説明

グラウト材組成物及びそれを用いてなるグラウト材

【課題】従来のセメント系グラウト材と比較して、同等以上の流動性を有し、材料分離現象が防止でき、且つ補修後の断面の温度応力や乾燥収縮によるひび割れを抑制又は防止できるグラウト材を提供する。
【解決手段】セメント、ブレーン方法で測定した比表面積(粉末度)が5000cm2/g以上の分級フライアッシュ及びカルシウムサルフォアルミネート系膨脹材を含むセメント系無機粉体100重量部に対し、乾燥収縮低減剤1〜5重量部、細骨材120〜200重量部を添加してなることを特徴とするグラウト材組成物及びそれを用いてなるグラウト材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グラウト材組成物及びそれを用いてなるグラウト材に関する。グラウト材は、例えば中性化、塩害、アルカリ骨材反応、凍害等により劣化したコンクリートを除去した後、当初の断面まで修復又は断面を増厚するための修復材として有用である。
【背景技術】
【0002】
従来、劣化したコンクリート断面の修復材としては、補修されるコンクリートの力学的性質にできる限り類似しているものを用いることが好ましく、セメント系材料、中でも特にセメント系グラウト材が頻繁に使用されている。
【0003】
しかしながら、セメント系グラウト材は、充分な型枠充填性、強度等を有する点で優れた修復材である一方、種々の原因により、修復後の断面にひび割れが発生しやすいといった欠点を有する。修復後の断面にひび割れが発生すると、そのひび割れから水、炭酸ガス、塩化物イオン等の劣化因子が浸入し、結果的に修復後の断面が徐々に劣化するといった二次的な問題が生じる。
【0004】
ところで、修復後の断面にひび割れを引き起こす種々の原因としては、セメント系グラウト材の単位体積中に含まれるセメント量が多いことに起因する温度応力、セメントの水和による自己収縮、修復後の断面(硬化体)からの水分蒸発による乾燥収縮等が原因とされている。よって、修復後の断面のひび割れを抑制又は防止するために、例えば下記の試みがなされている;
(1)水和熱による温度応力を低減するため、骨材である乾燥珪砂を増量し、単位セメント量を低減したセメント系グラウト材の開発、
(2)モルタル及びコンクリートの乾燥収縮を低減するために、カルシウムサルフォアルミネート系膨張材を添加して、モルタル及びコンクリートを補修後初期に膨張させて乾燥収縮を補償する方法の開発、及び
(3)セメント系グラウト材に乾燥収縮低減剤を添加して、修復後の断面(硬化体)の毛細管中の水の表面張力を低減して自己収縮及び乾燥収縮によるひび割れを低減する方法の開発。
【0005】
しかしながら、上記(1)のセメント系グラウト材では、単位セメント量を低減したために却って水/セメント比が大きくなり、硬化後の乾燥収縮が顕著になるといった問題が生じる。上記(2)の膨張材の添加では、充分な乾燥収縮低減が達成できないばかりか、過剰添加では、硬化体が不必要な膨張を起こすといった問題が生じる。上記(3)の乾燥収縮低減剤の添加では、乾燥収縮低減剤がセメント粒子の表面に吸着し易く、水と混練した際にセメント系グラウト材の見かけ粘度が低下し、配合している細骨材が沈降するといった材料分離現象が生じる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
以上のような見地より、従来のセメント系グラウト材と比較して、同等以上の流動性を有しながらも、材料分離現象が防止でき、且つ補修後の断面の温度応力や乾燥収縮によるひび割れを抑制又は防止できるグラウト材の開発が強く要請されているもの、そのようなグラウト材は未だ開発されるに至っていない。
【0007】
従って、本発明は、従来のセメント系グラウト材と比較して、同等以上の流動性を有しながらも、材料分離現象が防止でき、且つ補修後の断面の温度応力や乾燥収縮によるひび割れを抑制又は防止できるグラウト材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、従来技術の問題点を解決するために鋭意研究を重ねた結果、特定の組成からなるグラウト材組成物及びそれを用いてなるグラウト材が上記目的を達成することを見出し、ついに本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、下記のグラウト材組成物及びそれを用いてなるグラウト材に係るものである。
