説明

グリオキサラーゼ阻害物質

本発明は、グリオキサラーゼIの阻害物質である式(I)の化合物、薬学的塩またはそのような化合物を含む医薬組成物、ならびに、グリオキサラーゼIの阻害により緩和される種々の症状を治療するためのそのような組成物および化合物の使用に関する。式中、Xは、NまたはCHであり;R2は、H、CF3;または、場合により置換されているC5-6アリール、C3-7シクロアルキル、C5-7ヘテロシクリルである。R3は、H;または、場合により置換されているC5-6アリール、C3-7シクロアルキル、C5-7ヘテロシクリルである。あるいはまた、R3とR2は一緒になって、場合により置換されているC3-4アルキレン基を形成しており、この場合、L3およびL4は単結合であり、したがってL3およびL4が結合している芳香族環と縮合しているC5-6環を形成している。L3およびL4は、単結合、場合により置換されているC1-4アルキレン、-L9YN(OH)C(=O)L10-および-L9C(=O)N(OH)YL10-から独立して選択され、ここで、L9およびL10は、場合により置換されているC1-4アルキレン、C5-6アリーレン、C1-4アルキレン-C5-6アリーレンおよび単結合から独立して選択され、YはNHまたは単結合である。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グリオキサラーゼI阻害物質である化合物、そのような化合物を含む医薬組成物、ならびに、そのような組成物および化合物の、グリオキサラーゼIの阻害により軽減される種々の症状を治療するための使用に関する。
【背景技術】
【0002】
メチルグリオキサール(MG)は、解糖によって細胞内で形成される、内因性の細胞傷害性物質である。グリオキサラーゼ系は、連続する二段階で、MGなどの2-オキソアルデヒドを対応する2-ヒドロキシ酸へと変換する。MGは、中間体S-D-ラクトイルグルタチオンを経てD-乳糖へと変換される。グリオキサラーゼ系は、2種の酵素(グリオキサラーゼIおよびグリオキサラーゼII)から構成される。グリオキサラーゼIは、律速酵素であり、MGと還元型グルタチオン(GSH)から非酵素的に形成されるヘミチオアセタールからのS-D-ラクトイルグルタチオンの形成を触媒する。グリオキサラーゼIIは、S-D-ラクトイルグルタチオンのD-乳酸への加水分解を触媒し、グリオキサラーゼIにより触媒される反応で消費されたGSHを再形成する(Thornalleyら, Crit. Rev. Oncol. Haematol. 20, 99 (1995))。
【0003】
高レベルのMGはDNA付加体を形成し、概して細胞に対して有害である。腫瘍細胞や特定の寄生生物のように解糖速度が速い細胞は、グリオキサラーゼIレベルが高く、これは、MGの主要な解毒経路であると考えられる。38種のヒト癌細胞系では、正常細胞の場合よりもグリオキサラーゼIレベルが高いことが示された(Sakamotoら, Clin. Cancer Res. 7, 2513 (2001))。以下のヒト癌種において、グリオキサラーゼIレベルの増大が見られた:肺癌(Sakamotoら, 同書)、前立腺癌(Sakamotoら, 同書; Davidsonら, J. Urol. 161, 690 (1999);Samadiら, Urology 57, 183 (2001))、結腸癌(Ranganathanら, Biochim. Biophys. Acta 1182, 311 (1993))、白血病(Sakamotoら, Blood 95, 3214 (2000))および乳癌(Rulliら, Breast Canc. Res. Treat 66, 67 (2001))。グリオキサラーゼ阻害物質のようにMGを蓄積させる物質は、抗腫瘍作用を示すと予期でき(Thornalleyら, Gen. Pharmacol. 27, 565 (1996))、したがって、種々の形態の癌に罹患している患者にとって有益な作用を有すると思われる。
【0004】
プロトタイプのペプチド性グリオキサラーゼI阻害物質は、グリオキサラーゼIの基質(すなわち、MGとGSHとから形成されるヘミチオアセタール)についての知見に基づいて合成されている(Johanssonら, Mol. Pharmacol. 57, 619 (2000);Thornalleyら J. Med. Chem. 39, 3409 (1996);Kalsiら, J. Med. Chem. 42, 3981 (2000);Sharkeyら, Cancer Chemother. Pharmacol. 46, 156 (2000))。そのような阻害物質は、実際にMGレベルを増大させ、癌細胞においてアポトーシスを引き起こすことが示されている。さらに、それらは、それら自体でまたは細胞傷害性物質と相乗作用して、in vivoで抗癌作用を示すことが示されている(Thornalleyら, Biochem. Pharmacol. 51, 1365 (1996);Sakamotoら, Blood 95, 3214 (2000);Sharkeyら, 同書)。さらに、特定の細胞傷害剤(アドリアマイシン、エトポシド)に対する腫瘍細胞の耐性が、ひとつにはグリオキサラーゼIの過剰活性によって生じる可能性があることが、徐々に明らかになっている(Sakamotoら, Blood 95, 3214 (2000);Johanssonら, 同書)。
【0005】
既知のグリオキサラーゼI阻害化合物は、全般的にペプチド性であり、グリオキサラーゼIが見られる細胞の内部に到達するにはエステル化される必要がある。したがって、非ペプチド性であり、したがって治療薬剤としてより有望であるグリオキサラーゼI阻害物質のクラスを見出すことが望ましい。
【0006】
米国特許第4,898,870号には、グリオキサラーゼI阻害に関してピロロキノリンキノン化合物が記載されているが、グリオキサラーゼI阻害についての活性データは開示されていない。WO 99/35128は、グリオキサラーゼIの競合的阻害化合物、膜透過性プロドラッグと細胞内グルタチオンとの間のアシル交換反応を用いた腫瘍細胞内部でのそのような阻害物質の製造方法に関するものである。
【0007】
本発明は、非ペプチド性であり、したがって治療薬剤としてより有望であるグリオキサラーゼI阻害化合物のさらなるクラスを提供する。
【発明の開示】
【0008】
本発明の第1の態様は、治療方法において使用するための、式Iの化合物またはその薬学的に許容される塩を提供する:
【化1】

