事情に鑑み、指示した動作内容を動作が始まる前に確認でき、誤操作に対し早期に対応し、事故の発生を抑制し得るクレーンを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題を解決するため、以下の手段を採用した。
本発明によるクレーンは、動作を行う動作部材と、動作部材の作動を制御する主制御部と、それぞれ別個の動作を指示する複数の指示部を有し、該指示部を作動して前記主制御部へ動作指示信号を送信する遠隔操作部材と、を備えるクレーンであって、前記主制御部および前記遠隔操作部材の間に副制御部が介装され、該副制御部は、前記動作指示信号の動作内容を第一の所定時間の間、音声による音声通報を行い、該音声通報の終了後に前記動作指示信号を前記主制御部へ伝送するように構成されていることを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、作業員がクレーンを操作しようとして遠隔操作部材の指示部で動作を指示すると、その動作指示信号が副制御部に送られる。副制御部はこの動作指示信号の動作内容を確認し、それに対応した内容、たとえば、「巻上げを開始します。」をスピーカ等の音発生部材を介して音声によって通報する。
そして、第一の所定時間が経過すると、副制御部は音声通報を停止し、動作指示信号を主制御部へ伝送する。これにより、主制御部は動作指示信号に対応して動作部材を作動させる。
【0009】
このように、主制御部が動作指示信号によって動作部材を作動させる前に、指示した動作の内容を音声で通報されるので、作業員はその時点で指示した動作内容を確認することができる。
これにより、指示に誤り、すなわち、誤操作があった場合、遠隔操作部材からの動作指示信号を停止すると、動作指示信号が主制御部に伝送されるのを停止することができるので、クレーンが誤動作されることを防止することができる。
したがって、クレーンを確実に予定通りに操作することができるので、ヒヤリ災害や、吊り荷の毀損等の発生を抑制することができる。
【0010】
なお、第一の所定時間は、たとえば、1〜5秒、好ましくは2〜3秒とされる。1秒以下では音声の内容が時間的に制限され、確認が不十分となる恐れがある。また、5秒を越えると、動作が始まるまでに時間が掛かりすぎるため、作業効率が低下する恐れがある。2〜3秒は、音声の内容が十分な確認を行えるものとなるし、また、指差確認における、いわゆる3秒確認に略相当するので作業効率が低下する恐れもない。
【0011】
また、本発明によるクレーンでは、前記副制御部は、前記指示部からの動作指示信号が終了した時点から第二の所定時間が経過するまで、前記指示部から送信される別の動作指示信号が前記音声通報を行なわずに前記主制御部へ伝送されるように構成されていることを特徴とする。
【0012】
このように、副制御部は、指示部からの動作指示信号が終了した時点から第二の所定時間が経過するまで、指示部から送信される別の動作指示信号が音声通報を行なわずに主制御部へ伝送されるように構成されているので、この別の動作指示信号は音声通報の時間を待たずに主制御部に伝送されることになる。すなわち、この別の動作信号を指示したと同時に動作部材の動作が開始されることとなる。
このように、指示部からの動作指示信号が終了した時点から第二の所定時間が経過するまでは、指示部からの動作信号に基づいて直ぐに動作が行われるので、たとえば、インチングおよび逆ノッチが従来と略同様に行われることができる。
【0013】
この場合、インチングの最初の動作指示信号によって音声通報が始まり、その途中で動作指示信号を終了しても音声通報は継続しているので、インチングの動作方向を確認することができる。
また、音声通報が継続している間に、指示部からの次の動作指示信号を送信すれば確実にインチング動作に入ることができる。
なお、第二の所定時間は、たとえば、1〜7秒、好ましくは3〜5秒とされる。1秒以下では時間が短すぎて、インチングに入れない恐れがある。また、7秒を越えると、インチングを行わずに次の動作に入る際、音声通報がない状態で動作されることが多く発生する恐れがあるので、誤操作防止の意義が低下する恐れがある。3〜5秒は、十分に余裕を持ってインチングに入ることができるし、インチングを行わず、次ぎの動作に移る場合の時間として長すぎることはない。
【0014】
また、本発明によるクレーンでは、前記副制御部は、前記音声通報が終了する前に前記指示部からの動作指示信号が終了した場合、前記音声通報が中断されるように構成されていることを特徴とする。
【0015】
このように、副制御部は、音声通報が終了する前に指示部からの動作指示信号が終了した場合、音声通報が中断されるように構成されているので、たとえば、インチングおよび逆ノッチの動作に入ったことが明確にわかる。