【0010】
1.セメント、ブレーン方法で測定した比表面積(粉末度)が5000cm2/g以上の分級フライアッシュ及びカルシウムサルフォアルミネート系膨脹材を含むセメント系無機粉体100重量部に対し、乾燥収縮低減剤1〜5重量部、細骨材120〜200重量部を添加してなることを特徴とするグラウト材組成物。
【0011】
2.セメント系無機粉体100重量部の内割が、ブレーン方法で測定した比表面積(粉末度)が5000cm2/g以上の分級フライアッシュ5〜30重量部、カルシウムサルフォアルミネート系膨張材4〜10重量部及び残りがセメントである上記項1記載のグラウト材組成物。
【0012】
3.上記項1又は2に記載のグラウト材組成物に水を添加し、混練してなるグラウト材であって、上記項1又は2に記載のグラウト材組成物に含まれるセメント系無機粉体100重量部に対し、水30〜40重量部を添加し、混練してなることを特徴とするグラウト材。
【発明の効果】
【0013】
本発明のグラウト材組成物及びそれを用いてなるグラウト材によれば、従来のセメント系グラウト材と比較して、同等以上の流動性を有しながらも、材料分離現象が防止でき、且つ補修後の断面の温度応力や乾燥収縮によるひび割れを抑制又は防止することが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
〔発明の詳細な説明〕本発明で用いるセメントとしては、特に限定されず、公知のもの又は市販品を用いることができる。例えば、ポルトランドセメント、混合セメント、速硬セメントを挙げることができる。これらセメントは、単独又は2種以上で用いることができる。2種以上を併用する場合には、混合割合は特に限定されず、適宜設定することができる。
【0015】
セメントには、当該分野で通常用いられる種々の混合材料が混合されていても良い。例えば、高炉スラグ微粉末、フライアッシュ、シリカフューム、石灰石粉、石英粉末、二水石膏、半水石膏、無水石膏等の公知のセメント混合材料を挙げることができる。これら混合材料を混合する場合には、混合割合は特に限定されず、適宜設定することができる。
【0016】
セメント系無機粉体中のセメントの割合は、特に限定されず、後で説明する分級フライアッシュ及びカルシウムサルフォアルミネート系膨張材の量を考慮して上記3成分の合計が100重量部となるように適宜調整すれば良い。
【0017】
本発明で用いる分級フライアッシュとしては、ブレーン方法で測定した比表面積(粉末度)が5000cm2/g以上のものであれば特に限定されず、公知のもの又は市販品を用いることができる。その中でも、比表面積が5000〜12000cm2/gのものが好ましく、5500〜8000cm2/gのものがより好ましい。比表面積が小さすぎる場合には、グラウト材の施工時に、配合されている細骨材がグラウト材中で分離し沈降しやすくなるため、修復箇所の上下でグラウト材の組成が不均一な硬化体となるおそれがある。
【0018】
分級フライアッシュは、例えば、火力発電所のボイラーで石炭の燃焼灰として排出されるフライアッシュを公知の分級機(例えば、サイクロン)を用いて分級し、比表面積が5000cm2/g以上となるように粒度調整したものを好適に用いることができる。
【0019】
セメント系無機粉体中の分級フライアッシュの割合は、特に限定されないが、セメント系無機粉体100重量部中、通常、分級フライアッシュは5〜30重量部程度が好ましく、10〜20重量部程度がより好ましい。セメント系無機粉体中の分級フライアッシュの割合が少なすぎる場合には、グラウト材中で細骨材が沈降し、材料分離現象が起こるおそれがある。分級フライアッシュの割合が多すぎる場合には、グラウト材の強度発現性が著しく低下するおそれがある。
【0020】
カルシウムサルフォアルミネート系膨張材としては、修復後の断面を適度に膨張させ、乾燥収縮によるひび割れを補償することができるものであれば特に限定されず、公知のもの又は市販品を用いることができる。
【0021】