【0009】
[式中、
Xは、NまたはCHであり;
R1は、H、シアノ、ハロ、ヒドロキシ、ヒドロキサム酸、スルフヒドリルもしくは-NH2;または、場合によりシアノ、ハロ、ヒドロキシ、ヒドロキサム酸、スルフヒドリルもしくは-NH2で置換されているC1-4アルキル;または、-OR、-NHR、-NR2もしくは-SRであり、ここで、Rは、場合によりシアノ、ハロ、ヒドロキシ、ヒドロキサム酸、スルフヒドリルもしくは-NH2で置換されているC1-4アルキルであり;
R2は、H、CF3;または、場合により置換されているC5-6アリール、C3-7シクロアルキル、C5-7ヘテロシクリルまたは、R3と一緒になって、場合により置換されているC3-4アルキレン基(この場合、L3およびL4は単結合であり、したがってL3およびL4が結合している芳香族環と縮合しているC5-6環を形成している)であり;
R3は、H;または、場合により置換されているC5-6アリール、C3-7シクロアルキル、C5-7ヘテロシクリルまたは、R2と一緒になって、場合により置換されているC3-4アルキレン基(この場合、L3およびL4は単結合であり、したがってL3およびL4が結合している芳香族環と縮合しているC5-6環を形成している)であり;
R4は、H;または、場合により置換されているC5-6アリールもしくはC5-7ヘテロシクリルであり;
L1は、場合により置換されているC1-4アルキレン、C5-6アリーレン、C1-4アルキレン-C5-6アリーレンまたは-L5N(R5)L6-であり、ここで、L5およびL6は、場合により置換されているC1-4アルキレンおよびC5-6アリーレンから独立して選択され、R5はHまたはC1-4アルキルであり;
L2は、単結合;または、場合により置換されているC1-4アルキレンもしくは-L7C(=O)L8-であり、ここで、L7およびL8は、場合により置換されているC1-4アルキレンおよび単結合から独立して選択され;
L3およびL4は、単結合、場合により置換されているC1-4アルキレン、-L9YN(OH)C(=O)L10-および-L9C(=O)N(OH)YL10-から独立して選択され、ここで、L9およびL10は、場合により置換されているC1-4アルキレン、C5-6アリーレン、C1-4アルキレン-C5-6アリーレンおよび単結合から独立して選択され、YはNHまたは単結合である]。
【0010】
本発明の第2の態様は、第1の態様において定義したような式Iの化合物またはその薬学的に許容される塩を、薬学的に許容される担体または希釈剤と共に含んでなる医薬組成物を提供する。
【0011】
本発明のさらに別の態様は、グリオキサラーゼIの阻害により軽減される症状を治療するための医薬品の調製における、式Iの化合物またはまたはその薬学的に許容される塩の使用を提供する。
【0012】
本発明の別の態様は、グリオキサラーゼIの阻害により軽減することができる症状の治療方法であって、有効量の式Iの化合物またはその薬学的に許容される塩を、治療が必要な患者に投与することを含む上記方法を提供する。
【0013】
本発明の別の態様は、本明細書中で記載したような新規な化合物またはその塩、溶媒和物および化学的に保護された形態、ならびにそれらの合成方法を提供する。
【0014】
この態様において、その化合物は、式Iにおいて提供されるようなものであり、その式中で、その化合物は、少なくとも1個の-C(=O)N(OH)-基を含んでいる。
【0015】
グリオキサラーゼIの阻害により軽減される症状は、増殖性症状である。「増殖性症状」という用語は、in vitroであってもin vivoであってもよいが、新形成性または過形成性増殖などの、望ましくない過剰または異常な細胞の望ましくないまたは不制御の細胞増殖について言う。
【0016】
増殖性症状の例としては、限定するものではないが、良性、前悪性および悪性の細胞増殖が含まれ、例えば、限定するものではないが、新生物および腫瘍(例えば、組織球腫、神経膠腫、星状細胞腫、骨腫瘍)、癌(例えば、肺癌、小細胞肺癌、消化管癌、腸癌、結腸癌、乳癌、卵巣癌、前立腺癌、精巣癌、肝臓癌、腎臓癌、膀胱癌、膵臓癌、脳腫瘍(brain cancer)、肉腫、骨肉腫、カポジ肉腫、黒色腫瘍)、白血病、乾癬、骨疾患、(例えば、結合組織の)線維増殖性障害、ならびにアテローム性硬化症が挙げられる。
【0017】
いずれのタイプの細胞も処置可能であり、例えば、限定するものではないが、肺、消化管(例えば、腸および結腸を含む)、胸(乳房)、卵巣、前立腺、肝臓(肝)、腎臓(腎)、膀胱、膵臓、脳および皮膚が含まれる。
【0018】
定義
シアノ:本明細書中で用いられる「シアノ」という用語は、一価の部分-CNについて言う。
【0019】
ハロ:本明細書中で用いられる「ハロ」という用語は、一価の部分-Yについて言い、ここで、Yはハロゲン原子である。ハロ基の例としては、-F、-Cl、-Brおよび-Iが含まれる。
【0020】
ヒドロキシ:本明細書中で用いられる「ヒドロキシ」という用語は、一価の部分-OHについて言う。
【0021】
ヒドロキサム酸:本明細書中で用いられる「ヒドロキサム酸」という用語は、一価の部分-C(=O)NH(OH)について言う。
【0022】
スルフヒドリル:本明細書中で用いられる「スルフヒドリル」という用語は、一価の部分-SHについて言う。
【0023】
C1-4アルキル基:本明細書中で用いられる「C1-4アルキル」という用語は、1〜4個の炭素原子を有する非環状炭化水素化合物の炭素原子からの水素原子を除去することにより得られる一価の部分について言い、これは飽和であっても不飽和であってもよい。
【0024】
飽和C1-4アルキル基の例としては、メチル(C1);エチル(C2);プロピル(C3)(これは直鎖状(n-プロピル)であっても分枝鎖状(iso-プロピル)であってもよい);ブチル(C4)(これは直鎖状(n-ブチル)であっても分枝鎖状(iso-ブチル、sec-ブチルおよびtert-ブチル)であってもよい)が含まれる。
【0025】
不飽和C1-4アルキル基は、(二重結合を含む場合は)C1-4アルケニル基とも呼ばれ、(三重結合を含む場合は)C1-4アルキニル基とも呼ばれるが、この例としては、エテニル(ビニル、-CH=CH2)、エチニル(エチニル、-C≡CH)、1-プロペニル(-CH=CH-CH3)、2-プロペニル(アリル、-CH-CH=CH2)、2-プロピニル(プロパルギル、-CH2-C≡CH)、イソプロペニル(-C(CH3)=CH2)およびブテニル(C4)が含まれる。
【0026】
C3-7シクロアルキル:本明細書中で用いられる「C3-7シクロアルキル」という用語は、シクリル基でもあるアルキル基;すなわち、環状炭化水素(炭素環式)化合物の脂環式環原子から水素原子を除去することにより得られる一価の部分について言うものであり、その部分は(特に明示しない限り)3〜7個の環原子を有する。
【0027】
飽和シクロアルキル基の例としては、限定するものではないが、シクロプロパン(C3)、シクロブタン(C4)、シクロペンタン(C5)、シクロヘキサン(C6)、シクロヘプタン(C7)、ノルボルネン(C7)、ノルピナン(C7)、ノルカラン(C7)から誘導されるものが含まれる。
【0028】
C5-7ヘテロシクリル:本明細書中で用いられる「C5-7ヘテロシクリル」という用語は、複素環式化合物の環原子から水素原子を除去することにより得られる一価の部分について言うものであり、その部分は5〜7個の環原子を有し、そのうちの1〜4個が環ヘテロ原子である。
【0029】
これに関して、C5-7という接頭語は、(炭素原子であってもヘテロ原子であっても)環原子の個数または環原子の個数の範囲を表わす。例えば、本明細書中で用いられる「C5-7ヘテロシクリル」という用語は、5〜7個の環原子を有するヘテロシクリル基について言う。ヘテロシクリル基のグループの例としては、C5-7ヘテロシクリルおよびC5-6ヘテロシクリルが含まれる。
【0030】
(非芳香族性)単環式ヘテロシクリル基の例としては、限定するものではないが、以下のものから誘導されるものが含まれる。
【0031】
N1:ピロリジン(テトラヒドロピロール)(C5)、ピロリン(例えば、3-ピロリン、2,5-ジヒドロピロール)(C5)、2H-ピロールまたは3H-ピロール(イソピロール、イソアゾール)(C5)、ピペリジン(C6)、ジヒドロピリジン(C6)、テトラヒドロピリジン(C6)、アゼピン(C7);
O1:オキソラン(テトラヒドロフラン)(C5)、オキソール(ジヒドロフラン)(C5)、オキサン(テトラヒドロピラン)(C6)、ジヒドロピラン(C6)、ピラン(C6)、オキセピン(C7);
S1:チオラン(テトラヒドロチオフェン)(C5)、チアン(テトラヒドロチオピラン)(C6)、チエパン(C7);
O2:ジオキソラン(C5)、ジオキサン(C6)およびジオキセパン(C7);
O3:トリオキサン(C6);
N2:イミダゾリジン(C5)、ピラゾリジン(ジアゾリジン)(C5)、イミダゾリン(C5)、ピラゾリン(ジヒドロピラゾール)(C5)、ピペラジン(C6);
N1O1:テトラヒドロオキサゾール(C5)、ジヒドロオキサゾール(C5)、テトラヒドロイソキサゾール(C5)、ジヒドロイソキサゾール(C5)、モルホリン(C6)、テトラヒドロオキサジン(C6)、ジヒドロオキサジン(C6)、オキサジン(C6);
N1S1:チアゾリン(C5)、チアゾリジン(C5)、チオモルホリン(C6);
N2O1:オキサジアジン(C6);
O1S1:オキサチオール(C5)およびオキサチアン(チオキサン)(C6);ならびに
N1O1S1:オキサチアジン(C6)。
【0032】
置換(非芳香族性)単環式ヘテロシクリル基の例としては、例えば、アラビノフラノース、リキソフラノース、リボフラノースおよびキシロフラノースのようなフラノース(C5)、アロピラノース、アルトロピラノース、グルコピラノース、マンノピラノース、グロピラノース、イドピラノース、ガラクトピラノースおよびタロピラノースのようなピラノース(C6)などの環状形態の糖から誘導されるものが含まれる。
【0033】
ヘテロシクリル基(ヘテロアリール基でもある)の例は、アリール基と共に下記に記載する。
【0034】
C5-6アリール:本明細書中で用いられる「C5-6アリール」という用語は、芳香族性化合物の芳香族環原子から水素原子を除去することにより得られる一価の部分について言い、この部分は(特に明示しない限り)5〜6個の環原子を有する。
【0035】
これに関して、C5-6という接頭語は、(炭素原子であってもヘテロ原子であっても)環原子の個数または環原子の個数の範囲を表わす。例えば、本明細書中で用いられる「C5-6アリール」という用語は、5または6個の環原子を有するアリール基について言う。
【0036】
環原子は、「カルボアリール基」の場合と同様に、全て炭素原子とすることができる。カルボアリール基の例としては、C5-6カルボアリール、C5カルボアリールおよびC6カルボアリールが含まれる。
【0037】
カルボアリール基の例としては、限定するものではないが、ベンゼンから誘導されるもの(すなわち、フェニル)(C6)が含まれる。
【0038】
あるいはまた、環原子は、「ヘテロアリール基」の場合と同様に、1つ以上のヘテロ原子を含むことができる。ヘテロアリール基の例としては、C5-6ヘテロアリール、C5ヘテロアリールおよびC6ヘテロアリールが含まれる。
【0039】
単環式ヘテロアリール基の例としては、限定するものではないが、以下のものから誘導されるものが含まれる。
【0040】
N1:ピロール(アゾール)(C5)、ピリジン(アジン)(C6);
O1:フラン(オキソール)(C5);
S1:チオフェン(チオール)(C5);
N1O1:オキサゾール(C5)、イソキサゾール(C5)、イソキサジン(C6);
N2O1:オキサジアゾール(フラザン)(C5);
N3O1:オキサトリアゾール(C5);
N1S1:チアゾール(C5)、イソチアゾール(C5);
N2:イミダゾール(1,3-ジアゾール)(C5)、ピラゾール(1,2-ジアゾール)(C5)、ピリダジン(1,2-ジアジン)(C6)、ピリミジン(1,3-ジアジン)(C6)(例えば、シトシン、チミン、ウラシル)、ピラジン(1,4-ジアジン)(C6);
N3:トリアゾール(C5)、トリアジン(C6);ならびに
N4:テトラゾール(C5)。
【0041】
-NH-基の形の窒素環原子を有する複素環基(ヘテロアリール基を含む)は、N-置換されていてもよい(すなわち-NR-)。例えば、ピロールは、N-メチル置換されて、N-メチルピロールとすることができる。N-置換基の例としては、限定するものではないが、C1-4アルキル、C5-7ヘテロシクリル、C5-6アリールおよびアシル基が含まれる。
【0042】
本明細書中で用いられる「二座置換基」という用語は、2つの共有結合点を有し、2つの他の部分の連結基としての役目をする置換基について言う。
【0043】
C1-4アルキレン:本明細書中で用いられる「C1-4アルキレン」という用語は、(特に明示しない限り)1〜4個の炭素原子を有する直鎖状炭化水素化合物の向かい合う末端から2個の水素原子を除去することにより得られる二座の部分について言い、これは、飽和であっても、部分不飽和であっても、完全不飽和であってもよい。したがって、「アルキレン」という用語は、下記で述べるサブクラスであるアルケニレン、アルキニレンなどを含む。
【0044】
これに関して、C1-4という接頭語は、炭素原子の個数または炭素原子の個数の範囲を表わす。例えば、本明細書中で用いられる「C1-4アルキレン」という用語は、1〜4個の炭素原子を有するアルキレン基について言う。
【0045】
飽和C1-4アルキレン基の例としては、限定するものではないが、-(CH2)n-[式中、nは1〜4の整数である]、例えば-CH2-(メチレン)、-CH2CH2-(エチレン)、-CH2CH2CH2-(プロピレン)および-CH2CH2CH2CH2-(ブチレン)が含まれる。
【0046】
部分不飽和C1-4アルキレン基の例としては、限定するものではないが、-CH=CH-(ビニレン)、-CH=CH-CH2-、-CH2-CH=CH2-、-CH=CH-CH2-CH2-、-CH=CH-CH=CH-が含まれる。
【0047】
C5-6アリーレン:本明細書中で用いられる「C5-6アリーレン」という用語は、芳香族性化合物の2つの異なる芳香族環原子のそれぞれから1個ずつ、2個の水素原子を除去することにより得られる二座の部分について言い、この部分は(特に明示しない限り)5〜6個の環原子を有する。
【0048】
これに関して、C5-6という接頭語は、(炭素原子であってもヘテロ原子であっても)環原子の個数または環原子の個数の範囲を表わす。例えば、本明細書中で用いられる「C5-6アリーレン」という用語は、5または6個の環原子を有するアリーレン基について言う。アリーレン基のグループの例としては、C5-6アリーレン、C5アリーレンおよびC6アリーレンが含まれる。
【0049】
環原子は、「カルボアリーレン基」(例えば、C5-6カルボアリーレン)の場合と同様に、全て炭素原子とすることができる。
【0050】
環ヘテロ原子を有さないC5-6アリーレン基(すなわち、C5-6カルボアリーレン基)の例としては、限定するものではないが、カルボアリール基に関して上記で述べた化合物から誘導されるものが含まれる。
【0051】
あるいはまた、環原子は、「ヘテロアリーレン基」(例えば、C5-6ヘテロアリーレン)の場合と同様に、1つ以上のヘテロ原子を含むことができる。
【0052】
C5-6ヘテロアリーレン基の例としては、限定するものではないが、ヘテロアリール基について上記で述べた化合物から誘導されるものが含まれる。
【0053】
C1-4アルキレン-C5-6アリーレン:本明細書中で用いられる「C1-4アルキレン-C5-6アリーレン」という用語は、C5-6アリーレン部分(-C5-6アリーレン-)に連結しているC1-4アルキレン部分(-C1-4アルキレン-)を含む二座の部分、すなわち-C1-4アルキレン-C5-6アリーレン-について言う。
【0054】
C1-4アルキレン-C5-6アリーレン基の例としては、例えば、メチレン-フェニレン、エチレン-フェニレン、プロピレン-フェニレンおよびエテニレン-フェニレン(ビニレン-フェニレンとしても知られている)が含まれる。
