グラフェンの広い領域の堆積およびドーピング、ならびにそれを含む生成物
本発明のあるいくつかの例示的な実施形態は、透明導電層(TCC)としてのグラフェンの使用に関する。本発明のあるいくつかの例示的な実施形態において、グラフェン薄膜は、広い領域上に、例えば触媒薄膜上に、炭化水素ガス(例えば、C2H2、CH4などといった)からヘテロエピタキシャル成長する。あるいくつかの例示的な実施形態のグラフェン薄膜は、ドープされていてもアンドープであってもよい。あるいくつかの例示的な実施形態において、一旦形成されたグラフェン薄膜は、それらのキャリア基板をリフトオフされていても、例えば中間および最終生成物を含め、受電基板に転写されていてもよい。この方法で成長させ、リフトされかつ転写されたグラフェンは、低いシート抵抗(例えば、150オーム/スクウェア未満でかつドープされているときより低い)および高い透過係数(transmission value)(例えば、少なくとも可視および赤外線スペクトルにおいて)を示してもよい。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の分野
本発明のあるいくつかの例示的な実施形態は、グラフェンを含む薄膜に関する。さらに詳しくは、本発明のあるいくつかの例示的な実施形態は、透明導電層(TCC)としてのグラフェンの使用に関する。あるいくつかの例示的な実施形態において、グラフェン薄膜は、広い領域上に、例えば触媒薄膜上に、炭化水素ガス(例えば、C2H2、CH4などといった)からヘテロエピタキシャル成長する。あるいくつかの例示的な実施形態のグラフェン薄膜は、ドープされていてもアンドープであってもよい。あるいくつかの例示的な実施形態において、一旦形成されたグラフェン薄膜は、それらのキャリア基板をリフトオフされていても、例えば中間および最終生成物を含め、受電基板(receiving substrates)に転写されていてもよい。
【背景技術】
【0002】
本発明の背景および例示的な実施形態の概要
インジウム錫酸化物(ITO)およびフッ素ドープ酸化錫(FTOまたはSnO:F)膜は、光電子デバイスにおける窓電極として広く用いられている。これらの透明導電性酸化物(TCO)は、種々の用途において非常に成功している。しかしながら、残念なことに、ITOおよびFTOの使用は、いくつかの理由のためにますます問題になっている。このような問題は、例えば、地球上で入手可能なインジウム元素の量に限界があること、酸または塩基の存在下でのTCOの不安定性、それらのイオン導電層からのイオン拡散に対する感受性、それらの近赤外線領域(例えば、強力(power-rich)スペクトル)における限定された透明性、FTO構造欠陥によるFTOデバイスの高いリーク電流などの事実を含む。またITOの脆い性質およびその高い堆積温度は、その応用を制限している。さらに、SnO2:Fにおける表面凹凸は、問題が多いアーク放電の原因となり得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
したがって、良好な安定性、高い透明性および優れた導電率を有する、平滑でかつパターン化し得る電極材料についての必要性が当該技術において存在することが認識されるだろう。
【課題を解決するための手段】
【0004】
良好な安定性、高い透明性および優れた導電率を有する新規な電極材料の探索が継続中である。この探索の1つの特徴は、このような従来のTCOの実現可能な代替を発見することを含む。この点で、本発明者は、炭素、特にグラフェンベースの実現可能な透明導電層(TCC)を開発した。
【0005】
用語「グラフェン」は、一般に1つ以上のグラファイトの原子層、例えば、単一のグラフェン層またはSGLに関し、グラファイトのn層(例えば、nは約10ほど高くなり得る)にまで拡張し得る。マンチェスタ大学における、グラフェンの最近の発見および分離(結晶構造のグラファイトを劈開することによる)は、エレクトロニクスにおける流れが回路素子のサイズをナノメートルスケールに減少させるときに来ている。この点で、グラフェンは、意外にも、標準的な電子材料では得られない、独特な光電子特性の新たな世界に導いた。これは、ゼロの静止質量(rest mass)を有しかつ相対論的粒子のように振舞うグラフェンにおいて、帯電量の増加を与える、直線的な分散関係(E対k)から現れる。炭素原子周囲で動く電子を非局在化させる相対論的な挙動は、それらのグラフェンのハニカム格子の周期的なポテンシャルとの相互作用から得られ、新たな擬似粒子を生み出し、これらの粒子は、低いエネルギー(E<1.2eV)で、光の実効速度
【化1】
を伴う(2+1)−次元のディラック方程式により正確に記載される。したがって、量子電磁力学(QED)のよく確率された技術(フォトンに関係する)を、グラフェンの研究にもってくることができ、このような効果がグラフェンにおいて300倍増幅されるという更なる有利な性状がある。例えば、普遍結合定数αは、真空中での1/137と比較して、グラフェンにおいて2に近い。K.S. Novoselov、「Electrical Field Effect in Atomically Thin Carbon Films」、Science、vol.306、pp.666-69(2004)を参照し、その内容をここに組み込む。
【0006】
1原子のみの厚さ(最小で)だけであるにもかかわらず、グラフェンは、化学的および熱的に安定であり(グラフェンは300℃で表面酸化されるとはいえ)、それにより、周囲の条件に耐えるグラフェンベースのデバイスをうまくつくることができる。高品質のグラフェンシートは、まずバルクグラファイトの微視的機械的劈開によりつくられる。同様の技術を微調整して、100μm2以下のサイズの高品質グラフェンクリスタライトが現在、提供されている。このサイズは、マイクロエレクトロニクスにおける、ほとんどの研究目的を満足させる。したがって、主として大学において、これまでのところ開発されたほとんどの技術は、スケールアップよりむしろ、微視的サンプルならびにデバイス作製および特徴付けがより中心である。
【0007】
ほとんどの現在の探索の流れとは異なって、可能性のあるTCCのようなグラフェンの最大の可能性を理解するためには、基板(例えば、ガラスまたはプラスチック基板)上への高品質材料の広い領域の堆積が重要である。現在まで、ほとんどのグラフェンの大規模な製造方法は、湿式ベースの化学薬品を用いるバルクグラファイトの剥離に基づき、高配向熱分解グラファイト(highly ordered pyrolytic graphite)(HOPG)および化学的な剥離を伴って開始する。公知のように、HOPGは、1度未満のc軸の角度の広がり(angular spread)を有する熱分解グラファイトの高度に並べられた形態であり、かつ通常、3300Kでのストレスアニーリングにより製造される。HOPGは、一般的に反射性かつ導電性であるが、脆くかつフレーク状であるという純金属に酷似するように振舞う。この方法で製造されたグラフェンは濾過され、次いで表面に付着される。しかしながら、剥離プロセスには問題がある。例えば、剥離されたグラフェンは、折り重なる傾向があり、しわだらけになり、小さなストリップとして存在し、かつ堆積のためのコラージュ/ステッチプロセスに依存し、グラフェン層の数などの本来の制御が欠落する。そのようにして製造された材料は、しばしばこれらの介在物により汚染され、それ自体低いグレードの電子特性を有する。
【0008】
炭素の状態図を深く分析することにより、グラファイトおよびダイアモンドのみならず、例えばカーボンナノチューブ(CNT)といった他の同素体の形態を製造するために適した条件のプロセス手段が示される。ナノチューブの触媒による堆積は、種々の原子団により1000℃のような高い温度でガス相から行われる。
【0009】
これらの従来の探索範囲および従来の技術と対比して、本発明のあるいくつかの例示的な実施形態は、単結晶構造のグラファイト(nは約15と同程度に大きい)をヘテロエピタキシャル成長させ、かつそれを高電子グレード(HEG)グラフェン(n<約3)に変換するための拡張可能な技術に関する。また、あるいくつかの例示的な実施形態は、例えば、種々の応用(例えば、半導体の太陽電池を含む)のために遍在的に使用される金属酸化物窓電極の代替えとしての透明な(可視および赤外スペクトルの両方の点に関して)導電性の極薄のグラフェンフィルムにおけるHEGグラフェンの使用に関する。あるいくつかの例示的な実施形態の成長技術は、ガラスにやさしい十分に低い温度で行われる、触媒作用により推進されるヘテロエピタキシャルCVDプロセスに基づく。例えば、熱力学も反応速度論の法則も、約700℃未満の温度でシード触媒層上にガス相からHEGグラフェンフィルムを結晶化させる。
【0010】
また、あるいくつかの例示的な実施形態は、基板上における非晶質の炭素質汚染物(carbonaceous contamination)を除去し、かつそれを低温プロセスでなし得るための効力のあるラジカルであることが示されている、原子状水素を使用する。また、これは、酸化物およびエッチング手順により放置される他の重なった層の除去において非常によい。
【0011】
本発明のあるいくつかの例示的な実施形態は、ドープされたグラフェン薄膜の製造方法に関する。中間体グラフェン薄膜は、実質的に単一配向性の大きな粒子の結晶構造を有する触媒薄膜上にヘテロエピタキシャル成長される。ドープされたグラフェン薄膜の製造において、中間体グラフェン薄膜は、n型またはp型ドーパントをドープされる。ドープされたグラフェン薄膜は、150オーム/スクウェア未満のシート抵抗を有する。
【0012】
あるいくつかの例示的な実施形態において、中間体グラフェン薄膜のドーピングは、中間体グラフェン薄膜をドーパントとして用いられる材料を含むドーピングガスに曝露させ;中間体グラフェン薄膜およびドーピングガスを含むチャンバー内にプラズマを発生させ;かつドーパントガス中の材料を用いて、中間体グラフェン薄膜中にドーパントを低いエネルギーイオンビーム注入することを含む。
【0013】
あるいくつかの例示的な実施形態において、中間体グラフェン薄膜のドーピングは、その中に半導体のドーパントを含むターゲット受電基板を用意し、ターゲット受電基板がターゲット受電基板をつくるために用いられる溶融工程によってその中にドーパントを含み;かつ熱拡散により、ターゲット受電基板中の半導体のドーパントを中間体グラフェン薄膜中に移動させることを含む。
【0014】
あるいくつかの例示的な実施形態において、中間体グラフェン薄膜のドーピングは、その中に半導体のドーパントを含むターゲット受電基板を用意し、ターゲット受電基板がイオンビームによってその中にドーパントを含み;かつ熱拡散により、ターゲット受電基板中の半導体のドーパントを中間体グラフェン薄膜中に移動させることを含む。
【0015】
あるいくつかの例示的な実施形態において、中間体グラフェン薄膜のドーピングは、その上に配置された少なくとも1つの薄膜を有するターゲット受電基板を用意し、薄膜がその中に半導体ドーパントを含み;かつ熱拡散により、ターゲット受電基板上に形成された少なくとも1つの薄膜中の半導体のドーパントを、中間体グラフェン薄膜中に移動させることを含む。
【0016】
あるいくつかの例示的な実施形態において、中間体グラフェン薄膜のドーピングは、触媒薄膜中に半導体のドーパントを予備注入し;かつ熱拡散により、触媒薄膜中の半導体のドーパントを中間体グラフェン薄膜中に移動させることを含む。熱拡散は、例えば、中間体グラフェン薄膜の堆積の間に起こってもよい。
【0017】
本発明のあるいくつかの例示的な実施形態は、実質的に単一配向性の大きな粒子の結晶構造を有する金属触媒薄膜上に直接または間接的にヘテロエピタキシャル成長されたドープされたグラフェン薄膜に関する。グラフェン薄膜は、1〜10原子層厚さである。ドープされたグラフェン薄膜は、150オーム/スクウェア未満のシート抵抗を有する。
【0018】
あるいくつかの例示的な実施形態において、ドープされたグラフェン(n>=2)層は、いずれか1つ以上の:窒素、ホウ素、リン、フッ化物、リチウム、カリウムおよび硫黄でドープされていてもよい。あるいくつかの例示的な実施形態において、ドープされたグラフェン薄膜は、10〜20オーム/スクウェアのシート抵抗を有していてもよい。あるいくつかの例示的な実施形態のドープされたグラフェン薄膜は、n型またはp型ドーパントを含む。
【0019】
ここに記載される要件、特徴、利点およびいくつかの例示的な実施形態は、まださらなる実施形態を組み合わせてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図面の簡単な説明
これらおよびその他の要件ならびに効果は、次の図面と関連して例示的な実証となる実施形態の詳細な記載を参照することにより、よりかつさらに完全に理解される。
【図1】図1は、あるいくつかの例示的な実施形態の全体的な技術を説明する高レベルフローチャートであり;
【図2】図2は、あるいくつかの例示的な実施形態に基づく、炭化水素ガスの導入、炭素の分解および急冷の可能な結果を説明する、あるいくつかの例示的な実施形態の触媒成長技術の例示的な概略図であり;
【図3】図3は、あるいくつかの例示的な実施形態に基づく、グラフェンにドーピングするための第1の例示的な技術を説明するフローチャートであり;
【図4】図4は、あるいくつかの例示的な実施形態に基づく、グラフェンにドーピングするための第2の例示的な技術を説明するフローチャートであり;
【図5】図5は、あるいくつかの例示的な実施形態に基づく、グラフェンにドーピングするための第3の例示的な技術を説明する例示的な概略図であり;
【図6】図6は、あるいくつかの例示的な実施形態に基づく、グラフェンのドーピングに関係する温度対時間をプロットするグラフであり;
【図7】図7は、あるいくつかの例示的な実施形態のグラフェン剥離(release or debonding)技術において有用な例示的な積層であり;
【図8】図8は、あるいくつかの例示的な実施形態に基づく、ターゲットガラス基板上にグラフェンを配置するために用いることができるラミネート加工装置の例示的な概略図であり;
【図9】図9は、例示的な実施形態に基づく、高電子グレード(HEG)グラフェン堆積に適した反応容器の断面概略図であり;
【図10】図10は、あるいくつかの例示的な実施形態の、特定の例示的な触媒CVD成長、リフトオフおよび転写技術を説明する例示的なプロセスフローであり;
【図11】図11は、あるいくつかの例示的な実施形態に基づく、製造されたサンプルグラフェンの画像であり;
【図12】図12は、あるいくつかの例示的な実施形態に基づく、グラフェンベースの層を組み込む太陽光光電変換デバイスの断面概略図であり;
【図13】図13は、あるいくつかの例示的な実施形態に基づく、グラフェンベースの層を組み込んだタッチスクリーンの断面概略図であり;かつ
【図14】図14は、あるいくつかの例示的な実施形態に基づく、導電性のデータ/バスラインを形成するための例示的な技術を説明するためのフローチャートであり;かつ
【図15】図15は、あるいくつかの例示的な実施形態に基づく、導電性のデータ/バスラインを形成するための技術の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
発明の例示的な実施形態の詳細な記載
本発明のあるいくつかの例示的な実施形態は、単結晶構造のグラファイト(nは約15と同程度に大きい)をヘテロエピタキシャル成長させ、かつそれを高電子グレード(HEG)グラフェン(n<約3)に変換するための拡張可能な技術に関する。また、あるいくつかの例示的な実施形態は、例えば、種々の応用(例えば、半導体の太陽電池を含む)のためにより遍在的に使用される金属酸化物窓電極の代替えとしての透明な(可視および赤外スペクトルの両方の点に関して)導電性の極薄のグラフェンフィルムにおけるHEGグラフェンの使用に関する。あるいくつかの例示的な実施形態の成長技術は、ガラスにやさしい十分に低い温度で行われる、触媒作用により推進されるヘテロエピタキシャルCVDプロセスに基づく。例えば、熱力学も反応速度論の法則も(例えば、約600℃未満の温度で)シード触媒層上にガス相からHEGグラフェンフィルムを結晶化させる。
【0022】
図1は、あるいくつかの例示的な実施形態の全体的な技術を説明する高レベルフローチャートである。図1に示されるように、あるいくつかの例示的な実施形態の全体的な技術は、4つの基本的なステップ:適切な背部支持体上へのグラフェン結晶生成(ステップS101)、背部支持体からのグラフェン剥離(ステップS103)、ターゲット基板または表面へのグラフェン転写(ステップS105)および生成物中へのターゲット基板または表面の導入(ステップS107)の1つに属するように分類することができる。以下により詳細に説明するように、ステップS107で述べる生成物は、中間生成物または最終生成物であってもよいことが理解される。
【0023】
例示的なグラフェン結晶生成技術
あるいくつかの例示的な実施形態のグラフェン結晶生成技術は、炭化水素ガスを「熱分解」し、広い領域(例えば、1メートルまたはそれ以上の面積)上にわたる、よく知られたハニカム構造中に炭素原子を再配置し、例えば、表面触媒経路を活用することとみなすことができる。あるいくつかの例示的な実施形態のグラフェン結晶生成技術は、高温かつ中程度の圧力で行われる。この例示的なプロセスの詳細な説明は、以下に詳細に記載される。
【0024】
あるいくつかの例示的な実施形態の触媒成長技術は、ヘテロエピタキシャル領域にグラファイトを成長させるために使用されている技術にいくらか関係する。グラフェン結晶生成のための触媒は、適切な背部支持体上に配置される。背部支持体は、例えば、セラミックスまたはガラス製品、ジルコニウムを含む材料、窒化アルミニウム材料、シリコンウエハなどといった高温加熱(例えば、約1000℃以下の温度)に耐え得るどのような適切な材料であってもよい。薄膜は、背部支持体上に直接または間接的に配置され、それにより、その表面は、結晶生成プロセス前に実質的に汚染されないことを確実にする。本発明者は、触媒層が実質的に単一配向性の結晶構造を有するときに、グラフェン結晶生成が促進されることを見出した。この点について、モザイク構造が最終的にグラフェン層に転写されるので、小さな粒子は、有利性がより小さいことがわかっている。いずれにしても、結晶構造の特定の配向性は、少なくとも本質的部分の触媒層が単一配向性の結晶構造を有することを条件として、グラフェン結晶生成のために主として重要でないことが見出された。実際、触媒中に粒界が相対的に欠如していること(または低いこと)は、成長したグラフェンのための同一または類似の配向性をもたらすことが見出され、かつ高電子グレード(HEG)グラフェンを提供することが見出されている。