セメント系無機粉体中のカルシウムサルフォアルミネート系膨張材の割合は、特に限定されないが、セメント系無機粉体100重量部中、通常、カルシウムサルフォアルミネート系膨張材は4〜10重量部程度が好ましく、5〜8重量部程度がより好ましい。セメント系無機粉体中のカルシウムサルフォアルミネート系膨張材の割合が少なすぎる場合には、乾燥収縮によるひび割れを効果的に補償することができないおそれがある。カルシウムサルフォアルミネート系膨張材の割合が多すぎる場合には、補修後の断面が過度に膨張し、却ってひび割れが発生するおそれがある。
【0022】
本発明では、前記したセメント系無機粉体100重量部に対し、1〜5重量部の乾燥収縮低減剤を添加する。セメント系無機粉体に対する乾燥収縮低減剤の添加量が少なすぎる場合には、十分な乾燥収縮低減効果が発揮できない。セメント系無機粉体100重量部に対し、乾燥収縮低減剤の添加量が5重量部を超える場合には、多く添加しても乾燥収縮低減効果は殆ど変わらないため、経済的でない。
【0023】
乾燥収縮低減剤としては、グラウト材中に含まれる水の表面張力を減少させることで、補修後の断面の乾燥収縮を抑制又は防止できるものであれば、特に限定されず、公知のもの又は市販品を用いることができる。例えば、低級アルコールアルキレンオキシド付加物、グリコールエーテル・アミノアルコール誘導体、ポリエーテル、低分子量アルキレンオキシド共重合体を挙げることができる。これら乾燥収縮低減剤は、単独又は2種以上で用いることができる。2種以上を併用する場合には、その併用割合は特に限定されず、適宜設定することができる。
【0024】
本発明では、前記したセメント系無機粉体100重量部に対し、120〜200重量部の細骨材を添加する。セメント系無機粉体に対する細骨材の添加量が少なすぎる場合には、グラウト材中の単位セメント量が多くなり、温度応力により補修後の断面にひび割れが発生しやすくなる。セメント系無機粉体に対する細骨材の添加量が多すぎる場合には、水/セメント比の上昇による乾燥収縮の増大、材料分離抵抗性の低下、グラウト材の強度発現性の低下等が生じやすくなる。
【0025】
細骨材としては、補修後の断面(硬化体)の耐久性を低下させないものであれば、その材質は特に限定されず、公知のもの又は市販品を用いることができる。例えば、一般にモルタル又はコンクリート用の細骨材として知られている乾燥珪砂、石灰石砂、川砂、砕砂等を挙げることができる。細骨材の粒度は、特に限定されず、適宜設定することができるが、通常5mm以下が好ましく、特に間隙への充填性を考慮する場合には、3mm以下がより好ましい。
【0026】
なお、本発明のグラウト材組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、高性能減水剤、消泡剤、発泡剤等の公知の化学混和剤を混合することができる。これら化学混和剤は、単独又は2種以上で用いることができる。化学混和剤の混合割合、2種以上を併用する場合の併用割合等は、限定的ではなく、適宜調整しながら用いることが好ましい。
【0027】
本発明のグラウト材は、本発明グラウト材組成物に水を添加し、混練してなるグラウト材であって、グラウト材組成物に含まれるセメント系無機粉体100重量部に対し、水30〜40重量部を添加し、混練してなる。
【0028】
本発明のグラウト材は、前記したグラウト材組成物に所定量の水を添加し、混練するだけで得られるものであり、グラウト材の施工現場までは、例えば袋詰めされたグラウト材組成物の状態で運搬し、施工時に所望量のグラウト材を効率よく調製することが可能である。
【実施例】
【0029】
以下に実施例及び比較例を示し、本発明をより具体的に説明する。ただし、本発明はこれらの記載により限定されるものではない。
【0030】
実施例1
普通ポルトランドセメント(住友大阪セメント株式会社製)90重量部、分級フライアッシュ(商品名「FA20」テクノ・リソース社製;ブレーン方法で測定した比表面積が5600cm2/gのもの)5重量部及びカルシウムサルフォアルミネート系膨張材(商品名「サクス」住友大阪セメント株式会社製)5重量部を混合し、セメント系無機粉体100重量部を調製した。次に、得られたセメント系無機粉体100重量部に対し、乾燥収縮低減剤(商品名「テスタF♯100」住友大阪セメント株式会社製)2.5重量部、乾燥珪砂120重量部及び水32重量部を添加し、高速ハンドミキサーで混練してグラウト材を調製した。得られたグラウト材の流動性は、高性能減水剤及び消泡剤を添加することにより、J14ロート流下時間が8±2秒以内(適正範囲)となるように調整した。J14ロート流下時間によるグラウト材の流動性の調整は、日本道路公団試験方法「JHS 312−1992」の規定に従って行った。J14ロート流下時間は、表1に示した。