【0016】
また、本発明によるクレーンでは、床の上方に略水平方向に延在するように配置された長尺部材であり、その長手方向に交差する方向に移動可能に支持されたガーダ部材と、該ガーダ部材に、その長手方向に沿って移動可能に支持されたトロリと、該トロリに上下方向に移動可能に取り付けられた荷役部材と、前記ガーダ部材を移動させる走行駆動装置と、前記トロリを前記ガーダ部材に沿って移動させる横行駆動装置と、前記荷役部材を作動して巻上げあるいは巻下げする巻上駆動装置と、を備え、前記主制御部は、前記トロリへ取り付けられ、前記走行駆動装置、前記横行駆動装置および前記巻上駆動装置の作動を制御し、前記動作部材としての前記ガーダ部材、前記トロリおよび前記荷役部材を作動する機能を備え、前記遠隔操作部材として前記トロリから垂下されたペンダントスイッチが用いられ、前記副制御部は前記トロリへ取り付けられ、前記音声通報を行なうスピーカは、前記トロリに取付けられていることを特徴とする。
【0017】
本発明によれば、クレーンは、走行駆動装置がガーダ部材を移動させ、横行駆動装置がトロリをガーダ部材に沿って移動させることによって荷役部材をガーダ部材の走行範囲内の任意の位置に移動させることができる。そして、それらの位置で、巻上駆動装置が荷役装置を巻上げあるいは巻下げすることによって荷物を適宜位置に移動させることができる。
ペンダントスイッチの指示部で動作を指示する、具体的には押釦を押すと、押された押釦の動作指示信号が副制御部に送られる。その副制御部はこの動作指示信号の動作内容を確認し、それに対応した内容、たとえば、「巻上げを開始します。」をスピーカから音声によって通報する。
そして、第一の所定時間が経過すると、副制御部は音声通報を停止し、動作指示信号を主制御部へ伝送する。これにより、主制御部は動作指示信号に対応してガーダ部材、トロリあるいは荷役部材を作動させる。
【0018】
このように、主制御部が動作指示信号によってガーダ部材、トロリあるいは荷役部材を作動させる前に、指示した動作の内容を音声で通報されるので、作業員はその時点で指示した動作内容を確認することができる。
これにより、指示に誤り、すなわち、誤操作があった場合、ペンダントスイッチからの動作指示信号を停止すると、動作指示信号が主制御部に伝送されるのを停止することができるので、クレーンが誤動作されることを防止することができる。
したがって、クレーンを確実に予定通りに操作することができるので、ヒヤリ災害や、吊り荷の毀損や等の発生を抑制することができる。
【0019】
また、上記発明では、前記スピーカは、前記ペンダントスイッチに取り付けられていることが好ましい。
このようにすると、スピーカがペンダントスイッチを操作する作業員の近くに設置されることになるので、音声による確認が一層確実に行われることができるとともに周囲の作業者へは必要としない音声情報を抑制することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、主制御部が動作指示信号によって動作部材を作動させる前に、指示した動作の内容を音声で通報されるので、作業員はその時点で指示した動作内容を確認することができる。
これにより、指示に誤りがあった場合、遠隔操作部材からの動作指示信号を停止すると、動作指示信号が主制御部に伝送されるのを停止することができるので、クレーンが誤動作されることを防止することができる。
したがって、クレーンを確実に予定通りに操作することができるので、ヒヤリ災害や、吊り荷の毀損等の発生を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の一実施態様にかかるクレーン1について、図1〜図4に基づいて説明する。クレーン1は、比較的軽量な5〜30トンの荷物を取り扱う、いわゆる、ペンダント式である。
図1は、クレーン1の全体概略構成を示すブロック図である。
クレーン1には、クレーン1の構造部分を構成する本体(動作部材、ガーダ部材)3と、トロリ(動作部材)5と、荷役作業を行うフックブロック(動作部材、荷役部材)7と、が備えられている。
【0022】
本体3は、I字型鋼で構成される2枚のガーダ9と、ガーダ9の両端部を固定して支持する2個のサドル11と、で主として構成されている。
2枚のガーダ9は、建屋13の幅方向に延在し、面部が上下方向に沿うように、走行方向(図1の紙面に垂直な方向)に間隔を開けて配置されている。各ガーダ9の両端部はサドル11の側面に固定して取付けられている。
【0023】
サドル11は、鋼製の箱型構造をし、走行方向が長くなるように配置されている。サドルには、走行方向に間隔を開けて2個の車輪19が回動可能に取付けられている。
