説明

グリセロールを含む組成物、それを得る方法およびジクロロプロパノールの製造でのその使用

本発明は、グリセロールとグリセロールの少なくとも1つの環状オリゴマーとを含む組成物に、この組成物の取得方法に、ならびにジクロロプロパノールのならびにエピクロロヒドリンおよびエポキシ樹脂などの誘導製品の製造でのその使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、それらの両方の内容が参照により本明細書に援用される特許出願、2008年4月3日出願のFR 08/52206および2009年2月29日出願のFR 09/51260の優先権を主張するものである。
【0002】
本発明は、グリセロール(1,2,3−プロパントリオール)を含む組成物に、それを得る方法に、ならびにジクロロプロパノールの製造とエピクロロヒドリンおよびエポキシ樹脂などの誘導製品の製造とにおけるこの組成物の使用に関する。
【背景技術】
【0003】
ジクロロプロパノールは、例えば、エピクロロヒドリンおよびエポキシ樹脂の製造での反応中間体である(非特許文献1)。
【0004】
公知の方法によれば、ジクロロプロパノールは、とりわけ塩化アリルの次亜塩素酸化(ハイポクロリネーション)によって、アリルアルコールの塩素化によっておよびグリセロールの塩化水素化によって得ることができる。後者の方法では、ジクロロプロパノールは、化石原材料または再生可能な原材料から出発して得ることができる。化石原料が由来する、石油化学天然資源、地球上で入手可能な、例えば原油、天然ガスまたは石炭が限られていることは公知である。
【0005】
幾つかの条件では、再生可能な原材料から出発するグリセロールの塩化水素化は、改善の余地が多い選択性を示し、排除することが必要である幾つかの重質副生物の形成をもたらす。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Kirk−Othmer Encyclopedia of Chemical Technology、第4版、1992年、Vol.2、156ページ、John Wiley & Sons、Inc.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、重質副生物の形成を制限することによってこの問題を、およびそれらの重質副生物に関係する問題を解決することを目標としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明はそれ故、グリセロールと、組成物の1kg当たり0.01g以上および20g以下の環状オリゴマーの含有率でグリセロールの少なくとも1つの環状オリゴマーとを含む組成物に、およびジクロロプロパノールの製造でのその使用に関する。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の主な特徴の一つは、ジクロロプロパノールの製造に原材料として使用されるグリセロール組成物中のグリセロールの環状オリゴマーの低い含有率にある。
【0010】
具体的には、グリセロール中のグリセロールオリゴマーの存在は、グリセロールの塩化水素化によるジクロロプロパノールの製造方法において重質副生物の形成に寄与することが分かった。
【0011】
グリセロールの塩化水素化によるジクロロプロパノールの製造方法における重質副生物とは、部分塩素化および/またはエステル化されている可能性があるグリセロールオリゴマーを意味することが意図される。
【0012】
いかなる理論にも制約されることなく、重質副生物の化学構造におよび反応混合物中のそれらの含有率にとりわけ関係する、かかる重質副生物の組成は、ジクロロプロパノールの製造方法において重要であると考えられる。
【0013】
かかる重質副生物の組成は、グリセロールから出発する、ジクロロプロパノールの選択率および収率を向上させると考えられる。グリセロールの塩化水素化によるジクロロプロパノールの製造方法における重質副生物は塩化水素化反応用の溶媒として挙動すると考えられる。
【0014】
しかしながら、重質副生物の余りにも高い含有率は、グリセロールの塩素化剤の消費の増加に、ジクロロプロパノール生産性の低下に、混合と反応剤とりわけ塩化水素の溶解との困難さをもたらす反応媒体の粘度の増大にならびに本方法のパージング操作の頻度の増加につながり得るとさらに考えられる。幾つかの部分塩素化および/またはエステル化されたグリセロールの環状オリゴマーは、分離をより困難にし得るジクロロプロパノールの沸騰温度に近い沸騰温度を有し、かつまた、エピクロロヒドリンおよびエピクロロヒドリン誘導体製造プロセスのような、ジクロロプロパノールを使用する下流プロセスに悪影響を及ぼすとさらにまた考えられる。
【0015】
重質副生物の最適組成が必要である。この最適組成は、塩化水素化反応を受けるグリセロール中の環状グリセロールオリゴマーの最適含有率によって制御されると考えられる。
【0016】
本発明による組成物において、グリセロール含有率は、一般的に組成物の1kg当たり500g以上、通常750g/kg以上、多くの場合に900g/kg以上、一般に950g/kg以上、しばしば990g/kg以上、頻繁に999g/kg以上、特に999.9g/kg以上、とりわけ999.95g/kg以上のグリセロールである。そのグリセロール含有率は通常組成物の1kg当たり999.99g以下である。
【0017】
表現「グリセロールの環状オリゴマー」は、少なくとも2個のグリセロール分子間の縮合反応から生じる環状化合物、すなわち少なくとも2個のグリセロール分子間の縮合反応から生じる、その化学構造が少なくとも1つのサイクルまたは環を含有する化合物を意味すると理解される。
【0018】
本発明による組成物において、グリセロールの環状オリゴマーは一般的に、少なくとも2個のグリセロール分子(二量体)、多くとも7個のグリセロール分子(七量体)、しばしば多くとも6個のグリセロール分子(六量体)、頻繁に多くとも4個のグリセロール分子(四量体)、より特に多くとも3個のグリセロール分子(三量体)間の縮合反応から生じる化合物である。
【0019】
グリセロールの環状オリゴマーは通常、炭素原子の少なくとも幾つかが化学構造の少なくとも1つの環中に置かれているグリセロールのオリゴマーである。環を構成する原子の数は、一般的に6個以上、しばしば7個以上、時々8個以上である。環を構成する原子の数は一般的に20個以下である。環は、一般的に少なくとも2個の酸素原子、しばしば2個の酸素原子を含む。6個の原子から構成され、それらの原子のうち2個が酸素原子である、単環を含有するグリセロールの環状オリゴマーがとりわけ好適である。7個の原子から構成され、それらの原子のうち2個が酸素原子である、単環を含有するグリセロールの環状オリゴマーがとりわけ好都合である。8個の原子から構成され、それらの原子のうち2個が酸素原子である、単環を含有するグリセロールの環状オリゴマーもまたとりわけ好適である。
【0020】
本発明による組成物において、グリセロールの環状オリゴマーは好ましくは、グリセロールの環状二量体、グリセロールの環状三量体、グリセロールの環状四量体、およびこれらのグリセロールオリゴマーの少なくとも2つの混合物からなる群から選択される。
【0021】
本発明による組成物において、グリセロールの環状オリゴマーは、しばしば2個のグリセロール分子間の縮合反応から生じる環状化合物、すなわち、グリセロールの環状二量体である。
【0022】
環状構造の二量体は、一般的に少なくとも1つの環、しばしばただ1個の環を含む。環は、一般的に6個の原子、しばしば7個の原子、頻繁に8個の原子を含み、そのうち2個の原子は酸素原子であり、残りは炭素原子である。
【0023】
本発明による組成物において、グリセロールの環状二量体は通常、シス−およびトランス−2,5−ビス−(ヒドロキシメチル)−1,4−ジオキサン、シス−およびトランス−2,6−ビス(ヒドロキシメチル)−1,4−ジオキサン、シス−およびトランス−6−ヒドロキシ−2−ヒドロキシメチル−1,4−ジオキセパン、ならびにシス−およびトランス−3,7−ジヒドロキシ−1,5−ジオキソカン、ならびにそれらの少なくとも2つの任意の混合物からなる群から選択される化合物の少なくとも1つを含む。
【0024】
本発明による組成物において、グリセロールの環状二量体は、しばしば前記異性体全てを含む混合物である。
【0025】
本発明による組成物において、グリセロールの環状二量体は、しばしば前記異性体全てから本質的になる混合物である。
【0026】
本発明による組成物において、グリセロールの環状オリゴマーの含有率は、しばしば組成物の1kg当たり10g以下、頻繁に5g/kg以下、一般に2.5g/kg以下、特に1g/kg以下、より特に0.5g/kg以下、とりわけ0.1g/kg以下の環状オリゴマーである。この含有率はしばしば0.05g/kg以上である。
【0027】
本発明による組成物において、グリセロールの環状二量体の含有率は、しばしば組成物の1kg当たり10g以下、頻繁に5g/kg以下、一般に2.5g/kg以下、特に1g/kg以下、より特に0.5g/kg以下、とりわけ0.1g/kg以下の環状二量体である。この含有率はしばしば0.05g/kg以上である。
【0028】
本発明による組成物において、シス−およびトランス−2,5−ビス(ヒドロキシメチル)−1,4−ジオキサン、シス−およびトランス−2,6−ビス−(ヒドロキシメチル)−1,4−ジオキサン、シス−およびトランス−6−ヒドロキシ−2−ヒドロキシメチル−1,4−ジオキセパン、ならびにシス−およびトランス−3,7−ジヒドロキシ−1,5−ジオキソカンの含有率の合計は、しばしば組成物の1kg当たり10g以下、頻繁に5g/kg以下、一般に2.5g/kg以下、特に1g/kg以下、より特に0.5g/kg以下、とりわけ0.1g/kg以下である。この含有率はしばしば0.05g/kg以上である。
【0029】
本発明による組成物は、線状構造の、分岐構造のグリセロールのオリゴマーから、およびこれらのオリゴマーの少なくとも2つの混合物からなる群から選択されるグリセロールの少なくとも1つのオリゴマーをその上含有してもよい。グリセロールの追加のオリゴマーは、しばしばこれらのオリゴマーの少なくとも2つの混合物である。
【0030】
表現「線状構造のオリゴマー」は、環ではない、原子(複数)の1つの同じ鎖に炭素原子が全て配置されているオリゴマーを意味すると理解される。
【0031】
表現「分岐構造のオリゴマー」は、原子(複数)の少なくとも2つの鎖に炭素原子が配置されているオリゴマーを意味すると理解される。
【0032】
「線状構造」のグリセロールのオリゴマーおよび「分岐構造の」グリセロールのオリゴマーは、グリセロールの環状オリゴマーではない。それらはさらにまた、グリセロールの非環状オリゴマーとも言われる。
【0033】
本発明による組成物において、線状構造のグリセロールオリゴマーおよび分岐構造のグリセロールオリゴマーは独立して、グリセロール二量体、グリセロール三量体、グリセロール四量体、およびこれらのグリセロールオリゴマーの少なくとも2つの混合物からなる群から好ましくは選択される。
【0034】
本発明による組成物において、線状構造のグリセロールオリゴマーおよび分岐構造のグリセロールオリゴマーは、独立しておよび頻繁にグリセロール二量体である。
【0035】
本発明による組成物において、線状構造のグリセロール二量体および分岐構造のグリセロール二量体はしばしば、線状構造の二量体と、分岐構造の少なくとも1つの二量体との混合物である。
【0036】