【0025】
触媒層自体は、例えば、スパッタリング、燃焼蒸着(combustion vapor deposition)(CVD)、火炎熱分解(火炎熱分解)などといったいずれかの適切な技術により、背部支持体上に配置されてもよい。触媒層自体は、いずれかの適切な金属または金属含有材料を含んでいてもよい。例えば、触媒層は、例えば、ニッケル、コバルト、鉄、パーマロイ(例えば、一般的に約20%鉄および80%ニッケルを含むニッケル鉄合金)、ニッケルおよびクロムの合金、銅ならびにそれらの組み合わせといった金属を含んでもよい。当然ながら、あるいくつかの例示的な実施形態に関して、他の金属は使用されてもよい。発明者は、ニッケルの触媒層またはニッケルを含む触媒層がグラフェン結晶生成のために特に有利であること、およびニッケルおよびクロムの合金がより一層有利であることを発見した。また、発明者は、ニッケル−クロム層(時には、ニクロムまたはNiCr層とも呼ばれる)中のクロムの量が大きな結晶の形成を促進するように最適化できることを発見した。特に、NiCr層中の3〜15%Crが好ましく、NiCr層中の5〜12%Crがより好ましく、かつNiCr層中の7〜10%Crがさらに一層好ましい。また、金属薄膜中のバナジウムの存在は、大きな結晶の成長を促進するために有利であることが見出されている。触媒層は、相対的に薄い部分または厚い部分があってもよい。例えば、薄膜は50〜1000nmの厚さ、より好ましくは75〜750nmの厚さ、かつより一層好ましくは100〜500nmの厚さであってもよい。「大きな結晶の成長」は、ある例において、数10ミクロン程度および時にはそれより大きい、主軸に沿った長さを有する結晶を含み得る。
【0026】
触媒薄膜が背部支持体上に一旦堆積されると、炭化水素ガス(例えば、C2H2ガス、CH4ガスなど)を、触媒薄膜が堆積された背部支持体が配置されたチャンバー内に導入する。炭化水素ガスは、約5〜150ミリトル、より好ましくは10〜100ミリトルの範囲の圧力で導入できる。一般に、圧力が高くなるほど、グラフェンの成長がより早い。次いで、全体として背部支持体および/またはチャンバーを加熱して、炭化水素ガスを分解または「分解して開裂」する。例えば、背部支持体は、600〜1200℃、より好ましくは700〜1000℃、かつより一層好ましくは800〜900℃の範囲の温度に上昇させてもよい。加熱は、例えば、短波赤外線(IR)ヒーターといった任意の適切な手法により達成してよい。加熱は、アルゴン、窒素、窒素と水素の混合物といったガスを含む環境または他の適切な環境で行われてもよい。換言すれば、炭化水素ガスの加熱は、あるいくつかの例示的な実施形態において、他のガスを含む環境で行われてもよい。あるいくつかの例示的な実施形態において、純粋な炭化水素ガス(例えば、C2H2を有する)を使用することが好ましいが、炭化水素ガスと、別の不活性ガスまたは他のガスの混合物(例えば、Arと混合されたCH4)を使用することも好ましい。
【0027】
グラフェンは、このまたは他の適切な環境で成長する。成長を停止させかつグラフェンが触媒の表面に成長すること(例えば、触媒内に埋め込まれることに対抗するように)を確実に補助するために、あるいくつかの例示的な実施形態は、急冷プロセスを行う。急冷は、例えば、アルゴン、窒素、その組み合わせなどといった不活性ガスを使用して行ってもよい。触媒層の表面上へのグラフェン成長を促進するために、急冷はかなり素早く行うべきである。さらに詳しくは、急冷が早過ぎるまたは遅すぎる結果、触媒層の表面上へのグラフェン成長は不十分か、またはないことが見出された。一般に、背部支持体および/または基板の温度を数分の間に約900℃から700度(またはより低い)に減じるための急冷は、例えば、化学吸着による良好なグラフェン成長、を促進することが見出された。この点について、図2は、あるいくつかの例示的な実施形態に基づく、炭化水素ガスの導入、炭素の分解および急冷の可能な結果を説明する、あるいくつかの例示的な実施形態の触媒成長技術の例示的な概略図である。
【0028】
グラフェン成長プロセスは、厳密なフィルムの厚さの関係t=n×SLG(ここで、nはいくつかの別個のステップ数を意味する)を与える。もしグラフェンが製造されたかどうかを素早く確定し、フィルム領域にわたるnの値を決定することにより、単一の測定においてフィルムの質と均質性とを測定することとほぼ等価である。グラフェンシートは、原子間力および走査電子顕微鏡により見ることができるが、これらの技術は、時間がかかり、グラフェンの汚染を導き得る。したがって、あるいくつかの例示的な実施形態は、対象とする触媒表面上のグラフェンの見やすさを増進する、位相差手法を用いる。これは、金属触媒フィルム上の堆積表面上のn値における変動のマッピングを考慮して行うことができる。その手法は、グラフェンのコントラストがその上に材料をスピンコーティングすることにより実質的に増進され得るという事実を基にする。例えば、広く使用される紫外線硬化性レジスト(例えば、PMMA)は、例えばフィルムを可視的にしかつ連続的にさせる十分な厚さ(例えば、約1ミクロンの厚さ)で、グラフェン/金属/背部支持体上にスピンコート、スクリーン印刷、グラビアコーティングされるかまたはそうでなければ配置されてもよい。以下により詳細に説明するように、ポリマーレジストを含めることも、最終表面への転写の前に、グラフェンのリフトオフプロセスを促進できる。すなわち、グラフェン形成が完了するときに表示が行われることに加えて、ポリマーレジストも、以下に詳細に説明するように、金属層が背部支持体から剥離(release)されるかまたはそうでなければ剥離(debond)されるときに、高い弾性グラフェンを支持することができる。
【0029】
層が厚く成長し過ぎた(意図的にまたは意図的でなく)場合には、その層は、例えば、水素原子(H*)を用いて、エッチングすることができる。この手法は、いくつかの例示的な状況において有利であり得る。例えば、予想外に成長が早過ぎて、不均一であった場合、H*はこのような問題を修正するために使用することができる。もう1つの例示として、十分にグラフェンを確実に成長させるために、グラファイトをつくり、グラフェイン(graphane)を堆積し、例えば、H*を用いて、グラフェインを好ましいnレベルHEGグラフェンに選択的にエッチバックしてもよい。さらにもう1つの例示として、例えば、導電性の領域および非導電性の領域をつくるために、選択的にグラフェンをエッチングするためにH*を用いることができる。これは、例えば、適切なマスクを適用し、エッチングを行い、次いでマスクを除去することにより、達成してもよい。
【0030】
グラフェンの理論上の研究は、キャリアの移動度が200,000cm2/(V・s)よりも高くなり得ることを示した。ガス相で処理したヘテロエピタキシャル成長グラフェンの実測は、銀薄膜のそれよりもよい3×10-6Ωcmのように低い抵抗率を示す。このようなグラフェン層のシート抵抗は、約150オーム/スクウェアであることが見出された。変化し得る1つの因子は、最低の抵抗率およびシート抵抗を与えるために必要とされるグラフェン層の数であり、グラフェンの所望の厚さは、ターゲットへの適用に依存して変化してもよいことが理解される。一般に、ほとんどの応用に適したグラフェンは、n=1〜15グラフェン、より好ましくはn=1〜10グラフェン、より一層好ましくはn=1〜5グラフェンであり、かつ時にはn=2〜3グラフェンである。n=1グラフェン層は、透過率が約2.3〜2.6%低下することが見出された。この透過率の減少は、実質的にすべてのスペクトル、例えば、紫外線(UV)から可視を通りかつIRを通る範囲を一般に直線的に越えることが見出された。また、透過における損失は、nのそれぞれの逐次増加に伴って実質的に直線的であることが見出された。
【0031】
例示的なドーピング技術
150オーム/スクウェアのシート抵抗は、ある例示的な応用に適するが、シート抵抗におけるさらなる低下は、異なる例示的な応用のために好ましいことがあると理解できる。例えば、10〜20オーム/スクウェアのシート抵抗は、ある例示的な応用のために好ましいことがあると理解できる。本発明者は、グラフェンのドーピングによってシート抵抗をより低くできることを決定している。
【0032】
この点について、1原子層だけの厚さであるグラフェンは、サブミクロンスケール上で弾道輸送を示し、移動度を著しく損失することなく、n≧2である場合には、ゲート電圧または分子吸着もしくは挿入物によって、濃密にドーピングされ得る。グラフェンにおいて、ドナー/アクセプターの区別とは別に、一般にドーパントの2つの異なる種類、すなわち、常磁性体および非磁性体があることが、本発明者によって確定された。従来の半導体と対比して、後者のタイプの不純物は、全般的に比較的弱いドーパントとして作用するが、常磁性の不純物は強いドーピングの原因となる:グラフェンのディラック点に近くで、電子−正孔対称状態密度(DOS)が直接的に消失するので、スピン偏極のない局在化された不純物状態は、擬似ギャップ(pseudo-gap)の中心に固定される。したがって、グラフェン中の不純物状態は、普通の半導体におけるそれらの対応物からは強く区別され、ここでは、価電子帯および伝導帯におけるDOSは非常に異なり、かつ不純物レベルはギャップの中間から一般に遠く離れて位置する。フェルミレベルから10分の数電子ボルト離れた明確なドナー(またはアクセプター)のレベルの存在が要求される強いドーピング効果を期待しないだろうが、不純物が局部的な磁気能率を有するのであれば、そのエネルギーレベルは、グラフェンに存在するものといったディラック様スペクトルを有する2次元系の電子構造における強いドーピング不純物効果のための有利な場面を提供する、1eV程度のフントの交換によって、多少対称的に分割される。この一連の論法は、グラフェンにドーピングするための常磁性の単分子および反磁性のダイマー系の両方を形成し、その導電率を103s/cmから105s/cmまで、かつ時には106s/cmまでに向上させるための分子の選択を導くために用いてもよい。
【0033】
あるいくつかの例示的な実施形態に関して、使用に適したドーパントの例は、窒素、ホウ素、リン、フッ化物、リチウム、カリウム、アンモニウムなどを含む。また、硫黄ベースのドーパント(例えば、二酸化硫黄)もあるいくつかの例示的な実施形態に関して、使用してもよい。例えば、ガラス基板中に存在する硫化物は、ガラスから滲出することにより、グラフェンベースの層にドープされることになってもよい。グラフェンドーピング技術のいくつかの例は、以下により詳細に示される。
【0034】
図3は、あるいくつかの例示的な実施形態に基づく、グラフェンにドーピングするための第1の例示的な技術を説明するフローチャートである。図3は、グラフェン中にドーピング材料をイオンビーム注入することを本質的に含む手法を例示する。この例示手法において、グラフェンは、例えば、上記のように金属触媒上に成長される(ステップS301)。形成されたグラフェンをその上に有する触媒は、ドーパントとして使用される材料を含むガス(また時として、ドーパントガスと呼ぶ)に曝露される(ステップS303)。次いで、プラズマを、形成されたグラフェンをその上に有する触媒とドーパントガスとを含むチャンバー内に発生させる(S305)。次いで、イオンビームは、グラフェン中にドーパントを注入するために使用される(S307)。この種のドーピングに適した例示的なイオンビーム技術は、例えば、米国特許第6,602,371号、第6,808,606号および第Re.38,358号ならびに米国公開第2008/0199702号に開示され、それぞれを参照としてここに組み込む。イオンビーム出力は、約10〜200eV、より好ましくは20〜50eV、より一層好ましくは20〜40eVであってもよい。
【0035】
図4は、あるいくつかの例示的な実施形態に基づく、グラフェンにドーピングするための第2の例示的な技術を説明するフローチャートである。図4は、ターゲット受電基板に半導体のドーパントを予備注入すること、および次いで、グラフェンを受電基板に適用するときに、グラフェン中へのこれらの半導体のドーパントの移動を引き起こすことを本質的に含む手法を例示する。この例示的な手法において、グラフェンは、例えば、上記のように金属触媒上に成長される(ステップS401)。受電基板は、その中に半導体のドーパントが含まれるように予備調製する(ステップS403)。例えば、半導体のドーパントは、溶融によってガラスの組成に含めることができる。約1〜10原子%、より好ましくは1〜5原子%、かつより一層好ましくは2〜3原子%ドーパントは、溶融ガラス中に含まれていてもよい。グラフェンは、例えば、下記に詳細に記載される例示的な技術の1つを使用して、受電基板に適用される(ステップS405)。次いで、受電基板中の半導体のドーパントは、グラフェン中に移動させられる。グラフェンの堆積に使用される加熱は、形成されているグラフェン層に向かってドーパントを移動させる。同様に、さらにドープされたフィルムをガラス上に含めて、その中のドーパントが熱拡散によりそれらの層を通して移動するようにして、例えば、ドープされたグラフェン(n>=2)層をつくることができる。
【0036】
また、あるいくつかの例示的な実施形態において、イオンビームを用いて、ガラス中にドーパントを直接注入できる。イオンビーム出力は、約10〜1000eV、より好ましくは20〜500eV、より一層好ましくは20〜100eVであってもよい。中間層がドープされ、グラフェンのための不純物を備えるために使用されるとき、イオンビームは、約10〜200eV、より好ましくは20〜50eV、より一層好ましくは20〜40eVで操作されてもよい。
【0037】
図5は、あるいくつかの例示的な実施形態に基づく、グラフェンにドーピングするための第3の例示的な技術を説明する例示的な概略図である。図5は、金属触媒層503中に半導体のドーパント507を予備注入すること、および次いで、グラフェンが形成されるにつれて、触媒層503を通してこれらの半導体のドーパント507を移動させて、これにより触媒層503の表面上にドープされたグラフェン509をつくることを本質的に含む手法を例示する。特に、この例示的な手法において、触媒層503は、背部支持体505上に配置される。触媒層503は、その中に半導体のドーパント507を含む。換言すれば、触媒は、そのバルクの内に半導体のドーパント原子(例えば、約1〜10%、より好ましくは約1〜5%、かつ最も好ましくは約1〜3%)を有する。炭化水素ガス501は、高温で、形成された触媒層503の近くに導入される。触媒層503中の半導体のドーパント507は、グラフェン結晶生成が行われるにつれて、例えば高温で、その外表面に向かって移動させられる。ドーパントが表面に到達する速度は、触媒厚さおよび温度の関数であることが見出された。結晶生成は、急冷により停止され、かつ最終的に、ドープされたグラフェン509は、触媒層503’の表面上に形成される。ドープされたグラフェン509の形成の後に、触媒層503’は、その中に配置されたより少ない半導体のドーパント507を有する(または全く有さない)。この例示的な手法の1つの利点は、急冷速度プロセスで使用される反応ラジカルと同様に、金属表面温度、分圧および堆積ガス種の滞留時間を思慮深く変化させることにより、極薄膜成長を制御する可能性に関する。
【0038】
これらの例示的なドーピング技術は、単独でおよび/または各組み合わせおよび互いにおよび/またはさらなる技術の補助の組み合わせで使用されてもよいことが理解できる。さらに、あるいくつかの例示的な実施形態は、例えば、特定の例示的な手法を1回用いて、特定の手法を繰り返してまたは各回1回以上の複数の技術の組み合わせを通して、単一のドーパント材料または複数のドーパント材料を含むことができると理解できる。例えば、あるいくつかの例示的な実施形態において、p型およびn型のドーパントが可能である。
【0039】
図6は、あるいくつかの例示的な実施形態に基づく、グラフェンのドーピングに関係する温度対時間をプロットするグラフである。前述のとおり、冷却は、例えば不活性ガスを使用して達成してもよい。一般にかつまた前述のとおり、高温はあるいくつかの例示的な実施形態において約900℃であってもよく、かつ低温は約700℃であってもよく、かつ冷却は数分間で行ってもよい。グラフェンがドープされるかに関係なく、図6に示すのと同じ加熱/冷却プロファイルを使用してもよい。
【0040】
例示的なグラフェン剥離(release/debonding)および転写技術
グラフェンは一旦ヘテロエピタキシャル成長されると、これは、例えば、中間または最終生成物に含まれるように基板上に配置する前に、金属触媒および/または背部支持体から剥離してもよい。各種手段を、あるいくつかの例示的な実施形態に基づいて、それらの成長基板からエピタキシャルフィルムをリフトするために用いてもよい。図7は、あるいくつかの例示的な実施形態のグラフェン剥離技術において有用な例示的な積層である。図7を参照して、あるいくつかの例示的な実施形態において、任意の剥離層(release layer)701を、背部支持体505と触媒層503との間に備えてもよい。この剥離層701は、例えば、酸化亜鉛(例えば、ZnOまたは他の適切な化学量論)であるかまたはそれを含んでいてもよい。グラフェン堆積の後に、グラフェン509/金属触媒層503/剥離層701スタックで被覆された基板505は、例えば、メニスカスフローなどにより施されるスピンコーティングによって適用される、ポリマーの厚いオーバーコート層703(例えば、数ミクロンの厚さ)を受けてよく、これは硬化されてもよい。また上記で指摘したように、このポリマー層703は、リフトオフおよび/または剥離の間に、非常に柔軟なグラフェンフィルムを連続的に保ちながら、グラフェンフィルムが巻き上がったり、折れたりそうでなければ変形したりする可能性を低減させる、グラフェン509用の基幹または支持体として作用してもよい。