建屋13には走行方向に沿って車輪19が係合するレール15が設置されている。
一方のガーダ9に沿って車輪19を連結する駆動軸17が配置されている。このガーダ9には、駆動軸17を駆動する減速機付きの走行モータ(走行駆動装置)21が取り付けられている。
各ガーダ9の上面にはレール23が略全長に亘って設置されている。
【0024】
トロリ5には、トロリ本体25と、トロリ本体25の四隅に回転可能に支持されレール23と係合している車輪27と、車輪27を回転駆動する減速機付きの横行モータ(横行駆動装置)29と、フックブロック7を巻上げ巻き戻すロープ33を処理するドラム31と、ドラム31を回転駆動する減速機付きのドラムモータ(巻上駆動装置)35と、クレーン1の動作を制御する制御盤(主制御部)37と、誤操作防止制御盤(副制御部)39と、スピーカ41とが備えられている。
スピーカ41は、作業員へ音声が十分に届くようにトロリ本体25の下面に下方を向くように取付けられている。
【0025】
トロリ本体25から垂下したケーブル45の下端には、ペンダントスイッチ(遠隔操作部材)43が取り付けられている。
ペンダントスイッチ43には、巻上押釦47と、巻下押釦49と、東行押釦51と、西行押釦53と、南行押釦55と、北行押釦57とが備えられている。これらの押釦は、いずれも押し込むことによって所定の動作指示信号DSを発生し、離すと動作指示信号DSが発せられなくなる。
巻上押釦47および巻下押釦49は、ドラムモータ35の動作を制御する動作指示信号DSを発生するものである。巻上押釦47はフックブロック7を上昇させる動作指示信号DSを、巻下押釦49は下降させる動作指示信号DSを発する。
【0026】
東行押釦51および西行押釦53は、走行モータ21の動作を制御する動作指示信号DSを発生するものである。東行押釦51は本体3を走行方向の一方へ移動させる動作指示信号DSを、西行押釦53は他方へ移動させる動作指示信号DSを発する。
南行押釦55および北行押釦57は、横行モータ29の動作を制御する動作指示信号DSを発生するものである。南行押釦55はトロリ5を横行方向の一方へ移動させる動作指示信号DSを、北行押釦57は他方へ移動させる動作指示信号DSを発する。
【0027】
制御盤37には、巻上押釦47および巻下押釦49の動作指示信号DSを受けてドラムモータ35の動作を制御する巻上制御部59と、南行押釦55および北行押釦57の動作指示信号DSを受けて横行モータ29の動作を制御する横行制御部61と、東行押釦51および西行押釦53の動作指示信号DSを受けて走行モータ21の動作を制御する走行制御部63と、が備えられている。
【0028】
誤操作防止制御盤39は、PLC(Programmable Logic Controler)で、入出力部、記憶部、計時部および処理部を備えている。
入出力部は、ペンダントスイッチ43、スピーカ41および制御盤37との間の信号授受を行うものである。
記憶部は、音声データ等の情報を格納するものである。記憶部には、音声通報の継続時間(第一の所定時間)Tkおよび動作指示信号DSが終了した後で別の動作指示信号DSを許容(音声通報を行わずに動作指示信号DSを制御盤37へ伝送する)インチング時間(第二の所定時間)Tiをそれぞれ複数記憶している。
【0029】
これは、巻上制御部59、横行制御部61および走行制御部63でそれぞれ最適な時間を用いるようにするためである。もちろん、継続時間Tkおよびインチング時間Tiはそれぞれ1個であってもよい。
複数の継続時間Tkおよびインチング時間Tiは、たとえば、作業員の判断によってペンダントスイッチ43から選択できるようにしてもよい。
【0030】
継続時間Tkは、音声データの長さで規定されるので、時間のカウンタは不要であるが、音声データの長さによっては時間をカウントするようにしてもよい。
継続時間Tkは、たとえば、1〜5秒、好ましくは2〜3秒とされる。1秒以下では音声の内容が時間的に制限され、確認が不十分となる恐れがある。また、5秒を越えると、動作が始まるまでに時間が掛かりすぎるため、作業効率が低下する恐れがある。2〜3秒は、音声の内容が十分な確認を行えるものとなるし、また、指差確認における、いわゆる3秒確認に略相当するので作業効率が低下する恐れもない。
【0031】
インチング時間Tiは、一つの動作指示信号DSが切れた時に計時部のインチングタイマが計時し始める。インチング時間Tiは、たとえば、1〜7秒、好ましくは3〜5秒とされる。1秒以下では時間が短すぎて、インチングに入れない恐れがある。また、7秒を越える設定では、作業者がインチングを行わず一つの動作を終了し、しばらく後に次の動作を行うつもりで操作しても、音声が流れず即時動作する現象が多く発生すると考えられ、本発明の意義が薄れることとなる。3〜5秒は、十分に余裕を持ってインチングに入ることができるし、インチングを行わず、次の動作に移る場合の時間として長すぎることもない。