グリセロールの非環状オリゴマーはしばしば、3−(2,3−ジヒドロキシプロポキシ)プロパン−1,2−ジオール(グリセロールの線状オリゴマー)、3−(2−ヒドロキシ−1−ヒドロキシメチルエトキシ)プロパン−1,2−ジオール(グリセロールのモノ分岐オリゴマー)および2−(2−ヒドロキシ−1−ヒドロキシメチルエトキシ)プロパン−1,3−ジオール)(グリセロールのジ分岐オリゴマー)からなる群から選択される化合物の少なくとも2つの混合物である。
【0037】
本文書の残りにおいて、グリセロールオリゴマーはまた、ポリグリセロール、およびグリセロール二量体、三量体、四量体などとも呼ばれ、またジグリセロール、トリグリセロール、テトラグリセロールなどとも呼ばれる。
【0038】
本発明による組成物において、非環状ポリグリセロール含有率は、しばしば組成物の1kg当たり10g以下、頻繁に5g/kg以下、特に2.5g/kg以下、とりわけ1g/kg以下、より特に0.5g/kg以下、最もとりわけ0.1g/kg以下である。この含有率はしばしば0.05g/kg以上である。
【0039】
本発明による組成物において、非環状ジグリセロール含有率は、しばしば組成物の1kg当たり10g以下、頻繁に5g/kg以下、一般に2.5g/kg以下、特に1g/kg以下、より特に0.5g/kg以下、とりわけ0.1g/kg以下である。この含有率はしばしば0.05g/kg以上である。
【0040】
本発明による組成物において、3−(2,3−ジヒドロキシプロポキシ)プロパン−1,2−ジオール(線状ジグリセロール)の含有率は、しばしば組成物の1kg当たり10g以下、頻繁に5g/kg以下、特に2.5g/kg以下、一般に1g/kg以下、より特に0.5g/kg以下、とりわけ0.1g/kg以下である。この含有率はしばしば0.05g/kg以上である。
【0041】
本発明による組成物において、3−(2−ヒドロキシ−1−ヒドロキシメチルエトキシ)プロパン−1,2−ジオールおよび2−(2−ヒドロキシ−1−ヒドロキシメチル−エトキシ)プロパン−1,3−ジオール(分岐ジグリセロール)の含有率の合計は、しばしば組成物の1kg当たり10g以下、頻繁に5g/kg以下、一般に2.5g/kg以下、特に1g/kg以下、とりわけ0.1g/kg以下である。この含有率はしばしば0.05g/kg以上である。
【0042】
本発明による組成物は、その内容が参照により本明細書に援用される、SOLVAY SAの名義での国際公開第2009/000773号パンフレット、1ページ、30行から2ページ、22行までに記載されているようなジオールを一般的に含有する。
【0043】
ジオールは好ましくは、1,2−エタンジオール(エチレングリコール)、1,2−プロパンジオール(プロピレングリコール)、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオールまたはこれらの化合物の少なくとも2つの混合物から選択される。1,3−プロパンジオールがとりわけ好ましい。
【0044】
本発明による組成物において、ジオール含有率は、一般的に組成物の1kg当たり0.001gジオール以上であり、組成物の1kg当たり100gジオール以下である。この含有率は、しばしば90g/kg以下、一般に50g/kg以下、頻繁に10g/kg以下、通常1g/kg以下、一般に0.5g/kg以下、頻繁に0.2g/kg以下である。この量は、しばしば0.005g/kg以上、頻繁に0.01g/kg以上、一般に0.04g/kg以上、通常0.1g/kg以上である。
【0045】
本発明による組成物は、その内容が参照により本明細書に援用される、SOLVAY SAの名義での国際公開第2007/144335号パンフレット、2ページ、6行から3ページ、25行までに記載されているようなグリセロールアルキルエーテルを一般的に含有する。
【0046】
グリセロールのオリゴマーは、グリセロールアルキルエーテルとは考えられない。
【0047】
グリセロールアルキルエーテルの含有率は、一般的に組成物の1kg当たり90g以下、しばしば50g/kg以下、頻繁に10g/kg以下、一般に5g/kg以下、通常1g/kg以下、より一般に0.5g/kg以下、より頻繁に0.2g/kg以下である。この含有率は、一般的に0.005g/kg以上、頻繁に0.01g/kg以上、しばしば0.04g/kg以上、より頻繁に0.1g/kg以上である。
【0048】
本発明による組成物はまた、その内容が参照により本明細書に援用される、SOLVAY SAの名義での国際公開第2007/144335号パンフレット、3ページ、26行から31行までに記載されているモノアルコールなどの、モノアルコールを含んでもよい。
【0049】
これらのモノアルコールは、組成物の1kg当たり0.001g以上、しばしば0.01g/kg以上の含有率で一般的に存在する。この含有率は、一般的に生成物の1kg当たり20g未満、しばしば生成物の1kg当たり2g以下である。
【0050】
本発明による組成物はまた、一般的に組成物の1kg当たり0.1g以上および200g/kg以下の含有率で水を含んでもよい。この量は、しばしば50g/kg以下、頻繁に20g/kg以下である。
【0051】
本発明による組成物はまた、SOLVAY SAの名義での国際公開第2007/144335号パンフレット、5ページ、12行から20行までに記載されているように少なくとも1つの脂肪酸アルキルエステルおよび/または1つのグリセロールエステルおよび/または1つの塩を含んでもよい。
【0052】
これらのエステルは、組成物の1kg当たり0.01g以上、しばしば1g/kg以上、頻繁に5g/kg以上の含有率で一般的に存在する。この含有率は、一般的に製品の1kg当たり50g未満、しばしば30g/kg以下、よりしばしば10g/kg以下である。
【0053】
これらの塩は、組成物の1kg当たり0.0005g以上、しばしば0.001g/kg以上、頻繁に0.01g/kg以上の含有率で一般的に存在する。この含有率は、一般的に10g/kg未満、しばしば製品の1kg当たり1g以下、よりしばしば0.1g/kg以下である。
【0054】
ジオール、グリセロールアルキルエーテル、モノアルコール、水、脂肪酸のアルキルエステル、グリセロールエステルおよび塩は、例えば、エステル交換、鹸化または加水分解反応による植物または動物起源の油または脂肪の転化方法、発酵などの、単糖類および多糖類ならびに誘導アルコールの転化方法、ならびに水素化および水素化分解などの熱化学方法などのグリセロール製造方法の副生物である可能性がある。
【0055】
本発明による組成物において、グリセロールは、その内容が参照により本明細書に援用される、SOLVAY SAの国際公開第2006/100315号パンフレット、特に7ページ、11行から9ページ、10行までの節に記載されているようなアルカリ金属および/またはアルカリ土類金属含有率を有してもよい。
【0056】
本発明による組成物において、グリセロールは、その内容が参照により本明細書に援用される、SOLVAY SAの国際公開第2006/100319号パンフレット、特に2ページ、3行から8行まで、および6ページ、20行から9ページ、14行までの節に記載されているようにアルカリ金属およびアルカリ土類金属以外の元素を含有してもよい。
【0057】
本発明による組成物において、グリセロールは、グリセロールおよびポリグリセロール以外のある量の重質化合物を含有する可能性があり、1バール絶対圧の圧力下でのその沸騰温度は、その内容が参照により本明細書に援用されるSOLVAY SAの国際公開第2006/100316号パンフレット、特に15ページ、32行から17ページ、33行までの節に記載されているようにジクロロプロパノールの沸騰温度より少なくとも15℃高い。
【0058】
本発明による組成物において、グリセロールは、その内容が参照により本明細書に援用されるSOLVAY SAのFR 07/59891、特に1ページ、28行から3ページ、20行までの節に記載されているように窒素含有化合物を含有してもよい。
【0059】
本発明はまた、次の工程:
(a)グリセロールの環状オリゴマーの含有率が組成物の1kg当たり0.01g未満である、グリセロールを含む組成物(I)が、塩基性剤(basic agent)の存在下に、25℃以上および180℃未満の温度での加熱操作にかけられる工程;
(b)工程(a)の終わりに得られた組成物(II)が、グリセロールと、組成物の1kg当たり0.01g以上の環状オリゴマーの含有率でグリセロールの少なくとも1つの環状オリゴマーとを含む組成物を留出物としてかまたは蒸発物として得るために、蒸留操作にまたは蒸発操作にかけられる工程;を含み、
(c)任意選択的に、工程(b)の終わりに得られた組成物(III)の一画分が、グリセロールと、組成物の1kg当たり20g以下の環状オリゴマーの含有率でグリセロールの少なくとも1つの環状オリゴマーとを含有する組成物を得るために、少なくとも1つの精製処理にかけられる工程
を含んでもよい、グリセロールと、組成物の1kg当たり0.01g以上および20g以下の環状オリゴマーの含有率でグリセロールの少なくとも1つの環状オリゴマーとを含む組成物の製造方法に関する。
【0060】
工程a)の終わりに得られる組成物(II)は、工程b)の前に任意選択的に冷却されてもよい。
【0061】
本発明による組成物の製造方法では、工程(a)および(b)は、グリセロールと、組成物の1kg当たり0.01g以上の環状オリゴマーの含有率でグリセロールの少なくとも1つの環状オリゴマーとを含む組成物を生成させる。
【0062】
工程(a)は、例えばプラグフロー反応器または撹拌反応器などの、任意のタイプの反応器で実施されてもよい。
【0063】
工程(a)は、連続モードでかまたは不連続モードで進められてもよい。
【0064】
工程(b)は、例えば、プレート塔または充填塔のような任意のタイプの蒸留塔で実施されてもよい。
【0065】
工程(b)は、例えば、回分式エバポレーター、薄膜式エバポレーターまたはワイプト薄膜式エバポレーターのような任意のタイプのエバポレーターで実施されてもよい。
【0066】
工程(b)は、連続モードでかまたは不連続モードで進められてもよい。
【0067】
本発明による組成物の製造方法では、工程(a)に使用される組成物は、しばしば0.005g/kg以下、頻繁に0.001g/kg以下のグリセロールの環状オリゴマーの含有率を有する。
【0068】
本発明による組成物の製造方法では、工程(a)の加熱操作は、しばしば50℃超、頻繁に100℃以上、日常的に150℃以上、特に175℃以上の温度で実施される。
【0069】
本発明による組成物の製造方法では、工程(a)の加熱操作は、一般的に0.01バール絶対圧以上の、しばしば0.5バール絶対圧以上の、頻繁に0.2バール絶対圧以上の圧力下に実施される。
【0070】
本発明による組成物の製造方法では、工程(a)の加熱操作の継続時間は、一般的に8時間以下、しばしば6時間以下、頻繁に4時間以下である。この継続時間は、一般的に5分以上、頻繁に15分以上、とりわけ60分以上、特に120分以上である。
【0071】
本発明による組成物の製造方法では、工程(b)の蒸留または蒸発操作は、通常80℃超、頻繁に100℃以上、日常的に110℃以上、特に130℃以上の温度で実施される。この温度は、一般的に250℃超未満、頻繁に200℃以下、日常的に190℃以下、特に180℃以下である。
【0072】
本発明による組成物の製造方法では、工程(b)の蒸留または蒸発操作は、一般的に0.01ミリバール絶対圧以上、しばしば0.1ミリバール絶対圧以上、頻繁に1ミリバール絶対圧以上の圧力下に実施される。この圧力は、一般的に0.4バール絶対圧以下、しばしば60ミリバール絶対圧以下、頻繁に20ミリバール絶対圧以下である。
【0073】