【0041】
また上記で指摘したように、PMMAは、位相差によりグラフェンが可視化されるようにかつリフトオフ前および/またはリフトオフの間に支持するためのポリマーとして使用してもよい。しかしながら、機械的および化学的特性がグラフェンのものと適合し得る広い範囲のポリマーは、あるいくつかの例示的な実施形態に関して、剥離転写(release transfer)段階および支持段階中に用いてもよい。リフトオフのための作業は、例えば、グラファイトから化学的に剥離することができるグラフェンフィルムと共に実験することによる主となるエピタキシャル成長の分枝と、並行して行ってもよい。
【0042】
剥離層は、一旦母基板の上にポリマー層が配置されたら、母基板からグラフェン/金属を分離するように、化学的に誘導してもよい。例えば、酸化亜鉛剥離層の場合、酢(vinegar)での洗浄は、グラフェンの剥離を誘発できる。また、酸化亜鉛剥離層の使用は、本発明者が金属触媒層も剥離層と共にグラフェンから除去されることを発見しているので、有利である。これは、触媒層中で粒子と形成されるその連結と共に酸化亜鉛剥離層によって起こるテクスチャの結果であると考えられる。これは、後で触媒層を除去する必要性を軽減する(時には、除去さえする)ことと理解される。
【0043】
あるリフトオフ/剥離および転写技術において、元の基板は、再使用可能なエピタキシャル成長基板として本質的にみなされる。したがって、エピタキシャル成長(上部にポリマーを有する)グラフェンから金属触媒薄膜を切り取るまたは溶解するための選択的なエッチングは、このような例示的な実施形態において望ましい。したがって、触媒層は、あるいくつかの例示的な実施形態において、剥離層を使用するかに関係なく、エッチングされてもよい。適切なエッチング液は、例えば塩酸、リン酸などといった酸を含む。
【0044】
最終受容ガラス基板表面は、グラフェン層を受け入れるようにつくられる。例えば、ラングミュア−プロジェットフィルム(例えば、ラングミュア−プロジェット酸からの)は、ガラス基板に適用してもよい。最終受容基板は、代わりにまたは追加で、例えば、シリコンベースのポリマーなどといった平滑なグラフェン親和性層で被覆してもよく、このことにより、後者がグラフェンを受容的にすることができる。これは、静電結合を確実にすることを促し、したがって、転写の間、グラフェンの転写を優先的に許容する。ターゲット基板は、追加でまたは代わりに、例えば、ターゲット基板の表面エネルギーを増大させ、したがってグラフェンをさらに受容的にするように、紫外線に曝露してもよい。
【0045】
グラフェンは、あるいくつかの例示的な実施形態において、ブランケットスタンピング(blanket stamping)および/またはローリングにより、基板に適用してもよい。このようなプロセスは、金属キャリア上に予め成長させ、化学吸着させたグラフェンが、接触圧力により受容ガラスに転写されることを可能にする。1つの例示として、グラフェンは、例えば、図8に示されるように、1つ以上のラミネート積層ローラーにより基板に適用される。この点について、図8は、圧力を印加して、グラフェン509およびポリマー層703をターゲット基板801に積層させる、上部および下部ローラー803aおよび803bを示す。上記のように、ターゲット基板801は、その上に積層を促進するシリコン含有または他のグラフェン親和性層を有する。ポリマー層703は最外層として適用され、グラフェン509はターゲット基板801により近い(またはその上に直接存在する)ことと理解される。あるいくつかの例示的な実施形態において、1つ以上の層は、グラフェンの適用前に、基板上に備えられてもよい。
【0046】
グラフェンがターゲット基板上に一旦堆積されると、ポリマー層は除去されてもよい。あるいくつかの例示的な実施形態において、ポリマーは、適切な溶媒を使用して溶解させてもよい。PMMAといった感光材料が使用されるとき、これは紫外線光への曝露により除去される。当然ながら、他の除去技術も可能である。
【0047】
あるいくつかの例示的な実施形態において、触媒薄膜は、グラフェンがターゲット基板に適用された後で、例えば、上記の例示されたエッチング液を用いて、エッチングしてもよいことが理解される。また、エッチング液の選択は、グラフェンの下にあるいずれかの層の存在または非存在に基づけばよい。
【0048】
あるいくつかの例示的な実施形態は、グラフェンの下の金属触媒薄膜をより直接的に電気化学的に陽極酸化する。このようないくつかの例示的な実施形態において、グラフェン自体は、元の基板と結合されたままで下の金属が透明酸化物に陽極酸化されるので、カソードとして作用できる。このような例示的な実施形態は、1つのステップにおいて本質的にリフトオフおよび転写プロセスを行うことにより、ポリマーのオーバーコートの使用を回避するために用いてもよい。しかしながら、電気化学的手段による陽極酸化は、グラフェンの電子特性に影響を与え、たがって補償する必要があることがある。あるいくつかの例示的な実施形態において、グラフェン下の触媒層は、それを透明にさせる他の方法で酸化させてもよい。例えば、導電性の酸化物は、グラフェンベースの層を基板、半導体または他の層に「結合(link)」させるために使用してもよい。この点について、コバルト、クロムコバルト、ニッケルクロムコバルトおよび/またはその他は、酸化されてもよい。あるいくつかの例示的な実施形態において、またこれは、グラフェンリフトオフの必要性を軽減して、グラフェンの転写、操作および他の取り扱いを容易にする。
【0049】
また、あるいくつかの例示的な実施形態において、グラフェンは、接着剤またはテープ様の材料を使用して取り上げてもよい。接着剤は、ターゲット基板上に位置してもよい。グラフェンは、例えば、圧力を印加した後に、テープよりもさらに強く基板に接着させることによりターゲット基板に転写されてもよい。
【0050】
例示的な反応容器の設計
シャワーヘッド反応器は、一般に、第2の平行な平坦な加熱された表面に反応ガスをおおよそ均等に分配するための貫通したまたは多孔性の平坦な表面を使用する。このように構成は、ここに記載された例示的なヘテロ−エピタキシャル技術を用いるグラフェンの成長のために使用してもよい。また、シャワーヘッド反応器は、大きな四角形の超平滑ガラスまたはセラミック基板の加工に有利である。図9は、シャワーヘッド反応器の基本的な概略図であり、プレナム設計(plenum design)を拡大して示す。換言すれば、図9は、例示的な実施形態に基づく、高電子グレード(HEG)グラフェン堆積に適した反応容器の断面概略図である。反応器は、いくつかの注入口および排出口を有する本体部分901を含む。さらに詳しくは、ガス注入口903は、上端でかつ反応器の本体部分901のおおよその水平の中心に備えられている。ガス注入口903は、1つ以上の源からガスを受け、したがって、例えば、炭化水素ガス、ヘテロ−エピタキシャル成長の間に環境を形成するために使用されるガス、急冷ガスなど各種ガスを提供してもよい。ガスの流れおよび流量は、例えば、シャワーヘッド907のプレナム設計を参照して、以下により詳細に記載する。複数個の排気口905は、反応器の本体部分901の下端に備えられていてもよい。図9の例示的な実施形態において、2つの排気口905は、例えば、本体部分901の実質的に全体に通常は貫流する、ガス注入口903により供給されるガスが吐き出されるように、反応器の本体部分901の両極端の近くに備えられている。あるいくつかの例示的な実施形態において、いくらかの排気口905が備えられていてもよい(例えば、さらなる排気口905は、反応器の本体部分901のおおよその水平中心、反応器の本体部分901の上端または側面などに備えられていてもよい)ことが理解される。
【0051】
背部支持体基板909は、浄化してもよく、あるいくつかの例示的な実施形態において、ロードロック機構により反応器内に入れる前に、(例えば、物理的気相成長法またはPVD、スパッタリング、CVD、火炎熱分解などにより)その上に配置された触媒薄膜を有してもよい。サセプタ設計に関して、背部支持体基板909の表面は、(i)金属フィルムが結晶化および活性化し、(ii)その表面上に、ガス相前駆体から実質的に均一かつ制御し得る厚さでグラフェンを優先的に堆積することを可能にする、制御し得る温度レベルおよび均一性まで(例えば、チャンバー全体の加熱をも必要とすることなしに、RTAヒーター、短波赤外線ヒーターまたは基板および/またはその上の層を誘導的に加熱させ得る他の適切なヒーターを使用して)急速に加熱されてもよい。ヒーターは、パラメータ堆積速度/(温度×厚さ)の触媒比率となるように制御され得る。背部支持体基板909は、反応器中を方向Rに進んでもよいか、またはシャワーヘッド907の下に静止して置かれていてもよい。シャワーヘッド907は、例えば、1つ以上のクーラント注入口/排出口913により導入される冷却流動体またはガスを使用して、冷却されてもよい。簡単にいえば、図9の拡大図に示されるように、プレナム設計は、シャワーヘッド907の底に、それぞれ数ミリメートルのみの幅を有する、複数の開口を含んでいてもよい。
【0052】
シーリングギャップHcまたはシャワーヘッド907の底表面と背部支持体基板909が移動する上表面との間の高さの変更は、いくつかの効果を有する。例えば、チャンバー容積、したがって表面と容積との比率が変更され、それによりガス滞留時間、消費時間および半径方向の速度(radial velocities)が影響を受ける。滞留時間における変更は、ガス相反応程度に強く影響することが見出された。図9に示されるように操作されるシャワーヘッド構成(冷却された表面の下に熱い表面を有する)は、もし高圧で(例えば、数百Torrで)操作されるならば、ベナール型自然対流のポテンシャルを有し、このような傾向はレイリー数(自由対流または自然対流として公知でもある、浮力駆動流と関連する無次元数;流体の臨界値を超えたときに、加熱転写は主として対流の形態となる)による高さによって強く影響される。したがって、シーリングギャップHcは、グラフェンのヘテロ−エピタキシャル成長に影響するように、基板電極の調節可能な取り付け台を備えることなどにより、単なるハードウェアの変更を通じて変更されてもよい。
【0053】
図9実施形態の例は、反応器中でのプラズマを操作することを必ずしも意図しない。これは、結晶フィルム成長機構が、表面収着によるヘテロ−エピタキシャル(一般に、触媒上のみで発生する)によるからである。プラズマ相からの成長は、主に非晶質フィルムを生じることが見出され、またフィルム品質を大きく低下させ、かつ結果として1:10(one-to-ten)原子層フィルムにとって有害であるピンホールになり得る、マクロ粒子形成またはダスト形成を可能にすることが見出された。その代わりに、あるいくつかの例示的な実施形態は、グラファイト(例えば、単結晶構造のグラファイト)の形成、そのグラフェイン(例えば、あるn値の)へのエッチング、およびグラフェインのグラフェン(例えば、HEGグラフェンへの)転換を含んでもよい。当然ながら、その場終点手法は、フィードバックパラメータとして実施してもよい。
【0054】
あるいくつかの例示的な実施形態において、イオンビーム源は、例えば、上記の例示的な技術に基づくドーピングを行うために、図9の反応器における外側であるがインラインで配置されていてもよい。しかしながら,あるいくつかの例示的な実施形態において、イオンビーム源は、反応器の本体部分内に配置されていてもよい。
【0055】
例示的なプロセスフロー
図10は、あるいくつかの例示的な実施形態の、特定の例示的な触媒CVD成長、リフトオフおよび転写技術を説明する例示的なプロセスフローである。図10に示される例示的なプロセスは、例えば、従来のガラス検査方法(ステップS1002)および洗浄(ステップS1004)を使用して、背部支持体ガラスの検査から開始する。次いで、背部支持体ガラスは、イオンビーム洗浄、プラズマ灰化(ashing)などを使用して洗浄してもよい(ステップS1006)。触媒(例えば、金属触媒)は、例えば、PVDを使用して背部支持体上に配置してもよい(ステップS1008)。本発明のあるいくつかの例示的な実施形態において、ステップS1006の洗浄プロセスは、グラフェンコーター/反応器内で達成してもよいことに注意されたい。換言すれば、金属触媒薄膜がその上に形成されているかまたはされていない背部支持体ガラスは、あるいくつかの例示的な実施形態において、例えば、金属触媒層がコーター/反応器の中またはその前に堆積されているかどうかに応じて、ステップS1006の前に、グラフェンコーター/反応器中に装着されてもよい。次いで、n層グラフェンの触媒堆積が行われてもよい(ステップS1010)。グラフェンは、あるいくつかの例示的な実施形態において、水素原子(H*)が導入されることによりエッチングされてもよく、グラフェンは、例えば、目的とする用途に応じて、任意にドープされていてもよい(ステップS1012)。グラフェン形成の終了は、例えば、十分にグラフェンが堆積されたかどうかおよび/またはH*エッチングが十分であるかどうかを決定することにより検出される(ステップS1014)。グラフェン形成を停止するために、超急冷プロセスが使用され、グラフェンがその中に形成された背部支持体ガラスが反応器/コーターを出る(ステップS1016)。外観検査は、この点で任意に行われてもよい。
【0056】
グラフェン形成に続いて、グラフェンの転写に有用なポリマーは、例えば、スピン、ブレードまたは他のコーティング手法により、グラフェン上に配置されてもよい(ステップS1018)。この生成物は、例えば、必要な色変化が生じているかどうかを決定するために、任意に検査されてもよい。もしそれを有するならば、(例えば、加熱、紫外線照射などを使用して)ポリマーを硬化させ(ステップS1020)、次いで再び検査してもよい。金属触媒は、例えば、リフトオフのためのグラフェンを準備するために(ステップS1024)、アンダーエッチングまたはそうでなければ剥離をされてもよい(ステップS1022)。
【0057】
リフトオフが一旦達成されたら、ポリマーおよびグラフェンは、任意に検査され、次いで、例えば、残存するアンダーエッチング液および/または非硬化ポリマーを除去するために洗浄されてもよい(ステップS1026)。もう1つの任意の検査プロセスがこの点で行われてもよい。界面活性剤が適用されてもよく(ステップS1028)、ピンが少なくともポリマー内に取り付けて(ステップS1030)、例えば、それらのピンを用いて、メンブレンを反転させる(ステップS1032)。リフトオフプロセスはこれで完了であり、グラフェンはこれで受容基板に転写させる準備ができている。
【0058】
例えば、クリーンルームに、受容基板を準備する(ステップS1034)。例えば、グラフェン親和性コーティングを適用するなどのために、その表面エネルギーを増大させるための紫外線光を照射することにより、受容基板の表面を機能化してもよい(ステップS1036)。次いで、グラフェン/ポリマーメンブレンをホスト基板の上に転写されてもよい(ステップS1038)。
【0059】
転写が一旦完結されると、グラフェンおよびポリマーが付着した受電基板は、ポリマーを除去するためのモジュールに入れられてもよい(ステップS1040)。これは、ポリマーを紫外線光、熱、化学薬品などに曝露することにより行ってもよい。次いで、グラフェンおよび少なくとも部分的に溶解されたポリマーを有する基板は、過剰の水または脱水された他の材料で洗浄し(ステップS1042)、乾燥させてもよい(ステップS1044)。このポリマー除去プロセスは、必要により繰り返してもよい。
【0060】
ポリマーの除去の後に、例えば、標準の4点プローブを使用して、基板上のグラフェンのシート抵抗を測定してもよい(ステップS1046)。また、光の透過(例えば、Tvisなど)を測定してもよい(ステップS1048)。中間または最終生成物が品質規格に適合すると仮定して、それらを包装してもよい(ステップS1050)。
【0061】
これらの技術を用いてサンプルフィルムを準備した。サンプルフィルムは、15500S/cmの高い導電率および500〜3000nm波長にわたって80%を超える透明性を示した。また、フィルムは、良好な化学的および熱的安定性を示した。図11は、あるいくつかの例示的な実施形態に基づく、製造されたサンプルグラフェンの画像である。図11の画像は、パーマロイ薄膜からのヘテロエピタキシャル成長グラフェンのリフトオフを強調する。
【0062】
例示的なグラフェンを含む応用
上記のように、グラフェンベースの層は、広い様々な応用および/または電子デバイスに使用されてもよい。このような例示的な応用および/または電子デバイスにおいて、ITOおよび/または他の導電性の層は、単純にグラフェンベースの層に置き換えられてもよい。グラフェンを有するデバイスの製造は、一般的に金属、ITOのような縮退した半導体、中でもa−SiおよびCdTといった太陽電池半導体などとの接触点を作製することを含む。
【0063】
ゼロバンドギャップを有しかつブリュアンゾーンのK点において状態密度(DOS)が消失するにもかかわらず、自立グラフェンは、金属的性質を示す。しかしながら、金属性、半導性または絶縁性基板上の吸着は、その電子特性を変化させ得る。これを補償するために、代わりにまたは追加で、例示的な応用および/または電子デバイスにおいて、グラフェンベースの層は、そこに隣接するいずれかの半導体層に基づいて、ドープされていてもよい。すなわち、あるいくつかの例示的な実施形態において、もしグラフェンベースの層がn型の半導体層に隣接していれば、グラフェンベースの層は、n型のドーパントでドープされていてもよい。同様に、あるいくつかの例示的な実施形態において、もしグラフェンベースの層がp型の半導体層に隣接していれば、グラフェンベースの層は、p型のドーパントでドープされていてもよい。当然ながら、円錐ポイントに関するグラフェンのフェルミレベルにおけるシフトは、例えば、密度汎関数理論(DFT)を使用してモデル化してもよい。バンドギャップの計算は、金属/グラフェン界面が2つの広い組、すなわち化学吸着と物理吸着とに分類できることを示す。後者の場合、上方への(下方への)シフトは、電子(正孔)が金属によりグラフェンに供与されることを意味する。したがって、用途に応じてグラフェンへの接点としてどの金属またはTCOを用いるかを予測することができる。
