説明

グラデーションデザインを有する加飾成形体及びその製造方法

【課題】 カラーデザインで成形体が装飾された加飾成形体について、最も濃い部分と最も薄い部分との濃淡差が大きく、精細で滑らかに調子が変化するグラデーションを有すると共に、面白みやインパクトのあるグラデーションデザインを形成すること。
【解決手段】 透過光を拡散する拡散層14と、ドットパターンを形成するハーフトーン印刷層15と、該ハーフトーン印刷層15とは異色に着色された下地層16と、が積層して形成されるグラデーションデザインを成形体13に形成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯電話機、携帯情報端末、AV機器等の各種電子機器に用いられる押釦スイッチ用キートップ(以下「キートップ」という。)やキーシートなどに代表される成形体が、カラーデザインで装飾された加飾成形体に関し、特にグラデーションデザインを有する加飾成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話機やその他の情報処理端末に用いられるキートップのような加飾成形体は、デザイン競争の激化から様々なデザインが施されており、グラデーションデザインもその一つとして注目されている。
【0003】
通常、グラデーションデザインを得る方法には、ドット密度や個々のドットの大きさを変化させる方法がある。このグラデーション形成方法に対しては、ドットパターンの潰れに対する問題を解決するなど、ドットパターンの形成を工夫する手段が特開2003−66586号公報(特許文献1)などに開示されていて、画像の精密さやドット再現性の向上が図られている。しかしながら、キートップなどの小面積で、また照光するような成形体にこの方法を単純に適用しようとすると、ドットパターンがどうしても認識されてしまい、精細なグラデーションデザインが得られないという問題がある。
【0004】
そこで、成形体にグラデーションデザインを施す別の方法として、色相の異なるインキを複数回に分けて印刷し、色相の異なるグラデーションを得る方法や、同じ色相のインキを用い、重ね印刷する回数、場所を変化させてグラデーションを得る方法なども検討されてきた。しかし、前者の方法では、色相を微妙に調整して変化させるため熟練が必要であるという問題があった。また後者の方法では、重ね印刷する手間がかかることや、最も濃い部分と最も薄い部分との濃淡差が小さいという問題があった。加えて、印刷条件やインキの種類、その他の外的要因によって、品質にばらつきが生じ易く再現性が良くないものであった。そのため、グラデーションデザインを有する加飾成形体を得ることは容易ではなく製造コストが高いものとなっていた。また、これらの何れの方法によっても、得られるデザインは単純なグラデーションに過ぎず面白みに欠けインパクトに乏しいものであった。
【特許文献1】特開2003−66586号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、これらの問題点を解決するためになされたものであり、最も濃い部分と最も薄い部分との濃淡差を大きくすることができ、精細で滑らかに調子が変化するグラデーションを有すると共に、面白みやインパクトのあるグラデーションデザインを形成する加飾成形体とその製造方法を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
即ち、本発明は、カラーデザインで成形体が装飾された加飾成形体について、透過光を拡散する拡散層と、ドットパターンを形成するハーフトーン印刷層と、該ハーフトーン印刷層とは異色に着色された下地層と、が積層して形成されるグラデーションデザインを前記成形体に有する加飾成形体を提供する。
【0007】
透過光を拡散する拡散層と、ドットパターンを形成するハーフトーン印刷層と、該ハーフトーン印刷層とは異色に着色された下地層と、が積層して形成されるグラデーションデザインを成形体に有するため、拡散層がドットパターンの輪郭を不鮮明にさせてぼかすことでドットパターンが認識されないグラデーションを得ることができる。また、ドットパターンを形成するハーフトーン印刷層が濃い部分と薄い部分との濃淡差が大きく、精細で隣接する部分が滑らかに調子が変化するグラデーションを実現させる。さらには、下地層がハーフトーン印刷層とは異色に着色されていることで、面白みやインパクトがあるグラデーションデザインを有する加飾成形体となる。
【0008】
より具体的には、ハーフトーン印刷層と下地層とが互いに異色の有彩色とすることで、ハーフトーン印刷層を形成するドットパターンに施された色でグラデーションを形成するとともに、下地層に施された色でもグラデーションを形成することができる。