【0032】
インチングタイマは、巻上用、横行用および走行用にそれぞれ専用のものを設けている。たとえば、巻上終了後で巻上用のインチングタイマがカウント中に東行押釦51を押した場合、走行用のインチングタイマは作動していないので、東行のアナウンスが確実に行われる。そのアナウンス終了後に東行することとなるので、誤動作の防止が確実に行える。
なお、インチングタイマは、巻上用、横行用および走行用に共通したものを設けるようにしてもよい。
【0033】
処理部は、ペンダントスイッチ43からの動作指示信号DSの種類を判断し、記憶部からその内容に沿った音声信号を選択し、スピーカ41へ伝送する。また、スピーカ41のアナウンスが終了したら、ペンダントスイッチ43からの動作指示信号DSを制御盤37へ伝送する機能を有する。
制御盤37はこれ以外にもクレーン1の諸制御を行なう機能を有している。
【0034】
以上説明した本実施形態にかかるクレーン1の動作について説明する。
作業員はペンダントスイッチ43によってクレーン1を操作する。すなわち、ペンダントスイッチ43の巻上押釦47、巻下押釦49、東行押釦51、西行押釦53、南行押釦55および北行押釦57のうち、選択した押釦を押し込むことでクレーン1に所定の動作をさせることができる。
【0035】
作業員がペンダントスイッチ43の選択した押釦を押し込んだ時の動作について図3に基づいて説明する。
押釦が押されると、その状態が継続されている間、ペンダントスイッチ43から動作指示信号DSが誤操作防止制御盤39に伝送される。
誤操作防止制御盤39では、処理部がこの動作指示信号DSの動作内容を判定する。そして、処理部は判定した動作内容に対応する音声信号を記憶部から取り出し、スピーカ41へ伝送する。
【0036】
スピーカ41は、この伝送された音声信号に基づいて音声の出力、すなわち、アナウンスASを行う。
アナウンスASは、たとえば、巻上押釦47からの動作指示信号DSであれば「巻上げを開始します。」等のこれから行なう動作を通報する。
誤操作防止制御盤39の処理部は、アナウンスASが始まって継続時間Tkが経過すると、音声信号の発信を停止する。同時に、処理部はペンダントスイッチ43からの動作指示信号DSを制御盤37の所定の動作(巻上、横行、走行)制御部へ伝送する。
動作指示信号DSが伝送された制御盤37は指示させた動作内容に沿ってクレーン1を動作させる。
【0037】
このとき、巻上押釦47および巻下押釦49からの動作指示信号DSは、巻上制御部59へ伝送される。巻上制御部59はドラムモータ35の動作を制御し、ドラム31の回転方向によってフックブロック7を上昇させ(巻上げ)たり、下降させ(巻下げ)たりする。
南行押釦55および北行押釦57からの動作指示信号DSは、横行制御部61へ伝送される。横行制御部61は、横行モータ29の動作を制御し、車輪27の回転方向によってトロリを横行方向の一方(南行)へ、あるいは、他方(北行)へ移動させる。
【0038】
東行押釦51および西行押釦53からの動作指示信号DSは、走行制御部63へ伝送される。走行制御部63は、走行モータ21の動作を制御し、駆動軸17(車輪19)の回転方向によって本体3を走行方向の一方(東行)へ、あるいは、他方(西行)へ移動させる。
これらの動作を組み合わせることによって、クレーン1は所定の荷物を所定の場所から所定の場所へ移動させることができる。
【0039】
押釦の押し込みを解除する(離す)と、動作指示信号DSがなくなるので、クレーン1の選択された動作が終了する。
このとき、誤操作防止制御盤39の処理部は、計時部のインチングタイマを作動させ、インチング時間Tiをカウントする。
【0040】
このように、巻上制御部59、横行制御部61あるいは走行制御部63が動作指示信号DSによってフックブロック7、トロリ5あるいは本体3を作動させる前に、スピーカ41が指示した動作の内容を音声で通報するので、作業員はその時点で指示した動作内容を確認することができる。
これにより、指示に誤り、すなわち、誤操作があった場合、ペンダントスイッチ43からの動作指示信号DSを停止すると、動作指示信号DSが巻上制御部59、横行制御部61あるいは走行制御部63に伝送されるのを停止することができるので、クレーン1が誤動作されることを防止することができる。
したがって、クレーン1を確実に想定通りに操作することができるので、ヒヤリ災害や、吊り荷の毀損等の発生を抑制することができる。
【0041】