本発明による組成物の製造方法では、工程(b)前の組成物(II)の任意の冷却の温度は、一般的に80℃以下、しばしば70℃以下、より好ましくは60℃以下である。
【0074】
冷却操作は、60分以下、しばしば30分以下、頻繁に15分以下の期間にわたって一般的に実施される。
【0075】
本発明による方法では、工程(a)の塩基性化合物は、有機または無機塩基性化合物であってもよい。有機塩基性化合物は、例えばアミン、ホスフィン、水酸化アンモニウム、水酸化ホスホニウムまたは水酸化アルソニウムならびにアルカリおよびアルカリ土類金属カルボン酸塩である。無機塩基性化合物が好ましい。表現「無機化合物」は、炭素−水素結合を含有しない化合物を意味すると理解される。無機塩基性化合物は、アルカリおよびアルカリ土類の金属酸化物、水酸化物、炭酸塩、炭酸水素塩、リン酸塩、リン酸水素塩およびホウ酸塩、ならびにそれらの混合物から選択されてもよい。アルカリおよびアルカリ土類金属の酸化物および水酸化物が好ましい。水酸化ナトリウムおよび水酸化カルシウムが好ましく、水酸化ナトリウムがとりわけ好ましい。
【0076】
本発明による方法では、工程(a)の塩基性化合物は、液体、本質的に無水の固体、水和固体、水溶液および/または有機溶液または水性懸濁液および/または有機懸濁液の形態にあってもよい。塩基性化合物は好ましくは、本質的に無水の固体、水和固体、水溶液または水性懸濁液の形態にある。水酸化ナトリウム溶液が好ましい。
【0077】
工程(a)のこれらの条件下に、工程(a)の終わりに転化されたグリセロールの量と工程(a)に使用されたグリセロールの量との比と定義される、グリセロールの転化の程度は、一般的に5%以下、しばしば3%以下、よりしばしば1%未満、頻繁に0.1%以下である。
【0078】
工程(a)にかけられる組成物中のグリセロールは、その内容が参照により本明細書に援用される、SOLVAY SAの国際公開第2005/054167号パンフレット、特に1ページ、26行から4ページ、2行までの節に記載されるような、ならびにその内容が参照により本明細書に援用される、SOLVAY SAの名義での国際公開第2006/100312号パンフレット、1ページ、26行から2ページ、5行までに定義されているなどの、ならびにその内容が参照により本明細書に援用される、SOLVAY SAの国際公開第2009/000773号パンフレット、特に10ページ、16〜23行の、および11ページ、4〜25行の節に記載されているように、化石原材料および/または再生可能な原材料から出発して、好ましくは再生可能な原材料から出発して製造されたものであってもよい。再生可能な原材料から出発して得られるグリセロールは、例えば、「Medium and Long−Term Opportunities and Risks of the Biotechnological Production of Bulk Chemicals from Renewable Resources、The Potential of White Biotechnology、The BREW Project、Final report Prepared under the European Commission’s GROWTH Programme(DG Research)、Utrecht、2006年9月、29−31ページ」に記載されているなどの、加水分解、鹸化、エステル交換、アミノリスまたは水素化方法および、リパーゼ型酵素でのエステル交換または加水分解などの、酵素による破壊方法などの、動物または植物油および/または脂肪の転化方法で得られるグリセロールである。再生可能な原材料から出発して得られるグリセロールは、例えば、「Industrial Bioproducts:Today and Tomorrow,Energetics、Incorporated for the U.S.Department of Energy,Office of Energy Efficiency and Renewable Energy,Office of the Biomass Program、2003年7月、49、52〜56ページ」に記載されているような、発酵、ならびに水素化および水素化分解などの熱化学方法などの、単糖類および多糖類ならびに誘導アルコールの転化方法で得られるグリセロールである。例えば、デンプン、セルロース、ヘミセルロース、サッカロース、ラクトース、グルコース、ガラクトース、マルトース、アロース、アルトロース、マンノース、グロース、イドース、タロース、キシロース、アラビノース、リボースおよびリキソースなどの、単糖類および多糖類はそれら自体バイオマスから得られてもよい。
【0079】
本発明による方法では、任意の工程c)の処理は、蒸発濃縮、蒸発晶析、蒸留、分別蒸留、ストリッピングおよび液/液抽出操作およびこれらの操作の少なくとも2つの組み合わせから選択されてもよい。
【0080】
この処理は、減圧下に実施されてもよい。
【0081】
用語「蒸発濃縮」は、残存生成物をより少ない揮発性の実体へ濃縮することを可能にする生成物の部分蒸発のプロセスを意味すると理解される。用語「蒸発晶析」は、媒体へのその溶解を促進する化合物を、蒸発によって、除去することによって、化合物の晶析をもたらすプロセスを意味すると理解される。これらのプロセスは、「Perry’s Chemical Engineers’ Handbook」、第7版の第11セクションに記載されている。
【0082】
用語「蒸留」は、化学工学において一般に行われているタイプの分離を意味すると理解され、例えば、「Perry’s Chemical Engineers’ Handbook」、第7版の第13セクションに記載されている。
【0083】
用語「分別蒸留」は、留出物が回分式に抜き出される一連の蒸留を意味すると理解される。
【0084】
用語「ストリッピング」は、純物質の蒸気を使用する同伴による物質の分離を意味すると理解される。本発明による方法では、この物質は、例えば、スチーム、空気、窒素および二酸化炭素などの、グリセロールに対して不活性である任意の化合物であることができる。
【0085】
用語「液/液抽出」は、「Perry’s Chemical Engineers’ Handbook」、第7版の第15セクションに記載されているように、任意選択的に向流プロセスに従って、所望の化合物を選択的に抽出することを可能にする適切な完全にまたは部分的に不混和性の溶剤と接触させることを意味すると理解される。
【0086】
ストリッピング、蒸発濃縮、蒸発晶析、液/液抽出および蒸留処理は、例えば蒸留セクションがその上にあるストリッピング塔で、もしくは蒸留塔に供給する部分的なエバポレーターで、または液/液抽出と、グリセロールに富む流れ中に含有される残存溶剤のストリッピングと、抽出された化合物に富む溶剤の蒸留とを組み合わせることによって組み合わせられてもよい。
【0087】
ジオール、モノアルコールおよびグリセロールアルキルエーテルは、第1の蒸留、蒸発またはストリッピングされた留分に回収され、本発明によるグリセロールの少なくとも1つの環状オリゴマーを含む精製グリセロールベースの組成物は、蒸留、蒸発またはストリッピング処理からの中間カットを構成する。非環状グリセロールオリゴマーを含有するグリセロールは、本発明の工程(c)の処理からの残留物を構成する。
【0088】
処理が生成物の部分蒸発からなるとき、グリセロールに富む蒸留処理からの中間カットの温度は、一般的に0℃以上、しばしば80℃以上、頻繁に100℃以上である。この温度は、一般的に280℃以下、しばしば250℃以下、頻繁に200℃以下である。第1グリセロール欠失蒸留留分の沸点は、一般的に−20℃以上、しばしば−10℃以上、頻繁に好ましくは0℃以上である。この温度は、一般的に高くてもグリセロールに富む蒸留処理からの中間カットの温度に等しく、しばしばこの温度より少なくとも5℃下、とりわけこの温度より少なくとも10℃下である。
【0089】
処理が液/液抽出によって実施されるとき、温度は、一般的に20℃以上、しばしば40℃以上、頻繁に50℃以上である。この温度は、一般的に200℃以下、しばしば150℃以下、とりわけ120℃以下である。
【0090】
処理圧力は、一般的に0.001ミリバール以上である。この圧力は、一般的に1バール以下、しばしば0.5バール以下、頻繁に0.3バール以下、より特に0.25バール以下である。処理が別個の蒸発工程を含むとき、後者は一般的に、2バール絶対圧以下の圧力で、しばしば1バール絶対圧以下の圧力で、頻繁に0.5バール絶対圧以下の圧力で実施される。それは一般的に、0.1ミリバール以上の圧力で、しばしば0.2ミリバール以上の圧力で実施される。蒸発工程が蒸留または分別蒸留工程と組み合わせられるとき、それは、最低の圧力で実施される工程の圧力に少なくとも等しい圧力で、しばしば最低の圧力で実施される工程の圧力より少なくとも10ミリバール高い圧力で実施される。ストリッピング工程は一般的に、5バール以下、頻繁に2バール以下の圧力で実施される。
【0091】
ストリッピングありまたはなしの蒸留処理では、還流比は、一般的に1%以上、しばしば5%以上、頻繁に10%以上である。この還流比は、99%以下、しばしば50%以下である。表現「還流比」は、連続蒸留については、蒸発した留分のリボイラーへの流量割る残留物の流量を意味すると理解される。
【0092】
表現「還流比」は、回分式、分別蒸留については、最終残留物に対する蒸発した量の比を意味すると理解される。
【0093】
蒸留される留分の量は、一般的にグリセロールを含む組成物の1kg当たり300g以下、しばしば100g/kg以下である。
【0094】
蒸留、分別蒸留またはストリッピング処理は、例えば、沈降、遠心分離、濾過、吸着またはイオン交換操作であってもよい操作によって先行されるかまたは後続されてもよい。それが沈降操作であるとき、この操作はコアレッサーを通すことによって改善することができる。吸着操作はしばしば活性炭上での吸着のための操作である。
【0095】
本発明はさらに、グリセロールと、組成物の1kg当たり0.01g以上および20g以下の環状オリゴマーの含有率でグリセロールの少なくとも1つの環状オリゴマーとを含む少なくとも1つの組成物が塩素化剤と反応させられるジクロロプロパノールの製造方法に関する。
【0096】
本発明はまた、グリセロールと、組成物の1kg当たり0.01g以上および20g以下の環状オリゴマーの含有率でグリセロールの少なくとも1つの環状オリゴマーとを含む少なくとも1つの組成物の、ジクロロプロパノールの製造のための使用に関する。
【0097】
グリセロールと、組成物の1kg当たり0.01g以上および20g以下の環状オリゴマーの含有率でグリセロールの少なくとも1つの環状オリゴマーとを含む組成物は、上に記載された通りであってもよい。
【0098】
本発明によるジクロロプロパノールの製造方法では、塩素化剤は一般的に塩化水素を含む。塩化水素は、ガス状塩化水素、水性塩化水素溶液またはこの2つの混合物であることができる。塩素化剤は好ましくはガス状塩化水素である。
【0099】
本発明によるジクロロプロパノールの製造方法では、塩素化剤は、それらの内容が参照により本明細書に援用される、全てがSOLVAY SAの名義での、国際公開第2007/144335号パンフレット、12ページ、34行から13ページ、35行まで、国際公開第2005/054167号パンフレット、4ページ、32行から5ページ、18行まで、および国際公開第2006/106153号パンフレット、2ページ、10行から3ページ、20行までに記載されているようなものであってもよい。
【0100】
塩素化剤が塩化水素であるとき、塩化水素は、その内容が参照により本明細書に援用される、SOLVAY SAのFR 08/56138、特に2ページ、33行から16ページ、21行までの節に記載されているように精製されてもよい。