【0064】
1つ以上のグラフェンベースの層を使用してもよい第1の例示的な電子デバイスは、太陽光光電変換デバイスである。このような例示的なデバイスは、前面電極または裏面電極を含んでもよい。このようなデバイスにおいて、グラフェンベースの層は、一般にそこに使用されるITOを単純に置き換ることができる。光電変換デバイスは、例えば、米国特許第6,784,361号、第6,288,325号、第6,613,603および第6,123,824;米国公開第2008/0169021号、第2009/0032098号、第2008/0308147号および第2009/0020157;ならびに出願第12/285,374号、第12/285,890号、第12/457,006号に開示され、それらの開示を参照としてここに組み込む。
【0065】
代わりにまたは追加して、ドープされたグラフェンベースの層は、隣接した半導体層と整合させるために、そこに含まれていてもよい。例えば、図12は、あるいくつかの例示的な実施形態に基づく、グラフェンベースの層を組み込む太陽光光電変換デバイスの断面概略図である。図12の例示的な実施形態において、ガラス基板1202が備えられる。例えば、限定されることなしに、ガラス基板1202は、米国特許出願第11/049,292号および/または第11/122,218号のいずれかに記載されたガラスのいずれであってもよく、それらの開示を参照としてここに組み込む。ガラス基板は、例えば太陽電池の効率を増大させるために、任意にナノテクスチャ加工されていてもよい。反射防止(AR)膜1204は、例えば透過を増大させるために、ガラス基板1202の外面に備えられてもよい。反射防止膜1204は、単層反射防止(SLAR)膜(例えば、シリコン酸化物反射防止膜)または多層反射防止(MLAR)膜であってもよい。このようなAR膜は、いずれかの適切な手法を使用して提供してもよい。
【0066】
1つ以上の吸収層1206は、例えば、図12の例示的な実施形態に示されるような裏面電極デバイスの場合、AR膜1204と反対側のガラス基板1202上に備えられていてもよい。吸収層1206は、第1と第2の半導体の間に挟まれていてもよい。図12の例示的な実施形態において、吸収層1206は、n型の半導体層1208(ガラス基板1202により近い)とp型の半導体1210(ガラス基板1202から遠く)との間に挟まれている。また、バック接点1212(例えば、アルミニウムまたは他の適切な材料)が備えられていてもよい。半導体1208とガラス基板1202との間および/または半導体1210とバック接点1212との間に、ITOまたは他の導電性の材料が備えられているよりはむしろ、第1および第2のグラフェンベースの層1214および1216が備えられていてもよい。グラフェンベースの層1214および1216は、隣接した半導体層1208および1210のそれぞれに整合するように、ドープされていてもよい。したがって、図12の例示的な実施形態において、グラフェンベースの層1214は、n型のドーパントでドープされていてもよく、グラフェンベースの層は、1216p型のドーパントでドープされていてもよい。
【0067】
グラフェンを直接テクスチャ加工することは困難であるので、任意の層1218は、ガラス基板1202と第1のグラフェンベースの層1214との間に備えられていてもよい。しかしながら、グラフェンは非常に柔軟であるので、一般にそれが位置する表面に適合する。したがって、任意の層1218のテクスチャが転写されるか、またはそうでなければ、全般的に共形のグラフェンベースの層1214に反映されるように、任意の層1218をテクスチャすることが可能である。この点について、任意のテクスチャ加工された層1218は、亜鉛ドープ酸化錫(ZTO)を含んでいてもよい。あるいくつかの例示的な実施形態において、半導体1218および1210の一方または両方は、ポリマー導電性の材料に置き換えられてもよいことに注意されたい。
【0068】
グラフェンは、近赤外線および中赤外線レンジにおいて、本質的に透明であるので、このことは、最も浸透する長波長放射線が、単一およびタンデム接合太陽電池の両方のi層の深くにキャリアを貫通させかつ発生させることを意味する。これは、その効果が既に数パーセントポイント増大しているので、バック接点をテクスチャ加工する必要性が、グラフェンベースの層には必要でないことを意味する。
【0069】
スクリーン印刷、蒸発および焼結技術、ならびに高温でのCdCl2処理は、現在、CdS/DeTe太陽電池ヘテロ接合において使用されている。これらの電池は、高い曲線因子(FF)を有する(FF>0.8)。しかしながら、直列抵抗Rsは、効率を制限するアーチファクト(artifact)である。Rsにおいて、CdS層のシート抵抗からの分布部分とその上の、CdTeおよびグラファイトベースの接点と関連する別の成分とがある。1つ以上のグラフェンベースの層の使用は、Rsへの両方の寄与の軽減を助け、一方、良好なヘテロ接合特性を維持する。前面およびバック接点配置の両方のために、このような太陽電池の構造にグラフェンを含めることにより、実質的な効率の増幅が達成できる。
【0070】
あるいくつかの例示的な実施形態は、単一接合の太陽電池を含んでいてもよいのに対して、あるいくつかの例示的な実施形態は、タンデム太陽電池を含んでもよいことが理解される。あるいくつかの例示的な実施形態は、CdS、CdTe、CIS/CIG、a−Siおよび/または他の太陽電池のタイプであってもよい。
【0071】
1つ以上のグラフェンベースの層を組み入れていてもよい別の例示的な実施形態は、タッチパネルディスプレイである。例えば、タッチパネルディスプレイは、ITOまたは他の導電性の層を含む、静電容量結合方式または抵抗膜方式タッチパネルディスプレイであってもよい。例えば、米国特許第7,436,393号、第7,372,510号、第7,215,331号、第6,204,897号、第6,177,918号および第5,650,597号ならびに出願第12/292,406号を参照、それらの開示を参照としてここに組み込む。このようなタッチパネルに置き換えてもよいITOおよび/または他の導電性の層は、グラフェンベースの層に置き換えてもよい。例えば、図13は、あるいくつかの例示的な実施形態に基づく、グラフェンベースの層を組み込んだタッチスクリーンの断面概略図である。図13は、あるいくつかの例示的な実施形態において、LCD、プラズマまたは他のフラットパネルディスプレイであってもよい、内在するディスプレイ1302を含む。光学的に透明な接着剤1304は、ディスプレイ1302を薄いガラスシート1306に結合する。変形可能なPETホイル1308は、図13の例示的な実施形態において、一番上の層として備えられて備えられている。PETホイル1308は、実質上の複数のピラースペーサ1310およびエッジシール1312により、薄いガラス基板1306の上面から離れて、空間をあけている。第1および第2のグラフェンベースの層1314および1316は、ディスプレイ1302に近いPETホイル1308の表面上、および薄いガラス基板1306のPETホイル1308に面する表面上にそれぞれ備えられていてもよい。グラフェンベースの層1314および1316の一方または両方は、例えば、イオンビームおよび/またはレーザエッチングによりパターン化されていてもよい。PETホイル上のグラフェンベースの層は、その成長位置からPETホイル自体を使用する中間生成物に転写されてもよいことに注意されたい。換言すれば、PETホイルは、グラフェンのリフトオフおよび/またはその移動のときに、フォトレジストまたは他の材料の代わりに使用してもよい。
【0072】
グラフェンベースの層の約500オーム/スクウェア未満のシート抵抗は、図13に示すものと同様の実施形態において許容され、約300オーム/スクウェア未満のシート抵抗は、グラフェンベースの層にとって有利である。
【0073】
ディスプレイ1302において一般的に見出されたITOは、1つ以上のグラフェンベースの層に置き換えてもよいことが理解される。例えば、ディスプレイ1302がLCDディスプレイであるとき、グラフェンベースの層は、カラーフィルタ基板上の共通電極として、および/またはいわゆるTFT基板上のパターン電極として備えられてもよい。また、当然ながら、ドープされたまたはドープされていないグラフェンベースの層は、個別のTFT設計および製造に関して、使用されてもよい。また、同様の機構が、プラズマおよび/または他のフラットパネルディスプレイに関して提供できる。
【0074】
また、グラフェンベースの層は、導電性のデータ/バスライン、バスバー(bus bars)、アンテナおよび/またはそのようなものをつくるために使用してもよい。このような構造は、ガラス基板、シリコンウエハなどに形成または適用されてもよい。図14は、あるいくつかの例示的な実施形態に基づく、導電性のデータ/バスラインを形成するための例示的な技術を説明するためのフローチャートである。ステップS1401において、グラフェンベースの層は、適切な基板上に形成される。任意のステップであるステップS1403において、保護層がグラフェンベースの層の上に備えられてもよい。ステップS1405において、グラフェンベースの層は、選択的に除去またはパターン化されてもよい。除去またはパターン化は、レーザエッチングにより達成してもよい。そのような場合、レーザの解像度が十分に繊細であるという条件で、保護層の必要性は軽減される。代わりにまたは加えて、エッチングは、イオンビームへの曝露/プラズマ処理により行ってもよい。また、上記のように、H*は、例えば、ホットフィラメントに関して使用してもよい。イオンビーム/プラズマ処理がエッチングに使用されるとき、保護層は好ましい。例えば、フォトレジスト材料は、所定のグラフェン領域を保護するために使用してもよい。このようなフォトレジストは、ステップS1403において、例えば、スピンコーティングなどにより適用されてもよい。そのような場合、他の任意のステップS1407において、任意の保護層は除去される。例えば紫外線への曝露は、適切なフォトレジストと共に使用されてもよい。示されていない1つ以上のステップにおいて、導電性のグラフェンベースのパターンは、例えば、いずれかの適切な手法を使用して(例えば、上記のもののように)、もしそれが既にその上に形成されていないのであれば、中間または最終生成物に転写してもよい。
【0075】
あるいくつかの例示的な実施形態は、グラフェンベースの層をエッチングして除くか、または除去することとして記載したが、あるいくつかの例示的な実施形態は、グラフェンベースの層の導電率を単純に変化させることができる。そのような場合、グラフェンのいくつかまたはすべてが、除去されないことがある。しかしながら、導電率は適当に変化したので、適切なパターン化された領域のみが導電性である。
【0076】
図15は、あるいくつかの例示的な実施形態に基づく、導電性のデータ/バスラインを形成するための技術の概略図である。図15に示されるように、グラフェンの導電率は、イオンビームへの曝露により選択的に変化する。フォトレジストは、適切なパターンを用いて、例えば、グラフェンベースの層の所望の一部分を保護するが、グラフェンベースの層の他の部分は、イオンビーム/プラズマに曝露されたままである。
【0077】
種々のサンプルが堆積されかつエッチングされた後の移動度データを、下表に示す。
【表1】
【0078】
このおよび/または他の方法でのグラフェンのパターン化は、いくつかの理由により有利であることが理解される。例えば、層の大部分が透明になる。したがって、パターンが見えない「シームレス」アンテナを提供することができる。乗物の窓(例えば、霜取り、アンテナ使用、構成要素への動力供給などのための)、フラットパネル(例えば、LCD、プラズマおよび/またはその他)ディスプレイデバイス、天窓、冷蔵庫/冷凍庫のドア/窓などに組み込まれ得るバスバーに関して、同様の結果を得ることができる。また、これは、このような製品においてよく見られるブラックフリット(black frits)の必要性を有利に軽減する。さらに、グラフェンベースの層は、エレクトロクロミック素子におけるITOの代わりに使用し得る。
【0079】
あるいくつかの例示的な応用/デバイスは、上記のようにここに記載されているが、グラフェンベースの導電性の層は、ITO、酸化亜鉛などといった他の透明導電層(TCC)の代わりにまたは追加で使用することができる。
【0080】
ここに用いられているように、用語「の上に(on)」、「により支持された(supported by)」などは、そうでないと明記しない限り、2つの要素が互いに直接近接しているというの意味に解釈されるべきではない。換言すれば、第1の層は、それらの間に1つ以上の層があったとしても、第2の層「の上に」あるかまたは「により支持された」という。
【0081】
本発明は、現在考えられるほとんどの実用的でかつ好ましい実施形態に関して記載したが、本発明は、記載された実施形態に限定されず逆に、付加されたクレームの真意および領域の範囲内に含まれる、種々の変形および等価な取り合せを網羅することが意図されることが理解される。
【技術分野】
【0001】
本発明の分野
本発明のあるいくつかの例示的な実施形態は、グラフェンを含む薄膜に関する。さらに詳しくは、本発明のあるいくつかの例示的な実施形態は、透明導電層(TCC)としてのグラフェンの使用に関する。あるいくつかの例示的な実施形態において、グラフェン薄膜は、広い領域上に、例えば触媒薄膜上に、炭化水素ガス(例えば、C2H2、CH4などといった)からヘテロエピタキシャル成長する。あるいくつかの例示的な実施形態のグラフェン薄膜は、ドープされていてもアンドープであってもよい。あるいくつかの例示的な実施形態において、一旦形成されたグラフェン薄膜は、それらのキャリア基板をリフトオフされていても、例えば中間および最終生成物を含め、受電基板(receiving substrates)に転写されていてもよい。
【背景技術】
【0002】
本発明の背景および例示的な実施形態の概要
インジウム錫酸化物(ITO)およびフッ素ドープ酸化錫(FTOまたはSnO:F)膜は、光電子デバイスにおける窓電極として広く用いられている。これらの透明導電性酸化物(TCO)は、種々の用途において非常に成功している。しかしながら、残念なことに、ITOおよびFTOの使用は、いくつかの理由のためにますます問題になっている。このような問題は、例えば、地球上で入手可能なインジウム元素の量に限界があること、酸または塩基の存在下でのTCOの不安定性、それらのイオン導電層からのイオン拡散に対する感受性、それらの近赤外線領域(例えば、強力(power-rich)スペクトル)における限定された透明性、FTO構造欠陥によるFTOデバイスの高いリーク電流などの事実を含む。またITOの脆い性質およびその高い堆積温度は、その応用を制限している。さらに、SnO2:Fにおける表面凹凸は、問題が多いアーク放電の原因となり得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
したがって、良好な安定性、高い透明性および優れた導電率を有する、平滑でかつパターン化し得る電極材料についての必要性が当該技術において存在することが認識されるだろう。
【課題を解決するための手段】
【0004】
良好な安定性、高い透明性および優れた導電率を有する新規な電極材料の探索が継続中である。この探索の1つの特徴は、このような従来のTCOの実現可能な代替を発見することを含む。この点で、本発明者は、炭素、特にグラフェンベースの実現可能な透明導電層(TCC)を開発した。
【0005】
用語「グラフェン」は、一般に1つ以上のグラファイトの原子層、例えば、単一のグラフェン層またはSGLに関し、グラファイトのn層(例えば、nは約10ほど高くなり得る)にまで拡張し得る。マンチェスタ大学における、グラフェンの最近の発見および分離(結晶構造のグラファイトを劈開することによる)は、エレクトロニクスにおける流れが回路素子のサイズをナノメートルスケールに減少させるときに来ている。この点で、グラフェンは、意外にも、標準的な電子材料では得られない、独特な光電子特性の新たな世界に導いた。これは、ゼロの静止質量(rest mass)を有しかつ相対論的粒子のように振舞うグラフェンにおいて、帯電量の増加を与える、直線的な分散関係(E対k)から現れる。炭素原子周囲で動く電子を非局在化させる相対論的な挙動は、それらのグラフェンのハニカム格子の周期的なポテンシャルとの相互作用から得られ、新たな擬似粒子を生み出し、これらの粒子は、低いエネルギー(E<1.2eV)で、光の実効速度
【化1】
を伴う(2+1)−次元のディラック方程式により正確に記載される。したがって、量子電磁力学(QED)のよく確率された技術(フォトンに関係する)を、グラフェンの研究にもってくることができ、このような効果がグラフェンにおいて300倍増幅されるという更なる有利な性状がある。例えば、普遍結合定数αは、真空中での1/137と比較して、グラフェンにおいて2に近い。K.S. Novoselov、「Electrical Field Effect in Atomically Thin Carbon Films」、Science、vol.306、pp.666-69(2004)を参照し、その内容をここに組み込む。
【0006】