【0055】
本明細書中で用いられる「場合により置換されている」という表現は、置換されていなくてもよいし、あるいは以下の置換基の1つまたは上記で挙げた基の1つで置換されていてもよい、上記のような基について言う。
【0056】
C1-7アルキル基:本明細書中で用いられる「C1-7アルキル」という用語は、(特に明示しない限り)1〜7個の炭素原子を有する炭化水素化合物の炭素原子から水素原子を除去することにより得られる一価の部分について言い、これは脂肪族であっても脂環式であってもよく、飽和であっても、部分不飽和であっても、完全不飽和であってもよい。したがって、この「アルキル」という用語は、後記で述べるサブクラスであるアルケニル、アルキニルおよびシクロアルキルを含む。
【0057】
これに関して、接頭語(例えば、C1-4、C1-7、C2-7、C3-7等)は、炭素原子の個数または炭素原子の個数の範囲を表わす。例えば、本明細書中で用いられる「C1-4アルキル」という用語は、1〜4個の炭素原子を有するアルキル基について言う。アルキル基のグループの例としては、C1-4アルキル(「低級アルキル」)およびC1-7アルキルが含まれる。
【0058】
飽和アルキル基の例としては、限定するものではないが、メチル(C1)、エチル(C2)、プロピル(C3)、ブチル(C4)、ペンチル(C5)、ヘキシル(C6)、ヘプチル(C7)が含まれる。
【0059】
飽和直鎖状アルキル基の例としては、限定するものではないが、メチル(C1)、エチル(C2)、n-プロピル(C3)、n-ブチル(C4)、n-ペンチル(アミル)(C5)、n-ヘキシル(C6)およびn-ヘプチル(C7)が含まれる。
【0060】
飽和分枝鎖状アルキル基の例としては、iso-プロピル(C3)、iso-ブチル(C4)、sec-ブチル(C4)、tert-ブチル(C4)、iso-ペンチル(C5)およびneo-ペンチル(C5)が含まれる。
【0061】
シクロアルキル:本明細書中で用いられる「シクロアルキル」という用語は、シクリル基でもあるアルキル基、すなわち、環状炭化水素(炭素環式)化合物の脂環式環原子から水素原子を除去することにより得られる一価の部分について言い、この部分は(特に明示しない限り)3〜20個の環原子を有する。好ましくは、それぞれの環が3〜7個の環原子を有する。
【0062】
飽和シクロアルキル基の例としては、限定するものではないが、シクロプロパン(C3)、シクロブタン(C4)、シクロペンタン(C5)、シクロヘキサン(C6)、シクロヘプタン(C7)、ノルボルネン(C7)、ノルピナン(C7)、ノルカラン(C7)、アダマンタン(C10)およびデカリン(デカヒドロナフタレン)(C10)から誘導されるものが含まれる。
【0063】
飽和シクロアルキル基(本明細書中では「アルキル-シクロアルキル」基とも呼ばれる)の例としては、限定するものではないが、メチルシクロプロピル、ジメチルシクロプロピル、メチルシクロブチル、ジメチルシクロブチル、メチルシクロペンチル、ジメチルシクロペンチル、メチルシクロヘキシルおよびジメチルシクロヘキシル、メンタン、ツジャン、カラン、ピナン、ボルナン、ノルカランおよびカンフェンが含まれる。
【0064】
不飽和環状アルケニル基(本明細書中では「アルキル-シクロアルケニル」基とも呼ばれる)の例としては、限定するものではないが、メチルシクロプロペニル、ジメチルシクロプロペニル、メチルシクロブテニル、ジメチルシクロブテニル、メチルシクロペンテニル、ジメチルシクロペンテニル、メチルシクロヘキセニルおよびジメチルシクロヘキセニルが含まれる。
【0065】
親シクロアルキル基に縮合している他の環を1つ以上有するシクロアルキル基の例としては、限定するものではないが、インデン(C9)、インダン(例えば、2,3-ジヒドロ-1H-インデン)(C9)、テトラリン(1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン(C10)、アセナフテン(C12)、フルオレン(C13)、フェナレン(C13)、アセフェナントレン(C15)、アセアントレン(C16)から誘導されるものが含まれる。例えば、2H-インデン-2-イルは、置換基(フェニル)が縮合しているC5シクロアルキル基である。
【0066】
アルケニル:本明細書中で用いられる「アルケニル」という用語は、1個以上の炭素-炭素二重結合を有するアルキル基について言う。アルケニル基のグループの例としては、C2-4アルケニル、C2-7アルケニル、C2-20アルケニルが含まれる。
【0067】
不飽和アルケニル基の例としては、限定するものではないが、エテニル(ビニル、-CH=CH2)、1-プロペニル(-CH=CH-CH3)、2-プロペニル(アリル、-CH-CH=CH2)、イソプロペニル(-C(CH3)=CH2)、ブテニル(C4)、ペンテニル(C5)およびヘキセニル(C6)が含まれる。
【0068】
不飽和環状アルケニル基(本明細書では「シクロアルケニル」基とも呼ばれる)の例としては、限定するものではないが、シクロプロペニル(C3)、シクロブテニル(C4)、シクロペンテニル(C5)およびシクロヘキセニル(C6)が含まれる。
【0069】
アルキニル:本明細書中で用いられる「アルキニル」という用語は、1個以上の炭素-炭素三重結合を有するアルキル基について言う。アルキニル基のグループの例としては、C2-4アルキニル、C2-7アルキニル、C2-20アルキニルが含まれる。
【0070】
不飽和アルキニル基の例としては、限定するものではないが、エチニル(エチニル、-C≡CH)および2-プロピニル(プロパルギル、-CH2-C≡CH)が含まれる。
【0071】
C3-7ヘテロシクリル基:本明細書中で用いられる「C3-7ヘテロシクリル」という用語は、複素環式化合物の環原子から水素原子を除去することにより得られる一価の部分について言い、この部分は(特に明示しない限り)3〜7個の環原子を有し、そのうちの1〜4個は環ヘテロ原子である。
【0072】
これに関して、接頭語(例えば、C3-7、C5-6等)は、(炭素原子であってもヘテロ原子であっても)環原子の個数または環原子の個数の範囲を表わす。例えば、本明細書中で用いられる「C5-6ヘテロシクリル」という用語は、5または6個の環原子を有するヘテロシクリル基について言う。ヘテロシクリル基のグループの例としては、C3-7ヘテロシクリル、C5-7ヘテロシクリルが含まれる。
【0073】
単環式ヘテロシクリル基の例としては、限定するものではないが、以下のものから誘導されるものが含まれる。
【0074】
N1:アジリジン(C3)、アゼチジン(C4)、ピロリジン(テトラヒドロピロール)(C5)、ピロリン(例えば、3-ピロリン、2,5-ジヒドロピロール)(C5)、2H-ピロールまたは3H-ピロール(イソピロール、イソアゾール)(C5)、ピペリジン(C6)、ジヒドロピリジン(C6)、テトラヒドロピリジン(C6)、アゼピン(C7);
O1:オキシラン(C3)、オキセタン(C4)、オキソラン(テトラヒドロフラン)(C5)、オキソール(ジヒドロフラン)(C5)、オキサン(テトラヒドロピラン)(C6)、ジヒドロピラン(C6)、ピラン(C6)、オキセピン(C7);
S1:チイラン(C3)、チエタン(C4)、チオラン(テトラヒドロチオフェン)(C5)、チアン(テトラヒドロチオピラン)(C6)、チエパン(C7);
O2:ジオキソラン(C5)、ジオキサン(C6)およびジオキセパン(C7);
O3:トリオキサン(C6);
N2:イミダゾリジン(C5)、ピラゾリジン(ジアゾリジン)(C5)、イミダゾリン(C5)、ピラゾリン(ジヒドロピラゾール)(C5)、ピペラジン(C6);
N1O1:テトラヒドロオキサゾール(C5)、ジヒドロオキサゾール(C5)、テトラヒドロイソキサゾール(C5)、ジヒドロイソキサゾール(C5)、モルホリン(C6)、テトラヒドロオキサジン(C6)、ジヒドロオキサジン(C6)、オキサジン(C6);
N1S1:チアゾリン(C5)、チアゾリジン(C5)、チオモルホリン(C6);
N2O1:オキサジアジン(C6);
O1S1:オキサチオール(C5)およびオキサチアン(チオキサン)(C6);ならびに
N1O1S1:オキサチアジン(C6)。
【0075】
C5-7アリール:本明細書中で用いられる「C5-7アリール」という用語は、芳香族性化合物の芳香族環原子から水素原子を除去することにより得られる一価の部分について言い、この部分は(特に明示しない限り)5〜7個の環原子を有する。
【0076】
これに関して、接頭語(例えば、C5-7、C5-6等)は、(炭素原子であってもヘテロ原子であっても)環原子の個数または環原子の個数の範囲を表わす。例えば、本明細書中で用いられる「C5-6アリール」という用語は、5または6個の炭素原子を有するアリール基について言う。アリール基のグループの例としては、C5-7アリール、C5-6アリール、C5アリールおよびC6アリールが含まれる。
【0077】
環原子は、「カルボアリール基」の場合と同様に、全て炭素原子とすることができる。カルボアリール基の例としては、C5-7カルボアリール、C5-6カルボアリール、C5カルボアリールおよびC6カルボアリールが含まれる。
【0078】
カルボアリール基の例としては、限定するものではないが、ベンゼンから誘導されるもの(すなわち、フェニル)(C6)が含まれる。
【0079】
あるいはまた、「ヘテロアリール基」の場合と同様に、1個以上のヘテロ原子を含むことができる。ヘテロアリール基の例としては、C5-7ヘテロアリール、C5-6ヘテロアリール、C5ヘテロアリールおよびC6ヘテロアリールが含まれる。
【0080】
単環式ヘテロアリール基の例としては、限定するものではないが、以下のものから誘導されるものが含まれる。
【0081】
N1:ピロール(アゾール)(C5)、ピリジン(アジン)(C6);
O1:フラン(オキソール)(C5);
S1:チオフェン(チオール)(C5);
N1O1:オキサゾール(C5)、イソキサゾール(C5)、イソキサジン(C6);
N2O1:オキサジアゾール(フラザン)(C5);
N3O1:オキサトリアゾール(C5);
N1S1:チアゾール(C5)、イソチアゾール(C5);
N2:イミダゾール(1,3-ジアゾール)(C5)、ピラゾール(1,2-ジアゾール)(C5)、ピリダジン(1,2-ジアジン)(C6)、ピリミジン(1,3-ジアジン)(C6)(例えば、シトシン、チミン、ウラシル)、ピラジン(1,4-ジアジン)(C6);
N3:トリアゾール(C5)、トリアジン(C6);ならびに
N4:テトラゾール(C5)。
【0082】
-NH-基の形で窒素環原子を有する複素環基(ヘテロアリール基を含む)は、N-置換されていてもよい(すなわち-NR-)。例えば、ピロールはN-メチル置換されて、N-メチルピロールとすることができる。N-置換基の例としては、限定するものではないが、C1-7アルキル、C3-7ヘテロシクリル、C5-7アリールおよびアシル基が含まれる。
【0083】
ハロ:-F、-Cl、-Brおよび-I。
【0084】
ヒドロキシ:-OH。
【0085】
エーテル:-OR[式中、Rはエーテル置換基、例えば、C1-7アルキル基(下記で述べるC1-7アルコキシ基とも呼ばれる)、C3-7ヘテロシクリル基(C3-7ヘテロシクリルオキシ基とも呼ばれる)またはC5-7アリール基(C5-7アリールオキシ基とも呼ばれる)であり、好ましくはC1-7アルキル基である]。
【0086】
C1-7アルコキシ:-OR[式中、RはC1-7アルキル基である]。C1-7アルコキシ基の例としては、限定するものではないが、-OMe(メトキシ)、-OEt(エトキシ)、-O(nPr)(n-プロポキシ)、-O(iPr)(イソプロポキシ)、-O(nBu)(n-ブトキシ)、-O(sBu)(sec-ブトキシ)、-O(iBu)(イソブトキシ)および-O(tBu)(tert-ブトキシ)が含まれる。
【0087】
オキソ(ケト、-オン):=O。
【0088】
チオン(チオケトン):=S。
【0089】
イミノ(イミン):=NR[式中、Rはイミノ置換基、例えば、水素、C1-7アルキル基、C3-7ヘテロシクリル基またはC5-7アリール基であり、好ましくは水素またはC1-7アルキル基である]。エステル基の例としては、限定するものではないが、=NH、=NMe、=NEtおよび=NPhが含まれる。
【0090】
ホルミル(カルバルデヒド、カルボキサルデヒド):-C(=O)H。
【0091】
アシル(ケト):-C(=O)R[式中、Rはアシル置換基、例えば、C1-7アルキル基(C1-7アルキルアシルもしくはC1-7アルカノイルとも呼ばれる)、C3-7ヘテロシクリル基(C3-7ヘテロシクリルアシルとも呼ばれる)またはC5-7アリール基(C5-7アリールアシルとも呼ばれる)であり、好ましくはC1-7アルキル基である]。アシル基の例としては、限定するものではないが、-C(=O)CH3(アセチル)、-C(=O)CH2CH3(プロピオニル)、-C(=O)C(CH3)3(t-ブチリル)および-C(=O)Ph(ベンゾイル、フェノン)が含まれる。
【0092】
カルボキシ(カルボン酸):-C(=O)OH。
【0093】
チオカルボキシ(チオカルボン酸):-C(=S)SH。
【0094】
チオロカルボキシ(チオロカルボン酸):-C(=O)SH。
【0095】
チオノカルボキシ(チオノカルボン酸):-C(=S)OH。
【0096】
イミド酸:-C(=NH)OH。
【0097】
ヒドロキサム酸:-C(=O)NH(OH)。
【0098】
エステル(カルボキシレート、カルボン酸エステル、オキシカルボニル):-C(=O)OR[式中、Rはエステル置換基、例えば、C1-7アルキル基、C3-7ヘテロシクリル基またはC5-7アリール基であり、好ましくはC1-7アルキル基である]。エステル基の例としては、限定するものではないが、-C(=O)OCH3、-C(=O)OCH2CH3、-C(=O)OC(CH3)3および-C(=O)OPhが含まれる。
【0099】
アシルオキシ(逆転エステル):-OC(=O)R[式中、Rはアシルオキシ置換基、例えば、C1-7アルキル基、C3-7ヘテロシクリル基またはC5-7アリール基であり、好ましくはC1-7アルキル基である]。アシルオキシ基の例としては、限定するものではないが、-OC(=O)CH3(アセトキシ)、-OC(=O)CH2CH3、-OC(=O)C(CH3)3、-OC(=O)Phおよび-OC(=O)CH2Phが含まれる。
【0100】
オキシカルボイルオキシ:-OC(=O)OR[式中、Rはエステル置換基、例えば、C1-7アルキル基、C3-7ヘテロシクリル基またはC5-7アリール基であり、好ましくはC1-7アルキル基である]。エステル基の例としては、限定するものではないが、-OC(=O)OCH3、-OC(=O)OCH2CH3、-OC(=O)OC(CH3)3および-OC(=O)OPhが含まれる。
【0101】
アミド(カルバモイル、カルバミル、アミノカルボニル、カルボキサミド):-C(=O)NR1R2[式中、R1およびR2は、独立して、アミノ基について定義したようなアミノ置換基である]。アミド基の例としては、限定するものではないが、-C(=O)NH2、-C(=O)NHCH3、-C(=O)N(CH3)2、-C(=O)NHCH2CH3および-C(=O)N(CH2CH3)2、ならびに、例えばピペリジノカルボニル、モルホリノカルボニル、チオモルホリノカルボニルおよびピペラジノカルボニルなどのように、式中で、R1およびR2が、それらが結合している窒素原子と一緒になって、複素環式構造を形成しているアミド基が含まれる。
【0102】
アシルアミド(アシルアミノ):-NR1C(=O)R2[式中、R1はアミド置換基、例えば、水素、C1-7アルキル基、C3-7ヘテロシクリル基またはC5-7アリール基であり、好ましくは水素またはC1-7アルキル基であり、R2はアシル置換基、例えば、C1-7アルキル基、C3-7ヘテロシクリル基またはC5-7アリール基であり、好ましくは水素またはC1-7アルキル基である]。アシルアミド基の例としては、限定するものではないが、-NHC(=O)CH3、-NHC(=O)CH2CH3および-NHC(=O)Phが含まれる。R1およびR2は、一緒になって、例えばスクシンイミジル、マレイミジルおよびフタルイミジルのように、環状構造を形成していてもよい。
【化2】