【0101】
本発明によるジクロロプロパノールの製造方法では、塩素化剤との反応は、その内容が参照により本明細書に援用される、SOLVAY SAの国際公開第2006/106154号パンフレット、特に14ページ、15行から17ページ、10行までの節に記載されているような反応媒体中で実施されてもよい。
【0102】
本発明によるジクロロプロパノールの製造方法では、グリセロールとグリセロールの環状オリゴマーとを含む組成物は、その内容が参照により本明細書に援用される、SOLVAY SAのFR 08/58362、特に6ページ、4行から11ページ、26行までの節に記載されているように処理されてもよい。
【0103】
本発明によるジクロロプロパノールの製造方法では、塩素化剤との反応は、それらの内容が参照により本明細書に援用される、SOLVAY SAの名義での国際公開第2005/054167号パンフレット、6ページ、24行から7ページ、35行までに、ならびに国際公開第2006/020234号パンフレット、8ページ、24行から9ページ、10行までおよび13ページ、1行から18ページ、3行までに記載されているなどの、触媒、好ましくはカルボン酸またはカルボン酸誘導体の存在下に実施されてもよい。コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、ドデカン酸、クエン酸およびブタンテトラカルボン酸ならびに酸塩化物、酸無水物、エステル、塩、アミドおよびニトリルなどのそれらの誘導体が触媒の例である。
【0104】
本発明によるジクロロプロパノールの製造方法では、塩素化剤との反応は、その内容が参照により本明細書に援用される、SOLVAY SAの国際公開第2005/054167号パンフレット、特に8ページ、1行から10ページ、10行までの節に記載されているような温度で、圧力でおよび滞留時間で、ある触媒濃度について実施されてもよい。
【0105】
本発明によるジクロロプロパノールの製造方法では、塩素化剤との反応は、その内容が参照により本明細書に援用される、SOLVAY SAの国際公開第2007/054505号パンフレット、特に1ページ、24行から6ページ、18行までの節に記載されているように実施されてもよい。
【0106】
本発明によるジクロロプロパノールの製造方法では、塩素化剤との反応は、その内容が参照により本明細書に援用される、SOLVAY SAの国際公開第2005/054167号パンフレット、特に11ページ、12〜36行の節に記載されているような溶媒の存在下に実施されてもよい。グリセロールのオリゴマーはそのような副生物であるとはみなされない。
【0107】
本発明によるジクロロプロパノールの製造方法では、塩素化剤との反応は、その内容が参照により本明細書に援用される、SOLVAY SAの国際公開第2006/100316号パンフレット、特に2ページ、18〜25行のおよび15ページ、32行から17ページ、33行までの節に記載されているようにグリセロール以外の重質化合物を含む液相の存在下に実施されてもよい。
【0108】
本発明によるジクロロプロパノールの製造方法では、塩素化剤との反応は、その内容が参照により本明細書に援用される、SOLVAY SAの国際公開第2008/145729号パンフレット、特に1ページ、30行から2ページ、33行まで、および6ページ、22行から14ページ、31行までの節に記載されているような撹拌システムでの撹拌下に実施されてもよい。
【0109】
本発明によるジクロロプロパノールの製造方法では、塩素化剤との反応は、その内容が参照により本明細書に援用される、SOLVAY SAの国際公開第2006/106154号パンフレット、特に1ページ、29行から2ページ、6行まで、および14ページ、15行から17ページ、10行までの節に記載されているような液体反応媒体中で実施されてもよい。
【0110】
本発明によるジクロロプロパノールの製造方法では、塩素化剤との反応は、その内容が参照により本明細書に援用される、SOLVAY SAの国際公開第2008/107468号パンフレット、特に1ページ、29行から4ページ、27行まで、および5ページ、34行から9ページ、17行までの節にその供給が記載されている反応器で実施されてもよい。
【0111】
本発明によるジクロロプロパノールの製造方法は、その内容が参照により本明細書に援用される、SOLVAY SAの国際公開第2005/054167号パンフレット、特に6ページ、3行から23行までの節に記載されているなどの、プロセス条件下に塩素化剤による腐食に耐性がある材料でできたまたはそれで被覆された装置で実施されてもよい。
【0112】
本発明によるジクロロプロパノールの製造方法は、その内容が参照により本明細書に援用される、SOLVAY SAの国際公開第2006/100317号パンフレット、特に23ページ、22行から27ページ、25行までの節に記載されているなどの、プロセス条件下に塩素化剤による腐食に耐性がある材料でできたまたはそれで被覆された装置で実施されてもよい。
【0113】
ポリアリールエーテルエーテルケトン(PEEK)およびエチレンとクロロトリフルオロエチレンとのコポリマー(E−CTFE)は、グリセロールの塩化水素化によるジクロロプロパノールの製造方法のための装置用の材料としてとりわけ好都合であるポリマーの例である。
【0114】
本発明によるジクロロプロパノールの製造方法は、その内容が参照により本明細書に援用される、SOLVAY SAのPCT/EP2008/062845、特に1ページ、30行から9ページ、17行まで、および19ページ、25行から20ページ、33行までの節に記載されているなどの、プロセス条件下に塩素化剤による腐食に耐性がある材料でできたまたはそれで被覆された装置で実施されてもよい。
【0115】
本発明によるジクロロプロパノールの製造方法では、塩素化反応は好ましくは液体反応媒体中で実施される。
【0116】
本発明によるジクロロプロパノールの製造方法では、塩素化反応は溶媒の存在下に実施されてもよい。
【0117】
本発明によるジクロロプロパノールの製造方法では、形成されたジクロロプロパノールは、任意の分離処理によって、例えば蒸留、ストリッピング、抽出または吸着によって反応媒体の他の成分から分離することができる。この処理後に、反応媒体の他の成分は、補助的な分離処理にかけられてもよい。反応媒体の他の成分の中に、例えば、グリセロールオリゴマーの様々な塩素化および/またはエステル化異性体などの重質生成物がある。グリセロールオリゴマーの塩素化および/またはエステル化異性体および、とりわけ、塩素化および/またはエステル化環状グリセロールオリゴマーおよびよりとりわけグリセロールの塩素化および/またはエステル化環状二量体はさらに、反応媒体の重質化合物の含有率の増加にかなり寄与し、反応媒体のパージの頻度の増加を必要とする。
【0118】
ジクロロプロパノールの製造のために本発明によるグリセロールとグリセロールの環状オリゴマーとを含む組成物を使用することの利点は、結果として、パージング操作の頻度が減少して、これらの重質生成物の、とりわけグリセロールの塩素化および/またはエステル化オリゴマーの、よりとりわけグリセロールの塩素化および/またはエステル化環状オリゴマーの、さらによりとりわけグリセロールの塩素化および/またはエステル化環状二量体の形成の抑制である。
【0119】
本発明によるジクロロプロパノールの製造方法では、反応混合物の他の化合物からのジクロロプロパノールの分離は、その内容が参照により本明細書に援用される、SOLVAY SAの国際公開第2005/054167号パンフレット、特に12ページ、1行から17ページ、20行までの節に記載されているように実施されてもよい。
【0120】
本発明によるジクロロプロパノールの製造方法では、反応混合物の他の化合物からのジクロロプロパノールの分離は、その内容が参照により本明細書に援用される、SOLVAY SAの国際公開第2006/100312号パンフレット、特に2ページ、3〜10行の、20ページ、28行〜28ページ、20行の節に記載されているように実施されてもよい。
【0121】
本発明によるジクロロプロパノールの製造方法では、反応混合物の他の化合物からのジクロロプロパノールの分離は、その内容が参照により本明細書に援用される、SOLVAY SAの国際公開第2006/100313号パンフレット、特に2ページ、1〜23行の、および21ページ、7行から25ページ、25行までの節に記載されているような方法に従って実施されてもよい。
【0122】
本発明によるジクロロプロパノールの製造方法では、反応混合物の他の化合物からのジクロロプロパノールの分離は、その内容が参照により本明細書に援用される、SOLVAY SAの国際公開第2006/100314号パンフレット、特に2ページ、6行〜3ページ、4行の、および18ページ、33行から22ページ、29行までの節に記載されているような方法に従って実施されてもよい。
【0123】
本発明によるジクロロプロパノールの製造方法では、反応混合物の他の化合物からのジクロロプロパノールの分離は、その内容が参照により本明細書に援用される、SOLVAY SAの国際公開第2006/100320号パンフレット、特に1ページ、30行から2ページ、23行まで、および6ページ、25行から10ページ、28行までの節に記載されているような方法に従って実施されてもよい。
【0124】
本発明によるジクロロプロパノールの製造方法では、反応混合物の他の化合物からのジクロロプロパノールの分離は、その内容が参照により本明細書に援用される、SOLVAY SAの国際公開第2006/100315号パンフレット、特に2ページ、3〜29行の、および23ページ、3行から24ページ、13行までの節に記載されているような方法に従って実施されてもよい。
【0125】
本発明によるジクロロプロパノールの製造方法では、反応混合物の他の化合物からのジクロロプロパノールの分離は、その内容が参照により本明細書に援用される、SOLVAY SAの国際公開第2008/110588号パンフレット、特に1ページ、31行から27ページ、25行までの節に記載されているような方法に従って実施されてもよい。
【0126】
本発明によるジクロロプロパノールの製造方法では、ジクロロプロパノールは一般的に、その内容が参照により本明細書に援用される、SOLVAY SAの国際公開第2006/100319号パンフレット、特に23ページ、34行から24ページ、29行までの節に記載されているように1,3−ジクロロプロパン−2−オールおよび2,3−ジクロロプロパン−1−オール異性体の混合物として得られる。
【0127】
本発明によるジクロロプロパノールの製造方法では、ジクロロプロパノールは、その内容が参照により本明細書に援用される、SOLVAY SAの国際公開第2006/100311号パンフレット、特に2ページ、22〜34行の、および22ページ、8行から23ページ、35行までの節に記載されているようにハロゲン化ケトンを含有してもよい。
【0128】
本発明によるジクロロプロパノールの製造方法では、装置壁と接触してきた水は、その内容が参照により本明細書に援用される、SOLVAY SAのFR 08/56059、特に1ページ、7行から16ページ、34行までの節に記載されているように処理されてもよい。
【0129】
さらに、本発明は、本発明によるジクロロプロパノールの製造方法に従って得られたジクロロプロパノールが脱塩化水素反応にかけられるエピクロロヒドリンの製造方法に関する。
【0130】