【0009】
ハーフトーン印刷層と下地層の色相は、ハーフトーン印刷層と下地層の何れか一方を白色とすることもできる。何れか一方を白色とすれば、もう一方の色によるグラデーションが引き立つようになり、単色によるグラデーションを形成するように見えるグラデーションデザインを得ることができる。
【0010】
また、ハーフトーン印刷層と下地層は、少なくともその何れか一方を金属色とすることができる。ハーフトーン印刷層や下地層を金属色とすれば、明度や彩度が異なったグラデーションを有する加飾成形体とすることができる。
【0011】
ハーフトーン印刷層は、スクリーン印刷用インキで形成され、無機微粒子を0.1wt%〜5.0wt%含む層とすることができる。ハーフトーン印刷層を、スクリーン印刷用インキで形成し、無機微粒子を0.1wt%〜5.0wt%含む層としたため、ハーフトーン印刷層の印刷時にインキのダレがなく、形成されるドットが広がりにくい。そのため、厚みがあり広がりの少ないドットからなるハーフトーン印刷層となる。これにより、濃い部分と薄い部分との濃淡差が大きく、また、濃淡の推移がきめ細かく精細で滑らかなグラデーションを形成することができる。
【0012】
このような成形体は、押釦スイッチ用のキートップとすることができる。押釦スイッチ用のキートップとすれば、デザインに優れた趣味性の高いキートップを得ることができる。
【0013】
さらに、本発明は、カラーデザインで成形体が装飾された加飾成形体の製造方法について、透光性を有する成形体に、透過光を拡散する拡散層を設け、次にスクリーン印刷にてドットパターンを形成するハーフトーン印刷層を設け、次に該ハーフトーン印刷層とは異色の下地層を設けたことを特徴とするグラデーションデザインを施した加飾成形体の製造方法を提供する。
【0014】
透光性を有する成形体に、透過光を拡散する拡散層を設け、次にスクリーン印刷にてドットパターンを形成するハーフトーン印刷層を設け、次に該ハーフトーン印刷層とは異色の下地層を設けてグラデーションデザインを施したため、最も濃い部分と最も薄い部分との濃淡差が大きく、また精細で滑らかに色調が変化する優れたグラデーションを有し、面白みやインパクトのある加飾成形体を簡単に製造することができる。そして、成形体を通じてグラデーションデザインを視認することができる加飾成形体を得ることができる。
【0015】
また、本発明は、カラーデザインで成形体が装飾された加飾成形体の製造方法について、成形体に、下地層を設け、次にスクリーン印刷にて下地層とは異色のドットパターンを形成するハーフトーン印刷層を設け、次に透過光を拡散する拡散層を設けたことを特徴とするグラデーションデザインを施した加飾成形体の製造方法を提供する。
【0016】
成形体に、下地層を設け、次にスクリーン印刷にて下地層とは異色のドットパターンを形成するハーフトーン印刷層を設け、次に透過光を拡散する拡散層を設けてグラデーションデザインを施したため、精細で滑らかな優れたグラデーションを有し、面白みやインパクトのある加飾成形体を簡単に製造することができる。そして、透明性の悪い成形体を用いても優れたグラデーションデザインを有する加飾成形体を得ることができる。
【0017】
ハーフトーン印刷層の印刷に、固形分中に無機微粒子を0.1wt%〜5.0wt%含有するスクリーン印刷用インキを用いることができる。固形分中に無機微粒子を0.1wt%〜5.0wt%含むスクリーン印刷用インキを用いたため、ハーフトーン印刷層の印刷時にインキのダレがなく、滲みの少ない印刷を行うことができる。そのため、厚みがあり広がりの少ないドットを形成し、精細で滑らかに隣接する領域の濃淡が推移するように見えるグラデーションを形成することができる。
【0018】
そして、成形体が、ゴム状弾性体でなるベースシートと該ベースシートに固着した複数のキートップでなる押釦スイッチ用のキーシートであって、個々のキートップは単一の調子としながら、いくつかのキートップ相互間で調子が異なるドットパターンとするスクリーン印刷版を用い、ハーフトーン印刷層を一度に印刷して、複数のキートップ全体でグラデーションデザインを形成する加飾成形体の製造方法とすることができる。
【0019】
個々のキートップは単一の調子(階調差がない)としながら、いくつかのキートップ相互間で調子が異なるドットパターンとするスクリーン印刷版を用い、キートップのハーフトーン印刷層を一度に印刷して、複数のキートップ全体でグラデーションデザインを形成することとしたため、精細で滑らかな優れたグラデーションを有し、面白みやインパクトのあるキーシートを簡単に製造することができる。