なお、本実施形態では、スピーカ41をトロリ本体25の下面に設置しているが、これに限定されるものではなく適宜位置に設置してもよい。
たとえば、ペンダントスイッチ43にスピーカ41を設置すると、スピーカ41がペンダントスイッチ43を操作する作業員の近くに設置されることになるので、音声による確認が一層確実に行われることができる。
【0042】
次に、インチング動作INおよび逆ノッチ動作RNについて図4に基づいて説明する。ここでは、巻下動作を例に説明する。
インチング動作INおよび逆ノッチ動作RNは、たとえば、ある方向に移動しているものを所定の位置に停止する場合の行われるものである。すなわち、ある方向へ移動しているものの動作の微調整を行うための寸動運動がインチング動作INであり、停止を確実にするために逆方向へ移動させようとするものが逆ノッチ動作RNである。
【0043】
巻下押釦49を押し付けてフックブロック7を下方へ移動させ、所定の位置が近づいた時点で巻下押釦49を離し、巻下動作への動力供給を停止する。
巻下押釦49からの動作指示信号DS0が終了すると、インチングタイマが作動し、インチング時間Tiがカウントされる。図4は、インチングタイマのカウントがインチング時間Tiを経過してからインチング動作INに入った状態を示している。
【0044】
インチング動作INでは、間隔を開けて複数回にわたり、巻下押釦49の短時間の押し込みを繰り返す。
この場合、最初の巻下押釦49の押し込みは、先のインチング時間Tiが過ぎた後であるので、巻下押釦49からの動作指示信号DS1によって誤操作防止制御盤39は音声信号を発生し、スピーカ41が音声をアナウンスASする。
このアナウンスASは継続時間Tk行われる。この継続時間Tk内に最初の巻下押釦49の押し込みが解除されると、その時点からインチング時間Tiがカウントされる。
【0045】
インチング時間Tiのカウント中には、誤操作防止制御盤39はペンダントスイッチ43からの動作指示信号DSを直接制御盤37へ伝送するので、音声のアナウンスASを待たずに動作させることができる。
すなわち、この間に次の巻下押釦49の押し込みを行い、動作指示信号DS2を発信すると、それが巻上制御部に伝送され、巻下動作を行なうことができる。
この動作指示信号DS2が終了すると、その時点からインチング時間Tiがカウントされるが、そのカウント中に動作指示信号DS3を発信すると、それが巻上制御部に伝送され、巻下動作を行なうことができる。
【0046】
これを繰り返すことによって、インチング動作INを誤操作防止制御盤39がない状態と同様な感覚で行うことができる。
このとき、動作指示信号DS1が、動作指示信号DS0の終了後のインチング時間Tiのカウント中に発信されたとしたら、動作指示信号DS1からインチング動作に入ることができる。
【0047】
このように、インチング時間Tiがカウント中であるかないかは明確には、把握できないので、インチング時間Tiが短時間に設定されている場合には、たとえば、動作指示信号DS2が動作指示信号DS1の終了に伴うインチング時間Tiがカウント中に発信されない事態が起こる。このようになると、動作指示信号DS2によって再度アナウンスASが行われるので、インチング動作INにスムーズに入ることができない。
【0048】
継続時間Tkは一般にインチング時間Tiよりも短く設定されているので、動作指示信号DS1によるアナウンス中に巻下押釦49を押し込み、動作指示信号DS2を発信すれば、確実にインチング動作INに入ることができる。
また、このアナウンスによってインチング動作INの方向を確認することができる。
【0049】
なお、本実施形態では、動作指示信号DSが継続時間Tk内に終了してもアナウンスASは継続されるようにされているが、動作指示信号DSが終了したらアナウンスASを中断させるようにしてもよい。
このようにすると、アナウンスASが中断されることによって、インチング動作INに入ったことが明確にわかるので、次の巻下押釦49の押し込みを確実に行うことができる。
【0050】
インチング動作INの後、ブレーキの意味で逆ノッチ動作RNを行う。すなわち、巻下押釦49の動作指示信号DS3が終了した後のインチング時間Tiがカウント中に巻上押釦47を押し込み、巻上の動作指示信号DSを発信する。
このように、インチング時間Tiがカウント中に逆ノッチ動作RNを行うことで、逆ノッチ動作RNを誤操作防止制御盤39がない状態と同様な感覚で行うことができる。
【0051】