本発明によるジクロロプロパノールの脱塩化水素によるエピクロロヒドリンの製造方法は、その内容が参照により本明細書に援用される、SOLVAY SAの名義での国際公開第2005/054167号パンフレット、より具体的には、19ページ、12行から22ページ、30行までの節に記載されているなどの条件下に実施されてもよい。
【0131】
本発明によるジクロロプロパノールの脱塩化水素によるエピクロロヒドリンの製造方法は、その内容が参照により本明細書に援用される、SOLVAY SAの名義での国際公開第2006/100311号パンフレット、より具体的には、2ページ、22〜25行の、および22ページ、28行から23ページ、35行までの節に記載されているなどの条件下に実施されてもよい。
【0132】
本発明によるジクロロプロパノールの脱塩化水素によるエピクロロヒドリンの製造方法は、その内容が参照により本明細書に援用される、SOLVAY SAの名義での国際公開第2008/101866号パンフレット、より具体的には、2ページ、1行から13ページ、16行までの節に記載されているなどの条件下に実施されてもよい。
【0133】
本発明によるジクロロプロパノールの脱塩化水素によるエピクロロヒドリンの製造方法は、その内容が参照により本明細書に援用される、SOLVAY SAの名義での国際公開第2008/152045号パンフレット、より具体的には、9ページ、22行から13ページ、31行までの節に記載されているなどの条件下に実施されてもよい。
【0134】
本発明によるジクロロプロパノールの脱塩化水素によるエピクロロヒドリンの製造方法は、その内容が参照により本明細書に援用される、SOLVAY SAの名義での国際公開第2008/152043号パンフレット、より具体的には、6ページ、16行から7ページ、22行までの節に記載されているなどの条件下に実施されてもよい。
【0135】
本発明によるジクロロプロパノールの脱塩化水素によるエピクロロヒドリンの製造方法は、その内容が参照により本明細書によって援用される、SOLVAY SAの名義での国際公開第2006/106155号パンフレット、より具体的には2ページ、26〜31行の、および22ページ、10行から23ページ、19行までの節に記載されているようなクロロヒドリンを製造するための全体的スキームに統合されてもよい。
【0136】
本発明によるジクロロプロパノールの脱塩化水素によるエピクロロヒドリンの製造方法はまた、その内容が参照により本明細書によって援用される、SOLVAY SAの名義での国際公開第2006/100318号パンフレット、より具体的には2ページ、23行〜3ページ、26行の、および24ページ、17行から31ページ、18行までの節に記載されているように実施されてもよい。
【0137】
本発明によるジクロロプロパノールの脱塩化水素によるエピクロロヒドリンの製造方法はまた、その内容が参照により本明細書によって援用される、SOLVAY SAの名義でのEP 08150925.9、より具体的には1ページ、18行から12ページ、10行までの節に記載されているなどの、水廃液の処理工程を含んでもよい。
【0138】
本発明によるジクロロプロパノールの脱塩化水素によるエピクロロヒドリンの製造方法では、ジクロロプロパノールの別の部分はグリセロール塩素化以外の方法によって得られてもよい。この方法は、塩化アリル次亜塩素酸化法およびアリルアルコール塩素化法から選択されてもよい。
【0139】
さらに、本発明は、本発明に従って得られたジクロロプロパノールを脱塩化水素反応にかけることによって得ることができるエピクロロヒドリンに関する。
【0140】
本発明によるエピクロロヒドリンは一般的に、不純物として、エピクロロヒドリンそれ自体以外の少なくとも1つの他の化合物を含む。その化合物は、
・ 粗式(crude formula)CCl、CClO、CClO、CO、C10O、C、CCl、CCl、C10O、C10、C10Cl、C12O、C13Br、CH1O、C10O、CH1、CCl、C10、CH1ClO、C15ClおよびC17Clの化合物、
・ 炭化水素、とりわけ、メチルシクロペンタンおよびエチルベンゼン、
・ ケトン、とりわけ、アセトン、シクロペンタノン、2−ブタノン、シクロヘキサノン、2,3−ペンタンジオン、2−メチル−2−シクロペンテン−1−オン、3,5−ジメチル−2−シクロヘキセン−1−オン、粗式C10O、C12OおよびC10のケトン、1−フェノキシ−2−プロパノン、ヒドロキシアセトン、
・ 3〜18個の炭素原子を含むハロゲン化ケトン、より具体的には、塩素化ケトン、さらにより具体的には、クロロアセトンおよびクロロブタノン、
・ アルデヒド、とりわけ、アセトアルデヒド、イソブタナール、イソペンタナール、ヘキサナールおよびアクロレイン、
・ エーテル、とりわけ
○クロロエーテル、より具体的には粗式
13ClO、C10Cl、C12ClO、C12Cl、C12ClおよびC11Cl
の塩素化エーテル
○アルキルグリシジルエーテル、より具体的には、メチルグリシジルエーテル、エチルグリシジルエーテル、プロピルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、ジグリシジルエーテル、およびさらにより特にメチルグリシジルエーテル、
○環状エーテル、より具体的にはオキセタンおよびエポキシド、その中でより具体的にはグリシドール、ブロモエポキシプロパン、ジクロロエポキシプロパン、1,2−エポキシヘキサン、プロピレンオキシドおよび2,3−エポキシ−ブタン、
・ アルコール、より具体的には
○1−プロパノール、2−プロパノール、アリルアルコールおよびグリセロールなどの、脂肪族アルコール、
○フェノールなどの芳香族アルコール、
・ ハロゲン化炭化水素、より具体的にはハロゲン化脂肪族炭化水素、さらにより具体的には
○ジブロモクロロメタンなどの、ブロモクロロメタン類、
○ジクロロメタン、トリクロロメタンおよびテトラクロロメタンなどのクロロメタン類、
○1,1−ジクロロエタンおよび1,2−ジクロロエタンなどのジクロロエタン類、
○1,2,3−トリクロロプロパン、1,1,3−トリクロロプロパン、1,1,2−トリクロロプロパンおよび1,2,2−トリクロロプロパンなどの、トリクロロプロパン類、
○1,3−ジクロロプロパン、1,2−ジクロロプロパンおよび2,2−ジクロロプロパンなどのジクロロプロパン類、
○2−クロロプロパンおよび1−クロロプロパンなどのモノクロロプロパン類、
○1,3,3−トリクロロプロペン シスおよびトランス、1,2,3−トリクロロプロペン シスおよびトランス、ならびに1,1,3−トリクロロプロペンなどのトリクロロプロペン類、
○1,3−ジクロロ−1−プロペン シスおよびトランス、3,3−ジクロロ−1−プロペンならびに2,3−ジクロロ−1−プロペンなどのジクロロプロペン類、
○2−クロロ−1−プロペン、1−クロロ−1−プロペン シスおよびトランスならびに3−クロロ−1−プロペンなどの、モノクロロプロペン類、
・ ハロゲン化炭化水素、より具体的にはハロゲン化芳香族炭化水素、さらにより具体的には
○モノクロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン、テトラクロロベンゼン、ペンタクロロベンゼンおよびヘキサクロロベンゼンなどの、クロロベンゼン類、
○モノクロロナフタレン、ジクロロナフタレン、トリクロロナフタレン、テトラクロロナフタレン、ペンタクロロナフタレンおよびヘキサクロロナフタレンなどの、クロロナフタレン類、
・ クロロアルコール、より具体的には、
○2−クロロエタノール、
○3−クロロ−1,2−プロパンジオールおよび2−クロロ−1,3−プロパンジオールなどの、モノクロロプロパンジオール類、
○1,3−ジクロロ−2−プロパノールおよび2,3−ジクロロ−1−プロパノールなどの、ジクロロプロパノール類、
○ブロモクロロプロパノール類、
○3−クロロ−1−プロパノールなどの、モノクロロプロパノール類、
・ 2−クロロ−2−プロペン−1−オールおよび3−クロロ−2−プロペン−1−オール シスおよびトランスなどのモノクロロプロペノール類、
・ 水、
・ 塩化ナトリウム、塩化カルシウムおよび水酸化ナトリウムなどの塩
から選択することができる。
【0141】
本発明によるエピクロロヒドリン中のそれらの不純物の含有率は、その内容が参照により本明細書に援用される、SOLVAY SAの国際公開第2006/100311号パンフレット、より具体的には22ページ、8行から12行までの節に記載されているようなものである。
【0142】
本発明によるエピクロロヒドリン中のそれらの不純物の含有率は、その内容が参照により本明細書に援用される、SOLVAY SAの国際公開第2008/101866号パンフレット、より具体的には13ページ、28行から16ページ、15行までの節に、16ページ、28〜33行に、および17ページ、10〜13行に、ならびに表1に、ページ21、表2に、ページ22、表3に、ページ23、表4に、ページ24、および表6に、ページ25および26に記載されているようなものである。
【0143】
本発明によるエピクロロヒドリン中のそれらの不純物の含有率は、その内容が参照により本明細書に援用される、SOLVAY SAの国際公開第2008/152045号パンフレット、より具体的には2ページ、29行から9ページ、21行まで、14ページ、1行から17ページ、14行までの節に、ならびに表1に、63および64ページ、表6に、70および71ページ、および表7に、74および75ページに記載されているようなものである。
【0144】
本発明によるエピクロロヒドリン中のそれらの不純物の含有率は、その内容が参照により本明細書に援用される、SOLVAY SAの国際公開第2008/152044号パンフレット、より具体的には2ページ、14行から10ページ、14行までの節に、ならびに表1に、44および45ページ、表6に、51および52ページ、および表7に、55および56ページに記載されているように記載されているようなものである。
【0145】
本発明によるエピクロロヒドリン中の粗式CClOの化合物の含有率は、一般的に0.001mg/kg以上である。この含有率は、一般的に0.5g/kg以下、しばしば0.1g/kg以下、頻繁に0.05g/kg以下、より特に0.01g/kg以下である。
【0146】
本発明によるエピクロロヒドリン中の粗式C10Oの化合物の含有率は、一般的に0.001mg/kg以上である。この含有率は、一般的に0.5g/kg以下、しばしば0.1g/kg以下、頻繁に0.05g/kg以下、より特に0.01g/kg以下である。
【0147】
本発明によるエピクロロヒドリン中の粗式C10の化合物の含有率は、一般的に0.001mg/kg以上である。この含有率は、一般的に0.5g/kg以下、しばしば0.1g/kg以下、頻繁に0.05g/kg以下、より特に0.01g/kg以下である。
【0148】
本発明によるエピクロロヒドリン中の粗式C12Oの化合物の含有率は、一般的に0.001mg/kg以上である。この含有率は、一般的に0.5g/kg以下、しばしば0.1g/kg以下、頻繁に0.05g/kg以下、より特に0.01g/kg以下である。
【0149】
本発明によるエピクロロヒドリン中の2,3−ペンタンジオンの含有率は、一般的に0.001mg/kg以上である。この含有率は、一般的に0.8g/kg以下、通常0.6g/kg以下、多くの場合に0.5g/kg以下、しばしば0.4g/kg以下、一般に0.2g/kg以下、頻繁に0.05g/kg以下、特に0.01g/kg以下、より特に0.001g/kg以下である。
【0150】
本発明によるエピクロロヒドリン中のクロロブタノンの含有率は、一般的に0.001mg/kg以上である。この含有率は、一般的に0.8g/kg以下、通常0.6g/kg以下、多くの場合に0.5g/kg以下、しばしば0.4g/kg以下、一般に0.2g/kg以下、頻繁に0.05g/kg以下、特に0.01g/kg以下、より特に0.001g/kg以下である。