【0103】
チオアミド(チオカルバミル):-C(=S)NR1R2[式中、R1およびR2は、独立して、アミノ基で定義したようなアミノ置換基である]。アミド基の例としては、限定するものではないが、-C(=S)NH2、-C(=S)NHCH3、-C(=S)N(CH3)2および-C(=S)NHCH2CH3が含まれる。
【0104】
ウレイド:-N(R1)CONR2R3[式中、R2およびR3は、独立して、アミノ基で定義したようなアミノ置換基であり、R1はウレイド置換基、例えば、水素、C1-7アルキル基、C3-7ヘテロシクリル基またはC5-7アリール基であり、好ましくは水素またはC1-7アルキル基である]。ウレイド基の例としては、限定するものではないが、-NHCONH2、-NHCONHMe、-NHCONHEt、-NHCONMe2、-NHCONEt2、-NMeCONH2、-NMeCONHMe、-NMeCONHEt、-NMeCONMe2および-NMeCONEt2が含まれる。
【0105】
グアニジド:-NH-C(=NH)NH2
【0106】
テトラゾリル:4個の窒素原子および1個の炭素原子を有する5員芳香族環。
【化3】

【0107】
アミノ:-NR1R2[式中、R1およびR2は、独立して、アミノ置換基、例えば、水素、C1-7アルキル基(C1-7アルキルアミノもしくはジ-C1-7アルキルアミノとも呼ばれる)、C3-7ヘテロシクリル基またはC5-7アリール基であり、好ましくはHまたはC1-7アルキル基であるか、あるいは、「環状」アミノ基の場合は、R1およびR2は、それらが結合している窒素原子と一緒になって、4〜8個の環原子を有する複素環を形成している]。アミノ基は、第一級(-NH2)、第二級(-NHR1)または第三級(-NHR1R2)であってもよく、カチオンの形態では、第四級(-+NR1R2R3)であってもよい。アミノ基の例としては、限定するものではないが、-NH2、-NHCH3、-NHC(CH3)2、-N(CH3)2、-N(CH2CH3)2および-NHPhが含まれる。環状アミノ基の例としては、限定するものではないが、アジリジノ、アゼチジノ、ピロリジノ、ピペリジノ、ピペラジノ、モルホリノおよびチオモルホリノが含まれる。
【0108】
アミジン(アミジノ):-C(=NR)NR2[式中、それぞれのRはアミジン置換基、例えば、水素、C1-7アルキル基、C3-7ヘテロシクリル基またはC5-7アリール基であり、好ましくはHまたはC1-7アルキル基である]。アミジン基の例としては、限定するものではないが、-C(=NH)NH2、-C(=NH)NMe2および-C(=NMe)NMe2が含まれる。
【0109】
ニトロ:-NO2
【0110】
ニトロソ:-NO。
【0111】
シアノ(ニトリル、カルボニトリル):-CN。
【0112】
イソシアノ:-NC。
【0113】
チオシアノ(チオシアナト):-SCN。
【0114】
スルフヒドリル(チオール、メルカプト):-SH。
【0115】
チオエーテル(スルフィド):-SR[式中、Rはチオエーテル置換基、例えば、C1-7アルキル基(C1-7アルキルチオ基とも呼ばれる)、C3-7ヘテロシクリル基またはC5-7アリール基であり、好ましくはC1-7アルキル基である]。C1-7アルキルチオ基の例としては、限定するものではないが、-SCH3および-SCH2CH3が含まれる。
【0116】
ジスルフィド:-SS-R[式中、Rはジスルフィド置換基、例えば、C1-7アルキル基、C3-7ヘテロシクリル基またはC5-7アリール基であり、好ましくはC1-7アルキル基(本明細書中ではC1-7アルキルジスルフィドとも呼ばれる)である]。C1-7アルキルジスルフィド基の例としては、限定するものではないが、-SSCH3および-SSCH2CH3が含まれる。
【0117】
スルフィン(スルフィニル、スルホキシド):-S(=O)R[式中、Rはスルフィン置換基、例えば、C1-7アルキル基、C3-7ヘテロシクリル基またはC5-7アリール基であり、好ましくはC1-7アルキル基である]。スルフィン基の例としては、限定するものではないが、-S(=O)CH3および-S(=O)CH2CH3が含まれる。
【0118】
スルホン(スルホニル):-S(=O)2R[式中、Rはスルホン置換基、例えば、C1-7アルキル基、C3-7ヘテロシクリル基またはC5-7アリール基であり、好ましくは例えばフッ素化もしくは過フッ素化C1-7アルキル基を含むC1-7アルキル基である]。スルホン基の例としては、限定するものではないが、-S(=O)2CH3(メタンスルホニル、メシル)、-S(=O)2CF3(トリフリル)、-S(=O)2CH2CH3(エシル)、-S(=O)2C4F9(ノナフリル)、-S(=O)2CH2CF3(トレシル)、-S(=O)2CH2CH2NH2(タウリル)、-S(=O)2Ph(フェニルスルホニル、ベシル)、4-メチルフェニルスルホニル(トシル)、4-クロロフェニルスルホニル(クロシル)、4-ブロモフェニルスルホニル(ブロシル)、4-ニトロフェニル(ノシル)、2-ナフタレンスルホネート(ナプシル)および5-ジメチルアミノ-ナフタレン-1-イルスルホネート(ダンシル)が含まれる。
【0119】
スルフィン酸(スルフィノ):-S(=O)OH、-SO2H。
【0120】
スルホン酸(スルホ):-S(=O)2OH、-SO3H。
【0121】
スルフィネート(スルフィン酸エステル):-S(=O)OR[式中、Rはスルフィネート置換基、例えば、C1-7アルキル基、C3-7ヘテロシクリル基またはC5-7アリール基であり、好ましくはC1-7アルキル基である]。スルフィネート基の例としては、限定するものではないが、-S(=O)OCH3(メトキシスルフィニル;メチルスルフィネート)および-S(=O)OCH2CH3(エトキシスルフィニル;エチルスルフィネート)が含まれる。
【0122】
スルホネート(スルホン酸エステル):-S(=O)2OR[式中、Rはスルホネート置換基、例えば、C1-7アルキル基、C3-7ヘテロシクリル基またはC5-7アリール基であり、好ましくはC1-7アルキル基である]。スルホネート基の例としては、限定するものではないが、-S(=O)2OCH3(メトキシスルホニル;メチルスルホネート)および-S(=O)2OCH2CH3(エトキシスルホニル;エチルスルホネート)が含まれる。
【0123】
スルフィニルオキシ:-OS(=O)R[式中、Rはスルフィニルオキシ置換基、例えば、C1-7アルキル基、C3-7ヘテロシクリル基またはC5-7アリール基であり、好ましくは、C1-7アルキル基である]。スルフィニルオキシ基の例としては、限定するものではないが、-OS(=O)CH3および-OS(=O)CH2CH3が含まれる。
【0124】
スルホニルオキシ:-OS(=O)2R[式中、Rはスルホニルオキシ置換基、例えば、C1-7アルキル基、C3-7ヘテロシクリル基またはC5-7アリール基であり、好ましくはC1-7アルキル基である]。スルホニルオキシ基の例としては、限定するものではないが、-OS(=O)2CH3(メシレート)および-OS(=O)2CH2CH3(エシレート)が含まれる。
【0125】
スルフェート:-OS(=O)2OR[式中、Rはスルフェート置換基、例えば、C1-7アルキル基、C3-7ヘテロシクリル基またはC5-7アリール基であり、好ましくはC1-7アルキル基である]。スルフェート基の例としては、限定するものではないが、-OS(=O)2OCH3および-SO(=O)2OCH2CH3が含まれる。
【0126】
スルファミル(スルファモイル;スルフィン酸アミド;スルフィンアミド):-S(=O)NR1R2[式中、R1およびR2は、独立して、アミノ基について定義したようなアミノ置換基である]。スルファミル基の例としては、限定するものではないが、-S(=O)NH2、-S(=O)NH(CH3)、-S(=O)N(CH3)2、-S(=O)NH(CH2CH3)、-S(=O)N(CH2CH3)2および-S(=O)NHPhが含まれる。
【0127】
スルホンアミド(スルフィナモイル;スルホン酸アミド;スルホンアミド):-S(=O)2NR1R2[式中、R1およびR2は、独立して、アミノ基について定義したようなアミノ置換基である]。スルホンアミド基の例としては、限定するものではないが、-S(=O)2NH2、-S(=O)2NH(CH3)、-S(=O)2N(CH3)2、-S(=O)2NH(CH2CH3)、-S(=O)2N(CH2CH3)2および-S(=O)2NHPhが含まれる。
【0128】
スルファミノ:-NR1S(=O)2OH[式中、R1はアミノ基について定義したようなアミノ置換基である]。スルファミノ基の例としては、限定するものではないが、-NHS(=O)2OHおよび-N(CH3)S(=O)2OHが含まれる。
【0129】
スルホンアミノ:-NR1S(=O)2R[式中、R1はアミノ基について定義したようなアミノ置換基であり、Rはスルホンアミノ置換基、例えば、C1-7アルキル基、C3-7ヘテロシクリル基またはC5-7アリール基であり、好ましくはC1-7アルキル基である]。スルホンアミノ基の例としては、限定するものではないが、-NHS(=O)2CH3および-N(CH3)S(=O)2C6H5が含まれる。
【0130】
スルフィンアミノ:-NR1S(=O)R[式中、R1はアミノ基について定義したようなアミノ置換基であり、Rはスルフィンアミノ置換基、例えば、C1-7アルキル基、C3-7ヘテロシクリル基またはC5-7アリール基であり、好ましくはC1-7アルキル基である]。スルフィンアミノ基の例としては、限定するものではないが、-NHS(=O)CH3および-N(CH3)S(=O)C6H5が含まれる。
【0131】
包含される他の形態
特に明示しない限り、上記に包含されるものは、これらの置換基の周知のイオン(ionic)、塩、溶媒和物および保護形態である。例えば、カルボン酸(-COOH)について言及する場合は、そのアニオン(カルボキシレート)の形態(-COO-)、塩または溶媒和物、ならびにエステルなどの慣用の保護形態も包含する。同様に、アミノ基について言及する場合は、アミノ基の保護形態(-N+HR1R2)、塩または溶媒和物(例えば塩酸塩)、ならびにアミノ基の慣用の保護形態も包含する。同様に、ヒドロキシル基(水酸基)について言及する場合は、そのアニオン形態(-O-)、塩または溶媒和物、ならびにヒドロキシル基の慣用の保護形態も包含される。
【0132】
エステル誘導体
式Iの化合物のカルボン酸部分は、エステルとして、例えば場合により置換されているC1-7アルキルエステル(例えば、メチルエステル;t-ブチルエステル;クロロエチルエステル);場合により置換されているC5-6アリールエステル(例えば、フェニルエステル;クロロフェニルエステル;トリルエステル);または場合により置換されているC1-4アルキレン-C5-6アリールエステル(例えば、ベンジルエステル;ニトロベンジルエステル)として保護されていてもよい。したがって、上記に包含されるものは、式Iaの化合物である。
【化4】

【0133】
[式中、R1、R2、R3、R4、L1、L2、L3およびL4は、上記で定義したとおりであり、R6は、場合により置換されているC1-7アルキル、C5-6アリールおよびC1-4アルキレン-C5-6アリールから選択される。]
C1-4アルキレン-C5-6アリール:本明細書中で用いられる「C1-4アルキレン-C5-6アリール」という用語は、C5-6アリール部分(-C5-6アリール)に連結されているC1-4アルキレン部分(-C1-4アルキレン-)を含む二座の部分、すなわち、-C1-4アルキレン-C5-6アリールについて言う。
【0134】
C1-4アルキレン-C5-6アリール基の例としては、例えば、メチレン-フェニル(ベンジルとしても知られる)、エチレン-フェニル、プロピレン-フェニルおよびエテニレン-フェニル(ビニレン-フェニレンとしても知られる)が含まれる

【0135】
式Iaのエステル誘導体は、グリオキサラーゼIの阻害により軽減される症状、すなわち増殖性症状を治療するためのプロドラッグとして機能することもできる。
【0136】
異性体、塩、溶媒和物および保護形態
特定の化合物は、1種以上の特定の幾何学的、光学的、エナンチオ的、ジアステレオ的、エピマー的、立体異性的、互変異性的、立体配座的またはアノマー的形態で存在することができ、例えば、限定するものではないが、cis型およびtrans型;E型およびZ型;c型、t型およびr型;endo型およびexo型;R型、S型およびmeso型;D型およびL型;d型およびl型;(+)型および(-)型;ケト型、エノール型およびエノレート型;syn型およびanti型;シンクリナル型およびアンチクリナル型;α型およびβ型;アクシャル型およびエカトリアル型;ボート型、椅子型、ツイスト型、エンベロープ型および半椅子型;ならびにそれらの組合せが含まれ、以後、包括的に「異性体」(または「異性体形態」)と呼ぶ。
【0137】
互変異性体形態について以下で述べるものを除き、本明細書中で用いられる「異性体」という用語から特に除外されるものは、構造(または構成)異性体(すなわち、単に原子の空間的位置が異なるのではなく、原子間の結合が異なる異性体)であることに留意すべきである。例えば、メトキシ基(-OCH3)について言及する場合、その構造異性体であるヒドロキシメチル基(-CH2OH)について言うものではない。同様に、オルト-クロロフェニルについて言及する場合、その構造異性体であるメタ-クロロフェニルについて言うものではない。しかし、あるクラスの構造について言及する場合は、そのクラスに含まれる構造的な異性体形態を十分に包含し得る(例えば、C1-7アルキルは、n-プロピルおよびiso-プロピルを含み;ブチルは、n-、iso-、sec-およびtert-ブチルを含み;メトキシフェニルは、オルト-、メタ-およびパラ-メトキシフェニルを含む)。
【0138】
上記の除外は、例えばケト型、エノール型およびエノレート型という互変異性体形態について言うものではなく、例えば、次の互変異性体対が含まれる:ケト/エノール(下記に図示)、イミン/エナミン、アミド/イミノアルコール、アミジン/アミジン、ニトロソ/オキシム、チオケトン/エネチオール、N-ニトロソ/ヒドロキシアゾおよびニトロ/アシ-ニトロ。
【化5】