【発明の効果】
【0020】
このように、本発明の加飾成形体および加飾成形体の製造方法によれば、最も濃い部分と最も薄い部分との濃淡差を大きくすることができるだけでなく、精細で滑らかに濃淡が変化する優れたグラデーションを有すると共に、面白みやインパクトのあるグラデーションデザインを有する加飾成形体とその製造方法を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明の具体的な実施形態を図面を用いて詳細に説明する。本実施形態における加飾成形体は、携帯電話機に用いられるキートップと、そのキートップを備えるキーシートである。
【0022】
第1実施形態; 第1実施形態として示す本発明のキートップ11及びそのキートップ11を備えるキーシート12は、図1で示す携帯電話機1に用いられるもので、キーシート12の平面図を図2に、キーシート12の模式断面図を図3に示す。なお、各実施形態で共通する構成については重複説明を省略する。
【0023】
キートップ11は、図3に示すように、透光性を有する樹脂からなるキートップ本体13の裏面13aに、拡散層14、ハーフトーン印刷層15、下地層16が積層してなる加飾層17を設けた構造をしている。そして、このキートップ11はゴム状弾性体でなるベースシート18に接着剤19で固着されてキーシート12を形成している。
【0024】
キートップ本体13; キートップ本体13は、透光性を有する硬質樹脂を材料として成形された成形体である。ここでいう透光性は、可視光線透過率が3%以上をいうものとする。可視光線透過率が3%より少なくても光は透過するが、裏面13aに形成されたグラデーションデザインをキートップ本体13を通じて視認するには困難だからである。そして、キートップ本体13は、透明であることがより好ましい。
【0025】
具体的には、ポリカーボネート(PC)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリスチレン(PS)、塩化ビニル、アクリルニトリルブタジエンスチレン(ABS)、ポリウレタン(PU)、エポキシ、ポリプロピレン、ナイロン等の樹脂やこれらのアロイ系等の樹脂を用いて成形することができる。成形性、透光性の観点からは、PCやABSが好ましく、表面固さの観点からはPMMAを用いることが好ましい。キートップ本体13は、これらの樹脂を予め射出成形などにより所定のキートップの形状に成形しておく。
【0026】
拡散層14; 拡散層14は透過光を拡散、散乱させて、ドットパターンをぼかしてグラデーションとして視認させるものである。このような機能を発揮させるためには拡散層14の全光線透過率が高く、ヘイズが高いことが好ましい。
【0027】
拡散層14には、樹脂液に散乱剤を添加したものを用いることができ、例えば、アクリル系、ビニル系、ポリエステル系、アクリル・PC系、ABS・PS系、ウレタン系、ポリオレフィン系、エポキシ系、アルキッド系などから選ばれる樹脂に、炭酸カルシウムや架橋ポリメチルメタクリル酸メチル、架橋ポリスチレン、硫酸バリウム、シリコーン、酸化チタン、マイカ、オキシ塩化ビスマスなどから選ばれる無機微粒子を単独でまたは組み合わせて分散させたものが挙げられる。これらの樹脂の中でも、ABS・PS系、ビニル系、アクリル・PC系は、キートップ本体13として利用されるアクリル系樹脂などの樹脂に対して高い密着性を有する点で好ましい材料である。また、これらの無機微粒子の中でも、マイカ、オキシ塩化ビスマスは、光拡散効果だけでなく真珠様光沢を有する点で好ましい材料である。
【0028】
上記樹脂は、液状樹脂であっても、溶剤で溶解した樹脂であっても良い。無機微粒子の粒径は、平均粒径で0.1μm〜50μmであることが好ましい。この範囲の粒径とすると光拡散効果に優れ、樹脂液中に安定に分散するからである。また、平均粒径が50μmより大きいと、拡散層14表面の凹凸が大きくなり、ハーフトーン印刷層15を設ける際に気泡を巻き込んたり、ドットパターンが不鮮明となるからであり、平均粒径が0.1μmより小さいと光拡散効果は得られるが、添加量を増やしたり、分散が困難になったりと、不都合が大きくなるからである。樹脂に対する無機微粒子の含有量は、1.0wt%〜30wt%とすることが好ましい。1.0wt%より少ないと、光拡散効果が得られず、30wt%より多いと光の拡散効果は高くなるが、光が拡散する分だけ光の消失も多くなり易く、全体的に暗くなってしまうからである。
【0029】