1原子のみの厚さ(最小で)だけであるにもかかわらず、グラフェンは、化学的および熱的に安定であり(グラフェンは300℃で表面酸化されるとはいえ)、それにより、周囲の条件に耐えるグラフェンベースのデバイスをうまくつくることができる。高品質のグラフェンシートは、まずバルクグラファイトの微視的機械的劈開によりつくられる。同様の技術を微調整して、100μm2以下のサイズの高品質グラフェンクリスタライトが現在、提供されている。このサイズは、マイクロエレクトロニクスにおける、ほとんどの研究目的を満足させる。したがって、主として大学において、これまでのところ開発されたほとんどの技術は、スケールアップよりむしろ、微視的サンプルならびにデバイス作製および特徴付けがより中心である。
【0007】
ほとんどの現在の探索の流れとは異なって、可能性のあるTCCのようなグラフェンの最大の可能性を理解するためには、基板(例えば、ガラスまたはプラスチック基板)上への高品質材料の広い領域の堆積が重要である。現在まで、ほとんどのグラフェンの大規模な製造方法は、湿式ベースの化学薬品を用いるバルクグラファイトの剥離に基づき、高配向熱分解グラファイト(highly ordered pyrolytic graphite)(HOPG)および化学的な剥離を伴って開始する。公知のように、HOPGは、1度未満のc軸の角度の広がり(angular spread)を有する熱分解グラファイトの高度に並べられた形態であり、かつ通常、3300Kでのストレスアニーリングにより製造される。HOPGは、一般的に反射性かつ導電性であるが、脆くかつフレーク状であるという純金属に酷似するように振舞う。この方法で製造されたグラフェンは濾過され、次いで表面に付着される。しかしながら、剥離プロセスには問題がある。例えば、剥離されたグラフェンは、折り重なる傾向があり、しわだらけになり、小さなストリップとして存在し、かつ堆積のためのコラージュ/ステッチプロセスに依存し、グラフェン層の数などの本来の制御が欠落する。そのようにして製造された材料は、しばしばこれらの介在物により汚染され、それ自体低いグレードの電子特性を有する。
【0008】
炭素の状態図を深く分析することにより、グラファイトおよびダイアモンドのみならず、例えばカーボンナノチューブ(CNT)といった他の同素体の形態を製造するために適した条件のプロセス手段が示される。ナノチューブの触媒による堆積は、種々の原子団により1000℃のような高い温度でガス相から行われる。
【0009】
これらの従来の探索範囲および従来の技術と対比して、本発明のあるいくつかの例示的な実施形態は、単結晶構造のグラファイト(nは約15と同程度に大きい)をヘテロエピタキシャル成長させ、かつそれを高電子グレード(HEG)グラフェン(n<約3)に変換するための拡張可能な技術に関する。また、あるいくつかの例示的な実施形態は、例えば、種々の応用(例えば、半導体の太陽電池を含む)のために遍在的に使用される金属酸化物窓電極の代替えとしての透明な(可視および赤外スペクトルの両方の点に関して)導電性の極薄のグラフェンフィルムにおけるHEGグラフェンの使用に関する。あるいくつかの例示的な実施形態の成長技術は、ガラスにやさしい十分に低い温度で行われる、触媒作用により推進されるヘテロエピタキシャルCVDプロセスに基づく。例えば、熱力学も反応速度論の法則も、約700℃未満の温度でシード触媒層上にガス相からHEGグラフェンフィルムを結晶化させる。
【0010】
また、あるいくつかの例示的な実施形態は、基板上における非晶質の炭素質汚染物(carbonaceous contamination)を除去し、かつそれを低温プロセスでなし得るための効力のあるラジカルであることが示されている、原子状水素を使用する。また、これは、酸化物およびエッチング手順により放置される他の重なった層の除去において非常によい。
【0011】
本発明のあるいくつかの例示的な実施形態は、ドープされたグラフェン薄膜の製造方法に関する。中間体グラフェン薄膜は、実質的に単一配向性の大きな粒子の結晶構造を有する触媒薄膜上にヘテロエピタキシャル成長される。ドープされたグラフェン薄膜の製造において、中間体グラフェン薄膜は、n型またはp型ドーパントをドープされる。ドープされたグラフェン薄膜は、150オーム/スクウェア未満のシート抵抗を有する。
【0012】
あるいくつかの例示的な実施形態において、中間体グラフェン薄膜のドーピングは、中間体グラフェン薄膜をドーパントとして用いられる材料を含むドーピングガスに曝露させ;中間体グラフェン薄膜およびドーピングガスを含むチャンバー内にプラズマを発生させ;かつドーパントガス中の材料を用いて、中間体グラフェン薄膜中にドーパントを低いエネルギーイオンビーム注入することを含む。
【0013】
あるいくつかの例示的な実施形態において、中間体グラフェン薄膜のドーピングは、その中に半導体のドーパントを含むターゲット受電基板を用意し、ターゲット受電基板がターゲット受電基板をつくるために用いられる溶融工程によってその中にドーパントを含み;かつ熱拡散により、ターゲット受電基板中の半導体のドーパントを中間体グラフェン薄膜中に移動させることを含む。
【0014】
あるいくつかの例示的な実施形態において、中間体グラフェン薄膜のドーピングは、その中に半導体のドーパントを含むターゲット受電基板を用意し、ターゲット受電基板がイオンビームによってその中にドーパントを含み;かつ熱拡散により、ターゲット受電基板中の半導体のドーパントを中間体グラフェン薄膜中に移動させることを含む。
【0015】
あるいくつかの例示的な実施形態において、中間体グラフェン薄膜のドーピングは、その上に配置された少なくとも1つの薄膜を有するターゲット受電基板を用意し、薄膜がその中に半導体ドーパントを含み;かつ熱拡散により、ターゲット受電基板上に形成された少なくとも1つの薄膜中の半導体のドーパントを、中間体グラフェン薄膜中に移動させることを含む。
【0016】
あるいくつかの例示的な実施形態において、中間体グラフェン薄膜のドーピングは、触媒薄膜中に半導体のドーパントを予備注入し;かつ熱拡散により、触媒薄膜中の半導体のドーパントを中間体グラフェン薄膜中に移動させることを含む。熱拡散は、例えば、中間体グラフェン薄膜の堆積の間に起こってもよい。
【0017】
本発明のあるいくつかの例示的な実施形態は、実質的に単一配向性の大きな粒子の結晶構造を有する金属触媒薄膜上に直接または間接的にヘテロエピタキシャル成長されたドープされたグラフェン薄膜に関する。グラフェン薄膜は、1〜10原子層厚さである。ドープされたグラフェン薄膜は、150オーム/スクウェア未満のシート抵抗を有する。
【0018】
あるいくつかの例示的な実施形態において、ドープされたグラフェン(n>=2)層は、いずれか1つ以上の:窒素、ホウ素、リン、フッ化物、リチウム、カリウムおよび硫黄でドープされていてもよい。あるいくつかの例示的な実施形態において、ドープされたグラフェン薄膜は、10〜20オーム/スクウェアのシート抵抗を有していてもよい。あるいくつかの例示的な実施形態のドープされたグラフェン薄膜は、n型またはp型ドーパントを含む。
【0019】
ここに記載される要件、特徴、利点およびいくつかの例示的な実施形態は、まださらなる実施形態を組み合わせてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図面の簡単な説明
これらおよびその他の要件ならびに効果は、次の図面と関連して例示的な実証となる実施形態の詳細な記載を参照することにより、よりかつさらに完全に理解される。
【図1】図1は、あるいくつかの例示的な実施形態の全体的な技術を説明する高レベルフローチャートであり;
【図2】図2は、あるいくつかの例示的な実施形態に基づく、炭化水素ガスの導入、炭素の分解および急冷の可能な結果を説明する、あるいくつかの例示的な実施形態の触媒成長技術の例示的な概略図であり;
【図3】図3は、あるいくつかの例示的な実施形態に基づく、グラフェンにドーピングするための第1の例示的な技術を説明するフローチャートであり;
【図4】図4は、あるいくつかの例示的な実施形態に基づく、グラフェンにドーピングするための第2の例示的な技術を説明するフローチャートであり;
【図5】図5は、あるいくつかの例示的な実施形態に基づく、グラフェンにドーピングするための第3の例示的な技術を説明する例示的な概略図であり;
【図6】図6は、あるいくつかの例示的な実施形態に基づく、グラフェンのドーピングに関係する温度対時間をプロットするグラフであり;
【図7】図7は、あるいくつかの例示的な実施形態のグラフェン剥離(release or debonding)技術において有用な例示的な積層であり;
【図8】図8は、あるいくつかの例示的な実施形態に基づく、ターゲットガラス基板上にグラフェンを配置するために用いることができるラミネート加工装置の例示的な概略図であり;
【図9】図9は、例示的な実施形態に基づく、高電子グレード(HEG)グラフェン堆積に適した反応容器の断面概略図であり;
【図10】図10は、あるいくつかの例示的な実施形態の、特定の例示的な触媒CVD成長、リフトオフおよび転写技術を説明する例示的なプロセスフローであり;
【図11】図11は、あるいくつかの例示的な実施形態に基づく、製造されたサンプルグラフェンの画像であり;
【図12】図12は、あるいくつかの例示的な実施形態に基づく、グラフェンベースの層を組み込む太陽光光電変換デバイスの断面概略図であり;
【図13】図13は、あるいくつかの例示的な実施形態に基づく、グラフェンベースの層を組み込んだタッチスクリーンの断面概略図であり;かつ
【図14】図14は、あるいくつかの例示的な実施形態に基づく、導電性のデータ/バスラインを形成するための例示的な技術を説明するためのフローチャートであり;かつ
【図15】図15は、あるいくつかの例示的な実施形態に基づく、導電性のデータ/バスラインを形成するための技術の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
発明の例示的な実施形態の詳細な記載
本発明のあるいくつかの例示的な実施形態は、単結晶構造のグラファイト(nは約15と同程度に大きい)をヘテロエピタキシャル成長させ、かつそれを高電子グレード(HEG)グラフェン(n<約3)に変換するための拡張可能な技術に関する。また、あるいくつかの例示的な実施形態は、例えば、種々の応用(例えば、半導体の太陽電池を含む)のためにより遍在的に使用される金属酸化物窓電極の代替えとしての透明な(可視および赤外スペクトルの両方の点に関して)導電性の極薄のグラフェンフィルムにおけるHEGグラフェンの使用に関する。あるいくつかの例示的な実施形態の成長技術は、ガラスにやさしい十分に低い温度で行われる、触媒作用により推進されるヘテロエピタキシャルCVDプロセスに基づく。例えば、熱力学も反応速度論の法則も(例えば、約600℃未満の温度で)シード触媒層上にガス相からHEGグラフェンフィルムを結晶化させる。
【0022】
図1は、あるいくつかの例示的な実施形態の全体的な技術を説明する高レベルフローチャートである。図1に示されるように、あるいくつかの例示的な実施形態の全体的な技術は、4つの基本的なステップ:適切な背部支持体上へのグラフェン結晶生成(ステップS101)、背部支持体からのグラフェン剥離(ステップS103)、ターゲット基板または表面へのグラフェン転写(ステップS105)および生成物中へのターゲット基板または表面の導入(ステップS107)の1つに属するように分類することができる。以下により詳細に説明するように、ステップS107で述べる生成物は、中間生成物または最終生成物であってもよいことが理解される。
【0023】
例示的なグラフェン結晶生成技術
あるいくつかの例示的な実施形態のグラフェン結晶生成技術は、炭化水素ガスを「熱分解」し、広い領域(例えば、1メートルまたはそれ以上の面積)上にわたる、よく知られたハニカム構造中に炭素原子を再配置し、例えば、表面触媒経路を活用することとみなすことができる。あるいくつかの例示的な実施形態のグラフェン結晶生成技術は、高温かつ中程度の圧力で行われる。この例示的なプロセスの詳細な説明は、以下に詳細に記載される。
【0024】
あるいくつかの例示的な実施形態の触媒成長技術は、ヘテロエピタキシャル領域にグラファイトを成長させるために使用されている技術にいくらか関係する。グラフェン結晶生成のための触媒は、適切な背部支持体上に配置される。背部支持体は、例えば、セラミックスまたはガラス製品、ジルコニウムを含む材料、窒化アルミニウム材料、シリコンウエハなどといった高温加熱(例えば、約1000℃以下の温度)に耐え得るどのような適切な材料であってもよい。薄膜は、背部支持体上に直接または間接的に配置され、それにより、その表面は、結晶生成プロセス前に実質的に汚染されないことを確実にする。本発明者は、触媒層が実質的に単一配向性の結晶構造を有するときに、グラフェン結晶生成が促進されることを見出した。この点について、モザイク構造が最終的にグラフェン層に転写されるので、小さな粒子は、有利性がより小さいことがわかっている。いずれにしても、結晶構造の特定の配向性は、少なくとも本質的部分の触媒層が単一配向性の結晶構造を有することを条件として、グラフェン結晶生成のために主として重要でないことが見出された。実際、触媒中に粒界が相対的に欠如していること(または低いこと)は、成長したグラフェンのための同一または類似の配向性をもたらすことが見出され、かつ高電子グレード(HEG)グラフェンを提供することが見出されている。
【0025】
触媒層自体は、例えば、スパッタリング、燃焼蒸着(combustion vapor deposition)(CVD)、火炎熱分解(火炎熱分解)などといったいずれかの適切な技術により、背部支持体上に配置されてもよい。触媒層自体は、いずれかの適切な金属または金属含有材料を含んでいてもよい。例えば、触媒層は、例えば、ニッケル、コバルト、鉄、パーマロイ(例えば、一般的に約20%鉄および80%ニッケルを含むニッケル鉄合金)、ニッケルおよびクロムの合金、銅ならびにそれらの組み合わせといった金属を含んでもよい。当然ながら、あるいくつかの例示的な実施形態に関して、他の金属は使用されてもよい。発明者は、ニッケルの触媒層またはニッケルを含む触媒層がグラフェン結晶生成のために特に有利であること、およびニッケルおよびクロムの合金がより一層有利であることを発見した。また、発明者は、ニッケル−クロム層(時には、ニクロムまたはNiCr層とも呼ばれる)中のクロムの量が大きな結晶の形成を促進するように最適化できることを発見した。特に、NiCr層中の3〜15%Crが好ましく、NiCr層中の5〜12%Crがより好ましく、かつNiCr層中の7〜10%Crがさらに一層好ましい。また、金属薄膜中のバナジウムの存在は、大きな結晶の成長を促進するために有利であることが見出されている。触媒層は、相対的に薄い部分または厚い部分があってもよい。例えば、薄膜は50〜1000nmの厚さ、より好ましくは75〜750nmの厚さ、かつより一層好ましくは100〜500nmの厚さであってもよい。「大きな結晶の成長」は、ある例において、数10ミクロン程度および時にはそれより大きい、主軸に沿った長さを有する結晶を含み得る。
【0026】
触媒薄膜が背部支持体上に一旦堆積されると、炭化水素ガス(例えば、C2H2ガス、CH4ガスなど)を、触媒薄膜が堆積された背部支持体が配置されたチャンバー内に導入する。炭化水素ガスは、約5〜150ミリトル、より好ましくは10〜100ミリトルの範囲の圧力で導入できる。一般に、圧力が高くなるほど、グラフェンの成長がより早い。次いで、全体として背部支持体および/またはチャンバーを加熱して、炭化水素ガスを分解または「分解して開裂」する。例えば、背部支持体は、600〜1200℃、より好ましくは700〜1000℃、かつより一層好ましくは800〜900℃の範囲の温度に上昇させてもよい。加熱は、例えば、短波赤外線(IR)ヒーターといった任意の適切な手法により達成してよい。加熱は、アルゴン、窒素、窒素と水素の混合物といったガスを含む環境または他の適切な環境で行われてもよい。換言すれば、炭化水素ガスの加熱は、あるいくつかの例示的な実施形態において、他のガスを含む環境で行われてもよい。あるいくつかの例示的な実施形態において、純粋な炭化水素ガス(例えば、C2H2を有する)を使用することが好ましいが、炭化水素ガスと、別の不活性ガスまたは他のガスの混合物(例えば、Arと混合されたCH4)を使用することも好ましい。
【0027】
グラフェンは、このまたは他の適切な環境で成長する。成長を停止させかつグラフェンが触媒の表面に成長すること(例えば、触媒内に埋め込まれることに対抗するように)を確実に補助するために、あるいくつかの例示的な実施形態は、急冷プロセスを行う。急冷は、例えば、アルゴン、窒素、その組み合わせなどといった不活性ガスを使用して行ってもよい。触媒層の表面上へのグラフェン成長を促進するために、急冷はかなり素早く行うべきである。さらに詳しくは、急冷が早過ぎるまたは遅すぎる結果、触媒層の表面上へのグラフェン成長は不十分か、またはないことが見出された。一般に、背部支持体および/または基板の温度を数分の間に約900℃から700度(またはより低い)に減じるための急冷は、例えば、化学吸着による良好なグラフェン成長、を促進することが見出された。この点について、図2は、あるいくつかの例示的な実施形態に基づく、炭化水素ガスの導入、炭素の分解および急冷の可能な結果を説明する、あるいくつかの例示的な実施形態の触媒成長技術の例示的な概略図である。
【0028】
グラフェン成長プロセスは、厳密なフィルムの厚さの関係t=n×SLG(ここで、nはいくつかの別個のステップ数を意味する)を与える。もしグラフェンが製造されたかどうかを素早く確定し、フィルム領域にわたるnの値を決定することにより、単一の測定においてフィルムの質と均質性とを測定することとほぼ等価である。グラフェンシートは、原子間力および走査電子顕微鏡により見ることができるが、これらの技術は、時間がかかり、グラフェンの汚染を導き得る。したがって、あるいくつかの例示的な実施形態は、対象とする触媒表面上のグラフェンの見やすさを増進する、位相差手法を用いる。これは、金属触媒フィルム上の堆積表面上のn値における変動のマッピングを考慮して行うことができる。その手法は、グラフェンのコントラストがその上に材料をスピンコーティングすることにより実質的に増進され得るという事実を基にする。例えば、広く使用される紫外線硬化性レジスト(例えば、PMMA)は、例えばフィルムを可視的にしかつ連続的にさせる十分な厚さ(例えば、約1ミクロンの厚さ)で、グラフェン/金属/背部支持体上にスピンコート、スクリーン印刷、グラビアコーティングされるかまたはそうでなければ配置されてもよい。以下により詳細に説明するように、ポリマーレジストを含めることも、最終表面への転写の前に、グラフェンのリフトオフプロセスを促進できる。すなわち、グラフェン形成が完了するときに表示が行われることに加えて、ポリマーレジストも、以下に詳細に説明するように、金属層が背部支持体から剥離(release)されるかまたはそうでなければ剥離(debond)されるときに、高い弾性グラフェンを支持することができる。