【0139】
「異性体」という用語に特に含まれるものは、1つ以上の同位体置換を有する化合物であることに留意されたい。例えば、Hは、1H、2H(D)および3H(T)などのいずれの同位体形態であってもよく、Cは、12C、13Cおよび14Cなどのいずれの同位体形態であってもよく、Oは、16Oおよび18Oなどのいずれの同位体形態であってもよい、などというものである。
【0140】
特に明示しない限り、特定の化合物について言及する場合、その(完全もしくは部分的)ラセミ混合物または他の混合物などを含む、あらゆるそうした異性体形態を包含する。そのような異性体形態の調製(例えば非対称合成)および分離(例えば分別結晶化およびクロマトグラフィー手段)の方法は、当業界で公知であるか、あるいは本明細書中で教示する方法または公知の方法を公知のように適合させることによって容易に得られる。
【0141】
また、特に明示しない限り、特定の化合物について言及する場合は、例えば下記で述べるような、それらのイオン、塩、溶媒和物および保護形態も包含する。
【0142】
活性化合物の対応する塩(例えば薬学的に許容される塩)を調製、精製かつ/または取り扱うことが好都合であったり望ましいこともある。薬学的に許容される塩の例は、Bergeら, 1977, "Pharmaceutically Acceptable Salts," J. Pharm. Sci., 第66巻, 1-19頁に述べられている。
【0143】
例えば、本化合物がアニオン性であるかまたはアニオン性となり得る官能基を有している場合(例えば、-COOHは-COO-となり得る)、塩は、適切なカチオンとによって形成できる。好適な無機カチオンの例としては、限定するものではないが、Na+およびK+などのアルカリ金属イオン、Ca2+およびMg2+などのアルカリ土類カチオン、ならびAl+3などの他のカチオンが含まれる。好適な有機カチオンの例としては、限定するものではないが、アンモニウムイオン(すなわち、NH4+)および置換アンモニウムイオン(例えば、NH3R+、NH2R2+、NHR3+、NR4+)が含まれる。いくつかの好適な置換アンモニウムイオンの例は、エチルアミン、ジエチルアミン、ジシクロヘキシルアミン、トリエチルアミン、ブチルアミン、エチレンジアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、ピペラジン、ベンジルアミン、フェニルベンジルアミン、塩素、メグルミンおよびトロメサミン、ならびにリシンおよびアルギニンなどのアミノ酸から誘導されるものである。一般的な第四級アンモニウムイオンの一例はN(CH3)4+である。
【0144】
本化合物がカチオン性であるかまたはカチオン性となり得る官能基を有している場合(例えば、-NH2は-NH3+となり得る)、塩は適切なアニオンとによって形成できる。好適な無機アニオンの例としては、限定するものではないが、次の無機酸から誘導されるものが含まれる:塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸、亜硫酸、硝酸、亜硝酸、リン酸およびホスホン酸。
【0145】
好適な有機アニオンの例としては、限定するものではないが、次の有機酸から誘導されるものが含まれる:2-アセトキシ安息香酸(2-acetyoxybenzoic)、酢酸、アスコルビン酸、アスパラギン酸、安息香酸、樟脳スルホン酸、ケイ皮酸、クエン酸、エデト酸、エタンジスルホン酸、エタンスルホン酸、フマル酸、グルコヘプトン酸、グルコン酸、グルタミン酸、グリコール酸、ヒドロキシマレイン酸、ヒドロキシナフタレンカルボン酸、イセチオン酸、乳酸、ラクトビオン酸、ラウリン酸、マレイン酸、リンゴ酸、メタンスルホン酸、粘液酸、オレイン酸、シュウ酸、パルミチン酸、パモ酸、パントテン酸、フェニル酢酸、フェニルスルホン酸、プロピオン酸、ピルビン酸、サリチル酸、ステアリン酸、コハク酸、スルファニル酸、酒石酸、トルエンスルホン酸および吉草酸。好適な高分子量有機アニオンの例としては、限定するものではないが、次の高分子量酸から誘導されるものが含まれる:タンニン酸、カルボキシメチルセルロース。
【0146】
活性化合物の対応する溶媒和物を調製、精製かつ/または取り扱うことが好都合であったり望ましいこともある。本明細書において、「溶媒和物」という用語は、溶質(例えば、活性化合物、活性化合物の塩)と溶媒との複合体をいうための一般的な意味で用いられる。溶媒が水である場合、溶媒和物は便宜上「溶媒和物」という用語は、、例えば一水和物、二水和物、三水和物などの水和物ということもできる。
【0147】
活性化合物の化学的に保護した形態を調製、精製かつ/または取り扱うことが好都合であったり望ましいこともある。本明細書において、「化学的に保護された形態(化学的保護形態)」という用語は、一般的な化学的意味で用いられるものであり、特定の条件下(例えば、pH、温度、照射、溶媒など)で1つ以上の反応性官能基が望ましくない化学反応から保護されている化合物をいう。実際には、周知の化学的方法を用いて、官能基を特定の条件下で可逆的に不反応性にする(但し、その基は、それ以外の条件下では反応性である)。化学的に保護された形態において、1つ以上の反応性官能基は、保護された基または保護基(マスキングされた基もしくはマスキング基またはブロックされた基またはブロック基としても知られている)の形態である。反応性官能基を保護することにより、その保護された基に影響を及ぼすことなしに、他の保護されていない反応性官能基が関与する反応を行うことができる。保護基は、通常はその後のステップで、それを除いた分子量に実質的に影響を及ぼすことなく、除去することができる。例えば、Protective Groups in Organic Synthesis (T. GreenおよびP. Wuts;第3版,; John Wiley and Sons, 1999)を参照されたい。
【0148】
非常にさまざまなそうした「保護」、「ブロック」または「マスキング」方法が広く用いられ、有機合成においては十分に知られている。例えば、2つの異なる反応性官能基(それらは両者とも、特定の条件下で反応性である)を有する化合物は、それらの官能基の一方を「保護された」状態、したがって特定の条件下で不反応性になるように誘導体化することができる。そのように保護することにより、その化合物は、実質的に1つの反応性官能基しか有していない反応物として用いることができる。(他方の官能基が関与する)目的の反応が完了した後、保護された基は「脱保護」して、それを元の官能基へと復元することができる。
【0149】
例えば、ヒドロキシ基は、エーテル(-OR)またはエステル(-OC(=O)R)として、例えば、t-ブチルエーテル;ベンジル、ベンズヒドリル(ジフェニルメチル)もしくはトリチル(トリフェニルメチル)エーテル;トリメチルシリルもしくはt-ブチルジメチルシリルエーテル;またはアセチルエステル(-OC(=O)CH3、-OAc)として保護することができる。
【0150】
例えば、アルデヒド基またはケトン基は、それぞれアセタール(R-CH(OR)2)またはケタール(R2C(OR)2)として保護することができ、そこにおいて、カルボニル基(>C=O)は、例えば第一級アルコールとの反応によりジエーテル(>C(OR)2)へと変換される。アルデヒド基またはケトン基は、酸の存在下で大過剰の水を用いた加水分解により容易に再生される。
【0151】
例えば、アミン基は、例えば、アミド(-NRCO-R)またはウレタン(-NRCO-OR)として、例えば、メチルアミド(-NHCO-CH3);ベンジルオキシアミド(-NHCO-OCH2C6H5、-NH-Cbz);t-ブトキシアミド(-NHCO-OC(CH3)3、-NH-Boc);2-ビフェニル-2-プロポキシアミド(-NHCO-OC(CH3)2C6H4C6H5、-NH-Bpoc)、9-フルオレニルメトキシアミド(-NH-Fmoc)、6-ニトロベラトリルオキシアミド(-NH-Nvoc)、2-トリメチルシリルエチルオキシアミド(-NH-Teoc)、2,2,2-トリクロロエチルオキシアミド(-NH-Troc)、アリルオキシアミド(-NH-Alloc)、2(-フェニルスルホニル)エチルオキシアミド(-NH-Psec)として;または、適切な場合(例えば、環状アミン)では、ニトロキシドラジカル(>N-O・)として保護することができる。
【0152】
例えば、カルボン酸基は、エステルとして、例えば、C1-7アルキルエステル(例えば、メチルエステル;t-ブチルエステル);C1-7ハロアルキルエステル(例えば、C1-7トリハロアルキルエステル);トリC1-7アルキルシリル-C1-7アルキルエステル;C5-7アリール-C1-7アルキルエステル(例えば、ベンジルエステル;ニトロベンジルエステル);またはアミド(例えば、メチルアミド)として保護することができる。
【0153】
例えば、チオール基は、チオエーテル(-SR)として、例えば、ベンジルチオエーテル;アセトアミドメチルエーテル(-S-CH2NHC(=O)CH3)として保護することができる。
【0154】
本明細書においてある症状を治療するという文脈において用いられる「治療(または処置)」という用語は、一般に、ヒトであっても(獣医学的適用においては)動物であっても、例えば症状の進行の抑制などのある程度の目的とする治療効果が達成される処置および治療について言い、症状の進行速度の低下、進行速度の停止、症状の改善、ならびに症状の治癒が含まれる。また、予防の目安としての治療(すなわち予防)も含まれる。
【0155】
本明細書中で用いられる「治療上有効量」という用語は、所望の治療レジメンにしたがって投与した場合に、妥当な便益/リスク比と見合った、ある程度の目的とする治療効果をあげるのに有効な、活性化合物または活性化合物を含む材料、組成物もしくは剤形の量について言う。好適な投薬量の範囲は、典型的には、0.01〜20mg/kg/日、好ましくは0.1〜10mg/kg/日の範囲である。
【0156】
組成物およびそれらの投与
組成物は、いずれの適切な投与経路および投与手段に向けても製剤化することができる。薬学的に許容される担体または希釈剤としては、経口、直腸、経鼻、局所(口内および舌下を含む)、膣内または非経口(皮下、筋肉内、静脈内、皮内、髄腔内および硬膜外を含む)投与に適する製剤で用いられるものが含まれる。製剤は、単位剤形として提供することが好都合な場合もあり、製薬の分野で周知のいずれの方法によっても調製できる。そのような方法は、活性化合物を、1種以上の補助成分を構成する担体と結合させるステップを含む。一般に、製剤は、活性化合物を液体担体または微粉砕固体担体またはそれらの両者と均一かつ十分に結合させ、次に、必要に応じてその生成物を成形することにより調製される。
【0157】
固形組成物では、慣用の非毒性の固形担体としては、例えば、製薬グレードのマンニトール、乳糖、セルロース、セルロース誘導体、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、タルク、ブドウ糖、ショ糖、炭酸マグネシウムなどが使用可能である。上記で定義したような活性化合物は、担体として、例えばポリアルキレングリコール、アセチル化トリグリセライドなどを用いて坐剤として製剤化してもよい。液体の薬学的に許容される組成物は、例えば、上記で定義したような活性化合物と、場合により用いられる製薬助剤とを、例えば水、食塩水、デキストロース水溶液、グリセロール、エタノールなどの担体中で溶解、分散などをして、溶液または懸濁液を形成することによって調製できる。望まれるならば、投与しようとする医薬組成物は、湿潤剤もしくは乳化剤、pH緩衝化剤などの微量の非毒性の補助物質、例えば、酢酸ナトリウム、モノラウリン酸ソルビタン、酢酸ナトリウムトリエタノールアミン、モノラウリン酸ソルビタン、オレイン酸トリエタノールアミンなども含有することができる。そのような剤形の実際の調製方法は公知であるか、あるいは当業者には明らかである。例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences, Mack Publishing Company, Easton, Pennsylvania, 第15版, 1975を参照されたい。投与しようとする組成物または製剤は、いずれにしても、治療しようとする被験体の症状を緩和するのに有効な量の活性化合物を含む。
【0158】
活性成分を0.25〜95%の範囲で含み、残部を非毒性担体で補完している剤形または組成物が調製できる。
【0159】
経口投与の場合、薬学的に許容される非毒性組成物は、例えば、製剤グレードのマンニトール、乳糖、セルロース、セルロース誘導体、架橋カルメロースナトリウム、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、タルク、ブドウ糖、ショ糖、炭酸マグネシウムなどの一般に用いられる賦形剤のいずれかを組み込むことにより形成される。そのような組成物は、溶液、懸濁液、錠剤、丸剤、カプセル、粉末、持続放出製剤などの形態を取る。そのような組成物は、1%〜95%、さらに好ましくは2〜50%、最も好ましくは5〜8%の活性成分を含むことができる。
【0160】
非経口投与は、一般に、皮下、筋肉内または静脈内の注射によることを特徴とする。注射剤は、慣用の形態で、液状の溶液もしくは懸濁液、注射前に液体とする溶液もしくは懸濁液に適する固形形態のいずれかとして、または乳濁液として調製することができる。好適な賦形剤は、例えば、水、食塩水、デキストロース、グリセロール、エタノールなどである。さらに、それが望まれる場合には、投与しようとする医薬組成物は、湿潤剤もしくは乳化剤、pH緩衝化剤などの微量の非毒性の補助物質、例えば、酢酸ナトリウム、モノラウリン酸ソルビタン、オレイン酸トリエタノールアミン、酢酸ナトリウムトリエタノールアミンなども含有することができる。
【0161】
そのような非経口用組成物中に含まれる活性化合物の割合は、その特定の性質、ならびにその化合物の活性および被験体の必要性におおいに依存する。しかし、溶液中に0.1%〜10%という活性成分の割合を用いることができ、その組成物がその後で上記の割合まで希釈される固形である場合には、それよりも多くなる。好ましくは、組成物は、溶液中に0.2〜2%の活性薬剤を含む。
【0162】
頭字語
便宜上、多くの化学的部分は、限定するものではないが、メチル(Me)、エチル(Et)、n-プロピル(nPr)、iso-プロピル(iPr)、n-ブチル(nBu)、sec-ブチル(sBu)、iso-ブチル(iBu)、tert-ブチル(tBu)、n-ヘキシル(nHex)、シクロヘキシル(cHex)、フェニル(Ph)、ビフェニル(biPh)、ベンジル(Bn)、ナフチル(naph)、メトキシ(MeO)、エトキシ(EtO)、ベンゾイル(Bz)およびアセチル(Ac)などの周知の略語を用いて表わす。
【0163】
便宜上、多くの化合物は、限定するものではないが、メタノール(MeOH)、エタノール(EtOH)、iso-プロパノール(i-PrOH)、メチルエチルケトン(MEK)、エーテルもしくはジエチルエーテル(Et2O)、酢酸(AcOH)、ジクロロメタン(塩化メチレン、DCM)、アセトニトリル(CAN)、トリフルオロ酢酸(TFA)、ジメチルホルムアミド(DMF)、テトラヒドロフラン(THF)およびジメチルスルホキシド(DMSO)などの周知の略語を用いて表わす。
【0164】
一般的な合成方法
ここで、本発明の化合物の化学的合成方法を説明する。これらの方法は、本発明の範囲に含まれるさらに別の化合物の合成を容易にするために、公知の方法で修正および/または適合させることが可能である。本発明の化合物の調製に有用な一般的な実験室での方法および手順の説明は、Vogel’s Textbook of Practical Organic Chemistry (第5版, Furniss, B.S., Hannaford, A.J., Smith, P.W.G., Tatchell, A.R.編, Longmann, UK)に記載されている。
【0165】
下記に記載する方法において、導入される置換基以外の置換基を、それらの基の前駆体またはそれらの基の保護形態として存在させてもよい。
【0166】
式I[式中、L2は-C(=O)-CH2-である]の化合物は、スキーム1に示す経路にしたがって合成することができる。
【化6】