拡散層14の形成は、無機微粒子を含有した樹脂液を適当に希釈するなどして印刷、塗工などの方法でキートップ本体13の裏面13aにベタ印刷する。スクリーン印刷は好ましい手法である。溶剤希釈型樹脂を用いた場合は溶剤を蒸発させて、また、硬化型樹脂を用いた場合は、そのタイプに応じた硬化反応をさせて拡散層14を得る。拡散層14の層厚は、添加する無機微粒子の平均粒径によっても変わるものであるが、無機微粒子の平均粒径の半分よりは薄くすることが好ましい。
【0030】
ハーフトーン印刷層15; ハーフトーン印刷層15は、細かなドット15aが複数印刷されてドットパターンを形成したグラデーションの基となる層である。通常、グラデーションの形成は、単位面積当たりのドット15aの数や大きさを徐々に変化さることにより濃淡が段階的に推移するように見せたものであるが、本発明では、図2で示すように、4行3列に配置された個々のキートップ11の一つ一つは単独のドットパターンを有し単一の調子(濃淡差がない)を有するに過ぎず、それだけではグラデーションを形成していない。しかしながら、1行目に配置した3つのキートップ11a、2行目に配置した3つのキートップ11b、3行目に配置した3つのキートップ11c、4行目に配置した3つのキートップ11dを全体的に見ると、1行目から4行目に推移するに従って調子が徐々に変化するグラデーションを形成している。なお、図2で示したキートップ11の拡大図はドットパターンを模式的に例示したものに過ぎず、ドット15aの形状、大きさ、間隔はグラデーションを実現する限りにおいて種々の変更が可能である。
【0031】
ハーフトーン印刷層15は、ドットパターンを印刷する手法により形成することができるが、ドットの再現性やインキの塗布量などの点からスクリーン印刷を用いることが好ましい。そして、スクリーン印刷用インキには、樹脂液にチキソトロピー性付与剤としての無機微粒子を含む樹脂インキを用いることが好ましい。チキソトロピーとは、樹脂の分子運動を制限して残留応力を高める働きをすることをいう。即ち、通常の樹脂インキでは、インキのレベリングが良く被印刷物にインキが流れて所望のドットが潰れてしまい隣接するドットと繋がるおそれもある。ところが高品質のグラデーションを得るためには、被印刷物におけるインキの滲みやダレを防いでドットの広がりを防止し、ドットが正確に印刷される必要があるため、適度なチキソトロピー性を有するインキが用いられるのである。
【0032】
ハーフトーン印刷層用インキには、アクリル系、ビニル系、ポリエステル系、アクリル・PC系、ABS・PS系、ウレタン系、ポリオレフィン系、エポキシ系、アルキッド系などの樹脂を主成分として用いることができる。また、チキソトロピー性付与材として添加される無機微粒子には、酸化アルミ、タルク、酸化亜鉛、シリカなどを用いることができる。これらの無機微粒子は、表面処理を施したものであっても、未処理品であっても良い。また、単独であっても複数種類の混合物として用いても良い。これらの無機微粒子のうち、微粉末系シリカ、例えばヒュームドシリカの表面未処理品は特に良好であるが、その理由は、粒子表面にあるSiOH基(シラノール基)のOH基同士が水素結合するためと考えられる。また、ヒュームドシリカの表面未処理品は、ハーフトーン印刷層15の透明性が高くなり照光式のキートップ11とする場合は特に好ましい。
【0033】
無機微粒子の添加量は、インキ固形分中0.1wt%〜5.0wt%とすることが好ましい。インキに適度なチキソトロピー性を与えるだけでなく、粘度も適当となるからである。一方、5wt%を超えるとハーフトーン印刷層15にクラックが入りやすく、もろくなって、耐蝕性が低下する。また、0.1%未満とすると、適度なチキソトロピー性を有せず、ドットパターンが不明瞭になって滑らかなグラデーションが得られない。
【0034】
無機微粒子をその比表面積から見ると、BET法による比表面積で100m/g以上が好ましく、105m/g〜800m/gがより好ましい。比表面積が大きいとチキソトロピー性が発揮され易く、添加量を抑えることができるからである。また、ハーフトーン印刷層15の透明性を高くするためには、350m/g程度以上とすることが好ましい。
【0035】
ハーフトーン印刷層15の形成は、ベースシート18に配置した複数のキートップ11ごとに予め定めたドットパターンを形成する版を作製し、一度にスクリーン印刷にてドットパターンを形成することができる。具体的な一方法としては、270メッシュ、線数130線のスクリーンに第1列のキートップ11aには40%のドット配置密度、第2列のキートップ11bには60%のドット配置密度、第3列のキートップ11cには80%のドット配置密度、第4列のキートップ11dには100%のドット配置密度となるように版膜を作ったスクリーン印刷版を用いて印刷することができる。
【0036】