【0029】
層が厚く成長し過ぎた(意図的にまたは意図的でなく)場合には、その層は、例えば、水素原子(H*)を用いて、エッチングすることができる。この手法は、いくつかの例示的な状況において有利であり得る。例えば、予想外に成長が早過ぎて、不均一であった場合、H*はこのような問題を修正するために使用することができる。もう1つの例示として、十分にグラフェンを確実に成長させるために、グラファイトをつくり、グラフェイン(graphane)を堆積し、例えば、H*を用いて、グラフェインを好ましいnレベルHEGグラフェンに選択的にエッチバックしてもよい。さらにもう1つの例示として、例えば、導電性の領域および非導電性の領域をつくるために、選択的にグラフェンをエッチングするためにH*を用いることができる。これは、例えば、適切なマスクを適用し、エッチングを行い、次いでマスクを除去することにより、達成してもよい。
【0030】
グラフェンの理論上の研究は、キャリアの移動度が200,000cm2/(V・s)よりも高くなり得ることを示した。ガス相で処理したヘテロエピタキシャル成長グラフェンの実測は、銀薄膜のそれよりもよい3×10-6Ωcmのように低い抵抗率を示す。このようなグラフェン層のシート抵抗は、約150オーム/スクウェアであることが見出された。変化し得る1つの因子は、最低の抵抗率およびシート抵抗を与えるために必要とされるグラフェン層の数であり、グラフェンの所望の厚さは、ターゲットへの適用に依存して変化してもよいことが理解される。一般に、ほとんどの応用に適したグラフェンは、n=1〜15グラフェン、より好ましくはn=1〜10グラフェン、より一層好ましくはn=1〜5グラフェンであり、かつ時にはn=2〜3グラフェンである。n=1グラフェン層は、透過率が約2.3〜2.6%低下することが見出された。この透過率の減少は、実質的にすべてのスペクトル、例えば、紫外線(UV)から可視を通りかつIRを通る範囲を一般に直線的に越えることが見出された。また、透過における損失は、nのそれぞれの逐次増加に伴って実質的に直線的であることが見出された。
【0031】
例示的なドーピング技術
150オーム/スクウェアのシート抵抗は、ある例示的な応用に適するが、シート抵抗におけるさらなる低下は、異なる例示的な応用のために好ましいことがあると理解できる。例えば、10〜20オーム/スクウェアのシート抵抗は、ある例示的な応用のために好ましいことがあると理解できる。本発明者は、グラフェンのドーピングによってシート抵抗をより低くできることを決定している。
【0032】
この点について、1原子層だけの厚さであるグラフェンは、サブミクロンスケール上で弾道輸送を示し、移動度を著しく損失することなく、n≧2である場合には、ゲート電圧または分子吸着もしくは挿入物によって、濃密にドーピングされ得る。グラフェンにおいて、ドナー/アクセプターの区別とは別に、一般にドーパントの2つの異なる種類、すなわち、常磁性体および非磁性体があることが、本発明者によって確定された。従来の半導体と対比して、後者のタイプの不純物は、全般的に比較的弱いドーパントとして作用するが、常磁性の不純物は強いドーピングの原因となる:グラフェンのディラック点に近くで、電子−正孔対称状態密度(DOS)が直接的に消失するので、スピン偏極のない局在化された不純物状態は、擬似ギャップ(pseudo-gap)の中心に固定される。したがって、グラフェン中の不純物状態は、普通の半導体におけるそれらの対応物からは強く区別され、ここでは、価電子帯および伝導帯におけるDOSは非常に異なり、かつ不純物レベルはギャップの中間から一般に遠く離れて位置する。フェルミレベルから10分の数電子ボルト離れた明確なドナー(またはアクセプター)のレベルの存在が要求される強いドーピング効果を期待しないだろうが、不純物が局部的な磁気能率を有するのであれば、そのエネルギーレベルは、グラフェンに存在するものといったディラック様スペクトルを有する2次元系の電子構造における強いドーピング不純物効果のための有利な場面を提供する、1eV程度のフントの交換によって、多少対称的に分割される。この一連の論法は、グラフェンにドーピングするための常磁性の単分子および反磁性のダイマー系の両方を形成し、その導電率を103s/cmから105s/cmまで、かつ時には106s/cmまでに向上させるための分子の選択を導くために用いてもよい。
【0033】
あるいくつかの例示的な実施形態に関して、使用に適したドーパントの例は、窒素、ホウ素、リン、フッ化物、リチウム、カリウム、アンモニウムなどを含む。また、硫黄ベースのドーパント(例えば、二酸化硫黄)もあるいくつかの例示的な実施形態に関して、使用してもよい。例えば、ガラス基板中に存在する硫化物は、ガラスから滲出することにより、グラフェンベースの層にドープされることになってもよい。グラフェンドーピング技術のいくつかの例は、以下により詳細に示される。
【0034】
図3は、あるいくつかの例示的な実施形態に基づく、グラフェンにドーピングするための第1の例示的な技術を説明するフローチャートである。図3は、グラフェン中にドーピング材料をイオンビーム注入することを本質的に含む手法を例示する。この例示手法において、グラフェンは、例えば、上記のように金属触媒上に成長される(ステップS301)。形成されたグラフェンをその上に有する触媒は、ドーパントとして使用される材料を含むガス(また時として、ドーパントガスと呼ぶ)に曝露される(ステップS303)。次いで、プラズマを、形成されたグラフェンをその上に有する触媒とドーパントガスとを含むチャンバー内に発生させる(S305)。次いで、イオンビームは、グラフェン中にドーパントを注入するために使用される(S307)。この種のドーピングに適した例示的なイオンビーム技術は、例えば、米国特許第6,602,371号、第6,808,606号および第Re.38,358号ならびに米国公開第2008/0199702号に開示され、それぞれを参照としてここに組み込む。イオンビーム出力は、約10〜200eV、より好ましくは20〜50eV、より一層好ましくは20〜40eVであってもよい。
【0035】
図4は、あるいくつかの例示的な実施形態に基づく、グラフェンにドーピングするための第2の例示的な技術を説明するフローチャートである。図4は、ターゲット受電基板に半導体のドーパントを予備注入すること、および次いで、グラフェンを受電基板に適用するときに、グラフェン中へのこれらの半導体のドーパントの移動を引き起こすことを本質的に含む手法を例示する。この例示的な手法において、グラフェンは、例えば、上記のように金属触媒上に成長される(ステップS401)。受電基板は、その中に半導体のドーパントが含まれるように予備調製する(ステップS403)。例えば、半導体のドーパントは、溶融によってガラスの組成に含めることができる。約1〜10原子%、より好ましくは1〜5原子%、かつより一層好ましくは2〜3原子%ドーパントは、溶融ガラス中に含まれていてもよい。グラフェンは、例えば、下記に詳細に記載される例示的な技術の1つを使用して、受電基板に適用される(ステップS405)。次いで、受電基板中の半導体のドーパントは、グラフェン中に移動させられる。グラフェンの堆積に使用される加熱は、形成されているグラフェン層に向かってドーパントを移動させる。同様に、さらにドープされたフィルムをガラス上に含めて、その中のドーパントが熱拡散によりそれらの層を通して移動するようにして、例えば、ドープされたグラフェン(n>=2)層をつくることができる。
【0036】
また、あるいくつかの例示的な実施形態において、イオンビームを用いて、ガラス中にドーパントを直接注入できる。イオンビーム出力は、約10〜1000eV、より好ましくは20〜500eV、より一層好ましくは20〜100eVであってもよい。中間層がドープされ、グラフェンのための不純物を備えるために使用されるとき、イオンビームは、約10〜200eV、より好ましくは20〜50eV、より一層好ましくは20〜40eVで操作されてもよい。
【0037】
図5は、あるいくつかの例示的な実施形態に基づく、グラフェンにドーピングするための第3の例示的な技術を説明する例示的な概略図である。図5は、金属触媒層503中に半導体のドーパント507を予備注入すること、および次いで、グラフェンが形成されるにつれて、触媒層503を通してこれらの半導体のドーパント507を移動させて、これにより触媒層503の表面上にドープされたグラフェン509をつくることを本質的に含む手法を例示する。特に、この例示的な手法において、触媒層503は、背部支持体505上に配置される。触媒層503は、その中に半導体のドーパント507を含む。換言すれば、触媒は、そのバルクの内に半導体のドーパント原子(例えば、約1〜10%、より好ましくは約1〜5%、かつ最も好ましくは約1〜3%)を有する。炭化水素ガス501は、高温で、形成された触媒層503の近くに導入される。触媒層503中の半導体のドーパント507は、グラフェン結晶生成が行われるにつれて、例えば高温で、その外表面に向かって移動させられる。ドーパントが表面に到達する速度は、触媒厚さおよび温度の関数であることが見出された。結晶生成は、急冷により停止され、かつ最終的に、ドープされたグラフェン509は、触媒層503’の表面上に形成される。ドープされたグラフェン509の形成の後に、触媒層503’は、その中に配置されたより少ない半導体のドーパント507を有する(または全く有さない)。この例示的な手法の1つの利点は、急冷速度プロセスで使用される反応ラジカルと同様に、金属表面温度、分圧および堆積ガス種の滞留時間を思慮深く変化させることにより、極薄膜成長を制御する可能性に関する。
【0038】
これらの例示的なドーピング技術は、単独でおよび/または各組み合わせおよび互いにおよび/またはさらなる技術の補助の組み合わせで使用されてもよいことが理解できる。さらに、あるいくつかの例示的な実施形態は、例えば、特定の例示的な手法を1回用いて、特定の手法を繰り返してまたは各回1回以上の複数の技術の組み合わせを通して、単一のドーパント材料または複数のドーパント材料を含むことができると理解できる。例えば、あるいくつかの例示的な実施形態において、p型およびn型のドーパントが可能である。
【0039】
図6は、あるいくつかの例示的な実施形態に基づく、グラフェンのドーピングに関係する温度対時間をプロットするグラフである。前述のとおり、冷却は、例えば不活性ガスを使用して達成してもよい。一般にかつまた前述のとおり、高温はあるいくつかの例示的な実施形態において約900℃であってもよく、かつ低温は約700℃であってもよく、かつ冷却は数分間で行ってもよい。グラフェンがドープされるかに関係なく、図6に示すのと同じ加熱/冷却プロファイルを使用してもよい。
【0040】
例示的なグラフェン剥離(release/debonding)および転写技術
グラフェンは一旦ヘテロエピタキシャル成長されると、これは、例えば、中間または最終生成物に含まれるように基板上に配置する前に、金属触媒および/または背部支持体から剥離してもよい。各種手段を、あるいくつかの例示的な実施形態に基づいて、それらの成長基板からエピタキシャルフィルムをリフトするために用いてもよい。図7は、あるいくつかの例示的な実施形態のグラフェン剥離技術において有用な例示的な積層である。図7を参照して、あるいくつかの例示的な実施形態において、任意の剥離層(release layer)701を、背部支持体505と触媒層503との間に備えてもよい。この剥離層701は、例えば、酸化亜鉛(例えば、ZnOまたは他の適切な化学量論)であるかまたはそれを含んでいてもよい。グラフェン堆積の後に、グラフェン509/金属触媒層503/剥離層701スタックで被覆された基板505は、例えば、メニスカスフローなどにより施されるスピンコーティングによって適用される、ポリマーの厚いオーバーコート層703(例えば、数ミクロンの厚さ)を受けてよく、これは硬化されてもよい。また上記で指摘したように、このポリマー層703は、リフトオフおよび/または剥離の間に、非常に柔軟なグラフェンフィルムを連続的に保ちながら、グラフェンフィルムが巻き上がったり、折れたりそうでなければ変形したりする可能性を低減させる、グラフェン509用の基幹または支持体として作用してもよい。
【0041】
また上記で指摘したように、PMMAは、位相差によりグラフェンが可視化されるようにかつリフトオフ前および/またはリフトオフの間に支持するためのポリマーとして使用してもよい。しかしながら、機械的および化学的特性がグラフェンのものと適合し得る広い範囲のポリマーは、あるいくつかの例示的な実施形態に関して、剥離転写(release transfer)段階および支持段階中に用いてもよい。リフトオフのための作業は、例えば、グラファイトから化学的に剥離することができるグラフェンフィルムと共に実験することによる主となるエピタキシャル成長の分枝と、並行して行ってもよい。
【0042】
剥離層は、一旦母基板の上にポリマー層が配置されたら、母基板からグラフェン/金属を分離するように、化学的に誘導してもよい。例えば、酸化亜鉛剥離層の場合、酢(vinegar)での洗浄は、グラフェンの剥離を誘発できる。また、酸化亜鉛剥離層の使用は、本発明者が金属触媒層も剥離層と共にグラフェンから除去されることを発見しているので、有利である。これは、触媒層中で粒子と形成されるその連結と共に酸化亜鉛剥離層によって起こるテクスチャの結果であると考えられる。これは、後で触媒層を除去する必要性を軽減する(時には、除去さえする)ことと理解される。
【0043】
あるリフトオフ/剥離および転写技術において、元の基板は、再使用可能なエピタキシャル成長基板として本質的にみなされる。したがって、エピタキシャル成長(上部にポリマーを有する)グラフェンから金属触媒薄膜を切り取るまたは溶解するための選択的なエッチングは、このような例示的な実施形態において望ましい。したがって、触媒層は、あるいくつかの例示的な実施形態において、剥離層を使用するかに関係なく、エッチングされてもよい。適切なエッチング液は、例えば塩酸、リン酸などといった酸を含む。
【0044】
最終受容ガラス基板表面は、グラフェン層を受け入れるようにつくられる。例えば、ラングミュア−プロジェットフィルム(例えば、ラングミュア−プロジェット酸からの)は、ガラス基板に適用してもよい。最終受容基板は、代わりにまたは追加で、例えば、シリコンベースのポリマーなどといった平滑なグラフェン親和性層で被覆してもよく、このことにより、後者がグラフェンを受容的にすることができる。これは、静電結合を確実にすることを促し、したがって、転写の間、グラフェンの転写を優先的に許容する。ターゲット基板は、追加でまたは代わりに、例えば、ターゲット基板の表面エネルギーを増大させ、したがってグラフェンをさらに受容的にするように、紫外線に曝露してもよい。
【0045】
グラフェンは、あるいくつかの例示的な実施形態において、ブランケットスタンピング(blanket stamping)および/またはローリングにより、基板に適用してもよい。このようなプロセスは、金属キャリア上に予め成長させ、化学吸着させたグラフェンが、接触圧力により受容ガラスに転写されることを可能にする。1つの例示として、グラフェンは、例えば、図8に示されるように、1つ以上のラミネート積層ローラーにより基板に適用される。この点について、図8は、圧力を印加して、グラフェン509およびポリマー層703をターゲット基板801に積層させる、上部および下部ローラー803aおよび803bを示す。上記のように、ターゲット基板801は、その上に積層を促進するシリコン含有または他のグラフェン親和性層を有する。ポリマー層703は最外層として適用され、グラフェン509はターゲット基板801により近い(またはその上に直接存在する)ことと理解される。あるいくつかの例示的な実施形態において、1つ以上の層は、グラフェンの適用前に、基板上に備えられてもよい。
【0046】
グラフェンがターゲット基板上に一旦堆積されると、ポリマー層は除去されてもよい。あるいくつかの例示的な実施形態において、ポリマーは、適切な溶媒を使用して溶解させてもよい。PMMAといった感光材料が使用されるとき、これは紫外線光への曝露により除去される。当然ながら、他の除去技術も可能である。
【0047】
あるいくつかの例示的な実施形態において、触媒薄膜は、グラフェンがターゲット基板に適用された後で、例えば、上記の例示されたエッチング液を用いて、エッチングしてもよいことが理解される。また、エッチング液の選択は、グラフェンの下にあるいずれかの層の存在または非存在に基づけばよい。
【0048】
あるいくつかの例示的な実施形態は、グラフェンの下の金属触媒薄膜をより直接的に電気化学的に陽極酸化する。このようないくつかの例示的な実施形態において、グラフェン自体は、元の基板と結合されたままで下の金属が透明酸化物に陽極酸化されるので、カソードとして作用できる。このような例示的な実施形態は、1つのステップにおいて本質的にリフトオフおよび転写プロセスを行うことにより、ポリマーのオーバーコートの使用を回避するために用いてもよい。しかしながら、電気化学的手段による陽極酸化は、グラフェンの電子特性に影響を与え、たがって補償する必要があることがある。あるいくつかの例示的な実施形態において、グラフェン下の触媒層は、それを透明にさせる他の方法で酸化させてもよい。例えば、導電性の酸化物は、グラフェンベースの層を基板、半導体または他の層に「結合(link)」させるために使用してもよい。この点について、コバルト、クロムコバルト、ニッケルクロムコバルトおよび/またはその他は、酸化されてもよい。あるいくつかの例示的な実施形態において、またこれは、グラフェンリフトオフの必要性を軽減して、グラフェンの転写、操作および他の取り扱いを容易にする。