【0167】
式I[式中、XはNであり、L2は単結合であり、R1 = CNであり、R3 = Hである]の化合物は、Mannaら, Bioorg. Med. Chem. Lett. 10, 1883-1885 (2000)およびSalman, Pharmazie 54, 178-183 (1999)に開示されている経路(スキーム2)を基本にする経路にしたがって合成することができる。
【化7】

【0168】
式I[式中、L2は単結合であり、L4 = -CH2N(OH)C(=O)-である]の化合物は、スキーム3に示す経路を基本にする経路にしたがって合成することができる。式I[式中、L2は単結合であり、L3 = -CH2N(OH)C(=O)-である]の化合物もまた、出発物質が、チオール基に対して、スキーム3に示すようなパラ位ではなく、メタ位で存在するヒドロキシメチル基を含むものである以外は、スキーム3に示す経路を基本にする経路により合成することができる。
【化8】

【0169】
上記3つのスキームに示すように、L2とL1との間にあるイオウ原子は、求核攻撃剤として(スキーム1)、もしくは置換により(スキーム2)導入してもよいし、または、出発物質内に存在させてもよい(スキーム3)。
【0170】
スキーム3においてX基に対してメタ位にある二重保護されたアミン基の置換の代替方法として、同じ位置で一重保護されたアミン基を置換してもよい。この場合、複素環式化合物のX基に対してメタである基は、(スキーム3の場合のように)-OTs基としてもよいし、あるいはまた-OH基としてもよい。この一般的な反応を、下記のスキーム4に示す。いずれの場合も、反応は、一重保護されたアミン基との反応により進行させることができる。続いて、このアミン-H基のR3C(=O)Xによる置換は、スキーム3に示すようにして達成でき、次にそのアミン基を脱保護して、アミンN原子に結合している-OHを脱離させる。
【化9】

【0171】
上記のスキーム4において、保護基は、アセチル、アリル、アロク(alloc)、BOM、ベンジル、ベンゾイル、DMPM、FMOC、MEM、MOM、MPM、PMB、PMP、SEM、TBDMS、TBDPS、TBS、THP、TIPS、TMS、トリチルまたはトシルなどのいずれかの適切な保護基とすることができる。
【0172】
一般に、基R1は、アルキル化、還元および置換などの、アリール置換基を変換するための標準的な反応を用いて誘導することができる。
【0173】
R3およびR4が縮合環を形成している場合、これは、本発明の化合物への合成経路の出発物質内に存在している。
【0174】
R4がアリール基またはヘテロシクリル基である場合、これは、Suzukiカップリング(すなわちハロゲン化アリールを有機ホウ素誘導体へカップリングさせること)により化合物に導入することができる(スキーム5、スキーム中、L2’は-L2-S-L1-CO2Hまたはその前駆体もしくは保護形態を表わし、Rはアリールまたはアルキルである)。
【化10】

【0175】
L4およびL3がそれぞれ単結合である場合は、同様の方法を用いて、R3およびR2を中心の環にカップリングさせることができる。さらに、R2またはR3がアリール基である場合は、適切なハロゲン化アリールを化合物の残りの部分のホウ素誘導体にカップリングさせることができる。
【0176】
本発明の特定の化合物は、市販されているか、あるいはそのような化合物から誘導することができる。
【0177】
好ましいもの
以下の好ましいとされる事柄は、互いに組み合わせることができ、本発明のそれぞれの態様で異なっていてもよい。
【0178】
R1は、好ましくは、H、シアノ、メチル、ハロ、ヒドロキシ、ヒドロキサム酸、メトキシ、アミノ、メチルアミノ、ジメチルアミノ、ニトロ、スルフヒドリルまたはメチルスルフィドである。
【0179】
さらに好ましくは、R1は、シアノ、Hまたはヒドロキサム酸である。
【0180】
好ましくは、L1は、フェニレン、メチレン、エチレン、-CH(CH3)-、-CH(iPr)-、-CH(Ph)-、-CH2-フェニレン-、-CH2C(=O)NHCH2-または-CH2C(=O)NH-フェニレン-である。
【0181】
好ましくは、L2は、単結合または-C(=O)CH2-である。
【0182】
好ましくは、L3は、単結合、-L9YN(OH)C(=O)L10-または-L9C(=O)N(OH)YL10-であり、ここで、L9およびL10は、場合により置換されているC1-4アルキレン、C5-6アリーレン、C1-4アルキレン-C5-6アリーレンおよび単結合から独立して選択され、Yは、NHまたは単結合である。
【0183】
好ましくは、L4は、単結合、-L9YN(OH)C(=O)L10-または-L9C(=O)N(OH)YL10-であり、ここで、L9およびL10は、場合により置換されているC1-4アルキレン、C5-6アリーレン、C1-4アルキレン-C5-6アリーレンおよび単結合から独立して選択され、Yは、NHまたは単結合である。
【0184】
例えば、L3またはL4は、単結合、-CH2N(OH)C(=O)-、-フェニレン-CH2N(OH)C(=O)-、-フェニレン-NHN(OH)C(=O)-または-CH2C(=O)N(OH)-とすることができる。
【0185】
XがCHである場合、好ましくは、R1、R2およびR4のうちの1つ以上がHである。さらに好ましくは、XがCHである場合、R1、R2およびR4のうちの2つがHである。XがCHである場合、R1、R2およびR4の全部がHであることが最も好ましい。
【0186】
XがCHである場合、好ましくは、R2およびR3の一方が、場合により置換されているC5-6アリール、C3-7シクロアルキルまたはC5-7ヘテロシクリルである。さらに好ましくは、XがCHである場合、R3は、場合により置換されているC5-6アリール、C3-7シクロアルキルまたはC5-7ヘテロシクリルである。XがCHである場合、R3は、場合により置換されているフェニルまたはC3-7シクロアルキルであることが最も好ましい。例えば、R3はフェニルまたはシクロペンチルとすることができる。
【0187】
XがCHである場合、好ましくは、L1は、フェニレンまたは-CH(Ph)-である。
【0188】
XがCHである場合、好ましくは、L3およびL4の一方は単結合である。さらに好ましくは、XがCHである場合、L3は単結合である。
【0189】
XがCHである場合、好ましくは、L3およびL4の一方は、-L9YN(OH)C(=O)L10-または-L9C(=O)N(OH)YL10-であり、ここで、L9およびL10は、場合により置換されているC1-4アルキレン、C5-6アリーレン、C1-4アルキレン-C5-6アリーレンおよび単結合から独立して選択され、Yは、NHまたは単結合である。さらに好ましくは、XがCHである場合、L4は、-L9YN(OH)C(=O)L10-または-L9C(=O)N(OH)YL10-であり、ここで、L9およびL10は、場合により置換されているC1-4アルキレン、C5-6アリーレン、C1-4アルキレン-C5-6アリーレンおよび単結合から独立して選択され、Yは、NHまたは単結合である。
【0190】
XがNである場合、R1は、好ましくは、CNまたはヒドロキサム酸である。
【0191】
XがNである場合、R2は、好ましくは、場合により置換されているC5-6アリール、C5-7ヘテロシクリル、CF3および、R3と一緒になって、場合により置換されているブチレン基(この場合、ここで、L3およびL4は単結合であり、したがってL3およびL4が結合している芳香族環と縮合しているC6環を形成している)から選択される。
【0192】
XがNである場合、R2は、さらに好ましくは、場合により置換されているC5-6アリールおよびC5-7ヘテロシクリルから選択される。
【0193】
XがNである場合、R2は、さらにいっそう好ましくは、場合により置換されているフェニルまたはチオフェニルである。例えば、XがNである場合、R2は、チオフェニル、フェニル、p-クロロフェニル、p-メトキシフェニル、o-メトキシフェニル、p-フルオロフェニルとすることができる。XがNであり、R2が一置換フェニルである場合、R2はパラ置換フェニルであることが好ましい。
【0194】
XがNである場合、好ましくは、R3は、Hまたは、R2と一緒になって、場合により置換されているブチレン基であり、この場合、L3およびL4は単結合であり、したがってL3およびL4が結合している芳香族環と縮合しているC6環を形成している。
【0195】
XがNである場合、R3はHであり、L4は単結合であって、本発明の化合物が式Ibのものになっていることがさらに好ましい。
【化11】

【0196】
XがNである場合、R4は、好ましくは、場合により置換されているC5-6アリールおよびC5-7ヘテロシクリルから選択される。XがNである場合、R4は、さらに好ましくは、場合により置換されているフェニル、チオフェニル、フラニルまたはピリジルである。例えば、XがNである場合、R4は、フェニル、p-トリル、p-クロロフェニル、p-メトキシフェニル、3,4-ジメトキシフェニル、p-フルオロフェニル、チオフェニル、フラニルまたはピリジルとすることができる。XがNであり、R4が一置換フェニルである場合、R4はパラ置換フェニルであることが好ましい。XがNであり、R4が二置換フェニルである場合、置換基はメタ位およびパラ位にあることが好ましい。
【0197】
R2、R3またはR4が置換C5-6アリール基である場合、好ましい置換基はハロ、C1-4アルキルまたは-ORであり、ここで、RはC1-4アルキルである。R2、R3またはR4が一置換フェニル基である場合、置換基はパラ位にあることが好ましい。R2、R3またはR4が二置換フェニル基である場合、置換基はパラ位およびメタ位にあることが好ましい。例えば、R2、R3およびR4は、p-トリル、p-クロロフェニル、p-メトキシフェニル、3,4-ジメトキシフェニル、p-フルオロフェニルとすることができる。
【0198】
式Iの化合物が少なくとも1個の-C(=O)N(OH)-基を有する場合、好ましくは、R1、L3またはL4のうちの少なくとも1つが-C(=O)N(OH)-基を含んでいる。好ましくは、L4が-C(=O)N(OH)-基を含んでいる。
【0199】
式Iの化合物が少なくとも1個の-C(=O)N(OH)-基を有する場合、L4はL9-C(=O)N(OH)-基であることが好ましく、ここで、好ましくは、L9は、C1-4アルキレンおよびC5-6アリーレンから選択され、最も好ましくは、L9はフェニルである。
【0200】
式Iの化合物が少なくとも1個の-C(=O)N(OH)-基を有する場合、XはCHであることが好ましい。
【0201】
式Iの化合物が少なくとも1個の-C(=O)N(OH)-基を有する場合、好ましくは、R1、R2およびR4のうちの少なくとも1つ、さらに好ましくは少なくとも2つがHである。最も好ましくは、R1、R2およびR4の全部がHである。
【0202】
式Iの化合物が少なくとも1個の-C(=O)N(OH)-基を有する場合、R3は、好ましくはC5-6アリールであり、さらに好ましくは、R3はフェニルである。
【0203】
式Iの化合物が少なくとも1個の-C(=O)N(OH)-基を有する場合、R6は、好ましくは、HまたはC1-7アルキルであり、さらに好ましくは、C1-3アルキルである。
【0204】
式Iの化合物が少なくとも1個の-C(=O)N(OH)-基を有する場合、L1は、好ましくは、フェニレン、-CH(Ph)-、-CH2-フェニレン-または-CH2C(=O)NH-フェニレン-である。
【0205】
式Iの化合物が少なくとも1個の-C(=O)N(OH)-基を有する場合、L2は、好ましくは、単結合または-C(=O)CH2-である。
【0206】
式Iの化合物が少なくとも1個の-C(=O)N(OH)-基を有する場合、L3は、好ましくは、単結合である。
【0207】
特に好ましい化合物としては、表1および4に示すものが含まれる。
【表1】