【0031】
次に、流動性を適正範囲に調整したグラウト材に対し、(1)材料分離抵抗性試験、(2)圧縮強度試験、(3)乾燥収縮試験、及び(4)簡易断熱温度上昇試験を行った。各試験は、20℃の恒温室において、下記の試験方法に従って行った。各試験の結果は表1に示した。
【0032】
〔各試験の実施方法〕
(1) 材料分離抵抗性試験
充分に混練したグラウト材を内容積5リットルの容器に入れ、混練後1時間静置し、細骨材の分離及びブリーディングの有無を視覚で確認した。
【0033】
(2)圧縮強度試験
日本道路公団試験方法「JHS 312−1992」の規定に従って、φ5×10cmのグラウト材円柱供試体を作製し、材齢4週における圧縮強度を測定した。
【0034】
(3) 乾燥収縮試験
日本道路公団材料施工試料第1号「型枠コンクリート工用断面修復材の品質規格試験」の規定に従って、20℃、60%RHの材齢4週及び13週における乾燥収縮を測定した。
【0035】
(4)簡易断面温度上昇試験
φ10×20cmの円柱型枠にグラウト材を打設し、厚さ10cmの発泡スチロールで密閉した容器中に静置し、グラウト材の中心部の最高到達温度を熱電対により測定した。
【0036】
実施例2〜5
表1に示した配合割合に従い、各組成物及び水を混練し、グラウト材を調製した。グラウト材の流動性は、高性能減水剤及び消泡剤を添加して、適正範囲となるように調整した。流動性調整後のグラウト材に対して、実施例1と同様の試験を行った。実施例2〜5におけるJ14ロート流下時間及び各試験の結果は、表1に示した。
【0037】
比較例1〜3
比較例1〜3では、実施例で用いた分級フライアッシュに代えて、関電フライアッシュ(関西電力株式会社製;ブレーン方法で測定した比表面積が4000cm2/gのもの)を用いた。グラウト材の調製は、表2に示した配合割合に従い、各組成物及び水を混練して行った。グラウト材の流動性は、高性能減水材及び消泡剤を添加して、適正範囲となるように調整した。比較例1〜3におけるJ14ロート流下時間は、表2に示した。なお、比較例では、流動性調整後のグラウト材に対し、先ず材料分離抵抗性試験を行い、細骨材の分離及びブリーディングが確認されなかったものについて、その他の試験を行うこととした。比較例1〜3における各試験の結果は表2に示した。
【0038】
比較例4
比較例4では、乾燥収縮低減剤を添加せずにグラウト材を調製した。グラウト材の調製は、表2に示した配合割合に従い、各組成物及び水を混練して行った。グラウト材の流動性は、高性能減水材及び消泡剤を添加して、適正範囲となるように調整した。J14ロート流下時間及び各試験の結果は、表2に示した。
【0039】
比較例5
比較例5では、乾燥収縮低減剤を過剰に用いてグラウト材を調製した。グラウト材の調製は、表2に示した配合割合に従い、各組成物及び水を混練して行った。グラウト材の流動性は、高性能減水材及び消泡剤を添加して、適正範囲となるように調整した。J14ロート流下時間及び各試験の結果は、表2に示した。
【0040】
比較例6
比較例6では、乾燥珪砂(細骨材)の使用量を少なく設定し、グラウト材を調製した。グラウト材の調製は、表2に示した配合割合に従い、各組成物及び水を混練して行った。グラウト材の流動性は、高性能減水材及び消泡剤を添加して、適正範囲となるように調整した。J14ロート流下時間及び各試験の結果は、表2に示した。
【0041】
比較例7
比較例7では、乾燥珪砂(細骨材)及び水の添加量を過剰とし、グラウト材を調製した。グラウト材の調製は、表2に示した配合割合に従い、各組成物及び水を混練して行った。グラウト材の流動性は、高性能減水材及び消泡剤を添加して、適正範囲となるように調整した。J14ロート流下時間及び各試験の結果は、表2に示した。
【0042】
比較例8
比較例8では、フライアッシュを用いることなく、グラウト材を調製した。グラウト材の調製は、表2に示した配合割合に従い、各組成物及び水を混練して行った。グラウト材の流動性は、高性能減水材及び消泡剤を添加して、適正範囲となるように調整した。J14ロート流下時間及び各試験の結果は、表2に示した。