【0151】
本発明によるエピクロロヒドリン中のヘキサナールの含有率は、一般的に0.001mg/kg以上である。この含有率は、一般的に0.8g/kg以下、通常0.6g/kg以下、多くの場合に0.5g/kg以下、しばしば0.4g/kg以下、一般に0.2g/kg以下、頻繁に0.05g/kg以下、特に0.01g/kg以下、より特に0.001g/kg以下である。
【0152】
本発明によるエピクロロヒドリン中の粗式C13ClOのクロロエーテルの含有率は、一般的に0.001mg/kg以上である。この含有率は、一般的に0.8g/kg以下、通常0.6g/kg以下、多くの場合に0.5g/kg以下、しばしば0.4g/kg以下、一般に0.2g/kg以下、頻繁に0.05g/kg以下、特に0.01g/kg以下、より特に0.001g/kg以下である。
【0153】
本発明によるエピクロロヒドリン中の粗式C12Clのクロロエーテルの含有率は、一般的に0.001mg/kg以上である。この含有率は、一般的に0.8g/kg以下、通常0.6g/kg以下、多くの場合に0.5g/kg以下、しばしば0.4g/kg以下、一般に0.2g/kg以下、頻繁に0.05g/kg以下、特に0.01g/kg以下、より特に0.001g/kg以下である。
【0154】
本発明によるエピクロロヒドリン中のジグリシジルエーテルの含有率は、一般的に0.001mg/kg以上である。この含有率は、一般的に0.8g/kg以下、通常0.6g/kg以下、多くの場合に0.5g/kg以下、しばしば0.4g/kg以下、一般に0.2g/kg以下、頻繁に0.05g/kg以下、特に0.01g/kg以下、より特に0.001g/kg以下である。
【0155】
本発明によるエピクロロヒドリン中の1−プロパノールの含有率は、一般的に0.001mg/kg以上である。この含有率は、一般的に0.8g/kg以下、通常0.6g/kg以下、多くの場合に0.5g/kg以下、しばしば0.4g/kg以下、一般に0.2g/kg以下、頻繁に0.05g/kg以下、特に0.01g/kg以下、より特に0.001g/kg以下である。
【0156】
本発明によるエピクロロヒドリン中の1,1−ジクロロエタンの含有率は、一般的に0.001mg/kg以上である。この含有率は、一般的に0.8g/kg以下、通常0.6g/kg以下、多くの場合に0.5g/kg以下、しばしば0.4g/kg以下、一般に0.2g/kg以下、頻繁に0.05g/kg以下、特に0.01g/kg以下、より特に0.001g/kg以下である。
【0157】
本発明によるエピクロロヒドリン中のブロモクロロプロパノール類の含有率は、一般的に0.001mg/kg以上である。この含有率は、一般的に0.8g/kg以下、通常0.6g/kg以下、多くの場合に0.5g/kg以下、しばしば0.4g/kg以下、一般に0.2g/kg以下、頻繁に0.05g/kg以下、特に0.01g/kg以下、より特に0.001g/kg以下である。
【0158】
本発明によるエピクロロヒドリン中のブロモエポキシプロパンの含有率は、一般的に0.001mg/kg以上である。この含有率は、一般的に0.8g/kg以下、通常0.6g/kg以下、多くの場合に0.5g/kg以下、しばしば0.4g/kg以下、一般に0.2g/kg以下、頻繁に0.05g/kg以下、特に0.01g/kg以下、より特に0.001g/kg以下である。
【0159】
本発明はまた、エポキシ樹脂もしくはグリシジルエーテルもしくはグリシジルエステルもしくはグリシジルアミドもしくはグリシジルイミドもしくはグリシジルアミンまたは凝固剤もしくは耐水性樹脂もしくはカチオン化剤もしくは難燃剤として使用することができる製品または洗剤用の成分もしくはエピクロロヒドリンエラストマーもしくはハロゲン化ポリエーテル−ポリオールもしくはモノクロロプロパンジオール、好ましくは3−クロロ−1,2−プロパンジオールの製造方法であって、本発明によるエピクロロヒドリンが、モノアルコール、モノカルボン酸、ポリオール、ポリアミン、アミノアルコール、ポリイミド、ポリアミド、ポリカルボン酸、アンモニア、アミン、ポリアミノアミド、ポリイミン、アミン塩、リン酸、リン酸塩、オキシ塩化リン、リン酸エステル、ホスホン酸、ホスホン酸のエステル、ホスホン酸の塩、ホスフィン酸、ホスフィン酸のエステル、ホスフィン酸の塩、ホスフィンオキシド、ホスフィン、エトキシル化アルコール、アルキレンまたはフェニレンオキシド、およびこれらの化合物の少なくとも2つの混合物から選択される少なくとも1つの化合物との反応にかけられるか、または本発明によるエピクロロヒドリンがホモ重合反応にかけられるか、またはエピクロロヒドリンがオリゴマー化の、共オリゴマー化の、縮合の、脱塩化水素の、および、水での、または任意選択的にハロゲン化されていてもならびに/またはエーテルオキシド結合および/またはその後の段階でハロゲン化されることができる二重結合を有してもよいジ−もしくはポリヒドロキシル化化合物での加水分解の反応にかけられるか、または本発明によるエピクロロヒドリンが水との反応にかけられる方法に関する。
【0160】
加えて、本発明はまた、エポキシ樹脂もしくはグリシジルエーテルもしくはグリシジルエステルもしくはグリシジルアミドのまたはグリシジルイミドのまたはグリシジルアミンの、または凝固剤もしくは耐水性樹脂もしくはカチオン化剤もしくは難燃剤として使用することができる製品または洗剤用の成分もしくはエピクロロヒドリンエラストマーもしくはハロゲン化ポリエーテル−ポリオールもしくはモノクロロプロパンジオール、好ましくは3−クロロ−1,2−プロパンジオールの製造での、本発明によるエピクロロヒドリンの使用に関する。
【0161】
エポキシ樹脂もしくはグリシジルエーテルもしくはグリシジルエステルもしくはグリシジルアミドまたはグリシジルイミドまたはグリシジルアミンまたは凝固剤もしくは耐水性樹脂もしくはカチオン化剤もしくは難燃剤として使用することができる製品または洗剤用の成分もしくはエピクロロヒドリンエラストマーは、その内容が参照により本明細書に援用される、SOLVAY SAの名義での国際公開第2008/152045号パンフレット、より具体的には32ページ、6行から62ページ、34行までの節に記載されているなどの方法に従って得られてもよい。
【0162】
エポキシ樹脂もしくはグリシジルエーテルもしくはグリシジルエステルもしくはグリシジルアミドまたはグリシジルイミドまたはグリシジルアミンまたは凝固剤もしくは耐水性樹脂もしくはカチオン化剤もしくは難燃剤として使用することができる製品または洗剤用の成分もしくはエピクロロヒドリンエラストマーは、その内容が参照により本明細書に援用される、SOLVAY SAの名義での国際公開第2008/152044号パンフレット、より具体的には13ページ、22行から44ページ、8行までの節に記載されているなどの方法に従って得られてもよい。
【0163】
ハロゲン化ポリエーテル−ポリオールは、硬質または半硬質ポリウレタンフォームの製造に、より特に、かかる耐火性ポリウレタンフォームの製造に使用することができる。
【0164】
ハロゲン化ポリエーテル−ポリオールは、その内容が参照により本明細書に援用される、SOLVAY & Cieの名義での仏国特許出願第2180138号明細書、より具体的には4ページ、24行から7ページ、19行までの節に記載されているなどの方法によって得ることができる。
【0165】
本発明の目的を形成する塩素化ポリエーテルポリオールは、オリゴマー化、共オリゴマー化、縮合、脱塩化水素、および加水分解によって得られてもよく、出発原料は、一方ではエピクロロヒドリンを、他方では水またはジ−もしくはポリヒドロキシル化化合物を含み、ヒドロキシル化化合物は任意選択的にハロゲン化されていてもよいし、および/またはエーテルオキシド結合および/または当業者によく知られる方法に従ってその後の段階でハロゲン化することができる二重結合を有してもよい。
【0166】
操作の好適なモードは、一般式:
【化1】

(式中、鎖当たりの平均値x+yが0〜12であり、かつ、z(x+y)(ここで、x+yは全体分子におけるx+yの平均値を表す)が1〜72であるように、zは2〜6の数であり、xおよびyは0〜12の数を表し、そしてZは、任意選択的にハロゲン化されていてもよい飽和もしくは不飽和の原子価zの有機基を表す)
のエピクロロヒドリンオリゴマーのジ−もしくはポリグリシジルエーテルの希酸媒体中の加水分解を含む。
【0167】
この加水分解は、より多くの塩素およびより少ないヒドロキシル官能基を含有する塩素化ポリエーテルポリオールを形成して鎖の延長につながる第2縮合反応を伴う可能性がある。
【0168】
その存在がさらに処理される生成物の合成に少しも有害ではない、アルファ−ジオール基を含有する同様に塩素化ポリエーテルポリオールであるこれらの生成物を分離することは必須であるわけではない。
【0169】
エピクロロヒドリンオリゴマーのジ−およびポリグリシジルエーテルの加水分解は、硝酸または過塩素酸媒体中で有利に達成される。
【0170】
加水分解のために使用されるべき水および酸の量は、かなりの程度変わってもよい。それらはとりわけ、反応期間およびまた第2縮合反応の速度に影響を及ぼす。ジ−もしくはポリグリシジルエーテルの1モル当たり1.2×10−2〜2.5×10−2モルの硝酸および1〜10kgの水を使用することが有利である。
【0171】
加水分解反応は、反応媒体の沸騰温度でかき混ぜながら実施される。反応の終わりは、残存オキシラン酸素の測定によって見つけられる。
【0172】
冷却後に、反応生成物は、最も軽質のものであり、かつ、ほとんどのヒドロキシル官能基を有する塩素化ポリエーテルポリオールを含有する水相と、最も重質のものであり、かつ、ほとんどのハロゲンを含有するハロゲン化ポリエーテルポリオールを含有する濃密な水飽和有機相とを含む、2相系の形態にあってもよい。それらが含有するポリエーテルポリオールを単離するためにこれらの2相を分離すること、およびそれらを別々に処理することは必須であるわけではない。
【0173】
上記の操作のモードは、最初のグリシジルエーテルのおよび/または加水分解条件の適切な選択によって決定されるハロゲンおよびヒドロキシル官能基の可変の相対的な含有率を有する、「目標にしたがって」ハロゲン化されたポリエーテルポリオールの製造に好適である。
【0174】
エピクロロヒドリンオリゴマーのジ−およびポリグリシジルエーテルは、水または飽和もしくは不飽和であっても、ハロゲン化もしくは非ハロゲン化されていてもよい、および脂肪族、脂環式、もしくは芳香族性の、ジ−もしくはポリヒドロキシル化合物によって開始されるエピクロロヒドリンのオリゴマー化から生じた末端クロロヒドリン基を有する塩素化ポリエーテルポリオールの、アルカリ性媒体中での脱塩化水素によって、それ自体公知の方法で得られる。
【0175】
上式に従った第1タイプのジ−およびポリグリシジルエーテルは、その式が非ハロゲン化基Zを含有するものを含む。それらは、エチレングリコール、プロピレングリコール、およびヘキサメチレングリコール、グリセリン、ブタントリオールおよびヘキサントリオール、トリメチロールプロパン、エリスリトールおよびペンタエリスリトール、マンニトールおよびソルビトール、レゾルシノール、カテコール、ヒドロキノン、ビスフェノールA、ジ−およびトリ−エチレングリコール、ジ−またはトリ−プロピレングリコール、2−ブテン−1,4−ジオール、3−ブテン−1,2−ジオール、2−ブチン−1,4−ジオール、3−ブチン−1,2−ジオール、1,5−ヘキサジエン−3,4−ジオール、2,4−ヘキサジエン−1,6−ジオール、1,5−ヘキサジイン−3,4−ジオール、2,4−ヘキサジイン−1,6−ジオールなどの、飽和または不飽和ポリオールによって開始されるエピクロロヒドリンの接触オリゴマー化から生じる塩素化ポリエーテルポリオールの脱塩化水素によって得られる。