【実施例】
【0208】
実施例1:{4-[(ベンゾイル-ヒドロキシ-アミノ)-メチル]-フェニルスルファニル}-フェニル-酢酸エチルエステル(iv)の形成
ステップ1− (4-ヒドロキシメチル-フェニルスルファニル)-フェニル-酢酸エチルエステル(i)
【化12】

【0209】
4-メルカプトベンジルアルコール(0.582g、0.0042mol)、α-ブロモフェニル酢酸エチル(0.727ml、0.0042mol)および炭酸カリウム(0.86g、0.0062mol、1.5当量)をアセトン(25ml)中で12時間にわたり還流した。この粗製物質をフラッシュカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル/ヘキサン)により精製して、生成物iを黄色油状物として得た(0.79g、63%)。
【0210】
ステップ2− (4-メチルアミノメチル-フェニルスルファニル)-フェニル-酢酸エチルエステル(ii)
【化13】

【0211】
トリフルオロ酢酸無水物(0.4ml、0.002mol)を、ジクロロメタン中のi(0.65g、0.002mol)の溶液に0℃にて窒素下で添加した。5分後、ルチジン(0.29ml、0.0024mol)を添加し、溶液をさらに5分間撹拌した。o-テトラヒドロ-2H-ピラン-2-イル-ヒドロキシルアミン(0.5g、0.004mol、2当量)を添加し、冷却除去した。反応物を室温で一夜撹拌した。フラッシュカラムクロマトグラフィーの後で、目的とする生成物を単離して、iiを得た(362mg、42%)、m/z [ES] 402 [M+H]+ 424 [M+Na]+
ステップ3− {4-[(ベンゾイル-ベンゾイルオキシ-アミノ)-メチル]-フェニルスルファニル}-フェニル-酢酸エチルエステル(iii)
【化14】

【0212】
ジクロロメタン(30ml)中のii(362mg、0.9mmol)およびトリエチルアミン(0.19ml、1.5当量)の溶液に塩化ベンゾイル(0.16ml、1.5当量)を添加した。これを、室温で2時間撹拌した。溶媒をin situで除去し、生成物をフラッシュカラムクロマトグラフィー(EtOAc/ヘキサン)により精製した。予想外の化合物iiiが無色油状物として回収された(0.147g、31%)。m/z [ES] 548 [M+Na]+
ステップ4− {4-[(ベンゾイル-ヒドロキシ-アミノ)-メチル]-フェニルスルファニル}-フェニル-酢酸エチルエステル(iv)
【化15】

【0213】
ジクロロメタン(10ml)中のiii(0.144g、0.27mmol)の溶液にポリマー担持トリスアミン(2.46mmol/g、0.33g、0.82mmol、3当量)を添加した。反応物を室温で72時間撹拌した。樹脂を濾別し、残渣を減圧濃縮した。この粗製物質を分取HPLCにより精製して、目的生成物(iv)を得た(47mg、41%)。1H NMR (400 MHz、MeOD-d4) δ: 7.7-7.1 (14H, Ar), 4.95 (1H, s), 4.75 (2H, m, CH2), 3.95 (2H, m), 0.95 (3H, t), m/z [ES] 422 [M+H]+
実施例2:{4-[(ベンゾイル-ヒドロキシ-アミノ)-メチル]-フェニルスルファニル}-フェニル-酢酸(A)の形成
【化16】

【0214】
THF/水(6ml/2ml)中のiv(0.079g、0.19mmol)の溶液に、水酸化ナトリウム(0.47mmol、2.5当量)を添加した。反応物を室温で16時間撹拌した。溶液を1M HCl(0.11ml)で中和し、溶媒を減圧除去した。この粗製物質を分取HPLCにより精製して、目的生成物(A)を得た(4.1mg、6%)。1H NMR (400 MHz、MeOD-d4) δ: 7.7-7.1 (14H, Ar), 4.9 (1H, s), 4.75 (2H, m, CH2), m/z [ES] 394 [M+H]+
実施例3:2-{4-[(ベンゾイル-ヒドロキシ-アミノ)-メチル]-フェニルスルファニルメチル}-安息香酸メチルエステルの形成
ステップ1− 2-ブロモメチル-安息香酸メチルエステル
【化17】

【0215】
四塩化炭素(85ml)中の2-メチル安息香酸メチル(5g、0.033mol)の溶液に、n-ブロモスクシンイミド(5.93g、0.033mol)および過酸化ベンゾイル(0.22g、0.9mol)を添加した。反応物を4時間還流した。反応物を室温まで冷却した。白色析出物を濾過し、溶媒を除去した。その油状物をEt2Oに溶解し、-78℃まで冷却した。生成物を析出させ、回収して、vを得た(5.86g、77%)。
【0216】
ステップ2− 2-(4-ヒドロキシメチル-フェニルスルファニルメチル)-安息香酸メチルエステル
【化18】

【0217】
4-メルカプトベンジルアルコール(0.579g、0.0041mol)、2-ブロモメチル安息香酸メチル(v)(0.946、0.0041mol)および炭酸カリウム(0.85g、0.0062mol、1.5当量)をアセトン(25ml)中で12時間還流した。この粗製物質をフラッシュカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル/ヘキサン)により精製して、生成物viを無色油状物として得た(0.855g、72%)。m/z [ES] 311 [M+Na]+
ステップ3− 2-{4-[(テトラヒドロ-ピラン-2-イルオキシアミノ)-メチル]-フェニルスルファニルメチル}-安息香酸メチルエステル
【化19】

【0218】
トリフルオロ酢酸無水物(0.91ml、0.005mol)を、ジクロロメタン中のvi(1.41g、0.005mol)の溶液に、0℃にて窒素下で添加した。5分後、ルチジン(0.66ml、0.56mol)を添加し、溶液をさらに5分間撹拌した。o-テトラヒドロ-2H-ピラン-2-イル-ヒドロキシルアミン(1.15g、0.0098mol、2当量)を滴下し、反応物を30分間撹拌した。分取HPLC行った後、目的とする生成物を単離して、viiを得た(0.114g、6%)。m/z [ES] 388 [M+H]+ 410 [M+Na]+
ステップ4− 2-(4-{[ベンゾイル-(テトラヒドロ-ピラン-2-イルオキシ)-アミノ]-メチル}-フェニルスルファニルメチル)-安息香酸メチルエステル
【化20】

【0219】
ジクロロメタン(30ml)中のvii(114mg、0.29mmol)およびジイソプロピルエチルアミン(0.19ml、1.5当量)の溶液に、塩化ベンゾイル(0.04ml、1.2当量)を添加した。これを、室温で1時間撹拌した。反応物をNaHCO3水溶液(1ml)でクエンチし、乾燥し(Na2SO4)、溶媒を減圧除去した。生成物をフラッシュカラムクロマトグラフィー(EtOAc/ヘキサン)により精製した。目的とする生成物viiiを無色油状物として回収した(96.5mg、67%)。m/z [ES] 492 [M+H]+、514 [M+Na]+
ステップ5− 2-{4-[(ベンゾイル-ヒドロキシ-アミノ)-メチル]-フェニルスルファニルメチル}-安息香酸メチルエステル
【化21】

【0220】
化合物viii(68.2 mg、0.14mmol)を(TFA/H2O/DCM、2.5:1:96.5、10ml)と共に室温にて撹拌し、LC-MSによりモニターした(反応は約3時間で完了)。反応混合物をNaHCO3でクエンチした。相を分離させ、有機層を乾燥後に減圧濃縮した。化合物ixは、それ以上精製する必要はなかった(97% LC-MS)。1H NMR (400 MHz、MeOD-d4) δ: 7.75 (1H, d, Ar), 7.5-7.6 (2H, m, Ar), 7.45-7.1 (10H, m, Ar), 4.75 (2H, m), 4.4 (2H, s), 3.75 (3H, s), m/z [ES] 408 [M+H]+
【0221】
実施例4: 2-{4-[(ベンゾイル-ヒドロキシ-アミノ)-メチル]-フェニルスルファニルメチル}-安息香酸(E)の形成
【化22】

【0222】
MeOH/水(4ml/2ml)中のix(60 mg、0.15mmol)の溶液にNaOH(0.22ml、1M溶液、0.22mmol)を添加し、反応物を室温で6日間撹拌した。この後で、生成物への60%の転換が認められた。分取HPLCを行った後で目的とする生成物を単離して、目的生成物(E)を白色固体として得た(7mg、12%)。1H NMR (400 MHz、MeOD-d4) δ: 7.85 (1H, m, Ar), 7.5-7.6 (2H, m, Ar), 7.45-7.1 (10H, m, Ar), 4.75 (2H, m), 4.45 (2H, s), m/z [ES] 394 [M+H]+
【0223】
実施例5:グリオキサラーゼI阻害アッセイ
グリオキサラーゼIは、メチルグリオキサールと還元型グルタチオン(GSH)から非酵素的に形成されるヘミアセタールからのS-D-ラクトイルグルタチオンの形成を触媒する。標準的な文献に記載されているアッセイは、グリオキサラーゼIの生成物であるS-D-ラクトイルグルタチオンを発色団(240nm)として用いるキュベットベースの分光法である(Racker, J. Biol. Chem. 190, 685-686 (1951);Principatoら, Biochem International 6, 249-255 (1983))。この文献記載の方法は、96ウェルプレートでのカイネティックアッセイとしての使用向けに修正を加えた。
【0224】
緩衝液(0.1Mリン酸カリウム緩衝液、pH6.6)および阻害物質を、96ウェルプレートの適当なウェルに加える。メチルグリオキサール(リン酸カリウム緩衝液(pH6.6)中で調製したもの)および還元型グルタチオン(リン酸カリウム緩衝液(pH6.6)中で調製したもの)を、適当なウェルに加える。これらの試薬を室温で振とうしながら15分間インキュベートして、グリオキサラーゼIのヘミチオアセタール基質を形成させる。組換えヒトグリオキサラーゼI(Ridderstorm M.およびMannervik B., Biochem J. 314, 463-467 (1996)に記載のように、大腸菌内で発現させ、S-ヘキシルグルタチオン-アガロースクロマトグラフィーにより精製したもの)を加え、プレートを軽く振とうした後、Spectra Max 190マイクロプレート分光光度計(Molecular Devices)に25℃で入れる。吸光度を240nmでモニターし、30秒毎に読み取る。反応を15分間モニターし、アッセイが完了した時点でPathCheck(登録商標)での測定値をとり、吸光度の値を1cmの光路長に正規化する。この積分ソフトウェアは、最初の20点の読み取り値を用いてVmaxを決定するものである。このアッセイでは、S-ヘキシルグルタチオンをポジティブ対照として用いる。
【0225】
データは、阻害物質の不在下で測定した対照のVmaxに対する割合(%)として表わす。
【0226】
上記の実施例1〜4からそれぞれ得られた化合物iv、A、ixおよびEを、20μM(20マイクロモル)の濃度で上記のグリオキサラーゼI結合アッセイに供した。阻害作用は、媒体対照応答の50%を示す化合物の濃度(μM)として定義されるIC50値または試験化合物の最高濃度における媒体対照応答に対する割合(%)のいずれかとして、表2に示す。
【表2】

【0227】
表2の結果から、化合物AおよびEは良好なグリオキサラーゼI阻害を示す(すなわち、IC50値が低い)が、一方、それぞれ対応するエチルエステルおよびメチルエステルであるivおよびixは、比較的低いグリオキサラーゼI活性阻害率(%)を示す。このことから、これらの化合物のエステル形態が、遊離形態ほどには十分にグリオキサラーゼIを阻害せず、したがって、エステル形態がプロドラッグとして適することが示される。
【0228】
実施例6:HL60細胞アッセイ
HL60(ヒト前骨髄球性白血病)細胞を、96マルチウェルプレートに0.25〜0.4×105個/mlの濃度で播種した(50μl/ウェル)。24時間後、培養培地で調整した該当化合物の希釈物50μlをウェルに加えた(最終濃度範囲:0.1%DMSO中で20〜1.25μM)。5%CO2雰囲気中で37℃にてさらに72時間インキュベートした後、化合物の増殖阻害作用の評価を、生細胞内でのミトコンドリアデヒドロゲナーゼによるテトラゾリウム塩WST-1(Roche)の切断に基づく比色アッセイを用いて測定した。WST-1試薬(10μl)を各ウェルに加え、プレートを1分間撹拌した。5%CO2インキュベーター内で37℃にて3〜4時間インキュベートした後、450nMにおける吸光度を分光光度計により読み取り、次いで、690nMでの参照波長吸光度を減算した。
【0229】
上記の実施例1、3および4からそれぞれ得られた化合物iv、ixおよびEを、上記の細胞アッセイに供した。結果は、同じものを6回行った平均とし、DMSO媒体対照応答に対する割合(%)として表わした。阻害作用は、媒体対照応答の50%を示す化合物の濃度(μM)として定義されるIC50値または試験化合物の最高濃度における媒体対照応答に対する割合(%)のいずれかとして、表3に示す。
【表3】