【0043】
【表1】

【0044】
【表2】

【0045】
実施例及び比較例の考察
比較例1〜3では、実施例よりも比表面積の小さなフライアッシュ(4000g/cm2)を用いてグラウト材を調製した。その結果、得られたグラウト材の流動性が適正範囲であるにも関わらず、乾燥珪砂(細骨材)の分離及びブリーディングが確認された。
【0046】
比較例4では、乾燥収縮低減剤を用いずにグラウト材を調製した。その結果、材齢4週目において、既に実施例1〜5における材齢13週目よりも乾燥収縮が進行した。なお、表1及び表2における乾燥収縮値は、絶対値が大きい程乾燥収縮が進行していることを示している。
【0047】
比較例5では、実施例よりも乾燥収縮低減剤を過剰に用いてグラウト材を調製した。その結果、得られたグラウト材の流動性が適正範囲であるにも関わらず、乾燥珪砂(細骨材)の分離及びブリーディングが確認された。
【0048】
比較例6では、実施例よりも乾燥珪砂(細骨材)の使用量を少なくしてグラウト材を調製した。その結果、簡易断熱温度上昇試験の結果、グラウト材中心部の最高到達温度が74.3℃と高温になった。なお、グラウト材中心部の温度が70℃を超えると、温度応力に起因するひび割れが発生しやすい。
【0049】
比較例7では、実施例よりも乾燥珪砂(細骨材)及び水の添加量を多くしてグラウト材を調製した。その結果、得られたグラウト材の流動性が適正範囲であるにも関わらず、乾燥珪砂(細骨材)の分離及びブリーディングが確認された。
【0050】
比較例8では、フライアッシュを用いることなくグラウト材を調製した。その結果、得られたグラウト材の流動性が適正範囲であるにも関わらず、乾燥珪砂(細骨材)の分離及びブリーディングが確認された。
【0051】
しかしながら、実施例1〜5では、グラウト材の流動性が適正範囲(J14ロート流下時間8±2秒)である場合に、乾燥珪砂(細骨材)の分離及びブリーディングは全く確認されなかった。表1に示した乾燥収縮試験の結果からは、乾燥収縮が効果的に抑制されていることが分かる。簡易断熱温度上昇試験においては、グラウト材中心部の最高温度は、全てが60℃未満であり、温度応力によるひび割れも効果的に抑制又は防止できると言える。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セメント、ブレーン方法で測定した比表面積(粉末度)が5000cm2/g以上の分級フライアッシュ及びカルシウムサルフォアルミネート系膨脹材を含むセメント系無機粉体100重量部に対し、乾燥収縮低減剤1〜5重量部、細骨材120〜200重量部を添加してなるグラウト材組成物であって、
セメント系無機粉体100重量部の内割が、ブレーン方法で測定した比表面積(粉末度)が5000cm2/g以上の分級フライアッシュ5〜30重量部、カルシウムサルフォアルミネート系膨張材4〜10重量部及び残りがセメントであり、
14ロート流下時間が8±2秒であり、前記組成物を混練後1時間静置したときに細骨材の分離及びブリーディングがなく、材齢4週における圧縮強度が40.3〜58.4N/mmであり、20℃、60%RHの材齢4週及び13週における乾燥収縮がそれぞれ−2.8×10−4〜−6.5×10−4及び−5.0×10−4〜−8.2×10−4であり、簡易断面温度上昇試験によるグラウト材中心部の最高到達温度が43.5〜58.2℃であることを特徴とするグラウト材組成物。
【請求項2】
請求項1に記載のグラウト材組成物に水を添加し、混練してなるグラウト材であって、請求項1に記載のグラウト材組成物に含まれるセメント系無機粉体100重量部に対し、水30〜40重量部を添加し、混練してなることを特徴とするグラウト材。

【公開番号】特開2012−92011(P2012−92011A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−267866(P2011−267866)
【出願日】平成23年12月7日(2011.12.7)
【分割の表示】特願2001−87905(P2001−87905)の分割
【原出願日】平成13年3月26日(2001.3.26)
【出願人】(000183266)住友大阪セメント株式会社 (1,342)
【Fターム(参考)】