【0049】
また、あるいくつかの例示的な実施形態において、グラフェンは、接着剤またはテープ様の材料を使用して取り上げてもよい。接着剤は、ターゲット基板上に位置してもよい。グラフェンは、例えば、圧力を印加した後に、テープよりもさらに強く基板に接着させることによりターゲット基板に転写されてもよい。
【0050】
例示的な反応容器の設計
シャワーヘッド反応器は、一般に、第2の平行な平坦な加熱された表面に反応ガスをおおよそ均等に分配するための貫通したまたは多孔性の平坦な表面を使用する。このように構成は、ここに記載された例示的なヘテロ−エピタキシャル技術を用いるグラフェンの成長のために使用してもよい。また、シャワーヘッド反応器は、大きな四角形の超平滑ガラスまたはセラミック基板の加工に有利である。図9は、シャワーヘッド反応器の基本的な概略図であり、プレナム設計(plenum design)を拡大して示す。換言すれば、図9は、例示的な実施形態に基づく、高電子グレード(HEG)グラフェン堆積に適した反応容器の断面概略図である。反応器は、いくつかの注入口および排出口を有する本体部分901を含む。さらに詳しくは、ガス注入口903は、上端でかつ反応器の本体部分901のおおよその水平の中心に備えられている。ガス注入口903は、1つ以上の源からガスを受け、したがって、例えば、炭化水素ガス、ヘテロ−エピタキシャル成長の間に環境を形成するために使用されるガス、急冷ガスなど各種ガスを提供してもよい。ガスの流れおよび流量は、例えば、シャワーヘッド907のプレナム設計を参照して、以下により詳細に記載する。複数個の排気口905は、反応器の本体部分901の下端に備えられていてもよい。図9の例示的な実施形態において、2つの排気口905は、例えば、本体部分901の実質的に全体に通常は貫流する、ガス注入口903により供給されるガスが吐き出されるように、反応器の本体部分901の両極端の近くに備えられている。あるいくつかの例示的な実施形態において、いくらかの排気口905が備えられていてもよい(例えば、さらなる排気口905は、反応器の本体部分901のおおよその水平中心、反応器の本体部分901の上端または側面などに備えられていてもよい)ことが理解される。
【0051】
背部支持体基板909は、浄化してもよく、あるいくつかの例示的な実施形態において、ロードロック機構により反応器内に入れる前に、(例えば、物理的気相成長法またはPVD、スパッタリング、CVD、火炎熱分解などにより)その上に配置された触媒薄膜を有してもよい。サセプタ設計に関して、背部支持体基板909の表面は、(i)金属フィルムが結晶化および活性化し、(ii)その表面上に、ガス相前駆体から実質的に均一かつ制御し得る厚さでグラフェンを優先的に堆積することを可能にする、制御し得る温度レベルおよび均一性まで(例えば、チャンバー全体の加熱をも必要とすることなしに、RTAヒーター、短波赤外線ヒーターまたは基板および/またはその上の層を誘導的に加熱させ得る他の適切なヒーターを使用して)急速に加熱されてもよい。ヒーターは、パラメータ堆積速度/(温度×厚さ)の触媒比率となるように制御され得る。背部支持体基板909は、反応器中を方向Rに進んでもよいか、またはシャワーヘッド907の下に静止して置かれていてもよい。シャワーヘッド907は、例えば、1つ以上のクーラント注入口/排出口913により導入される冷却流動体またはガスを使用して、冷却されてもよい。簡単にいえば、図9の拡大図に示されるように、プレナム設計は、シャワーヘッド907の底に、それぞれ数ミリメートルのみの幅を有する、複数の開口を含んでいてもよい。
【0052】
シーリングギャップHcまたはシャワーヘッド907の底表面と背部支持体基板909が移動する上表面との間の高さの変更は、いくつかの効果を有する。例えば、チャンバー容積、したがって表面と容積との比率が変更され、それによりガス滞留時間、消費時間および半径方向の速度(radial velocities)が影響を受ける。滞留時間における変更は、ガス相反応程度に強く影響することが見出された。図9に示されるように操作されるシャワーヘッド構成(冷却された表面の下に熱い表面を有する)は、もし高圧で(例えば、数百Torrで)操作されるならば、ベナール型自然対流のポテンシャルを有し、このような傾向はレイリー数(自由対流または自然対流として公知でもある、浮力駆動流と関連する無次元数;流体の臨界値を超えたときに、加熱転写は主として対流の形態となる)による高さによって強く影響される。したがって、シーリングギャップHcは、グラフェンのヘテロ−エピタキシャル成長に影響するように、基板電極の調節可能な取り付け台を備えることなどにより、単なるハードウェアの変更を通じて変更されてもよい。
【0053】
図9実施形態の例は、反応器中でのプラズマを操作することを必ずしも意図しない。これは、結晶フィルム成長機構が、表面収着によるヘテロ−エピタキシャル(一般に、触媒上のみで発生する)によるからである。プラズマ相からの成長は、主に非晶質フィルムを生じることが見出され、またフィルム品質を大きく低下させ、かつ結果として1:10(one-to-ten)原子層フィルムにとって有害であるピンホールになり得る、マクロ粒子形成またはダスト形成を可能にすることが見出された。その代わりに、あるいくつかの例示的な実施形態は、グラファイト(例えば、単結晶構造のグラファイト)の形成、そのグラフェイン(例えば、あるn値の)へのエッチング、およびグラフェインのグラフェン(例えば、HEGグラフェンへの)転換を含んでもよい。当然ながら、その場終点手法は、フィードバックパラメータとして実施してもよい。
【0054】
あるいくつかの例示的な実施形態において、イオンビーム源は、例えば、上記の例示的な技術に基づくドーピングを行うために、図9の反応器における外側であるがインラインで配置されていてもよい。しかしながら,あるいくつかの例示的な実施形態において、イオンビーム源は、反応器の本体部分内に配置されていてもよい。
【0055】
例示的なプロセスフロー
図10は、あるいくつかの例示的な実施形態の、特定の例示的な触媒CVD成長、リフトオフおよび転写技術を説明する例示的なプロセスフローである。図10に示される例示的なプロセスは、例えば、従来のガラス検査方法(ステップS1002)および洗浄(ステップS1004)を使用して、背部支持体ガラスの検査から開始する。次いで、背部支持体ガラスは、イオンビーム洗浄、プラズマ灰化(ashing)などを使用して洗浄してもよい(ステップS1006)。触媒(例えば、金属触媒)は、例えば、PVDを使用して背部支持体上に配置してもよい(ステップS1008)。本発明のあるいくつかの例示的な実施形態において、ステップS1006の洗浄プロセスは、グラフェンコーター/反応器内で達成してもよいことに注意されたい。換言すれば、金属触媒薄膜がその上に形成されているかまたはされていない背部支持体ガラスは、あるいくつかの例示的な実施形態において、例えば、金属触媒層がコーター/反応器の中またはその前に堆積されているかどうかに応じて、ステップS1006の前に、グラフェンコーター/反応器中に装着されてもよい。次いで、n層グラフェンの触媒堆積が行われてもよい(ステップS1010)。グラフェンは、あるいくつかの例示的な実施形態において、水素原子(H*)が導入されることによりエッチングされてもよく、グラフェンは、例えば、目的とする用途に応じて、任意にドープされていてもよい(ステップS1012)。グラフェン形成の終了は、例えば、十分にグラフェンが堆積されたかどうかおよび/またはH*エッチングが十分であるかどうかを決定することにより検出される(ステップS1014)。グラフェン形成を停止するために、超急冷プロセスが使用され、グラフェンがその中に形成された背部支持体ガラスが反応器/コーターを出る(ステップS1016)。外観検査は、この点で任意に行われてもよい。
【0056】
グラフェン形成に続いて、グラフェンの転写に有用なポリマーは、例えば、スピン、ブレードまたは他のコーティング手法により、グラフェン上に配置されてもよい(ステップS1018)。この生成物は、例えば、必要な色変化が生じているかどうかを決定するために、任意に検査されてもよい。もしそれを有するならば、(例えば、加熱、紫外線照射などを使用して)ポリマーを硬化させ(ステップS1020)、次いで再び検査してもよい。金属触媒は、例えば、リフトオフのためのグラフェンを準備するために(ステップS1024)、アンダーエッチングまたはそうでなければ剥離をされてもよい(ステップS1022)。
【0057】
リフトオフが一旦達成されたら、ポリマーおよびグラフェンは、任意に検査され、次いで、例えば、残存するアンダーエッチング液および/または非硬化ポリマーを除去するために洗浄されてもよい(ステップS1026)。もう1つの任意の検査プロセスがこの点で行われてもよい。界面活性剤が適用されてもよく(ステップS1028)、ピンが少なくともポリマー内に取り付けて(ステップS1030)、例えば、それらのピンを用いて、メンブレンを反転させる(ステップS1032)。リフトオフプロセスはこれで完了であり、グラフェンはこれで受容基板に転写させる準備ができている。
【0058】
例えば、クリーンルームに、受容基板を準備する(ステップS1034)。例えば、グラフェン親和性コーティングを適用するなどのために、その表面エネルギーを増大させるための紫外線光を照射することにより、受容基板の表面を機能化してもよい(ステップS1036)。次いで、グラフェン/ポリマーメンブレンをホスト基板の上に転写されてもよい(ステップS1038)。
【0059】
転写が一旦完結されると、グラフェンおよびポリマーが付着した受電基板は、ポリマーを除去するためのモジュールに入れられてもよい(ステップS1040)。これは、ポリマーを紫外線光、熱、化学薬品などに曝露することにより行ってもよい。次いで、グラフェンおよび少なくとも部分的に溶解されたポリマーを有する基板は、過剰の水または脱水された他の材料で洗浄し(ステップS1042)、乾燥させてもよい(ステップS1044)。このポリマー除去プロセスは、必要により繰り返してもよい。
【0060】
ポリマーの除去の後に、例えば、標準の4点プローブを使用して、基板上のグラフェンのシート抵抗を測定してもよい(ステップS1046)。また、光の透過(例えば、Tvisなど)を測定してもよい(ステップS1048)。中間または最終生成物が品質規格に適合すると仮定して、それらを包装してもよい(ステップS1050)。
【0061】
これらの技術を用いてサンプルフィルムを準備した。サンプルフィルムは、15500S/cmの高い導電率および500〜3000nm波長にわたって80%を超える透明性を示した。また、フィルムは、良好な化学的および熱的安定性を示した。図11は、あるいくつかの例示的な実施形態に基づく、製造されたサンプルグラフェンの画像である。図11の画像は、パーマロイ薄膜からのヘテロエピタキシャル成長グラフェンのリフトオフを強調する。
【0062】
例示的なグラフェンを含む応用
上記のように、グラフェンベースの層は、広い様々な応用および/または電子デバイスに使用されてもよい。このような例示的な応用および/または電子デバイスにおいて、ITOおよび/または他の導電性の層は、単純にグラフェンベースの層に置き換えられてもよい。グラフェンを有するデバイスの製造は、一般的に金属、ITOのような縮退した半導体、中でもa−SiおよびCdTといった太陽電池半導体などとの接触点を作製することを含む。
【0063】
ゼロバンドギャップを有しかつブリュアンゾーンのK点において状態密度(DOS)が消失するにもかかわらず、自立グラフェンは、金属的性質を示す。しかしながら、金属性、半導性または絶縁性基板上の吸着は、その電子特性を変化させ得る。これを補償するために、代わりにまたは追加で、例示的な応用および/または電子デバイスにおいて、グラフェンベースの層は、そこに隣接するいずれかの半導体層に基づいて、ドープされていてもよい。すなわち、あるいくつかの例示的な実施形態において、もしグラフェンベースの層がn型の半導体層に隣接していれば、グラフェンベースの層は、n型のドーパントでドープされていてもよい。同様に、あるいくつかの例示的な実施形態において、もしグラフェンベースの層がp型の半導体層に隣接していれば、グラフェンベースの層は、p型のドーパントでドープされていてもよい。当然ながら、円錐ポイントに関するグラフェンのフェルミレベルにおけるシフトは、例えば、密度汎関数理論(DFT)を使用してモデル化してもよい。バンドギャップの計算は、金属/グラフェン界面が2つの広い組、すなわち化学吸着と物理吸着とに分類できることを示す。後者の場合、上方への(下方への)シフトは、電子(正孔)が金属によりグラフェンに供与されることを意味する。したがって、用途に応じてグラフェンへの接点としてどの金属またはTCOを用いるかを予測することができる。
【0064】
1つ以上のグラフェンベースの層を使用してもよい第1の例示的な電子デバイスは、太陽光光電変換デバイスである。このような例示的なデバイスは、前面電極または裏面電極を含んでもよい。このようなデバイスにおいて、グラフェンベースの層は、一般にそこに使用されるITOを単純に置き換ることができる。光電変換デバイスは、例えば、米国特許第6,784,361号、第6,288,325号、第6,613,603および第6,123,824;米国公開第2008/0169021号、第2009/0032098号、第2008/0308147号および第2009/0020157;ならびに出願第12/285,374号、第12/285,890号、第12/457,006号に開示され、それらの開示を参照としてここに組み込む。
【0065】
代わりにまたは追加して、ドープされたグラフェンベースの層は、隣接した半導体層と整合させるために、そこに含まれていてもよい。例えば、図12は、あるいくつかの例示的な実施形態に基づく、グラフェンベースの層を組み込む太陽光光電変換デバイスの断面概略図である。図12の例示的な実施形態において、ガラス基板1202が備えられる。例えば、限定されることなしに、ガラス基板1202は、米国特許出願第11/049,292号および/または第11/122,218号のいずれかに記載されたガラスのいずれであってもよく、それらの開示を参照としてここに組み込む。ガラス基板は、例えば太陽電池の効率を増大させるために、任意にナノテクスチャ加工されていてもよい。反射防止(AR)膜1204は、例えば透過を増大させるために、ガラス基板1202の外面に備えられてもよい。反射防止膜1204は、単層反射防止(SLAR)膜(例えば、シリコン酸化物反射防止膜)または多層反射防止(MLAR)膜であってもよい。このようなAR膜は、いずれかの適切な手法を使用して提供してもよい。
【0066】
1つ以上の吸収層1206は、例えば、図12の例示的な実施形態に示されるような裏面電極デバイスの場合、AR膜1204と反対側のガラス基板1202上に備えられていてもよい。吸収層1206は、第1と第2の半導体の間に挟まれていてもよい。図12の例示的な実施形態において、吸収層1206は、n型の半導体層1208(ガラス基板1202により近い)とp型の半導体1210(ガラス基板1202から遠く)との間に挟まれている。また、バック接点1212(例えば、アルミニウムまたは他の適切な材料)が備えられていてもよい。半導体1208とガラス基板1202との間および/または半導体1210とバック接点1212との間に、ITOまたは他の導電性の材料が備えられているよりはむしろ、第1および第2のグラフェンベースの層1214および1216が備えられていてもよい。グラフェンベースの層1214および1216は、隣接した半導体層1208および1210のそれぞれに整合するように、ドープされていてもよい。したがって、図12の例示的な実施形態において、グラフェンベースの層1214は、n型のドーパントでドープされていてもよく、グラフェンベースの層は、1216p型のドーパントでドープされていてもよい。
【0067】
グラフェンを直接テクスチャ加工することは困難であるので、任意の層1218は、ガラス基板1202と第1のグラフェンベースの層1214との間に備えられていてもよい。しかしながら、グラフェンは非常に柔軟であるので、一般にそれが位置する表面に適合する。したがって、任意の層1218のテクスチャが転写されるか、またはそうでなければ、全般的に共形のグラフェンベースの層1214に反映されるように、任意の層1218をテクスチャすることが可能である。この点について、任意のテクスチャ加工された層1218は、亜鉛ドープ酸化錫(ZTO)を含んでいてもよい。あるいくつかの例示的な実施形態において、半導体1218および1210の一方または両方は、ポリマー導電性の材料に置き換えられてもよいことに注意されたい。
【0068】
グラフェンは、近赤外線および中赤外線レンジにおいて、本質的に透明であるので、このことは、最も浸透する長波長放射線が、単一およびタンデム接合太陽電池の両方のi層の深くにキャリアを貫通させかつ発生させることを意味する。これは、その効果が既に数パーセントポイント増大しているので、バック接点をテクスチャ加工する必要性が、グラフェンベースの層には必要でないことを意味する。
【0069】
スクリーン印刷、蒸発および焼結技術、ならびに高温でのCdCl2処理は、現在、CdS/DeTe太陽電池ヘテロ接合において使用されている。これらの電池は、高い曲線因子(FF)を有する(FF>0.8)。しかしながら、直列抵抗Rsは、効率を制限するアーチファクト(artifact)である。Rsにおいて、CdS層のシート抵抗からの分布部分とその上の、CdTeおよびグラファイトベースの接点と関連する別の成分とがある。1つ以上のグラフェンベースの層の使用は、Rsへの両方の寄与の軽減を助け、一方、良好なヘテロ接合特性を維持する。前面およびバック接点配置の両方のために、このような太陽電池の構造にグラフェンを含めることにより、実質的な効率の増幅が達成できる。