下地層16; 下地層16は、ハーフトーン印刷層15とは異色に着色されたことを特徴とし、ハーフトーン印刷層15の全面を覆うようにベタ塗りして形成される層である。ここで異色とは、少なくとも色相、明度、彩度の何れか一つが異なることをいう。すなわち、例えば、ハーフトーン印刷層15が緑色である場合に、下地層16を黄色とするような場合である。下地層16をハーフトーン印刷層15の裏面に重ねて塗工することでハーフトーン印刷層15のドットが形成されていない部分が下地層16で埋められることとなる。そのため、下地層16は、レベリング性に優れたインキや塗料を用いて形成される。レベリング性が良ければ特に印刷や塗布などの手法を限定するものではない。
【0037】
以上のような層構成でなる加飾層17が、文字や記号を表す表示部20とともにキートップ本体13の裏面13aに設けられている。このように構成されたキートップ11は、シリコーンゴムや熱可塑性エラストマーなどでなるベースシート18に接着剤19で固着されてキーシート12を形成している。ベースシート18はゴム状弾性体であれば良く、接着剤19もキートップ11とベースシート18とを固着させるものであれば良い。
【0038】
キーシート12は、携帯電話機1に組み込まれて用いられる。ハーフトーン印刷層15を緑色、下地層16を黄色とした例で説明すると、2つ折りにできる携帯電話機1を開いてキートップ11を視認する場合、ハーフトーン印刷層15のドット15aの緑色と、そのドット15a間の下地層16の黄色が表出するが、両者は拡散層14を通じて視認されることになる。そのため、ハーフトーン印刷層15のドット15aが明瞭に視認されることなく、第1列のキートップ11aから第4列のキートップ11dに推移するに従って緑色に濃く推移する精細で滑らかな優れたグラデーションが見られる。一方、第4列のキートップ11dから第1列のキートップ11aに推移するに従って黄色に濃く推移する精細で滑らかな優れたグラデーションが見られる。そのため、緑色と黄色の両者のグラデーションが複合した優れたグラデーションデザインが得られたものとなる。
【0039】
第2実施形態; 第2実施形態として示す本発明のキートップ21及びそのキートップ21を備えるキーシート22も、図1で示す携帯電話機1に用いられるもので、その平面図は図2と同様に表れる。また、キーシート22の模式断面図を図4に示す。
【0040】
第1実施形態で示したキートップ11と比較すると、キートップ11の加飾層17とその層構成は同じであるが、キートップ11では加飾層17がキートップ本体13の裏面13aに形成されていたのに対し、本実施形態のキートップ21では、キートップ本体23の上面23bに加飾層27が形成されている点で相違する。すなわち、キートップ21では、キートップ本体23側から、下地層26、ハーフトーン印刷層25、拡散層24の順に積層されている。また、表示部30はキートップ本体23の上面23bに設けられている。
【0041】
各層を形成するインキや塗料は第1実施形態で示したキートップ11を形成するものと同じものを用いることができるが、本実施形態では、ハーフトーン印刷層25よりも先に下地層26が形成されるため、下地層26の形成に特にレベリング性が良いインキを用いる必要はない。また、キートップ本体23を通じて加飾層26が視認されることもないため、キートップ本体23として用いられる材料は透明性が悪い材料であっても良い。
【0042】
第2実施形態によるキーシート22も、第1実施形態によるキーシート12と同様に、濃淡差が大きく、精細で滑らかなグラデーションが見られる優れたグラデーションデザインを有するものである。
【0043】
その他の実施形態; 以上の実施形態には種々の変更が可能である。
【0044】
ハーフトーン印刷層15,25か下地層16,26の何れか一方を白色とすることもできる。何れか一方を白色とすれば、もう一方の色の際立ったグラデーションを得ることができる。例えば、第1実施形態のキートップ11の変形例として、下地層16を黄色で形成する代わりに、白色で形成すると、白地の中に緑色のグラデーションがはっきりと見て取れるようになる。そのため、緑色単独のグラデーションが施されたキートップとして認識できるグラデーションデザインを有するものとなる。また、何れか一方を、金属色や黒とした場合は、もう一方の色の明度や彩度が異なったグラデーションを得ることができる。
【0045】
機器の内部に備えられた光源から発光させてキートップ11,21が照光するいわゆる照光式のキートップとする場合には、拡散層14,24だけでなく、ハーフトーン印刷層15,25、下地層16,26、第2実施形態におけるキートップ本体23も透光性の材料を用いる必要がある。このような材料を用いた照光式のキーシート12,22としても、ドット15aが視認されることなく、優れたグラデーションが見て取れる。