また、本実施形態では、誤操作防止制御盤39が制御盤37とは独立し、制御盤37とペンダントスイッチ43との間に介在されるように取付けられている。すなわち、誤操作防止制御盤39とスピーカ41を追加し、ペンダントスイッチ43からの制御盤37への配線を誤操作防止制御盤39を経由するようにするだけで、制御盤37の構成を変更することなくクレーン1の誤操作防止を行うことができるので、既存のクレーン1を簡単に改造して、誤操作防止機能を持ったクレーン1とすることができる。
【0052】
なお、本発明は本実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において適宜変更することができる。
たとえば、本実施形態はペンダント式の天井を走行するクレーン1に適用しているが、マントロリ式、ジブクレーン等適宜なクレーンに適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の一実施形態にかかるクレーンの全体概略構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の一実施形態にかかるペンダントスイッチ、誤操作防止制御盤および制御盤の概略構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の一実施形態にかかるクレーンの動作を示すタイムチャートである。
【図4】本発明の一実施形態にかかるクレーンのインチング動作および逆ノッチ動作を示すタイムチャートである。
【符号の説明】
【0054】
1 クレーン
3 本体
5 トロリ
7 フックブロック
21 走行モータ
29 横行モータ
35 ドラムモータ
37 制御盤
39 誤操作防止制御盤
41 スピーカ
43 ペンダントスイッチ
47 巻上押釦
49 巻下押釦
51 東行押釦
53 西行押釦
55 南行押釦
57 北行押釦
59 巻上制御部
61 横行制御部
63 走行制御部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
動作を行う動作部材と、
動作部材の作動を制御する主制御部と、
それぞれ別個の動作を指示する複数の指示部を有し、該指示部を作動して前記主制御部へ動作指示信号を送信する遠隔操作部材と、を備えるクレーンであって、
前記主制御部および前記遠隔操作部材の間に副制御部が介装され、
該副制御部は、前記動作指示信号の動作内容を第一の所定時間の間、音声による音声通報を行い、該音声通報の終了後に前記動作指示信号を前記主制御部へ伝送するように構成されていることを特徴とするクレーン。
【請求項2】
前記副制御部は、前記指示部からの動作指示信号が終了した時点から第二の所定時間が経過するまで、前記指示部から送信される別の動作指示信号が前記音声通報を行なわずに前記主制御部へ伝送されるように構成されていることを特徴とする請求項1に記載されたクレーン。
【請求項3】
前記副制御部は、前記音声通報が終了する前に前記指示部からの動作指示信号が終了した場合、前記音声通報が中断されるように構成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載されたクレーン。
【請求項4】
床の上方に略水平方向に延在するように配置された長尺部材であり、その長手方向に交差する方向に移動可能に支持されたガーダ部材と、
該ガーダ部材に、その長手方向に沿って移動可能に支持されたトロリと、
該トロリに上下方向に移動可能に取り付けられた荷役部材と、
前記ガーダ部材を移動させる走行駆動装置と、
前記トロリを前記ガーダ部材に沿って移動させる横行駆動装置と、
前記荷役部材を作動して巻上げあるいは巻下げする巻上駆動装置と、を備え、
前記主制御部は、前記トロリへ取り付けられ、前記走行駆動装置、前記横行駆動装置および前記巻上駆動装置の作動を制御し、前記動作部材としての前記ガーダ部材、前記トロリおよび前記荷役部材を作動する機能を備え、
前記遠隔操作部材として前記トロリから垂下されたペンダントスイッチが用いられ、
前記副制御部は前記トロリへ取り付けられ、
前記音声通報を行なうスピーカは、前記トロリに取付けられていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載されたクレーン。
【請求項5】
前記スピーカは、前記ペンダントスイッチに取り付けられていることを特徴とする請求項4に記載されたクレーン。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−62156(P2009−62156A)
【公開日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−232085(P2007−232085)
【出願日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】