【0176】
とりわけ好ましいポリオールは、脂肪族ポリオール、とりわけ2−ブテン−1,4−ジオールおよび2−ブチン−1,4−ジオール、エチレングリコール、およびグリセリンである。これらの最後に述べられた開始剤の使用は、式中Zがそれぞれその基を表す、上に示された一般式に相当するジ−およびポリグリシジルエーテルの取得につながる。
【0177】
より高いハロゲン含有率を有するポリエーテルポリオールにつながる第2タイプのジ−およびポリグリシジルエーテルは、上に示されたそれらの式がハロゲン化基Zを含有するものを含み、このハロゲンは塩素および臭素を含む群から選択される。それらは、グリセロールモノクロロ−およびモノブロモヒドリン、3,4−ジブロモ−1,2−ブタンジオール、2,3−ジブロモ−1,4−ブタンジオール、2,3−ジブロモ−2−ブテン−1,4−ジオール、3,4−ジブロモ−2−ブテン−1,2−ジオール、2,2(ビス)ブロモメチル−1,3−プロパンジオール、1,2,5,6−テトラブロモ−3,4−ヘキサンジオールなどの、飽和または不飽和ハロゲン化ポリオールによって開始されるエピクロロヒドリンの接触オリゴマー化から生じる塩素化ポリエーテルポリオールの脱塩化水素によって得られてもよい。
【0178】
エピクロロヒドリンのオリゴマー化はまた、臭素化および/または不飽和ジオールの混合物によって開始されてもよい。
【0179】
エピクロロヒドリンおよび開始剤ポリオールのモル比は決定的に重要であるわけではなく、広範囲内で変わってもよい。この比は、生じるポリエーテルポリオールのヒドロキシル指数に影響を及ぼす。
【0180】
オリゴマー化触媒は、このタイプの反応について知られる酸触媒のいずれかであってもよい。それにもかかわらず、遊離のまたは錯化状態の三フッ化ホウ素を使用することが好ましい。
【0181】
臭素化エピクロロヒドリンオリゴマーのジ−およびポリグリシジルエーテルはまた、不飽和ジ−もしくはポリヒドロキシル化合物によって開始されるエピクロロヒドリンの接触オリゴマー化から生じる不飽和塩素化ポリエーテルポリオールのアルカリ性媒体中での脱塩化水素によって得られた不飽和エピクロロヒドリンオリゴマーのジ−もしくはポリグリシジルエーテルの部分もしくは完全分子臭素化によって得られる。
【0182】
さらに、本発明のポリエーテルポリオールのハロゲン含有率、およびその結果としてそれらから誘導されたポリウレタンの難燃性は、これらのポリエーテルポリオールがまた不飽和を有する場合にこれらの不飽和の部分もしくは完全臭素化によって、さらにもっと高めることができる。この方法によって、一般式
【化2】

(式中、x、y、およびzは上に示された定義に相当し、Yは、不飽和の原子価zの有機基を表す)
の不飽和エピクロロヒドリンオリゴマーのジ−もしくはポリグリシジルエーテルの希酸媒体中での加水分解から生じた不飽和ポリオールは臭素化される。
【0183】
ポリエーテルポリオールおよびグリシジルエーテルの臭素化の方法は、決定的に重要であるわけではない。任意選択的に触媒のおよびクロロホルム、四塩化炭素、塩化メチレン、またはo−ジクロロベンゼンなどの不活性溶媒の存在下に、それ自体公知の方法で行うことが可能である。
【0184】
温度は一般的に50〜60℃より下に保たれる。
【0185】
使用される臭素の量は決定的に重要であるわけではない。それにもかかわらず、ほとんど化学量論量の臭素を使用することが好ましい。
【0186】
とりわけ好ましいポリエーテルポリオールは、Zが、CHCl−CH(CH−)−、−CH−CHBr−CHBr−CH−、−CH−CBr=CBr−CH−基を表す一般式に相当する。
【0187】
モノクロロプロパンジオール、とりわけ3−クロロ−1,2−プロパンジオールまたはグリセロールのα−モノクロロヒドリンは、その内容が参照により本明細書に援用される、米国特許第2,321,037号明細書、より具体的には2ページ、左列、65行から3ページ、左列、2行までに記載されているなどの方法に従って得ることができる。
【0188】
エピクロロヒドリンの加水分解または水和反応は、中程度に高い温度で、酸触媒または酸として働く触媒の存在下に水で実施される。
【0189】
この触媒は、酸、酸塩、酸として反応する物質または反応の条件下に酸触媒として働くことができる物質であることができる。好適な触媒には、硫酸、リン酸、メタリン酸、亜リン酸、ピロリン酸、ピロ硫酸、硝酸、過塩素酸などの、強鉱酸が含まれる。他の好適な化合物は、例えば、塩化スルフリル、オキシ塩化硫黄、オキシ臭化硫黄(臭化チオニル)、二酸化窒素、三酸化窒素、塩化ニトロシル、オキシ塩化リン、三塩化リン、五塩化リンである。好適な無機酸として働く塩は、例えば、硫酸亜鉛、リン酸亜鉛、硫酸第二鉄、硫酸アルミニウム、硫酸水素ナトリウム、リン酸一水素および二水素ナトリウムである。ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸、吉草酸、安息香酸ならびにそれらの同族体および類似体などの一塩基性有機酸を用いることもまた可能である。例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸などの多塩基性酸、または、乳酸、クエン酸、リンゴ酸、メソキサル酸などのヒドロキシルおよび/またはカルボニル置換酸を用いることもまた可能である。さらに、有機エステル、塩ならびに例えば、ベンゼンスルホン酸、およびその同族体および類似体、ジアルキル硫酸およびアルキル酸硫酸、アルキル化リン酸およびスルホン酸、ハロゲン化有機酸、スルホ酢酸、酸ハロゲン化物およびアニリン−塩酸などのような化合物などの、操作の条件下に酸触媒として働くことができる化合物を使用することもまた可能である。一般に、より弱い酸触媒の使用は通常、同じ程度の触媒活性を得るためにより高い濃度でのその適用かまたはより高い温度下の操作を必要とする。
【0190】
エピクロロヒドリンの加水分解または水和反応温度は、一般に25〜100℃から構成される。しかしながら、より高い温度および反応剤のより短い接触時間は、反応を加速することが望ましいときに用いられてもよい。
【0191】
水和反応は、反応混合物の還流温度で任意の圧力で、例えば、大気圧で、または反応混合物の温度が約100℃もしくはそれより高いときには超大気圧で実施することができる。
【0192】
エピクロロヒドリンの加水分解は一般に、非常に高い水対エポキシドモル割当量を維持しながら実施され、この比は、少なくとも10:1およびさらにより高いものである。
【0193】
エピクロロヒドリンの水和は、連続モード下にまたは不連続モード下に実施することができる。
【0194】
反応混合物は、撹拌されてもされなくもよい。
【0195】
反応生成物、水および酸触媒を含む、得られた反応混合物は、例えば酸触媒の中和操作、引き続く蒸留操作によってなどの、任意の手段によって分離することができる。
【0196】
水和反応を制御するために、エピクロロヒドリンを徐々に酸含有水中へ導入し、それによってエピクロロヒドリンの均一なおよび制御可能な水和を可能にすることが好ましい。水和反応は、酸として働く触媒を含有する水の比較的大きい本体を構築し、この水溶液を記載された最適温度に維持し、そしてエピクロロヒドリンを、撹拌しながら徐々に導入することによって達成され、このように加えられるエピクロロヒドリンの量は、水対反応容器へ導入される全エピクロロヒドリンのモル比が少なくとも10:1、そして好ましくは10:1を超えるように調節される。エピクロロヒドリンの全体の添加後に、混合物は連続的にかき混ぜられ、水和反応を起こらせるのに十分な時間前述の中程度の温度に維持され、その後所望の生成物は、それらを無水状態で得ることが好ましい場合には別々に回収される。
【0197】
得られた反応混合物は、用いられた酸触媒に対して僅かに過剰量の、炭酸カルシウムなどの、塩基性または塩基性として働く物質の添加によって先ず中和されてもよい。中和塩基性剤として、それら自体が反応混合物に不溶性かまたは実質的に不溶性であり、かつ、不溶性かまたは実質的に不溶性の塩を形成する塩基性または塩基性として働く物質を用いることが好ましい。
【0198】
中和された反応混合物は次に、連続または不連続モード下に、好ましくは減圧下に蒸留されてもよい。不連続モード下で、第1留出物は、少量のモノクロロプロパンジオール、通常2〜5重量%のおよび微量のエピクロロヒドリンおよびジクロロプロパノールを含んでもよい水相である。この水相は、エピクロロヒドリンの水和のさらなる反応に再使用することができる。第2留出物は、本質的に無水の3−クロロ−1,2−プロパンジオールからなる。
【0199】
3−クロロ−1,2−プロパンジオールまたはグリセロールのα−モノクロロヒドリンは、グアフェネシン(guafenesin)(グリセロールとグアヤコールとのエーテル)、咳シロップに添加される去咳薬などのグリセロールα−モノエーテルの製造のために例えば化粧品および医薬品において、ならびにα−モノエステル(モノグリセリド)の製造において使用される合成中間体である。このグリセロールモノクロロヒドリンはまた、3−アミノ−1,2−プロパンジオール(イソセリノール)、X線コントラスト剤の合成用出発原料などの、アミノプロパンジオール誘導体の製造用に使用されてもよい。このグリセロールモノクロロヒドリンはまた、ビニルポリマーでの安定剤としておよび他の化学薬品の製造用の中間体として使用されるグリシドールへ変換されてもよい。最後に、幾つかの第四級アンモニウム化合物およびポリヒドロキシエステルもまた、このグリセロールモノクロロヒドリンから得られてもよい。
【0200】
本発明はさらに、グリセロールが反応媒体中で塩素化剤と反応させられるジクロロプロパノールの製造方法であって、グリセロールの環状オリゴマーの量とグリセロールの量およびグリセロールの環状オリゴマーの量の合計との比が0.01g/kg以上および20g/kg以下である方法に関する。
【0201】
ジクロロプロパノールの製造方法についての条件は上記の通りである。
【0202】
本発明はまた、前述の方法で得られたジクロロプロパノールが脱塩化水素反応にかけられるエピクロロヒドリンの製造方法に関する。
【0203】
エピクロロヒドリンの製造方法についての条件は上記の通りである。
【0204】
本発明はさらに、エピクロロヒドリンの先の製造方法から得ることができるエピクロロヒドリンに関する。
【0205】
このエピクロロヒドリンの特性は全て上記の通りである。
【0206】
本発明はまた、エピクロロヒドリンの先の製造方法を含む、エポキシ樹脂もしくはグリシジルエーテルもしくはグリシジルエステルもしくはグリシジルアミドもしくはグリシジルイミドもしくはグリシジルアミンまたは凝固剤もしくは耐水性樹脂もしくはカチオン化剤もしくは難燃剤として使用することができる製品または洗剤用の成分もしくはエピクロロヒドリンエラストマーもしくはハロゲン化ポリエーテル−ポリオールもしくはモノクロロプロパンジオール、好ましくは3−クロロ−1,2−プロパンジオールの製造方法であって、エピクロロヒドリンが、モノアルコール、モノカルボン酸、ポリオール、ポリアミン、アミノアルコール、ポリイミド、ポリアミド、ポリカルボン酸、アンモニア、アミン、ポリアミノアミド、ポリイミン、アミン塩、リン酸、リン酸塩、オキシ塩化リン、リン酸エステル、ホスホン酸、ホスホン酸のエステル、ホスホン酸の塩、ホスフィン酸、ホスフィン酸のエステル、ホスフィン酸の塩、ホスフィンオキシド、ホスフィン、エトキシル化アルコール、アルキレンまたはフェニレンオキシド、およびこれらの化合物の少なくとも2つの混合物から選択される少なくとも1つの化合物との反応にかけられるか、またはエピクロロヒドリンがホモ重合反応にかけられるか、またはエピクロロヒドリンがオリゴマー化の、共オリゴマー化の、縮合の、脱塩化水素の、および、水での、または任意選択的にハロゲン化されていてもならびに/またはエーテルオキシド結合および/またはその後の段階でハロゲン化されることができる二重結合を有してもよいジ−もしくはポリヒドロキシル化化合物での加水分解の反応にかけられるか、またはエピクロロヒドリンが水との反応にかけられる方法に関する。