【0070】
あるいくつかの例示的な実施形態は、単一接合の太陽電池を含んでいてもよいのに対して、あるいくつかの例示的な実施形態は、タンデム太陽電池を含んでもよいことが理解される。あるいくつかの例示的な実施形態は、CdS、CdTe、CIS/CIG、a−Siおよび/または他の太陽電池のタイプであってもよい。
【0071】
1つ以上のグラフェンベースの層を組み入れていてもよい別の例示的な実施形態は、タッチパネルディスプレイである。例えば、タッチパネルディスプレイは、ITOまたは他の導電性の層を含む、静電容量結合方式または抵抗膜方式タッチパネルディスプレイであってもよい。例えば、米国特許第7,436,393号、第7,372,510号、第7,215,331号、第6,204,897号、第6,177,918号および第5,650,597号ならびに出願第12/292,406号を参照、それらの開示を参照としてここに組み込む。このようなタッチパネルに置き換えてもよいITOおよび/または他の導電性の層は、グラフェンベースの層に置き換えてもよい。例えば、図13は、あるいくつかの例示的な実施形態に基づく、グラフェンベースの層を組み込んだタッチスクリーンの断面概略図である。図13は、あるいくつかの例示的な実施形態において、LCD、プラズマまたは他のフラットパネルディスプレイであってもよい、内在するディスプレイ1302を含む。光学的に透明な接着剤1304は、ディスプレイ1302を薄いガラスシート1306に結合する。変形可能なPETホイル1308は、図13の例示的な実施形態において、一番上の層として備えられて備えられている。PETホイル1308は、実質上の複数のピラースペーサ1310およびエッジシール1312により、薄いガラス基板1306の上面から離れて、空間をあけている。第1および第2のグラフェンベースの層1314および1316は、ディスプレイ1302に近いPETホイル1308の表面上、および薄いガラス基板1306のPETホイル1308に面する表面上にそれぞれ備えられていてもよい。グラフェンベースの層1314および1316の一方または両方は、例えば、イオンビームおよび/またはレーザエッチングによりパターン化されていてもよい。PETホイル上のグラフェンベースの層は、その成長位置からPETホイル自体を使用する中間生成物に転写されてもよいことに注意されたい。換言すれば、PETホイルは、グラフェンのリフトオフおよび/またはその移動のときに、フォトレジストまたは他の材料の代わりに使用してもよい。
【0072】
グラフェンベースの層の約500オーム/スクウェア未満のシート抵抗は、図13に示すものと同様の実施形態において許容され、約300オーム/スクウェア未満のシート抵抗は、グラフェンベースの層にとって有利である。
【0073】
ディスプレイ1302において一般的に見出されたITOは、1つ以上のグラフェンベースの層に置き換えてもよいことが理解される。例えば、ディスプレイ1302がLCDディスプレイであるとき、グラフェンベースの層は、カラーフィルタ基板上の共通電極として、および/またはいわゆるTFT基板上のパターン電極として備えられてもよい。また、当然ながら、ドープされたまたはドープされていないグラフェンベースの層は、個別のTFT設計および製造に関して、使用されてもよい。また、同様の機構が、プラズマおよび/または他のフラットパネルディスプレイに関して提供できる。
【0074】
また、グラフェンベースの層は、導電性のデータ/バスライン、バスバー(bus bars)、アンテナおよび/またはそのようなものをつくるために使用してもよい。このような構造は、ガラス基板、シリコンウエハなどに形成または適用されてもよい。図14は、あるいくつかの例示的な実施形態に基づく、導電性のデータ/バスラインを形成するための例示的な技術を説明するためのフローチャートである。ステップS1401において、グラフェンベースの層は、適切な基板上に形成される。任意のステップであるステップS1403において、保護層がグラフェンベースの層の上に備えられてもよい。ステップS1405において、グラフェンベースの層は、選択的に除去またはパターン化されてもよい。除去またはパターン化は、レーザエッチングにより達成してもよい。そのような場合、レーザの解像度が十分に繊細であるという条件で、保護層の必要性は軽減される。代わりにまたは加えて、エッチングは、イオンビームへの曝露/プラズマ処理により行ってもよい。また、上記のように、H*は、例えば、ホットフィラメントに関して使用してもよい。イオンビーム/プラズマ処理がエッチングに使用されるとき、保護層は好ましい。例えば、フォトレジスト材料は、所定のグラフェン領域を保護するために使用してもよい。このようなフォトレジストは、ステップS1403において、例えば、スピンコーティングなどにより適用されてもよい。そのような場合、他の任意のステップS1407において、任意の保護層は除去される。例えば紫外線への曝露は、適切なフォトレジストと共に使用されてもよい。示されていない1つ以上のステップにおいて、導電性のグラフェンベースのパターンは、例えば、いずれかの適切な手法を使用して(例えば、上記のもののように)、もしそれが既にその上に形成されていないのであれば、中間または最終生成物に転写してもよい。
【0075】
あるいくつかの例示的な実施形態は、グラフェンベースの層をエッチングして除くか、または除去することとして記載したが、あるいくつかの例示的な実施形態は、グラフェンベースの層の導電率を単純に変化させることができる。そのような場合、グラフェンのいくつかまたはすべてが、除去されないことがある。しかしながら、導電率は適当に変化したので、適切なパターン化された領域のみが導電性である。
【0076】
図15は、あるいくつかの例示的な実施形態に基づく、導電性のデータ/バスラインを形成するための技術の概略図である。図15に示されるように、グラフェンの導電率は、イオンビームへの曝露により選択的に変化する。フォトレジストは、適切なパターンを用いて、例えば、グラフェンベースの層の所望の一部分を保護するが、グラフェンベースの層の他の部分は、イオンビーム/プラズマに曝露されたままである。
【0077】
種々のサンプルが堆積されかつエッチングされた後の移動度データを、下表に示す。
【表1】
【0078】
このおよび/または他の方法でのグラフェンのパターン化は、いくつかの理由により有利であることが理解される。例えば、層の大部分が透明になる。したがって、パターンが見えない「シームレス」アンテナを提供することができる。乗物の窓(例えば、霜取り、アンテナ使用、構成要素への動力供給などのための)、フラットパネル(例えば、LCD、プラズマおよび/またはその他)ディスプレイデバイス、天窓、冷蔵庫/冷凍庫のドア/窓などに組み込まれ得るバスバーに関して、同様の結果を得ることができる。また、これは、このような製品においてよく見られるブラックフリット(black frits)の必要性を有利に軽減する。さらに、グラフェンベースの層は、エレクトロクロミック素子におけるITOの代わりに使用し得る。
【0079】
あるいくつかの例示的な応用/デバイスは、上記のようにここに記載されているが、グラフェンベースの導電性の層は、ITO、酸化亜鉛などといった他の透明導電層(TCC)の代わりにまたは追加で使用することができる。
【0080】
ここに用いられているように、用語「の上に(on)」、「により支持された(supported by)」などは、そうでないと明記しない限り、2つの要素が互いに直接近接しているというの意味に解釈されるべきではない。換言すれば、第1の層は、それらの間に1つ以上の層があったとしても、第2の層「の上に」あるかまたは「により支持された」という。
【0081】
本発明は、現在考えられるほとんどの実用的でかつ好ましい実施形態に関して記載したが、本発明は、記載された実施形態に限定されず逆に、付加されたクレームの真意および領域の範囲内に含まれる、種々の変形および等価な取り合せを網羅することが意図されることが理解される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
触媒薄膜上に中間体グラフェン薄膜をヘテロエピタキシャル成長させ、前記触媒薄膜が実質的に単一配向性の大きな粒子の結晶構造を有し;
ドープされたグラフェン薄膜の製造において、前記中間体グラフェン薄膜にn型またはp型ドーパントをドープすることを含み、
前記ドープされたグラフェン薄膜が、150オーム/スクウェア未満のシート抵抗を有するドープされたグラフェン薄膜の製造方法。
【請求項2】
前記中間体グラフェン薄膜のドーピングが、
中間体グラフェン薄膜をドーパントとして用いられる材料を含むドーピングガスに曝露させ;
前記中間体グラフェン薄膜およびドーピングガスを含むチャンバー内にプラズマを発生させ;かつ
前記ドーパントガス中の材料を用いて、前記中間体グラフェン薄膜中にドーパントをイオンビーム注入することを含む請求項1の方法。
【請求項3】
前記イオンビーム出力が、20〜100eVである請求項2の方法。
【請求項4】
前記イオンビーム出力が、20〜40eVである請求項2の方法。
【請求項5】
前記中間体グラフェン薄膜のドーピングが、
その中に半導体のドーパントを含むターゲット受電基板を用意し、前記ターゲット受電基板が前記ターゲット受電基板をつくるために用いられる溶融工程によってその中にドーパントを含み;かつ
熱拡散により、前記ターゲット受電基板中の半導体のドーパントを前記中間体グラフェン薄膜中に移動させることを含む請求項1の方法。
【請求項6】
前記ターゲット受電基板が、1〜10原子量%のドーパント材料を含む請求項5の方法。
【請求項7】
前記中間体グラフェン薄膜のドーピングが、
その中に半導体のドーパントを含むターゲット受電基板を用意し、前記ターゲット受電基板がイオンビームによってその中にドーパントを含み;かつ
熱拡散により、前記ターゲット受電基板中の半導体のドーパントを前記中間体グラフェン薄膜中に移動させることを含む請求項1の方法。
【請求項8】
前記イオンビーム注入が、10〜1000eVの出力レベルで行われる請求項7の方法。
【請求項9】
前記中間体グラフェン薄膜のドーピングが、
その上に配置された少なくとも1つの薄膜を有するターゲット受電基板を用意し、前記薄膜がその中に半導体ドーパントを含み;かつ
熱拡散により、前記ターゲット受電基板上に形成された少なくとも1つの薄膜中の半導体のドーパントを、前記中間体グラフェン薄膜中に移動させることを含む請求項1の方法。
【請求項10】
前記中間体グラフェン薄膜のドーピングが、
前記触媒薄膜中に半導体のドーパントを予備注入し;かつ
熱拡散により、前記触媒薄膜中の半導体のドーパントを前記中間体グラフェン薄膜中に移動させることを含む請求項1の方法。
ことを含む請求項1の方法。
【請求項11】
前記熱拡散が、中間体グラフェン薄膜の堆積の間に起こる請求項10の方法。
【請求項12】
前記触媒薄膜が、そのバルク中に1〜5%の半導体のドーパント原子を含む請求項10の方法。
【請求項13】
前記触媒薄膜が、ニッケルを含む請求項12の方法。
【請求項14】
前記ドープされたグラフェン薄膜が、いずれか1つ以上の:窒素、ホウ素、リン、フッ化物、リチウム、カリウムおよび硫黄でドープされている請求項1の方法。
【請求項15】
前記ドープされたグラフェン薄膜が、10〜20オーム/スクウェアのシート抵抗を有する請求項1の方法。
【請求項16】
実質的に単一配向性の大きな粒子の結晶構造を有する金属触媒薄膜上に直接または間接的にヘテロエピタキシャル成長され、
グラフェン薄膜が1〜10原子層厚さであり、
ドープされたグラフェン薄膜が150オーム/スクウェア未満のシート抵抗を有するドープされたグラフェン薄膜。
【請求項17】
前記ドープされたグラフェン薄膜が、n型のドーパントを含む請求項16のドープされたグラフェン薄膜。
【請求項18】
前記ドープされたグラフェン薄膜が、p型のドーパントを含む請求項16のドープされたグラフェン薄膜。
【請求項19】
前記ドープされたグラフェン薄膜が、いずれか1つ以上の:窒素、ホウ素、リン、フッ化物、リチウム、カリウムおよび硫黄でドープされている請求項16のドープされたグラフェン薄膜。
【請求項20】
前記ドープされたグラフェン薄膜が、10〜20オーム/スクウェアのシート抵抗を有する請求項16のドープされたグラフェン薄膜。
【請求項1】
触媒薄膜上に中間体グラフェン薄膜をヘテロエピタキシャル成長させ、前記触媒薄膜が実質的に単一配向性の大きな粒子の結晶構造を有し;
ドープされたグラフェン薄膜の製造において、前記中間体グラフェン薄膜にn型またはp型ドーパントをドープすることを含み、
前記ドープされたグラフェン薄膜が、150オーム/スクウェア未満のシート抵抗を有するドープされたグラフェン薄膜の製造方法。
【請求項2】
前記中間体グラフェン薄膜のドーピングが、
中間体グラフェン薄膜をドーパントとして用いられる材料を含むドーピングガスに曝露させ;
前記中間体グラフェン薄膜およびドーピングガスを含むチャンバー内にプラズマを発生させ;かつ
前記ドーパントガス中の材料を用いて、前記中間体グラフェン薄膜中にドーパントをイオンビーム注入することを含む請求項1の方法。
【請求項3】
前記イオンビーム出力が、20〜100eVである請求項2の方法。
【請求項4】
前記イオンビーム出力が、20〜40eVである請求項2の方法。
【請求項5】
前記中間体グラフェン薄膜のドーピングが、
その中に半導体のドーパントを含むターゲット受電基板を用意し、前記ターゲット受電基板が前記ターゲット受電基板をつくるために用いられる溶融工程によってその中にドーパントを含み;かつ
熱拡散により、前記ターゲット受電基板中の半導体のドーパントを前記中間体グラフェン薄膜中に移動させることを含む請求項1の方法。
【請求項6】
前記ターゲット受電基板が、1〜10原子量%のドーパント材料を含む請求項5の方法。
【請求項7】
前記中間体グラフェン薄膜のドーピングが、
その中に半導体のドーパントを含むターゲット受電基板を用意し、前記ターゲット受電基板がイオンビームによってその中にドーパントを含み;かつ
熱拡散により、前記ターゲット受電基板中の半導体のドーパントを前記中間体グラフェン薄膜中に移動させることを含む請求項1の方法。
【請求項8】
前記イオンビーム注入が、10〜1000eVの出力レベルで行われる請求項7の方法。
【請求項9】
前記中間体グラフェン薄膜のドーピングが、
その上に配置された少なくとも1つの薄膜を有するターゲット受電基板を用意し、前記薄膜がその中に半導体ドーパントを含み;かつ
熱拡散により、前記ターゲット受電基板上に形成された少なくとも1つの薄膜中の半導体のドーパントを、前記中間体グラフェン薄膜中に移動させることを含む請求項1の方法。
【請求項10】
前記中間体グラフェン薄膜のドーピングが、
前記触媒薄膜中に半導体のドーパントを予備注入し;かつ
熱拡散により、前記触媒薄膜中の半導体のドーパントを前記中間体グラフェン薄膜中に移動させることを含む請求項1の方法。
ことを含む請求項1の方法。
【請求項11】
前記熱拡散が、中間体グラフェン薄膜の堆積の間に起こる請求項10の方法。
【請求項12】
前記触媒薄膜が、そのバルク中に1〜5%の半導体のドーパント原子を含む請求項10の方法。
【請求項13】
前記触媒薄膜が、ニッケルを含む請求項12の方法。
【請求項14】
前記ドープされたグラフェン薄膜が、いずれか1つ以上の:窒素、ホウ素、リン、フッ化物、リチウム、カリウムおよび硫黄でドープされている請求項1の方法。
【請求項15】
前記ドープされたグラフェン薄膜が、10〜20オーム/スクウェアのシート抵抗を有する請求項1の方法。
【請求項16】
実質的に単一配向性の大きな粒子の結晶構造を有する金属触媒薄膜上に直接または間接的にヘテロエピタキシャル成長され、
グラフェン薄膜が1〜10原子層厚さであり、
ドープされたグラフェン薄膜が150オーム/スクウェア未満のシート抵抗を有するドープされたグラフェン薄膜。
【請求項17】
前記ドープされたグラフェン薄膜が、n型のドーパントを含む請求項16のドープされたグラフェン薄膜。
【請求項18】
前記ドープされたグラフェン薄膜が、p型のドーパントを含む請求項16のドープされたグラフェン薄膜。
【請求項19】
前記ドープされたグラフェン薄膜が、いずれか1つ以上の:窒素、ホウ素、リン、フッ化物、リチウム、カリウムおよび硫黄でドープされている請求項16のドープされたグラフェン薄膜。
【請求項20】
前記ドープされたグラフェン薄膜が、10〜20オーム/スクウェアのシート抵抗を有する請求項16のドープされたグラフェン薄膜。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公表番号】特表2013−501696(P2013−501696A)
【公表日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−523599(P2012−523599)
【出願日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際出願番号】PCT/US2010/002058
【国際公開番号】WO2011/016837
【国際公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【出願人】(593005002)ガーディアン・インダストリーズ・コーポレーション (21)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際出願番号】PCT/US2010/002058
【国際公開番号】WO2011/016837
【国際公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【出願人】(593005002)ガーディアン・インダストリーズ・コーポレーション (21)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]