【0046】
上記実施形態で示された各層以外にも、種々の機能を付加するため、別の層を形成することも可能である。例えば、金属調の色相を与えるための金属薄膜層や、所定の層を保護するための保護層などを設けることも可能である。また、文字や記号などを表す表示部20,30を形成する位置は適宜変更することができる。
【0047】
上記実施形態における加飾成形体は、携帯電話機1に用いられるキートップ11,21と、そのキートップ11,21を備えるキーシート12,22であるが、キートップ11,21やキーシート12,22以外の加飾成形体、例えば、携帯電話機1や種々の電気・電子機器の筐体などにも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】形態電話機の外観平面図。
【図2】本発明の第1実施形態によるキーシート(加飾成形体)の平面図。
【図3】図2のSA−SA線断面図。
【図4】本発明の第2実施形態によるキーシートの図3相当の断面図。
【符号の説明】
【0049】
1 携帯電話機
11,21 キートップ
11a,21a 第1列目のキートップ
11b,21b 第2列目のキートップ
11c,21c 第3列目のキートップ
11d,21d 第4列目のキートップ
12,22 キーシート
13,23 キートップ本体
13a 裏面
23b 上面
14,24 拡散層
15,25 ハーフトーン印刷層
15a,25a ドット
16,26 下地層
17,27 加飾層
17,28 ベースシート
19,29 接着剤
20,30 表示部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カラーデザインで成形体が装飾された加飾成形体において、
透過光を拡散する拡散層と、ドットパターンを形成するハーフトーン印刷層と、該ハーフトーン印刷層とは異色に着色された下地層と、が積層して形成されるグラデーションデザインを前記成形体に有する加飾成形体。
【請求項2】
ハーフトーン印刷層と下地層とが互いに異色の有彩色である請求項1記載の加飾成形体。
【請求項3】
ハーフトーン印刷層と下地層の何れか一方が白色である請求項1記載の加飾成形体。
【請求項4】
ハーフトーン印刷層と下地層の少なくとも何れか一方が金属色である請求項1記載の加飾成形体。
【請求項5】
ハーフトーン印刷層が、スクリーン印刷用インキで形成された無機微粒子を0.1wt%〜5.0wt%含む層である請求項1〜請求項4何れか1項記載の加飾成形体。
【請求項6】
成形体が押釦スイッチ用のキートップである請求項1〜請求項5何れか1項記載の加飾成形体。
【請求項7】
カラーデザインで成形体が装飾された加飾成形体の製造方法において、
透光性を有する成形体に、透過光を拡散する拡散層を設け、次にスクリーン印刷にてドットパターンを形成するハーフトーン印刷層を設け、次に該ハーフトーン印刷層とは異色の下地層を設けたことを特徴とするグラデーションデザインを施した加飾成形体の製造方法。
【請求項8】
カラーデザインで成形体が装飾された加飾成形体の製造方法において、
成形体に、下地層を設け、次にスクリーン印刷にて下地層とは異色のドットパターンを形成するハーフトーン印刷層を設け、次に透過光を拡散する拡散層を設けたことを特徴とするグラデーションデザインを施した加飾成形体の製造方法。
【請求項9】
ハーフトーン印刷層の印刷に、固形分中に無機微粒子を0.1wt%〜5.0wt%含有するスクリーン印刷用インキを用いる請求項7または請求項8記載の加飾成形体の製造方法。
【請求項10】
成形体が、ゴム状弾性体でなるベースシートと該ベースシートに固着した複数のキートップでなる押釦スイッチ用のキーシートであって、個々のキートップは単一の調子としながら、いくつかのキートップ相互間で調子が異なるドットパターンとするスクリーン印刷版を用い、ハーフトーン印刷層を一度に印刷して、複数のキートップ全体でグラデーションデザインを形成する請求項7〜請求項9何れか1項記載の加飾成形体の製造方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−159794(P2006−159794A)
【公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−357316(P2004−357316)
【出願日】平成16年12月9日(2004.12.9)
【出願人】(000237020)ポリマテック株式会社 (234)
【Fターム(参考)】