【0230】
理論に拘束されようとするものではないが、表3に示すように、HL60アッセイにおけるエステル化合物ivおよびixの有意な活性から、これらのエステル化合物が細胞培養物中で活性形態へと変換され得ることが示され、したがって、それらがプロドラッグ化合物としての使用に適していることが実証される。
【0231】
実施例7− 市販の化合物のグリオキサラーゼ結合アッセイ
表4の化合物を、商業的供給元から入手した。
【表4】



【0232】
表4の各種化合物を、実施例5で記載したようにして、20μM(20マイクロモル)の濃度で上記のグリオキサラーゼI結合アッセイに供した。以下の化合物は、20μMにおいて、30%以上の阻害を示した:1、2、3、4、9、11、13、14、25。
【0233】
実施例8− 2-(2-ビフェニル-4-イル-2-オキソ-エチルスルファニル)-安息香酸(化合物 3)のHL60アッセイ
表4中の化合物3のエチルエステルは、商業的供給元から入手し、実施例6に記載したようにしてHL60アッセイを用いて試験した。この化合物は、HL60において72%の増殖阻害を示し、IC50値は7.5μMであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
治療方法において使用するための、式Iの化合物またはその薬学的に許容される塩:
【化1】

[式中、
Xは、NまたはCHであり;
R1は、H、シアノ、ハロ、ヒドロキシ、ヒドロキサム酸、スルフヒドリルもしくは-NH2;または、場合によりシアノ、ハロ、ヒドロキシ、ヒドロキサム酸、スルフヒドリルもしくは-NH2で置換されているC1-4アルキル;または、-OR、-NHR、-NR2もしくは-SRであり、ここで、Rは、場合によりシアノ、ハロ、ヒドロキシ、ヒドロキサム酸、スルフヒドリルもしくは-NH2で置換されているC1-4アルキルであり;
R2は、H、CF3;または、場合により置換されているC5-6アリール、C3-7シクロアルキル、C5-7ヘテロシクリルまたは、R3と一緒になって、場合により置換されているC3-4アルキレン基(この場合、L3およびL4は単結合であり、したがってL3およびL4が結合している芳香族環と縮合しているC5-6環を形成している)であり;
R3は、H;または、場合により置換されているC5-6アリール、C3-7シクロアルキル、C5-7ヘテロシクリルまたは、R2と一緒になって、場合により置換されているC3-4アルキレン基(この場合、L3およびL4は単結合であり、したがってL3およびL4が結合している芳香族環と縮合しているC5-6環を形成している)であり;
R4は、H;または、場合により置換されているC5-6アリールもしくはC5-7ヘテロシクリルであり;
R6は、Hまたは場合により置換されているC1-7アルキル、C5-6アリールおよびC1-4アルキレン-C5-6アリールから選択され;
L1は、場合により置換されているC1-4アルキレン、C5-6アリーレン、C1-4アルキレン-C5-6アリーレンまたは-L5N(R5)L6-であり、ここで、L5およびL6は、場合により置換されているC1-4アルキレンおよびC5-6アリーレンから独立して選択され、R5はHまたはC1-4アルキルであり;
L2は、単結合;または、場合により置換されているC1-4アルキレンもしくは-L7C(=O)L8-であり、ここで、L7およびL8は、場合により置換されているC1-4アルキレンおよび単結合から独立して選択され;
L3およびL4は、単結合、場合により置換されているC1-4アルキレン、-L9YN(OH)C(=O)L10-および-L9C(=O)N(OH)YL10-から独立して選択され、ここで、L9およびL10は、場合により置換されているC1-4アルキレン、C5-6アリーレン、C1-4アルキレン-C5-6アリーレンおよび単結合から独立して選択され、YはNHまたは単結合である]。
【請求項2】
R1が、Hおよびシアノからなる群から選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
R6が、HまたはC1-7アルキルである、上記請求項のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項4】
L1が、フェニレン、-CH(Ph)-、-CH2-フェニレン-および-CH2C(=O)NH-フェニレン-からなる群から選択される、上記請求項のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項5】
L2が、単結合または-C(=O)CH2-である、上記請求項のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項6】
L3が、単結合、-L9YN(OH)C(=O)L10-および-L9C(=O)N(OH)YL10-からなる群から選択され、ここで、L9およびL10は、場合により置換されているC1-4アルキレン、C5-6アリーレン、C1-4アルキレン-C5-6アリーレンおよび単結合から独立して選択され、YがNHまたは単結合である、上記請求項のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項7】
L3が単結合である、請求項6に記載の化合物。
【請求項8】
L4が、単結合、-L9YN(OH)C(=O)L10-および-L9C(=O)N(OH)YL10-からなる群から選択され、ここで、L9およびL10は、場合により置換されているC1-4アルキレン、C5-6アリーレン、C1-4アルキレン-C5-6アリーレンおよび単結合から独立して選択され、YがNHまたは単結合である、上記請求項のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項9】
L4が、-CH2N(OH)C(=O)-、-フェニレン-CH2N(OH)C(=O)-、-フェニレン-NHN(OH)C(=O)-および-CH2C(=O)N(OH)-からなる群から選択される、請求項8に記載の化合物。
【請求項10】
XがCHである、上記請求項のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項11】
R1、R2およびR4のうちの1つがHである、請求項10に記載の化合物。
【請求項12】
R1、R2およびR4のうちの2つがHである、請求項10に記載の化合物。
【請求項13】
R1、R2およびR4の全てがHである、請求項10に記載の化合物。
【請求項14】
R2およびR3の一方が、場合により置換されているC5-6アリール、C3-7シクロアルキルまたはC5-7ヘテロシクリルである、請求項10に記載の化合物。
【請求項15】
R3が、場合により置換されているC5-6アリール、C3-7シクロアルキルまたはC5-7ヘテロシクリルである、請求項14に記載の化合物。
【請求項16】
R3が、場合により置換されているフェニルまたはC3-7シクロアルキルである、請求項14に記載の化合物。
【請求項17】
R3が、フェニルまたはシクロペンチルである、請求項14に記載の化合物。
【請求項18】
L1がフェニレンまたは-CH(Ph)-である、請求項10に記載の化合物。
【請求項19】
L3およびL4の一方が単結合である、請求項10に記載の化合物。
【請求項20】
L3が単結合である、請求項19に記載の化合物。
【請求項21】
XがNである、請求項1〜9のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項22】
R1がシアノまたはヒドロキサム酸である、請求項21に記載の化合物。
【請求項23】
R2が、場合により置換されているC5-6アリール、C5-7ヘテロシクリル、CF3、ならびに、R3と一緒になって、場合により置換されているブチレン基からなる群から選択され、この場合、L3およびL4は単結合であり、したがってL3およびL4が結合している芳香族環と縮合しているC6環を形成している、請求項21に記載の化合物。
【請求項24】
R2が、場合により置換されているC5-6アリールまたはC5-7ヘテロシクリルから選択される、請求項23に記載の化合物。
【請求項25】
R2が、場合により置換されているフェニルまたはチオフェニルから選択される、請求項23に記載の化合物。
【請求項26】
R2が、チオフェニル、フェニル、p-クロロフェニル、p-メトキシフェニル、o-メトキシフェニルおよびp-フルオロフェニルからなる群から選択される、請求項23に記載の化合物。
【請求項27】
R2が一置換フェニル基であり、その置換基がパラ位にある、請求項23〜25のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項28】
R3が、Hまたは、R2と一緒になって場合により置換されているブチレン基であり、この場合、L3およびL4は単結合であり、したがってL3およびL4が結合している芳香族環と縮合しているC6環を形成している、請求項21〜27のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項29】
R3がHであり、L4が単結合であって、したがってその化合物が式Ib:
【化2】

のものである、請求項28に記載の化合物。
【請求項30】
上記請求項のいずれか一項に記載の化合物またはその薬学的に許容される塩を、薬学的に許容される担体または希釈剤と共に含む医薬組成物。
【請求項31】
グリオキサラーゼIの阻害により軽減される症状を治療するための医薬品の調製における、請求項1〜29のいずれか一項に記載の化合物またはその薬学的に許容される塩の使用。
【請求項32】
グリオキサラーゼIの阻害により軽減することができる症状の治療方法であって、治療が必要な患者に、有効量の請求項1〜29のいずれか一項に記載の化合物またはその薬学的に許容される塩を投与することを含む上記方法。
【請求項33】
式Iの化合物であって、少なくとも1個の-C(=O)N(OH)-基を含む化合物またはその塩、溶媒和物もしくは化学的に保護された形態:
【化3】

[式中、
Xは、NまたはCHであり;
R1は、H、シアノ、ハロ、ヒドロキシ、ヒドロキサム酸、スルフヒドリルもしくは-NH2;または、場合によりシアノ、ハロ、ヒドロキシ、ヒドロキサム酸、スルフヒドリルもしくは-NH2で置換されているC1-4アルキル;または-OR、-NHR、-NR2もしくは-SRであり、ここで、Rは、場合によりシアノ、ハロ、ヒドロキシ、ヒドロキサム酸、スルフヒドリルまたは-NH2で置換されているC1-4アルキルであり;
R2は、H、CF3;または、場合により置換されているC5-6アリール、C3-7シクロアルキル、C5-7ヘテロシクリルまたは、R3と一緒になって、場合により置換されているC3-4アルキレン基(この場合、L3およびL4は単結合であり、したがってL3およびL4が結合している芳香族環と縮合しているC5-6環を形成している)であり;
R3は、H;または、場合により置換されているC5-6アリール、C3-7シクロアルキル、C5-7ヘテロシクリルまたは、R2と一緒になって、場合により置換されているC3-4アルキレン基(この場合、L3およびL4は単結合であり、したがってL3およびL4が結合している芳香族環と縮合しているC5-6環を形成している)であり;
R4は、H;または、場合により置換されているC5-6アリールまたはC5-7ヘテロシクリルであり;
R6は、Hまたは、場合により置換されているC1-7アルキル、C5-6アリールおよびC1-4アルキレン-C5-6アリールから選択され;
L1は、場合により置換されているC1-4アルキレン、C5-6アリーレン、C1-4アルキレン-C5-6アリーレンまたは-L5N(R5)L6-であり、ここで、L5およびL6は、場合により置換されているC1-4アルキレンおよびC5-6アリーレンから独立して選択され、R5はHまたはC1-4アルキルであり;
L2は、単結合;または、場合により置換されているC1-4アルキレンもしくは-L7C(=O)L8-であり、ここで、L7およびL8は、場合により置換されているC1-4アルキレンおよび単結合から独立して選択され;
L3およびL4は、単結合、場合により置換されているC1-4アルキレン、-L9YN(OH)C(=O)L10-および-L9C(=O)N(OH)YL10-から独立して選択され、ここで、L9およびL10は、場合により置換されているC1-4アルキレン、C5-6アリーレン、C1-4アルキレン-C5-6アリーレンおよび単結合から独立して選択され、ここで、YはNHまたは単結合である]。
【請求項34】
R1、L3またはL4の少なくとも1つが-C(=O)N(OH)-基を含む、請求項33に記載の化合物。
【請求項35】
L4が-C(=O)N(OH)-基を含む、請求項33に記載の化合物。
【請求項36】
L4がL9-C(=O)N(OH)-基である、請求項33〜35のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項37】
L9がC1-4アルキレンおよびC5-6アリーレンから選択される、請求項36に記載の化合物。
【請求項38】
L9がメチレンまたはフェニレンである、請求項36に記載の化合物。
【請求項39】
XがCHである、請求項33〜38のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項40】
R1、R2およびR4の少なくとも1つがHである、請求項33〜39のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項41】
R1、R2およびR4の少なくとも2つがHである、請求項33〜39のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項42】
R1、R2およびR4の全てがHである、請求項33〜39のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項43】
R3が場合により置換されているC5-6アリールである、請求項33〜42のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項44】
R3がフェニルである、請求項43に記載の化合物。
【請求項45】
R6がHまたはC1-7アルキルである、請求項33〜44のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項46】
R6がHまたはC1-3アルキルである、請求項45に記載の化合物。
【請求項47】
L1がフェニレン、-CH(Ph)-、-CH2-フェニレン-または-CH2C(=O)NH-フェニレン-である、請求項33〜46のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項48】
L2が単結合または-C(=O)CH2-である、請求項33〜47のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項49】
L3が単結合である、請求項33〜48のいずれか一項に記載の化合物。

【公表番号】特表2006−528964(P2006−528964A)
【公表日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−530505(P2006−530505)
【出願日】平成16年5月14日(2004.5.14)
【国際出願番号】PCT/GB2004/002101
【国際公開番号】WO2004/101506
【国際公開日】平成16年11月25日(2004.11.25)
【出願人】(504185625)クロマ セラピューティクス リミテッド (1)
【Fターム(参考)】