【0207】
エピクロロヒドリン誘導体の製造方法についての条件は上記の通りである。
【0208】
本発明は最後に、エポキシ樹脂もしくはグリシジルエーテルもしくはグリシジルエステルもしくはグリシジルアミドもしくはグリシジルイミドもしくはグリシジルアミンの、または凝固剤もしくは耐水性樹脂もしくはカチオン化剤もしくは難燃剤として使用することができる製品または洗剤用の成分もしくはエピクロロヒドリンエラストマーもしくはハロゲン化ポリエーテル−ポリオールもしくはモノクロロプロパンジオール、好ましくは3−クロロ−1,2−プロパンジオールの製造での先の方法で得られるエピクロロヒドリンの使用に関する。下の実施例は本発明を例示することを意図されるが、本発明を限定するものではない。
【実施例】
【0209】
実施例1(本発明による)
7.3%w/wアジピン酸を含有するグリセロールとアジピン酸との混合物を、0.40g/kgのジグリセロールと0.02g/kgの環状ジグリセロールとを含有するグリセリンへのアジピン酸の添加によって調製した。溶液の1kg当たり5.8モルの塩化水素の濃度の水性塩酸およびグリセロールの混合物を、それぞれ89.0g/hおよび25.8g/hの一定流量で、120℃の温度に温度調節された350mlガラス反応器へ導入した。大気圧で機能する反応器に、液体の一定容量を維持するためのオーバーフローシステムを備え付けた。蒸発した反応混合物留分を反応器から排出させ、周囲温度で凝縮させた。凝縮物は、反応しなかった塩酸のほとんどとジクロロプロパノール産物の一部とを含有する均一な水性相である。オーバーフロー出口で集められた液体混合物は、ジクロロプロパノール産物の残りを含有した。流れは反応器に全くリサイクルしなかった。このプロセスを平衡まで28.5hの間操作した。
【0210】
グリセロールおよび塩化水素の転化率は、それぞれ89.2%および67%であった。
【0211】
凝縮物およびオーバーフロー出口の流量および組成から推定される全ジクロロプロパノール生産性は、37.6gジクロロプロパノール/h/lであった。
【0212】
グリセロールオリゴマー(すなわち、ジグリセロール、環状ジグリセロール、ジグリセロールのモノクロロヒドリンおよびジクロロヒドリン)の選択率は、反応したグリセロールを基準として2.0%であった。
【0213】
オーバーフロー出口で集められた液体混合物中の全濃度は、ジグリセロール、環状ジグリセロール、ジグリセロールのモノクロロヒドリンおよびジクロロヒドリンとガスクロマトグラフィー(GC)分析で定量化されない重質生成物との合計について21g/kgであった。GC分析で定量化されない重質生成物のg/kg単位での濃度は、1000と、HCl、水ならびにGC分析での同定生成物(アジピン酸、グリセロール、グリセロールモノクロロヒドリン、グリセロールジクロロヒドリンおよびグリセロールのエステル、グリセロールモノクロロヒドリンならびにグリセロールジクロロヒドリン)の濃度の合計との差によって推定する。
【0214】
例2(本発明によらない)
7.3%w/wアジピン酸を含有するグリセロールとアジピン酸との混合物を、0.5g/kgのジグリセロールと23g/kgの環状ジグリセロールとを含有するグリセリンへのアジピン酸の添加によって調製した。溶液の1kg当たり5.8モルの塩化水素の濃度の水性塩酸およびグリセロールとアジピン酸との混合物を、それぞれ88.7g/hおよび25.9g/hの一定流量で、120℃の温度に温度調節される350mlガラス反応器へ導入した。大気圧で機能する反応器に、液体の一定容量を維持するためのオーバーフローシステムを備え付けた。蒸発した反応混合物留分を反応器から排出させ、周囲温度で凝縮させた。凝縮物は、反応しなかった塩酸のほとんどとジクロロプロパノール産物の一部とを含有する均一な水相である。オーバーフロー出口で集められた液体混合物は、ジクロロプロパノール産物の残りを含有した。流れは反応器に全くリサイクルしなかった。本プロセスを平衡まで33hの間操作した。
【0215】
グリセロールおよび塩化水素の転化率は、それぞれ88.1%および66%であった。
【0216】
凝縮物およびオーバーフロー出口の流量および組成から推定される全ジクロロプロパノール生産性は35.4gジクロロプロパノール/h/lであった。
【0217】
オリゴマー(すなわちジグリセロール、環状ジグリセロール、ジグリセロールのモノクロロヒドリンおよびジクロロヒドリン)の生成の選択率は、反応したグリセロールを基準として1.9%であった。
【0218】
オーバーフロー出口で集められた液体混合物中の全濃度は、ジグリセロール、環状ジグリセロール、ジグリセロールのモノクロロヒドリンヒドリンおよびジクロロヒドリンとGC分析で定量化されない重質生成物との合計について61g/kgであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
グリセロールと、組成物の1kg当たり0.01g以上および20g以下の環状オリゴマーの含有率でグリセロールの少なくとも1つの環状オリゴマーとを含む組成物。
【請求項2】
前記グリセロール含有率が組成物の1kg当たり500g以上のグリセロールである、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
グリセロールの前記環状オリゴマーがグリセロールの環状二量体である、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
さらに加えて、線状構造のグリセロール二量体、分岐構造の非環状グリセロール二量体およびこれらのグリセロール二量体の少なくとも2つの混合物から選択される少なくとも1つのグリセロール二量体を含有する、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
次の工程:
(a)グリセロールの環状オリゴマーの含有率が組成物の1kg当たり0.01g未満である、グリセロールを含む組成物(I)を、塩基性剤の存在下に、25℃以上および180℃未満の温度での加熱操作にかける工程;
(b)工程(a)の終わりに得られた組成物(II)を、グリセロールと、組成物の1kg当たり0.01g以上の環状オリゴマーの含有率でグリセロールの少なくとも1つの環状オリゴマーとを含む組成物を留出物としてかまたは蒸発物として得るために、蒸留操作にまたは蒸発操作にかける工程;を含み、
(c)さらに任意選択的に、工程(b)の終わりに得られた組成物(III)の一画分が、グリセロールと、組成物の1kg当たり20g以下の環状オリゴマーの含有率でグリセロールの少なくとも1つの環状オリゴマーとを含有する組成物を得るために、少なくとも1つの精製処理にかけられる工程
を含んでいてもよい、請求項1〜4のいずれか一項に記載の組成物の製造方法。
【請求項6】
前記精製処理が、蒸発濃縮、蒸発晶析、蒸留、分別蒸留、ストリッピングおよび液/液抽出操作ならびにこれらの操作の少なくとも2つの組み合わせから選択される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の少なくとも1つの組成物が塩素化剤と反応させられる、ジクロロプロパノールの製造方法。
【請求項8】
グリセロールが反応媒体中で塩素化剤と反応させられるジクロロプロパノールの製造方法であって、グリセロールの環状オリゴマーの量とグリセロールの量およびグリセロールの環状オリゴマーの量の合計との比が0.01g/kg以上および20g/kg以下である方法。
【請求項9】
ジクロロプロパノールの製造のための請求項1〜4のいずれか一項に記載の組成物の使用。
【請求項10】
得られたジクロロプロパノールが脱塩化水素反応にかけられる、請求項7に記載の方法を含むエピクロロヒドリンの製造方法。
【請求項11】
得られたジクロロプロパノールが脱塩化水素反応にかけられる、請求項8に記載の方法を含むエピクロロヒドリンの製造方法。
【請求項12】
請求項10に記載の方法に従って得ることができるエピクロロヒドリン。
【請求項13】
請求項11に記載の方法に従って得ることができるエピクロロヒドリン。
【請求項14】
請求項10または11に記載の方法を含む、エポキシ樹脂もしくはグリシジルエーテルもしくはグリシジルエステルもしくはグリシジルアミドもしくはグリシジルイミドもしくはグリシジルアミンまたは凝固剤もしくは耐水性樹脂もしくはカチオン化剤もしくは難燃剤として使用することができる製品または洗剤用の成分もしくはエピクロロヒドリンエラストマーもしくはハロゲン化ポリエーテル−ポリオールもしくはモノクロロプロパンジオール、好ましくは3−クロロ−1,2−プロパンジオールの製造方法であって、前記エピクロロヒドリンが、モノアルコール、モノカルボン酸、ポリオール、ポリアミン、アミノアルコール、ポリイミド、ポリアミド、ポリカルボン酸、アンモニア、アミン、ポリアミノアミド、ポリイミン、アミン塩、リン酸、リン酸塩、オキシ塩化リン、リン酸エステル、ホスホン酸、ホスホン酸のエステル、ホスホン酸の塩、ホスフィン酸、ホスフィン酸のエステル、ホスフィン酸の塩、ホスフィンオキシド、ホスフィン、エトキシル化アルコール、アルキレンまたはフェニレンオキシド、およびこれらの化合物の少なくとも2つの混合物から選択される少なくとも1つの化合物との反応にかけられるか、または前記エピクロロヒドリンがホモ重合反応にかけられるか、またはエピクロロヒドリンがオリゴマー化の、共オリゴマー化の、縮合の、脱塩化水素の、および、水での、または任意選択的にハロゲン化されていてもならびに/またはエーテルオキシド結合および/またはその後の段階でハロゲン化されることができる二重結合を有してもよいジ−もしくはポリヒドロキシル化化合物での加水分解の反応にかけられるか、またはエピクロロヒドリンが水との反応にかけられる方法。
【請求項15】
エポキシ樹脂もしくはグリシジルエーテルもしくはグリシジルエステルもしくはグリシジルアミドもしくはグリシジルイミドもしくはグリシジルアミンの、または凝固剤もしくは耐水性樹脂もしくはカチオン化剤もしくは難燃剤として使用することができる製品または洗剤用の成分もしくはエピクロロヒドリンエラストマーもしくはハロゲン化ポリエーテル−ポリオールもしくはモノクロロプロパンジオール、好ましくは3−クロロ−1,2−プロパンジオールの製造での請求項12または13に記載のエピクロロヒドリンの使用。

【公表番号】特表2011−516451(P2011−516451A)
【公表日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−502367(P2011−502367)
【出願日】平成21年3月31日(2009.3.31)
【国際出願番号】PCT/EP2009/053766
【国際公開番号】WO2009/121853
【国際公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【出願人】(591001248)ソルヴェイ(ソシエテ アノニム) (252)
【Fターム(参考)】